Q&A16
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【1】
【キレる子ども】

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こんな記事が、読売新聞に載っていた。
そのまま紹介させてもらう。

キレる子どもの背景には、「抑圧」がある。
その抑圧の恐ろしさを、改めてこの記事を
読んで知った。

つまり日ごろ、(いい子)でいる子どもほど、
心に別室を作り、その中に不平、不満を
押し込める。
それがときとばあいに応じて、突然、爆発する。

(心の別室)には、いわゆる(心の上書き)が
働かない。
ふつう心というのは、何かいやなことがあっても、
そのあと楽しいことがあると、上書きされ、
いやなことを忘れる。
しかし心の別室に入った思い出には、その
上書きが働かない。

だから何年も、あるいは何十年もたっている
にもかかわらず、それが爆発する。

「いい子ほど心配」という意味が、わかって
もらえれば、うれしい。

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++++++++++以下、読売新聞より++++++++++++

●無抵抗の教師殴るける、子供の暴力エスカレート

12月1日9時13分配信 読売新聞

 子供の暴力の4件に1件は、相手を負傷させるほどエスカレートしていた。文部科学省
が30日公表した問題行動に関する調査は、暴力行為が過去最多を記録。内容も悪質化し
ていた。

 今年9月、栃木県日光市の市立中学校。放課後の教室で、3年男子が女性教諭の顔など
を殴り全治1週間のけがを負わせた。市教委によると、宿題の作文を書いておらず、その
場で書くよう指導されただけで突然キレたといい、無抵抗の教諭を殴ったりけったりした。

 「意思疎通が下手で、言葉にする前に手が出る子供はますます増えている」。神奈川県の
中学校の女性スクールカウンセラー(45)は話す。今回の調査で、同県は暴力行為の件
数が9232件と全国最多だった。カウンセラーは、家庭の経済的な困窮を背景に、スト
レスをため込んでいる子供が増えたと指摘。「ささいなことで感情を爆発させる子にそうし
た子供が多い」と話した。

 一方、学校がいじめを把握した件数は大幅に減ったが、山形県高畠町の会社員渋谷登喜
男さん(57)は「いじめを把握できないのは、子供が本音を明かさないためです」と語
る。

 高校2年だった長女の美穂さん(当時16歳)は2006年11月、校内で飛び降り自
殺した。死後、美穂さんの携帯電話から、いじめを受け自殺を決意したことをうかがわせ
る本人の書き込みが見つかったが、県教委は「いじめは確認できない」とした。

 今回の調査で「いじめゼロ」だった学校は、個別面談や家庭訪問の実施率が低い傾向が
あった。学校側の責任を問い、県と裁判で争っている渋谷さんは、「教師が忙し過ぎて子供
と向き合えていない。学校現場で心や命の問題がおろそかになっている」と訴えている

++++++++++++++++以上、読売新聞より++++++++++++++

【子どもとストレス】

●キレる子ども 

++++++++++++++++++

キレる子どもについては、たびたび、
取りあげてきた。

その「キレる」という行為だが、通常の
「激怒」とは、いくつかの点で、異なる。

++++++++++++++++++

 子どもでも怒る。激怒することはある。しかし「キレる」という行為とは、明確に、区
別される。「キレる」という行為には、つぎのような特徴がある。

(1)突発的に錯乱状態になる。
(2)暴力行為に、見境がなくなる。
(3)脳の抑制命令が、欠落する。
(4)瞬間、別人のような鋭い目つきになる。
(5)キレる理由そのものが、明確ではない。

 順に考えてみる。

(1)突発的に錯乱状態になる。

 キレる子どもの特徴は、突発的に錯乱状態になること。その少し前から、ピリピリとし
た緊張状態がつづくことがあるが、暴れ出すときは、突発的である。瞬間、人格の変化を
感じたと思ったとたん、「コノヤロー」と金切り声をあげて、相手に飛びかかっていったり
する。

(2)暴力行為に、見境がなくなる。

 キレる子どものする暴力には、見境がない。ふつうの暴力には、(手かげん)というもの
がある。しかしキレる子どものする暴力には、その(手かげん)がない。全力をこめて、
相手を殴ったり、蹴ったりする。

(3)脳の抑制命令が、欠落する。

 言動が、まるでカミソリでものをスパスパと切ったようになる。動きが直線的になり、
なめらかさが消える。脳の抑制命令が欠落したような状態になる。当然、言葉もはげしい
ものになる。

(4)瞬間、別人のような鋭い目つきになる。

 その瞬間、子どもの顔を観察すると、顔色は青ざめ、目つきが別人のように鋭く、冷め
たものになっているのがわかる。憎しみや怒りを表現しながら相手に殴りかかるというよ
りは、無表情のまま。ときに、そのあまりにもすごんだ顔を見て、ゾッとすることさえあ
る。

(5)キレる理由そのものが、明確ではない。

 キレるとき、その理由が、よくわからない。A君(小3男児)は、順番を待って並んで
いるとき、突然、キレて暴れ出した。近くにあった机や椅子を、ギャーッという叫び声と
ともに、手当たり次第、足で蹴って倒した。

 B子さん(小5女児)は、私が「こんにちは」と声をかけて肩をたたいたその瞬間、突
然、キレた。私に向かって、「このヘンタイ野郎!」と言って、私の腹に足蹴りを入れてき
た。ものすごい足蹴りである。私は、その場で、息もできなくなり、しばらくうずくまっ
てしまった。

 C君(小4男児)は、問題を解いているとき、私がそれを手助けしてやろうと声をかけ
たとたん、キレた。「テメエ、ウッセー!」と叫んで、そばにあったワークブックで、私の
頭を、つづけざまに、狂ったように叩きつづけた。

 こういうケースのばあい、私ができることと言えば、男児のばあいは、抱きかかえ、子
どもを抑えることでしかない。しかし相手が女児のばあいだと、それもできない。両手で
まるく、自分の頭をおおうことでしかない。子どもの世界では、おとなの私のほうが、や
り返すなどというのは、タブー。(当然だが……。)

 こうした子どもを観察してみると、先にも書いたように、脳の抑制命令そのものが、欠
落したような状態になっていることがわかる。脳の機能そのものが、異常に亢進し、狂っ
たような状態になる。

 原因のほとんどは、慢性的なストレス、日常的な緊張感、抑圧感の蓄積と考えてよい。
それが脳間伝達物質の過剰分泌を促し、瞬間的に脳の機能が異常に亢進するためと考えら
れる。

 さらにその原因はといえば、脳の微細障害説などもあるが、家庭環境も、大きく作用し
ていることは否定できない。

 子どもがこういう症状を示したら、親は、家庭環境を猛省しなければならない。が、こ
ういう子どもにかぎって、親の前では、むしろ静かでいい子ぶっていることが多い。つま
りそのはけ口を、弱い人や、やさしい人に向ける。

 だからたいていのばあい、私がそれを指摘しても、親は、その深刻さを理解しようとす
る前に、子どもを叱ったり、さらに子どもを抑えつけようとしたりする。これがますます
症状をこじらせる。あとは、この悪循環。最後は、行き着くところまで行く。それまで気
がつかない。

 対処法としては、過剰行動児に準ずる。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

以前書いた原稿より……

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●ストレス学説

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適度なストレスは、生活のスパイス。
それは常識だが、では「適度なストレス」
とは、どの程度のストレスのことを
いうのか。

称して、「はやし浩司のストレス学説」

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 適度なストレスは、生活のスパイス。それが、生活に、ある種の緊張感をもたらす。そ
れは常識だが、では「適度なストレス」とは、どの程度のストレスのことをいうのか。そ
れがわからない。

●正のストレス、負のストレス

 ストレス(生理的ひずみ)にも、2種類ある。たまたま、私は、それを同時に経験しつ
つある。

 来月(10月)から、数年ぶりに、言葉クラブをもつ。生徒も、5、6人、集まった。
で、これが今、ある種の緊張感となって、私の心を包んでいる。これが正のストレス。

 一方、この先ずっと、私は、グループ・ホームへ入った兄のめんどうをみなければなら
ない。ひょっとしたら、兄のほうが、私より長生きをするかもしれない。途中、いろいろ
な医療費も負担することになるだろう。それを考えると、気が重くなる。これが負のスト
レス。

 つまり前向きに、自分を発展させていくストレスが、正のストレスということになる。
一方、袋小路に入ったように、先が見えないストレスが、負のストレスということになる。

 適度なストレスとはいうものの、正のストレスなら、まだ何とかなる。ここでいう、生
活のスパイスになる。

 しかし負のストレスは、そうではない。それがいくら軽いものであっても、(重いものな
ら、当然だが)、心の内側にペタッと入りついて、その心を、重く苦しいものにする。

●住んでいる世界で異なるストレス

 心の広さというのは、千差万別。人によって、みな、異なる。

 井戸のような世界に住んでいる人は、小さな石ころが落ちただけで、それを大きなスト
レス(ストレッサー)にしてしまう。

 一方、大きな海のような世界に住んでいる人は、渦巻く台風のような風が起きても、平
気。

 つまりは住んでいる世界、あるいはその人の心の広さによって、同じストレスでも、感
じ方まで、異なってくる。

 それが正のストレスであれ、負のストレスであれ、事情は同じ。

 では、私たちは、ストレスに対して、どのように考え、どのように対処すればよいのか。

●ストレス学説 

 ストレスというのは、もともとは「圧力」を意味する(セリエ)。その圧力が、心理的負
担になり、心理的反応を示した状態を、「ストレス」という。「生理的ひずみ」と考えると、
わかりやすい。

 しかしそのストレスの受け方には、ここにも書いたように、個人差がある。たとえば同
じストレス(圧力)でも、人によって、それを重圧に思う人もいれば、そうでない人もい
る。そこで今では、ストレスに個人差、つまり個人変数を加えて考えるのが常識になって
いる(ラザラスとフォルクスマン)。

 同じストレスであるにもかかわらず、人によって個人差が出るのは、それぞれの人がも
つ認知プロセスがちがうからと考えられている。わかりにくい言葉だが、要するに、その
人が置かれた環境、心理状態、精神状態、経験などにより、その処理方法が異なるという
こと。

 たとえばある男性(40歳)は、こう言った。「オレは、借金がないと仕事をする気が起
きない」と。

 また別の男性(40歳)は、こう言った。「オレは、借金に追われるようになると、仕事
が手につかなくなる」と。

 同じ(借金)でも、それを受け取る側の認知プロセスによって、ストレスにするかしな
いかが決まってくる。こうしたストレスへの対処方法を総称して、「コーピング(copi
ng)」と呼ぶ学者もいる。

●では、どうするか?

 ストレスと戦うためには、2つの方法が考えられる。ひとつは、そのストレスそのもの
と戦うという方法。もう1つは、自分の住む世界を、より広く、大きくすることによって
対処するという方法である。
 
つまり心理的圧力となるような原因を取り除くのが、前者。広い海のような心をもち、
小石が落ちたくらいでは、ビクともしない。そういう状態にもっていくのが、後者とい
うことになる。

 で、私のばあいは、ストレスの原因となるようなストレッサー、とくに冒頭にあげた負
のストレスを、心のどこかで感じたばあいには、できるだけ早い段階で、それを解消する
ように努めている。もともとあまりストレスに強い精神構造にはできていない。

 つぎに、できるだけ広い心を用意する。具体的には、さまざまな経験をすることによっ
て、広い心をもつようにする。そのためには、情報が重要な役割をになうことが多い。そ
ういう意味では、無知、無学は、ストレスの大敵と考えてよい。

 ほかに、たとえば、心の防衛機制に準じて、(1)合理化、(2)反動形成、(3)同一視、
(4)代償行動、(5)逃避、(6)退行、(7)補償、(8)投影、(9)抑圧、(10)置
換、(11)否認、(12)知性化という方法などがある。

どう反応するかは、もちろんそれぞれの人によって異なる。が、人というのは、それをス
トレスと感じたときから、それに長く耐える力は、あまりない。これは幼児のばあいだが、
日中、ほんの5〜10分間程度ストレスを感じただけで、精神疲労症状を起こす子どもは、
少なくない。

 子どもによっては、頭痛、腹痛を訴えることもある。吐く息が臭くなったり、下痢症状
を示すこともある。それが周期的に長くつづいたりすると、心をゆがめることも少なくな
い。神経症を発症したり、さらに情緒障害、精神障害に発展することも珍しくない。

 話が脱線したが、今、あなたが何かのストレスを感じているなら、まずその中身を知る。
敵を知る。それがストレスと立ち向かう、第1歩ということになる。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
ストレ
ス、ストレッサー ストレス学説 正のストレス、負のストレス)

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ストレスについて、以前書いた原稿の
中から、いくつかを集めてみました。

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子どもが自慰をするとき

●ある母親からの質問

 ある母親からこんな相談が寄せられた。いわく、「私が居間で昼寝をしていたときのこと。
6歳になった息子が、そっと体を私の腰にすりよせてきました。小さいながらもペニスが
固くなっているのがわかりました。やめさせたかったのですが、そうすれば息子のプライ
ドをキズつけるように感じたので、そのまま黙ってウソ寝をしていました。

こういうとき、どう対処したらいいのでしょうか」(32歳母親)と。

●罪悪感をもたせないように

 フロイトは幼児の性欲について、次の3段階に分けている。(1)口唇期……口の中にい
ろいろなものを入れて快感を覚える。(2)肛門期……排便、排尿の快感がきっかけとなっ
て肛門に興味を示したり、そこをいじったりする。(3)男根期……満4歳くらいから、性
器に特別の関心をもつようになる。

 自慰に限らず、子どもがふつうでない行為を、習慣的に繰り返すときは、まず心の中の
ストレス(生理的ひずみ)を疑ってみる。

子どもはストレスを解消するために、何らかの代わりの行為をする。これを代償行為とい
う。指しゃぶり、爪かみ、髪いじり、体ゆすり、手洗いグセなど。自慰もその一つと考え
る。

つまりこういう行為が日常的に見られたら、子どもの周辺にそのストレスの原因(ストレ
ッサー)となっているものがないかをさぐってみる。ふつう何らかの情緒不安症状(ふさ
ぎ込み、ぐずぐず、イライラ、気分のムラ、気難しい、興奮、衝動行為、暴力、暴言)を
ともなうことが多い。そのため頭ごなしの禁止命令は意味がないだけではなく、かえって
症状を悪化させることもあるので注意する。

●スキンシップは大切に

 さらに幼児のばあい、接触願望としての自慰もある。幼児は肌をすり合わせることによ
り、自分の情緒を調整しようとする。反対にこのスキンシップが不足すると、情緒が不安
定になり、情緒障害や精神不安の遠因となることもある。子どもが理由もなくぐずったり、
訳のわからないことを言って、親をてこずらせるようなときは、そっと子どもを抱いてみ
るとよい。最初は抵抗するそぶりを見せるかもしれないが、やがて静かに落ちつく。

 この相談のケースでは、親は子どもに遠慮する必要はない。いやだったらいやだと言い、
サラッと受け流すようにする。罪悪感をもたせないようにするのがコツ。

 一般論として、男児の性教育は父親に、女児の性教育は母親に任すとよい。異性だとど
うしても、そこにとまどいが生まれ、そのとまどいが、子どもの異性観や性意識をゆがめ
ることがある。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
子供の性教育 性教育 子供の性 性 自慰 子供の自慰 自慰行為)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●子どものおねしょとストレス

 いわゆる生理的ひずみをストレスという。多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になる
ことが多い。

たとえば急激に緊張すると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心臓が
ドキドキし、さらにその結果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や筋肉の活動が活
発になる。

が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、「食欲不振や
性機能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反応が引き起こされる」(新
井康允氏)という。こうした現象はごく日常的に、子どもの世界でも見られる。

 何かのことで緊張したりすると、子どもは汗をかいたり、トイレが近くなったりする。
さらにその緊張感が長くつづくと、脳の機能そのものが乱れ、いわゆる神経症を発症する。

ただ子どものばあい、この神経症による症状は、まさに千差万別で、定型がない。「尿」に
ついても、夜尿(おねしょ)、頻尿(たびたびトイレに行く)、遺尿(尿意がないまま漏ら
す)など。

私がそれを指摘すると、「うちの子はのんびりしています」と言う親がいるが、日中、明る
く伸びやかな子どもでも、夜尿症の子どもはいくらでもいる。(尿をコントロールしている
のが、自律神経。その自律神経が何らかの原因で変調したと考えるとわかりやすい。)同じ
ストレッサー(ストレスの原因)を受けても、子どもによっては受け止め方が違うという
こともある。

つまり子どもによって、それぞれ認知プロセス(=ストレスに対する耐性)は異なる。

 しかし考えるべきことは、ストレスではない。そしてそれから受ける生理的変調でもな
い。(ほとんどのドクターは、そういう視点で問題を解決しようとするが……。)

大切なことは、仮にそういうストレスがあったとしても、そのストレスでキズついた心を
いやす場所があれば、それで問題のほとんどは解決するということ。ストレスのない世界
はないし、またストレスと無縁であるからといって、それでよいというのでもない。

ある意味で、人は、そして子どもも、そのストレスの中でもまれながら成長する。で、そ
の結果、言うまでもなく、そのキズついた心をいやす場所が、「家庭」ということになる。

 子どもがここでいうような、「変調」を見せたら、いわば心の黄信号ととらえ、家庭のあ
り方を反省する。手綱(たづな)にたとえて言うなら、思い切って、手綱をゆるめる。一
番よいのは、子どもの側から見て、親の視線や存在をまったく意識しなくてすむような家
庭環境を用意する。

たいていのばあい、親があれこれ心配するのは、かえって逆効果。子ども自身がだれの目
を感ずることもなく、ひとりでのんびりとくつろげるような家庭環境を用意する。子ども
のおねしょについても、そのおねしょをなおそうと考えるのではなく、家庭のあり方その
ものを考えなおす。

そしてあとは、「あきらめて、時がくるのを待つ」。それがおねしょに対する、対処法とい
うことになる。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
 子供の夜尿症 おねしょ 頻尿 子どものおねしょ おねしょう)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●私のストレス発散法

 ストレス(生理的なひずみ、あるいは「気」のうっ積)で苦しんでいる人は、多い。実
のところ、私は30歳〜35歳のころ、偏頭痛で苦しんだ。年に数回、あるいはもっと多
い頻度で、偏頭痛の発作が起きた。それこそ四転八転の苦しみを味わった。「頭を切ってく
れ!」と叫んで、ふとんの中でもがいたことも多い。その苦しみは、偏頭痛を味わったも
のでないとわかるまい。

 もっとも当時は、偏頭痛に対する理解も治療法もなく、(あったかもしれないが、私が相
談した医師は、別の診断名をくだしていた。ある大病院では、脳腫瘍と診断し、開頭手術
まで予定した)、市販の薬をのんでは、ゲーゲーとそれを吐き出していた。そういう意味で
は、まさに毎日がストレスとの戦いでもあった。

 そんな中、やがて自分なりの対処法を身につけるようになった。

 まず第一に自分はストレスに弱いことを自覚した。そのため、ストレッサー(ストレス
の原因)となりやすいものは、できるだけ避けるようにした。たとえば人と会う約束も、
1日1回にするとか、など。あるいはスケジュールには、余裕をもたせるなど。

 つぎに、当然のことながら、治療法をさがした。たまたま東洋医学の勉強もしていたの
で、あらゆる漢方薬を試してみた。しかし結局は、そのうち、たいへんよく効く西洋薬が
開発されて、それでなおるようになった。ただその薬は、のむと胃を荒らすので、できる
だけのまないようにしている。

 が、最善の治療法は、汗をかくこと。ただし、偏頭痛がひどくなってからでは、汗をか
くと、かえって……というより、運動することそのものができない。軽い段階で、思い切
って汗をかく。

運動がよいことは言うまでもないが、その中でも、私のばあい、エンジン付の草刈り機で、
バンバンと草を刈るのが効果的。一汗かくと、偏頭痛そのものが消える。だから「おかし
い」と感じたら、あたりかまわず草を刈ることにしている。理由はよくわからないが、下
半身は毎日、自転車できたえているため、走ったり、自転車にのっても、あまり汗をかか
ない。しかし反対に、上半身は、ほとんど鍛えていないので、草を刈るとその上半身を使
うため、汗をかくのではないか……と、勝手にそう解釈している。

 今でも、少し油断すると、頭重が起きる。しかしそれは同時に、私の健康のバロメータ
ーでもある。持病もうまくつきあうと、それを反対に利用することができる。「少し頭が重
くなったから、仕事を減らせ」とか。そういうふうに、利用できる。

 この話は、子育てとは関係ないが、育児疲れや育児ノイローゼで、偏頭痛になる人も多
いので、参考のために書いた。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●わずらわしい世界

 情報の時代というが、本当に、この世界、わずらわしい。昨夜も、居間でお茶を飲んで
いたら、若い女性から電話がかかってきて、息子の電話番号を教えろ、と。私が断ると、「何
を偉そうに!」と。勝手に他人の家に電話をかけてきて、「何を偉そうに!」は、ない。

 ひとり静かに生きることは、一見、楽なようにみえて、楽ではない。「一日」という時間
帯をみても、ひとり静かでのんびりできる時間のほうが、少ない。つぎからつぎへと、い
ろいろな事件が起きる。そのほとんどは、向こうからやってくる。

できるなら、そういうわずらわしさから、解放されたい。しかし、それは死ぬまで、不可
能だろう。ただ私のばあい、朝、5時ごろ目が覚めて、それから7時、8時まで、こうし
て原稿を書いているが、その時間ほど、「ひとり」でいられる時間はない。貴重な時間だ。
しかし、それでわずらわしさが消えるわけではない。

 こうしたわずらわしさがあれば、それと戦うしかない。受け身になったとき、そのわず
らわしさは、ストレッサーとなる。問題は戦い方だ。しかしひとたび情緒が不安定になる
と、それも簡単ではない。

子どものばあい、大きく分けて、三つのタイプに分かれる。(1)攻撃型、激情型、暴力型、
(2)内閉型、オドオド型、萎縮型、(3)執着型、こだわり型、依存型。

思いついたまま書いたので、正しくないかもしれないが、要するに、大声を出して暴れる
タイプと、グズグズして引きこもるタイプ、それにモノにこだわって、それを異常にこだ
わるタイプがある。

 おとなもそうで、私のばあいは、(1)の攻撃型と、(2)内閉型の間をいったりきたり
する。精神状態がフワフワし、自分でもつかみどころがなくなってしまう。爆発しそうな
自分を必死でこらえたり、反対に、電話に出るのも、おっくうになったりする。

あるいはときどき、(3)のモノにこだわるときもある。そういうときは、それまでほしか
った高価なものを、パッと買ったりする。それで気分が晴れることもある。あとはカルシ
ウム剤をたっぷりと飲んで、風呂に入って、よく眠る。「明日は明日の風が吹く」と、そう
思いながら、床につく。

 昨日も一日、何かとわずらわしいことがつづいた。そのため朝なのに、少し頭が痛い。
しかし考えても始まらない。「何とかなるだろう」と、自分をなぐさめながら、前に進むし
かない。がんばりましょう。がんばります。では、みなさん、おはようございます。
(02−11−16)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●心のメカニズム

*****************

少し不謹慎な話で恐縮だが、セックス
をすると、言いようのない快感が、脳
全体をおおうのがわかる。これはセッ
クスという行為によって刺激され、脳
にモルヒネ様の物質が放出されるため
である。しかしこういう快感があるか
ら人は、セックスをする。つまり、種
族を私たちは維持できる。同じように、
よいことをしても、脳の中で、同様の
変化が起きる? それについて考えて
みた。

*****************

 まず、数か月前に私はこんなエッセーを書いた。その中で、私は「気持ちよさ」とか、「こ
こちよさ」という言葉を使って、「正直に生きることの大切さ」について書いてみた。

●常識の心地よさ 

 常識をみがくことは、身のまわりの、ほんのささいなことから始まる。花が美しいと思
えば、美しいと思えばよい。青い空が気持ちよいと思えば、気持ちよいと思えばよい。そ
ういう自分に静かに耳を傾けていくと、何が自分にとってここちよく、また何が自分にと
って不愉快かがわかるようになる。

無理をすることは、ない。道ばたに散ったゴミやポリ袋を美しいと思う人はいない。排気
ガスで汚れた空を気持ちよいと思う人はいない。あなたはすでにそれを知っている。それ
が「常識」だ。

 ためしに他人に親切にしてみるとよい。やさしくしてあげるのもよい。あるいは正直に
なってみるのもよい。先日、あるレストランへ入ったら、店員が計算をまちがえた。まち
がえて50円、余計に私につり銭をくれた。道路へ出てからまたレストランへもどり、私
がその50円を返すと、店員さんはうれしそうに笑った。まわりにいた客も、うれしそう
に笑った。そのここちよさは、みんなが知っている。

 反対に、相手を裏切ったり、相手にウソを言ったりするのは、不愉快だ。そのときはそ
うでなくても、しばらく時間がたつと、人生をムダにしたような嫌悪感に襲われる。実の
ところ、私は若いとき、そして今でも、平気で人を裏切ったり、ウソをついている。自分
では「いけないことだ」と思いつつ、どうしてもそういう自分にブレーキをかけることが
できない。

私の中には、私であって私でない部分が、無数にある。ひねくれたり、いじけたり、つっ
ぱったり……。先日も女房と口論をして、家を飛び出した。で、私はそのあと、電車に飛
び乗った。「家になんか帰るものか」とそのときはそう思った。で、その夜は隣町のT市の
ホテルに泊まるつもりでいた。が、そのとき、私はふと自分の心に耳を傾けてみた。「私は
本当に、ホテルに泊まりたいのか」と。答は「ノー」だった。私は自分の家で、自分のふ
とんの中で、女房の横で寝たかった。だから私は、最終列車で家に帰ってきた。

 今から思うと、家を飛び出し、「女房にさみしい思いをさせてやる」と思ったのは、私で
あって、私でない部分だ。私には自分にすなおになれない、そういういじけた部分がある。
いつ、なぜそういう部分ができたかということは別にしても、私とて、ときおり、そうい
う私であって私でない部分に振りまわされる。しかしそういう自分とは戦わねばならない。

 あとはこの繰りかえし。ここちよいことをして、「善」を知り、不愉快なことをして、「悪」
を知る。いや、知るだけでは足りない。「善」を追求するにも、「悪」を排斥するにも、そ
れなりに戦わねばならない。それは決して楽なことではないが、その戦いこそが、「常識」
をみがくこと、そのものと言ってもよい。

●なぜ気持ちよいのか

 少し話が専門的になるが、大脳の中心部(大脳半球の内側面)に、辺縁系(大脳辺縁系)
と呼ばれる組織がある。「辺縁系」というのは、このあたりが、間脳や脳梁(のうりょう)
を、ちょうど包むようにフチどっていることから、そう名づけられた。

 その辺縁系の中には、認知記憶をつかさどる海馬(かいば)や、動機づけをする帯状回
(たいじょうかい)、さらに価値判断をする扁桃体(へんとうたい・扁桃核ともいう)があ
る。

その扁桃体が、どうやら、人間の善悪の感覚をつかさどっているらしいことが、最近の研
究でわかってきた。もう少しわかりやすく言うと、大脳(新皮質部)でのさまざまな活動
が、扁桃体に信号を送り、それを受けて、扁桃体が、麻薬様の物質を放出する。その結果、
脳全体が快感に包まれるというのだ。

ここに書いたケースで言えば、私が店員さんに50円のお金を渡したことが、扁桃体に信
号を送り、その扁桃体が、私の脳の中で、麻薬様の物質を放出したことになる。

 もっとも脳の中でも麻薬様の物質が作られているということは、前から知られていた。
そのひとつに、たとえばハリ麻酔がある。体のある特定の部位に刺激を与えると、その刺
激が神経を経て、脳に伝えられる。すると脳の中で、その麻薬様物質が放出され、痛みが
緩和される。私は23、4歳のころからこのハリ麻酔に興味をもち、一時は、ある研究所
(社団法人)から、「教授」という肩書きをもらったこともある。

 それはそれとして、麻薬様物質としては、現在数10種類ほど発見されている。その麻
薬様物質は、大きく分けて、エンドルフィン類と、エンケファリン類の二つに分類される。
これらの物質は、いわば脳の中で生産される自家製のモルヒネと思えばよい。こうした物
質が放出されることで、その人はここちよい陶酔感を覚えることができる。

 つまりよいことをすると、ここちよい感じがするのは、大脳(新皮質部)が、思考とし
てそう感ずるのではなく、辺縁系の中にある扁桃体が、大脳からの信号を得て、麻薬様の
物質を放出するためと考えられる。少し乱暴な意見に聞こえるかもしれないが、心の働き
というのも、こうして、ある程度は、大脳生理学の分野で説明できるようになった。

 で、その辺縁系は、もともとは動物が生きていくための機能をもった原始的な脳と考え
られていた。私が学生時代には、だれかからは忘れたが、この部分は意味のない脳だと教
えられたこともある。

しかしその後の研究で、この辺縁系は、ここにも書いたように、生命維持と種族維持だけ
ではなく、もろもろの心の活動とも、深いかかわりをもっていることがわかってきた。そ
うなると人間は、「心」を、かなりはやい段階、たとえばきわめて原始的な生物のときから
もっていたということになる。ということは、同属である、犬やネコにも「心」があると
考えてよい。実際、こんなことがある。

 私は飼い犬のポインター犬を連れて、よく散歩に行く。あの犬というのは、知的なレベ
ルは別としても、情動活動(心の働き)は、人間に劣らずともあると言ってよい。喜怒哀
楽の情はもちろんのこと、嫉妬もするし、それにどうやら自尊心もあるらしい。

たとえば散歩をしていても、どこかの飼い犬がそれを見つけて、ワンワンとほえたりする
と、突然、背筋をピンとのばしたりする。人間風に言えば、「かっこづける」ということに
なる。そして何か、よいことをしたようなとき、頭をなでてやり、それをほめたりすると、
実にうれしそうに、そして誇らしそうな様子を見せる。恐らく、……というより、ほぼま
ちがいなく、犬の脳の中でも、人間の脳の中の活動と同じことが起きていると考えてよい。
つまり大脳(新皮質部)から送られた信号が、辺縁系の扁桃体に送られ、そこで麻薬様の
物質が放出されている!

●心の反応を決めるもの

 こう考えていくと、善悪の判断にも、扁桃体が深くかかわっているのではないかという
ことになる。それを裏づける、こんなおもしろい実験がある。

 アメリカのある科学者(ラリー・カーヒル)は、扁桃体を何らかの事情で失ってしまっ
た男性に、つぎのようなナレーションつきのスライドを見せた。そのスライドというのは、
ある少年が母親といっしょに歩いているとき、その少年が交通事故にあい、重症を負って、
もがき苦しむという内容のものであった。

 そしてラリー・カーヒルは、そのスライドを見せたあと、ちょうど一週間後に再び、そ
の人に病院へ来てもらい、どんなことを覚えているかを質問してみた。

 ふつう健康な人は、それがショッキングであればあるほど、その内容をよく覚えている
もの。が、その扁桃体を失ってしまった男性は、スライドを見た直後は、そのショッキン
グな内容をふつうの人のように覚えていたが、一週間後には、そのショッキングな部分に
ついて、ふつうの人のように、とくに覚えているということはなかったというのだ。

 これらの実験から、山元大輔氏は『脳と記憶の謎』(講談社現代新書)の中でつぎのよう
に書いている。

(1)(扁桃体のない男性でも)できごとの記憶、陳述記憶はちゃんと保たれている。
(2)扁桃体がなくても、情動反応はまだ起こる。これはたぶん、大脳皮質がある程度、
その働きを、「代行」するためではないか。
(3)しかし情動記憶の保持は、致命的なほど、失われてしまう。

 わかりやすく言えば、ショッキングな場面を見て、ショックを受けるという、私たちが
「心の反応」と呼んでいる部分は、扁桃体がつかさどっているということになる。

●心の反応を阻害(そがい)するもの

 こうした事実を、子育ての場で考えると、つぎのように応用できる。つまり子どもの「心」
というのも、大脳生理学の分野で説明できるし、それが説明できるということは、「心」は、
教育によって、はぐくむことができるということになる。

 そこで少し話がそれるが、こうした脳の機能を阻害するものに、「ストレス」がある。た
とえばニューロンの死を引き起こす最大の原因は、アルツハイマー型などの病気は別とし
て、ストレスだと言われている。

何かの精神的圧迫感が加わると、副腎皮質から、グルココルチコイドという物質が分泌さ
れる。そしてその物質が、ストレッサーから身を守るため、さまざまな反応を体の中で引
き起こすことが知られている。

 このストレスが、一時的なものなら問題はないが、それが、長期間にわたって持続的に
つづくと、グルココルチコイドの濃度があがりっぱなしになって、ニューロンに致命的な
ダメージを与える。そしてその影響をもっとも強く受けるのが、辺縁系の中の海馬だとい
う(山元大輔氏)。

 もちろんこれだけで、ストレスが、子どもの心をむしばむ結論づけることはできない。
あくまでも「それた話」ということになる。しかし子育ての現場では、経験的に、長期間
何らかのストレスにさらされた子どもが、心の冷たい子どもになることはよく知られてい
る。

イギリスにも、『抑圧は悪魔を生む』という格言がある。この先は、もう一度、いつか機会
があれば煮つめてみるが、そういう意味でも、子どもは、心豊かな、かつ穏やかな環境で
育てるのがよい。そしてそれが、子どもの心を育てる、「王道」ということになる。

 ついでに、昨年書いたエッセーを、ここに転載しておく。ここまでに書いたことと、少
し内容が重複するが、許してほしい。

●子どもの心が破壊されるとき

 A小学校のA先生(小1担当女性)が、こんな話をしてくれた。「1年生のT君が、トカ
ゲをつかまえてきた。そしてビンの中で飼っていた。そこへH君が、生きているバッタを
つかまえてきて、トカゲにエサとして与えた。私はそれを見て、ぞっとした」と。

 A先生が、なぜぞっとしたか、あなたはわかるだろうか。それを説明する前に、私にも
こんな経験がある。もう20年ほど前のことだが、1人の子ども(年長男児)の上着のポ
ケットを見ると、きれいに玉が並んでいた。私はてっきりビーズ玉か何かと思った。が、
その直後、背筋が凍りつくのを覚えた。

よく見ると、それは虫の頭だった。その子どもは虫をつかまえると、まず虫にポケットの
フチを口でかませる。かんだところで、体をひねって頭をちぎる。ビーズ玉だと思ったの
は、その虫の頭だった。

また別の日。小さなトカゲを草の中に見つけた子ども(年長男児)がいた。まだ子どもの
小さなトカゲだった。「あっ、トカゲ!」と叫んだところまではよかったが、その直後、そ
の子どもはトカゲを足で踏んで、そのままつぶしてしまった!

 原因はいろいろある。貧困(それにともなう家庭騒動)、家庭崩壊(それにともなう愛情
不足)、過干渉(子どもの意思を無視して、何でも親が決めてしまう)、過関心(子どもの
側からみて息が抜けない家庭環境)など。威圧的(ガミガミと頭ごなしに言う)な家庭環
境や、権威主義的(「私は親だから」「あなたは子どもだから」式の問答無用の押しつけ)
な子育てが、原因となることもある。要するに、子どもの側から見て、「安らぎを得られな
い家庭環境」が、その背景にあるとみる。さらに不平や不満、それに心配や不安が日常的
に続くと、それが子どもの心を破壊することもある。

イギリスの格言にも、『抑圧は悪魔を生む』というのがある。抑圧的な環境が長く続くと、
ものの考え方が悪魔的になることを言ったものだが、このタイプの子どもは、心のバラン
ス感覚をなくすのが知られている。

「バランス感覚」というのは、してよいことと悪いことを、静かに判断する能力のことを
いう。これがないと、ものの考え方が先鋭化したり、かたよったりするようになる。昔、
こう言った高校生がいた。「地球には人間が多すぎる。核兵器か何かで、人口を半分に減ら
せばいい。そうすれば、ずっと住みやすくなる」と。そういうようなものの考え方をする
が、言いかえると、愛情豊かな家庭環境で、心静かに育った子どもは、ほっとするような
温もりのある子どもになる。心もやさしくなる。

 さて冒頭のA先生は、トカゲに驚いたのではない。トカゲを飼っていることに驚いたの
でもない。A先生は、生きているバッタをエサとして与えたことに驚いた。A先生はこう
言った。「そういう残酷なことが平気でできるということが、信じられませんでした」と。

 このタイプの子どもは、総じて他人に無関心(自分のことにしか興味をもたない)で、
無感動(他人の苦しみや悲しみに鈍感)、感情の動き(喜怒哀楽の情)も平坦になる。よく
誤解されるが、このタイプの子どもが非行に走りやすいのは、そもそもそういう「芽」が
あるからではない。
非行に対する抵抗力がないからである。悪友に誘われたりすると、そのままスーッと仲間
に入ってしまう。ぞっとするようなことをしながら、それにブレーキをかけることができ
ない。だから結果的に、「悪」に染まってしまう。

 そこで一度、あなたの子どもが、どんなものに興味をもち、関心を示すか、観察してみ
てほしい。子どもらしい動物や乗り物、食べ物や飾りであればよし。しかしそれが、残酷
なゲームや、銃や戦争、さらに日常的に乱暴な言葉や行動が目立つというのであれば、家
庭教育のあり方をかなり反省したらよい。

子どものばあい、「好きな絵をかいてごらん」と言って紙とクレヨンを渡すと、心の中が読
める。子どもらしい楽しい絵がかければ、それでよし。しかし心が壊れている子どもは、
おとなが見ても、ぞっとするような絵をかく。

 ただし、小学校に入学してからだと、子どもの心を修復するのはたいへん難しい。修復
するとしても、四、五歳くらいまで。穏やかで、静かな生活を大切にする。
(02−11−23)

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
心をゆがめる子供 扁桃体 ストレスと子供 子供とストレス)


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ここまでの原稿に関連して、
以前にマガジンで配送した原稿を、送ります。
前に読んでくださった方は、とばしてください。

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●性善説と性悪説

 胎児は母親の胎内で、過去数10万年の進化の過程を、そのまま繰り返す。ある時期は、
魚そっくりのときもあるそうだ。

 同じように、生まれてから、知能の発達とは別に、人間は、「心の進化」を、そのまま繰
り返す。……というのは、私の説だが、乳幼児を観察していると、そういうことを思わせ
る場面に、よく出会う。

たとえば生後まもなくの新生児には、喜怒哀楽の情はない。しかし成長するにつれて、さ
まざまな感情をもつようになる。よく知られた現象に、「天使の微笑み」というのがある。
眠っている赤子が、何を思うのか、ニコニコと笑うことがある。こうした「心」の発達を
段階的に繰り返しながら、子どもは成長する。

 最近の研究では、こうした心の情動をコントロールしているのが、大脳の辺縁系の中の、
扁桃体(へんとうたい)であるということがわかってきた。

たしかに知的活動(大脳連合野の新新皮質部)と、情動活動は、違う。たとえば1人の幼
児を、皆の前でほめたとする。するとその幼児は、こぼれんばかりの笑顔を、顔中に浮か
べる。その表情を観察してみると、それは知的な判断がそうさせているというよりは、も
っと根源的な、つまり本能的な部分によってそうしていることがわかる。が、それだけで
はない。

 幼児、なかんずく4^6歳児を観察してみると、人間は、生まれながらにして善人であ
ることがわかる。中に、いろいろ問題のある子どもはいるが、しかしそういう子どもでも、
生まれながらにそうであったというよりは、その後の、育て方に問題があってそうなった
と考えるのが正しい。

子どもというのは、あるべき環境の中で、あるがままに育てれば、絶対に悪い子どもには
ならない。(こう断言するのは、勇気がいることだが、あえてそう断言する。)

 こうした幼児の特質を、先の「心の進化」論にあてはめてみると、さらにその特質がよ
くわかる。

 仮に人間が、生まれながらにして悪人なら……と仮定してみよう。たとえば仲間を殺し
ても、それを快感に覚えるとか。人に意地悪をしたり、人をいじめても、それを快感に覚
えるとか。新生児についていうなら、生まれながらにして、親に向かって、「ババア、早く
ミルクをよこしやがれ。よこさないとぶっ殺すぞ」と言ったとする。もしそうなら、人間
はとっくの昔に、絶滅していたはずである。

つまり今、私たちがここに存在するということは、とりもなおさず、私たちが善人である
という証拠ということになる。私はこのことを、アリの動きを観察していて発見した。

 ある夏の暑い日のことだった。私は軒先にできた蜂の巣を落とした。私もワイフも、こ
の1、2年で一度ハチに刺されている。今度ハチに刺されたら、アレルギー反応が起きて、
場合によっては、命取りになるかもしれない。それで落とした。殺虫剤をかけて、その巣
の中の幼虫を地面に放り出した。そのときのこと。時間にすれば10分もたたないうちに、
無数の小さなアリが集まってきて、その幼虫を自分たちの巣に運び始めた。

 最初はアリたちはまわりを取り囲んでいただけだが、やがてどこでどういう号令がかか
っているのか、アリたちは、一方向に動き出した。するとあの自分の体の数百倍以上はあ
るハチの幼虫が、動き出したのである!

 私はその光景を見ながら、最初は、アリたちにはそういう行動本能があり、それに従っ
ているだけだと思った。しかしそのうち、自分という人間にあてはめてみたとき、どうも
それだけではないように感じた。

たとえば私たちは夫婦でセックスをする。そのとき本能のままだったら、それは単なる排
泄行為に過ぎない。しかし私たちはセックスをしながら、相手を楽しませようと考える。
そして相手が楽しんだことを確認しながら、自分も満足する。同じように、私はアリたち
にも、同じような作用が働いているのではないかと思った。つまりアリたちは、ただ単に
行動本能に従っているだけではなく、「皆と力を合わせて行動する喜び」を感じているので
はないか、と。またその喜びがあるからこそ、そういった重労働をすることができる、と。

 この段階で、もし、アリたちがたがいに敵対し、憎みあっていたら、アリはとっくの昔
に絶滅していたはずである。言いかえると、アリはアリで、たがいに助けあう楽しみや喜
びを感じているに違いない。またそういう感情(?)があるから、そうした単純な、しか
も過酷な肉体労働をすることができるのだ、と。

 もう結論は出たようなものだ。人間の性質について、もともと善なのか(性善説)、それ
とも悪なのか(性悪説)という議論がよくなされる。しかし人間は、もともと「善なる存
在」なのである。私たちが今、ここに存在するということが、何よりも、その動かぬ証拠
である。繰り返すが、もし私たち人間が生まれながらにして悪なら、私たちはとっくの昔
に、恐らくアメーバのような生物にもなれない前に、絶滅していたはずである。

 私たち人間は、そういう意味でも、もっと自分を信じてよい。自分の中の自分を信じて
よい。自分と戦う必要はない。自分の中の自分に静かに耳を傾けて、その声を聞き、それ
に従って行動すればよい。もともと人間は、つまりあらゆる人々は、善人なのである。
(02−8−3)

参考文献……『脳と記憶の謎』山元大輔(講談社現代新書)
      『脳のしくみ』新井康允(日本実業出版社)ほか

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
性善説 ストレスとは ストレス学説)

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●キレる子供

【特集・キレる子ども】(1)


【キレる子ども】(再録)

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夏場になると、キレる子どもが
多くなる。

暑いせいか?

しかしそれだけとは言えない。

以前書いた原稿を、手なおして
して、ここに掲載する。

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●暴れまわる子ども(キレる子ども)

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アメリカのBLOGサイトに、こんな
相談があった。

預かっている子どもについての相談だが、
暴れまわって、困るという内容のもの。

Bulletin Board for EDSPC 753より転載。

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We have had custody of my 6 year old stepson for 9 months now, and I am truly worn out 
and need help ASAP. I went to the school today to pick him up for a doctor appointment 
(for his behavior & yes he is on medications for this)and upon seeing me in the hallway 
he became hysterical and ran in the oposite direction screaming. The principal and I 
caught up with him and he began punching, kicking, slapping, biting, and pulling 
several handfulls of my hair out of my head before the principal could restrain him. 
When he seemed calmed a bit i tried to calmly let him know that I was just picking him 
up for his doctor's appointment, at that point he kicked me in the face and continued to 
scream as loud as he could, disrupting several classrooms. The principal tried to carry 
him out to my vehicle, but once in he began kicking the daylights out of my car, he then 
got out and threw himself on the ground screaming. Please tell me what in the world to 
do and how should this be handled if it should occur at school again. The only facts we 
know about his life with his real mother is that she admitted in court to having heavily 
used methamphetamines daily throughout the pregnancy. I am not a teacher, but I fell 
terrible that the staff at his school had to go through this. He had an episode eight 
weeks ago where he did the same thing to his teacher that he did to me, I am in fearthat 
his abuse will only escalate. He is scheduled for a psych evaluation in Tacoma in 2 
weeks, please give me advice for the mean time, we have 5 other well behaved children 
in our home, how do I keep them safe?

6歳の子どもを預かるようになって、9か月になる。私は本当に疲れた。今日も、ドクタ
ーの診察を受けるため、学校へ子どもを迎えに行った。

玄関で私を見るやいなや、子どもはヒステリックになり、反対方向へ走って逃げていった。
校長と2人で、追いついたものの、殴ったり、蹴ったり、ひっぱたいたり、髪の毛を引っ
ぱったりした。少し落ち着いたところで、今日は、病院へ行くだけだと話して聞かせた。

そのときも、私の顔を蹴り、大声で泣き叫び、いくつかの教室の授業を混乱させてしまっ
た。どうしたらよいのか、どうか、教えてほしい。また学校で同じようなことが起きたら、
どうすればよいのか。8週間ほど前も同じようなことをしたとき、このままエスカレート
したら、どうしようかと悩んだ。

彼は、タコマで、心理教育を受けることになっている。この間、どうすればよいのか、教
えてほしい。私のところには、ほかにも5人の子どもを預かっているが、みな、行儀がよ
い。

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ある教育者からの返事

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It sounds like you are dealing with an extremely difficult situation. So far the other 
suggestions posted by Dina and Bear should be helpful. I have two more techniques that 
may be helpful for your stepson. One technique that you might want to try is creating a 
behavior contract with your stepson. First, you can figure out what behaviors you would 
like to see him exhibit in school and at home. Some suggestions would be he needs to 
draw when he is feeling angry or he needs to follow directions the first time that they 
are given. Set a time frame for each time you or the teacher will be evaluating his 
behavior. Start small to encourage his success with the technique. You might want to 
say, if you can do this for 30 minutes you will receive a reward. And, keep track of 
whether or not he is exhibiting this behavior every 30 minutes. You will talk to him 
about what kinds of rewards he is willing to work for. If he loves to play with his toy 
trucks maybe you can use extra play time as a reward or getting to watch a favorite 
movie. It is important to figure out what rewards matter to him. You can find more 
information on using behavior contracting on this website. Go to the main 
behavioradvisor.com screen and you will find the link for contracts. 

たいへん困難な状況にあると思う。先にコメントを書いた、DさんやBさんの意見も、役
に立つでしょう。で、私は、役にたつであろう2つの技術をもっている。

1つは、まず試してみるべきことは、その子どもとの、(行動契約)を結ぶこと。まず、学
校や家で、彼がどうあるべきかを、あなたがそれを具体的に頭の中で描いてみる。彼が怒
っているときや、最初に指示に従う必要にあるとき、どうするかを決めるのもよい。それ
ぞれのときに、時間のワクをつくれば、先生が、子どもの行動を(客観的に)評価するだ
ろう。

もし30分以内にできれば、ほうびを与えるなどとする。30分ごとに、その契約が守れ
るかどうかを、観察する。またその子どもがどのようなほうびを求めているかを、子ども
と話しあう。たとえばおもちゃのトラックと遊びたいとか、好きな映画を見たいというの
であれば、それらをほうびとする。その子どもが何をしたがっているかを知ることが、重
要。

このサイトで、(行動契約)についてのさらなる情報を、手に入れることができる。そちら
を訪問してみたらよい。

The second technique that you might want to try is having your stepson self monitor his 
own behavior. You will start out when he is calm to identify a behavior that you would 
like to encourage. Be confident in his ability to master this technique. It may sound 
unlike you, but give him excessive amounts of your confidence that he can master this 
behavior. Many children take their cues from the adults in their lives. Once you have 
figured out what behavior you will be working on, create a sheet with smily faces and 
frowning faces. At designated times, ask him to circle the smiling face if he is exhibiting 
this behavior or the frowning face if he is not. This will build his own motivation to 
exhibit appropriate behaviors. 
And, celebrate when he is improving!!! I know this can be difficult to do, as some of the 
improvements will seem small in relation to the problems; however, it is good for you 
and him to recognize when changes are occuring. It seems like you are really commited 
to helping this child and he is lucky to have such a 
stable adult in his life. Good luck with this situation. 

Keely

2番目の技術は、子ども自身の行動について、自己監視させること。子どもがあなたから
見て、落ち着いていて、好ましい状態にあるときから、始める。この技術をマスターする
ための能力が子どもにあると、自信をもつこと。

子どもが自分で自分を管理できると、あなたが、(今のあなたには、そうではなくても)、
自身をもっていることを、子どもに強く印象づける。多くの子どもたちは、彼らの生活に
おいて、おとなたちから、その手がかりを得る。どんな様子が望ましいかがわかったら、(ニ
コニコマーク)と(しかめっつらマーク)を描いたシートを用意する。

このことで、子どもに自覚を促す。そしてうまくいったときは、その子どもをほめたたえ
る。このことはむずかしいことは、わかっている。この問題に関しては、進歩は、少ない
だろう。しかしあなたとその子どもにとって、変化が起きつつあることを気がつくために
は、よい。その子どもにとって、あなたのような安定したおとなをもっているということ
は、すばらしいことだ。

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●子どもの過剰行動性について

 子どもの突発的な過剰行動性、いわゆるキレる子どもについては、いろいろな分野から
考察が繰りかえされている。

 大脳の微細障害説、環境ホルモン説、食生活説など。それらについて、数年前に書いた
原稿を、ここに添付する。

++++++++++++++++++

【子どもがキレるとき】

●ふえるキレる子ども

 2000年、全国の教育委員会から報告された校内での暴力行為は、前年度より11.
4%ふえて、34595件に達したことがわかった(文部科学省)。「対外的に問題の見ら
れなかった子どもが、突発的に暴力をふるうケースが目立つ」と指摘。同省・児童生徒課
は、キレる子どもへの対応の必要性を強調した(中日新聞)。

 暴力行為が報告された学校の割合は、小学校が全体の2・2%だったが、中学校が35・
8%、高校が47・3%にのぼった。また学校外の暴力行為は、小中高校で、計5779
件だった。私が住む静岡県でも、前年度より210件ふえて、1132件だった。マスコ
ミで騒がれることは少なくなったが、この問題は、まだ未解決のままと考えてよい。

 こうしたキレる子どもの原因について、各方面からさまざまな角度から議論されている。
教育的な分野からの考察については言うまでもないが、それ以外の分野として、たとえば
(1)精神医学、(2)栄養学の分野がある。さらに最近では(3)環境ホルモンの分野か
らも問題が提起されている。これは、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が、
子どもの脳に影響を与え、それが子どもがキレる原因の一つになっているという説
である。以下、これらの問題点について、考えてみる。

(1)精神医学の分野からの考察

●躁状態における錯乱状態 

 キレる状態は、心理学の世界では、「躁(そう)状態における精神錯乱」と位置づけられ
ている。躁うつ病を定型化したのはクレペリン(ドイツの医学者・1856〜1926)
だが、一般的には躁状態とうつ状態はペアで考えられている。周期性をもって交互に、あ
るいはケースによっては、重複して起こることが多いからである。それはそれとして、こ
のキレた状態になると、子どもは突発的に攻撃的になったり、大声でわめいたりする。

(これに対して若い人の間では、ただ単に、激怒した状態、あるいは怒りをコントロール
できなくなった状態を、「キレる」と言うことが多い。ここでは区別して考える。)私にも
こんな経験がある。

●恐ろしく冷たい目

 子どもたち(小3児)を並べて、順に答案に丸をつけていたときのこと。それまでF君
は、まったく目立たないほど、静かだった。が、あと一人でF君というそのとき、F君が
突然、暴れ出した。突然というより、激変に近いものだった。ギャーという声を出したか
と思うと、周囲にあった机とイスを足げりにしてひっくり返した。瞬間私は彼の目を見た
が、その目は恐ろしいほど冷たく、すごんでいた……。

●心の緊張状態が原因

 よく子どもの情緒が不安定になると、その不安定な状態そのものを問題にする人がいる。
しかしそれはあくまでも表面的な症状に過ぎない。情緒が不安定な子どもは、その根底に
心の緊張状態があるとみる。その緊張状態の中に不安が入りこむと、その不安を解消しよ
うと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不安定になる。先のF君のばあいも、「問題が解けな
かった」という思いが、彼を緊張させた。そういう緊張状態のところに、「先生に何かを言
われるのではないか」という不安が入りこんで、一挙に情緒が不安定になった。

言いかえると、このタイプの子どもは、いつも心が緊張状態にある。気を抜かない。気を
許さない。
周囲に気をつかうなど。表情にだまされてはいけない。柔和でおだやかな表情をしながら、
その裏で心をゆがめる子どもは少なくない。

これを心理学の世界では、「遊離」という。「遊離現象」というときもある。心(情意)と
表情がミスマッチを起こした状態をいう。一度こういう状態になると、教える側からする
と、「何を考えているかわからない子ども」といった感じになる。

 その引き金となる原因はいくつかあるが、その第一に考えるのが、欲求不満である。欲
求不満が日常的に続くと、それがストレッサー(ストレスの原因)となり、心をふさぐ。
その閉塞感が、子どもの心を緊張させる。子どもの心について、こんな調査結果がある(9
8年・文部省調査)。

 「いらいら、むしゃくしゃすることがあるか」という質問に対して、小学6年生の18.
6%が、「日常的によくある」と答え、59.8%が、「ときどきある」と答えている。そ
の理由としては、

(1)友だちとの人間関係がうまくいかないとき……51.8%
(2)人に叱られたとき……45.7%
(3)家族関係がうまくいかないとき……35.5%
(4)授業がわからないとき……34.1%
(5)意味もなくむしゃくしゃするときがある……18.5%

また「不安を感ずることがあるか」という質問に対しては、やはり小学六年生の7.8%
が、「日常的によくある」と答え、47.7%が、「ときどきある」と答えている。その理
由としては、

(1)友だちとの関係がうまくいかないとき……51.0%
(2)授業がわからないとき……47.7%
(3)時間的なゆとりがないとき……29.3%
(4)落ち着ける居場所がないとき……22.4%
(5)進路、進学について……20.4%
 
 この調査結果から、現代の子どもたちは、およそ20人に一人が日常的に、いらいらし
たり、むしゃくしゃし、10人に一人が日常的にある種の不安を感じていることがわかる。

●子どもの欲求不満

 子どもの欲求不満については、その原因となるストレスの大小はもちろんのこと、それ
を受け取る子ども側の、リセプターとしての問題もある。同じストレスを与えても、それ
をストレスと感じない子どももいれば、それに敏感に反応する子どももいる。そんなわけ
で、子どものストレスを考えるときは、対個人ではどうなのかというレベルで考える必要
がある。それはさておき、子どもは自分の欲求が満たされないと、欲求不満になる。この
欲求不満に対する反応は、ふつう、次の三つに分けて考える。

(1)攻撃・暴力タイプ

 欲求不満やストレスが、日常的にたまると、子どもは攻撃的になる。心はいつも緊張状
態あり、ささいなことでカッとなって、暴れたり叫んだりする。母親が、「ピアノのレッス
ンをしようね」と話しかけただけで、包丁を投げつけた女の子(年長児)がいた。

私が「今日は元気?」と声をかけて、肩をたたいた瞬間、「このヘンタイ野郎!」と私を足
げりにした女の子(小5)もいた。こうした攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩する、暴力
を振るう、暴言を吐く)と、裏に隠れてするタイプ(弱い者をいじめる、動物を虐待する)
に分けて考えることができる。

(2)退行・依存タイプ

 ぐずったり、赤ちゃんぽくなったりする(退行性)。あるいは誰かに依存しようとする(依
存性)。このタイプの子どもは、理由もなくグズグズしたり、甘えたりする。母親がそれを
叱れば叱るほど、症状が悪化するのが特徴で、そのため親が子どもをもてあますケースが
多い。

(3)固執・執着タイプ

 ある特定の「物」にこだわったりする(固執性)。あるいはささいなことを気にして、悶々
と悩んだりする(執着性)。ある男の子(年長児)は、毛布の切れ端をいつも大切に持ち歩
いていた。最近多く見られるのが、おとなになりたがらない子どもたち。赤ちゃんがえり
ならぬ、幼児がえりを起こす。ある男の子(小5)は、幼児期に読んでいたマンガの本を
ボロボロになっても、まだ大切そうにカバンの中に入れていた。そこで私が、「これは何?」
と声をかけると、その子どもはこう言った。「どうチェ、読んでは、ダメだというんでチョ。
読んでは、ダメだというんでチョ」と。

 ものに依存するのは、心にたまった欲求不満をまぎらわすための代償行為と考えるとわ
かりやすい。よく知られているのに、指しゃぶりや、爪かみ、髪いじりなどがある。別の
ところで指の快感を覚えることで、自分の欲求不満を解消しようとする。

 キレる子どもは、このうち、(1)攻撃・暴力タイプということになるが、しかし同時に
退行性や依存性、さらには固着性や執着性をみせることが多い。 

●すなおな子ども論

 補足だが、従順で、おとなしい子どもを、すなおな子どもと考えている人は多い。しか
しそれは誤解。教育、なかんずく幼児教育の世界では、心(情意)と表情が一致している
子どもを、すなおな子どもという。うれしいときにはうれしそうな表情をする。悲しいと
きには悲しそうな表情をする。しかし心と表情が遊離すると、ここに書いたようにそれが
チグハグになる。ブランコを横取りされても、ニコニコ笑ってみせたり、いやなことがあ
っても、黙ってそれに従ったりするなど。

中に従順な子どもを、「よくできた子ども」と考える人もいるが、それも誤解。この時期、
よくできた子どもというのは、いない。つまり「いい子」ぶっているだけ。このタイプの
子どもは大きなストレスを心の中でため、そのためた分だけ、別のところで「心のひずみ」
となって現われる。よく知られた例として、家庭内暴力を起こす子どもがいる。このタイ
プの子どもは、外の世界では借りてきたネコのようにおとなしい。

●おだやかな生活を旨とする

 キレるタイプの子どもは、不安状態の中に子どもを追いこまないように、穏やかな生活
を何よりも大切にする。乱暴な指導になじまない。あとは情緒が不安定な子どもに準じて、
(1)濃厚なスキンシップをふやし、(2)食生活の面で、子どもの心を落ち着かせる。カ
ルシウム、マグネシウム分の多い食生活にこころがけ、リン酸食品をひかえる。リ
ン酸は、せっかく摂取したカルシウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出して
しまう。もちろんストレスの原因(ストレッサー)があれば、それを除去し、心の
負担を軽くすることも忘れてはならない。

●子どもの感情障害

 ほかに自閉症やかん黙児、さらには小児うつ病など、脳に機能的な障害をもつ子ども、
さらに近年問題になっている集中力欠如型多動性児(ADHD)は、感情のコントロール
ができないことがよく知られている。これらのタイプの子どもは、ささいなことがきっか
けで、突発的に(1)激怒する、(2)興奮、混乱状態になる、(3)暴言を吐いたり、暴
力行為に及ぶ。攻撃的に外に向って暴力行為を及ぶタイプを、プラス型、内にこもり混乱
状態になるのをマイナス型と私はわけている。どちらにせよその行動は予想がつきにくく、
たいていは子どもの「ギャーッ」という動物的な叫び声でそれに気づくことが多い。こち
らが「どうしたの?」と声をかけるときには、すでに手がつけられない状態になっている。

(2)栄養学の分野からの考察

●過剰行動性のある子ども

 もう20年以上も前だが、アメリカで「過剰行動性のある子ども」(ヒュー・パワーズ・
小児栄養学)が、話題になったことがある。ささいなことがきっかけで、突発的に過剰な
行動に出るタイプの子どもである。日本では、このタイプの子どもはほとんど話題になら
なかったが、中学生によるナイフの殺傷事件が続いたとき、その原因の一つとして、マス
コミでこの過剰行動性が取りあげられたことがある(98年)。

日本でも岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授らが、この分野の研究者
として知られている。

●砂糖づけのH君(年中児)

 私の印象に残っている男児にH君(年中児)という子どもがいた。最初、Hさん(母親)
は私にこう相談してきた。「(息子の)部屋の中がクモの巣のようです。どうしたらいいで
しょうか」と。話を聞くと、息子のH君の部屋がごちゃごちゃというより、足の踏み場も
ないほど散乱していて、その様子がふつうではないというのだ。が、それだけならまだし
も、それを母親が注意すると、H君は突発的に暴れたり、泣き叫んだりするという。始終、
こきざみに動き回るという多動性も気になると母親は言った。私の教室でも突発的に、耳
をつんざくような金切り声をあげ、興奮状態になることも珍しくなかった。そして一度そ
ういう状態になると、手がつけられなくなった。私はその異常な興奮性から、H君は過剰
行動児と判断した。

 ただ申し添えるなら、教育の現場では、それが学校であろうが塾であろうが、子どもを
診断したり、診断名をくだすことはありえない。第一に診断基準が確立していないし、治
療や治療方法を用意しないまま診断したり、診断名をくだしたりすることは許されない。

仮にその子どもが過剰行動児をわかったところで、それは教える側の内心の問題であり、
親から質問されてもそれを口にすることは許されない。診断については、診断基準や治療
方法、あるいは指導施設が確立しているケース(たとえば自閉症児やかん黙児)では、専
門のドクターを紹介することはあっても、その段階で止める。この過剰行動児についても
そうで、内心では過剰行動児を疑っても、親に向かって、「あなたの子どもは過剰行動児で
す」と告げることは、実際にはありえない。教師としてすべきことは、知っていても知ら
ぬフリをしながら、その次の段階の「指導」を開始することである。
 
●原因は食生活?

 ヒュー・パワーズは、「脳内の血糖値の変動がはげしいと、神経機能が乱れ、情緒不安に
なり、ホルモン機能にも影響し、ひいては子どもの健康、学習、行動に障害があらわれる」
という。メカニズムは、こうだ。ゆっくりと血糖値があがる場合には、それに応じてイン
スリンが徐々に分泌される。しかし一時的に多量の砂糖(特に精製された白砂糖)をとる
と、多量の、つまり必要とされる量以上の量のインスリンが分泌され、結果として、子ど
もを低血糖児の状態にしてしまうという(大沢)。そして(1)イライラする。機嫌がいい
かと思うと、突然怒りだす、(2)無気力、(3)疲れやすい、(4)(体が)震える、(5)
頭痛など低血糖児特有の症状が出てくるという(朝日新聞98年2・12)。これらの症状
は、たとえば小児糖尿病で砂糖断ちをしている子どもにも共通してみられる症状でもある。
私も一度、ある子ども(小児糖尿病患者)を病院に見舞ったとき、看護婦からそういう報
告を受けたことがある。

 こうした突発的な行動については、次のように説明されている。つまり脳からは常に相
反する二つの命令が出ている。行動命令と抑制命令である。たとえば手でものをつかむと
き、「つかめ」という行動命令と、「つかむな」という抑制命令が同時に出る。この二つの
命令がバランスよく調和して、人間はスムーズな動きをすることができる。しかし低血糖
になると、このうちの抑制命令のほうが阻害され、動きがカミソリでスパスパとものを切
るような動きになる。先のH君の場合は、こまかい作業をさせると、震えるというよりは、
手が勝手に小刻みに動いてしまい、それができなかった。また抑制命令が阻害されると、
感情のコントロールもできなくなり、一度激怒すると、際限なく怒りが増幅される。そし
て結果として、それがキレる状態になる。

●恐ろしいカルシウム不足

 砂糖のとり過ぎは、子どもの心と体に深刻な影響を与えるが、それだけではない。砂糖
をとり過ぎると、カルシウム不足を引き起こす。

糖分の摂取が、体内のカルシウムを奪い、虫歯の原因になることはよく知られている。体
内のブドウ糖は炭酸ガスと水に分解され、その炭酸ガスが、血液に酸性にする。その酸性
化した血液を中和しようと、骨の中のカルシウムが、溶け出るためと考えるとわかりやす
い。体内のカルシウムの98%は、骨に蓄積されている。そのカルシウムが不足すると、「(1)
脳の発育が不良になったり、(2)脳神経細胞の興奮性を亢進したり、(3)精神疲労をし
やすくまた回復が遅くなるなどの症状が現われる」(片瀬淡氏「カルシウムの医学」)とい
う。わかりやすく言えば、カルシウムが不足すると、知恵の発達が遅れ、興奮しやすく、
また精神疲労を起こしやすいというのだ。甘い食品を大量に摂取していると、このカルシ
ウム不足を引き起こす。

●生化学者ミラー博士らの実験

 精製されてない白砂糖を、日常的に多量に摂取すると、インスリンの分泌が、脳間伝達
物質であるセロトニンの分泌をうながし、それが子どもの異常行動を引き起こすという。
アメリカの生化学者のミラーは、次のように説召している。

 「脳内のセロトニンという(脳間伝達)ニューロンから脳細胞に情報を伝達するという、
神経中枢に重要な役割をはたしているが、セロトニンが多すぎると、逆に毒性をもつ」(「マ
ザーリング」81年7号)と。日本でも、自閉症や子どもの暴力、無気力などさまざまな
子どもによる問題行動が、食物と関係しているという研究がなされている。ちなみに、食
品に含まれている白砂糖の量は、次のようになっている。

製品名             一個分の量    糖分の量         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー        
 ヨーグルト    【森永乳業】     90ml  9・6g         
 伊達巻き       【紀文】     39g  11・8g         
 ミートボール   【石井食品】 1パック120g  9・0g         
 いちごジャム   【雪印食品】  大さじ30g  19・7g         
 オレンジエード【キリンビール】    250ml  9・2g         
 コカコーラ              250ml 24・1g         
 ショートケーキ    【市販】  一個100g  28・6g         
 アイス      【雪印乳業】  一個170ml  7・2g         
 オレンジムース  【カルピス】     38g   8・7g         
 プリン      【協同乳業】  一個100g  14・2g         
 グリコキャラメル【江崎グリコ】   4粒20g   8・1g         
 どら焼き       【市販】   一個70g  25g          
 クリームソーダ    【外食】  一杯      26g           
 ホットケーキ     【外食】  一個      27g          
 フルーツヨーグルト【協同乳業】    100g  10・9g         
 みかんの缶詰   【雪印食品】    118g  15・3g         
 お好み焼き   【永谷園食品】  一箱240g  15・0g         
 セルシーチョコ 【江崎グリコ】   3粒14g   5・5g         
 練りようかん     【市販】  一切れ56g  30・8g         
 チョコパフェ     【市販】  一杯      24・0g       

●砂糖は白い麻薬

 H君の母親はこう言った。「祖母(父親の実母)の趣味が、ジャムづくりで、毎週ビンに
入ったジャムを届けてくれます。うちでは、それを食べなければもったいないということ
で、パンや紅茶など、あらゆるものにつけて食べています」と。私はH君の食生活が、か
なりゆがんだものと知り、とりあえず「砂糖断ち」をするよう進言した。が、異変はその
直後から起きた。幼稚園から帰ったH君が、冷蔵庫を足げりにしながら、「ビスケットがほ
しい、ビスケットがほしい」と泣き叫んだというのだ。母親は「麻薬患者の禁断症状のよ
うで、恐ろしかった」と話してくれた。が、それから数日後。今度はH君が一転、無気力
状態になってしまったという。私がH君に会ったのは、ちょうど一週間後のことだったが、
H君はまるで別人のようになっていた。ボーッとして、反応がまるでなかった。母親はそ
ういうH君を横目で見ながら、「もう一度、ジャムを食べさせましょうか」と言ったが、私
はそれに反対した。

●カルシウムは紳士をつくる

 戦前までは、カルシウムは、精神安定剤として使われていた。こういう事実もあって、
イギリスでは、「カルシウムは紳士をつくる」と言われている。子どもの落ち着きなさをど
こかで感じたら、砂糖断ちをする一方、カルシウムやマグネシウムなど、ミネラル分の多
い食生活にこころがける。私の経験では、幼児の場合、それだけで、しかも一週間という
短期間で、ほとんどの子どもが見違えるほど落ち着くのがわかっている。川島四郎氏(桜
美林大学元教授)も、「ヒステリーやノイローゼ患者の場合、カルシウムを投与するだけで
なおる」(「マザーリング」81年7号)と述べている。効果がなくても、ダメもと。そう
でなくても、缶ジュース一本を子どもに買い与えて、「うちの子は小食で困ります」は、な
い。体重15キロ前後の子どもに、缶ジュースを一本与えるということは、体重60キロ
の人が、4本飲む量に等しい。おとなでも缶ジュースを4本は飲めないし、飲めば飲んだ
で、腹の中がガボガボになってしまう。

 なお問題となるのは、精製された白砂糖をいう。どうしても甘味料ということであれば、
精製されていない黒砂糖をすすめる。黒砂糖には、天然のミネラル分がほどよく配合され
ていて、ここでいう弊害はない。
 
●多動児(ADHD児)との違い

 この過剰行動性のある子どもと症状が似ている子どもに。多動児と呼ばれる子どもがい
る。前もって注意しなければならないのは、多動児(集中力欠如型多動性児、ADHD児)
の診断基準は、2001年の春、厚生労働省の研究班が国立精神神経センター上林靖子氏
ら委託して、そのひな型が作成されたばかりで、いまだこの日本では、多動児の診断基準
はないというのが正しい。つまり正確には、この日本には多動児という子どもは存在しな
いということになる。一般に多動児というときは、落ち着きなく動き回るという多動性の
ある子どもをいうことになる。そういう意味では、活発型の自閉症児なども多動児という
ことになるが、ここでは区別して考える。

 ちなみに厚生労働省がまとめた診断基準(親と教師向けの「子どもの行動チェックリス
ト」)は、次のようになっている。

(チェック項目)
1行動が幼い
2注意が続かない
3落ち着きがない
4混乱する
5考えにふける
6衝動的
7神経質
8体がひきつる
9成績が悪い
10不器用
11一点をみつめる

たいへんまたはよくあてはまる……2点、
ややまたは時々あてはまる……1点、
当てはまらない……0点として、
男子で4〜15歳児のばあい、
12点以上は障害があることを意味する「臨床域」、
9〜11点が「境界域」、
8点以下なら「正常」

この診断基準で一番気になるところは、「抑え」について触れられていない点である。多動
児が多動児なのは、抑え、つまり指導による制止がきかない点である。教師による抑えが
きけば、多動児は多動児でないということになる。一方、過剰行動児は行動が突発的に過
剰になるというだけで、抑えがきく。その抑えがきくという点で、多動児と区別される。
また活発型の自閉症児について言えば、多動性はあくまでも随伴的な症状であって、主症
状ではないという点で、この多動児とは区別される。またチェック項目の中の(1)行動
が幼い(退行性)は、過保護児、溺愛児にも共通して見られる症状であり、(7)神経質は、
敏感児、過敏児にも共通して見られる症状である。さらに(9)成績が悪い、および(1
0)不器用については、多動児の症状というよりは、それから派生する随伴症状であって、
多動児の症状とするには、常識的に考えてもおかしい。

ついでに私は私の経験から、次のような診断基準をつくってみた。

(チェック項目)
1抑えがきかない
2言動に秩序感がない
3他人に無遠慮、無頓着
4雑然とした騒々しさがある
5注意力が散漫
6行動が突発的で衝動的
7視線が定まらない
8情報の吸収性がない
9鋭いひらめきと愚鈍性の同居
10論理的な思考ができない 
11思考力が弱い

 このADHD児については、脳の機能障害説が有力で、そのために指導にも限界がある
……という前提で、それぞれの市町村レベルの教育委員会が対処している。たとえば静岡
県のK市では、指導補助員を配置して、ADHD児の指導に当っている。ただしこの場合
でも、あくまでも「現場教師を補助する」(K市)という名目で配置されている。

(3)環境ホルモンの分野からの考察

●シシリー宣言

1995年11月、イタリアのシシリー島のエリゼに集まった一八名の学者が、緊急宣言
を行った。これがシシリー宣言である。その内容は「衝撃的なもの」(グリーンピース・J
APAN)なものであった。

いわく、「これら(環境の中に日常的に存在する)化学物質による影響は、生殖系だけでは
なく、行動的、および身体的異常、さらには精神にも及ぶ。これは、知的能力および社会
的適応性の低下、環境の要求に対する反応性の障害となってあらわれる可能性がある」と。

つまり環境ホルモンが、人間の行動にまで影響を与えるというのだ。が、これで驚いて
いてはいけない。シシリー宣言は、さらにこう続ける。「環境ホルモンは、脳の発達を阻害
する。神経行動に異常を起こす。衝動的な暴力・自殺を引き起こす。奇妙な行動を引き起
こす。多動症を引き起こす。IQが低下する。人類は50年間の間に5ポイントIQが低
下した。人類の生殖能力と脳が侵されたら滅ぶしかない」と。ここでいう「社会性適応性
の低下」というのは、具体的には、「不登校やいじめ、校内暴力、非行、犯罪のことをさす」
(「シシリー宣言」・グリーンピース・JAPAN)のだそうだ。

 この事実を裏づけるかのように、マウスによる実験だが、ビスワエノールAのように、
環境ホルモンの中には、母親の胎盤、さらに胎児の脳関門という二重の防御を突破して、
胎児の脳に侵入するものもあるという。つまりこれらの環境ホルモンが、「脳そのものの発
達を損傷する」(船瀬俊介氏「環境ドラッグ」より)という。

(4)教育の分野からの考察

 前後が逆になったが、当然、教育の分野からも「キルる子ども」の考察がなされている。
しかしながら教育の分野では、キレる子どもの定義すらなされていない。なされないまま
キレる子どもの議論だけが先行している。ただその原因としては、(1)親の過剰期待、そ
してそれに呼応する子どもの過負担。(2)学歴社会、そしてそれに呼応する受験競争から
生まれる子ども側の過負担などが、考えられる。こうした過負担がストレッサーとなって、
子どもの心を圧迫する。ただこの段階で問題になるのが、子ども側の耐性である。最近の
子どもは、飽食とぜいたくの中で、この耐性を急速に喪失しつつあると言える。わずかな
負担だけで、それを過負担と感じ、そしてそれに耐えることがないまま、怒りを爆発させ
てしまう。親の期待にせよ、学歴社会にせよ、それは子どもを取り巻く環境の中では、あ
る程度は容認されるべきものであり、こうした環境を子どもの世界から完全に取り除くこ
とはできない。これらを整理すると、次のようになる。

(1)環境の問題
(2)子どもの耐性の問題。

 この二つについて、次に考える。

●環境の問題
●子どもの耐性の問題

終わりに……

以上のように、「キレる子ども」と言っても、その内容や原因はさまざまであり、その分野
に応じて考える必要がある。またこうした考察をしてのみ、キレる子どもの問題を正面か
らとらえることができる。一番危険なのは、キレる子どもを、ただばくぜんと、もっと言
えば感傷的にとらえ、それを論ずることである。こうした問題のとらえ方は、問題の本質
を見誤るばかりか、かえって教育現場を混乱させることになりかねない。

(はやし浩司 キレる子ども 過剰行動性 突発的に暴れる子供 暴れる子ども 心の別
室 抑圧)


Hiroshi Hayashi++++++++Dec. 09+++++++++はやし浩司








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【2】
●緩慢行動

+++++++++++++++++

愛知県にお住まいの、NSさんという
方より、子どもの緩慢行動についての
相談がありました。

それについて考えてみます。

+++++++++++++++++

【NSさんより、はやし浩司へ】

以前、息子の手洗い癖について相談させていただきました者です。その節は本当にお世話に
なりました。

あれから1年以上たちますが、お陰様で息子は問題なく、楽しく過ごせているようです。
今日は長女の事なのですが、何かアドバイスをいただけましたらと思いメールをさせていただ
きました。

小学2年生です。家ではまったくこのような状態ではないのですが、学校に行くと人よりテンポ
が少し遅くなるようで、何をやるのにも少し人とズレます。

行動を起こす時も、他の子より遅く始めたり、人の後から行動したりしています。その割に目立
つのは好きなのか、授業中も発言をよくするのは良いのですが、

時々、その話はもう終わったよというような内容の発言をすること事もあります。いつもではな
いのですが・・・。友達の輪にも入りにくいようで、先生にペアを組むように言われるとあぶれる
ことも多く、オロオロとしていることもあります。

そこそこ仲の良い子もいるようなのですが、その友達にとって、一番に仲が良いわけではない
ようで、遊びに誘おうと思って行動するときには、もう他の子と遊ばれていることが多いようで
す。一緒に混ぜてもらったら?と言うと、あの子たちとは仲良くないもんとか、あたしはあまり好
かれてないもんなどと言い、尻込みをします。

何か言われた事あるの?と言うとそうじゃないけど・・と曖昧な返事がかえってきます。友達が
なかなか出来にくい事を本人も気にしているようで時々私に相談してくる事もあるのですが、基
本的に連れて女の子達が行くトイレを嫌がったり、誘われても今行きたくないから・・・と断った
りしているようです。たまには付き合いだと思って行ってみたらと言うとそういう妥協はしたくな
いらしく曖昧な返事がかえってきます。

ただでさえテンポが遅く、人の中で浮きやすいのに、へんなところで真面目なので、何か悪い
事をしている人を見つけたり、本人が納得できない事があるとお構いなく、キツイ言い方をする
事がしばしばあるので、よけいに引かれてしまうようです。家ではお手伝いをしてくれたり、通信
教育の勉強をバリバリこなしたり、外で遊ぶ時も元気で、とてもやる気がないとか無気力なよう
には見受けられないのですが、学校では場合によってはやる気が見受けられないらしく、担任
の先生から注意を受けた事もあり、通信簿の生活面の評価はとてもひくいです。

最後までやりきるとか、皆で協力してやり遂げるなど全然できていないようです。勉強面での評
価はそこそこ良いのですが、生活面の評価はひどいです。昨年の評価は、お友だちの輪には
なかなか入り難いようですが、頑張りやで、一つのことを責任を持ってやりとげますと先生に言
われたのが、嘘のようです。

上手く説明をすることが出来なくすみません。息子の時と違って、はっきりここが変だというよう
な表現ができないものですから、ダラダラと長くなりすみません。何かアドバイスがありましたら
お願いいたします。

【はやし浩司より、NSさんへ】

全体に、マイナス思考である点が、気になります。
お子さんの悪い面ばかりを見ている。
気にしている。
悪い面ばかりに気がつき、それだけを問題にしている……?
私があなたのお嬢さん(小2)なら、あなたのそばにいるだけで、窮屈に感ずるかもしれませ
ん。

まずお嬢さんを信ずる。
つぎに学校の先生を信ずる。
もうひとつ、あなた自身を信ずる。
子ども不信型の子育て、つまり過干渉、過関心が日常化しているように感じます。
小学2年生というと、そろそろ親離れを始める時期です。
反抗もはげしくなってきます。
だいたい小学3年生前後で、親離れし、思春期前夜に入ると考えてください。

が、あなたのほうには、それがわかっていない。
あなたはまだ自分の子どもが、幼児のままと思っている。
仮にあなたがここに書いたとおりであるとしても、小学2年生では、もう手遅れです。
はっきり言って、直・り・ま・せ・ん。
つまり直そうと思わないこと。
あなたが直そうと思えば思うほど、逆効果。
お嬢さんは、自信をなくして、今の時期につづくつぎの思春期では、自我の同一性の確立さえ
おぼつかなくなります。
それこそこの先、「私は何だ?」と悩みつづけるでしょう。
あるいはスーッと非行の道に入ってしまうかもしれません。

今、そこにいるお嬢さんを認め、そのお嬢さんを信ずることです。
それともあなたは、いったい、自分の子どもが、どんな子どもになるのを、望んでいるのです
か?
もっと言えば、あなたはどうでしょうか?
あなたは自分の子どもの前で、胸を張って、「私はすばらしい人間」と言えるでしょうか。
社交性もあり、皆に親しまれ、リーダー格で、勉強もよくできる、と。

あなた自身、恵まれない家庭で、両親の愛情と理解を受けないで、さみしい思いをしたのでは
ありませんか。
それが現在の、あなたの子育ての基本になってしまっています。

お嬢さんの友だちの問題にまで、介入してはいけません。
家では、いろいろと仕事をしてくれるということですから、すばらしい子どもですよ。
学校では、緩慢行動が目立つということですが、そういうときは、逆にほめてみるのです。
あなたは1年生のときより、すばらしくなったわ、とです。
どのみち、あなたが説教したところで、直りません。
方法もありません。
(学校の先生に相談するのは構いませんが、学校の先生にしても、直す方法はありません。
あるとすれば、何かの機会をとらえて、みなの前でほめることです。
「今日のNさんは、すばらしかった!」とです。
が、それができるのは、学校の先生だけです。)

「ここがヘン」という言葉は、使ってはいけません。
今では、子どもは家族の「代表」という考え方をします。
子どもに何か問題があったら、それは、家族の問題と考えます。
はっきり言えば、あなた自身の問題ということです。
もっとはっきり言えば、あなたにだけ、そう見えるということです。
「子どもがヘン」と感じたら、「私の子育てがヘン」と思うことです。

これから思春期に入り、子どもは大きく変化していきます。
子ども自身の力で、変わっていきます。
そんな子どもを、頭から、ハンマーで叩くようなことはしてはいけません。

心配先行型、不安先行型の育児観を、改めてください。
そして「私の子どもはすばらしい子ども」と自分で自分に言って聞かせるのです。
あなた自身の心を作り変えるのです。
そのあと、問題は、自然に解決していきます。

ある男が医者の所に来て、こう言いました。
「ドクター、私は、指で足を押さえると、足が痛い。
腹を押さえると、腹が痛い。
頭を押さえると、頭が痛い。
私は、いったい、どこが悪いのでしょうか」と。

それに答えて、その医師は、こう言いました。

「あなたはどこも悪くありません。
あなたの手の指の骨が折れているだけです」と。

子どもというのは、親や教師が見方を変えるだけで、変わってしまいます。
「好意の返報性」という言葉もあります。
日本では、「魚心あれば、水心」と言いますね。
あなたが「心配だ」「心配だ」と思っていると、そのとおりの子どもになってしまいます。
だからこそ、まずあなたの心を作り変えるのです。
それともあなたは、あなたが経験したような、さみしい少女時代を、あなたのお嬢さんに繰り返
してほしいですか?

小学2年生ですよ!
私は幼児を指導していますが、小学2年生というと、完成された幼児です。
あと1、2年で、親離れしていきます。
親としてできることは、ほとんどないということです。

あきらめて、あるがままを受け入れなさい!
「あきらめは、悟りの境地」ですよ。
おおらかで、満ち足りた世界です。
あなたも一度、そういう世界に、入ってみるとよいですよ。
あなたのお嬢さんも、それで見違えるほど明るくなるはずです。

とは言っても、緩慢行動(神経症)について問題にしておられますので、このあと、いくつかの原
稿を添付しておきます。

メール、ありがとうございました。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●自己効力感(Self Achievement)

 「自分でできた」「自分でやった」という達成感が、子どもを伸ばす。これを自己効力感
という。

 子どもを伸ばすコツは、この自己効力感をうまく利用すること。

 反対に、この自己効力感を、阻害(じゃま)するようなことがあると、子どもは(1)
それに大きく反発するようになり、(2)ついで、心が極度の緊張状態におかれるようにな
ることが知られている。

 それを阻害するものに対して、反抗するようになる。

 が、それだけではない。子どもは、ますます、そのものに固執するようになる。こんな
ことがある。

 A君(小4)は、サッカークラブで、やっとレギュラー選手になることができた。A君
はA君なりに、努力をした。

 が、小5になるとき、母親は、A君を、進学塾へ入れた。そしてそれまで週3回だった
サッカーの練習を、週2回に減らすように言った。当然、そうなると、A君は、レギュラ
ー選手からはずされる。

 A君は、猛烈にそれに反発した。が、やがてその反発は、母親への反抗となって現れた。
すさんだ目つき、母親への突発的な暴力行為など。

 もうそうなると、進学塾どころではなくなってしまう。あわてた母親は、進学塾をやめ、
再び、サッカークラブにA君をもどした。が、今度は、A君は、そのサッカーにすら、興
味を示さなくなってしまった。母親はこう言う。

 「あれほど、毎晩、サッカーをさせろと暴れていたのに、サッカークラブへ再び入った
とたん、サッカーへの興味をなくすなんて……」と。

 子どもの心理というのは、そういうもの。A君の母親は、それを知らなかっただけであ
る。A君が母親に反抗したのは、サッカーをしたいからではなかった。自分の自己効力感
(達成感)を、阻害されたからである。そのことに対して、A君は、反抗したのである。

 少し話がちがうかもしれないが、こんな例もある。

 若い男女が、恋愛をした。しかし周囲のものが、猛反対。そこでその男女は、お決まり
の駆けおち。そして子どもをもうけた。

 やがて周囲のものが、あきらめ、それを受け入れた。とたん、たがいの恋愛感情が消え
てしまった。

 この例でも、若い男女が駆けおちしたのは、それだけたがいの恋愛感情が強かったから
ではない。周囲のものに反対されることによって、より結婚に固執したからである。だか
ら、結婚を認められたとたん、恋愛感情が消えてしまった。

【教訓】

 子どもの得意芸、生きがいは、聖域と考えて、決して、土足で踏み荒らすようなことは
してはいけない。へたに阻害したりすると、かえって子どもは、それに固執するようにな
る。最悪のばあいには、親子関係も、それで破壊される。
(はやし浩司 自己効力感 自己達成感 一芸論)


●高度な欲求不満

 欲求不満といっても、決して一様ではない。心理学の世界には、欲求不満段階説(マズ
ローほか)さえある。このことは、子どもの発達過程を観察していると、わかる。

【原始的欲求不満】

 愛情飢餓、愛情不足など。飢餓感や不足感が、欲求不満につながる。この欲求不満感が、
子どもの心をゆがめる。よく知られているのは、赤ちゃんがえり。下の子どもが生まれた
ことなどにより、飢餓感をもち、それが上の子どもの心をゆがめる。

 生命におよぶ危機感、安心感の欠如から生まれる欲求不満も、これに含まれる。

【人間的欲求不満】

 人に認められたい、人より優位に立ちたい、目立ちたいという欲求が、満たされないと
き、それがそのまま欲求不満へとつながる。「自尊の欲求」(マズロー)ともいう。この人
間的欲求は、自分がよりすぐれた人間であろうとする欲求であると同時に、それ自体が、
社会全体を、前向きに引っ張っていく原動力になることがある。

 が、子どもの世界では、こうした人間的欲求は、変質しやすい。

 ある子ども(中2男子)は、私にある日、こう言った。「ぼくは、スーパーマンになれる
なら、30歳で死んでもいい。世の中の悪人をすべて退治してから死ぬ」と。

 こうした人間的欲求は、幼児にも見られる。みなの前でその子どもをほめたりすると、
その子どもは、さも誇らしそうな顔をして、母親のほうを見たりする。

 子どもの中に、そうした人間的欲求を感じたら、静かにそれをはぐくむようにする。こ
れは子育ての大鉄則の一つと考えてよい。

(はやし浩司 マズロー 自尊欲求 自尊の欲求 人間的欲求 はやし浩司 家庭教育
 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 Hiroshi Hayashi 
education essayist writer Japanese essayist 自己効力感 欲求不満 子供を伸ばす 伸
ばし方 子供の伸ばし方)


Hiroshi Hayashi++++++++jun.08++++++++++はやし浩司

●幼児の緩慢行動(Dull Movement of Children)

 心理的抑圧状態(欲求不満を含む)が、日常的につづくと、子どもはさまざまな、心身
症による症状を示すことがある。が、その症状は、子どもによって、千差万別。定型がな
い。

 「どうもうちの子、おかしい?」と感じたら、その心身症を疑ってみる。

 その中のいくつかが、緩慢行動(動作)であったり、吃音(どもり)であったりする。
神奈川県に住む、Uさん(母親)から、多分、緩慢行動ではないか(?)と思われる相談
をもらった。

 ここでは、それについて、考えてみたい。

+++++++++++++++++++++

【Uさんより、はやし浩司へ】

私には、4歳(年少)の娘、M子(姉)と、1歳8ヶ月の息子S夫(弟)がいます。
先日、娘の幼稚園の個人懇談がありました。

そこで、先生に言われたのが

「M子(姉)ちゃんはいつもマイペースで、マイペースすぎてもうちょっとスピードアッ
プして欲しいんですけどね」でした。

「急がないと行けない時にもマイペースでね、今(年少)はあまりする事も少なくて、他
の子と差は出てこないと思いますけど、これから先、年中、年長となるにつれてその差は
広がっていきますからね」

「急がないといけない時に、急げるようなボタンがあればいいんですけどねー(笑)。そこ
を押せば、急いでくれるっていう風に・・・・(笑)」と冗談まじりではあったのですが、
最後に夏休み中にお母さんから、M子ちゃんに急ぐって事を教えてあげておいてください
と言われました。

「急ぐという事を教えるといわれても・・・・先生どうしたらいいんでしょう?」って聞
いたのですが、イマイチよく分かる回答がなかったような気がします。

怒って「急いで!急いで!急いで!」とまくし立てるのも良くないと思いますし、言った
所で出来るわけでもないですし。

普段、出来るだけ怒らないように大声をあげないように、出来たら大げさに誉めてあげて、
を心がけているのですが今の私のやり方では、夏休みあけても同じだろうし・・・・どう
したらいいのだろう?、と考えこんでしまいます。

何がどうマイペースか具体的に言うと、給食の時間になって先生が、「後に給食の袋を取り
にいって準備して下さい」って言っても、上の方を見てボーッと椅子に座っていることが
時々あって、「M子ちゃん、準備よー急いでー!」って言っても、とりわけ急ぐ様子もなく
ゆっくりらしいです。

又、今メロディオンの練習をしているようなのですが、M子(姉)は指でドレミファソを
弾く事は出来るみたいなのですが、ホースを口にあてて息を吹く事が分からなかったみた
いで、一人だけ音が出なかったみたいです。

先生が側で、「M子ちゃん吹くんですよー」って言っても分からなくて、挙句の果てには、
ホースに口をあててホースに向かって、ドレミファソを言いながら、けん盤を弾いていた
ようです。

先生も??、だったみたいで、「違うよM子ちゃん! 吹くのよ!!」って言うと今度は、
何でそんなに先生は私に怒ってるの?、っていう反応だったようです。

あと、空想にふけっていたりするみたいです。

他にも日々の行動で色々あるようです。

M子(姉)は私に似ているのか、よく言えばおっとりで悪く言えば、どこかのろい所があ
って入園の際、私もそれが少し気にはなっていました。

のびのび保育の幼稚園を選べば、そんな事を考えなくて良かったのかもしれませんが、私
的には、小学校でお勉強を始めるより、幼稚園で少しでも触れていれば気遅れなく、M子
(姉)もやっていけるのではと考えたのですが、やはりその分要求される事も多いんです
ね・・・。

今は、本人は幼稚園が大好きでお歌の時間もプリントの時間も体操の時間も楽しいとは話
しています。

楽しく通ってくれれば、私はそれで大満足なのですが年中、年長になった時、まわりの早
さについて行けなくなって幼稚園が楽しくなくなったら、やはり園を変えた方がいいんで
しょうか?

また、もっとスピードアップさせるにはどうしたらいいのでしょうか?

また、M子(姉)には、時々どもりがあります。ほとんど指摘しないように聞きながして
いるのですが、ちょっと気になっています。

はっきりとした原因は分かりませんが、下の子を出産する際引き裂かれるように、私と離
れ離れになってしまって、10日間ほど離れて暮らしていたのが悪かったのかな?、と反省
しています。

長々と下手な文章で好きな事を綴ってしまいましたが、アドバイス頂けますようお願い申
し上げます。

これからもまぐまぐプレミアをずっと購読していこと思っています。毎日暑いですが、ど
うぞお体にお気をつけ下さい。


【はやし浩司より、Uさんへ】

 まぐまぐプレミアのご購読、ありがとうございます。感謝しています。

 ご相談の件ですが、最初に疑ってみるべきは、緩慢行動(動作)です。原因の多くは、
親の過干渉、過関心です。子どもの側から見て、過負担。それが重なって、子どもは、気
うつ症的な症状を見せるようになり、緩慢行動を引き起こします。

 ほかに日常的な欲求不満が、脳の活動に変調をきたすことがあります。私は、下の子ど
もが生まれたことによる、赤ちゃんがえり(欲求不満)の変形したものではないかと思っ
ています。

 逆算すると、M子さんが、2歳4か月のときに、下のS夫君が生まれたことになります。
年齢的には、赤ちゃんがえりが起きても、まったく、おかしくない時期です。とくに「下
の子を出産する際引き裂かれるように、私と離れ離れになってしまって、10日間ほど離
れて暮らしていたのが悪かったのかな?」と書いているところが気になります。

 たった数日で、別人のようにおかしくなってしまう子どもすらいます。たった一度、母
親に強く叱られたことが原因で、自閉傾向(一人二役のひとり言)を示すようになってし
まった子ども(2歳・女児)もいます。決して、安易に考えてはいけません。

 で、その緩慢行動ですが、4歳児でも、ときどき見られます。症状の軽重もありますが、
10〜20人に1人くらいには、その傾向がみられます。どこか動作がノロノロし、緊急
な場面で、とっさの行動ができないのが、特徴です。

 こうした症状が見られたら、(1)まず家庭環境を猛省する、です。

 幸いなことに、Uさんの子育てには、問題はないように思います。そこで一般の赤ちゃ
んがえりの症状に準じて、濃密な愛情表現を、もう一度、M子さんにしてみてください。

 手つなぎ、抱っこ、添い寝、いっしょの入浴など。少し下のS夫君には、がまんしても
らいます。

 つぎに(2)こうした症状で重要なことは、「今の症状を、今以上に悪化させないことだ
けを考えながら、半年単位で様子をみる」です。

 あせってなおそう(?)とすればするほど、逆効果で、かえって深みにはまってしまい
ます。子どもの心というのは、そういうものです。

 とくに気をつけなければいけないのは、子どもに対する否定的育児姿勢が、子どもの自
信をうばってしまうことです。何がなんだかわけがわからないまま、いつも、「遅い」「早
く」と叱れていると、子どもは、自分の行動に自信がもてなくなってしまいます。

 自信喪失から、自己否定。さらには役割混乱を起こす子どももいます。そうなると、子
どもの心はいつも緊張状態におかれ、情緒も、きわめて不安定になります。そのまま無気
力になっていく子どももいます。

 「私はダメ人間だ」という、レッテルを、自ら張るようになってしまいます。もしそう
なれば、それこそ、教育の大失敗というものです。

 そこで(3)子どもの自己意識が育つのを静かに見守りながら、前向きの暗示をかけて
いきます。

 「遅い」ではなく、「あら、あなた、この前より早くなったわね」「じょうずにできるよ
うになったわね」と。最初は、ウソでよいですから、それだけを繰りかえします。

 「先生もほめていたよ」「お母さん、うれしいわよ」と言うのも、よいでしょう。

 ここでいう「自己意識」というのは、自分で自分を客観的にみつめ、自分の置かれた立
場を、第三者の目で判断する意識というふうに考えてください。

 しかし4歳児では、無理です。こうした意識が育ってくるのは、小学2、3年生以後。
ですから、それまでに、今以上に、症状をこじらせないことだけを考えてください。

 とても残念なことですが、幼稚園の先生は、せっかちですね。その子どものリズムに合
わせて、子どもをみるという、保育者に一番大切な教育姿勢をもっていないような気がし
ます。

 おまけに、「年長になったら……」と、親をおどしている? ある一定の理想的(?)な
子ども像を頭の中に描き、それにあわせて子どもをつくるという、教育観をもっているよ
うです。旧来型の保育者が、そういうものの考え方を、よくします。(今は、もうそういう
時代ではないのですが……。)

 M子さんに、ほかに心身症による症状(「はやし浩司 神経症」で、グーグルで検索して
みてください。ヒットするはずです。
あるいは、http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/page080.html)が出てくれば、この時期
は、がまんしてその幼稚園にいる必要は、まったくありません。

 子どもの心に与える重大性を考えるなら、転園も、解決策の一つとして、考えてくださ
い。

 そして(4)「うちの子を守るのは、私しかいない」と、あなたが子どもの盾(たて)に
なります。先生から苦情があれば、「すみません」と一応は謙虚に出ながらも、子どもに向
かっては、「あなたはよくがんばっているのよ」「すばらしい子なのよ」と言います。そう
いう形で子どもの心を守ります。

 まちがっても、そこらの保育者(失礼!)がもっている理想像(?)に合わせた子ども
づくりを、してはいけません。

 子育てもいつか終わりになるときがやってきます。そういうとき、あなたの子育ての思
い出を、光り輝かせるものは、「私は、子どもを守りきった」「私は、子どもを信じきった」
という、親としての達成感です。

 今が、そのときです。その第一歩です。

 最後に(5)M子さんに合わせた、行動形態にすることです。「のろい」と感ずるなら、
あなたも、もう一歩、自分の歩く早さを、のろくすればよいのです。どこかに子育てリズ
ム論を書いておきましたので、また参考にしてください。

 とても幸いなことに、Uさんは、たいへん愛情豊かな方だと思います。それに自分の子
育てを客観的にみつめておられる。とてもすばらしいことです。(プラス、私のマガジンを
読んでいる!)

 子どもといっしょに、子どもの友として、子どもの横を歩いてみてください。楽しいで
すよ。セカセカと歩いていたときには気づかなかったものが、たくさん見えてきますよ。

 そうそう、最後に一言。

 こうした緩慢行動(動作)は、子どもの自己意識が育ってくると、自然に消えていくも
のです。子どもが自分で判断して、自分で行動をコントロールするようになるからです。
どうか、安心してください。

 私の経験でも、乳幼児期の緩慢行動(動作)が、そのまま、小学5、6年生まで残った
というケースを知りません。小学3、4年生ごろには消えます。(ただしこじらせると、回
復が遅れますが、そのときは、もっと別の、ある意味で深刻な、心身症、神経症による症
状が出てきます。

 また親は「のろい」「のろい」と心配しますが、第三者から見ると、そうでないというケ
ースも、たいへん多いです。これは親子のリズムがあっていないだけと考えます。)

 吃音(どもり)については、ここ1〜3年は、症状が残るかもしれません。環境が大き
く変わっても、クセとして定着することもあるからです。吃音については、あきらめて、
濃密な愛情をそそいであげてください。これも時期がくれば、症状は消えます。

 どんな子どもでも、一つや二つ、三つや四つ、そうした問題をかかえています。全体と
してみれば、マイナーな、何でもない問題です。

 あまり深刻にならず、ここは、おおらかに! なお先取り教育は、失敗しますので、注
意してください。それについては、またマガジンのほうで取りあげてみます。

 なおこの原稿は、(いただいたメールの転載も含めて)、8月13日号で掲載する予定で
す。どうか転載のご承諾をお願いします。不都合な点があれば、書き改めます。至急、お
知らせください。

 まぐまぐプレミアのご購読、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

                                  はやし浩司

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
Hiroshi Hayashi education essayist writer Japanese essayist 子供の緩慢行動 緩慢動作 
のろい子供 のろい動作 のろい子ども


Hiroshi Hayashi++++++++Dec. 09+++++++++はやし浩司







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【3】
特集【介護と子どもの意識】

●介護と子どもの意識

+++++++++++++++++

介護問題に隠れて、表に出てこないが、
その裏には、子どもたちの意識の変化
がある。
現在、ほとんどの子どもたちは、「経済的に
余裕があれば、親のめんどうをみる」と
考えている(日本)。
しかし経済的に余裕のある人は、いない。
みな、それぞれが精いっぱいの生活を
している。

つまりこの調査結果を裏から読むと、
「めんどうはみない」となる。
が、ことはさらに深刻である。

(めんどう)どころか、(老人への虐待)が、
深刻化している。

10年ほど前に書いた原稿をさがしてみる。
(10年前ですら、そうだったということを
わかってほしいから。)

++++++++++++++++++

●ジジ・ババ受難の時代

++++++++++++++

年々、ジジ・ババへの風当たりが
強くなってきている(?)。

これから先、私たち高齢者予備軍は、
どのように社会とかかわりあって
いったらよいのか。

++++++++++++++

 私は感じている。ひょっとしたら、あなたも感じている。このところ、年を追うごとに、ジジ・ババ
への風当たりが強くなってきている。

 若者たちが書くBLOGにしても、「ジジイ」とか「ババア」という言葉を使って、年配者をののし
る表現が、最近、目につくようになってきた。ある交通事故の相談を専門に受けつけるBLOG
には、こんな書きこみすらあった。

 「先日、枯れ葉マークのジジイの車に追突された。おかげで、こちらは2週間も入院。そのジ
ジイが、2、3日ごとに見舞いにくるから、たまらねえ。あんなジジイに、何度も見舞いに来られ
て、うるさくてしかたねえ。こっちは、迷惑している」と。

 その若者は、バイクに乗っているところを、車で追突されたらしい。

 つまりこのところ、老齢者が、ますます、「粗大ゴミ」になってきた。そんな感じがする。老人医
療費用、介護費用の増大が、若者の目にも、それが「負担」とわかるようになってきた。加え
て、日本では、世代間における価値観の相違が、ますます顕著になってきた。若者たちは、程
度の差こそあれ、上の世代の犠牲になっているという意識をもっている。

 これに対して、たとえば私たち団塊の世代は、こう反論する。「現在の日本の繁栄を築きあげ
たのは、私たちの世代だ」と。

 しかしこれは、ウソ。団塊の世代の私が、そう言うのだから、まちがいない。

 たしかに結果的には、そうなった。つまりこうした論理は、結果論を正当化するための、身勝
手な論理にすぎない。私も含めて、だれが、「日本のため……」などと思って、がんばってきた
だろうか。私たちは私たちで、今までの時代を、「自分のために」、がんばってきた。結果として
日本は繁栄したが、それはあくまでも結果論。

 そういう私たちを、若い世代は、鋭く見抜いている。

 しかしこれは深刻な問題でもある。

 これから先、高齢者はもっとふえる。やがてすぐ、人口の3分の1以上が、満65歳以上にな
るとも言われている。そうなったとき、若者たちは、私たち老齢者を、どういう目で見るだろう
か。そのヒントが、先のBLOGに隠されているように思う。

 ジジ・ババは、ゴミ。
 ジジ・ババは、臭い。
 ジジ・ババは、ムダな人間、と。

 そういう意識を若者たちが共通してもつようになったら、私たち高齢者にとって、この日本は、
たいへん住みにくい国ということになる。そのうち老人虐待や老人虐殺が、日常的に起こるよう
になるかもしれない。

 では、どうすればよいのか。

 ……というより、高齢者のめんどうを、第一にみなければならないのは、実の子どもということ
になる。が、その子どもが成人になるころには、たいていの親子関係は、破壊されている。親
たちは気がついていないが、「そら、受験だ」「そら、成績だ」「そら、順位だ」などと言っているう
ちに、そうなる。

 中学生になる前に、ゾッとするほど、心が冷たくなってしまう子どもとなると、ゴマンといる。反
対に、できが悪く(?)、受験とは無縁の世界で育った子どもほど、心が暖かく、親思いになる。
ウソだと思うなら、あなたの周囲を見回してみればよい。あるいはあなた自身のことを考えてみ
ればよい。

 「親のめんどうなどみない」と宣言している若者もいる。「親の恩も遺産次第」と考えている若
者は、もっと多い。たいはんの若者は、「経済的に余裕があれば、親のめんどうをみる」と答え
ている。つまり「余裕がなければ、みない」※と。数年置きに、総理府が調査しているので、そ
のうち、これについての全国的な調査結果も出てくると思うが、これが現状と考えてよい。

 私はこのところ、近くの老人ケア・センターへ行く機会がふえた。そこでは、30〜40人の老
人を相手に、4、5人の若い男女が、忙しそうにあれこれと世話をしている。見た目には、のど
かで、のんびりとした世界だが、こんな世界も、いつまでつづくかわからない。

 すでに各自治体では、予算不足のため、老人介護のハードルをあげ始めている。補助金を
削減し始めている。10年後には、もっと、きびしくなる。20年後には、さらにきびしくなる。単純
に計算しても、今は30〜40人だが、それが90〜120人になる。

 そうなったとき、そのときの若者たちは、私たち高齢者を、どのような目で見るだろうか。また
どのように考えるだろうか。

 老齢になるまま、その老齢に負け、老人になってはいけない。ケア・センターでは、老人たち
が、幼稚園の年長児でもしないような簡単なゲームをしたり、手細工をしたりしている。ああい
うのを見ていると、「本当に、これでいいのか」と思う。

 高齢者は、人生の大先輩なはず。人生経験者のはず。そういう人たちが、手をたたいて、カ
ラオケで童謡を歌っている! つまりこれでは、「粗大ゴミ」と呼ばれても、文句は言えない。ま
た、そうであっては、いけない。

 わかりやすく言えば、高齢者は、高齢者としての(存在感)をつくらねばならない。社会とかか
わりをもちながら、その中で、役に立つ高齢者でなければならない。そういうかかわりあいとい
うか、若者たちとの(かみあい)ができたとき、私たち高齢者は、それなりにの(人間)として認
められるようになる。

 「私たちが、この日本を繁栄させたのだ」とか、「だれのおかげで、日本がここまで繁栄できた
か、それがわかっているか」とか、そういう高慢な気持ちは、さらさらもっていはいけない。

 私たち高齢者(実際には、高齢者予備軍)は、どこまでも、謙虚に! 姿勢を低くして、若者
や社会に対して、自分たちの人生を、還元していく。その努力を今から、怠ってはいけない。

++++++++++++++++

古い原稿を再掲載します。

++++++++++++++++

●本末転倒の世界

 「老人のような役立たずは、はやく死んでしまえばいい」と言った、高校生がいた。そこで私
が、「君だって、老人になるんだよ」と言うと、「ぼくは、人に迷惑をかけない。それにそれまでに
うんと、お金を稼いでおくからいい」と。

そこでさらに私が、「君は、親のめんどうをみないのか」と聞くと、こう言った。「それだけのお金
を残してくれるなら、めんどうをみる」と。親の恩も遺産次第というわけだが、今、こういう若者
がふえている。

 97年、総理府が成人式を迎えた青年を対象に、こんな意識調査をした。「親の老後のめん
どうを、あなたはみるか」と。

それに対して、「どんなことをしてでも、みる」と答えた若者は、たったの19%! この数字がい
かに低いかは、たとえばアメリカ人の若者の、60数%。さらに東南アジアの若者たちの、80
〜90%という数字と比較してみるとわかる。しかもこの数字は、その3年前(94年)の数字よ
り、4ポイントもさがっている。このことからもわかるように、若者たちのドラ息子化は、ますます
進行している。

 一方、日本では少子化の波を受けて、親たちはますます子どもに手をかけるようになった。
金もかける。今、東京などの都会へ大学生を一人、出すと、毎月の仕送り額だけでも、平均2
7万円。この額は、平均的サラリーマンの年収(1005万円)の、3割強。

だからどこの家でも、子どもが大学へ行くようになると、母親はパートに出て働く。それこそ爪に
灯をともすような生活を強いられる。が、肝心の大学生は、大学生とは名ばかり。大学という巨
大な遊園地で、遊びまくっている! 先日も京都に住む自分の息子の生活を、見て驚いた母
親がいた。春先だったというが、一日中、電気ストーブはつけっぱなし。毎月の電話代だけで
も、数万円も使っていたという。

 もちろん子どもたちにも言い分は、ある。「幼児のときから、勉強、勉強と言われてきた。何を
いまさら」ということになる。「親のために、大学へ行ってやる」と豪語する子どもすらいる。今、
行きたい大学で、したい勉強のできる高校生は、10%もいないのではないか。

大半の高校生は、「行ける大学」の「行ける学部」という視点で、大学を選ぶ。あるいはブランド
だけで、大学を選ぶ。だからますます遊ぶ。年に数日、講義に出ただけで卒業できたという学
生もいる(新聞の投書)。

 こういう話を、幼児をもつ親たちに懇談会の席でしたら、ある母親はこう言った。「先生、私た
ち夫婦が、そのドラ息子ドラ娘なんです。どうしたらよいでしょうか」と。

私の話は、すでに一世代前の話、というわけである。私があきれていると、その母親は、さらに
こう言った。「今でも、毎月実家から、生活費の援助を受けています。子どものおけいこ塾の費
用だけでも、月に4万円もかかります」と。しかし……。今、こういう親を、誰が笑うことができる
だろうか。

(親から大学生への支出額は、平均で年、319万円。月平均になおすと、約26・6万円。毎月
の仕送り額が、平均約12万円。そのうち生活費が6万5000円。大学生をかかえる親の平均
年収は1005万円。自宅外通学のばあい、親の27%が借金をし、平均借金額は、182万
円。99年、東京地区私立大学教職員組合連合調査。)

+++++++++++++++

つづいて03年(7年前)に書いた
原稿を添付します。

+++++++++++++++

●高齢者への虐待

+++++++++++++

やはり高齢者への虐待が
ふえているという。

これはこれからの世界を
生きる私たちにとっては、
深刻な問題である。

+++++++++++++

 医療経済研究機構が、厚生省の委託を受けて調査したところ、全国1万6800か所の介護
サービス、病院で、1991事例もの、『高齢者虐待』の実態が、明るみになったという(03年11
月〜04年1月期)。

 わかりやすく言えば、氷山の一角とはいえ、10か所の施設につき、約1例の老人虐待があっ
たということになる。

 この調査によると、虐待された高齢者の平均年齢は、81・6歳。うち76%は、女性。

 虐待する加害者は、息子で、32%。息子の配偶者が、21%。娘、16%とつづく。夫が虐待
するケースもある(12%)。

 息子が虐待する背景には、息子の未婚化、リストラなどによる経済的負担があるという。

 これもわかりやすく言えば、息子が、実の母親を虐待するケースが、突出して多いということ
になる。

 で、その虐待にも、いろいろある。

殴る蹴るなどの、身体的虐待
ののしる、無視するなどの、心理的虐待
食事を与えない、介護や世話をしないなどの、放棄、放任
財産を勝手に使うなどの、経済的虐待など。

 何ともすさまじい親子関係が思い浮かんでくるが、決して、他人ごとではない。こうした虐待
は、これから先、ふえることはあっても、減ることは決してない。最近の若者のうち、「将来親の
めんどうをみる」と考えている人は、5人に1人もいない(総理府、内閣府の調査)。

 しかし考えてみれば、おかしなことではないか。今の若者たちほど、恵まれた環境の中で育っ
ている世代はいない。飽食とぜいたく、まさにそれらをほしいがままにしている。本来なら、親に
感謝して、何らおかしくない世代である。

 が、どこかでその歯車が、狂う。狂って、それがやがて高齢者虐待へと進む。

 私は、その原因の一つとして、子どもの受験競争をあげる。

 話はぐんと生々しくなるが、親は子どもに向かって、「勉強しなさい」「成績はどうだったの」「こ
んなことでは、A高校にはいれないでしょう」と叱る。

 しかしその言葉は、まさに「虐待」以外の何ものでもない。言葉の虐待である。

 親は、子どものためと思ってそう言う。(本当は、自分の不安や心配を解消するためにそう言
うのだが……。)子どもの側で考えてみれば、それがわかる。

 子どもは、学校で苦しんで家へ帰ってくる。しかしその家は、決して安住と、やすらぎの場では
ない。心もいやされない。むしろ、家にいると、不安や心配が、増幅される。これはもう、立派な
虐待と考えてよい。

 しかし親には、その自覚がない。ここにも書いたように、「子どものため」という確信をいだい
ている。それはもう、狂信的とさえ言ってもよい。子どもの心は、その受験期をさかいに、急速
に親から離れていく。しかも決定的と言えるほどまでに、離れていく。

 その結果だが……。

 あなたの身のまわりを、ゆっくりと見回してみてほしい。あなたの周辺には、心の暖かい人も
いれば、そうでない人もいる。概してみれば、子どものころ、受験競争と無縁でいた人ほど、
今、心の暖かい人であることを、あなたは知るはず。

 一方、ガリガリの受験勉強に追われた人ほど、そうでないことを知るはず。

 私も、一時期、約20年に渡って、幼稚園の年中児から大学受験をめざした高校3年生まで、
連続して教えたことがある。そういう子どもたちを通してみたとき、子どもの心がその受験期に
またがって、大きく変化するのを、まさに肌で感じることができた。

 この時期、つまり受験期を迎えると、子どもの心は急速に変化する。ものの考え方が、ドライ
で、合理的になる。はっきり言えば、冷たくなる。まさに「親の恩も、遺産次第」というような考え
方を、平気でするようになる。

 こうした受験競争がすべての原因だとは思わないが、しかし無縁であるとは、もっと言えな
い。つまり高齢者虐待の原因として、じゅうぶん考えてよい原因の一つと考えてよい。

 さて、みなさんは、どうか。それでも、あなたは子どもに向かって、「勉強しなさい」と言うだろう
か。……言うことができるだろうか。あなた自身の老後も念頭に置きながら、もう少し長い目
で、あなたの子育てをみてみてほしい。
(はやし浩司 老人虐待 高齢者虐待)

++++++++++++++++++++++

少し古い原稿ですが、以前、中日新聞に
こんな原稿を載せてもらったことがあり
ます。

++++++++++++++++++++++

●抑圧は悪魔を生む

 イギリスの諺(ことわざ)に、『抑圧は悪魔を生む』というのがある。

心の抑圧状態が続くと、ものの考え方が悪魔的になることを言ったものだが、この諺ほど、子
どもの心にあてはまる諺はない。きびしい勉強の強要など、子どもの能力をこえた過負担が続
くと、子どものものの考え方は、まさに悪魔的になる。こんな子ども(小4男児)がいた。

 その子どもは静かで、穏やかな子どもだった。人の目をたいへん気にする子どもで、いつも
他人の顔色をうかがっているようなところは、あるにはあった。しかしそれを除けば、ごくふつう
の子どもだった。が、ある日私はその子どものノートを見て、びっくりした。

何とそこには、血が飛び散ってもがき苦しむ人間の姿が、いっぱい描かれていた! 「命」と
か、「殺」とかいう文字もあった。しかも描かれた顔はどれも、口が大きく裂け、そこからは血が
タラタラと流れていた。ほかに首のない死体や爆弾など。原因は父親だった。

神経質な人で、毎日、2時間以上の学習を、その子どもに義務づけていた。そしてその日のノ
ルマになっているワークブックがしていないと、夜中でもその子どもをベッドの中から引きずり
出して、それをさせていた。

 神戸で起きた「淳君殺害事件」は、まだ記憶に新しいが、しかしそれを思わせるような残虐事
件は、現場ではいくらでもある。

その直後のことだが、浜松市内のある小学校で、こんな事件があった。一人の子ども(小二男
児)が、飼っていたウサギを、すべり台の上から落として殺してしまったというのだ。

この事件は時期が時期だけに、先生たちの間ではもちろんのこと、親たちの間でも大きな問題
になった。ほかに先生の湯飲み茶碗に、スプレーの殺虫剤を入れた子ども(中学生)もいた。
牛乳ビンに虫を入れ、それを投げつけて遊んでいた子ども(中学生)もいた。ネコやウサギをお
もしろ半分に殺す子どもとなると、いくらでもいる。ほかに、つかまえた虫の頭をもぎとって遊ん
でいた子ども(幼児)や、飼っていたハトに花火をつけて、殺してしまった子ども(小3男児)もい
た。

 親のきびしい過負担や過干渉が日常的に続くと、子どもは自分で考えるという力をなくし、い
わゆる常識はずれの子どもになりやすい。異常な自尊心や嫉妬心をもつこともある。

そういう症状の子どもが皆、過負担や過干渉でそうなったとは言えない。しかし過負担や過干
渉が原因でないとは、もっと言えない。子どもは自分の中にたまった欲求不満を何らかの形で
発散させようとする。いじめや家庭内暴力の原因も、結局は、これによって説明できる。

一般論として、はげしい受験勉強を通り抜けた子どもほど心が冷たくなることは、よく知られて
いる。合理的で打算的になる。

ウソだと思うなら、あなたの周囲を見回してみればよい。あなたの周囲には、心が温かい人も
いれば、そうでない人もいる。しかし学歴とは無縁の世界に生きている人ほど、心が温かいと
いうことを、あなたは知っている。子どもに「勉強しろ」と怒鳴りつけるのはしかたないとしても、
それから生ずる抑圧感が一方で、子どもの心をゆがめる。それを忘れてはならない。

【追記】

 受験競争は、たしかに子どもの心を破壊する。それは事実だが、破壊された子ども、あるい
はそのままおとなになった(おとな)が、それに気づくことは、まず、ない。

 この問題は、脳のCPU(中央演算装置)にからむ問題だからである。

 が、本当の問題は、実は、受験競争にあるのではない。本当の問題は、「では、なぜ、親たち
は、子どもの受験競争に狂奔するか」にある。

 なぜか? 理由など、もう改めて言うまでもない。

 日本は、明治以後、日本独特の学歴社会をつくりあげた。学歴のある人は、とことん得をし、
そうでない人は、とことん損をした。こうした不公平を、親たちは、自分たちの日常生活を通し
て、いやというほど、思い知らされている。だから親たちは、こう言う。

 「何だ、かんだと言ってもですねえ……(学歴は、必要です)」と。

 つまり子どもの受験競争に狂奔する親とて、その犠牲者にすぎない。

 しかし、こんな愚劣な社会は、もう私たちの世代で、終わりにしよう。意識を変え、制度を変
え、そして子どもたちを包む社会を変えよう。

 決してむずかしいことではない。おかしいものは、おかしいと思う。おかしいことは、「おかし
い」と言う。そういう日常的な常識で、ものを考え、行動していけばよい。それで日本は、変る。

 少し頭が熱くなったので、この話は、また別の機会に考えてみたい。しかしこれだけは言え
る。

 あなたが老人になって、いよいよというとき、あなたの息子や娘に虐待されてからでは、遅い
ということ。そのとき、気づいたのでは、遅いということ。今ここで、心豊かな親子関係とは、ど
んな関係をいうのか、それを改めて、考えなおしてみよう。


Hiroshi Hayashi+++++++++FEB.07+++++++++++はやし浩司

●受験競争の弊害

++++++++++++++++

受験競争の弊害をあげたら、キリがない。

問題は、しかし、受験競争そのものではなく、
それがわかっていても、なお、親たちは
子どもの受験競争に狂奔するか、である。

そのあたりまでメスを入れないと、
この問題がもつ本質的な意味を
理解することはできない。

+++++++++++++++++

 精神の完成度は、内面化の充実度で決まる。わかりやすく言えば、いかに、他人の立場で、
他人の心情でものを考えられるかということ。つまり他人への、協調性、共鳴性、同調性、調
和性などによって決まる。

 言いかえると、「利己」から、「利他」への度合によって決まるということになる。

 そういう意味では、依存性の強い人、自分勝手な人、自己中心的な人というのは、それだけ
精神の完成度が、低いということになる。さらに言いかえると、このあたりを正確に知ることに
より、その人の精神の完成度を知ることができる。

 子どもも、同じに考えてよい。

 子どもは、成長とともに、肉体的な完成を遂げる。これを「外面化」という。しかしこれは遺伝
子と、発育環境の問題。

 それに対して、ここでいう「内面化」というのは、まさに教育の問題ということになる。が、ここ
でいくつかの問題にぶつかる。

 一つは、内面化を阻害する要因。わかりやすく言えば、精神の完成を、かえってはばんでし
まう要因があること。

 二つ目に、この内面化に重要な働きをするのが親ということになるが、その親に、内面化の
自覚がないこと。

 内面化をはばむ要因に、たとえば受験競争がある。この受験競争は、どこまでも個人的なも
のであるという点で、「利己的」なものと考えてよい。子どもにかぎらず、利己的であればあるほ
ど、当然、「利他」から離れる。そしてその結果として、その子どもの内面化が遅れる。ばあい
によっては、「私」から「私」が離れてしまう、非個性化が始まることがある。

 ……と決めてかかるのも、危険なことかもしれないが、子どもの受験競争には、そういう側面
がある。ないとは、絶対に、言えない。たまに、自己開発、自己鍛錬のために、受験競争をす
る子どももいるのはいる。しかしそういう子どもは、例外。

(よく受験塾のパンフなどには、受験競争を美化したり、賛歌したりする言葉が書かれている。
『受験によってみがかれる、君の知性』『栄光への道』『努力こそが、勝利者に、君を導く』など。
それはここでいう例外的な子どもに焦点をあて、受験競争のもつ悪弊を、自己正当化している
だけ。

 その証拠に、それだけのきびしさを求める受験塾の経営者や講師が、それだけ人格的に高
邁な人たちかというと、それは疑わしい。疑わしいことは、あなた自身が一番、よく知っている。
こうした受験競争を賛美する美辞麗句に、決して、だまされてはいけない。)

 実際、受験競争を経験すると、子どもの心は、大きく変化する。

利己的になる。(「自分さえよければ」というふうに、考える。)
打算的になる。(点数だけで、ものを見るようになる。)
功利的、合理的になる。(ものの考え方が、ドライになる。)
独善的になる。(学んだことが、すべて正しく、それ以外は、無価値と考える。)
追従的、迎合的になる。(よい点を取るには、どうすればよいかだけを考える。)
見栄え、外面を気にする。(中身ではなく、ブランドを求めるようになる。)
人間性の喪失。(弱者、敗者を、劣者として位置づける。)

 こうして弊害をあげたら、キリがない。

 が、最大の悲劇は、子どもを受験競争にかりたてながら、親に、その自覚がないこと。親自
身が、子どものころ、受験競争をするとことを、絶対的な善であると、徹底的にたたきこまれて
いる。それ以外の考え方をしたこともなしい、そのため、それ以外の考え方をすることができな
い。

 もっと言えば、親自身が、利己的、打算的、功利的、合理的。さらに独善的、追従的。迎合
的。

 そういう意味では、日本人の精神的骨格は、きわめて未熟で、未完成であるとみてよい。い
や、ひょっとしたら、昔の日本人のほうが、まだ、完成度が高かったのかもしれない。今でも、
農村地域へ行くと、牧歌的なぬくもりを、人の心の中に感ずることができる。

 一方、はげしい受験競争を経験したような、都会に住むエリートと呼ばれる人たちは、どこか
心が冷たい。いつも、他人を利用することだけしか、考えていない? またそうでないと、都会
では、生きていかれない? 

これも、こう決めてかかるのは、危険なことかもしれない。しかしこうした印象をもつのは、私だ
けではない。私のワイフも含め、みな、そう言っている。

 子どもを受験競争にかりたてるのは、この日本では、しかたのないこと。避けてはとおれない
こと。それに今の日本から、受験競争を取りのぞいたら、教育のそのものが、崩壊してしまう。
しかし心のどこかで、こうした弊害を知りながら、かりたてるのと、そうでないとのとでは、大きな
違いが出てくる。

 一度、私がいう「弊害」を、あなた自身の問題として、あなたの心に問いかけてみてほしい。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●ある母親からの相談(2010年1月7日)

 たまたま今朝、こんな相談が届いていた。
埼玉県K市に住んでいる、MSさんという方からの
相談である。
一部を変えて、そのまま紹介させてもらう。

【MSさんからはやし浩司へ】

はじめまして。
毎日先生のブログを読んでいる者です。私の子供はもう19才と17才になり、子育てという年
齢ではなくなっていますが、それでも、何かと心に思うことがあり、子育てのブログを読ませて
いただいております。

今回、長女の成人式の問題と次女の大学受験のことで、私の気持ちがいっぱいになってしま
い、自分を見失ってしまいそうなので、ご相談しました。
先ず、長女の成人式ですが、着物は娘の好みに合わせレンタルしました。今時のレンタルは
早めの申し込みで、記念写真の撮影は昨年3月に済ませており、夫と私の親にはすでにアル
バムを渡しております。この写真撮影の時、着物を着て帰りましたので、双方の祖父母宅に寄
り、振袖姿を披露しました。

ですが、もうすぐ成人式というのに、長女は成人式には出ないと言い出しました。その時の私
のショックは言葉に出来ません。長女は大学2年で、学費で精一杯の家計ですが、せっかくの
成人式なので好きな着物を選ばせ、トータル20万円もしました。今、思い起こせば、着物を選
ぶ時も、写真撮影の時も、娘はずっと不機嫌でした。私は娘の様子を見ているだけで吐き気が
するほど、気分が悪くなってしまいました。

これも、私がそう育ててしまったのだから・・・ しっかりものの長女のこと、何か出席したくない
よっぽどの理由があるはず、もうすでに振袖姿は見たし、祖父母にも披露し、アルバムも撮影
済み。何が問題なのか? 長女の成人式だもの、本人の好きにすればいい・・・ と自分に言
い聞かせる毎日ですが、なかなか私の気持ちに折り合いが付きません。これも、許して忘れ
る・・・でいいのでしょうか?

加えて、次女の大学受験で彼女のストレスが私に向けられ、毎日眼が回りそうです。不安で不
安で仕方ないようです。
私が高卒で、ずっと学歴にコンプレックスを持ち、子供には大学に行ってもらいたいと、小さい
頃から学歴が大事と間違って育ててしまったのがいけないのでしょうね。
夫はいうと、我関せずとばかりに、遠巻きにしております。

こんなことで・・・と笑われてしまいそうですが、中学生の時に、長女、次女とも本当に大変な時
期があり、頭の固い私が変わらざるを得ない事態となりました。それから、子育てに自身がなく
なり、これは共依存なのか?、と思うようになりました。
何かにつけ、私のしていることに自信がないのです。 

何か良いアドバイスがありましたら、よろしくお願いいたします。

【はやし浩司よりMSさんへ】

 まず先の「介護と子どもの意識」を読んでみてください。
今のあなたの考え方も、少しは変ると思います。

 簡単に言えば、親の私たちは、子どもに対して(幻想)をもちやすいということ。
その幻想を信じ、その幻想にしがみつく。
「私たち親子だけは、だいじょうぶ」と。

 しかし実際には、子どもたちの心は、親の私たちから、とっくの昔に離れてしまっているので
すね。
親は子どもの将来を心配し、「何とか学歴だけは・・・」と思うかもしれない。
しかし当の本人たちにとっては、それが(ありがた迷惑)というわけです。
いまどき、親に感謝しながら大学へ通っている子どもなど、まずいないと考えてよいでしょう。
それよりも今、大切なのは、自分たちの老後の資金を切り崩さないこと。
あなたにかなりの余裕があれば、話は別ですが・・・。

 お嬢さんたちもその年齢ですから、今度は、あなた自身の年齢を振り返ってみてください。
そこにあるのは、(老後)ですよ。
今は、まだ(下)ばかり見ているから、まだ気がついていないかもしれませんが、あと5〜10年
もすると、あなたも老人の仲間入りです。

 では、どうするか。
つい先日、オーストラリアの友人が、メールでこう書いてきました。
「子どもたちには、やりすぎてはいけない。社会人になったら、お(現金)をぜったいに渡しては
いけない」と。

 同感です。
私もずいぶんとバカなことをしましたが、それで私の子どもたちが、私に感謝しているかという
と、まったくそういう(念)はないです。
息子たちを責めているのではありません。
現在、ほとんどの青年、若者たちは、同じような意識をもっています。

 だから私の結論は、こうです。

「よしなさい!」です。

 娘の晴れ着など、娘が着たくないと言ったら、「あら、そう」ですまし、そんなバカげた儀式の
ために20万円も浪費しないこと。
親の見栄、メンツのために、20万円も浪費しないこと。
それよりもそのお金は、自分の老後のためにとっておきなさい。

 子どもというのはおかしな存在で、そうしてめんどう(?)をみればみるほど、子どもの心は離
れていきます。
それを当然と考えます。

 20年ほど前になるでしょうか。
ある父親が事業に失敗し、高校3年生の娘に、「大学への進学をあきらめてくれ」と頼んだとき
のこと。
その娘は、父親にこう言ったそうです。

 「借金でも何でもよいからして、責任を取れ!」と。

 そこで私がその娘さんに直接話したところ、娘さんはこう言いました。
「今まで、さんざん勉強しろ、勉強しろと言っておきながら、今度は、あきらめろ、と。
私の親は、勝手すぎる」と。

 率直に言えば、これは「共依存」の問題ではありません。
あなたはまだ「子離れ」できていない。
つまりは精神的に未熟。
それが問題です。

 あなたは子離れし、自分は自分で、好きなことをしなさい。
自分で自分で、自分の人生を見つけるのです。
つまりあなたはあなたで前向きに生きていく・・・。

 その点、あなたを(遠巻きにして)見ている、あなたの夫のほうが、正解かもしれません。

 ずいぶんときびしいことを書きましたが、そのためにも、前段で書いた部分を、どうか読んで
みてください。
私たち自身の老後をどうするか?
お金の使い方も、そこから考えます。

 二女の方の学費にしても、子どものほうから頭をさげて頼みに来るまで、待ったらよいでしょ
う・・・といっても、今さら、手遅れかもしれませんが。
本人に勉強する気がないなら、放っておきなさい。
今のあなたには、それこそ重大な決意を要することかもしれませんが、そこまで割り切らない
と、あなた自身が苦しむだけです。
どうせ大学へ入っても、勉強など、しませんよ。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●介護問題と子どもの意識

 介護保険は、すでにパン状態。
政府は税金をあげることだけを考えている。
しかしそれよりも重要なのは、子どもの・・・というよりは、日本人の意識を変えていくこと。
今のままでは、日本の介護制度は、その根底部分から崩れる。
「心」がない。
心がない介護制度など、またそれによってできる施設など、刑務所のようなもの。
「死の待合室」と表現した人もいる。
そんな施設に入れられて、だれがそれを「快適」と思うだろうか。

 どうして日本人の心は、こうまで冷たくなってしまったのか?
脳のCPUの問題だから、冷たくなったことにすら、気づいていない。
みな、自分は、(ふつう)と思い込んでいる。
またそれが(あるべき本来の姿)と思い込んでいる。

 このおかしさ。
この悲しさ。

 ここに転載させてもらった、MSさんのケースは、けっして他人ごとではない。
私たち自身、あなた自身の問題と考えてよい。

++++++++++++++++

最後にもう一作。
ある母親の嘆きを、掲載します。
10年ほど前、中日新聞に掲載してもらった
原稿です。

++++++++++++++++

●親が子育てで行きづまるとき

●私の子育ては何だったの?

 ある月刊雑誌に、こんな投書が載っていた。

『思春期の二人の子どもをかかえ、毎日悪戦苦闘しています。幼児期から生き物を愛し、大切
にするということを体験を通して教えようと、犬、モルモット、カメ、ザリガニを飼育してきました。
庭に果樹や野菜、花もたくさん植え、収穫の喜びも伝えてきました。毎日必ず机に向かい、読
み書きする姿も見せてきました。リサイクルして、手作り品や料理もまめにつくって、食卓も部
屋も飾ってきました。なのにどうして子どもたちは自己中心的で、頭や体を使うことをめんどう
がり、努力もせず、マイペースなのでしょう。

旅行好きの私が国内外をまめに連れ歩いても、当の子どもたちは地理が苦手。息子は出不
精。娘は繁華街通いの上、流行を追っかけ、浪費ばかり。二人とも『自然』になんて、まるで興
味なし。しつけにはきびしい我が家の子育てに反して、マナーは悪くなるばかり。私の子育ては
一体、何だったの? 私はどうしたらいいの? 最近は互いのコミュニケーションもとれない状
態。子どもたちとどう接したらいいの?』(K県・五〇歳の女性)と。

●親のエゴに振り回される子どもたち

 多くの親は子育てをしながら、結局は自分のエゴを子どもに押しつけているだけ。こんな相談
があった。ある母親からのものだが、こう言った。「うちの子(小三男児)は毎日、通信講座のプ
リントを三枚学習することにしていますが、二枚までなら何とかやります。が、三枚目になると、
時間ばかりかかって、先へ進もうとしません。どうしたらいいでしょうか」と。もう少し深刻な例だ
と、こんなのがある。

これは不登校児をもつ、ある母親からのものだが、こう言った。「昨日は何とか、二時間だけ授
業を受けました。が、そのまま保健室へ。何とか給食の時間まで皆と一緒に授業を受けさせた
いのですが、どうしたらいいでしょうか」と。

 こうしたケースでは、私は「プリントは二枚で終わればいい」「二時間だけ授業を受けて、今日
はがんばったねと子どもをほめて、家へ帰ればいい」と答えるようにしている。仮にこれらの子
どもが、プリントを三枚したり、給食まで食べるようになれば、親は、「四枚やらせたい」「午後
の授業も受けさせたい」と言うようになる。こういう相談も多い。

「何とか、うちの子をC中学へ。それが無理なら、D中学へ」と。そしてその子どもがC中学に合
格しそうだとわかってくると、今度は、「何とかB中学へ……」と。要するに親のエゴには際限が
ないということ。そしてそのつど、子どもはそのエゴに、限りなく振り回される……。

●投書の母親へのアドバイス

 冒頭の投書に話をもどす。「私の子育ては、一体何だったの?」という言葉に、この私も一瞬
ドキッとした。しかし考えてみれば、この母親が子どもにしたことは、すべて親のエゴ。もっとは
っきり言えば、ひとりよがりな子育てを押しつけただけ。そのつど子どもの意思や希望を確か
めた形跡がどこにもない。親の独善と独断だけが目立つ。

「生き物を愛し、大切にするということを体験を通して教えようと、犬、モルモット、カメ、ザリガニ
を飼育してきました」「旅行好きの私が国内外をまめに連れ歩いても、当の子どもたちは地理
が苦手。息子は出不精」と。この母親のしたことは、何とかプリントを三枚させようとしたあの母
親と、どこも違いはしない。あるいはどこが違うというのか。

●親の役目

 親には三つの役目がある。(1)よきガイドとしての親、(2)よき保護者としての親、そして(3)
よき友としての親の三つの役目である。

この母親はすばらしいガイドであり、保護者だったかもしれないが、(3)の「よき友」としての視
点がどこにもない。とくに気になるのは、「しつけにはきびしい我が家の子育て」というところ。こ
の母親が見せた「我が家」と、子どもたちが感じたであろう「我が家」の間には、大きなギャップ
を感ずる。はたしてその「我が家」は、子どもたちにとって、居心地のよい「我が家」であったの
かどうか。あるいは子どもたちはそういう「我が家」を望んでいたのかどうか。結局はこの一点
に、問題のすべてが集約される。

が、もう一つ問題が残る。それはこの段階になっても、その母親自身が、まだ自分のエゴに気
づいていないということ。いまだに「私は正しいことをした」という幻想にしがみついている! 
「私の子育ては、一体何だったの?」という言葉が、それを表している。

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W はやし浩司 介護問題 子どもの意識 子離れ 子離れできない親 私の子育ては何だっ
たの 私の人生は何だったの 私の子育ては、何だったの 親の悔悟 介護問題 はやし浩
司 親のめんどう 親の介護 親の介護問題 内閣府調査)








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【4】反抗期

相談(1)小学4年生の母から

 最近わが子の親に対する話し方が気になります。たとえば、私が何か「こうしなさい」と注意す
ると、「そんな法律がどこにあるの?」などと言ってくるので、ついつい怒ってしまうこともしばし
ば……。
 これは反抗期なのでしょうか?



A:思春期最大のテーマは、「同一性の確立」(エリクソン)です。(私はこうでありたい)という理
想の自己像と、(現実の私)、つまり現実自己を、一致させようとします。一致した状態を「自我
の同一性」と言います。その第一歩が、おとなの優位性の打破です。それが「思春期の反抗」
と考えてください。
 (悪態)もそのひとつ。「そんな法律がどこにあるの?」と。それを許せということではありませ
ん。それができないほどまでに、子どもを抑えてはいけないということです。カリカリするのはし
かたないとしても、「ああ、うちの子は、今、児童期から青年期へと、脱皮を始めているのだ」
と、一歩退いて子どもを見ます。
 この時期、親意識(とくに「親に向かって何よ!」式の悪玉親意識)が強すぎると、子どもは親
の前では仮面をかぶるようになります。自我の確立に失敗し、非行に走ったり、親子の間にキ
レツが入り、親子が断絶するケースも目立ちます。最悪のばあいには、自我の崩壊……。ナヨ
ナヨとした軟弱な人間になることもあります。
 親には3つの役目があります。@ガイドとして子どもの前に立つ。A保護者として子どものうし
ろに立つ。そして3番目が重要ですが、B友として子どもの横に立つ、です。
 悪玉親意識を捨て、子どもの友になるつもりで、子どもの横に立ってみてください。とたん、肩
の荷が軽くなりますよ。
 
(20字x30行)


Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司




(20x30行)








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【5】長男への接し方


相談(2)小学4年生と小学1年生の母から

 長男への接し方で悩んでいます。長男にはどうしても小言を言う機会が多く、下の子は女の
子で要領がよく、注意された長男をからかって、長男を怒らせます。それを見て私が怒る……
の悪循環で、ときどきそんな雰囲気で日々を過ごしている長男がかわいそうになります。
 長男への接し方を変えるアドバイスはないでしょうか。



A:長男、長女に対しては、どうしても不安先行型の子育てになりがちです。「何をしても、不安」
と。それが過干渉になったり、過関心に転じたりします。度を越すと、子どもの心が萎縮した
り、反対に粗放化することもあります。
 あなただけではありません。ほとんどの親がそうです。が、そのリズムは、妊娠したときから
始まっています。つまり「根」が深いということ。そういう思考回路が、あなたの脳の中にできあ
がってしまっています。そのためそのリズムを変えるのは、ほぼ不可能と考えてください。で
は、どうするか?
 @そういう自分であると知って、仲よくつきあうこと。A「あなたはいい子」を口癖にし、あなた
自身の心を作り変えること。
 長男の顔や姿を見たら、本人にはもちろん、父親や長女の前で、題目のようにその言葉を繰
り返してみてください。3〜4か月もすると、(それでも早いほうですが……)、あなたは自然な口
調で、それが言えるようになります。そのとき、あなたが今、心配している問題は解決します。
 大切なことは、「子どもを直そう」と思わないこと。「今より状態を悪くしないこと」。それだけを
考えて対処します。この種の問題には、二番底、三番底があります。親は、自分の子どもがよ
り悪くなって、それ以前の状態が、まだよかったことを知ります。それが「悪循環」と言われるも
のです。
 
(20字x30行)


Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司







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【6】
いじめ

5・6月号相談事例
相談(1)小学3年生の母から

 小学3年生になると、友達関係でいろいろあるとは先生から聞いていたのですが、早速わが
子のカラーペンが一式なくなってしまい、とても心配しました。
 悪意からではなく、いたずらかもしれませんが、こういうときは、ただ見守るしかないのでしょ
うか? それとも、担任の先生に相談した方がいいのでしょうか?
(焼津市・A)



A:鉄則はただひとつ。『友を責めるな、行為を責めよ』(イギリスの教育格言)です。担任の先
生にこうした事案は、遠慮なく報告したらよいでしょう。しかしそのとき、事実だけを客観的に話
し、特定の子どもの名前を出したり、批判したりしてはいけません。自分の判断を加えていけま
せん。「事実」だけを話します。あとの判断、対処の仕方はプロの先生に任せます。
 もし相手の子どもの名前がわかっていたら、逆にその子どもをほめてみます。「あの子はい
い子ね」と。あなたの家に招待するのもよいでしょう。あなたがその子どもと友だちになるつもり
で、間に入ります。子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、よい子を演じようとしま
す。逆にそうした性質を利用して、その子どもを、よい友だちに作り変えてしまいます。
 日本でも昔から『魚心あれば、水心』といいますね。英語にも、『相手は、あなたの思うよう
に、あなたのことを思う』というのがあります。心理学の世界では、これを「好意の返報性」とい
います。あなたがその子どもをよい子と思っていると、そうした心は、あなたの子どもを介して
かならず、相手の子どもに伝わります。
 大切なことは、あなたの子どもが気持ちよく、楽しく通学することです。負けるところは負け、
妥協するところは妥協します。けっしてカリカリしてはいけません。


(20x30行)


Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司








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【7】
先生に問題が?

相談(2)小学5年生の母から

 わが子のクラスで「いじめがある」とか「騒ぐ子がいて担任の先生が困っている」などという話
を子どもから聞き、親として心配がふくらんでいます。子どもの話だけで判断するよりは、懇談
会などで直接聞く方がいいと思うのですが、聞き方が難しそうです。
親の心配を伝え、なおかつ先生批判にとられない聞き方は、どうすればいいでしょうか?
(藤枝市・Y)




A:この程度の問題で、動揺しないこと。いじめのない学級はありません。困っていない先生な
ど、い・ま・せ・ん。もし心配なら、1、2年、年上の子どもをもつ父母に相談してみることです。で
きれば、別の学校の父母に、相談します。たいてい「うちもそうでしたよ」というような回答をもら
って、その場で問題は解決するはずです。
 が、鉄則があります。どんなばあいも、子どもの前で、学校や先生の批判をしたり、悪口を言
ってはいけません。子どもの前では、「あなたの学校はすばらしい」「あの先生は、最高!」と言
います。
 もしあなたが学校や先生を批判したり、さらに悪口を言ったりすると、あなたの子どもは先生
の指示に従わなくなります。これを心理学の世界では、「三角関係」といいます。わかりやすく
言えば、子どもが「二重拘束」の状態に置かれるということです。子ども自身が、糸の切れた凧
のようになってしまいます。
 教育で何が大切かといって、先生との信頼関係ほど、大切なものはありません。信頼関係が
なければ、教育そのものが、崩壊します。その信頼関係は、向こうからやってくるものではあり
ません。親であるあなた自身が、努力で作るものです。
 なお相談といっても、同じクラスの父母に相談するのは、避けてください。あなたの話しが曲
解され、たまにおおげさになることがあります。


(20x30行)

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司













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【8】
親子の悪循環

相談(3)小学4年生と小学1年生の母から

 長男への接し方で悩んでいます。長男にはどうしても小言を言う機会が多く、下の子は女の
子で要領がよく、注意された長男をからかって長男を怒らせます。それを見て私が怒る……の
悪循環で、ときどきそんな雰囲気で日々を過ごしている長男がかわいそうになります。
長男への接し方を変えるアドバイスはないでしょうか?
(静岡市・K)




A:心配先行型、不信先行型の子育てがリズムになっています。何をしても、否定的にとらえて
しまう。それに(下の子)との比較も、日常化しているようですね。これは、ま・ず・い!
 子育てをしていて、「悪循環」を感じたら、思い切って、引きます。つまりあきらめます。子育て
の世界では、『あきらめは、悟りの境地』といいます。(私が考えた格言ですが…。)「どうにでも
なれ!」と、一歩退きますが、だからといって、無視したり、冷淡になれということではありませ
ん。
 愛情でくるんだ、「暖かい無視」です。で、ここが重要ですが、「求めてきたときが与えどき」と
心がけます。長男が助けを求めてきたときは、すかさず、(すかさずです)、それに応じてあげ
ます。そしてあとは、最初はうそでもいいですから、「あなたはいい子」を口ぐせにします。
 何か月も言いつづけていると、やがてあなたの子どもは、あなたの口ぐせどおりの子どもにな
ります。つまりこうしてあなた自身の子育てのリズムを作りかえます。
 また(条件)(比較)(無理)は、子育ての3悪です。「勉強したら、〜〜を買ってあげる」(条
件)、「妹は〜〜なのに…」(比較)、それに能力を超えた期待をかける(無理)は、タブーです。
 長男は長男、妹は妹。ともに長所だけを見て、それですませます。






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【9】

●子育てが不安でならない

●ある母親からの相談

++++++++++++++++++++

たまたま2人の母親から、同じような相談が
届いていた。
ひとつつは、掲示板に。
もうひとつは、相談フォームで。

++++++++++++++++++++

【Mさんより、はやし浩司へ】

娘の事です。
いじめとはちがうのかもしれませんが、
転校して初めの1週間は友達ができていたのですが、
みんな離れて行ってしまい、昼休み一人で過ごすことになっています。
ヒマになったら、トイレをしたくなるらしく、昼休み、下痢をしています。
学校には行きたくないと時々言います。
友達に入れてと言う勇気はありますが、「無理」と言われます。娘になにか問題があるのか?と
ても悩み、以前担任に聞いてみたら、一人ではないということでした。
娘の感じている孤独は、先生は知らないままで、「大丈夫」の一点張りです。
娘は宿題も手につかないし、悩みが深いので、それを見ている私はどうしたらいいのか、とても
恐怖を感じています。
私は短気で、感情的に娘を育ててきたことをとても後悔しています。
毎日が自己嫌悪の育児でした。娘の性格がおかしくなってしまったのかもしれません。
私自身、感情がコントロールできなくて、心療内科に通ったこともありますが、治らず、とても苦
しいです。
今、このような娘の問題を抱えると、自分の体が震えます。不安で不安で家事もできないほど
です。
もう一度、担任の先生に相談したいのですが、「モンスターペアレント」と思われたらどうしよ
う・・とか、心配症の親だけですまされそう・・・などと考えどうすることもできません。
昼休み、一人で過ごすことに、苦痛を抱えた娘は、もう、見守るしかないのか?
この状況を受け入れることを頑張って考えてみるのですが、なかなか頭をきりかえるのが、難
しく、説教でもいいので、どうかお返事をいただきたいです。
よろしくお願いいたします。(以上、原文のまま)

【はやし浩司よりMさんへ】

 どの家庭も、どの親子も、みな、うまくいっているようで、うまくいっていません。
こうした問題では、「私だけが……」とか、「私の娘だけが……」とかいうように、
悩んではいけません。
また悩む必要はありません。
みんなそうです。

またそうであるからといって、自分を責めてはいけません。
みんな懸命にがんばっています。
じゅうぶんすぎるほど、がんばっています。
が、どこかで小さな歯車が狂う。
狂ったまま、それが日々の積み重ねとなってしまう……。

たまたま掲示板のほうにも、こんな相談がありました(2010年8月)。
それをそのまま紹介させてもらいます。

+++++++++++++++++++++++

●掲示板へ

家族構成 祖父母・夫・私・娘(小3)息子(年中)
娘について相談させて下さい。

去年半年程不登校になり先生のHPを参考にスキンシップ、温かい無視など出来るだけ
実践し復学できるまでになりました。
それでもまだ私の顔色を見たり指示、許可を求めるところなど気になります。
私は怒鳴って叱りつけることはありませんが、育児の指針がなく不安定です。

二世帯住宅で同居している実の両親と話はしますが心を開くことができません。
両親共に許容範囲が狭く、干渉してきます。
両親は不仲で会話は全くありません。

私の子ども時代はTV一つにしても見る時間、番組、姿勢など細かく注意されてきした。
そういったことからくる潜在的意識なのか、
子どもがTVを見ているだけで許せなくなってしまう時があります。
そういった日によって違う子育てがよくないのは頭ではわかりますが
自分をコントロールできません。
経済的に別居は無理です。(一部改変)

+++++++++++++++++++++++++

●みんな不安なんですよ!

 こう見えても(?)、私も毎日、不安で孤独です。
正直に告白しますが、毎日、さみしいです。
何をしていても、さみしいです。
友だちも少なく、3人の息子もいますが、自分たちの生活で精一杯。
『便りのないのは、よい知らせ』とはいいますが、その便りも、数か月に1度あるか、
ないかだけ。

 このところ毎日のように、「私たちの子育ては、いったい何だったのか」と、よく考え
ます。
気がついてみたら、そこにはだれもいない。
がんばってきたはずなのに、その実感がない。
貯金も、子どもたちの学費で使い果たしてしまった。
「どうやって老後を過ごそうか?」を考える前に、「どうすればみなに、迷惑をかけないで
死ねるか?」。
そんなことばかりを考えています。

 が、幸いなことに、目が見える。
音が聞こえる。
歩くことも、自転車に乗ることもできる。
さらに幸いなことに、今の私は健康です。
したいことができます。
言い替えると、それ以上、私は何を望むことができるのでしょうか。

●ないものをさがさないで……

 Mさんにしても、掲示板に書き込みをくださった人も、(ないもの)を、
さがしてはいけません。
(ないもの)をねだってもいけません。
またそういう自分を、嘆いてもいけません。
(そこにあって、あなたに見つけてもらうのを、そっと待っているもの)を、
さがしてみるのです。
たくさんあるはずです。
またその価値に気づくのです。

 2人とも娘さんのことで悩んでおられれるようですね。
お子さんの年齢も、近いのでは?
お気持ちはわかりますが、「あそこが悪い」「ここが悪い」と考えていると、
視野がどんどんと狭くなってしまいます。
それともあなたは、自分の娘さんに、いったい、どうなってほしいのですか。
どうであれば、あなたは満足するのですか。

 私の印象では、あなたの娘さんがどうなっても、あなたの心配や不安は解消
されないと思います。
あなた自身が、(不平・不満)のかたまりだからです。
それが娘さんという対象に、「投影」しているだけ!

それが(心配)の種となって、あなたを悶々と苦しめている……。
わかりやすく言うと、自分の心の隙間を埋めるために、娘さんを利用しているだけ。
つまり娘さんには、どこにも問題はない!
よく見てください。
どこにも問題はない!

 健康でしょ!
あなたのそばにいるでしょ!
あなたと話をするでしょ!
心が通い合っているでしょ!

 なのにあなたは満足できない?

●夢と希望

 人は夢と希望をもって生きる動物です。
夢や希望がなかったら、生きていくことはできません。
が、どんな小さなものであって、夢や希望があれば、生きていくことができます。

 が、夢や希望は、向こうからやってくるものではありません。
自分で作るものです。

あなたは誤解していますよ。
あなたは娘さんのことを悩んでいます。
しかしそれはあなたの勝手です。
それ以上に、あなたの娘さんは、あの小さい心で、あなた以上に悩んでいます。
が、あなたは自分のことしか、考えていない。
自分だけが不幸だと思っている。
しかし本当に不幸なのは、娘さんのほうです。

 だからあなたが娘さんに言うべき言葉は、「〜〜しなさい」ではなく、「あなたも
苦しいのね」と、娘さんの立場に立つことです。
くだらない親意識は、捨てなさい。
上下意識は捨てなさい。
あなたが心を開かないで、どうして娘さんが、心を開くことができるでしょうか。

 もう一度、あなた自身が自分の人生を送るつもりで、……つまりあなたが送りたかった
人生を再現する形で、娘さんと人生を共にすればよいのです。
あなたは子どものころ、どんなことをしたかったですか?
あなたの母親に、どんなことをしてもらいたかったですか?

 それを今、実行すればよいのです。
思い切ってやればいいのです。
今のあなたなら、それができるはずです。
せっかくのチャンスでは、ないですか!

 はっきり言いましょう。
「学校へ行きたくない」と娘さんが言ったら、あなたもこう言えばよいのです。
「私も行きたくなかった」と。
「行きたくなかったら、行かなくてもいいのよ。無理をしないでね」と。

それともあなたは優等生で、一流高校、一流大学を出ていますか?
そうでないと思います。

 あまり気負わないで、肩の力を抜いて、娘さんといっしょに遊びなさい!
人生を楽しみなさい!
学校、学校といいますが、中身は、どうせつまらない(勉強)ですから……。

●運命を受け入れる

 あなたは苦しんでいる。
しかしそういう親のほうが、真の愛に近いのですよ。
中には、幸運にも(?)、何も問題なく子育てする人もいます。
数は少ないですが、います。
しかしそういう人は、ただの親から、ただの人で終わってしまう……。
その苦労の最中には、苦しいことかもしれません。
「どうして私だけが……」と思うものです。

 しかしだからこそ、それを乗り越えたとき、あなたはその先に、広い平原を見ること
ができます。
どこまでも広く、おおらかな平原です。
無数のドラマもそこから生まれます。
そのドラマにこそ、生きる価値があるのです。

つまり、子育ても山登りに似ています。
登るときは苦しいですが、登り切ったときの達成感がすばらしい。
だから登山家たちは、山に登るのです。

 ただひとつ条件があります。
いやいや登ってはいけません。
楽しんで登るのです。
が、今のあなたは、何を見ても、「いやいや」ですね。
では、そういうときは、どうするか?
方法は簡単です。

 『運命は受け入れ、居直るのです』。

●運命
  
 運命論については、たびたび書いてきました。
私たちの体には、無数の「糸」がからみついています。
社会の糸、家庭の糸、家族の糸、親子の糸、過去の糸、両親の糸などなど。
そういった糸が無数にからんで、私たちの進むべき方向を決めてしまいます。
ときに私たちを望まない方向に、引っ張っていってしまう。
それが「運命」です。

 そうした運命を感じたら、「あきらめ、受け入れる」。
娘さんのことについて言うなら、「ようし、十字架のひとつやふたつ、背負ってやる」と
宣言してみてください。
娘さんの悩みや苦しみを、共有するのです。
とたん、気が楽になりますよ。
気が晴れますよ。
その先に、道が見えてきます。

 運命というのは、それに逆らえば、キバをむいて、あなたに襲いかかってきます。
しかしいったん、受け入れてしまえば、運命はシッポを巻いて向こうから去っていきます。
運命というのは、そういうものです。

 あなたは今、何か病気をしていますか?
どこか具合が悪いですか?
が、もしそうでないなら、今、ここに元気で生きていることを喜びなさい。
まだ若いですよ。
36歳というと、もっとも輝いている年齢です。
こんなことを書くと不謹慎かもしれませんが、女性にしても、もっとも美しくなる年齢
です。

 だからあなたも心を開いて、通りを歩いてみればよいのです。
私は見える。
私は聞こえる。
私は歩くことができる、と。

 そのすばらしさに、もっとすなおに感動してみてください。
生きていることの、すばらしさに、もっとすなおに感動してみてください。
とたん、娘さんの問題など、どこかへ消えてなくなりますよ!

●あとは……

 あとは愛情。
「私はどんなことがあっても、あなたを守ってあげますよ」と。
口に出して言うことでもないですが、その覚悟だけはしっかりともち、(仮にあなたが
今、娘さんに愛を感じていなくても……)、あとは娘さんを、その愛情でくるんで
あげます。

『暖かい無視』というのは、そういう意味です。

 そしてここが重要ですが、(1)やり過ぎないこと。
(2)求めてきたときが与えどきと心得ること。
(何かを相談してきたら、そのときは、真剣に応じてあげる。)
(3)娘さんから視点をはずし、あなたはあなたで、したいことをする、です。

 私も毎日、ささやかな夢と希望を作りながら、生きています。
たまたま明後日もある地区で講演会があります。
みなに拍手で迎えられ、拍手で見送られます。
見た目には、派手な生活ですが、講演をする私自身は、孤独です。
そこに200人いようが、1000人いようが、孤独です。
心の隙間を埋めることはできません。
また私自身がかかえている問題については、何一つ、役に立ちません。
講演をするからといって、孤独が癒されるということはないということです。

 ただゆいいつの楽しみは、たいてい最後列で、ワイフが私を見ていることです。
私はそういうワイフの顔をチラチラ見ながら、話します。
それだけが希望です。

 またこの9月には、40年来の友人が我が家に来ます。
オーストラリア人です。
学生時代、2人で、オーストラリアの夏を過ごしたことがあります。
が、最近がんを患い、日本へやってきます。
1か月の滞在になるのか、3か月の滞在になるのかは、わかりません。
しかし私は彼が「帰る」というまで、我が家に泊めてあげるつもりでいます。
「いたいだけ、いていいよ」と、メールには書きました。
それが希望です。
私にとっては、希望です。

●Mさんへ

 人生は短いですよ!
あっという間に終わりますよ。
だったら、今、ここで人生を楽しむのです。
娘さんといっしょに、楽しむのです。
心を開いて、娘さんといっしょに、外に向かって歩くのです。
自由の空気を思う存分、吸い込むのです。
体はあとからついてきます。

 あなたの娘さんは、すばらしい子どもですよ。
どこかのドラ娘たちとは、ちがうでしょ。
繰り返しになりますが、このメールを読み終えたら、あなたの娘さんにこう言って
あげてください。

「お母さんも苦しかったけど、あなたも苦しかったのね。ごめんね」
「お母さんがつらかった以上に、あなたもつらかったのね。ごめんね」と。
負けを認めます。
つっぱっていないで、すなおに負けを認めます。

 それですべての問題は解決しますよ。
……というか、何も問題はありませんよ!


Hiroshi Hayashi+++++++Aug. 2010++++++はやし浩司








 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【10】
【障害児と言われて・・・】

●掲示板投稿より(AD・HD児、場面かん黙児)

++++++++++++++++++

最近、掲示板へ、2件の投稿があった。
1件は、AD・HD児についてのもの。
もう1件は、場面かん黙児についてのもの。
2件とも、そうした子どもをもつ親からの
相談だった。

この2件で特徴的なことは、親たちが、
それぞれの子どもについて、正式な診断名を
掲示板の中で、明記していること。
つまり医師の診断を受けていること。
そういう相談であれば、それについて書く私と
しても、返事を書きやすい。
言い替えると、この段階まで親が、自分の
子どもを理解するのは、容易なことではない。
そこに至るまでには、長い道のりと、迷い、
心配、不安がある。
病院へ連れていくについても、相当な覚悟と
決断が必要である。
その上での診断名である。

が、それまでの苦しみが長ければ長いほど、
自分の子どもがどういう状態であるかを
知ることにより、かえってほっとするのも事実。
「ああ、そうだったのか」と。

もちろんそれで問題が解決するわけではない。
解決するわけではないが、そこをスタートラインに
して、前に向かって歩み出すことができる。

それに今は、子どもに問題があったからといって、
(個人)の責任にする時代ではない。
みなが、将来の日本、あるいは将来の世界を
支える子どもとして、暖かく見守る時代である。
この浜松市でも、そうした子どもたちを重点的に
集め、指導、教育している学校がふえている。
「拠点校」と呼んでいる。

そうした拠点校へ、むしろ親の方が望んで
子どもを通学させる時代になってきている。
S小学校(拠点校)の校長は、こう話してくれた。

「昔は、『お宅のお子さんには、問題がありますよ』
と言っただけで、親たちは、半狂乱になったものです。
が、今は、ちがいます。
親たちの方から、『お願いします』といって、子ども
たちを連れてきます。
みなさんの表情が、たいへん明るくなったのには、
驚かされます」と。

この問題は、そういう問題。
深刻に考える必要はない。
また深刻に考えたところで、どうにもならない。
大切なことは、繰り返しになるが、「今」を
スタートラインにして、前向きに考えること。
大切なことは、どんな子どもであれ、前向きに、
伸び伸びと、生きていくこと。
その道筋を用意してあげること。

今時、AD・HD児にしても、場面かん黙児にしても、
「問題」と考える人はいない。
モーツアルトも、チャーチルも、エジソンも、みな、
AD・HD児だった。
最近の研究によれば、あのアインシュタインも、
AD・HD児だったと言われている。

また場面かん黙児にしても、その年齢がくれば、
自己管理能力が発達してくる。
小学3〜4年生前後を境に、急速に「角」が
取れてくる。
症状が残ることは多いが、だからといって、それが
どうしたというのか。

私自身は、ペチャペチャと調子よくしゃべる子ども
より、静かで、沈思黙考型の子どもの方に、
より人間的な深みを覚える。
どうしてそれがいけないことなのか?

2つの記事を、並べて掲載する。

++++++++++++++++++++

(1)【Mさんより、はやし浩司へ】

2年に渡って勝手なことを書いているバカな母親です。

これまで13年間毎日怒り続けてきた私は何だったのだろうと思う
出来事がありました。

これまでも教育センターの教育相談なるものを
受けたことも数回ありましたが、わからなかったこと。

そう、春休みに思い立って児童精神科に受診しました。

医者の最初のひとこと
「ADHDのお母さんはどこの家でも毎日起こっています。
 白黒はっきりさせましょう。」
でした。

なるほどと思うありがたいお言葉!

予約や諸般の事情で3ヶ月間かかってわかったこと。
うちの息子はADHDでした。不注意優位型。中程度。IQは100。
先生は「息子さんはこれまでよくがんばっていましたよ」と
とてもほめてくださいました。

いつものように私の勝手な満足ですが、
ADHDと診断されてよかった。
それなら、個性を生かして行く道があるからです。

薬の治療を始めました。
コンサータは集中度が上がったのが本人にもわかるようです。
ただし、あまりに気持ちが悪くなるようなので、
ストラテラに変更中です。

薬が良いとは思いませんが、黒板を写すような作業が苦手なことも判明。
授業などに集中できるためには、必要な手段かと思っております。

兄弟関係も30%はADHDとのことで、妹もこれから検査を受ける予定です。

私はといえば、丁度去年の今頃からこの1年間、これからは、独身のときの
ように仕事をがんばる!という方向で残業の毎日です。
子供たちには少し不自由もあるかもしれませんが、
今仕事をしなくていつ働く!、
なぜダンナばかりが何の不自由もなく働く!そして
私に自慢する!です。
毎日、不満だらけなのは言うまでもありませんでした。
ただ、今の私はとにかくお金のために働く。それだけです。
でもこれからは、死ぬときは、いい人生だったと思えるような
生き方をしたいと(またまた自己満足ですが)、心がけていこうと思っています。

ところで、話しは戻りますが、ADHDは、私の中では
花粉症くらいに考えることにしています。
いろいろあって、たまたま検査でわかったことなので、
知らなければ知らないで、私がいつも怒っているキチガイだった、
で終わったことかもしれません。
ただし、わかった以上本人の特性を見つける、
もしくは、本人の一生に関わることなので、どうアドアイスすればよいのか?
または、何もしなくてよいのか?
そのあたりを教えていただけないでしょうか?

よろしくお願いいたします。


Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

(2)【Kさんよりはやし浩司へ】

はじめまして。
小学3年の息子の事でご相談させて頂きたく書き込み致しました。

先日ネットで検索して初めて知った
場面緘黙症に息子の状態が当てはまります。
ただ症状はとても軽い方だとは思います。
youtubeで先生の動画も拝見いたしました。

このまま放って置いて、自然治癒しそうな感じではありますが
大人になっても
同じ状態であったり更に酷くなると困ると思い
数日前、心療内科を受診し、
心理テストや診断の予約を1ヵ月後にとりましたが
症状が軽い場合、子供にとって
はっきりと病名等を診断された方が良いのか
それとも逆効果になってしまわないか、と悩んでいます。


息子は4人兄弟姉妹の末っ子で
生まれた時から一番おとなしく人見知りが激しい子供で
あまり外に出ず、家の中でよく遊ぶ子供でした。
3歳児健診の時にも
本人は分かっている筈なのに図形や絵柄を答えられず
保健士さんから何度か様子を尋ねる電話を頂きました。
その後、幼稚園、小学校へとすすみますが
毎年かわる担任の先生にはなかなか慣れず
授業中の本読みでもほとんど声が聞こえないような状態です。
懇談ではいつも
先生が話しかけても恥ずかしそうにしていたり
目玉をきょろきょろさせているが
ちょこちょこ悪い事もしているし友達とも遊んでいるので
心配無いですよ。と、どの先生にも言われていました。

先日、3年になって初めての懇談では
先生が話を聞きたいと思って息子に何か尋ねても
全く答えないし、しびれを切らせてイエスかノーで答えられる質問に変えたら
声はでないけど首を振って答える。
何を考えているのかわからないので指導がしにくい、
先生に慣れるのに1年もかかる様では・・・と言われました。
その夜、私が息子に
『どうして先生と話さないの?』と尋ねると
『こころの中で先生に返事したいと思っているのに声が出ない』と言いました。
それでネット検索していると場面緘黙にたどり着きました。

自宅でも私や兄が強く怒ると
言葉が全く出てこなくなり、スネると机の隅っこにまるまって入ったりしますし
近所の大人には挨拶もできないので
先生と話せない様子は目に浮かびます。
かと言って、おもちゃ屋のおじさんとは親しくも無いのに会話したり
一人でお使いや歯医者に通ったりは出来ています。
はじめて逢ったお友達とも遊んだりできますが
自分から遊ぼうと誘いに行くことはほとんど無いようです。

心療内科を受診した日の夜、
『頑張って話すようになるわ』と突然私に言ってきたので
『別に頑張らなくてもいいよ』と、言っておきましたが、
次の学校での本読みは大きな声では無いけれど
いつもより声がでていたそうです。
(担任には経過報告しましたが心療内科を受診した事に
相当驚かれていました)

ここまでの息子の状況だけですと、
私もそう気にする事も無かったと思うのですが
気がかりなのが父親との関係(遺伝)です。
20年間一緒に暮していても気づかなかった
多重債務と嘘が原因で2〜3年の別居後、
カウンセラーとも相談し昨年協議離婚したのですが
父親も場面緘黙だったのだろうと思い当たる節がたくさんあります。
質問しても返事を待つのに長い長い時間がかかったり
親しい方からお祝いを頂いてもお礼が言えなかったり(頭だけ下げる)
無口で義母の友達でさえ声を聞いたことが無いと言っていました。

父親の話は息子にしていませんが
父親と同じようになって欲しくない。という強い願いが私にあります。
それが根本にあるので、
本当なら息子は通わなくても良い程度なのに
心療内科に向かわせているのかもしれない・・・・
と、その判断ができずに悩んでいます。

普段はなるべく明るい雰囲気で毎日暮せる様
冗談や馬鹿な事を言ったり、
母親というより友達の様な感覚で暮しています。

長々とまとまりの無い文章で申し訳ございません。
何かアドバイス頂けると嬉しいです。
宜しくお願いいたします。

(以上、2編、原文のまま)

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

【はやし浩司より、Mさん、Kさんへ】

●AD・HD児

 ADHD児については、小学3、4年生を境に、症状は急速に改善してきます。
子ども自身の自己管理能力が発達してくるためです。
中学生になるころには、どこか騒々しさは残りますが、その子どもの過去を知らない
人には、ほかの子どもたちと区別すらできなくなります。

それに反比例して、もともとの(良さ)が前面に出てきます。
能力的にも恵まれた子どもであることが多く、ものおじないしない態度、積極性、
行動力がよいほうに作用します。

 大切なことは、それまでに症状をこじらせないこと。
指導する先生にとってはたいへんでしょうが、私自身は、薬物の投与には、あまり
賛成ではありません。
以前は、リタリンを投与していました。
2000年前後のことです。
当時すでに本場のアメリカでは、リタリンの副作用が問題になり、投与を控える動きが
ありました。
私はいち早くその文献を手に入れ、それを翻訳してHP上で発表したことがあります。

 で、今は、リタリンについては、現在、原則として、どこの治療機関も投与を
控えています。
つまり、「安全性」という点から、こうした精神薬には疑問をもっています。
専門のドクターとよく相談して、投与するにしても慎重に決定してください。
(コンサータについては、投与する医療機関を限ることで、制限を加えています。)

●場面かん黙児

 また場面かん黙児については、自分の子どもがそうであることに気づくだけでも、
たいへんな進歩です。
「進歩」という言い方は失礼かもしれません。

 実のところ、そうであるかないかは、この私でも、会った瞬間に判断できます。
しかし教育の世界では、診断名を口にするのは、タブー中のタブーです。
ですから知らないフリをして、指導を始めますが、多くの親はそれでは納得しません。
子どもをはげしく叱ったり、あるいは私の指導の仕方がおかしいとか言って、教室
から去っていきます。
教える側が、はげしい虚脱感というか、虚しさを覚えるのはそういうときです。

 が、診断名をつけてもらえば、また親もそれを納得すれば、指導ができます。
そこがスタートラインになります。
いろいろな文献を資料として与えたり、またそういう子どもを専門に指導している
施設を紹介したりもできます。
「心の問題」ですから、解決方法は、いくらでもあります。

(ただ場面かん黙児については、解決しようと子どもを追い込んではいけません。
そういう子どもであると認めた上で、5年単位の根気のつづく指導が必要です。
あるいはそういう子どもであることを忘れて指導すること。
『暖かい無視』というのは、そういう子どものためにある言葉と考えてください。)

●Mあん、Kさんへ

 ともあれ私は2つの投稿記事を読んで、久々に心が軽くなるのを感じました。
「そうなんすよ」と、そういう言葉が、自然と私の口から漏れました。
言い替えると、「日本も、ここまで進歩した」ということです。
ほんの10年前、15年前には、考えられなかったことです。
子どもたちや、子どものかかえる問題を見る目が、大きく変わってきたということです。
たとえば以前は、幼児教育といえば、お遊戯にお絵かき、あとは季節ごとの行事を
追いかけるだけのものでした。
またそれをもって、幼児教育と誤解している人が多かったです。

 が、今は、心理学や大脳生理学、さらには教育学の3つが、三位一体となって、
子どもの世界をながめるようになってきています。
「治療」という言葉はあまり好きではありませんが、それぞれの問題について、
さらに科学的な原因追及も進んでいます。
当然のことながら、教師のレベルも高くなり、専門性も要求されるようになって
きています。
あと10年もすれば、簡単な診断名をつけるくらいは、現場の教師にも許される
ようになるかもしれません。
(医療機関は反対するでしょうが……。)

 ともあれ、この2人の親には、「それでよかったのですよ」と。
そう言いたいです。
あとはここをスタートラインにして、前に向かって進んでいく。

 最後に、Kさん(場面かん黙児)についてですが、(1)早急な解決は、
あきらめなさい。
(2)それがその子どもの性格として、受け入れなさい、です。
本人は、もうじゅうぶん、がんばっています。
ここであれこれ言うと、かえって子どもが自信をなくしたり、神経症を発症したり、
症状をこじらせてしまいます。
そのかわり、ほんの少しでも改善が見られたら、おおげさにそれをいっしょに
喜んでみせてあげてください。
「よかったわ」「すばらしかったわ」「うれしかったわ」とです。
(3)あとは5年単位の時間をみてください。
「5年前とくらべて、どうか」とです。
1〜2単位の変化で、一喜一憂しないこと。
またこの問題は、(何も問題ではありませんが)、そういう問題です。

 ただ周囲の先生や子どもたちには、誤解を招きやすいので、それとなく、
率直に子どもの診断名や症状名を話しておくことも大切です。
私のところでも、ときどきこのタイプの子どもが、いじめの対象になることがあり
ます。
そういうときは、相手の親(いじめをする子どもの親)に、手紙を書いたり、
会って話をしたりして、理解を求めるようにしています。

 ともかくも、掲示板への投稿、ありがとうございました。
あとは、ヤフーの検索エンジンなどを使って、「はやし浩司 ADHD」、
あるいは「はやし浩司 場面かん黙」などを検索してみてください。
具体的な指導法は、あちこちに書いてきました。

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 
BW はやし浩司 ADHD児 AD・HD児 場面かん黙児 緘黙児 はやし浩司)


Hiroshi Hayashi+++++++July. 2010++++++はやし浩司




















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浩司 子育ての悩み 子供の心 育児相談 育児問題 はやし浩司 幼児の心 幼児の心理 育児 はやし浩司 育児疲れ 子育てポイ
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司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやしひろし 林ひろし 静岡県 浜松市 幼
児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやし浩司・林浩二(司) 林浩司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐
阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 Hiroshi Hayashi / 1970 IH student/International House / Melbourne Univ.
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育児論はじめての登園 ADHD・アメリカの資料より 学校拒否症(不登校)・アメリカ医学会の報告(以上 はやし浩司のタイプ別育児論
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