Q&A12
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【1】

Q:祖父母と、子どもの教育問題で対立することが多いが、どうしたらよいか。祖父母は何ごとに
つけ、子どもの教育に対して口をはさむ。

(Grand parents interfere our life and our way we raise up our children.)

A:もう20年近く前ですが、調査をしてみました。その結果わかったことは、つぎのようなことで
す。

まず祖父母と同居するなら、結婚当初、もしくは子どもが生まれる前にします。こういうケースで
は、ほとんどの母親(嫁)は、「祖父母と同居してよかった」と答えています。問題は、途中から
の同居です。特に子どもがある程度大きくなってからの同居は、何かと問題が起きるようです。
その中でも一番多いのが(母親からの回答)、祖父母が子どもの教育に口を出して困る、とい
うもの。子ども(祖父母からみれば孫)を取り合って、壮絶な家庭内戦争を繰り返す人はいくら
でもいます。

 相談の方のケースはどちらかわかりませんが、多分、途中からの同居ではないかと思いま
す。夫婦として、親子として、ある程度「形」ができたところに、祖父母が入ってくるため、どうし
てもそこで摩擦が生じます。この摩擦が、家庭内騒動の原因というわけです。実際、この種の
騒動は、母親も妥協しないため、深刻になるケースがほとんどです。最終的には、別居か、さ
もなくば離婚というところまで発展してしまいます。

 そこでこう考えます。(1)別居か離婚かという段階まで進んでいないようだったら、祖父母に
子どもの教育を分担してもらいます。その分、母親は自分で好き勝手なことをすればよいので
す。こうした割り切りが、家庭に風を通します。祖父母には、「おじいちゃん、おばあちゃんがい
てくださるから、私は助かります」と言えばいいのです。

よく「祖父母の甘やかし」を心配する母親がいますが、全体としてみれば、マイナーな問題で
す。(あなたのご主人よりは、あなたの子どもはよい子どもになるはずです。)まずいのは、祖
父母と父母の教育姿勢がちぐはぐになるときです。子どもが船頭をなくした状態になりますの
で、ご注意ください。

 (2)別居か、離婚かというレベルなら、あとはあなたがご判断ください。








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【2】

●夫との違い

(I have different views of raising up children from my husband. My husband is short-
tempered and rough to our children.)

1 夫の怒りかたが荒っぽくて困っている。できれば話して(言葉で)わからせたいのに、夫は
怒鳴ったり、手をあげることも・・・。

★『夫婦は一枚岩』というのが、子育ての鉄則です。夫婦で意見の衝突があっても、子どもの
前では見せないようにします。また『船頭は一人』という鉄則もあります。こういうケースでは、
母親は、まず父親を立てる。決して男尊女卑的なことを言っているのではありません。たがい
に高度な次元で尊敬しあってこそ、それを「平等」といいます。

子どもの前では、「お父さんがそう言っているから、そうしなさい」と、あくまでも父親の側に立ち
ます。納得がいかないことがあれば、子どもが寝静まったあとにでも、「私はこう思うけど……」
と、意見の調整をします。

★そうでなくても、むずかしいのが子育て。これから先、夫婦の心がバラバラで、どうして子育
てができるというのでしょうか。なおこういうケースでは、夫が怒鳴ったり、手をあげたりしそうで
あれば、その前に、夫の言いたそうなことを前もって、言うようにします。いわゆる夫の機先を
制するということです。「そんなことをすると、お父さんに叱られますよ!」と。夫に抵抗すればす
るほど、夫の心は、あなたや子どもから離れていきます。これは子どもの問題というより、夫婦
の問題かもしれません。どこか夫婦の間に、すきま風が吹いていませんか。私には、そちらの
ほうが気になります。

★なお、親子の信頼感は、「一貫性」で決まります。E・H・エリクソンという心理学者も、「親(とく
に母親)の安定的態度が、基本的信頼関係を結ぶ基礎である」というようなことを言っていま
す。要するに親の心がグラグラしていては、親子の間で、信頼関係を結ぶことができないだけ
ではなく、つづいて、子どもは、園や学校の先生、さらには友人との信頼関係を結べなくなりま
す。よきにつけ、悪しきにつけ、親は、一本スジの通った子育てをします。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

2 食事中のマナーについて。夫はテレビを見ながら食べている。でも、子どもには、ごはんを
食べるときはテレビを消しなさい」と言ってあるので、子どもの教育上、夫にはテレビを消して、
協力して欲しい。

(My husband does not care watching TV while we are having dinners. I always ask to stop 
TV but he does not follow me.)

★子育ての世界には、メジャーな問題と、マイナーな問題があります。家庭の役目は、家族が
外の世界で疲れた心と体をいやすことです。そのために「家庭はどうあるべきか」を考えるの
は、メジャーな問題。「家庭でのこまごまとした、ルール」は、マイナーな問題ということになりま
す。マイナーな問題に引き回されていると、メジャーな問題を見失うことがあります。そこでこう
したマイナーな問題は、言うべきことは言いながらも、あとは適当に! その時と、場所になれ
ばできればよいと考えて、おおらかに構えます。

★また子どもの世界には、『まじめ八割、いいかげん二割』という鉄則があります。「歯をみが
きなさい」と言いながらも、心のどこかで、「虫歯になったら、歯医者へ行けばいい」と思うように
します。虫歯の痛さを知って、子どもは歯をみがくことの大切さを学びます。それだけではあり
ません。

子どもは、そのいいかげんな部分で、羽を伸ばします。子育てでまずいのは、神経質な完ぺき
主義。家庭が家庭としての機能を果たさなくなるばかりか、子どもの心をつぶしてしまいます。
さらに子どものことで、こまごまとしたことが気になり始めたら、あなた自身の育児ノイローゼを
疑ってみます。

★「しつけ」と「ルール」は違います。「しつけ」は、自律規範のことをいいます。この自律規範
は、初期のころは、親から与えられますが、やがて子どもは、自分で考え、自分で判断し、自
分で行動するようになります。子どもをしつけるということは、いかにして子どもを自律させるか
ということ。一方、ルールは、あくまでもルール。むしろ『ルールがないから家庭』と言います。ま
たイギリスの教育格言にも、『無能な教師ほど、ルールを好む』というのもあります。これを言い
かえると、『無能な母親ほど、ルールを好む』(失礼!)となります。

★ルールは、つくるとしても、家庭では最小限に。夫の立場で言うなら、「家に帰ってきてから
は、のんびりとテレビでも見ながら、食事をしたい」ということではないでしょうか。私なら妻か
ら、そんなこまごまとしたルールを言われたら、気がヘンになります。なお、「食事中はテレビを
見ない」というのは、マナーでも何でもありません。「マナー」というのは、「他人の心を害さない
こと」を言います。

そういうマナーは大切ですが、「テレビを見ながら、食事をしてはいけない」というのは、マナー
ではありません。いわんや「教育上……」と、おおげさに構えなければならないような、問題で
はありません。もしどうしても気になるようだったら、テレビを置く場所をかえるとか、向きをかえ
てみてはどうでしょうか。ちなみに、私は、毎日、テレビを見ながら、夕食を食べています。

★要するに子育てをするときは、いつもメジャーな視点を忘れないこと。いつも、「より大切なこ
とは何か」と考えながら、します。そういう視点が、あなたを親として、大きな人間にします。こま
かいルールで、がんじがらめになっている家庭からは、大きな子どもは生まれません。








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【3】

3 子どもの習い事など。園のお友だちなどを見ると、習い事をさせる人もけっこういます。子ど
ももやりたがっていることだし、私としては何かやらせてもいいのでは? とおもっているけど、
夫は「まだ早い。子どもはのびのび遊んでいればいい」と。この感覚の違いって、これからもも
めごとの原因になりそうで・・・。

(Many children go to learning schools or piano lessons etc, children of my neighbours. I feel 
nervous about it.)

★親には、三つの役目があります。子どもの前を歩く。子どものガイドとして。子どものうしろを
歩く。子どもの保護者として。そして子どもの横を歩く。子どもの友として。日本の親は、子ども
の前やうしろを歩くことは得意ですが、子どもの横を歩くのが苦手。そういう発想そのものがあ
りません。

こういう相談のケースでも、「(子どもに)やらせる」という発想そのものが、気になります。大切
なことは、子どもの方向性を見極めながら、「あなたはどう思うの?」と、そのつど、子どもの心
を確かめながら、行動することです。習い事をするしないかは、あくまでもその結果です。

★で、習い事をするにしても、この時期は、「楽しませること」を考えてします。(できる、できな
い)ではなく、(楽しんだかどうか)をみます。そういう前向きな姿勢が、子どもを伸ばす原動力と
なります。もう少し専門的には、「プラスのストローク(働きかけ)」を大切にするということです。

★この時期は、ややうぬぼれ気味のほうが、あとあとよい結果を生みます。ですからそのつ
ど、「あなたはよくできる」「あなたはもっとできるようになる」と、プラスの暗示をかけていきま
す。ほかに『一芸論』(子どもに一芸をもたせる。一芸を伸ばす)や、『才能は作るものではな
く、見つけるもの』という鉄則もあります。参考にしてください。







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【4】

●ママ友だちとの違い

1 何かトラブルがあると「うちの子にかぎって、そんなことはしない!」と、決まって言う母親が
いる。自分の子が原因になっていても、よその子から疑うなんて。「他人は他人」と思っていて
も、やっぱり頭にきちゃう!

(I have some troubles with young mothers.)

★反面教師という言葉があります。あなたのまわりに「親バカ的な人」(失礼!)がいたら、いつ
も「自分はどうか?」と自問してみます。そういう親を非難するのではなく、自分自身が伸びるた
めの反面教師にします。このケースでも、「頭にきちゃう」ではなく、「親というのはそういうもの。
ならば自分はどうなのか?」という視点でみるようにします。そうすれば、少しは怒りがおさまる
はずです。

★このケースで気になるのは、むしろ相手側の親子です。「うちの子にかぎって」と思っている
親ほど、子どもの心がわかっていない。それだけではない。ひょっとしたら、その子どもは、親
の前で、いい子ぶっているだけ? こういうのを「仮面」といいます。さらにひどくなると、心(情
意)と、表情や言動が遊離するようになります。不愉快に思っているはずなのに、ニコニコ笑う
など。こうなると、親の側から見ても、自分の子どもが何を考えているかわからなくなります。親
子断絶の初期症状と考えて、警戒します。

★信頼関係を築くためには、(さらけ出し)→(心を開く)というプロセスを踏みます。「どんな恥
ずかしいことでも、たがいに言いあえる」「何をしても、何を言っても、たがいに許しあえる」とい
う関係があってはじめて、信頼関係を築くことができます。親子とて、例外ではありません。しか
し今、信頼関係どころか、親子でも、心を開けないケースが、ふえています。先日も、私に、「う
ちの子(小二男児)がこわいです。私のほうから、あれこれ言うことができないので、先生のほ
うから言ってください」と言ってきた、母親がいました。

★一方、心を開けない子どもは、開けない分だけ、心をゆがめます。いじける、ひがむ、つっぱ
る、ひねくれるなど。それを防ぐためにも、子どもには、まず言いたいことを言わせ、したいこと
をさせます。その上で、よい面を伸ばし、悪い面を削るようにします。相手側の親子には、そう
いう姿勢が感じられません。ひょっとしたら溺愛ママ? 自分の心のすき間を埋めるために、子
どもを利用しているだけ? そういう視点で見てあげると、さらに怒りがおさまるかもしれませ
ん。









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【5】

2 育児論に自信があり、「私の子育ては正しくて間違いはない!」と言ってはばからないママ
が園にいる。みんなそれぞれなのに、人の子育てにも口を出してくる始末。もう、ほっといてほ
しいのに。

(So-called expert mothers interfere my own child. It is nothing to do with them. Please 
leave me alone!)

★ほかの親とのつきあいは、『如水淡交』が原則。「淡く水のように」という意味です。中に、自
己中心的で、押しつけ的なことを言ってくる親もいますが、そういう親とは、サラサラと水のよう
に交際するのが、コツです。

この世界、その底流では、親たちのドロドロの、それこそ血みどろの戦いがウズを巻いていま
す。それに巻き込まれると、かなり神経の太い人でも、参ってしまいます。だから交際するとし
ても、園や学校の行事の範囲だけにとどめます。決して深入りしてはいけません。間に子ども
がいるため、一度、こじれると、この種の問題は、とことんこじれます。もしどうしても、ということ
なら、あなたの子どもが通っている園や学校とは、直接関係ない世界に住んでいる親と交際す
るようにします。

★ただ子育てで注意しなければならないのは、カプセル化です。カプセル化というのは、親子
だけの狭い世界でマンツーマンの生活をすることいいます。そしてその世界だけで、独自の価
値観を熟成してしまう……。家族が、ちょうど小さなカプセルに閉じ込められるようになるので、
カプセル化といいます。

一度カプセル化すると、同じ過干渉でも、極端な過干渉、あるいは同じ溺愛でも、極端な溺愛
になりますから、注意します。それを防ぐためにも、自分のまわりは、いつも風通しをよくしてお
きます。つまりたがいの情報を交換することは悪いことではありませんので、「ほっといて!」で
はなく、「また教えてね!」というような、つきあい方に切りかえてみてはどうでしょうか。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

3 うちによく遊びに来る子が、まったくしつけされていない。人の家の冷蔵庫を勝手にあけた
り、寝室(入ってはダメと言ってある所)に入ったり・・・。しかも、それを見ても、本人の親は何も
注意しない!「おたくのしつけ、どうなってるの!」って感じ。「もうこないで!」と言いたいが、子
ども同士は仲がいいので、言えない。

(Some of the kids who come to my house and play with my son are not well-educated. They 
are rough. What shall I do?)

★こういうときの鉄則は、ただ一つ。『友を責めるな、行為を責めよ』です。相手の子どもの行
動のどこか、どのように悪いかを、子どもに話しても、決して相手の子どもの名前を出してはい
けないということです。「よそのうちの冷蔵庫を勝手にあけるのはよくないね」「そのおうちの人
が入ってはいけないという部屋に入ってはいけないね」と、です。

こういうケースで、「○○君とは遊んではダメ」と、子どもに言うことは、子どもに、「親を取るか、
子どもを取るか」の択一を迫るようなもの。あなたの子どもがあなたを取ればよし。そうでなけ
れば、あなたとあなたの子どもの間に大きなキレツを入れることになりますから、注意してくだ
さい。なおこの鉄則は、これから先、あなたの子どもがおとなになるまで、有効です。

★で、あえて言うなら、あなたの子どもは、その子どもといっしょにいることが、楽しいのです。
子どもというのは、無意識のうちにも、居心地のよい仲間とつきあいます。つまり『類は友を呼
ぶ』です。そこで大切なことは、あなたの子どもにとって、どこがどう居心地がよいかを知ること
です。ひょっとしたら、あなたのほうが、ガミガミとこまかいしつけをし過ぎていませんか。……
そうではないと思いますが、そんなことも疑ってみることも、ときには大切です。

★これから先、あなたの子どもは、無数の人間関係を、いろいろな場所で結びながら、その間
でのやりくり、つまり社会性を身につけていきます。そういう意味では、悪友もまた、必要なので
す。社会に対する免疫性も、そこから生まれます。だからといって悪いことを容認せよというわ
けではありませんが、一般論として、非行などのサブカルチャ(下位文化)を経験した子どもほ
ど、社会人になってから常識豊かな人になることも、よく知られています。「悪いからダメ」式
に、子どもを押さえつけるのではなく、むしろ逆に、「あの子はおもしろい子ね」式に、相手の子
どものよさを発見してみてはどうでしょうか。









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【6】

●義父母・父母との違い

1 子どものほしがるものは何でも与えてしまう姑。特に、お菓子やおもちゃは、わが家なりの
ルールを決めて、守らせたいのに。今まで一生懸命に言い聞かせてきたのが無駄になる!

(My grand parents are such people who are too sweet to my son and daughter. They are to 
spoil them in a sense.)

★昔の人は、「子どもにいい思いをさせるのが、親の愛の証(あかし)」「いい思いをさせれば、
子どもは親に感謝し、それで絆(きずな)は太くなるはず」と考えて、子育てをしました。今でも、
日本は、その流れの中にあります。だから今でも、誕生日やクリスマスなどに、より高価なプレ
ゼントであればあるほど、あるいは子どものほしがるものを与えれば与えるほど、子どもの心
をとらえるはずと考える人は少なくありません。しかしこれは誤解。むしろ、逆効果。

イギリスの格言に、『子どもには、釣竿を買ってあげるより、いっしょに釣りに行け』というのが
あります。つまり子どもの心をつかみたかったら、モノより、思い出というわけです。しかし戦後
のひもじい時代を生きた人ほど、モノにこだわる傾向があります。「何でも買い与える」という姑
の姿勢の中に、その亡霊を見ることができます。

★また昔の人は、「親(祖父母)にベタベタ甘える子どもイコール、かわいい子イコール、いい
子」と考える傾向があります。そして独立心が旺盛で、親を親とも思わない子どもを、「鬼の子」
として嫌いました。今でも、そういう目で子どもを見る人は少なくありません。あなたの姑がそう
だとは言いませんが、つまりこうした問題は、子育ての根幹にかかわる問題なので、簡単には
なおらないということです。あなたの姑も、子ども(孫)の歓心を買うことにより、「いいおばあち
ゃん」でいたいのかもしれません。

そこでどうでしょうか。この私の答を、一度、姑さんに読んでもらっては? しかし子育てには、
その人の全人格が集約されていますから、ここにも書いたように、簡単にはなおりません。時
間をかけて、ゆっくりと説得するという姿勢が大切です。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

2 嫁と舅・姑の違いって必ずあるし、それはしかたないことと割り切っています。でも、我慢し
て「ノー」と言えないのでは、ストレスもたまるいっぽう。同居するとますます増えそうなこのモヤ
モヤ。がまんにも限度があると思うから、それを越えてしまったときがこわい!

(I can't bear living together with my parents-in-law.)

★もう、同居している? それともしていない? 祖父母との同居問題は、最終的に、「別居
か、もしくは離婚か」というところまで覚悟できないなら、あきらめて、受け入れるしかありませ
ん。たしかに問題もありますが、メリットとデメリットを天秤(てんびん)にかけてみると、メリット
のほうが多いはず。私の調査でも、子どもの出産前から同居しているケースでは、ほぼ、一〇
〇%の母親が、「同居してよかった」と認めています。

★問題は途中同居(つまり子どもがある程度大きくなってからの同居)ですが、このばあいも、
祖父母との同居を前向きに生かして、あなたはあなたで、好きなことをすればよいのです。仕
事でも、趣味でも、スポーツでも。「おじいちゃんやおばあちゃんが、いっしょにいてくださるの
で、助かります」とか何とか言って、です。祖父母の甘やかしが理由で、子どもに影響が出るこ
ともありますが、全体からみれば、マイナーな問題です。子ども自身の自己意識が育ってくれ
ば、克服できる問題ですので、あまり深刻に考えないようにしてください。

★なお、「嫌われるおじいちゃん、おばあちゃん」について、私は以前、その理由を調査してみ
たことがあります。その結果わかったことは、理由の第一は、健康問題。つぎに「子どもの教育
に口を出す」でした。今、日本の子育ては、大きな過渡期にあります。(孫の教育に口を出す祖
父母の時代)から、(祖父母は祖父母で、自分の人生を生きる時代)へと、変化しつつありま
す。そこで今は今で、そのストレスをしっかりと実感しておき、今度は、あなたが祖父母になっ
たとき、(その時代は、あっという間にやってきますが……)、そういうストレスを、つぎの若い夫
婦に与えないようにします。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

3 何かあると自分の子育て論で迫る母。「昔は8か月でオムツが取れた」とか「昔は○○だっ
たのに」など、自分の時代にことを持ち出して、いい加減なことばかり。時代は進んでいるの!
 今のやり方をもっと認めて!

(My mother always compare me with older people like my mother. It is her common way of 
saying that older time is better than now.)

★『若い人は、老人をアホだと思うが、老人は、若い人をアホだと思う』と言ったのは、アメリカ
の詩人のチャップマンです。「時代は進んでいる」と思うのは、若い人だけ(失礼!)。数十万年
もつづいた子育てが、一世代くらいの時間で変わるはずもないのです。いえ、私は、このこと
を、古い世代にも、若い世代にも言いたいのです。子育てに「今のやり方」も、「昔のやり方」も
ないのです。もしそう見えるなら、疑うべきは、あなた自身の視野の狭さです(失礼!)。

★もっともだからといって、あなたの姑の子育て観を容認しているのではありません。子離れど
ころか、孫離れさえできていない? いや、それ以上に、すでに姑とあなたの関係は、危険な
状態に入っているかもしれません。やはりイギリスの格言に、『相手は、あなたが相手を思うよ
うに、あなたを思う』というのがあります。これを心理学では、「好意の返報性」と呼んでいます。
つまりあなたが、姑を「昔風の子育てを押しつけて、いやな人」と思っているということは、まっ
たく反対の立場で、姑も、あなたのことを、「今風、今風って、何よ。いやな嫁」と思っているとい
うことです。

★実のところ子育てでまずいのは、個々の問題ではなく、こうしたギクシャクした人間関係で
す。つまりこうした不協和音が、子育て全体をゆがめることにもなりかねません。そこでどうでし
ょうか。こういうケースでは、姑を、「お母さんは、すばらしいですね。なるほど、そうですか!」と
もちあげてみるのです。

最初は、ウソでもかまいません。それをつづけていると、やがて姑も、「よくできた、いい嫁だ」と
なります。そしてそういう関係が、子育てのみならず、家庭そのものを明るくします。どうせ同居
しなければならないのなら、割り切って、そうします。こんな小さな地球の、こんな狭い日本の、
そのまたちっぽけな家庭の中で、いがみあっていても、し方ないでしょう!


+++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

●子育て観の違い

 子育てにかぎらず、ものの考え方や価値観のちがいは、あらゆる場所で、ごく日常的に起き
ます。ここにあげたもののほか、園や学校の先生との衝突やズレ、もっと大きくは、国の教育と
の衝突やズレなど。

 しかしこうした考え方や価値観のちがいを感じたときの鉄則は、それと戦うのではなく、それ
を乗り越えるということです。夫との対立、ママ友だちとの対立、さらには、祖父母との対立にし
ても、それと争っても意味はありません。「対立する」ということは、相手と同レベルであるという
ことを意味します。相手はまちがっていると思えば、相手も、あなたをまちがっていると思うも
の。そういう状態では、争えば争うほど、袋小路に入ってしまいます。では、どうするか?

 相手が納得するような、さらに高次元なものの考え方や価値観を、こちら側が追求します。そ
して結果として、相手のものの考え方や価値観を乗り越えます。相手が、それに気づいたと
き、対立は、ごく自然な形で、消滅します。たとえば……。

●山には登る

 遠くから見ると、低く見える山でも、登ってみると、意外と視野が広く見えるもの。子育ても、そ
の山登りに似ています。つまり高い山に登れば登るほど、それまでの自分がいかに小さな世
界で、右往左往していたかがわかります。

 そこでもし、相手がだれであるにせよ、その相手と子育ての見方、考え方で衝突したら、自分
の視野を高めることだけを考えます。相手の人が、つまらないと思えるなら、なおさらです。衝
突するということは、自分も相手と同じレベルだと認めるようなもの。しかしあなたが一歩、先に
出れば、相手が、小さく、とるに足りない相手とわかるはずです。たとえば私は、幼児や、暴走
族の若者たちに、「バカ!」と言われても、気にしません。もとから相手にしていないからです。
要するに、相手の子育て観を気にしないほどまでに、自分の子育て観を高めるということ。そ
の一つのヒントとして、「許して、忘れる」があります。

●子育ては、「許して、忘れる」の連続

 子どもへの愛情の深さは、どこまで子どもを許し、忘れるかで決まります。つまりどの度量の
広さこそが、親の愛の深さということになります。その「許して、忘れる」、英語では、「フォ・ギブ
&フォ・ゲッツ」と言います。「フォ・ギブ」という単語をよく見ると、「与える・ため」とも訳せます。
また「フォ・ゲッツ」は、「得る・ため」と訳せます。つまり「許して、忘れる」は、「子どもに愛を与
えるため、許し、子どもから愛を得るため、忘れる」ということになります。

 もちろんだからといって、子どもに好き勝手なことをさせろということではありません。ここでい
う「許して、忘れる」は、子どもにどんな問題があっても、また何か問題が起きても、子どもは、
ありのまま受け入れ、認め、そして許すということです。そういう視点で、もう一度、あなたの身
のまわりで起きている問題をながめてみてください。あらゆる問題が、ささいな問題に見えてく
るはずです。

●さらに自分を高めるために……

 子育てをしていて、道に迷ったら、つぎの四つの方向から、子どもをみます。まず未来をみ
る。あなたは子どもを育てているのではない。あなたは、子どもに子どもの育て方を教える。そ
れが子育てだ、とです。「あなたが親になったら、こういうふうに子ども(あなたからみれば孫)を
育てるのですよ。お母さんは、今、その見本を見せてあげるから、よく見ておくのですよ」と。そ
して同時に、「幸せな家庭というのは、こういうものですよ」「家族というのは、こういうふうに助
けあうのですよ」と。

 つぎに子育てをしながら、自分の過去をみます。もしあなたが、恵まれた環境で、何不自由な
く、両親の温かい愛に包まれて育てられたのなら、それでよし。そうでないなら(大半の人が、
そうですが……)、心のどこかがゆがんでいないかを冷静に判断します。ゆがんでいることが、
問題ではありません。そのゆがみに気づかないまま、同じ失敗を繰りかえすことが、問題で
す。しかしこの問題は、そういう過去があったということに気づくだけでも、そのほとんどが解決
したとみます。

 三つ目に、自分の子育てを「上」からみます。その視点は高ければ高いほど、よいということ
になります。まず近くの人の子育てをのぞいてもます。つぎに親戚や友人など。さらに世界の子
育てなど。子育てをしていて一番、こわいのは、「うちの子のことは、私が、一番よく知ってい
る」という過信と誤解。そして独断と偏見の世界に入ることです。子どもはたしかにあなたから
生まれますが、生まれたときから、別の人格をもった、一人の人間です。もっと言えば、世の中
にいる無数の人たちの一人、ということです。つまり子どものもつ可能性にせよ、人間性にせ
よ、あなたには、わかっている部分より、わかっていない部分のほうが、はるかに多いというこ
とです。そういう一歩退いた、謙虚な見方が、子どもを伸びやかな子どもにします。

 最後に、自分の心の中をのぞいてみます。ある母親は、自分の子ども(二歳男児)が、生死
の境をさまようような病気になったとき、「私の命は、どうなってもよい。私の命と交換してでもよ
いから、あの子の命を救ってほしい」と、願ったといいます。こうした「自分の命すらも、おしくな
い」という至上の愛は、まさに人は、子どもをもってはじめて知ります。子どもは、ただの子ども
ではない。あなたに、もっと大切なことを教えるために、今、あなたのそばにいる……。つまり
あなたが子どもを育てるのではない。子どもが、あなたを育てます。これから先、あなたは幾多
の山を越え、谷を越える。平凡は美徳ですが、平凡から何も生まれません。子育ては重労働で
す。ある心理学者は、「母親にとっての家庭は兵舎と同じ」というようなことを書いていますが、
楽な子育てというのはありません。しかしそういう苦労が、無数のドラマをつくり、あなたの人生
を、心豊かなものにします。立ちはだかる困難を恐れないこと。今、あなたのまわりで起きつつ
ある、さまざまな問題は、その第一歩ということになります。逃げるのではなく、勇気を出して、
そうした問題と取りくんでみてください。応援します。










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【7】

【はやし浩司先生へ】

In Japan we used to have two systems to care pre-school children, one is Hoikun-en 
(Nursery Cebter) and anotherone is Yochi-en (Kindargaten). This mother who sent me an E-
mail is worrying about which is better for her child.

●保育園VS幼稚園

娘のKは、生後六か月の頃から保育園に通っています。

今から考えれば笑い話なのですが、初めての育児でどうしたらよいかわからず
一人で悩んでどうにかなりそうだったので、六か月で育児休暇を切り上げ、
保育園に入れ、仕事に復帰したのです。

保育園の先生方は、私の悩みを聞いてくれたり、色々なアドバイスをしてくれました。

娘のKは、人見知りしない子だったので(今もですが)どの先生にでも抱っこされて、
大変かわいがってもらいました。(今もです)。

娘のKも、異年齢のお友達と遊びながら、時にはお姉ちゃん、時には妹となり、楽しく遊
んでいます。保育園に入れて良かったと感じています。

ところが、最近、一部のお母さん方に「Kちゃんは、どこの幼稚園に行くの?」と聞かれるので
す。

小学校まで今の保育園のままだと答えると、「えー!」と驚かれます。

「SSの幼稚園はひらがなを教える」とか「AA幼稚園は算数を教える」と言うのです。

更に「保育園出身では授業中じっと座っていられない」と・・・。
私達(夫婦)は、今の保育園で十分満足していますし、ひらがなや簡単な算数なら
普段の生活の中で少しずつ覚えていくと考えています。
(実際、ひらがなは自然と覚えていきましたし、数字にも興味津々です。)

幼稚園出身児に比べ、保育園出身児は授業中じっと座っていられないのでしょうか?
小学校でじっと座っていられるように、今から訓練(?)させるなんて、おかしいような気がする
のですが・・・。
それとも私達がおかしい・・・?

先生のお時間がある時にご意見を聞かせて頂ければ嬉しいです。
長々とすみませんでした。
(佐賀県U市、TEより)

+++++++++++++++

【はやし浩司より、TEさんへ】

 保育園児だからとか、幼稚園児だからという区別は、まったくナンセンスです。最近では、教
育カリキュラムにしても、保育園の幼稚園化が進み、区別できなくなっているのが、現状です。

保育園は旧厚生省管轄、幼稚園は旧文部省管轄という点だけをのぞけば、外から見たところ
では、区別できません。保育園と幼稚園の一本化が叫ばれる理由は、こんなところにもありま
す。(保育時間などの違いは、ありますが……。)

 さらに保育園児だから、じっと座っていることができないとか、幼稚園児だから、座っているこ
とができるとか、そういう区別も、ナンセンスです。問題の「根」は、もっと別のところにありま
す。まったく関係ないと断言できます。

 で、先取り教育と幼児教育、さらに早期教育は区別して考えます。小学校で勉強することを、
先に教えるのが、先取り教育。今、私の住む地方でも、掛け算の九九を教えている幼稚園が
あります。典型的な先取り教育です。
 
 幼児教育は、幼児期にしておくべきことを教える教育です。それについては、私の専門です
から、またマガジンを参考にしてください。

 で、早期教育ですが、これには、いろいろな意味が含まれます。(こういうふうに、区別して考
えるのは、正しくないかもしれませんが……。)たとえば音感やある種のスポーツなどは、かな
り早い時期から訓練を開始したほうがよいと言われています。たとえばピアノ演奏の練習など
は、満一〇歳を過ぎてから始めても、遅いと言われています。だから早い時期から、教育を始
める……。これが早期教育です。

 文字、数の学習については、私のサイトのあちこちに書いていますので、どうか参考にしてく
ださい。大切なのは、この時期、できる、できないではなく、前向きな姿勢が育っているかどう
か、です。文字や数を見たとき、逃げ腰になっているようであれば、失敗ということです。そのた
めにも、この時期は、「楽しい」ということだけを教え、あとは子ども自身がもつ力に任せます。

これが幼児教育です。

 あまりよい回答になっていないかもしれませんが、私は、TEさんの今のやり方で、よいと思い
ます。もちろんすぐれた教育を実践している幼稚園も多いので、一度、見学などをなさってみら
れたらいかがでしょうか。あくまでも「先生」「園」「園長」を見て、判断なさることだと思います。

園の選び方などは、たまたま一月七日号のマガジンに、簡単に書いておきました。どうか、参
考にしてください。

 なおいただきましたメールを、マガジンに転載しますが、よろしくご了解ください。ご都合の悪
い部分があれば、改めます。

                                はやし浩司









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【8】

Q:2週間程前に、長女と次女の事で相談のメールを送りました三重県のTTです。

 その後、今までは、主人の両親が車で3分のところに住んでいますので、次女は主人の義母
に預けて、義母が都合が悪い日は義父に見てもらっていたのですが、二人ともボランティアや
町内会の仕事などで忙しく、また幼稚園を休むようになってからは次女を一日中見てもらわなく
てはならなくて、それで疲れている様子も見られたので、先週から私の母が月曜から金曜まで
泊まりで来てくれています。1週間はそれで喜んでいた次女もやはりそろそろ「ママがいい!」と
言い始めています。それは、もうしょうがないことなんだと思っています。

 最近私は、長女の「学校へ行く」「行かない」の言葉に家族や祖父母までが振り回されてしま
っている、ということを思うようになりました。
 
 確かに学校へは行って欲しいですし、私が付いていくことで行けるのであればそれを続けた
いと、思っていました。また、そうしているうちに一人で行けるようになるなら、それまではと思っ
ていました。そして、私が教室にいなくても大丈夫になっているのだし、もう少し。。。と。  

でも、その為に妹や祖父母を巻き込んでしまってもいいのか?と思い始めました。長女が「学
校へ行く」「行かない」は本人の問題としてうけとめ、本人が決める事で、その事に私が振り回
されず、次女もいるので私は家にいた方がいいのではないか。 それで、今は行けている学校
へ行かなくなってしまっても、それはそれとして受け止めるしかないのではないのでは、と思うよ
うになりました。 でも、主人はそこまでは思えないようで、やはり学校で学び続けることを望ん
でいます。 それも解るのですが・・・はやしさんはどう思われますか?ぜひ、ご意見をお聞か
せ下さい。よろしくお願いします。

三重県TTより


A:拝復
メール、ありがとうございました。

この種の問題を考えるときは、
(1)どうにかなる問題と、
(2)どうにもならない問題の二つに分けて
考えます。
まず(2)のどうにもならない問題は何かということを
選り分けて、それについては、あきらめ、受け入れます。
それをまずはっきりと納得してください。

TTさんのばあい、協力的な義父母、それに母親が
いらっしゃるようなので、まずもって、たいへん
恵まれた環境にあることを忘れないでください。
多少ぎくしゃくすることがあるでしょうが、しかし
恵まれていることは事実です。

次に私のところへ寄せられる相談の中でもTTさんの
ケースは、軽いです。たいへん軽いケースです。
ですから、その程度の問題は多かれ少なかれ
どの家庭にもあると思ってください。外から見ると
どの家庭もうまく言っているように見えますが、
問題のない家庭はありませんよ。

さて本論ですが、不登校の問題は、とにかく
こじらせないこと。わかりやすく言えば無理をしない
こと。どこかに親や子どもを怒鳴りつけて不登校を
なおす(?)女性がいるそうですが、ああいった
やり方は邪道中の邪道です。今の状態をより悪く
しないことだけを考えて、とにかく心静かに対処します。
私のサイトの中に「不登校」がありますので、
どうかお読みください。
(実のところ、先週、私のパソコンにウィルスが入り、
鈴木さんのメールも含めて、すべて削除してしまい
鈴木さんの前回のメールをなくしてしまいました。
ですからもう一度、前回のメールを送って
ほしいと思っているような次第です。)

メールから察するに、あなたと義父母との関係は
どこかぎくしゃくしているように思います。
ひょっとしたら、あなたがあまり他人に心を
許さないタイプなのかもしれません。もう少し
心を許してみたらどうでしょうか。
巻き込んでしまってよいものかどうかという問題ではなく、
今は協力してもらうしかないと思います。
頭をさげて、あなた自身がすなおに助けを
請えばよいのです。「お父さん、お母さん
助けてください」とです。どこかであなたがへんに
がんばればがんばるほど、あなたも疲れますが
義父母も疲れますよ。

あなたのお母さんについても、そうですが、
「ママがいい」とのこと。そのあたりは、
だからといって、次女に問題がないようであれば、
受け入れてもらうしかないだろうと思います。
しっかりと説得すべきことは説得しながら、
事情を受け入れてもらうのです。もう
それが理解できる年齢にはなっていると
思います。

「長女が「学校へ行く」「行かない」は本人の問題としてうけとめ、本人が決める事で、その事に
私が振り回されず、次女もいるので私は家にいた方がいいのではないか。それで、今は行け
ている学校へ行かなくなってしまっても、それはそれとして受け止めるしかないのではないので
は、と思うようになりました。」とのこと。

……私もそう思います。本人がいちばん緊張状態にあることを
わかってあげましょう。この問題は、もう少し長い時間的経過をみながら
考えます。親は「3か月くらい」と思うかもしれませんが、私は一年単位
とみています。一年単位で気長に見るしかないのです。
サイトの「ポイント」(トップページより)のどこかに書いておきましたので
一度、お読みになっていただけませんか。

どちらにせよ、前回のメールをなくしてしまいましたので、
詳しくはお答えできません。ごめんなさい。
今日はこれで失礼します。








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【9】

Q:はじめまして

About the troubles between children, this mother sent me an E-mail, saying what she should 
do in sunc and such case.

長女8歳(小2)と長男6歳(年長)の二人の子をもつ母です。子供の友達関係の事
でメールしました。

長女は一人では遊ぶのが苦手で友達と遊ぶのが大好きな子なんですけど、7月頃から
友達と遊ぶ事がなくなりました。最初は一人でいたい時もあるのかなと思い気にして
なかったんですが、夏休み明けに偶然、公園で長女の同級生の何人かに会った時のこ
とです。同級生の子の一人がお菓子を持っていたのでみんなに配っていたのですが
「○○ちゃん(長女)にはあげない」と言ってくれませんでした。長女は悲しそうな
顔をするだけで何も言いません。そして次の日に他の同級生にあった時、長女は友達
と遊びたくて走って駆け寄ったら、みんな逃げて行ってしまったのです。その日から
そうゆう光景を何度か目にしています。それ以降気をつけて学校の様子を聞くと「放
課後は一人で本を読んでいるか、友達が遊んだりゲームをしているのを見ている」と言
います。仲間に加わる事はないみたいです。心配なので先生に上記の出来事を伝え、
様子を聞いたのですが「特に仲間ハズレにされている所はみかけません。」と言われ
ました。親の私からみると長女は気が弱いところがあったり少々難点はあるけれど、
特に問題のある性格だとは思ってなかったのですが、現状は友達と遊びたくても上手
くいってません。友達との事については話したがらないのであまり聞く事ができませ
ん。女の子は高学年になると派閥ができたり影でいじめがあったりすると聞き心配で
す。長女の学年は1クラスなので仲間ハズレにされたら小学校の間中ひとりでいるこ
とになりそうで怖いです。長女の友達に長女の事をどう思っている?と言う事も聞き
にくいので、どうしていいのかわかりません。

長男のことですが、お調子者で融通がきかない性格をしています。幼稚園で男の子同
士の争いも多いようで、長男は口が達者ではないし喧嘩でも負けることが多くてよく
拗ねたりごねたりします。友達から見下されていてリーダー格の子の気分で仲間ハズ
レにされることも少なくないようです。年少の頃から登園拒否をすることが何度もあ
りました。それでも今年の春までは男の子達のグループと遊んでいました。最近は仲
間に入れてもらいたいと言っているのですが、クラスの男の子の誰とも遊んでもらえ
ないのでしかたなく女の子と遊ぶ日が続いています。明るく振舞っているので先生に
分かってもらおうと長男の気持ち(男の子の仲間に入りたくても入れてもらえない。
一緒に遊ぼうと言っても無駄だからいじめられないように近寄らないようにしている
事)を伝えたのですが先生の態度は今までと変わっていませし、園での様子を聞いて
もあまり話してもらえません。長男の友達の一人が言うことには長男はよく怒ってい
るそうです。

来年は小学校に入りもっと親の目がいき届かなくなるので今のうちに状態を良くした
いと思うのですがどうすればいいのかわかりません。小学校は一クラスしかなく、今
の友達がみんな同じ学校に入るのでこれから先が不安です。どうしたら今の状態から
抜け出すことができるのでしょうか?

ところで先生にお聞きしたい事があるのですが、いじめはいじめる子だけに問題があ
ると思われますか?いじめられる子にもなにか原因があるのでしょうか?

一回のメールでずうずうしく二人分の相談事をしてしまいましたが同時に悩んでいま
す。私の育て方に問題があるのでしょうか?アドバイスをよろしくお願いします。

【はやし浩司より】

A:メ−ルありがとうございました。

親の心配は尽きないものです。特に子どもの人間関係には
気を使います。子どもが仲間とうまくつきあってくれればそれでよし。
そうでなければ、これまた頭痛のタネです。心配もそこから生まれます。
しかし子どもは、外の世界で、そのつどつらい思いをしながら、人間的に
成長していきます。この「つらさ」を、どこでどの程度与えるか。いいかえると
親は子どもが感ずるであろう「つらさ」にどこまで寛容であるかということに
なります。

一つのポイントは、(1)子どもが、そのつらさに耐えられる範囲であれば、
親としては苦しいことかもしれませんが、がまんするしかないということです。
口を出したり、介入すればするほど、結局は子どもが社会性のない子どもに
なってしまいます。問題を先送りするだけになってしまうということです。
(2)しかし親の目から見て、子どもに何らかの情緒的、精神的変化が見られたら
そのときは、積極的に介入していきます。(神経症、情緒不安症状、何らかの
精神障害的な症状などが見られたら、ということです。
神経症などについては、私のサイトに書いておきましたので、参考に
してください。)

メールの内容ですと、お嬢さんの先生も、弟さんの先生も、それほど積極的に
(つまり深刻に)考えておられないということは、一応プロの目から見て、
「あまり問題ない」とみておられるのではないかということです。
つまり「よくある、日常的な問題」という範囲ではないかということです。
先生には、問題をすでに話しておられるということですので、学校や幼稚園での
問題は、先生と子どもに任すしかないと思います。

そこで家庭ではどうするかということですが、(1)外の世界でかなり神経を
するへらしているようであれば、(実際、そうでしょうが……)、家の中では
子どもの生活をゆるめます。家庭の役割を、「しつけ」から、「やすらぎの場」へと
変化させます。多少、親に向かって生意気なことや、乱暴なことを言っても
許します。「ああ、うちの子は、外でつらい思いをしているから、家の中で
荒れるのだ」とです。そうして暖かい、濃厚なスキンシップのある家庭に
します。(日本人は本当にスキンシップのない国民です。少なすぎます!)

二人のお子さんに社会性(問題解決の技法として、人間関係をうまく調整
できないこと)は、多分に、お母さんの育て方に問題があったようです。
あなたはお子さんが小さいとき、親子だけの、マンツーマンの世界だけで
子育てをしませんでしたか? お子さんが「ものわかりのよい人」だけの
世界で育てられると、いわゆる社会性のない子どもになります。
今でもそうですが、お母さんの心配過剰な子育てが、(イコール過保護が)
今の状態を作り出していると考えてもよいのではないでしょうか。

もっとも過去のことを持ち出しても、いまさらどうにもなりませんが、
要するに、(1)もうこれから社会性のある子どもにするのは、たいへん……
というより、あきらめます。その上で、(2)「うちの子どもは、こんなものだ」
「人間関係が苦手なのだ」とわかってあげることです。オールマイティな
子どもを望まないこと。そういう子どもを求めないこと。約30%の子どもは
あなたのお子さんのようですし、集団行動を嫌います。(子どもだから
遠足や運動会が好きなはずと考えるのは、まちがいです。)
年長児になったら、子どもの「核」が見えてきますので、その核にあわせた
子育てを考えます。得意な面、苦手な面がはっきりしてくるということです。

少し問題を感ずるのは、お姉さんのほうです。

外の世界で、仮面をかぶっていませんか。いい子ぶったり、心の
状態を隠したりするとか。あなたというお母さんの前ではどうですか?
もしそうなら、過干渉、過関心を疑ってみてください。うれしかったら、
うれしそうな顔をし、そうでなかったら、そうでな顔をする。そうであれば、
問題はありません。心がつかみにくいと感ずるようであれば、少し
様子をみてください。あなたの前でおおいに甘え、おおいに言いたいことを
行っているようであれば、問題はありません。

弟さんは、女の子と遊ぶのが好きということですが、
これはお母さんの影響力が強すぎた(父親の影が薄い?)ということです。
今、そういう子どもは(男の子)は珍しくありません。
(実のところ、私も、母親との交際が主体なため、女性が集まる講演会は
得意ですが、父親が集まる講演会は苦手です。そういうものです。)
これも過去の育て方の問題に踏み込んでしまいますので、
いまさら問題にしても意味がありませんね。まあ、そういう状態なら
そういう状態でいいのではないでしょうか。やはり男児でも、実際
約30%(推定)は、女の子と遊ぶのが好きなどと言っています。
(実際のところ、小学校の低学年児でみるなら、最近では、
いじめるのは女の子、いじめられるのは男の子という図式がもう
20年ほど前からできています。男の子がやさしく、その一方で
昔的なたくましさをさくしているのは事実です。家庭環境、教育環境、
さらには環境ホルモン説までありますが、ともかくも事実はそんな
ところです。)

いじめについてですが、内容はきわめて複雑です。単なるいじわるから、
嫉妬がからんだ陰湿なものまで、いろいろあります。
本能的な闘争心に根ざすいじめもあれば、いじめられる前に
別の子どもをいじめるという防衛的ないじめもあれば、また
ストレスを発散するためのいじめもあります。で、それぞれの
ケースで、いじめられる側の問題も変わってきます。ですから
ご質問の件には、「あります」とも、「ない」とも答えられません。
(いじめを論じたら、それだけで膨大な量になってしまいます。
近くサイトにまとめておきますので、またサイトをご覧になってください。)

あなた様のケースでは、まだ「いじめられている」という段階ではないように
思います。年齢も小さいですし、本格的な「いじめ」は、そんなものではないです
よ。
熾(し)烈というか、陰湿というか、もっともっと激しいものです。
もしそうであれば、それはそれとして問題にしますが、メールの範囲内で
あれば、「よくある通常の悪戯」と考えていいのではないでしょうか。

で、問題が一つあるとすれば、あなた自身のことです。
過関心? 不安神経症? 過保護? ……などが疑われます。
お子さんが自分で外の世界でがんばっているようであれば、子どもの
世界のことは子どもに任せて、あなたは少し、親業から離れて、
つまり子育てを忘れて、外の世界を見たらいいのではないでしょうか。
そうでないと、あなた自身が、精神的にまいってしまいますよ。
お子さんがリーダー格の子どもの「下」に入るのは、親としても
どこかなさけない気持ちになるものですが、この段階では、どうにも
なりません。もし心配なら、お子さんの「一芸」を伸ばすようにします。
私のサイトから「一芸論」を検索して、どうか参考にしてください。
ヤフーで、「はやし浩司 一芸論」を検索すると、読んでいただけると
思います。要するに、「下」に入ったからといって、それがずっと続くものでは
ないし、リーダー格だから、それがずっと続くというものではないということです。
「下」にいる子どもでも、下を学ぶことによって、やがてべつのところで
リーダーになったり、あるいは同時に別のところで子分になったりしながら、
複雑な人間関係を展開するようになります。ここは静観したらよいと思います。
(親として、すべきことはないので……。)

いただく相談はもっともっと深刻なものが多いですよ。それにくらべたら、
二人とも、問題なく、いいお子さんのようですから、お母さんは
もっと自信をもって前向きに進んでください。親としてすべきことがあるなら、
キズついて、疲れて学校や幼稚園から帰ってくるお子さんを、暖かく
迎えてあげることぐらいしかもうありません。「よくがんばっているわね」と
お子さんの心を理解してあげてください。そういうねぎらいが、お子さんの
心をいやし、疲れを取ります。今のところ、初期症状としての神経症は
出ていないようなので、この点はうまくいっていると判断されます。

お母さんはお母さんで、そろそろ子離れの準備をします。子どもは小学
3年生くらいから親離れを始めますよ。お母さんはお母さんで子育てを
忘れられるような環境を自分の周囲に用意します。

何か神経症的な、心の問題が出てきたときには、また相談してください。力に
なれます。では……。

Q:はじめまして・・・。高3と中3の娘をもつ母親です。次女のことで、「ず〜〜っと」悩んでおりま
す。(涙)。
もっと早くに、このページにめぐりあっていれば・・・と後悔しきりです。中日新聞の「子育て論」
は読んでいましたし、一度、講演を聞かせていただいたこともあります。次女は中2の頃から、
目だって悪くなった様です。生活態度、言葉づかい等・・・昨年暮れ頃から、一つ年上の「彼氏」
ができ、すぐに、心配な交際(あえてそう言わせていただきます)の仕方となり、「最後の一線」
までは、どうか・・・親としては、それだけは守っていてほしい!と思うのですが、定かではありま
せん・・・このような心配は、私がたまたま耳にした、二人の電話でのやりとりや、手紙の内容
(いけない事とと承知で見てしまった)から、生じました。かなり衝撃的な内容で、(とても口では
いえない様な・・・性的表現)非常にショックを受けました。・・・いつからこんな子に・・・!?
と・・・。携帯電話も、親に内緒で勝手にプリペイド式のを購入し、もう何回か、カードを買い換え
ています。彼氏やクラスの男子と、くだらないエッチメールを交換しているようです。(あまりに
も、強烈な・・・)。今どき?と思われるかもしれませんが、うちは特にお小遣いはあげてなく、
時々おばあちゃん(私の実家の母)からいただくお小遣いから、カードなどは買っていて、その
他服など、入用に応じて、お金を与えています。(しぶしぶ)。

先生はよく、「勉強」のことは言ってはならないとおっしゃっていますが、「受験生」真っ只中の娘
は、本当に勉強からはほど遠い生活態度なんです。今、この場に及んでも、机の上には、分厚
いプリクラ帳と、マニキュア、毛抜き、鏡が置いてあって、いわゆる勉強道具はどこへやら・・・と
いう状態です。明日も、塾の模試があるらしいのですが、全く勉強に手がつかず、鱈腹食べて
は、(静かだと思うと)寝ている、という状態・・・今月ある英検(準2級)も自分から受けるといっ
て、受験料を支払ったものの、これまたどういうつもりなのか、マッタク勉強していません。私
も、たまりかねて、「受ける限りは、合格できるように努力したら?」とか、いってはみるのです
が、うん・・・と一応答えるだけ。なんだか、自分で勉強できなくなってしまっている、仕方がわか
らない?(今さらながら・・・)という感じがします。いったい、どういうつもりなのか・・・本人は、
「どっか、公立には入ってやるさぁー」みたいな言い方しますが、本心はちゃんと入りたい高校
があるのです。(それは、彼氏のいる高校なのですが)。でも、このままでは・・・。この時期皆そ
れぞれにガンバッテいることですし、こんなに勉強しないでいたら、実力なんてつきっこない
し、・・・私自信がかなり不安でいっぱいです。(←先生は、こんな言い方をすると、お笑いにな
るかもしれませんが(^−^;)やはり、失敗はこわいです。本人だって、絶対そのはずです!誰
だって、希望がかなって、幸せな気分で、笑って卒業式を迎えたいと思います。・・・まだまだと
思っていたこの時期もあっという間に訪れてしまい、日々は、どんどん過ぎてゆくのです・・・!
こうしていると、わたしはどうにかなりそうでー不安と焦りーのんき(本当はそうじゃないのかもし
れませんが)に寝ている娘が、憎らしいような、はがゆいような、なんともいえない嫌な気分で
す!!

それから、いったいこれはどういう「心理」かしら?と思うのですが・・・とにかく目立ちたがり屋
で、(本人も言っています)後期学級委員に立候補したり、「卒業式のとき、みんなの前で何か
言いたい」←(そんな次第があるか知りませんが)と言ったり、やたら声が大きかったり・・・ちょ
っと、あれっ?って思ってしまうような言動なのですが、これはどうなんでしょうか?なんか、心
理的に欠陥があるのでは?などと心配になります。

長くいろいろと書いてしまいましたが、私の悩み、心配はつきません・・・一刻でも早く、こんな状
態から開放されたい・・・っていうか、娘自信をなんとか良い方向へ(言い方悪いですが)向かわ
せたい!!という一心です。先生、お時間がなかなか足りないのでしょうが、どうか、こんな
「母」の悩みにお答えを頂戴したいと思います!勝手なお願いですが、できる限り早くに・・・(す
みません・・・)

このQコーナーを知って、藁をもすがる思いです。。。
どうか、よろしくお願い致します。     ☆とっても悩める母より☆


A:メールをいただきました。

まず前もって、お話しますが、「悩める母」様(以後Nさん)の悩みは、多かれ少なかれ、
ほとんどの親がもつ共通の悩みですよ。男女の性交渉にしても、もう関東地域では、
約70%弱の女子高校生が、卒業までに性体験をしています。また高校進学については
今、この静岡県では、約60%が、内申書による推薦入学という現状になっています。
私たちの時代とは、ものの考え方が違うし、社会も変わってきています。受験制度その
ものも変わってきています。
 
そういう前提で、Nさんのケースですが、お嬢さんのようなケースも、これまた多くはなくても珍し
くありません。まず第一に、「うちの子だけが……、なぜ?」というような悩み方はしないでくださ
いね。子どもは親離れをし、そして巣立っていきますが、それはいつも必ずしも、美しいものば
かりとは限りません。中には、壮絶な親子戦争を繰り返して巣立っていく子どももいます。そし
てここが大切なことですが、どんな巣立ちであるにせよ、Nさんの愛情がしっかりしていれば、
必ず子どもはあなたのところに戻ってくるということです。

単調直入に言いましょう。今、あなたがかかえている問題は、どれもいつか「笑い話」になるよ
うな問題ばかりです。いつかあなたは二女の方にこう話すのです。「あんたは、中学生のとき、
たいへんだったのよ。お母さん、心配したのよ」と。するとあなたのお嬢さんは、こういうので
す。「まあね、いろいろ心配かけて、ごめん」と。
 
順に話していきます。
 
(1)この問題は、「今の状態より、より悪くなって、はじめて今の状態が軽かった」と気づくことを
繰り返して、あなたから見れば(本当はそうではないのですが)、どんどんお嬢さんは悪く(?)
なっていきます。今はまだ塾へも通っている、立候補もするという状態ですが、それも今の状態
では風前のともしびかもしれませんね。今ここで大切なことは、今の状態をこれ以上、悪くしな
いことだけを考えて、お子さんと接することです。今はまだ進学のことを本人も多少は心配して
いるようですが、しかしここで追い込んでしまうと、その進学すら放棄してしまうかもしれませ
ん。そのとき、あなたは、今の状態が、まだよかったと気づくのです。
 
(2)セックスの問題は、これは熱病のようなものです。私も教える側から見ると、性体験してい
る女子中学生は、その様子からすぐわかります。「男」を見るめつきが、なまめかしくなるから
です。しかしそういう女子中学生を無数に見てきましたが、高校生になると、これまたふつうの
高校生になっていくから不思議です。(ふつうにするかしないかは、Nさんが、お子さんとのきず
なを切るかきらないかの違いです。このあとに、10月号にファミリスに書いた原稿を添付して
おきます。参考にしてください。)つまり熱病のようなものですから、抑えても抑えきれないでしょ
う。どうしようもないのです。私も、かつてはそういう中高校生を懸命に指導した経験もあります
が、結論は、「もう関せず」です。NさんにはNさんの、性教育観があるのでしょうが、今の若い
人たちは、別の観点で動いています。ショックを与えるようなことを言いますが、恐らく、年上の
男の子に誘惑されたというよりは、お嬢さんのほうが多分積極的だと思います。(今は、もう、
男の子が遊ばれる時代なのです。)

ですから、今は、避妊と性病だけに心配し、その指導を家庭でするしかないです。とにかく、今
の状況を悪くしないことだけを考えてください。本人たちに罪悪感などないのですから、いくら説
教してもムダですよ。
 
(3)受験についてですが、二女の方は、あなたが思っている以上に、学校で苦しみ、キズつい
ています。ただ誤解ですが、私は「勉強については言ってはならない」とは、書いたことはありま
せん。受験勉強は子どもの心に大きな影響を与えるとはあちこちで書いています。「言う」につ
いても、注意しなさいという意味です。追い込むと子どもの心をゆがめます。Nさんのあせる気
持ちはわかりますが、子育てはまさに許して忘れるの連続。そしてここが重要ですが、「あきら
めは悟りの境地」です。先ほども書きましたよに、今はもう受験制度もちがいますし、学校の指
導も変わってきています。それ以上に子どもたちの意識も変わってきています。昔は勉強がよ
くできる子どもは、それだけで尊敬されたものですが、今はむしろ「へんなヤツ」と見られたりし
ます。それにあわせて社会の構造も変わってきています。これからの日本は、学歴ではなく、
欧米型のプロ型社会がやってきます。どんなことでもいいのです。プロが生き残る時代が、もう
すぐそこまできているのです。意識改革をすべきは、まさに私たち自身のほうだということで
す。
 
(4)不安なNさんへ、

こう書いてもなぐさめにしかなりませんが、みんな不安ですよ。子どものテスト週間になると、病
院通いしたり、おかゆしかのどをとおらないという人は、いくらでもいます。息子が受験に失敗し
たあと、自殺をはかった母親すらいます。決してあなただけではないのです。それもこれも、も
とを正せば、明治以来(あるいは平安の昔から)続いた学歴信仰が原因なのです。私たちは、
みな、学歴信仰というカルト教団の信者なのです。もっと言えば、あなたの不安は、「つくられた
不安」ということです。もっと言えばあなた自身のエゴにもとづいた不安です。あなたがお嬢さん
をあなたの思い通りにしたいだけ。思い通りにならないから不安に思っているだけです。あなた
のお嬢さんは何も不安に思っていないのですから……。今、中学生で、家でまともに勉強して
いる子どもは、約10〜15%とみてよいでしょう。そんなものです。あなたはガリガリと机に向か
って受験勉強をするお嬢さんを理想の娘と思っているかもしれませんが、そんな子どもは、もう
いないということ。
 
(5)思うようにならないのが子育て。しかしそれでも子どもは育っていく。親は夢や希望を一枚
ずつはがされながら、自分の子育てを終えていくのです。あなただけではないし、あなたのか
かえている問題は、まだまだ軽い! もっと深刻なケースで苦しんでいる人はいくらでもいるし、
みんな外面をよくしているだけ。近所のSさんなんかは、二人の息子とも、高校へ入ってすぐ中
退。下の子どもは、そのまま名古屋にある人形劇団に入団。今は遊園地などでぬいぐるみを
着て踊っています。当時のSさんは死ぬほど苦しんだのですが、今は息子さんが楽しそうに踊
っている姿を見ながら、笑い話にしていますよ。そしてこう言っています。「人間、何でも、じぶん
の好きなことをすればいいのよね」とです。Nさんも、あと一歩でそういう境地に達することがで
きるようになりますよ。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

●最初は小さな亀裂

Very often the relationship between parents and their children collapse. This is an article 
about it.

最初は、それは小さな亀裂で始まる。しかしそれに気づく親は少ない。「うちの子に限って…
…」「まだうちの子は小さいから……」と思っているうちに、互いの間の不協和音はやがて大き
くなる。そしてそれが、断絶へと進む……。
 今、「父親を尊敬していない」と考えている中高校生は55%もいる。「父親のようになりたくな
い」と思っている中高校生は79%もいる(「青少年白書」平成十年)。が、この程度ならまだ救
われる。親子といいながら会話もない。廊下ですれ違っても、目と目をそむけあう。まさに一触
即発。親が何かを話しかけただけで、「ウッセー!」と、子どもはやり返す。そこで親は親で、
「親に向かって、何だ!」となる。あとはいつもの大げんか!
……と、書くと、たいていの親はこう言う。「うちはだいじょうぶ」と。「私は子どもに感謝されてい
るはず」と言う親もいる。しかし本当にそうか。そこでこんなテスト。
あなたの子どもが、学校から帰ってきたら、どこで体を休めているか、それを観察してみてほし
い。そのときあなたの子どもが、あなたのいるところで、あなたのことを気にしないで、体を休め
ているようであれば、それでよし。あなたと子どもの関係は良好とみてよい。しかし好んであな
たの姿の見えないところで体を休めたり、あなたの姿を見ると、どこかへ逃げて行くようであれ
ば、要注意。かなり反省したほうがよい。ちなみに中学生の多くが、心が休まる場所としてあげ
たのが、(1)風呂の中、(2)トイレの中、それに(3)ふとんの中だそうだ(「学外研」九八年報
告)。

●断絶の三要素

 親子を断絶させるものに、三つある。権威主義、相互不信、それにリズムの乱れ。「私は親
だ」というのが権威主義。「子どものことは、私が一番よく知っている」「子どもは親に従うべき」
という親ほど、あぶない。親が権威主義的であればあるほど、子どもは親の前では、仮面をか
ぶる。いい子ぶる。が、その分だけ、子どもの心は離れる。親は親で、子どもの心を見失う。次
に相互不信。「うちの子はすばらしい」という自信が、子どもを伸ばす。しかし親が「心配だ」「不
安だ」と思っていると、それはそのまま子どもの心となる。人間の心は、鏡のようなものだ。イギ
リスの格言にも、「相手は、あなたが思っているように、あなたのことを思う」というのがある。つ
まりあなたが子どものことを「すばらしい子」と思っていると、あなたの子どもも、あなたを「すば
らしい親」と思うようになる。そういう相互作用が、親子の間を密にする。が、そうでなければ、
そうでなくなる。三つ目にリズム。あなたの子どもがまだヨチヨチ歩きをしていたころを思い出し
てみてほしい。そのときあなたは子どもの横か、うしろを歩いていただろうか。そうであれば、そ
れでよし。しかしあなたが子どもの前を、子どもの手を引きながら、ぐいぐいと歩いていたとする
なら、あなたと子どものリズムは、そのときから狂い始めていたとみる。おけいこ塾でも何でも、
あなたは子どもの意思を無視して、勝手に決めていたはずだ。今もそうだ。これからもそうだ。
そしてあなたは、やがて子どもと、こんな会話をするようになる。親「あんたは誰のおかげでピ
アノがひけるようになったか、それがわかっているの! お母さんが高い月謝を払って、毎週ピ
アノ教室へ連れていってあげたからよ!」、子「いつ誰が、そんなこと、お前に頼んだア!」と。
 権威主義は百害あって一利なし。頭ごなしの命令は、タブー。子どもを信じ、今日からでも遅
くないから、子どものうしろを歩く。決して前を歩かない。アメリカでは親子でも、「お前はパパに
何をしてほしい?」「パパはぼくに何をしてほしい?」と聞きあっている。そういう謙虚さが、子ど
もの心を開く。親子の断絶を防ぐ。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

 (2)子どもが非行に走るとき

●こぼれた水は戻らない

 子どもは、なだらかな坂をのぼるように成長するのではない。ちょうど階段をトントンとのぼる
ように成長する。子どもが悪くなるときも、そうだ。(悪くなる)→(何とかしようと親があせる)→
(さらに悪くなる)の悪循環の中で、子どもは、トントンと悪くなる。その一つが、非行。暴力、暴
行、窃盗、万引き、性行為、飲酒、喫煙、集団非行、夜遊び、外泊、家出など。最初は、遠慮
がちに、しかも隠れて悪いことしていた子どもでも、(叱られる)→(居直る)→(さらに叱られる)
の悪循環を繰り返すうちに、ますます非行に走るようになる。この段階で親がすべきことは、
「それ以上、症状を悪化させないこと」だが、親にはそれが理解できない「なおそう」とか、「元に
戻そう」とする。しかし一度、盆からこぼれた水は、簡単には戻らない。が、親は、無理に無理
を重ねる……。

●独特の症状

 子どもが非行に走るようになると、独特の症状を見せるようになる。脳の機能そのものが、変
調すると考えるとわかりやすい。「心の病気」ととらえる人もいる。実際アメリカでは、非行少年
に対して薬物療法をしているところもある。それはともかくも、その特徴としては、(1)拒否的態
度(「ジュースを飲むか?」と声をかけても、即座に、「ウッセー」と拒否する。意識的に拒否する
というよりは、条件反射的に拒否する)、(2)破滅的態度(ものの考え方が、投げやりになり、
他人に対するやさしさや思いやりが消える。無感動、無関心になる。他人への迷惑に無頓着
になる。バイクの騒音を注意しても、それが理解できない)、(3)自閉的態度(自分のカラに閉
じこもり、独自の価値観を先鋭化する。「死」「命」「悪霊」などという言葉に鋭い反応を示すよう
になる。「家族が迷惑すれば、結局はあなたも損なのだ」と話しても、このタイプの子どもには
それが理解できない。親のサイフからお金を抜き取って、それを使い込むなど)、(4)野獣的
態度(行動が動物的になり、動作も、目つきが鋭くなり、肩をいからせて歩くようになる。考え方
も、直感的、直情的になり、「文句のあるヤツは、ぶっ殺せ」式の、短絡したものの考え方をす
るようになる)などがある。

 こうした症状が見られたら、できるだけ初期の段階で、親は家庭のあり方を猛省しなければ
ならない。しかしこれがむずかしい。このタイプの親に限って、その自覚がないばかりか、さら
に強制的に子どもをなおそうとする。はげしく叱ったり、暴力を加えたりする。これがますます子
どもの非行を悪化させる。こじらせる。

●最後の「糸」を切らない

 家族でも先生でも、誰かと一本の「糸」で結ばれている子どもは、非行に走る一歩手前で、自
分をコントロールすることができる。が、その糸が切れたとき、あるいは子どもが「切れた(捨て
られた)」と感じたとき、子どもの非行は一挙に加速する。だから子どもの心がゆがみ始めたら
(そう感じたら)、なおさら、その糸を大切にする。「どんなことがあっても、私はあなたを愛して
いますからね」という姿勢を、徹底的に貫く。子どもというのは、自分を信じてくれる人の前で
は、自分のよい面を見せようとする。そういう性質をうまく使って、子どもを非行から立ちなおら
せる。そのためにも最後の「糸」は切ってはいけない。切れば切ったで、ちょうど糸の切れた凧
ように、子どもは行き場をなくしてしまう。そしてここが重要だが、このタイプの子どもは、「なお
そう」とは思わないこと。現在の症状を今より悪化させないことだけを考えて、時間をかけて様
子をみる。一般に、この非行も含めて、「心の問題」は、一年単位(一年でも短いほうだが…
…)で、その推移を見守る。こじらせればこじらせるほど、その分、子どもの立ちなおりは遅れ
る。






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【10】

【子どもどうしのトラブル】

Q:我が家には小学校1年生の男の子(6歳)と幼稚園年少の女の子(4歳)の子供がいます。

今日は、下の子についての相談です。以前から近所に住んでいる3人兄妹の家と母親同士も
仲が良いということもありよく行き来をしています。前から気にはなっていたのですが、その家
の長女(2年生)が娘と良く遊んではくれるのですが、かなり強引なところがあり娘に「嫌だ」とい
う間さえも与えずにいろいろな面で突っ走っていきます。先日、その家族とキャンプに行った時
にもその子が「Kちゃん(娘の名)、私と一緒に寝たいって。だからそうするね」と行ってきまし
た。私が娘に確認すると「寝るって言ったもんねぇ」とその子が答える始末。「あのね、おばちゃ
んはいまKに聞いてるの」と言ったものの娘はその子の強引さに押されてしまったようで小さく
「うん…」とうなずきました、がいざ二人でテントに入ると娘の号泣が。「ママと寝たかったのに、
ママとが良かったのに」と。キャンプの間4日間そんなことの連続でした。帰ってきて、娘の髪の
毛を結わこうと分け目をつけている時に2箇所の円形脱毛を発見しました。ショックでした。原
因は、そのことしか考えられません。その子と娘とは年も離れているのですが、我が家の長男
とその子の弟とが同級のためにいつもセットでやって来るのです。その子の母親にもある程度
のことは伝えてあるのですが、なかなか……今では娘のその子が来るのを恐怖に感じていま
す。いつも、そんな様子を見ている長男も「琴を虐めるから来て欲しくない」と。私としては、そ
の弟君と長男とは遊ばせてあげたいのですが、お姉さんのほうはちょっと……今後、どのよう
に接していけばよいでしょう。

A:子どもどうしの交際には、ある一定の許容範囲と程度(深さ)があります。ある程度のトラブ
ルは、覚悟して子どもたちに任せます。こうしたトラブルを経験して、子どもは社会性と問題解
決の技法を身につけます。しかしその許容範囲を超える場合は、別です。ご相談の件ですが、
円形脱毛症の原因がその小2の女の子にあるとしたら、明らかに許容範囲を超えています。ど
こかで瞬間的な恐怖心を経験したのが原因です。年齢も年少と小2ですから、この時期には離
れすぎています。さらにその子どもに対して、恐怖心を感じているなら、当然、遠ざけます。ふ
つうめんどうみのよい、1〜2歳年上の子どもは、すばらしい先生になるのですが、このケース
では、かえって子どもをマイナスに引っ張ってしまいます。対人恐怖、自信喪失、神経症の原
因ともなりかねません。小2の女の子が、お嬢さんに対して、自分の欲求不満のはけ口にして
いるようならなおさら、遠ざけます。そしてできるだけ同年齢の子どもと遊ばせるようにします。
具体的な方法については、家の様子、友人関係などがわかりませんので、お答えできません
が、その女の子がきたら、お母さんがお嬢さんを外へ連れてでたり、間にこまめに入ったりす
ればいいのではないかと思います。数回繰り返すと、その女の子は来なくなるのでは……。長
男には、相手の子に「お前の姉を連れてくるな」と言うようにしむけたらどうでしょうか。要するに
こういうケースでは、相手の女の子を遠ざけるのが賢明です。


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【11】


【子どもに、セックスを見られてしまった】

Q:7歳の息子に、性生活そのものを見られてしまいました。その場は適当にごまかしましたが、
心にキズがついたのではないかと心配です。どうしたらいいでしょうか?

A:まったくありません。子どもがキズつくのは、親の不正義、不誠実、非倫理、不道徳的行為で
す。たとえば不倫現場を見られる、など。これはまずいです。が、夫婦が愛し合い、いたわり合
す姿は、どんどん見せます。(セックスまで見せろということではありません。) 国によっても違
いますが、ラテン系の国へ行くと、目のやり場のないほど、若い人たちは人の目もはばから
ず、抱き合ったり、愛撫しあったり、キスしたりしています。若い夫婦もそうです。アメリカでもそ
うです。オーストラリアは、もう少し謙虚です。しかし恐ろしいほど何もしないのが、日本人です。

 7歳ですから、やがてすぐ親たちが何をしていたかを知る時期にくるでしょうが、「へへへ」で
終わります。そういうものです。こうした例はたいへん多く、教室でも、ときどき、「きのうの夜、
パパとママが、裸でプロレスをしていた!」と言う子どももときどきいます。そういうときは、私
は、「ふうん。どこで?」ととぼけて聞くことにしています。すると子どもは「ふとんの上で……」と
言ったりします。その程度でおさめておきます。子どもは、ときどきおとなの世界をかいまみな
がら、情報を蓄積していきます。そしておとなになっていきます。

 要は、性にうしろめたさをもたせいないこと。スウェーデンでは、もう30年も前から、大学の講
義で、「セックスの仕方」そのものを教えています。教官が、「そこのA君、そこのBさん、前でセ
ックスしてみなさい」などと、まあ、実にあっけらかんです。日本人のように、「性」にうしろめたさ
をもたないことによるものです。親が悪いことをしたと思っていると、子どもに罪悪感をもたせて
しまいます。それは避けます。親が子どもに、「セックスは楽しいものよ」「愛し合う人どうしがす
るものよ」と、その年齢の子どもに言えるようになったとき、性の解放は達成されるのです。「秘
め事」ではないのです。また秘め事と考える必要もないのです。昔、スウェーデンのベッテルグ
レン女史という、性教育協会の会長の通訳として全国を回ったことがあります。その女史から
これは私が学んだことです。

 アングロサクソン系の夫婦は、ベッドの中ではいつも真っ裸です。子どもはいつもそういう夫
婦像を見ていますが、それで「子どもの心がゆがんだ」という話は聞いたことがありません。も
うその話には触れないで、知らぬ顔をして、子どもの成長を見守ればいいでしょう。(あえて文
字をピンクにしました! ははは)







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【12】

Q:あと片づけをしない

A:「あと片づけ」と「あと始末」は違います。子どもが外の世界をもつようになったら、あと片づ
けは大目に見ます。しかしあと始末は別です。どんなことでも、あと始末をしっかりとさせるよう
します。たとえば食後、食器をシンクにもってこさせるとか、など。






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【13】

Q:どうもよくない友だちと、つきあいはじめたようです……

A:そういうときは、「友を責めるな、行為を責めよ」(イギリスの教育格言)です。相手の子ども
の行為だけを責めて、決して友だちを責めてはいけません。「タバコを吸うことは、体に悪い」と
かなど。コツは、決して、相手の友だちの名前を出さないようにすることです。以下に、私が書
いた原稿(新聞コラムより)を、添付しておきます。

「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」・友を責めるな、行為を責めよ

 あなたの子どもが、あなたから見て好ましくない友人とつきあい始めたら、あなたはどうする
だろうか。しかもその友人から、どうもよくない遊びを覚え始めたとしたら……。こういうときの
鉄則はただ一つ。『友を責めるな、行為を責めよ』、である。これはイギリスの格言だが、こうい
うことだ。

 こういうケースで、「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」と子どもに言うのは、子どもに、
「友を取るか、親を取るか」の二者択一を迫るようなもの。あなたの子どもがあなたを取ればよ
し。しかしそうでなければ、あなたと子どもの間には大きな亀裂が入ることになる。友だちという
のは、その子どもにとっては、子どもの人格そのもの。友を捨てろというのは、子どもの人格を
否定することに等しい。あなたが友だちを責めれば責めるほど、あなたの子どもは窮地に立た
される。そういう状態に子どもを追い込むことは、たいへんまずい。ではどうするか。

 こういうケースでは、行為を責める。またその範囲でおさめる。「タバコは体に悪い」「夜ふか
しすれば、健康によくない」「バイクで夜騒音をたてると、眠れなくて困る人がいる」とか、など。
コツは、決して友だちの名前を出さないようにすること。子ども自身に判断させるようにしむけ
る。そしてあとは時を待つ。

 ……と書くだけだと、イギリスの格言の受け売りで終わってしまう。そこで私はもう一歩、この
格言を前に進める。そしてこんな格言を作った。『行為を責めて、友をほめろ』と。
 子どもというのは自分を信じてくれる人の前では、よい自分を見せようとする。そういう子ども
の性質を利用して、まず相手の友だちをほめる。「あなたの友だちのB君、あの子はユーモア
があっておもしろい子ね」とか。「あなたの友だちのB君って、いい子ね。このプレゼントをもっ
ていってあげてね」とか。そういう言葉はあなたの子どもを介して、必ず相手の子どもに伝わ
る。そしてそれを知った相手の子どもは、あなたの期待にこたえようと、あなたの前ではよい自
分を演ずるようになる。つまりあなたは相手の子どもを、あなたの子どもを通して遠隔操作する
わけだが、これは子育ての中でも高等技術に属する。ただし一言。

 よく「うちの子は悪くない。友だちが悪いだけだ。友だちに誘われただけだ」と言う親がいる。
しかし『類は友を呼ぶ』の諺どおり、こういうケースではまず自分の子どもを疑ってみること。祭
で酒を飲んで補導された中学生がいた。親は「誘われただけだ」と泣いて弁解していたが、調
べてみると、その子どもが主犯格だった。……というようなケースは、よくある。自分の子どもを
疑うのはつらいことだが、「友が悪い」と思ったら、「原因は自分の子ども」と思うこと。だからよ
けいに、友を責めても意味がない。何でもない格言のようだが、さすが教育先進国イギリス!、
と思わせるような、名格言である。






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【14】

Q:一人っ子の育て方の注意点を……

A:第一に考えなければならないのは、社会性の欠落です。ですから幼いときから、同年齢の子
どもたちと遊ぶ機会を多くしてください。この点さえ気をつければ、大きな問題は起きません。

ただどうしても一人っ子だと、過干渉、過関心、溺愛、過保護になりやすいですから、親は親と
して、別の生きがいを見出すようにしてください。子どもの問題というより、親の問題のほうが大
きいです。





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【15】

Q: 兄(8歳)と弟(6歳)の兄弟喧嘩が激しく手に負えません。

A: 兄弟喧嘩は、それが一定のワクの範囲なら、一に静観、二に静観。互いの言い分は聞い
ても、ジャッジはしない、です。ここでいう一定の「ワク」というのは、いわゆる「仲のよい兄弟の
範囲内で」という意味です。しかしそのワクを越えて、本当に憎しみあうとか、暴力行為が過激
になるというのであれば、もっと別の原因をさぐってみます。頭から押さえても、意味がないば
かりか、かえって喧嘩を激しくさせてしまいます。別の原因として考えられるのは、上の子ども
の側の嫉妬、欲求不満など。さらには外の世界で受けるストレスの発散など。情緒不安も考え
られます。それぞれのケースに応じて、考え、対処します。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

Q: 夫と子どもの教育のことでよく対立します。どうしたらよいでしょうか。

A: 子どもの前では意見の対立をしない……これが大鉄則です。子どもの前では、「お父さん
がそう言っているから、そうしなさい」とだけ言います。そして夫婦の意見の対立は、子どものい
ないところでします。賢い母親なら、そうします。昔から「船頭が二人では舟は進まないと言いま
す。夫婦の意見が一致していても難しいのが子育て。こういうときは、夫に船頭になってもら
い、夫に子育てをリードしてもらいます。……こう書くと、封建的なことを言っていると思われる
かもしれませんが、相談者が父親なら、私は逆のことを言います。つまり互いに高い次元にお
いて、子どもを教育します。子育てでタブー中のタブーは、互いの悪口を子どもに言うことで
す。「お父さんの給料が少ないから、お母さんは苦労しているのよ」式のグチもタブーです。母
親は子どもを自分の味方につけたいため、そう言いますが、かえって子どもの心は親から離れ
ます。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

Q: 子どもをどう叱ったらよいのですか。

A: 子どもを叱るときは、子どもにその子ども(あなたから見れば孫)の叱り方を教えるつもり
で叱ります。「あなたが親になったら、こういうふうに叱るのですよ」と、です。そういう心づもりを
どこかでもちながら子どもを叱ると、あなたと子どもの間にワンクッション置くことができ、ギクシ
ャクした関係を和らげることができます。あなたは親の見本なのです。そういうつもりで叱って
みてください。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

初めてメールさせて頂きます。
友人から先生のHPを教えてもらいました。

長男のことでご相談します。

今年入学した6歳になる長男です。下に2歳の弟がいます。3月生まれなので6歳に
なったばかりです。

赤ちゃんの頃からどちらかといえば神経質で、人見知りもあり、入園のときも母親か
離れられない子供でした。
それでもこの子なりのペースで成長してきたと思っていたのですが、入学して2週
間、懸念していたことが現実となり、少々悩んでおります。

几帳面でまじめすぎるところがあり、例えば忘れ物をしたり、人と違ったりすること
に過敏で、誰が責めるでもないのに泣けてきてしまいます。このところ、絵を描く機
会も多いのですが、「何でも自分の好きなものを描きなさい」と云われるとパニック
になるのか涙が出て手が進みません。

今日も学校でたまたま給食エプロンを間違えて使ってしまったらしく、それを先生は
責めたわけではないのに泣いてしまう、それを見ていた周りの子供たちが集まってき
たことでまた泣けてしまう・・・といった具合です。先生に質問したことを、先生が
聞き取れなくて聞き返すと、それだけでまた涙が出てきてしまうということもあった
ようです。

今に始まった事ではなく、保育園時代もその傾向はあり、結局は本人が乗り越えてい
くしかないと思っていたのですが、やはり何度か重なると、親としてどういう風に向
き合えばいいのか分からなくなり、ご相談した次第です。

強く言い聞かせた方がいいのか、本人が恥ずかしくなりこらえることが出来るように
なるまで、泣きたいだけ泣かせたほうがいいのか・・・。

何かアドバイス頂けるとありがたいです。(福岡県・TYより)


**************************************
メール、ありがとうございました。

私からの質問です。ご都合のよいときに
教えてくだされば、もっと的確にアドバイスできます。

(1)パニックになる症状は何歳から始まりましたか。
年中児になるころあたりから始まったはずですが、
思い当たることはありませんか?

(2)赤ちゃんのときから、親に
甘えるということを自然な形でしていましたか?
それともそうではありませんでしたか?

(3)下の子どもが生まれたあと、赤ちゃんがえりは
ありませんでしたか。下の子いじめはしませんでしたか。

今の症状は、いわゆる緊張性の情緒不安です。
(心はいつも緊張状態にあり、その緊張状態に
不安が入り込むと、一挙に情緒が不安定になります。
言い換えると、情緒不安というのは、心の緊張状態
がとれないことを言います。)

相手に心を許さない分だけ、緊張感がとれないのです。
原因の多くは、乳幼児期の神経質な子育てに求められます。
子どもが安心して甘えることができなかったとか。
スキンシップが不足していたかもしれません。

(4)赤ちゃんのとき、親に甘えましたか。
それを許しましたか。

(5)不安先行型の子育てをしていませんでしたか。
あるいは心配過剰?

(6)スキンシップは濃厚でしたか。あるいは早くから
親の手を離れて、保育園へ入れるようなことは
ありませんでしたか?

対人恐怖症と考えられますが、分離不安の可能性もあります。
その中でも、攻撃型(プラス型)と内閉型(マイナス型)
があります。パニックになるのは、マイナス型と考えて
よいでしょう。(プラス型はギャーと叫んで親のあとを
追いかけたりします。)症状は正反対ですが、
一番考えられるのは、下の子どもが生まれて、
赤ちゃんがえりを起こしたことです。

(6−2)分離不安の症状もあったようですが、何か思い当たる
事件はありませんか。無理に引き離したとか、迷子に
なったとか、あるいは親戚に預けられたとか、など。

(7)お子さんのリズムで生活していますか。それとも
手をぐいぐいと引きながら子育てをしてきたような
感じですか。

(8)お子さんを日常的に「あなたはおにいちゃんでしょ」式に
突き放していませんか。望まれて生まれてきたお子さんですか?
愛情をたっぷりと注いできましたか。


以上、TYさんからの返事をいただいた上で、
またお答えします。対処法などはそのとき返事
いたします。ご質問、ありがとうございました。
情緒が不安定になっているイコール、心の緊張感
がとれないでいるので、無理をしてはいけませんよ。
こじれると、結構やっかいなことになります。

今回はこれで失礼します。

**************************************
>
早速の返信、ありがとうございます。
記憶に不確かなところも多々ありますが、できるだけ思い出して書き出してみます。

いつも返信いただき、ありがとうございます。
今回の先生のお話に、少しほっとしつつも、改めて子育ての難しさを痛感しておりま
す。

先生のご質問に対し、改めて返答させて頂きます。

(1)パニックになる症状は何歳から始まりましたか。
> 年中児になるころあたりから始まったはずですが、
> 思い当たることはありませんか?
年長の半ばくらいからだったと思います。何かをきっかけにしてというような思い当
たることはないのですが。

> (2)赤ちゃんのときから、親に
> 甘えるということを自然な形でしていましたか?
> それともそうではありませんでしたか?
特に違和感は感じなかったと思います。甘えん坊の子でしたが、特にそれを厳しく突
き放すようなことはしなかったと思います。

> (3)下の子どもが生まれたあと、赤ちゃんがえりは
> ありませんでしたか。下の子いじめはしませんでしたか。
赤ちゃんがえりを心配しましたが、特にありませんでした。ただ、生まれたときに4
歳だったので、我慢して感情を表に出せなくなることが心配だったので、私としては
生まれてしばらくは何かにつけ、上の子を優先しました。

> 今の症状は、いわゆる緊張性の情緒不安です。
> (心はいつも緊張状態にあり、その緊張状態に
> 不安が入り込むと、一挙に情緒が不安定になります。
> 言い換えると、情緒不安というのは、心の緊張状態
> がとれないことを言います。)
>
> 相手に心を許さない分だけ、緊張感がとれないのです。
> 原因の多くは、乳幼児期の神経質な子育てに求められます。
> 子どもが安心して甘えることができなかったとか。
> スキンシップが不足していたかもしれません。
>
> (4)赤ちゃんのとき、親に甘えましたか。
> それを許しましたか。
甘えてきたと思いますし、拒絶もしなかったつもりです。

> (5)不安先行型の子育てをしていませんでしたか。
> あるいは心配過剰?
どちらかといえば不安先行型かもしれません。引っ込み思案の子だったので、特に集
団生活や協調面に関して、心配の種はつきませんでした。

> (6)スキンシップは濃厚でしたか。あるいは早くから
> 親の手を離れて、保育園へ入れるようなことは
> ありませんでしたか?
当時フルタイムで働いていたので、1歳から保育園に行っていました。ただ、その
分、スキンシップに関しては常に意識して、子供とは接してきたつもりなのですが。
> 対人恐怖症と考えられますが、分離不安の可能性もあります。
> その中でも、攻撃型(プラス型)と内閉型(マイナス型)
> があります。パニックになるのは、マイナス型と考えて
> よいでしょう。(プラス型はギャーと叫んで親のあとを
> 追いかけたりします。)症状は正反対ですが、
> 一番考えられるのは、下の子どもが生まれて、
> 赤ちゃんがえりを起こしたことです。
>
> (6−2)分離不安の症状もあったようですが、何か思い当たる
> 事件はありませんか。無理に引き離したとか、迷子に
> なったとか、あるいは親戚に預けられたとか、など。
事件として、特に思い当たることはないように思います。

> (7)お子さんのリズムで生活していますか。それとも
> 手をぐいぐいと引きながら子育てをしてきたような
> 感じですか。
ぐいぐい引っ張りたくなる気持ちになることも事実ですが、出来るだけセーブしてき
たつもりです。2歳までは延長のある保育園に 通っていましたが、3歳の時(年少
に上がる時)、学区の保育園に行った方がその後の小学校への入学にもストレスが少
ないかと思い、それまでの仕事を辞め、延長のない学区の保育園を選び、夕方からの
子供との時間を濃密にしてきました。

> (8)お子さんを日常的に「あなたはおにいちゃんでしょ」式に
> 突き放していませんか。望まれて生まれてきたお子さんですか?
> 愛情をたっぷりと注いできましたか。
「あなたはおにいちゃんでしょ」ということは、少なくとも父親、母親は言いませ
ん。お兄ちゃんというのはほめる時に使うぐらいです。私たちなりに愛情を注いでき
たつもりです。皆から祝福されて生まれ、かけがえない子だという気持ちに嘘はあり
ません。

今は私自身どう対処していいかわからないので、このことに関して子供に何も云って
いません。
もしまだ分かりにくいことがありましたら、またご連絡しますのでどうぞよろしくお
願いします。

私たちは取り返しのつかない育児をしてしまったのでしょうか?いつも子供たちのこ
とは1番に考えてきたつもりなのですが。

**************************************

ご返事、ありがとうございました。
いただいたメールから判断すると、
情緒が不安定というより、未熟性が原因ではないかと
思っています。感受性が強く、その感じたことをうまく
コントロールできないという状態です。もしそうなら、
やがて集団生活になれ、何かのことで自信をもてば
症状としては、自然に消えていく種類のものです。

外の世界(学校や友人関係)では、かなり神経を
使っていますので、家庭では、思いっきり手綱を
ゆるめるようにします。多少乱暴なことを言ったり、
生活習慣がだらしなくなりますが、大目に見てあげ
てください。あとは濃厚なスキンシップと、とりあえず
はCa,Mgの多い食生活にこころがけます。これら
はいわば精神安定剤として作用します。

対人恐怖症はどこかであったと思われます。親が
気づかないところで、です。「絵を描いてごらん」と
言われて涙ぐむということですが、そのあたりに
キーワードがあったように思います。多分幼稚園か
どこかで、一度いやな思いをしたのかもしれません。

問題は、こうした緊張感が、部分的なものなのか、
それとも、今、お子さんの生活全体に及んでいるも
のなのかという点です。※ふだんは何ともないが、
ふとしたことで、ときどきそうなるというのであれば
問題はないでしょう。しかしいつもどこか気を抜かない、
気を許さない、ピリピリしているというのであれば、
それが転じて、ほかの症状に結びつく(神経症、
恐怖症、不登校など)心配があります。そのあたり
はいかがですか。

もし部分的であるなら、先にあげた対処法で
じゅうぶんですが、いつも緊張状態にあるという
のであれば、「今の症状をより悪くしないこと」だけ
を考えて、さらに手綱を緩めます。どこかで自分を
発散できればいいのですが、そういう場所はあり
ますか。※

年齢的にみて、つまり発症(?)した時期からみて、
赤ちゃんがえりの変形とみてよいと思います。
原稿をはりつけておきます。本能的な嫉妬心が
いろいろ姿を変えて子どもの情緒に影響を与えた
ということです。「やさしすぎる」ということですが、
どこか気になります。無理をしているのではないか、と
です。あるいは仮面をかぶっていることも考えられます
が……?※いかがですか?

上記※部について、またくわしくわかれば教えてください。

では、また。

はやし浩司

*************************************
いつも返信いただき、ありがとうございます。
今回の先生のお話に、少しほっとしつつも、改めて子育ての難しさを痛感しておりま
す。

先生のご質問に対し、改めて返答させて頂きます。

**************************************

> 問題は、こうした緊張感が、部分的なものなのか、
> それとも、今、お子さんの生活全体に及んでいるも
> のなのかという点です。※ふだんは何ともないが、
> ふとしたことで、ときどきそうなるというのであれば
> 問題はないでしょう。しかしいつもどこか気を抜かない、
> 気を許さない、ピリピリしているというのであれば、
> それが転じて、ほかの症状に結びつく(神経症、
> 恐怖症、不登校など)心配があります。そのあたり
> はいかがですか。

息子は、この年代の男の子としてはおとなしい方だとは思いますが、普段、私が接し
ている時の様子は明るく、時にはおしりを出したりして笑わせる、元気な子だと思い
ます。家でもちょっと強く叱ると、涙ぐんだりはしますが、以外に立ち直りも早く、
ピリピリすることもないように思います。
手綱を緩めるというのは、少々のことは大目に見ていくということなのでしょうか?
長男は小さい頃から食が細く、同じ年頃の子に比べると、半分か、へたをするとそれ
以下かもしれません。故に食事を食べなかったりすると、どうしても私の口調がきつ
くなり、涙ぐみながら食べることも間々あります。後からいつも反省するのですが・
・・。体重も90パーセンタイルの下ぎりぎりなので、なんとか食べさせたい気持ち
と、この子の食は細いことを認めなければという気持ちがいつも私の中で入れ代わり
立ち代わり揺れています。こういうこともきっと影響しているような気がします。

> 年齢的にみて、つまり発症(?)した時期からみて、
> 赤ちゃんがえりの変形とみてよいと思います。
> 原稿をはりつけておきます。本能的な嫉妬心が
> いろいろ姿を変えて子どもの情緒に影響を与えた
> ということです。「やさしすぎる」ということですが、
> どこか気になります。無理をしているのではないか、と
> です。あるいは仮面をかぶっていることも考えられます
> が……?※いかがですか?

次男が生まれる時、長男は丁度4歳になる頃だったので、感情が表に出せなくなるこ
とだけは避けてやりたいと思い、赤ちゃんがえりしても受け止めるつもりでいたので
すが、以外に表立ったやきもちもなく、彼なりに赤ちゃんの存在を受け入れてくれた
ように見えました。今でも自分が遊んでいるものを弟が欲しがると、割とすぐに譲っ
てやり、突き飛ばしたり、たたいたりということも全くしません。それはそれでなん
となく心配で、無理をしているのではないかと思うこともあるのですが、それっぽい
様子もあまり感じ取ることは出来なく、かわいがってくれています。もっと奥深いと
ころに感情が押し込められているのでしょうか?
私のスタンスは、次男が怒って泣き出さない限り、長男が甘えてひざに乗ってきた
り、抱っこしてと云ってきた時は、受け入れるようにしています。これはこのままで
いいのでしょうか?

学校で泣いてしまったことを担任の先生から聞いた後日、先生の連絡帳に、号令を頼
んだらとても元気な声でできたこと、図工の粘土工作ではとても上手に動物園を造っ
ていたことが書いてありました。
友達作りは決して上手ではありませんが、気の合う子はそれなりにいるようです。保
育園の卒園文集では、仲良しのお友達の名前を書くところがあったのですが、ほとん
どの男の子が息子の名前を書いてくれていました。

思い返すと、男の子なんだからこれくらいは、とか、せめてこうなって欲しい、と
いった親の思いを押し付けるようなことをしてきたような気がします。

何かアドバイスがありましたらよろしくお願いします。

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こういうケースでは、最悪なものから順に消去法的に消して
いくという方法で、子どもの問題を考えます。で、結論になる
と思いますが、大きな情緒的障害、精神的な問題は考えなく
てもよいのではないかということです。考えられるのは情緒的
未熟性(何らかの原因でよくあることです)ですが、これはこ
の時期の子どもの、20%(推計)に多かれ少なかれみられ
る症状で、これから先、年齢が大きくなれば、急速に改善
するものと思われます。要するにこじらせないことだけを
考えれば、よいでしょう。今のところ、深刻な神経症なども
ないようですから、それほど心配はなさらなくrてもよいの
ではないでしょうか。

手綱をゆるめるというのは、家庭をしつけの場からいやしの
場にできるだけ早く転換するということです。学校ではかな
り神経をつかっているようなので、生活習慣が多少だらし
なくなっても、「うちの子は外でがんばっているから、しかた
ないわ」と思うようにするということです。家ではもうガミガミ
言わないことです。

子どもの小食については、何らかの形で約30%の母親が
悩んでいます。食が細い、遅い、好き嫌いがはげしい、など。
まずしてみることは、冷蔵庫をカラにして、間食できるような
ものを一掃すること。甘味料の多い食生活を一掃して、CA
MGの多い食生活に切りかえること、です。私は「冷蔵庫を
カラにせよ」という指導をしています。小食児の家庭には、
それなりに、つまり無意識のうちにも、間食できるものが
ゴロゴロしているからです。もちろん甘いジュース類は周囲
から消します。アイス、クリーム、ケーキなども厳禁!

ご指摘のように、私も「どこか無理をしているな」とは感じて
います。「弟なんか嫌いだ」とすなおに言えるほうが自然で
はないかと思います。どこかで親の期待にこたえながら
「いい子」を演出しているような感じがします。ですからお尻
を見せたりしてふざけているようなら、そういう面をすなおに
外に出せるように、つまり子どもの側からみて、心を開ける
ような場を大切になさってください。このタイプの子どもは、
「これだけは人に負けない」というような一芸をもたせるこ
とをお勧めします。一芸論はあちこちに書いておきました
ので、またサイトをご覧になってください。メールの中で
気になったのは、「今でも自分が遊んでいるものを弟が
欲しがると、割とすぐに譲っ てやり、……」という部分です
が、長男としては、たいへん珍しいことです。つまりどこか
不自然に感じました。

スキンシップの与え方は、この際、今のままでよいと思い
ます。小学3〜4年までつづきますが、TYさんのケース
では、小学4〜5年までつづくかもしれません。ベタベタの
スキンシップではなく、質の高いスキンシップをこころがけ
てください。子どもの側からみて安心感の得られるような
スキンシップをです。(スキンシップが多いから依存性が
強くなると言うのは、ウソです。まったく別物です。)依存性
は親側の姿勢の問題です。

「男の子だから」「お兄ちゃんだから」というのは、もうや
めましょう。ひょっとしたら、TYさん自身が、「男の子」を
知らないか、「父親の形」を知らないのかもしれません。
それで勝手に「男像」をつくりあげ、その形に子どもを
当てはめようとしている感じがします。お父さんが割りと
権威主義的な、昔的な方だったかもしれませんね。

これからはもっと感情を表に出せるように、ゆるめてみ
ます。学校から帰ってきたときあなたの前で、だらしない
格好でもよいから好き勝手なことができるように。そういう
おおらかさで子どもを包んであげてみてください。少し
ずつですが心を開いてくれると思います。(1年単位で)

ときどき学校へ行くのをいやがったり、ぐすったりする
ようなことがあれば、適当に休みながら、心を調整して
あげてください。外の世界では無理をしているようです
から。それと涙もろい、すぐ泣くということは、最初のメ
ールに書いたとおりですから、心の緊張感をほぐすこと
を考え、一方で、あまりおおげさに考えないように。子ども
によっては、涙は汗のようなもののときがあります。涙
を出すことで、緊張感をほぐすときもあります。泣きたい
だけ泣かしながら、温かく見守ってあげます。(泣くことに
よって、子どもは心のバランスをとる、イコール、ストレス
を発散させるのですね。)

あとは学校の先生と連絡を密にしてください。直接子ども
をみている先生が、ほめてくれたということですから、私
はそれでよいと思います。この時期はほめながら、少し
うぬぼれぎみでも構わないから、前向きな姿勢を大切に
して伸ばすのがコツです。これから先、親離れを始める
小学3〜4年生ごろ、ややむずかしくなる時期がありま
すが、どうかうまく乗り越えてください。

では、これで失礼します。あまりよい回答になっていなくて
すみません。また何かあれば、連絡ください。あまり心配
せず、つまりあなた自身が自分の子育てに自信をもって
前向きに進んでください。メールで拝見したところ、とても
じょうずに子育てをなさっておられるようです。母親として
ほぼ満点をさしあげたいくらいです。(生意気なことを言って
すみません。)あなたはすばらしい母親です。メールの内容
にしても、たいへん理知的で、的確です。自信をもってく
ださい。あなたのような母親からはゆがんだ子どもは
生まれません。では……。

はやし浩司

Q:小学4年生の長女ですが、いつからかどもるようになってしまい、普通に話をしてても言いた
い事がなかなか伝わらずかわいそうなぐらいです。特にカ行とタ行がひどいです。本人も気にし
ていて上手に話せれないからと授業中に発表することをいやがります。なおす方法を教えてく
ださい。 

A:吃音(きつおん)についてですが、本人がセルフコントロールできる年齢かどうか微妙なとこ
ろです。つまり自意識の範囲で、指導になじむかどうかということです。小学4年生というのは、
微妙です。

(1)自意識でコントロールできないとき(幼児〜小1,2)の場合吃音指導はしないのが原則で
す。発音練習は、別にします。

(2)自意識でコントロールできるとき(小学高学年以上)の場合
それでも吃音指導を子どもにあまり意識させないで、たとえば発音練習をしながら、結果として
吃音をなおすようにします。発音指導は、口をゆっくりと動かし、息をたくさん出させ、子どもに
発音のリズムをつかまさせます。苦手な音の言葉だけを、何度もゆっくりと話させるようにしま
す。たとえば「刀(かたな)で皮(かわ)を切る」という文章だけを、練習します。子どもに吃音指
導と思わせないようにするのがコツです。どこかで大声を出して、声を出してくれるといいので
すが……。吃音そのものは、脳の機能的な変調が原因で、声帯がけいれんを起こして引き起
こされるというのが、一般的な考え方です。つまり脳の変調を起こす原因(神経質な家庭環境、
神経症などの変調要因)があればそれを除去します。神経質な過干渉、過関心、過負担、過
剰期待など。しかしこれらの要因を除去したからといって、吃音はすぐにはなおりません。こうし
た変調(神経症とみる学者は多い)は一度現われると、数年単位で続くことが多く、その間に、
子ども自身が自信をなくしたり、失語症になったりします。要するに周囲が無視すればいいの
ですが、これが子どもの世界では難しいようです。(それをからかう子どもがいたりするからで
す。)私の場合は、ときどき子どもたち全員に大声をださせ、それにまぎれてなおすという方法
をとっています。ほかの子どもたちのいる前では、指導しない。問題としない。なおそうとしない
が原則です。家庭では、次のようにしてみてください。苦手な音をふくむ言葉について、まずゆ
っくりと話す練習をします。リズミカルに息を大きく吐き出しながら、音にあわせて口を動かすよ
うにします。ここで大切なことは、ゆっくりと話す練習をさせることです。「吃音をなおしましょう
ね」とか、練習が吃音をなおすためとかいうようなことを子どもにわからせることは、子どもの前
では避けます。(小学高学年以上であれば、ある程度、吃音をなおすということを意識させます
が、あまり意識させると、かえって自信をなくさせたり、萎縮させたりしてしまいます。)率直に言
えば、無視して、皆が、だれも問題にしないような環境があれば、いいのですが……。たいてい
指導を始めると、子どもは小声になってしまいます。それがかえって指導を難しくします。

 そこでどうでしょう。あまりなおそうとか、それが悪いことだと決めてかからないで、もう少しお
おらかに考えてみたら。おねしょと同じで、吃音そのものは、本人にとっては、それほど不愉快
なものではないのです。(私も子どものころ、軽度の吃音があり、今でも、カ行音でどもることが
あります。)

自意識がじゅうぶん育ってくると、苦手な音を出す前に、一呼吸おくようになり、ゆっくりとしゃべ
るようになります。そうなれば、自然になおります。そういうことも考えながら、子どもに吃音が
悪いことだと思わせないようにします。(罪悪感をもたせると、まずいですね。ですから努めて無
視するのが最良の方法で、それとは別のところで、発音指導はします。どうもまとまりのない文
になってしまいましたが、わかっていただけましたか?)
 
 私は正直に言いますが、吃音指導そのものは、ひとりの子ども(一対一の関係では)に対し
てはしたことがありません。無視した形で、別のところで、子どもどうしにワーワーしゃべらせ、
それでなおすという方法をとっています。それが吃音指導の難しい点であると同時に、コツで
す。対面式で指導すると、かえって失敗するのでは……? 吃音も含めて発語障害は、こうい
う方法をとるのがベストです。(順に言わせてなおすという方法でも、子ども自身が敏感になっ
ていることが多く、たいていその段階で、気づかれてしまいます。子どもが気づくと、その時点で
指導ができなくなります。)

Http://www.chunichi-tokai.co.jp/education/child_world/

のコラムの中に、発語障害を書いておきましたので、ご覧になってください。HPの中にも、どこ
かで詳しく書いておきました。では。






 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【16】
●子供の愛着行為

はやし先生へ、
おはようございます、埼玉県T市に住むマガジン読者です。

ところで、E-メールマガジンで、たびたびテーマを募集していますが、前々から、『アメリカでは、
生まれたての赤ちゃんでも、夜寝る時には、夫婦の寝室とは別で、子供部屋で寝る』と言われ
ているし、アメリカのファミリードラマやアニメでも、かなり小さい子供でも、ちゃんと自分の部屋
を持ち、ベッドで寝ていますが、「ほんとうかしら?」と、疑問をもっています。

現在三男は一才を過ぎていますが、おっぱいを飲みながら寝るので、私と同じ布団で寝ていま
すし、もっと月齢が小さい時などは、二時間おきの授乳だったので、いちいち起きて、ベビーベ
ッドで寝ている子を抱き上げて授乳することすら苦痛でした。

先生の御二男の方はベビーはどのような環境で、寝ているのでしょうか? すごく興味がありま
す。それとまじえて、子供と親が別々の部屋で寝始める頃の見極めと注意点などもアドバイス
して頂きたいです。

友人の子は、寝室を別にしたとたん、首が曲がったまま元に戻らなくなり、整体等、通ったので
すが、なかなか治らず、寝室をまた親と同じにしたら、ピタリと治ったそうです。

+++++++++++++++++++++

●アメリカの子育て

 アメリカといっても、アジア全域ほど広く、また移民国家であるため、アメリカ人といっても、ど
ういう人をアメリカ人というのか、必ずしも明確ではありません。もちろんアジア系アメリカ人も
多く、その中の一部には、日系アメリカ人もいます。さらに同じ白人でも、父親がフランス人、母
親がウクライナ人、祖父がスコットランド人で、祖母がイタリア人という家庭は、いくらでもありま
す。

 で、その中でも、アングロサクソン系のアメリカ人にかぎっているなら、ご指摘のように、赤ん
坊のときから、寝室を分けるのが、ふつうのようです。アングロサクソン系というのは、いわゆ
るイギリス系のアメリカ人です。ふつう私たちがアメリカ人というとき、もっともポピュラーに想像
する、白人のアメリカ人です。

 二男の嫁も、そのアングロサクソン系のアメリカ人で、代々、アメリカの中南部で暮らしてきた
家族です。ただ私の二男のばあいは、大きな二部屋だけのアパートで、別々の部屋ということ
はありませんでした。大きなベビーバッグの中に赤ん坊を寝させていました。しかし夜泣きがひ
どいので、私のワイフのアドバイスで、夫婦のベッドの間で、川の字のようにして寝させました。
そうしたら夜泣きが収まったそうです。

 ご質問の件について、私は専門ではないので、よくわかりませんが、今までに私が書いた原
稿をあちこちから集めてみましたので、参考にしてください。

++++++++++++++++++++++++++++

●子どもの愛着行動

 母親は新生児を愛し、いつくしむ。これを愛着行動(attachment)という。これはよく知られた
現象だが、最近の研究では、新生児の側からも、母親に「働きかけ行動」があることがわかっ
てきた(イギリス、ボウルビー、ケンネルほか)。こうした母子間の相互作用が、新生児の発育
には必要不可欠であり、それが阻害されると、子どもには顕著な情緒的、精神的欠陥が現れ
る。その一例が、「人見知り」。

 子どもは生後六か月前後から、一年数か月にかけて、人見知りするという特異な症状を示
す。一種の恐怖反応で、見知らぬ人に近寄られたり、抱かれたりすると、それをこばんだり、拒
否したりする。しかしこの段階で、母子間の相互作用が不完全であったり、それが何らの理由
で阻害されると、「依存うつ型」に似た症状を示すことも知られている。基本的には、母子間の
分離不安(separation anxiety)は、こうした背景があって、それが置き去り、迷子、育児拒否的
な行為(子どもの誤解によるものも含む)などがきっかけによって起こると考えられる。

●スキンシップは魔法の力 
 スキンシップには、人知を超えた不思議な力がある。魔法の力といってもよい。もう二〇年ほ
ど前のことだが、こんな講演を聞いたことがある。アメリカのある自閉症児専門施設の先生の
講演だが、そのときその講師の先生は、こう言っていた。「うちの施設では、とにかく『抱く』とい
う方法で、すばらしい治療成績をあげています」と。その施設の名前も先生の名前も忘れた。
が、その後、私はいろいろな場面で、「なるほど」と思ったことが、たびたびある。言いかえる
と、スキンシップを受けつけない子どもは、どこかに「心の問題」があるとみてよい。

 たとえばかん黙児や自閉症児など、情緒障害児と呼ばれる子どもは、相手に心を許さない。
許さない分だけ、抱かれない。無理に抱いても、体をこわばらせてしまう。抱く側は、何かしら
丸太を抱いているような気分になる。これに対して心を許している子どもは、抱く側にしっくりと
身を寄せる。さらに肉体が融和してくると、呼吸のリズムまで同じになる。心臓の脈動まで同じ
になることがある。で、この話をある席で話したら、そのあと一人の男性がこう言った。「子ども
も女房も同じですな」と。つまり心が通いあっているときは、女房も抱きごこちがよいが、そうで
ないときは悪い、と。不謹慎な話だが、しかし妙に言い当てている。

●大切な「甘える」という行為
 このスキンシップと同じレベルで考えてよいのが、「甘える」という行為である。一般論として、
濃密な親子関係の中で、親の愛情をたっぷりと受けた子どもほど、甘え方が自然である。「自
然」という言い方も変だが、要するに、子どもらしい柔和な表情で、人に甘える。甘えることがで
きる。心を開いているから、やさしくしてあげると、そのやさしさがそのまま子どもの心の中に染
み込んでいくのがわかる。

 これに対して幼いときから親の手を離れ、施設で育てられたような子ども(施設児)や、育児
拒否、家庭崩壊、暴力や虐待を経験した子どもは、他人に心を許さない。許さない分だけ、人
に甘えない。一見、自立心が旺盛に見えるが、心は冷たい。他人が悲しんだり、苦しんでいる
のを見ても、反応が鈍い。感受性そのものが乏しくなる。ものの考え方が、全体にひねくれる。
私「今日はいい天気だね」、子「いい天気ではない」、私「どうして?」、子「あそこに雲がある」、
私「雲があっても、いい天気だよ」、子「雲があるから、いい天気ではない」と。

●先手を打って自分を守る

 このタイプの子どもは、「信じられるのは自分だけ」というような考え方をする。誰かに親切に
されても、それを受け入れる前に、それをはねのけてしまう。ものの考え方がいじけ、すなおさ
が消える。「あの人が私に親切なのは、私が持っている本がほしいからよ」と。自分からその人
を遠ざけてしまうこともある。あるいは自分に関心のある人に対してわざと意地悪をする。心の
防御作用と言えるもので、その人に裏切られて自分の心がキズつくのを恐れるため、先手を
打って、自分の心を防衛しようとする。そのためどうしても自分のカラにこもりやすい。異常な
自尊心や嫉妬心、虚栄心をもちやすい。あるいは何らかのきっかけで、ふつうでないケチにな
ることもある。こだわりが強くなり、お金や物に執着したりする。完ぺき主義から、拒食症になっ
た女の子(中三)もいた、などなど。

 もしあなたの子どもが、あなたという親に甘えることを知らないなら、あなたの子育てのし方の
どこかに、大きな問題があるとみてよい。今は目立たないかもしれないが、やがて深刻な問題
になる。その危険性は高い。

●行きづまりを感じたら、抱く
 ……と、皆さんを不安にさせるようなことを書いてしまったが、子どもの心の問題で、何か行
きづまりを感じたら、子どもは抱いてみる。ぐずったり、泣いたり、だだをこねたりするようなとき
である。「何かおかしい」とか、「わけがわからない」と感じたときも、やさしく抱いてみる。しばら
くは抵抗する様子を見せるかもしれないが、やがて収まる。と、同時に、子どもの情緒(心)も
安定する。

(参考)
●抱かれない子どもが急増!

こんなショッキングな報告もある(二〇〇〇年)。抱こうとしても抱かれない子どもが、四分の一
もいるというのだ。

「全国各地の保育士が、預かった〇歳児を抱っこする際、以前はほとんど感じなかった『拒
否、抵抗する』などの違和感のある赤ちゃんが、四分の一に及ぶことが、『臨床育児・保育研
究会』(代表・汐見稔幸氏)の実態調査で判明した」(中日新聞)と。
報告によれば、抱っこした赤ちゃんの「様態」について、「手や足を先生の体に回さない」が三
三%いたのをはじめ、「拒否、抵抗する」「体を動かし、落ちつかない」などの反応が二割前後
見られ、調査した六項目の平均で二五%に達したという。また保育士らの実感として、「体が固
い」「抱いてもフィットしない」などの違和感も、平均で二〇%の赤ちゃんから報告されたという。

さらにこうした傾向の強い赤ちゃんをもつ母親から聞き取り調査をしたところ、「育児から解放
されたい」「抱っこがつらい」「どうして泣くのか不安」などの意識が強いことがわかったという。
また抱かれない子どもを調べたところ、その母親が、この数年、流行している「抱っこバンド」を
使っているケースが、東京都内ではとくに目立ったという。

 報告した同研究会の松永静子氏(東京中野区)は、「仕事を通じ、(抱かれない子どもが)二
〜三割はいると実感してきたが、(抱かれない子どもがふえたのは)、新生児のスキンシップ不
足や、首も座らない赤ちゃんに抱っこバンドを使うことに原因があるのでは」と話している。

++++++++++++++++++++++++

●スキンシップ

 よく「抱きぐせ」が問題になる。しかしその問題も、オーストラリアやアメリカへ行くと、吹っ飛ん
でしまう。オーストラリアやアメリカ、さらに中南米では、親子と言わず、夫婦でも、いつもベタベ
タしている。恋人どうしともなると、寸陰を惜しんで(?)、ベタベタしている。あのアメリカのブッ
シュ大統領ですら、いつも婦人と手をつないで歩いているではないか。
 
一方、日本人は、「抱きぐせ」を問題にするほど、スキンシシップを嫌う。避ける。「抱きぐせが
つくと、子どもに依存心がつく」という、誤解と偏見も根強い。(依存心については、もっと別の
角度から、もっと別の視点から考えるべき問題。「抱きぐせがつくと、依存心がつく」とか、「抱き
ぐせがないから、自立心が旺盛」とかいうのは、誤解。そういうことを言う人もいるが、まったく
根拠がない。)仮にあなたが、平均的な日本人より、数倍、子どもとベタベタしたとしても、恐らく
平均的なオーストラリア人やアメリカ人の、数分の一程度のスキンシップでしかないだろう。こ
の日本で、抱きぐせを問題にすること自体、おかしい。もちろんスキンシップと溺愛は分けて考
えなければならない。えてして溺愛は、濃密なスキンシップをともなう。それがスキンシップへの
誤解と偏見となることが多い。

 むしろ問題なのは、そのスキンシップが不足したばあい。サイレントベビーの名づけ親であ
る、小児科医の柳沢さとし氏は、つぎのように語っている。「母親たちは、添い寝やおんぶをあ
まりしなくなった。抱きぐせがつくから、抱っこはよくないという誤解も根強い。(泣かない赤ちゃ
んの原因として)、育児ストレスが背景にあるようだ」(読売新聞)と。

 もう少し専門的な研究としては、つぎのようなものがある。

 アメリカのマイアミ大学のT・フィールド博士らの研究によると、生後一〜六か月の乳児を対
象に、肌をさするタッチケアをつづけたところ、ストレスが多いと増えるホルモンの量が減ったと
いう。反対にスキンシップが足りないと、ストレスがたまり、赤ちゃんにさまざまな異変が起きる
ことも推察できる、とも。先の柳沢氏は、「心と体の健やかな成長には、抱っこなどのスキンシ
ップがたっぷり必要だが、まだまだじゅうぶんではないようだ」と語っている。ちなみに「一〇〇
人に三人程度の割合で、サイレントベビーが観察される」(聖マリアンナ医科大学横浜市西部
病院・堀内たけし氏)そうだ。

 母親、父親のみなさん。遠慮しないで、もっと、ベタベタしなさい!

+++++++++++++++++++++

 あちこちから原稿を集めたため、内容がバラバラになってしまいましたが、こうして改めて考
えてなおしてみると、スキンシップは、必要であるかないかということになれば、必要であるに決
まっているということになります。

 で、ご質問の「量」ですが、それはあくまでも子どもをみて、判断するしかないのではないでし
ょうか。とくに子どもの情緒の安定度をみながら、判断します。つぎの原稿は、子どもの欲求不
満について書いたものです。この中でも、少し、スキンシップについて触れてみました。





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【17】


(ホームページの読者の方より)

Q:2歳2ヶ月の男の子のことで相談です。

妊娠中から私はつわりがひどく、妊娠悪阻にかかり入院するほどで、精神的にも不安定で10
ヶ月間ほとんどねたきりでした。

子供は欲しかったのですが、あまりのしんどさに、なんどかおろす事も考えましたが、主人の励
ましでなんとか無事健康な男の子を出産することが、出来ました。

産まれてから母乳をうまく吸えないようで、何度かチャレンジはしたのですが、1ヶ月ほどでミル
クに切り替えました。

うちの子は夜はよく寝てくれたのですが、とにかくよく泣く子で、2歳になったいまでも私が少し
でも離れると、泣きついてついてきます。

だから、起きている間は何も出来ません。それは仕方がないと最近では思い、できるだけいっ
しょに遊んでます。

心配なのは、ぜんぜん同じ世代の子供と遊んでくれません。というより逃げてしまうか、私にあ
っちとばかり他の誰もいないところにいきます。児童館に行ったりしてもそうで、マンションのお
友達のところでも1人違うところに行ってしまうか、私から離れません。

実は気になることがあり、産まれて1ヶ月のころからいっしょのマンションのお友達と仲良くなり
よく遊んでいたのですが、その子とは誕生日も同じ、血液型も同じという男の子で、とても乱暴
な子でいつもうちの子は、おもちゃをとられたり、叩かれたりで泣いてばかりいました。今思うと
私は、そのおかあさんのてまえばかり考え、自分の子供をかばってやれなっかたと反省してい
ます。

そこのおかあさんは、怒らないで育てるという考え方の人で、人のものとろうが、叩こうが、突き
飛ばそうが、あかんやんぐらいの軽い言い方でもちろんとったおもちゃなんか返しなさいなんて
言わないひとで、だんだん私もストレスになりあまりつきあわなくなったのですが、毎日電話が
かかってきて、今日は外出るとか、買い物一緒にいこうとか、とにかく家の中まで入ってくる人
で、主人からは付き合うなと、さんざんいわれてきました。子供も歩くようになったころには、そ
の子を見ると逃げるようになり、いつからか、他の子とも遊ばなくなっていました。

今そのことだけが原因ではないのですが、引越ししました。私や主人とならすごく楽しそうに遊
ぶのですが、やっぱりあまりよその子とは遊んでくれません。
私の妊娠中のことが、それともその子(よくいじめられた子)のことがトラウマに、それとも私の
育て方に何か問題があるのでしょうか?
神経質とはよくいわれます。確かに今も手がかかっているので、イライラすると怒鳴ってしまう
こともあります。主人の言うことは聞くのに私の言うことは、あまりきいてくれません。主人に言
わすと、信頼関係が築かれてないと、指摘されました。確かに思い当たるところはあるように思
います。周りのことばかりに気を使いすぎたり、子供につらい思いをさせてきたかもしれませ
ん。

悪循環で私の言うことを聞いてくれない、そしたらイライラする、怒ってしまうといった具合です。

子供は自分の思うようにならない、そしてしてはいけないとは、わかっているつもりだったので
すが、そうなっていたのでしょうか?今一番気になることは、他の子と遊んでくれない、怖がって
いるのか、いやなのか逃げてしまうということです。保育園など考えているのですが、入れてい
いものか悩んでいます。言葉もまだあまり出てないので先生に伝えられないのではーなど。幼
稚園はいるころには、直るのでしょうか?私はどういうふうに子育てをしていいか悩んでいま
す。子供がそんなに楽しそうにしていなくても、児童館やお友達と遊ばしたほうがいいのかーで
も逆に無理して行っても私のほうが、なぜうちの子だけ遊ばないんだろうと、落ち込んでしまい
ます。話が前後したり分かりにくいこともあったかと思いますが、何かいいアドバイスお願いしま
す。群馬県・YRより)

A:Rさんへ、メール、ありがとうございました。しかしながら私は乳幼児の中でも、乳児および就
園前のお子さんについては、まったくの門外漢であり、指導経験もほとんどありません。ですか
らご質問の件については、以下のように限られた範囲内でしかお答えすることができません。
この点をお含みおきの上、どうかお許しください。

(1)お子さんの泣き方の様子が詳しく書かれていないので、それがどういうものであるか、私に
は把握しかねています。興奮して、ギャーギャーと泣くようであれば、まずかんしゃく発作を疑っ
てみます。かんしゃく発作については、ヤフーで、「はやし浩司 かんしゃく発作」で検索してくだ
されば、いくつかヒットすると思います。

(2)泣き方が不安定で、親からみて「わけのわからないもの」であれば、情緒不安が疑われま
す。お子さんの心は、外からはわかりませんが、いつも緊張状態にあると思います。その不安
定さが、たとえば対人恐怖症となってあらわれているのではないかと思います。「恐怖症」につ
いても、このサイトのどこかに書いておきましたので、参考にしてください。トラウマなどというお
おげさなものではなく、子どもはふとしたきっかけでこの恐怖症になります。またなったからとい
って、それほどおおげさに考える必要はありません。まだ二歳ですから、無理をしないで、とき
どこかで少しずつ心を慣らすという程度でいいのではないかと思います。早く園へやればそれ
でよいというものでもありませんので。

(3)一つ心配なのは、あなたがお子さんを妊娠したときから、心配先行型、不安先行型のリズ
ムをつくってしまったことです。「中絶しようか」と考えたということ自体、大きなわだかまりになっ
ているはずです。本気で、つまり心の底から望んで生まれた子どもではない……というわだか
まりが、今のあなたとお子さんの人間関係をつくっています。「子育てリズム論」は、私のサイト
の目次から、「親が変われば」のコーナーをお読みください。あなたの心の状態によくあてはま
ると思います。子供というのは、長い時間をかけて、あなたの心をカガミのようにそのまま映し
出します。すでにそういう状態とみてよいでしょう。あなたのわだかまり、心配や不安が、基本
的にあるため、「何をしても心配だ」というような見方で、あなたはお子さんを見てしまうのです。

(4)どこかの調査でも、70〜80%の母親が育児でイライラしているということがわかっていま
す。ですからあなただけではありません。子育てというのは、そういうものです。つまりそういう
ものであるという前提で、つきあえばいいのです。気負うことはありません。あなたはあなただ
し、どうか自分を責めないでください。

(5)さて本題。お子さんが対人恐怖症になっているとしたら、無理をしないこと。無理をしても、
かえって症状は悪化します。これは心が熱病にかかったようなものです。それともあなたは風
邪で熱を出して寝ている子どもに、水をかけるとでもいうのでしょうか。あなたの考えで、また外
見から見た様子だけで、お子さんを判断してはいけません。私も閉所恐怖症、高所恐怖症など
があります。一度屋根にテレビのアンテナをつけにあがったのですが、おりられなくなってしま
ったことがあります。人は「気のせいだ」と言いますが、決して気のせいなどという簡単なもので
はありません。そういうことをまずわかってあげなさい。お子さんは本当にこわいのです。また
恐怖症は誰でもなるものであり、珍しくも何ともありません。

(6)ではどうするか。順に話していきましょう。まず情緒が不安定になったら、幼児は、とにかく
スキンシップを濃厚にします。抱き癖がつくとかつかないとか、それは横に置いておきましょう。
いつも抱いてあげる。強く抱いてあげる。手をつないであげる。添い寝をしてあげるなど。そも
そも日本人はスキンシップが少ない民族です。ブッシュ大統領なんか、奥さんとベタベタと手を
つないで歩いていましたね。あれが国際的な標準です。親子もそうで、先日もヒューストンの空
港で、親子連れをみかけましたが、皆、親子がベタベタとしていましたよ。ですからあなたも遠
慮せず、スキンシップを濃厚にしてみてください。あとは白砂糖を断ちます。これだけで、つまり
徹底してやれば、一週間程度で、症状がおさまってくるはずです。ダメもとと思い、一度、ため
してみてください。(できればCA,MGの多い食生活も一方でこころがけてください。)

(7)「幼稚園へ入るころにはなおるか」ということですが、分離不安などの情緒的な問題にから
んでいるときは、そんなに簡単にはなおりません。また「なおそう」とか、そういう発想で考えな
いことです。(なおるものなら、私の閉所恐怖症をなおしてほしいものです。)あなたのお子さん
にも、よい点や悪い点、さらには得意なことや苦手なことができ始めているのです。人とつきあ
うのが苦手なら、苦手でもよいではないですか。そういう子どもを迎えてあげるのも、親の努め
ですよ。「お母さんも、うるさいところはいやだわ」と言ってあげるほどの包容力をもってくださ
い。実のところ、子どもの心の問題で、親は安易に「なおす」とか言いますが、そういう発想はど
うしても好きになれません。なおすのではなく、受け入れるのですよ。またこの問題だけは、あ
せってなおそうと思うと、かえって症状を悪化させますから、くれぐれもご注意ください。

(8)保育園へも無理しないこと。たった30年前には2年保育があたりまえでした。幼稚園へ通
わない子どもも5%はいました。が、今では2歳から……? 人間の質が変わったとでもいうの
でしょうか。いいですか。子どもは親が育てる。親のぬくもりで包みながら育てる。それが子育
ての原則です。家庭が許すなら、保育園はできるだけ遅くしなさい。集団に慣れるというだけの
目的なら、ほかにも方法はあると思います。かなり神経質で、過敏傾向の強いお子さんのよう
なので、ここはとくに慎重にかまえてくださいね。

(9)「落ち込む?」……とんでもないことです。あなたは風邪をひいて熱を出して寝ている子ど
もを見て、落ち込むのですか? 親の愛には三種類あります。本能的な愛と代償的な愛。それ
に真の愛です。あなたはやっと代償的な愛(親のエゴにもとづいた身勝手な愛)にたどりついた
段階です。お子さんが苦しんでいるのに、落ち込む親がどこにいますか! 自分の思い通りに
ならないからといって、落ち込むのは真の愛ではない。代償的な愛です。あなたは自分の心の
すき間をうめるために、子どもを利用しているだけ。あるいはそれが「親の愛」と誤解している
だけ。きびしいことを書きましたが、これはあなたのためです。あなたがすばらしい母親になる
ためです。わかってくださいね。

(10)言葉の問題なでおについては、メールだけではお答えしかねます。

(11)最後に大切なことは、まずあなたの「わだかまり」が何であるかを知り、つぎにお子さんを
あなたの心の中に迎え入れることです。(あなたはお子さんをまだ迎え入れてはいない。)でき
がわるくても、「あなたを愛しています」「あなたが苦しいときは、お母さんも一緒に苦しんであげ
ます」「無理することはないのよ」「あなたはいい子ですよ」「あなたはすばらしい子になります
よ」「いやな人とは無理してつきあわなくてもいいのよ。お母さんだって、いっしょのマンションの
友だちと仲よくなれなかったのだから、偉そうなことは言えないのよ」と、言います。こうした言
葉を自然に言えるようになったとき、あなたのお子さんのもろもろの問題点は、ウソのように消
えています。どうかこの言葉を信じてください。そのときになると、(今でも問題はありませんが
……)、今あなたが悩んでいる問題など、どこかへ消えてなくなってしまいます。

 子育てははじまったばかりですね。これからつらいことや苦しいことが山のようにありますよ。
それはちょうど小さなヨットに乗って、大洋へ乗り出すようなものです。しかしそれがあるから人
生もまた楽しいのです。つらいときがあったら、私のサイト(トップページ)から「心のオアシス」を
のぞいてみてください。また何かあればメールをください。今日はこれで失礼します。(2002−
2−24)







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【18】

 色々な育児のホームページやテレビ(キレる子どもやサイレントベビーなど)を
見て日々感じていた事、思っていた事がありますが、はやし先生のホームページ
や今回お送り下さいましたメールを拝見し、なんとなくホッと致しました。お互
いの育った環境に準じた子育てをしたいと思う気持ちから、主人と意見が違いま
して、いつも考えておりました。

 下に私の子育てを書きますので、(書き終わりまして、見直しましたら、とて
も長くなっていました。)はやし先生のお時間のよい時で構いませんので、ご意
見を聞かせて頂けたらうれしく思います。

よろしくお願い致します。

 私の子育ての方針(と言いましても、はじめての子どもで手さぐりですが……)は、
「子どもに不安を与えない」ようにするということです。だから、3ヵ月半の子どもがミ
ルクでもなく、オムツでもなく、眠たくもなく、遊んで欲しくもなく泣いている
時は、できるだけ抱いてあげる。抱けない時は、声をかけたり、側にいたり、お
んぶするようにしています。反対に、子どもが機嫌がいい時や一人で遊んでいる時は、
ほおっておいていますが……とにかく、子どもが安心できる環境を作るようにし
ています。たとえば、我が子は暗いのが嫌いなのですが、「暗いのが怖い」と言う
不安な気持ちを植え付けたくないので、部屋を明るくしたり、寝る前だと少し明
るくして声をかけて子どもの目の届く場所にいたり、添い寝して体をなでてやった
りしています。私は、今「暗いのは怖くない」と安心を与えてやれば、そのうち
怖がらなくなるだろうし、遅くても物心がつき親の言うことが理解できるように
なれば怖がらなくなると思っています。(余談ですが、主人は今我慢させておか
ないと、大きくなっても「暗いのが怖い」と泣くようになると言います。)

★多くの人は、「子どもの心を大切にする」ということと、「甘やかし」を
混同しています。子どもの心を大切にするということは、甘やかしでは
ありません。特にこのケースのように、暗闇恐怖症(軽度ですが……。重度の
恐怖症の子どものばあい、「こわい」という気持ちすら表現できないまま、
おびえます)の子どもは、子どもの心が安定するまで、無理をしないのが、大原則
です。無理をすればするほど、また強引に親の判断を押しつければつけるほど、
子どもの心に大きなキズをつけることになります。

★「安心できる家庭」は、子どもの心をはぐくむための絶対条件です。「安心
できる」ということは、「疑いを抱かない」という意味です。本来、親側も
そういうことをあまり意識しないで、つまり「安心できる家庭をつくろう」という
気負いがないまま、安心できる家庭をつくれるとよいのですが……。少し
気負いが感じられるのは、お母さん自身も、どこかで「安心できない家庭」を
経験しているのかもしれません。気負いはえてして、子どもの側から見て、
「押しつけ」になることがありますから、この点は注意してください。

 私の私見ですが、「『抱き癖』がつく」と言う親は「『自立心』をつける」と
子どもの為と主張しますが、自分(親)が「早く子育てから解放されたい」と言う
心の言い訳(やむをえず仕事をしている人は仕方ありませんが)のような気がし
てなりません。私も「解放されたい」と思う事は多くありますが、他の動物と違っ
て人間の赤ちゃんは抱いて育てられるように産まれてきているのだと思っ
ているので、子どもを産んだ以上側にいて抱いてあげるのは当たり前だと思っています。
そして、幼い頃の不安は大人になっても心のどこかに残っているのだから、「心」
で与えられる安心は惜しみなく与え、欲求は満たしてあげようとも思っています。

★「抱き癖」については、多くの人が論じていますが、元来日本人はスキンシップの
少ない国民であるという大前提で考える必要があります。アメリカへ行くたびに、
親子でも、夫婦でも、恋人どうしでも、実に平気にスキンシップを繰り返して
いるのには驚かされます。(日本でいう抱き癖は、たとえば親側のほうから
一方的に抱くイコール、溺愛的な抱き癖をいいます。またもともと情緒が不安定な子どもは、自
分の情緒を安定させるためにスキンシップを求めてくることもあります。)
「抱き癖」と、一言では処理できない問題を含んでいます。

★「抱き癖」がついたから自立心がないとか、そういうことにはなりません。
子どもの自立は、もっと別の角度から考え、また論じなければなりません。
それはちょうど、風邪をひいて寝ている子どもに向かって、「あなたは寝ている
から、なまけもの」というぐらい、私には乱暴な意見に聞こえます。

★子どもが求める限り、スキンシップには応じてあげる。また子どもの
情緒が不安定になっているのを感じたら、積極的に抱いたり、手をつないだり
してあげることは、満4・5歳前後まではとても重要なことです。むしろ今、
親に抱かれない子ども、スキンシップを受けつけない子どもが問題になって
います。心に何らかの大きなキズをもった子どもですが、そういう子どもは
今度は自分が親になったとき、「子どもを育てられない親」になる心配があり
ます。

★子ども自身に何らかの情緒障害があるときは、たとえば自閉症、かん黙症など、
特定の人(親など)には抱かれますが、それ以外の人には心を許さない分だけ、
人には抱かれません。保育園や幼稚園の先生が抱こうとしても、体をこわばらせて
しまいます。心が緊張状態にあるためとみます。(表情にだまされてはいけません。)

★「惜しみなく愛を与える」「惜しみなく抱く」というのが、親側の一方的な、つま
り、恩着せがましい押しつけにならないように注意してください。親の欲望を満たす
ために、一方的に「してあげる」というのは、子どもの側からみて、「いらぬおせっかい」
となりやすいですから注意してください。

 主人はそれが「『甘やかし』であり、『自立心』のない子どもになる」と言いま
す。勿論、お判りでしょうが欲しいものを全て買い与えると言う意味ではないし、
「我慢」が出来る頃になれば、色々な意味で「我慢」をさせなければいけないと
も思っています。それは「我慢」を無理に押し付けるのではなく、その時々で時
間がかかるかもしれませんが、どうして我慢をしなければならないかを教えてい
けば、ダダをこねるだけのわがままを言ったり、甘えん坊にはならないと思って
います。そして「我慢」する事から「自立心」が生まれるのではないかとも思う
のです。

★おっしゃる通りです。この点については、あなたのご主人の意見は、正しく
ありません。先ほども書きましたが、「自立」というのは、子どもに考えさえ、
行動させ、そして責任をとらせることです。同じ「甘い」と言っても、それは
「甘い(だらしない)生活規範」をいいます。そうでなければ心配はいりません。

★子どもに「がまん」させるのではなく、もしたくましく自立した子どもにしたければ、
家の中で、どんどん使うことです。家事を積極的に手伝わせます。子どもにとって
忍耐力というのは、「いやなことをする力」のことをいいます。台所の生ゴミを
手で始末するとか、そういうことです。もちろんほしいものをどんどん買い与える
というのは、ここでいう「甘い生活規範」になりますから、それは避けます。

 主人は子どもが一人でいい子にして遊んでいる時に、中途半端に遊んで自分の都
合で寝かせ、子どもがもっと遊んで欲しいと泣き、私が相手をしようとすると子ども
に「泣くな」と言い、私に「ほってほけ」「我慢させろ」と言います。子どもにし
てみれば自分が悪くないのに怒られている訳で、それなら最初から一人で遊んで
いる子どもに構って欲しくないし、「泣くな」でなく「お父さんは○○しないとい
けないから、いい子にして待っててね」と言って欲しいのです。

★こうしたケースでは、いろいろと不満がたまるかもしれませんが、100点満点を
夫に期待しないことです。「まあ、そこそこ適当に……」と考えることこそ、うまく
いくコツです。先ほども書きましたが、全体としてあなたは「よい母親であろう」とか
「よい家庭を築こう」という気負いが強過ぎるような気がします。それ自体は悪く
ないのですが、こうした気負いは、夫にしても、またあなたの子どもにしても、
かえって窮屈なものになりがちですから注意します。『子育てはまじめ七割、いいかげんさ
三割』と覚えておきます。やがて子どもは「パパはいいかげんな人だ」と思うように
なるかもしれませんが、さらにやがて、今度は子どものほうが親の操縦法を身につけ
ますから、それほどキリキリすることもないのです。子どもも、成長するということ
です。むしろ夫が子どもをあやしていたら、あなたのほうがそれを評価し、応援する
ようにしてみたらいかがですか。

 さらに、抱っこしても泣き止まない子どもに「こら!泣くな」と(主人は怒って
ないと言うのですが)怒ります。その前に、なぜ泣くかを考えてその原因を取り
除いてやって欲しいと思うのです。

★わかります。あなたは心のやさしい人で、子どもの心を理解しようとしています。
一方的に自分の考えを押しつけることを、「親意識」といいます。日本人は、
この親意識が強い民族です。長く続いた封建制度が、こうした親意識を生み出し
ました。今はその過渡期かもしれません。あなたの夫にも、「私は親だ」「父親は
権威だ」と意識がまだ残っているのかもしれません。あなたは妻として、そういう
夫をよく観察してみてください。あなたの夫の中に、「日本文化論」を発見できる
かもしれませんよ。(もっともこの問題は、そうは簡単には解決しません。あなたが
夫をさとしたところで、夫自身があなたのほうがかえってまちがっていると言うのが
オチです。)

 主人はそれらを何度言っても「自立心が養われない」「甘やかしすぎだ」「今
のうちから(物欲ではなく、不安感や安らぎを)我慢をさせろ」「将来わがまま
になる」と言います。私は、子どもがわがままになるのは、心の欲求を満たさず物
欲ばかり満たした結果、子どもが心の欲求を満たしたいが為に起こす行動ではない
のかと思ってるのですが、先生はどう思われますか? 主人の言うことも間違って
いないのでしょうか?

★あなたの夫には悪いですが、あなたの夫の考え方はあまりにも短絡的で、どう
反論してよいかわからないでいます。子どもの心を大切にするということは、
甘やかすということとは別問題です。まったく別問題です。またわがままになると
ということは、「ものの考え方が退行的、享楽的、自己中心的になること」を言います。
今回の問題はまったく別です。子どもの心にしっかりと耳を傾けながら、それが
わがままなものであれば、その時点で、毅然とした態度で、突っぱねればよい
のです。わがままな子どもについては、私のサイトのあちこちで書いていますので
また参考にしてください。

 私のしている子育ては、私の両親の子育て法であり、主人の言っていることは、
主人の両親の子育て方法でもあります。主人に聞いたのですが、自身は「自立心」
「我慢」と言って心も物欲も充分に満たされる事無く、押さえつけられて育てら
れた傾向にあると私は感じました。(勿論、子どもに良かれと思った結果なのでしょ
うが……)だからとは言い切れませんが、主人はわがままで物欲が強く我慢がで
きず、どちらかと言えば依存心が強いのです。(まぁ、いい所もあるので結婚し
たのですが。)

私も全ての欲求を満たされて成長したのではなく、厳しく(時にはひどく叩かれ
ましたが、私が悪い事をした時なので虐待とは思っていません。)育てられまし
たが「だめだからだめ」ではなく、「どうしてだめか」をいつも教えられていた
ように記憶しています。私の両親の子育てにも問題のあった所も、私の短所も自
負しているつもりです。
 だからこそ、子育てについてこれらの考えにたどり着きました。

★すばらしい発見をなさいましたね。私が同じことに気づいたのは、かなり
子育てが終わってからです。あなたはたぶんまだ若いと思いますが、ここまで
自分で発見なさったということは、あなたはすばらしい母親になれる資格があり
ます。(これは本気でそう思っています。)自分の過去を知る。そして今、あなたの
子どもが、「子どもの過去」を作りつつあるということ。それに気づけば、子育て
の真髄がわかったようなものです。(私の講演を聞きにおいでになったことが
ある方でしょうか?)実際、あなたのメールを読んで、私はいろいろ教えられました
し、感動しました。特にこの部分に、です。ここまで自分に気づく親は、本当に
少ないです。たいていの親は、自分の過去に引きずられていることすら気づかない
まま、同じ失敗を繰り返すのです。

 長くなりましたが、私は「甘やかし」や「わがまま」でではなく、自分の考え
を持ち、それを実践できるように「のびのび」と育てたいと思っています。

★まさに正解です。親は子どもの前を歩く。子どものガイドとして。親は子どもの
うしろを歩く。子どもの保護者として。親は子どもの横を歩く。子そもの友として。
あえて言うなら、「よい親であろう」という気負いは少なめにして、「友」として
自分を自覚してみたらいかがでしょうか。今のままだと、子どものほうが
窒息して、明るい笑顔が消えるかもしれません。どうかご注意ください。
(ひょっとしたら、あなたは夫にも、「完ぺきな夫」をあてはめ、それを
求め過ぎているのではありませんか? 子どもがまだ小さいから神経質に
なっているのは、理解できますが、あまり神経質にならないように。子ども
自身の伸びる力を信ずることです。)

 最後になりましたが、主人子育てについてのすれ違いに心苦しくなる時もあり
ますが、子どものことに無関心ではなく、色々と考えてくれるという事に違いはな
いので、それはとても嬉しい事とも思ってもいるのです。

★前だけを見て、前に進みなさい。あなたの夫はすばらしい人です。そういう
前提で前に進みなさい。すべてを受け入れて、すべてを許して前に進みなさい。
いいですか、ニ度と「まぁ、いい所もあるので結婚したのですが……」などとは
言ってはいけませんよ。そういう迷いは、やがて大きなわだかまりになりやすい
ので注意してください。あなたはあなたの夫を心底愛して結婚したのです。そして
あなたは今の子どもを心底望んで産んだのです。あなたの「現実」をすなおに受け
入れることです。わだかまりがあるなら、子どもが小さいうちに解決しておいて
ください。これから先、何度もそのわだかまりが、顔を出し、あなたの子育てを
狂わせます。今の「現実」を前提にして、これからの結婚生活を考えます。

長くなりましたが、ここまで読んでくださいましてありがとうございました。
新しい年まで後少しですが、寒くなってまいりましたので、
お体に気をつけ、よい年をお迎え下さい。
それでは、よろしくお願い致します。
(2001年12月26日付け)


●Hさんよりの返信

早速、ご意見を頂きまして、色々と考えさせられました。

 ★「惜しみなく愛を与える」「惜しみなく抱く」というのが、親側の一方的
な、つまり、恩着せがましい押しつけにならないように注意してください。

ご助言ありがとうございます。ハッとしました。
先ほどは書きませんでしたが、私は母に母の愛を「押し付け」られているように
感じている時期があり、とても苦しい時がありました。
(今はとても仲がよく、お互いに何でも話し合える母子です。)
「子供の為に」と気負わないように自然体で、子供に接しようと思いました。

 あなたの夫にも、「私は親だ」「父親は権威だ」と意識がまだ残っているのかもしれません。

主人自身そういう家庭で育ったのだから、そうなのだと思います。
この点は、おっしゃる通り今すぐにどうこうなるものではないので、
その時に出来る事を、苦痛でない範囲で手伝ってもらうようにしています。
そして、私は感謝の意をこめて「ありがとう」と言うように心がけています。

 あなたの夫には悪いですが、あなたの夫の考え方はあまりにも短絡的で、どう
 反論してよいかわからないでいます。子どもの心を大切にするということは、
 甘やかすということとは別問題です。まったく別問題です。

だから、私は先生に「押し付けでは?」と感じさせるぐらい、
「しなければ」と言う意識が強くなるのかもしれません。

(ひょっとしたら、あなたは夫にも、「完ぺきな夫」をあてはめ、それを
 求め過ぎているのではありませんか? 子どもがまだ小さいから神経質に
 なっているのは、理解できますが、あまり神経質にならないように。子ども
 自身の伸びる力を信ずることです。)

子供が生まれてすぐは、確かに私の理想「こうでなければならない」
「そうであって欲しい」を押し付けており、また主人はそれに
反発ばかりしていました。母の助言もあり私は押し付ける事
(反発された事に反発していました。)をやめました。
もしかしたら、主人が一歩引いてくれていたのかもしれませんが・・
今までの反発がなくなり、協力的になってくれました。

 「まぁ、いい所もあるので結婚したのですが……」

書き方が悪かったですね。すみません。
「悪いところばかりではない」→「いい所も沢山ある」という事を
伝えたかったのです。夫婦間のわだかまりと言うのはありません。
子育てのこともそうですが、私たちは何でも話し、また多くの意見交換をします。
だから、今回のようなすぐには解決の出来ない意見の違いも
多くあるのだと思います。
 そしてなにより、たまに言う親の無理や不愉快さから子供が主人を
嫌いにならないかと心配だったのです。
(いつもの楽しいことよりもたまにある嫌なことの方を
よく覚えていたりするので)

 主人の言っている事、している事は前回にも書いた通りですが、
それはいつもいつもではないんです。
彼は自分の思い通り(例えば、早く寝て欲しいのに寝てくれない。
子供が泣くので食事の準備が進まない、ゆっくり食事が出来ないなど)に
ならなかったりすると、自分より子供を相手にする私にムッとし、
その時に、色々なことを言うのです。
本気で言っているのかどうかは私には判りません。
(主人はしばしば思ってもないことを言ったと反省してますが、
私は心の中にない言葉は、口から出てくる事は口をついて出てこないだろう
と思っているからです。)そうは言っていても、私がどうしても
手が離せない時など抱く事ができない時は頼まなくても
主人が飛んでいって相手をしてくれています。
 そして、私が子供の相手をする事にその時は怒っていますが、
無理に止めさせたり、次の日に同じ事で怒ると言ったことはあまりないのです。
その都度冷静になった時に、反省をしているのかもしれません。

 前回、この事を書かなかったのは、主人の言っている事の中にもしかしたら
正しいことがあるのではないか?また、主人に「それは違うよ。」と
説明するときに、私の考えを押し付けて(主人には「押し付け」に感じる
だろうと言う意味です。)いいのかと疑問に思ったからで、
気になる事だけを書かせてもらいました。

 子供と一緒に遊び、嬉しそうに笑っている父子を見ると、
たまに無茶を言い、子供のような主人は、少しずつですが「父親」に
なっているのだと私はしみじみと思い、幸せを感じています。

 私の考え、主人の考えをお互いの父母からでなく、
第3者からの意見を聞いてみたいと常々考えている中、
時間がある時にインターネットで育児サイトを覗き、
皆さんがどういう考えで、子供とどう接しているかを見ていました。
 それと同時に専門家の方はどういう事をおっしゃっているのか、
知りたくもあり、たまたま覗いたメールマガジン発行サイトで
先生の事を知り、是非ご意見を頂きたいと思った次第です。
 そして、色々なご指摘やご助言を頂きまして、ありがとうございます。
心の中の疑問や迷いでモヤモヤしていた部分がスッと晴れたような気分です。
これからも、よろしくお願い致します。

追伸:また長々と書いてしまいました。
   (文章が下手なので恥ずかしいですが・・・)
   こんな私の考えでよければ掲載して下さい。





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【19】

Q:娘夫婦には3歳になる女の子がいますが、借金や主人の浮気問題を抱えているため、家庭
が不和で、孫娘が保育所や家で危険メッセージを発するようになりました。極端に食事を嫌が
ったり、保育所の先生を独占して団体行動がとれなくなったり、迎えにきた母親の事や、帰宅
を拒否します。保育所は大好きです。私は職業上(心理カウンセラー)娘にアドバイスを様々な
形でしてはいますが、根本的に大きな問題があります。それは、孫娘がダウン症で、言語発育
が不全なのです。情緒面や理解力や知的レベルは健常児に近く(簡単な会話は手話で出来る
ので)苦労は少ないのですが、ストレスがたまると暴れだす時もあります。こういう場合にカウン
セリング的関わりがどの程度有効なのか全く見当がつきません。解決のためのアドバイスを頂
きたいのですが。(徳島県Sより)

A:どうにかなる問題と、どうにもならない問題にはっきりと、二つに分けてみましょう。娘さん夫
婦の問題は、そのどちらですか。借金や浮気を乗り越えて、「夫婦」が成り立つ状態でしょう
か。それとももう危機的な状況でしょうか。しかしこの問題は、娘さんが結論を出し、親はそれ
を信頼し支持するしかないでしようね。今は、そういう形の離婚も多いし、離婚そのものが、問
題という時代ではありません。この問題は、娘さんの結論を、しんぼう強く待つしかないでしょう
ね。親としては苦しいでしょうが、ここは待つしかないでしょうね。あれこれ指示を出すのは、こ
の種の問題ではタブーかもしれません。
 
お孫さんの情緒の乱れは、家庭環境(騒動?)が原因だとするなら、そういう騒動から切り離す
ことは一つの選択肢でしょうね。しかし多かれ少なかれ、皆さん、同じような問題をかかえてい
ますので、「うちだけが……」とは、思わないでくださいね。
 
ダウン症のお孫さんについては、まったく問題はないわけですから、問題としないことです。もう
すでに受け入れておられるご様子ですので、気にしないで、前向きに考えられればいいのでは
ないでしょうか。その話とは別に、ストレスがたまると暴れるのは、かんしゃく発作をまず疑って
みます。私のHPのどこかにかんしゃく発作について書いたところがあります。またよろしかった
ら、ご覧になってください。(ほかに特に呼んでいただきたいのが、トップページから、「心のオア
シス」です。)
 
私もにっちもさっちもいかない問題をかかえたとき、一人の友人が、こう助けてくれました。「何
でもありのままを隠さず話す友人をつくれ。ぼくがその友人になってあげる」と。私はその友人
にすべてを話すことで、かなり助かりました。そしてそれまで問題だと思っていたことが、実は
何でもないささいなことだと知らされました。
 
娘さんとの信頼関係は、じゅうぶんありますか? もしあるなら、今、Sさんがかかえておられる
問題は何でもない問題ですよ。しかし娘さんとの間に、亀裂や断絶があると、結局は苦しむの
は、Sさんご自身かもしれませんね。娘さんは、やさしい言葉を、かけてくれますか。私はそう望
んでいます。そういう人間関係があれば、どんな苦労も乗り越えられますよね。
 
お孫さんの話に戻りますが、帰宅拒否、嫌悪症、摂食障害など、いろいろな神経症を表してい
るので、全体として、愛情不足を疑って、濃厚な愛情、安心できる人間関係を用意するしかな
いでしょう。その役をSさん自身がすることができませんか。6歳になるまで(中間反抗期を終
え、少女期へ入るまで)のことですから、それほど長くなくてもいいのです。あと2〜3年ですか
ら。6歳を過ぎると精神的にも落ち着いてきますので、それからはどうこうなるということは、心
配しなくてもいいでしょう。私も父が酒乱で、祖父が父親がわりをしてくれました。(まがりなりに
も、まあまあの人間になれました?が……) 
 
今、娘さんは、Sさんの理解と心の支えを、一番求めているでしょうね。「おまえが結論を出せ。
どんな結論であるにせよ、私たちは最後までおまえを信じ、おまえを支える」と言ってあげたら
どうでしょうか。「こうしろ、ああしろ」とは言わないように。またどんな結論でも、それについて批
判したりしないように。こういうとき親がすべきことは、「許して忘れる」ですね。私はそうしてきま
した。あとはあきらめ、前向きに進みましょう。「谷があるから山がある」とか、「どんな雲にも、
銀色の縁取りがある」とか、おなぐさめする言葉はたくさんありますが、しかしこれらの言葉は、
娘さんのご家庭の問題に対してではなく、Sさんご自身への言葉だと思ってください。晴れない
心。ふさいだ心。ゆううつな心。何をしても泣きたくなるような心。夜も眠られない。朝起きたと
き、一瞬静かな静寂を感じ、「ああ、こんな心もあったのか」と驚く……。私もそうでした。多分、
Sさんもそうではないでしょうか。あるいは私のようにうつ病でなければ幸いです。(私はうつ病
になってしまいましたよ。)もし心労が続くようでしたら、どうかSさんご自身の健康を大切になさ
ってください。しかしね、私も自分で、そういう経験をして、はじめて他人の苦しみを理解できる
ようになりました。今、Sさんのお気持ちがよく理解できるのは、そのためです。心理カウンセラ
ーだということですので、こう考えてはどうでようか。「今、私は娘に教えられている」と。私は息
子たちが問題をもちこむたびに、そう思って試練を乗り越えました。(私の場合は、ものを書くこ
とで、自分の悲しみを燃焼させることができました。)
 
Sさんも、この問題を乗り越えられたとき、私など足元にもおよばないほど、すばらしいカウンセ
ラーになっておられることと思います。いっしょに、乗り越えましょう。すでにSさんがお気づきの
ように、今、娘さん夫婦がかかえておられる問題など、なんでもないのです。何が問題だという
のですか。離婚するのもよし。お孫さんを預かるのもよし。世の中ではいくらでもある話ですし
ね。結婚に「形」などないし、「人生」に形などないのです。
 
一つ心配なのは、娘さんとSさんとの関係です。良好であれば、問題はないのですが……。第
一に修復すべきは、娘さんとの人間関係でしょうね。決して娘さんを責めたり、追い詰めたりし
ないように。しても無駄ですが、こういうケースでは、そういうことをすると、関係を決定的に破
壊しますし、破壊されると、その後、Sさんの苦労が、数万倍になってしまいます。心労がSさん
を押しつぶしてしまいます。しかし娘さんが、Sさんを信頼し、Sさんが娘さんを信頼していれば、
苦労が苦労でなくなってしまうはずです。「楽しく、この困難なときを乗り越えようね」とです。私
が一番気がかりなのはこの点です。できの悪い子どもほどかわいいと、昔から言いますが、そ
んなできの悪い子どもでも、「お父さん!」と言って胸に飛び込んできてくれれば、親の苦労な
ど吹き飛んでしまうということです。そのためにも、もし私にアドバイスできることがあるとすれ
ば、問題はこの一点です。「どうかお嬢さんを大切に。お嬢さんの心を大切に。お嬢さんを信
じ、支えてあげてください」です。ほかの問題は、すべて何でもない、よくある問題です。あとは
自然に解決する問題ばかりです。深刻に考えないように。すてきなお孫さんの笑顔が想像でき
ます。その笑顔を大切に。
 
とても私のような弱輩がアドバイスできるような方ではないように、お見受けしました。失礼が
多々あると思いますが、どうかお許しください。私でよければ、また何でも話してください。あな
たの友になります。喜んで……。
 
では。ツクツクボーシが目の前の栗の木の中でなき始めました。今日は浜北市で講演をしてき
て、ほどよい疲れが気持ちいいです。では……。







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【20】

Q:人前で叱るなと、はやしは言うが……

A:子どもを叱るときは、人のいないところで……は、大原則です。それは子どもの自尊心を守
るためです。しかしその自尊心をキズつける心配のないときは、人前でも構わないことは言うま
でもありません。たとえば散らかしなどは、皆の前で叱っても、子どもの自尊心をキズつけると
いうことはありません。

 子どもの自尊心をキズつけるときというのは、たとえば、子ども自身が、誇りに思って
いることや、あるいは子どもの人格そのものを攻撃するようなときです。これを私は「格攻撃」と
言っています。たとえば「あなたはやっぱりダメな子ね」式の叱り方がそれに当たります。こうい
う格攻撃はしてはいけません。これは子どもを指導するときの、大原則です。






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【21】

Q: 学校の先生から呼び出しを受け、うちの子(小4女子)が、ほかのお子さんをいじめている
とのこと。あわててしまいました。

A: こういうケースでは、こちら側の正当性を主張しても意味はありません。いじめる側(加害者
側)といじめを訴える側(被害者側)の意識の差はたいへん大きく、あくまでも相手のお子さん
の立場になって考えてあげることこそ、重要です。おとなの世界ならともかくも、子どもの世界で
は、「親は、負けるが勝ち」です。先生の話をしっかりと聞き、相手のお子さんの立場で考え、
低姿勢で対処します。そして自分の子どもに向かっては、頭から叱ったりせず、言い分にはじ
ゅうぶん耳を傾けながらも、親として言うべきことは繰り返し言います。「いじめ」と言っても、い
じめる側にはその意識がないのが、ほとんでです。おもしろ半分に言ったり、したことが、相手
をキズつけているケースがほとんどと言ってよいでしょう。あなたにとって重要なことは、子ども
たちが、「学校」という世界で、互いに仲良く楽しく過ごせるような環境を用意してあげることで
す。そのため、親の主張はひかえます。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

Q: 子どもをたくましい子どもにしたいが、どうすればいいですか。

A: フロイトは自我論の中で、「たくましさ」について、説明しています。それを子どもにあては
めて考えてみると、こうなります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
               自我が強い子ども      自我が弱い子ども
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  
行動能力       ものごとに攻撃的        ものごとに防衛的
             「やる」「したい」と言う      「いや」「つまらない」と言う
現実感覚       現実感が強い          空想の世界に逃げることが多い
             頼れるのは自分と考える    神秘的なものにあこがれる
趣味の方向性    将来に向かって展望をもつ  その場だけのせつな的な喜びを求める
             創造的              逃避的
衝動的行為      自己制御ができる       がまんができない
             自制心が強い          自制心が弱い
             善悪にしたがって行動する  善悪の判断が甘く、悪に流されやすい
 原稿の一部は、中日新聞のコラムに書いておきましたので、参考にしてください。
                    中日新聞 をクリック   


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

一つの離婚

 最近、知人夫婦が、離婚した。前から家の中はメチャメチャだと聞いていたが、(そう言って
いたのは、ワイフだが)、現実にそうなると、「どうして?」と思ってしまう。夫は、開業医。妻は、
東京の有名私大を出た、才女。実家の父親も、神奈川県で開業医をしているという。私たち夫
婦からすれば、雲の上の人たちということになる。

 離婚した理由はわからないが、ワイフはこう言った。「奥さんは、熱心なK教団の信者よ」と。
私は瞬間、壮絶な家庭内宗教戦争を想像した。が、宗教戦争が離婚をもたらしたと考えるの
は正しくない。こういうケースでは、何かほかに原因があって、妻が、信仰の世界に身を寄せた
と考えるほうが正しい。人は不幸になると、それがどんなタイプの不幸であれ、心に透き間がで
きる。その透き間を埋めるために、人は信仰に走る。……のめりこむ。こう決めてかかるの
は、信仰をしている人たちには失礼な言い方になるかもしれないが、心の透き間というのは、
そういうもの。私は「心のエアーポケット」と呼んでいる。このエアーポケットは、だれにでもあ
る。しかしふだんは、その人の理性や知性で、窓を閉じているが、ふとしたきっかけで開くこと
がある。

 いや、信仰が悪いと言うのではない。それぞれの道を極めるために、信仰の世界に入る人も
多い。しかし個人信仰と、組織信仰とは区別しなければならない。本来、信仰というのは、どこ
までも心の問題。心の問題だから、その人個人の問題ということになる。が、時として、その信
仰が、組織に組み込まれ、その組織に利用されることがある。そしていつの間にか、反社会的
な行動をしながら、その反社会性にすら、気づかなくなるときがある。そのため日本以外の先
進国では、宗教団体による政治活動はもちろんのこと、営利活動すら法律によって禁止してい
るところが多い。

 その組織信仰かどうかは、簡単な方法で見分けられる。その組織や組織の指導者を批判し
てみればよい。組織信仰をしている人は、組織あっての信者と徹底的に洗脳されれているか
ら、それに猛烈に反発する。そうでない信者は、組織そのものをもっていない。たとえば私の実
家は、真言宗大谷派だが、私の母も、家族も、現在の「長」がだれであるですら知らない。法事
のときは、所属する寺の僧侶の悪口を言いあって楽しんでいる。

 さて先の知人に話をもどす。その知人の家庭には、何か大きな問題が起きたらしい。そこで
その妻は、必死になって、つまり彼女なりのやり方で、家族をたてなおそうとした。K教団に救
いを求めたとしたら、それはあくまでも、その結果でしかない。が、夫婦で違う宗教を信ずるの
は、決定的にまずい。とくにK教団にように、ほかのあらゆる思想を否定するような急進的な教
団は、まずい。妻がその信仰にのめり込めばのめり込むほど、夫の思想だけではなく、人格を
も否定するようになる。そうなると、もう行きつく先は見えている。

 私はよく考える。宗教は心を救うか、と。いや、もちろん私にも信仰心は、ある。最初にそれ
を自覚したのは、昔、学生時代、満天の星空を見たときだ。私はその美しさに圧倒されて、た
だただ涙をこぼした。それ以前にも、何かにつけて、自分の信ずる神や仏に祈ったことはあ
る。しかしそうした自分なりの祈り方が、決定的に変わったのは、「サダコ」(原爆の少女「偵
子」、広島の平和記念公園の銅像になったモデル)という本を読んだときのことだ。英訳本だっ
たが、私は一ページ読むごとに目が涙であふれ、ときにはもうそれ以上、読むことができなくな
ってしまった。「こんなにも熱心に、神に祈った人がいる」「こんなにも強く、神の力を必要とした
人がいる」と。そう思ったとたん、もう自分のために、祈ることができなくなってしまった。

 いや、今でもときどき、ふと油断をすると、自分のために何かを祈ろうとするときがある。しか
し別の心が、それを止める。「お前より、もっと神や仏の力を必要としている人がいる。お前は
それ以上、何を望むのか」と。あるいは「神や仏に、スーパーパワーがあるとするならば、その
パワーは、私のためではなく、もっとその力を必要とする人のために使ってほしい」と。

 私は凡人だから、他人のために祈るというようなことまでは、まだできない。しかし少なくとも、
その「サダコ」を読んでからというもの、自分のために祈ることはやめた。仮に明日、死を宣告
されても、私は祈らない。私は今まで、じゅうぶん健康だったし、すばらしい家族に恵まれたし、
人生も半世紀を生きることができた。貧乏は貧乏のままだったが、しかし経済的に苦労したこ
とはない。山荘をもつという夢も実現した。私はそれ以上、人として、何を望むのか。

 知人夫婦は、ともかくも離婚した。男の子(高三)と女の子(中三)の二人の子どもがいたが、
男の子は父親が引き取り、女の子は母親が引き取った。聞くところによると、妻は神奈川県の
実家に帰り、ますます熱心なK教団の信者となり、毎日、毎晩、不況活動に専念しているとい
う。夫のほうには、もう再婚話がもちあがっているという。相手は、その医院に勤めていた看護
婦だという。ワイフから話を聞くたびに、私は、「なるほど……」と、へんに納得させられている。
(02−8−14)※






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【22】

Q:小学2年生、7歳の子供に国語や感想文の宿題を教えていますが、その子は集中力がなく2
分と前を向いて座っていられません。とにかくよそ見が多くて家庭教師の方も教えるのを断念
して断るらしいのですが、集中力をつけさせるいい方法はありませんか?いろいろな方に聞き
ましたがこれほど集中力のない子はいなかったらしく参考になりませんでした。その子にどうに
かして覚えたり学んだりする楽しみをわかってほしいのでいい方法がありましたらお教え下さ
い。

A:いくつかの方法があります。

(1)図書館の児童読書コーナーへつれていき、まず好きなことをさせます。1〜2時間も好きに
させていると、自分で好きな本をもってきます。つまりそれで子どもの方向性を知ります。

(2)その方向性について、親や教師の望まないものであっても、何も言ってはいけません。「こ
んな本はだめ」とか「こちらの本にしなさい」とかは言わないことです。

(3)このタイプのお子さんを預かるコツは、要するにがまんくらべと思うことです。短気を起こし
たら負け。

(4)方向性(たとえば機関車とかサッカーとか)がわかったら、「国語」とか「勉強」とかを意識し
ないで、その方向性にあった本なり読書を通して、「文字」のおもしろさを教えます。(子どもに
よっては、ゲームの攻略本なら読むという子どももいます。)親にそのあたりを理解してもらい
ます。まともな本(?)を読むのは3〜6ヶ月先ですと告げます。あせらないこと。(最初から児童
文学書的な本を読ませようと思うと、失敗します。)

(5)図書館でだめなら、(図書館でも落ち着かないようであれば……)本屋へ連れていき、「好
きな本を一冊なら買ってあげるよ。どんな本でもよいから選んでごらん」と話します。同じように
子どもがどんな本をもってきても、「おもしろそうだね」と言って、それをほめてあげます。

(6)方向性がわかれば、それに準じた本を与えるようにします。要するに教える側が、子ども
の世界に入るということです。

私の場合、もう15年ほど前ですが、毎週日曜日に、「読書クラブ」をつくり、毎週7〜8人の子
どもを連れて図書館通いをしました。しかしこの方法は、親には理解されず、「遊ぶに行く」と思
われ、評判はよくありませんでした。(実際、皆遊んでいましたが……。私も自分の好きな本を
読んでいました。)で、そのうち、一人二人と減り、結局1年半くらいでやめてしました。しかし本
好きにするには、これがベストの方法です。アメリカでも図書館のおける読書指導にたいへん
力を入れています。

さて集中力の問題ですが、疑ってみるべきは、「多動性児」の問題ですね。サイトのhttp://
www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/の「スクラップ」と、「中日新聞コラム」(http://www.chunichi-tokai.
co.jp/education/child_world/で読んでいただけます。

もし多動性児であれば、指導は、

(1)まずカルシウム、マグネシウム分の多い食生活にこころがけ、精神面での沈静化をねらい
ます。カルシウムを、リン酸化する、リン酸食品をひかえます。

(2)勉強時間を、きわめて短時間に集中させます。2分もたないなら、2分だけと決めてかかり
ます。そして間に、遊びをいれ、気が向いたらまた2分だけ学習をねらいます。その間は毅然と
した態度で臨み、それを繰り返します。

(3)本来なら、勉強はあきらめ、その分のエネルギーを運動面やほかの面に向けさせて、エネ
ルギーを消耗させたほうが、結局は子どもにとってもよい結果が出るようです。英語にも、「打
ち寄せる波は止めることはできない」ということわざがあります。無理をすれば、免疫性や抵抗
力をつけ、さらには勉強嫌いにしてしまいますから、注意してください。7歳の子ども(生徒さ
ん?)ということですので、もうそろそろ落ち着いてくると思います。この1〜2年が勝負です。

集中力と知能は表裏一体の関係にあります。知的能力の高い子どもは、人を寄せ付けない集
中力を見せます。言い換えると、知的能力を高める方法がないのと同じように、集中力をつけ
る方法はなく、結局は子どもの方向性を見極めながら、その方向性にそった指導をするしかな
いようです。そしてそこから徐々に、好奇心を利用して、集中力を引き出していく……。M君とい
う男の子がいました。小学3年生でした。ゲームの攻略本なら読むので、「ソルダックの防御力
を2倍にするには、どうすればいいか」「金バージョンと銀バージョンはどう違うか」という作文を
書かせたら、喜んで書いていました。

あまり参考にならないかもしれませんが、私の経験がお役にたてればうれしいです。では、失
礼します。







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【23】

Q:学校の先生に問題があるが……

A:学校の先生の悪口、批判は、絶対に子どもの前ではしてはいけません。これは家庭教育の
大原則です。子どもが先生の悪口を言ったときも、「そうね」とか、「ママもそう思うわ」などと、
絶対に言ってはいけません。相槌を打てば打ったで、子どもは先生の指導に従わなくなるばか
りか、あなたの言葉は確実に先生に届きます。そうなればなったで、信頼関係は崩壊します。
もし問題があるなら、子どもとはまったく関係のない世界で処理します。


Hiroshi Hayashi++++++++JAN 08++++++++++はやし浩司

Q:中学校での期末試験が終わって、がっくりしました。ミスだらけです。どうしてでしょうか?

A:昔、私がはじめて英語を勉強したときのこと。家に帰って「バイシクル」という英語を読んで
みせたら、祖父は、「浩司が英語を読んだ」と、心底喜んでくれました。しかし今、そういう感激
が消えました。テストの点数が悪かったりすると、親は「何だ、この点数は!」と子どもを叱った
りします。あるいは「幼稚園のときから英会話教室へ行ったのに、ムダだった」と嘆いたりしま
す。しかしどうしてそんな残酷なことを、子どもに言うのですか。がんばったとは言えないまで
も、子どもは子どもで精一杯、やったのです。それにテストといっても、日本のテストは、「皆が
一〇〇点だと困る。差がつかないから。しかし皆が〇点だともっと困る。差がわからないから」
が基本です。仮に皆がよい点を取るようになったら、問題が難しくなるだけです。

 さて本論。「ミスだらけ」ということですが、それも「力」(?)のうちです。力というのは、どうしよ
うもない力という意味です。恐らく本人も、どうしてそんなにミスが多いかわからないでいるはず
です。言いかえると、そういう力を責めても意味はないということです。仮に責めたところで、ミ
スがなくなるということでもないのです。

 こういうケースでは、そのミスを一番悔しがっているのは、子ども自身ではないでしょうか。だ
ったら、ミスを責めるのではなく、また「どうして?」と悩むのではなく、子どもの立場で、「あなた
はあなたなりによくがんばったのよ。今度はミスにもう少し気をつけよう」と言うべきではないで
しょうか。こうした暖かい前向きな理解が、子どもを伸ばします。親子のきずなを深めます。 





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【24】

Q:学校で落ち着きがないと、先生によく注意されます。

A:「落ち着きがない」原因は、いろいろ考えられます。心配なのは、多動性児ですが、ほかに
も、家庭崩壊で心の秩序をなくした子ども、活発型の遅進性が見られる子どもなどがいます。
最近気になるのは、「イメージが乱舞する子ども」です。映像文化の影響と私は考えています
が、詳しくは、中日新聞東海本社のコラムに書いておきましたので、お読みになってください。ト
ップページからアクセスできるようにしておきました。




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【25】

Q:成績はまあまあですが、何ごとにつけ、そそっかしくて困ります。ミスが多いのが気になりま
す。

A:子どものもつエネルギーというか、バイタリティを大切にします。多少のミスよりも、子ども自
身が、達成感、満足感を味わうようにしむけます。こまかいことを言いつづけると、かえって自
信をなくしたり、萎縮したりします。ワークブックにしても、半分はお絵描きになってもよい。そん
なおおらかさが、子どもを伸ばします。子どもを萎縮させるものに、完ぺき主義、スパルタ主
義、極端主義があります。「極端主義」というのは、私が考えたものですが、ものの考え方が極
端になる主義をいいます。たとえば「やる」と決めたら、あれもこれも、やり、「やめる」と決めた
ら、すべてをやめてしまうという育て方をいいます。子どもの成長は大きな川の流れのようなも
のです。変化を与えるとしても、少しずつ、ていねいに与えます。急に変えようと無理をすれば
するほど、子ども自身のよさも奪ってしまいます。






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【26】

Q:漢字の学習をやりたがらないので困っている。(小4男児をおもちのお母さん)

A: そもそも勉強というのは、いやなものです。私も女房がある会の役を務め、そのため書記
的な仕事を手伝っています。名簿を作成したり、会報を作ったり。で、そういう仕事というのは、
しばらくほうっておくと、すぐ山のようにたまります。で、私が自分のパソコンを使って、それを作
るのですが、これが結構めんどうですね。女房は「まだやってくれないの!」と怒りますが、自
分の時間をみつけるのがたいへんです。いや、結構ヒマなのですが、ヒマになればなったで、
自分のために楽しみたい……。
 
子どもは学校で、約8時間の重労働を学校でしてきます。その上、家での宿題です。やりたが
らないのが、正常です。むしろ黙々と、従順に漢字の学習を続ける子どものほうが、心理的に
何らかの問題がある子どもとみます。小4でしたら、まだ勉強の必要性を理解できる年齢では
ありませんから、本人の自覚をまつしかないと思います。ただできれば、子どもに勉強を強い
るのではなく、おうちの方が一緒に座ってあげて、学習を楽しむというのはどうでしょうか。30
分間一緒にすわってあげて、まあ10分、勉強らしきものをすれば、この時期、上出来です。

 メールによれば、「事務的なことが苦手な子ども」ということですが、実のところ私もそうで、お
子さんの気持ちがよ〜くわかります。

 まずいのは、学習を強制して、文字嫌いから国語嫌いや、作文嫌いにしてしまうことですね。
そうなれば、大失敗というもの。メールによれば、能力的、性格的には問題のないお子さんとい
うことですから、今しばらく、このままのドラマを続けられたらよいと思います。将来的には、漢
字など、いつでも取り返せますから。よそのお子さんは、皆、しっかりと学習していると思ってお
られるようですが、そんなことはありません。小4で、家で積極的に学習している子どもというの
は、10人に一人もいないと思ってください。「隣の芝生はよく見えるもの」です。

 このコーナーの「格言集」も、また参考にしてください。







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【27】

Q:早期教育は必要ですか。小学校入学までに、どんなことをすればいいですか。

A:小学校でする勉強を、先取りするのが早期教育ではありません。幼児期には幼児期にすべ
きことが山のようにあります。早期教育というのは、将来に向かって、その基礎をつくる教育の
ことをいいます。たとえば「文字を教える」のではなく、「文字を好きにさせる」というのが、早期
教育です。これをまちがえると、かえって子どもの伸びる芽をつんでしまいますから、注意してく
ださい。





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【28】

Q:習い事はどこまですればいいでしょうか。

A:習い事が問題ではなく、子どもの意思を確かめているかどうかが、問題です。子どもの意思
を聞きながら、決めます。ただ子どもは、お調子者ですから、先のことをあまり考えず、「やりた
い」とか、「する」とか言いますが、オーバーヒートさせないように、させるのがコツです。なお習
い事は一度に急にふやさないこと。またやめるときも、一度に急にやめないのがコツです。い
つか機会があれば、私の本を読んでみてください。そのあたりを詳しく書いておきました。






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【29】

Q:離婚を考えているが、子どもに与える影響は……?

A:離婚そのものが子どもに与える影響は少ないです。離婚が問題となるのは、その離婚に至
る過程で、騒動が起きるからです。この騒動が子どもに深刻な影響を与えます。子どもに見せ
る騒動は最小限に。なお子どもは、自分が愛されているというきずなさえ大切にすれば、荒れ
るということはありません。




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【30】

Q:はやし先生はじめまして。 私は掛川市内に住むYと申します。2歳3ヶ月になる息子がいま
す。
 
先生の中日新聞でのコラムを毎回興味深く拝読しております。本も買わせていただきました。
先生のご意見を伺うにつけ「こういう考え方があったんだ!」と目からウロコをハラハラとさせて
喜んだり、反省したりしています。育児の壁にぶち当たると、こういうときはやし先生は何ておっ
しゃるのかな?」と思ったりもしています。
 
実は今も息子のことで気に病んでいることがあり眠れずに悶々とネットサーフィンしていたとこ
ろ先生のHPを拝見し、ご迷惑とは思いつつ「どうぞ遠慮なく・・・」とある先生のお言葉に甘え
て、うしてメールを送らせていただきます。
 
相談についてですが内容は息子の性格についてです。ちなみに私は専業主婦で天気が良け
れば 毎日近所の公園で母子ともども顔見知りになった友達親子と遊んでいます。
 
息子は赤ちゃんの頃はまったく人見知りしない子供だったのですが1歳半ぐらいから家族以外
の人に話し掛けられると固まるようになってしまいました。
 
知らない人の集団に入っても泣いたりすることはなく楽しく遊びます。 相手が大人でも子供でも
自分から話かけることも あります。「けんちゃん(自分のこと)○○行ったきたの。」とか 「今何
してるの?」とか。 早いうちから単語が出て言葉は決して遅くはないと思いますが外にいる時
よりは家の中の方が口数が増え楽しそうにしゃべります。
 
でも初めて会う人にはもちろん、毎日のように遊んでいる子供たちや親御さんに挨拶され、面
と向かって話し掛けられると ちょっと笑いながらだったり、時には下を向いて 黙ってしまいま
す。 でもその人たちと一緒に居ることは大好きで「公園に行く」「○○ちゃんと遊びたい」と訴え
てきますし楽しそうに一緒に遊んでいます。 公園で遊ぶ同じ月齢やそれ以下の子供たちはほ
とんど「おはよう」ばいばい」「ありがとう」など息子に対して言ってくれます。自分から言えない
子も親に促されれば言えます。私もせめて話しかけられたらお返事できるようになって欲しいと
思うのですが息子は全く言えません。
  
家の中で挨拶の絵本を読んだり、ゲーム感覚で例えば「朝起きた時の挨拶は?」などと聞くと 
「おはよう!」と正しい返事があるので どんな場面で何て挨拶するのかは理解しているようで
す。 主人を玄関で見送る時は「ばいばい!」などと自分からしています。家族には「ありがとう」
も言います。昨日は主人に「公園で○○ちゃんママにお菓子もらった。でもアリガトウって言え
なかった。」と自分で言っていました。
 
他人と比べてはいけないと思いつつ「どうして家の子は言えないんだろう」という思いが募って
います。周りの友達も「いつかは言えるから」と 言ってくれますがそのお子さん達は上手にご挨
拶ができるので情けないのですが何だか素直に聞き入れることができません。
 
これは単に照れていると思っていいのでしょうか?息子の変わりに私が返事したり挨拶してい
るのですが それでいいのでしょうか?親が言っていればいつかは言うようになると 言われま
すが本当でしょうか?最近カンモク症をいう症状を知り息子もそれに近い状態なのかと不安で
す。 
 
また性格はどちらかというとおっとりしており公園などでおもちゃを取られたり転ばされてもワー
ッと怒ることがなく涙をためてじっとしています。痛い時はもちろん泣きますが イライラとして癇
癪を起こすようなこともありません。遊具なども順番に使うことを教えたら それを守りますが強
引な子に横取りされくやしいようですが小声で「ダメ」と言うだけです。
 
「お菓子がもっと食べたい」などと家族に自分の気持ちを主張して 泣くこともありますが「ご飯
前だから」とか「食べ過ぎだから」と 理由を何度か説明するとそれ以上は訴えてきません。おも
ちゃなども使う意志がなくなると自分で片付け始めます。
 
今まで私も取りたてて大声でガーッと怒ったことがなく、 家族からも友達からも息子は「育てや
すくおっとりした話せばわかる子」という目で見られています。
 
こういう息子は育てやすい物分かりのいい子供と喜ぶべきなのでしょうか? いいかえれば自
己主張が足らない、気が弱い子ということではないですか?私は今の息子の状態がとっても不
安です。もっと子供らしくイヤだったら もっと泣いて訴えればくれればいいと思うし、手をだされ
たらやり返すくらいのくやしさを表現したらいいのにと親の私が歯がゆく思ってしまいます。 息
子にも2歳児なりのストレスが溜まっているのでは、と心配するのですが それは親馬鹿な思い
でしょうか?
 
そこで私はついつい息子に教えるつもりもあって、他の子供とのやり取りに口を出してしまいま
す。おもちゃを取られそうになると、「いま健ちゃん(息子の名前です)が使ってるから待ってて
ね。」とかたたかれたら 「痛いからやめてね。」とか。やっと息子もここ2、3週間前から取られ
そうになると「今、健ちゃんが使ってるから!」と 言葉で抵抗したりおもちゃをギュと強く抱え込
むようになりました。自分で言えない時は相手の子のところまで私の手を引っ張っておかあさ
んが(言って)!」と言うようになりました。私が口を出すことで真似するようになった、とうれしく
思っていました。 
 
でも今日初めて公園でその様子を見た主人に指摘されたんです。「過保護すぎる。赤ちゃんじ
ゃないもう子供なんだから子供同士で 好きにさせるべき。特に男なんだし取られたら取られた
で ほっておけばいい。自分で解決する」と。 なんだか頭を殴られた気分でした。そういうものな
のかと。 たしかに私は息子のためではなく自分の気が済まないから 口出ししていたのかも。
 
挨拶の時でも取り合いの時でも、自己主張が苦手な部分をフォローしてやりたい気持ちと そ
れも個性と認め、できなくでもいいじゃないと受け入れてやりたい気持ちが 私の態度を混乱さ
せています。
  
息子にとってどうすることがいいのでしょうか。他人とのコミュニケーションが苦手な息子に親と
してこれからどのように接すれば良いのでしょうか。
 
私は母に言葉による暴力を受けて育ちました。 母は思い通りに行かないイライラやつらさを子
供に当たり散らす人でした。私は小学生の時からうちに帰りたくないと悩み、中学生の時は必
要以上に母と会話をしませんでした。 常に母親の顔色を見て過ごしてきました。大学生になり
親元を離れることで関係は修復し今も時々子供を連れて帰ると喜んでくれます。でも未だに母
の前に行くと緊張し、素直に自分の気持ちを話すことができません。母に触れる時も体がこわ
ばります。母に認めてもらいたい一心で色々と自分に無理なこともしてきました。でも受け入れ
てもらったと思うことは ありません。今でさえ親子ごっこのように息子と3人で出かけたりします
が母を心の底からは信頼していません。母は今でも33歳になった私に「あんたはやればでき
る子だったのに」と愚痴をいうような人です。 
 
独身の頃から「絶対こんな親にはなりたくない!」と自分の心に言い聞かせてきました。 息子
が生まれてからできるだけ息子の気持ちを理解してやりたいと思ってきました。でもそう思うこ
とで常に「私の育児が間違っていないか、息子を苦しめていないか」が気になってしまうので
す。 育児の正解が何なのかわかりませんし これで良かったなんて死ぬ間際しかわからないと
思いながら、です。もっと肝っ玉母さんのようにどーーーん!としていたいのに そうできませ
ん。2人目3人目と経験を重ねていく上で 「こんなことで悩んでいた」と笑える日が来るのでしょ
うか。 こんなに細かいことで悩んでいたら、息子のためにと理由をつけながら、いつか母と同じ
ように 「あの子ができてなんであんたが出来ないの」と言う親になってしまいそうで自分が情け
ない気持ちでいっぱいです。
 
なんだか愚痴のような相談で、しかもとんでもない長文になってしまいお忙しいところお手をわ
ずらわせて申し訳ございません。 厳しいお言葉、お叱りで結構ですので先生のお考えやアドバ
イスなど頂けましたら 大変うれしいです。
 
季節の変わり目ですのでお体にお気をつけください。 これからもご活躍楽しみにしておりま
す。 講演会にもぜひ一度伺いたいと思っております。 稚拙な文章で失礼の多々、お許しくださ
い。 メール、ありがとうございました。(掛川市・Yより)
 
A:まず第一に、Yさん自身の中に、「母親像」がないことが気になります。母親像が混乱してい
ると言ってよいかもしれません。あなたのお母さんに対する態度、姿勢に、あなたの母親像の
乱れをみるわけです。もっと言えばあなたのお母さん自身も、何らかの理由で、あなたという娘
を心底、愛することができなかった……? それが、因果応報のように(これを世代伝播とい
う)、あなたへと伝わっているとみます。あなたの子育てがどこかぎこちないのは、そのためで
す。つまりあなた自身が、「親像」を定めることができないでいるわけです。
 
しかしこの問題は、ほぼ解決しつつあるとみます。今、あなたが「修復」という言葉を使えるの
が、その理由ですが、それ以上に、あなた自身が、自分のそういう「面」に気がついている。あ
なたはそういう意味で、すばらしい母親です。(たいていの親はそれに気づかないまま、日常生
活の中で振り回されています。)この問題だけは、自分自身の中の「わだかまり」に気づくだけ
で、少し時間はかかりますが、やがて解決します。(気づかないといつまでも振り回されることに
なります。)
 
あなたは対母親との関係の中で、心のキズをもっています。いえ、だからと言って、あなたのお
母さんを責めてはいけません。だれだって、一つや二つ、そんなキズはもっているものです。恐
らく、あなたのお母さんも、戦後の混乱期の中で、落ち着いた家庭生活をもてなかったのかもし
れません。一度、娘の立場で、あなたの両親の関係、あるいは昔の生活環境を観察してみる
とよいでしょう。「なぜ、お母さんはそういう人になったのか」と。そうすることによって、さらに自
分の姿が見えてきます。つまりそれが「わだかまり」と戦う方法の一つだということです。
 
こうしてあなた自身の「親像」を、根底から修復します。(今の修復方法はいわば対症療法のよ
うなもので、基本的な解決方法にはなりません。あなた自身が、親像をもてないため、あるい
は脳の中にインプットされていないため、ご自身の子育てで混乱するのです。昔、こんなことを
言う父親がいました。「子どもの抱き方がわからない」と。その父親は、母子家庭で育てられた
人でした。つまりその人には、「父親像」が入っていなかったのです。親は、自分が育てられた
という経験があって、はじめて自分の子育てができます。そうでなければ、頭の中だけで子育
てをしようとしますから、どこかぎこちなくなるわけです。前提として、今のあなたの子育ては、
そういうものだと考えてください。繰り返しますが、そういうふうに自分を正直にながめること
が、この問題の最良の解決策だということです。つまり、「何だ、私には親像がないのだ」「だか
ら親像をつくればいいのだ」「無理をすることはないのだ」と居直るのです。
 
あなたは今、「よい親になろう」「よい親であるためにはどうすればいいのだ」というように、心の
どこかで無理を重ねている。そういう無理が、回りまわって、あなたの子育ての不安へと姿を変
えているのです。無理をしてはいけません。先に書いたように、心豊かで、親の愛情をたっぷり
と受けて、何一つ不自由なく育った人のほうが少ないのですから……。居直るのです。「私は
私」と。そういう居直りがあなたの心に風穴をあけ、子育てを気楽なものにします。「よい母親」
を演じないことです。もっとわkかりやすく言えば、「親ではなく、友として、あなたの子どもに接
すること」です。
 
あなたのようなタイプの親を、気負いママと言います。「よい親であろう」という気負いまかりが
強くて、疲れてしまうのです。つまりあなた自身が、自分の心の緊張から解き放つことができな
いのです。心理学的には、情緒不安定ということになります。(もともと情緒不安定というのは、
この緊張感から解放されないことをいいます。心はいつも緊張してますから、何ごとにつけ、不
安発作に襲われるのです。これは私の意見ではなく、心理学の世界では常識です。)
 
いいですか、だれだってそうなのです。あなただけが特別ではないし、あなただけが不幸でもな
いのです。みんなそうなのです。みんな、外から見るとうまくいっているように見えますが、それ
は「見せかけ」。日本人はもともと、親像をもつのがへたな国民です。権威主義で、まあ、世界
的にみても、へたなんですね。封建時代の後遺症というか、いまだに封建時代の遺物を引き
ずっているというか……。あなたもその一人に過ぎないということです。「私は子育てはへた。
親が親だからしかたないでしょ。だからあんた(あなたの子どものこと)も、すばらしい母親を求
めないでね。期待しても無理よ」と、まあ、居直ればいいのです。あなた自身が言うように、優
等生を自分に求めないこと。
 
ではどうするか?

あなたの子どもを「友」として受け入れます。これには時間がかかりますが、というのも、あなた
自身の「親意識」が強すぎるので(自然な形での親像がないのが、そのまた原因)、その親意
識との戦いになるから、しかし努力してみてください。あなたはあなたの子どものことを心配して
いるようで、結局は、自分の子どもを自分の思い通りにしたいだけです。(これもよくある例で、
これを代償的愛、あるいは代償的過保護といいます。)もっと言えば、あなたは自分の子ども
を、受け入れていない。あるいはまだまだ、「子どもを愛する」ということがわかっていない。失
礼なことを言いますが、愛することは、苦しいことであり、まさに「許して忘れる」の連続です。そ
れはというのも、不幸にして、あなた自身が、そういうをあなたの母親から受けていないからで
す。(はっきり言い過ぎるかもしれませんが、許してくださいね。あなたにはたいへんショックな
ことばかり書きますが、あなたにすばらしい母親になってほしいからです。)
 
あなたは子どもを育てているのではない。将来のすばらしい友を育てているのです。そういう視
点で、あなたのお子さんを一度見てみてください。そうすると、あなたのお子さんの苦しみや悲
しみがもっと見えてきます。あなたのお子さんはお子さんなりに、懸命に「いい子であろう」とし
ているのです。それをあなたが、「ふつうでない」「もっと……」と思えば、結局は、あなたがあな
たの母親との間で感じた苦しみを、あなたの子どもに与えることになるのです。あなたは今、無
意識のうちにも、自分が感じた苦しみ(あなたは「言葉の暴力」と言いましたが)を、再び繰り返
しているだけです。わかりますか? あなたの子どももいつか、おとなになったとき、今のあな
たと同じことを言いますよ。「ぼくの母は、ぼくを信じてくれなかった。いつも、世間の目を気にし
ていた。ぼくはいい子でいることばかり考えていた」と、です。これが世代伝播です。わかります
か?
 
あなたのお母さんは、あなたに対してぎこちない子育てをした。今もしている。そして今度は、あ
なたも今、ぎこちない子育てをしている。そしてさらに、あなたの子どももおとなになり、親になっ
たとき、またぎこちない子育てをする。あなたの子どももいつかあなたという人に接するとき、今
のあなたのように緊張する……。ああ、もうこういう因縁は、ここで断ち切らねばなりません。で
はどうするか?簡単です。ウソでもいいから、たった今から、あなたの子どもに向っては、「あな
たいい子」「すばらしい子」「自慢の息子」と、言えばいいのです。あなたはお子さんのマイナス
な面ばかりを気にしていませんか。もしそうなら、そうではなく、よい面だけを見るようにするの
です。(あなたのお母さんはきっと、あなたのマイナスな面ばかりを見ていたのではありません
か?)いつか(3ヶ月後とか、半年後に)あなたが自然な形で、「あなたはいい子ね」と言えるよ
うになったとき、あなたのお子さんも、そのいい子になっていますよ。つまりこうして子どもをな
おすのではなく、あなた自身の心を修復するのです。(たいていの親は、子どもに問題があると
子どもをなおそうとします。しかしなおすべきは、自分自身なのです。)
 
さて本論。

お子さんの問題ですが、緘黙症というのは確かにあります。そうであるかないかは、今回のメ
ールだけでは判断しかねます。が、同じような症状は、がんこな子どもや、かんしゃく発作(ふて
くされ、無視)の子ども、敏感児、過敏児、対人恐怖症の子どもにも見られます。また緘黙症と
いうのは、まさに「貝殻を閉ざしたように固まります」ので、症状が極端な形ででてきます。詳しく
はサイトの「子どもの見方」で書いておきましたので、参考にしてください。もしそうであるなら、
これ以上、症状を悪化させないことだけを考えて、無理をしないことです。(心を許した人なら、
抱かれますが、緘黙症の子どもは、他人に心を許しません。許さない分だけ、まず他人に抱か
れません。あいさつをするとかしなとかいうような簡単な問題ではありません。かん黙児の子ど
もは、まずあいさつすらしません。)

いただいたメールの範囲では、私は対人恐怖症ではないかと思いますが、はっきりしたことは
言えません。緊張性の恐怖症です。(私も実のところそうでして、たとえば今は飛行機恐怖症で
す。一度、飛行機事故に遭遇していますし、今度のNYのテロ事件でそれがまたまた倍化してし
まいました。)そういう恐怖症は理屈では処理できないものです。あくまでもお子さんの立場で、
お子さんの視点で考えるようにしてください。無理をしてもなおるものではありません。かん黙
児は、ふつう家の中では、ワーワーともっと無防備に自己主張しますが……。メールによれ
ば、あなたの前でもどこか内閉しているような印象を受けます。かん黙児というのは、1000人
に2〜3人の出現率ですから、私は考えないほうがよいと思いますが……。もし心配なら、もう
少し大きくなったら、保健所の窓口か、児童相談所で相談なさるといいでしょう。私でも診断は
できませんが、「そうでない」という判断はできます。(立場上、かん黙児ですという診断はでき
ませんが、かん黙児ではないという診断ならできるということです。4歳ぐらいになったら、一度
また連絡をとってみてください。まず、その心配はないと思いますし、仮にそうであってもなおす
方法はいくらでもありますから。夜尿症と同じ脳の機能障害ですから、おおげさに考えることも
ないのです。もともとは……。)
 
なお1歳半のとき、「固まる」ということでしたが、これは固まるのではなく、むしろ正常な反応で
す。ちょうどそのころは、「人見知り」する時期にあたります。むしろそれがない子ども(ホスピタ
リズム)のほうが心配なのです。で、今は2歳半ということでですが、この時期の対処のしかた
が、今の対人恐怖症の原因になっているのではないでしょうか。これもよくあるケースで、珍しく
ありませんので、深刻に考えないでくださいね。もしどうしても心配なら、もう一度、4・5歳から
5・5歳にかけて、修復する時期がありますので、そのときの対処方法をいつかお教えします。
(子どもが乳幼児から、少年期へと移行する中間反抗期の時期です。)
 
順に考えていきます。
 
「知らない人の集団に入っても泣いたりすることはなく楽しく遊びます。 相手が大人でも
子供でも自分から話かけることも あります。「けんちゃん(自分のこと)○○行ったきた
の。」とか 「今何してるの?」とか。 早いうちから単語が出て言葉は決して遅くはないと
思いますが外にいる時よりは家の中の方が口数が増え楽しそうにしゃべります。」
 
やはりかん黙児の心配はないですね。かん黙児は安易にはおとなには
決して話しかけませんから……。
 
「でも初めて会う人にはもちろん、毎日のように遊んでいる子供たちや親御さんに挨拶さ
れたり面と向かって話し掛けられると ちょっと笑いながらだったり、時には下を向いて 
黙ってしまいます。 でもその人たちと一緒に居ることは大好きで「公園に行く」「○○ちゃ
んと遊びたい」と訴えてきますし楽しそうに一緒に遊んでいます。 公園で遊ぶ同じ月齢や
それ以下の子供たちはほとんど「おはよう」ばいばい」「ありがとう」など息子に対して言
ってくれます。自分から言えない子も親に促されれば言えます。私もせめて話し掛けられ
たらお返事できるようになって欲しいと思うのですが息子は全く言えません。」
 
あなたがあなたの母親に接したとき緊張するように、
あなたの子どももあなたに接すると緊張するのです。
わかりますか? そのときのあなたの子どもの心理は
実はあなた自身が、一番よく知っているはずです。
  
家の中で挨拶の絵本を読んだり、ゲーム感覚で例えば「朝起きた時の挨拶は?」などと
聞くと 「おはよう!」と正しい返事があるので どんな場面で何て挨拶するのかは理解し
ているようです。 主人を玄関で見送る時は「ばいばい!」などと自分からしています。家
族には「ありがとう」も言います。昨日は主人に「公園で○○ちゃんママにお菓子もらっ
た。でもアリガトウって言えなかった。」と自分で言っていました。
 
もう少し肩の力を抜いたらどうでしょうか。
あいさつなんてものは、したければすればいい。したくなければ
しなくてもいい。目と目だけでもあいさつはできますよね。
アメリカのように「ほほえむだけであいさつ」を交わす国もありますよ。
 
他人と比べてはいけないと思いつつ「どうして家の子は言えないんだろう」という思いが
募っています。周りの友達も「いつかは言えるから」と 言ってくれますがそのお子さん達
は上手にご挨拶ができるので情けないのですが何だか素直に聞き入れることができま
せん。
 
比較は一度クセになると、ずっと子育ての基本になりますから
しないように。あなたのお子さんの心も、あなたから離れます。
ご注意!
 
これは単に照れていると思っていいのでしょうか?息子のかわりに私が返事したり挨拶
しているのですが それでいいのでしょうか?親が言っていればいつかは言うようになる
と 言われますが本当でしょうか?最近カンモク症をいう症状を知り息子もそれに近い状
態なのかと不安です。 
 
まず、緘黙症ではないと思います。基本的には、不安先行型の
子育てをなさっているように思います。なぜ、あなたは自分の
子どもを信じられないのですか。ひょっとしたら、あなたとあなたの
夫の間にも、何らかのわだかまりがあるのでは……? あなたは
電撃に打たれるような恋をして、相思相愛で結婚し、まちこがれて
今のお子さんをもうけましたか? そうであるなら、わだかまりは
ないはずですが……?
 
また性格はどちらかというとおっとりしており公園などでおもちゃを取られたり転ばされてもワー
ッと怒ることがなく涙をためてじっとしています。痛い時はもちろん泣きますが、 イライラとして
癇癪を起こすようなこともありません。遊具なども順番に使うことを教えたら それを守りますが
強引な子に横取りされくやしいようですが小声で「ダメ」と言うだけです。
 
かなりお子さんは無理をしています。乳児期からあなたと一対一の
狭い世界で子育てをしたのが原因です。今ではふつうのことですから、
ここは居直りなさい。「うちの子は、こんなもんだ」とです。
オールマイティな子どもは求めないこと。子どもというのは、
得意な分野を伸ばし、不得意な分野には目をつむるようにして
育てます。要するにあきらめることはあきらめる。もうその時期に
きていますよ。
 
「お菓子がもっと食べたい」などと家族に自分の気持ちを主張して 泣くこともありますが
「ご飯前だから」とか「食べ過ぎだから」と 理由を何度か説明するとそれ以上は訴えてき
ません。おもちゃなども使う意志がなくなると自分で片付け始めます。
 
やはりいい子ぶっています。ご注意。
 
今まで私も取りたてて大声でガーッと怒ったことがなく、 家族からも友達からも息子は
「育てやすくおっとりした話せばわかる子」という目で見られています。
 
育てやすいのではなく、あなたの過関心が、お子さんをしてそう演じさせて
いるだけでは……?
一度、サイトの「ママ診断」を受けてみてください。多分「過干渉ママ」と
診断されるはずです。
 
こういう息子は育てやすい物分かりのいい子供と喜ぶべきなのでしょうか? いいかえれ
ば自己主張が足らない、気が弱い子ということではないですか?私は今の息子の状態
がとっても不安です。もっと子供らしくイヤだったら もっと泣いて訴えればくれればいいと思う
し、手をだされたらやり返すくらいのくやしさを表現したらいいのにと親の私が歯がゆく思ってし
まいます。 息子にも2歳児なりのストレスが溜まっているのでは、と心配するのですが それは
親馬鹿な思いでしょうか?
 
上と同じ。
 
そこで私はついつい息子に教えるつもりもあって、他の子供とのやり取りに口を出してし
まいます。おもちゃを取られそうになると「いま健ちゃん(息子の名前です)が使ってるから待っ
ててね。」とかたたかれたら 「痛いからやめてね。」とか。やっと息子もここ2,3週間前から取
られそうになると「今、けんちゃんが使ってるから!」と 言葉で抵抗したりおもちゃをギュと強く
抱え込むようになりました。自分で言えない時は相手の子のところまで私の手を引っ張って「お
かあさんが(言って)!」と言うようになりました。私が口を出すことで真似するようになった、とう
れしく思っていました。
 
上と同じ。 
 
でも今日初めて公園でその様子を見た主人に指摘されたんです。「過保護すぎる。赤ち
ゃんじゃないもう子供なんだから子供同士で 好きにさせるべき。特に男なんだし取られ
たら取られたで ほっておけばいい。自分で解決する」と。 なんだか頭を殴られた気分で
した。そういうものなのかと。 たしかに私は息子のためではなく自分の気が済まないか
ら 口出ししていたのかも。
 
ご主人の意見に同感です。
 
挨拶の時でも取り合いの時でも、自己主張が苦手な部分をフォローしてやりたい気持ち
と それも個性と認め、できなくでもいいじゃないと受け入れてやりたい気持ちが 私の態
度を混乱させています。
 
これも過干渉ママの典型です。
  
息子にとってどうすることがいいのでしょうか。他人とのコミュニケーションが苦手な息子
に親としてこれからどのように接すれば良いのでしょうか。
 
子どものリズムで考えます。あなたはいつも子どもの前に立って、子どもの手を引いている。
それではいけない。
 
「私は子どもの前を歩く。子どものガイドとして。
 私は子どもうしろを歩く。子どもの保護者として。
 私は子どもの横を歩く。子どもの友として。」
 
あなたはすばらしい母親ですが、三番目の「友」の意識がないのが気になります。どうかあなた
のお子さんのよき友になってあげてください。子どもの横に立つのですよ。あなたのお子さん
は、まちがいなくすばらしい子どもになります。こうしてあなたが考え、そして私も含めて、いろ
いろな意見を学ぼうとしている。そういう姿勢のある母親からは、決してゆがんだ子どもは生ま
れません。こうしてメールを私にくださったということが、あなたがすばらしい母親だという証拠
です。
 
これからもいろいろな山や谷があるでしょうが、こうして考え、悩み、苦しむからあなたはすばら
しい母親になるのです。今は、その第一歩。自分をもっと信じて前向きに進んでください。あな
たが「心配だ」「不安だ」と思っていると、それがそのままあなたのお子さんの心となります。イ
ギリスの格言にも、「相手は、あなたが相手のことを思うように、あなたのことを思う」というのが
あります。その意味は、あなた自身がお考えください。
 





 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【31】

Q:よい友だちと遊ばせたいが、どうしたらよいか。

A:実際に、子どもの友人を選ぶのは親ですね。よい友だちというのは、1〜2年、年上で、たっ
ぷりと親の愛情を受けた、めんどうみのよい子どもをいいます。そういう友だちをもつと、あな
たの子どもは飛躍的に伸びます。そういう子どもは、誕生会に呼んであげたり、夕食をごちそう
してあげたり、親ぐるみのつきあいをしたりします。ただしこの方法は、小学3〜4年生ぐらいま
でしか通用しません。それ以後は、子どもの友だちは、子どもに任すしかありません。







 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【32】

Q:はじめてメールいたします。
ここ一年、加速するようにドラ化する現中一の息子への対応に
悪戦苦闘している四五歳の母親です。
「不登校」「家庭内暴力」「奇声」というキーワードで検索して
いくつかたぐっていましたが、どれも琴線に響くものもなく、
溜息混じりに見つけたのが貴方の直言でした。
長い文筆にかかわらず、一気にスクロールしてしまうほどの
まさに迷う私にとって目からうろこの言葉の数珠繋ぎだったのです。

私は大学の同級生の夫と高一の長女、中二の長男の四人家族ですが、
主人は京都に単身赴任して三年になります。
思えば夫の赴任に伴って、悪化した長男の心身生活態度でしたが、
夫もマメに帰省してくれ、その度に息子と心通わす時間を持ってくれており、
「単身赴任だから」という理由付けで息子の変化を語るには悔しすぎます。

ただ、今の息子は達成感がなく、何事にもやる気のない、目標意識のない、何かにつけて
マイナス思考で、やり場のないストレスを家族にぶつけている状態です。
もちろん、何事も長続きせず、成績は下降の一途です。
時には恐ろしいくらい(明日新聞に載るのではないか?という気さえします)乱暴になり、
その刃は留守宅の私に集中して向けられ、夫が帰るとウソのようにいい子になります。
彼の状態を家族として夫に報告することが、息子にはタブーで半ば脅されたような
状態で、我慢しています。知らぬは主人ばかりなり。一体いつまで続くのか、
学校も中学になって一学期のうち約二〇日欠席してしまい、果ては「学校なんて辞めたい」。
小学校のころから、問題を起こしては責任転嫁をするので、学友からは浮き上がってしま
い、
本人も自覚するものの、引っ込みがつかなくなって自己矛盾に陥って悪循環。
見ていて痛々しくなってしまいます。

そのくせ、今も私のそばを離れず、注意を引くような、私が困るような行動をとるので、
今は、彼が何を探しあぐねて、彼がどう自分のことを考えてるのか、
様子を見ながら、笑顔をつくっている始末。乱暴時には怖くても何もできませんが、
息子と自分たちを信じて負けるまいと考えています。
ただ、時にどうしようもなく、逃げ込みたくなることもあり、死んでしまいたいとすら
思うほど落ち込んでしまいます。
恐らく何千の相談メールのなかで、こんなグダグダなど、取るに足らぬ甘いものだと
察しますが、ほんの少しでも、心を支える言葉を見つけられればと思い、
メール致しました。夫以外誰にもここまで話せません。
陥りやすい母親のパターンなのかもしれませんが、気長に構えるファイトが欲しくてなり
ません。ながながとすみませんが、よろしくお願いいたします。
(千葉県市原市・ESより)

+++++++++++++++++++

●はやし浩司より、ESさんへ
はやし浩司より、
メール、拝見いたしました。
 
息子さんを、R君としておきます。
 
R君は、思春期にありがちな、典型的な情緒不安と
思われます。みんなそうですから、あまり深刻にな
らないのが、賢明です。(情緒不安というのは、いわ
ゆる心の緊張感がとれない状態と考えてください。)
その緊張している状態に、不安が入り込むと、一挙に
暴走するわけです。暴力に向うプラス型と、引きこもり
などに向うマイナス型に分けて考えます。R君は
プラス型です。精神科で診断されると、青年期の
うつ病というような診断名をつけるかもしれません。
この名前を出してショックを受けられるかもしれませんが、
多かれ少なかれどの子どもも、そういった傾向を示しますので、
「うちの子だけが……」とは、思わないでくださいね。
 
言いかえると、この時期さえうまくくぐりぬけると、
症状は急速に回復しますので、あまり不安にならないように。
将来に対する不安を感じているのは、むしろ
R君自身と思ってあげてください。
成績がさがる、勉強がうまくはかどらない、しかし
みんなの中で目立ちたいなど、思春期の中で、
心の中がいつも緊張状態にあるのです。そのため
情緒そのものがたいへん不安定になっているのです。
まあ、いわば、心の風邪のようなもの。少し症状が
重いので、インフルエンザくらいだと思ってください。
いえ、決してなぐさめているのではありません。
ここにも書いたように、ケースとしては、たいへん
多く、またマイナス型(ひきこもり)と比べると
予後もよく、回復し始めると、あっという間に
症状が消えていきます。ですからここは「心がインフルエンザ
にかかっている」と思い、一歩退いた見方で、R君を
みるようにします。
 
で、いくつかコツがあります。
 
(1)今こそ、あなたの親としての愛情が試されている
ときと思うこと。今までのあなたは、いわば本能的愛、
あるいは代償的愛に翻弄されていただけです。しかし
今、あなたのR君に対する愛がためされているのです。
言いかえると、あなたがこの問題を、R君に対する
おしみない愛情で乗り越えたとき、あなたはさらに
深い親の愛を知ることになります。ですから決して
投げ出したり、投げやりになったりしてはいけませんよ。
「私はあなたにどれだけ裏切られても、あなたを
愛していますからね」という態度を貫きます。
いつかR君はそういうあなたに気づき、あなたのところ
に戻ってきます。そのときのために、決してドアを
閉じてはいけません。いつもドアを開いていてください。
そのためにも、「許して忘れる」です。
 
この「許して忘れる」については、私のサイトの
「心のオアシス」の中に書いておきましたから
トップページから開いて、ぜひ読んでみてくださいね。
http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/
 
(2)この症状は、「治そう」とは思わないこと。
「今の状態をより悪くしないことだけを考える」こと。
ここが大切です。この段階で、治そうと思うと、悪循環の
世界に入ってしまい、それこそ「以前のほうが症状が
軽かった……」ということを繰り返しながら、症状は
どんどん悪化(本当は悪化ではなく、親の過干渉、
溺愛からの解放をめざしているのです)します。
ですから、数か月単位で、R君をみるようにし、
そして今の状態をこれ以上悪くしないことだけを
考えて、様子をみます。私の経験では、これから
一通り、R君はおとなになる準備をし、落ち着き始めるのは
一六、七歳ころだと思います。あせってはいけません。
気長に考えるのです。
 
(3)冷蔵庫から甘い食品を一掃してみてください。
思い切って捨てるのです。そしてCA、MGの多い食生活
にこころがけます。子どもの場合、食生活を変える
だけで、みちがえるほど、静かに落ち着いてきます。
詳しくは、サイトのあちこちに「過剰行動児」という
項目で書いておきました。ヤフーの検索で、
「はやし浩司 過剰行動」で検索するとヒットできるはずです。
 
(1) R君は恐らく幼児期はいい子のまま、仮面をかぶっていた
はずです。お父さんに対する態度が違うところがそうです。
(お父さんはかなり権威主義者ですね。)そういう仮面の
重圧感に苦しんできたのですよ。わかりますか?
それを今、懸命に調整しようとしている。そういう意味でも
ごくありふれた、先ほども書きましたように、多かれ
少なかれ、どの子どももかかる、心のインフルエンザの
ようなものです。ただ外から症状が見えないから
どうしても安易に考えてしまう。そういうものです。
 
(5)進学ということよりも、R君がしたいこと、R君に
向いている面で、将来の設計図を一緒に考えてあげるのが
いいでしょうが、ただ今の状態では、まだ時期が早いかもしれ
ません。今、あれこれ動いても、R君自身をかえって追い込んで
しまうからです。心のリハビリを考え、
 
●何もしない、何も世話をやかない、何も言わない、何も
かまわない……という状況の中で、つまりR君から見て、まったく
親の存在を感じないほどまでに、気が楽になるようにしむけます。
こういうケースでは、扱い方をまちがえたり、子どもを追い込むと
たとえば集団非行、家出ということを
繰り返しながら、どんどん悪循環の輪の中に入ってしまい
ます。ですから、子どもの側から見て、安心できる家庭づくり、
ほっとする家庭づくりに心がけてください。(家出をしたら、
またまた何かとやっかいになります。)家にいるだけでも、
ありがたいと思いつつR君に「やすらぎ」を用意します。
つまり根競べです。本当に根競べです。
 
この問題は、今のあなたには深刻な問題ですが、
必ず笑い話になりますよ。巣立ちにはいろいろな
形がありますが、これもその一つです。ですから親の
あなたが一歩退いて、つまり子どもを飲み込んだ世界から
見るのです。決して対等になってはいけません。
 
あのね、R君は、あなたが不安そうな表情、心配そうな
表情を見ながら、自分の心の中の不安を増幅させて
いるのですよ。そういう心理を理解するにはむずかしい
かもしれませんが、一度それがわかると、「何だ、
やっぱり子どもだな」と思えるようになります。ためして
みてください。
 
私の知人(女性)の長男も、高一のとき、無免許でバイクに乗り、
事故を起こし、逮捕、退学。いろいろありましたが、今は
笑い話にしています。(その分、その知人はみちがえるほど
気高い母親になりましたがね……。)いろいろみんな
あるのです。決して、自分だけが……とは思わないこと。
追い込まないこと。わかりますか? 
 
私のサイトの中に、「タイプ別子育て」という
コーナーがありますから、その中から非行なども
読んでみてください。参考になると思います。
 
子どもというのは不思議なもので、親が心配したところで
どうにかなる存在ではないし、しかし放っておいても
自分で育っていくものです。そろそろ子離れを始めてください。
(子どものほうはとっくの昔に親離れしているのですよ。)
 
子育てはまさに航海。「ようし、荒波の一つや二つ、
越えてやる」「十字架の一つや二つ、背負ってやる」
「さあ、こい」と怒鳴ったとき、不幸(本当は不幸でも
何でもないのです。あなたも子どものころ、品行方正の
女の子でしたか? ちがうでしょ!)は、向こうから
退散していきます。
 
R君は、今、自分の将来に大きな不安をもっています。
うまく口ではそれを表現できないだけですよ。だから
態度や行動でそれを示している。繰り返しますが、心の風邪
です。だれでもかかる、思春期の熱病です。(外の世界で
暴れれば問題ですが、いわゆる家庭内暴力というのです。)
本当にありふれた症状です。だからあまり深刻に、(いえ
今は深刻ですが……。決して深刻でないとは思って
いません。)そういうふうに一歩退いてみるのですよ。
決して、R君を追い込まないこと。「がんばれ」とか、
「こんなことでは、高校へ行けなくなる」とか、そういう
ふうに追い込んではいけません。(多分、あなたの
夫は仕事人間で、そういう姿を彼は見て、よけいに
不安になるのかもしれませんね。)
 
あまりよい回答になっていないかもしれませんが、
何か不安なことがあれば、またそのとき、メールを
ください。力になります。いつか必ず笑い話になり、
そしてそのときあなたは「子育てをやり遂げた」「子どもを
信じた」「子どもを愛しぬいた」という満足感を得られます。
そういうときが必ずきますから、どうか、どうか、その日を
信じてください。みんなそうなりましたから。私が経験した
同じようなケースは、みな、そうなっています。だから
私の言っていることを信じて、前向きに生きてください。
 
そうそうあなた自身の学歴信仰とか、学校神話の
価値観を変えることも忘れないでください。そのために
いろいろなコラムを書いていますから、また読んでください。
マガジンも発行しています。
 
みんながあなたを応援します。私も応援します。
R君は、本当はやさしい男の子です。ただ少し
気が小さいだけです。あなたもそう思っているでしょ。
 
では、おやすみなさい。
 
はやし浩司

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


家庭内暴力について

●思春期の不安

 思春期の不安感は、大きく分類すると、つぎのように分けられる。
抑うつ気分(気分が晴れない)、悲哀感(何を見ても聞いても悲しい)、絶望感、自信喪
失、自責感(自分はダメな人間と思い込む)、罪責感(罪の意識を強くもつ)など。これ
らが高じると、集団に対する不適応症状(不登校、怠学)、厭世気分(生きていることが
無意味と思う)感情の鈍化、感情のコントロール不能(激怒、キレる)などの症状が現れ
る。

 またその前の段階として、軽い不安症状にあわせて、心の緊張感がほぐれない、焦燥感
(あせり)などの症状にあわせて、ものごとに対して突発的に攻撃的になったり、イライ
ラしたりすることもある。(こうした攻撃性が、ときにキレる状態になり、凶暴的、かつ
破滅的な行為に及ぶこともある。)

●行為障害としての家庭内暴力

 こうした症状は、思春期の子どもなら、多かれ少なかれ共通してもつ症状といってもよ
い。が、その症状が一定レベルを超え、子ども自身の処理能力を超えたとき、さまざまな
障害となって、発展的に現れる。それらを大きく分けると、思考障害、感情障害、行為障
害、精神障害、身体的障害の五つになる。

 思考障害……ふつう思考障害というときは、思考の停止(考えが袋小路に入ってしまう)、
混乱(わけがわからなくなる)、集中力の減退(考え方が散漫になってしまう)、想像お
よび創造力の減退(アイデアが思い浮かばない)、記憶力の低下(英語の単語が覚えられ
ない)、決断力の不足(グズグズした感じになる)、反応力の衰退(話しかけても、反応
が鈍い)などをいう。

 感情障害……感情障害の最大の特徴は、自分の感情を、理性でコントロールできないこ
と。「自分ではわかっているのだが……」という状態のまま、激怒したり、突発的に暴れ
たりする。こうした状態を、「そう状態における錯乱状態」と考える学者もいる。ただ私
は、この「自分ではわかっているのだが……」という点に着目し、精神の二重構造性を考
える。コンピュータにたとえていうなら、暴走するプログラムと、それを制御しようとす
るCPU(中央演算装置)が、同時に機能している状態ということになる。(実際には、
コンピュータ上では、こういうことはありえないが……。)

この時期の子どもは、感情障害を起こしつつも、もう一人の自分が別にいて、それをコン
トロールするという特徴がある。その一例として、家庭内暴力を起こす子どもは、(1)
暴力行為の範囲を家庭内でとどめていること。また(2)暴力行為も、(事件になるよう
な特別なケースは別として)、最終的な危害行為(それ以上したら、家庭そのものが破滅
する行為のこと。私はこれを「最終的危害行為」と呼んでいる)に及ぶ、その直前スレス
レのところで抑制することがある。家庭内暴力を起こす子どもが、はげしい暴力を起こし
ながらも、どこか自制的なのは、そのためと考える。

行為障害……軽度のばあいは、生活習慣の乱れ(起床時刻や就眠時刻が守れない)、生活
態度の乱れ(服装がだらしなくなる)、義務感の喪失(やるべきことをしない)、怠惰、
怠学(無気力になり、無意味なサボり方をする)などの症状が現れる。が、それが高ずる
と、社会的機能が影響を受け、集団非行、万引き、さらには回避性障害(他人との接触を
嫌い、部屋に引きこもる)、摂食障害(拒食症、過食症など)を引き起こすようになる。
この段階で、家人は異変に気づくことが多いが、この状態を放置すると、厭世気分が高じ
て、自殺願望(「死にたい」と思う)、自殺企画(自殺方法を考える)、最終的には自殺
行為に及ぶこともある。

精神障害……うつ状態が長期化すると、感情の鈍化(喜怒哀楽の情が消える)、無反応性
(話しかけてもボーッとしている)が現れる。一見痴呆症状に似ているので、痴呆症と誤
解するケースも多い。しかし実際には、ほとんどのケースでは、本人自身が、自分の症状
を自覚していることが多い。これを「病識(自分で自分の症状を的確に把握している)」
という。ある青年は、中学時代、家庭内暴力を起こしていたときのことについて、こう言
った。「いつももう一人の自分がそこにいて、そんなバカなことをするのをやめろと叫ん
でいたような気がする。しかしいったん怒り始めると、それにブレーキをかけることがで
きなくなってしまった」と。

ほかにもう一つ、腹痛や頭痛などの身体的障害もあるが、一般的な病状と区別しにくいの
で、ここでは省略する。

●情緒不安

 よく誤解されるが、情緒が不安定な状態を、情緒不安というのではない。情緒不安とい
うのは、心の緊張感がとれない状態をいう。「気を許さない」「気を抜かない」「気をゆ
るめない」という状態を考えればよい。その緊張しているところに、不安要素が入り込む
と、その不安を解消しようと、一挙に心の緊張感が高まる。このタイプの子どもは、どこ
か神経がピリピリしていて、心を許さない。そのことは軽く抱いてみればわかる。心を許
さない分だけ、体をこわばらせたり、がんこな様子で、それを拒絶したりする。情緒が不
安定になるのは、あくまでもその結果でしかない。

 家庭内暴力を繰り返す子どもは、基本的には、この情緒が不安定な状態にあると考える
とわかりやすい。そのためたいていは(親側からみれば)ささいな親の言動で、子どもは
突発的に凶暴になり、攻撃的な暴力を繰り返す。ある女子(中二)は、母親がガラガラと
ガラス戸を閉めただけで、母親を殴ったり、蹴ったりした。母親には理由がわからなかっ
たが、その女子はあとになってこう言った。「ガラス戸をしめられると、『もっと勉強し
なさい』と、催促をされているような気がした」と。

その女子の家は大通りに面していて、ふだんから車の騒音が絶えなかった。それで子ども
のときから、母親はその女子に「勉強しなさい」と言ったあと、いつもそのガラス戸をガ
ラガラとしめていた。母親としては、その女子の部屋を静かにしてあげようと思ってそう
していたのだが、いつの間にか、それがその女子には「もっと勉強しなさいという催促」
と聞こえるようになった……らしい。

●暴力行為

 家庭内暴力の「暴力」は、その家人にとってはまさに想像を絶するものである。またそ
れだけに深刻な問題となる。その家庭内暴力に、私がはじめて接したケースに、こんなの
がある。

 浜松市に移り住むようになってしばらくのこと。私は親類の女性に頼まれて、一人の中
学三年生男子を私のアパートで、個人レッスンをすることになった。「夏休みの間だけ」
という約束だった。が、教えて始めてすぐ、その中学生は、おとなしく従順だったが、ま
さに「何を考えているかわからないタイプの子ども」ということがわかった。勉強をした
いのか、したくないのか。勉強をしなければならないと思っているのか、思っていないの
か。どの程度まで教えてほしいのか、教えてほしくないのか。それがまったくわからなか
った。心と表情が、完全に遊離していて、どんな性格なのかも、つかめなかった。

 が、その少年は、家庭の中で、激しい暴力行為を繰り返していた。その少年が暴力行為
を繰り返すようになると、母親は仕事をやめ、父親も出張の多いそれまでの仕事をやめ、
地元の電気会社に就職していた。そういう事実からだけでも、その少年の家庭内暴力がい
かに激しかったかがわかる。

その少年を紹介してくれた親類の女性はこう言った。「毎晩、動物のうめき声にも似た少
年の絶叫が、道をへだてた私の家まで聞こえてきました。その子どもが暴れ始めると、父
親も母親も、廊下をはって歩かねばならなかったそうです」と。
私は具体的な話を聞きながら、最初から最後まで、自分の耳を疑った。私が知るその少年
は、「わけのわからない子ども」ではあったが、家の中で、そのような暴力を働いている
とは、とても思えない子どもだったからである。

●心の病気

 こうした抑うつ感が、うつ病につながるということはよく知られている。一般には家庭
内暴力を起こす子どもは、うつ病であると言われる。おとなでも、うつ病患者が突発的に
はげしい暴力行為を繰り返すことは、よく知られている。が、家庭内暴力を起こす子ども
がすべて、うつ病かというと、それは言えない。症状としては重なる部分もあるというだ
けかもしれない。

たとえば学校恐怖症というのがあるが、どこまでが恐怖症で、どこからがうつ病なのか、
その線を引くのがむずかしい。少なくとも、教育の現場では、その線を引くことができな
い。同じように、家庭内暴力を起こす子どもと、うつ病との間に、線を引くことはむずか
しい。そこで比較的研究の進んでいる、うつ病についての資料を拾ってみる。(というの
も、家庭内暴力という診断名はなく、そのため、治療法もないということになっているの
で……。)

 村田豊久氏という学者らが調査したところによると、日本においては、小学二年生から
六年生までの一〇四一人の子どもについて調べたところ、約一三・三%に「うつ病とみな
してよいとの評点を、得点していた」(八九年)という。もちろんこの中には、偽陽性者
(症状としてうつ病に似た症状を訴えても、うつ病でない子ども)も含まれているので、
一三・三%の子どもがすべてがうつ病ということにはならない。

最近の調査研究では、学童全体の約一・八%、思春期の学童の約四・七%が、うつ病とい
うことになっている(長崎医大調査)。が、この数字も、注意してみなければならない。
「うつ病」と診断されるほどのうつ病でなくても、それ以前の軽度、中度のうつ病も含め
るとどうなるかという問題がある。さらに、うつ病もふくめて、こうした情緒障害には、
周期性、反復性がある。数週間単位で、症状が軽減したり、重くなったりすることもある。
そういう子どもはどうするかという問題もある。が、それはさておき、ここでいう「四・
七%」というのは、おおむね、「今という時点において、中学生の約二〇人に一人が、う
つ病である」と考えてよい数字ということになる。

 で、この数字を多いとみるか、少ないとみるかは、別として、こうした子どもたちが、
一方で不登校や引きこもり(マイナス型)を起こし、また一方で家庭内暴力を起こす(プ
ラス型)、その予備軍と考えてよい。(あるいは実際、すでに起こしている子どもも含ま
れる。)で、ここで問題は、二つに分かれる。(1)どうすれば、家庭内暴力も含めて、
どうすれば子どものうつ病を避けることができるか。(2)今、家庭内暴力を起こしてい
る子どもも含めて、どういう子どもには、どう対処したらよいか。

●どうすれば防げるか 

 「すなおな子ども」というとき、私たちは昔風に、従順で、おとなの言うことをハイハ
イと聞く子どもを想像する。しかしこれは、誤解。

教育の世界で、「すなおな子ども」というときには、二つの意味がある。一つは、心の状
態と表情が一致していること。悲しいときには悲しそうな顔をする。うれしいときにはう
れしそうな顔をする、など。が、それが一致しなくなると、いわゆる心と表情の「遊離」
が始まる。不愉快に思っているはずなのに、ニコニコと笑ったりするなど。

 もう一つは、「心のゆがみ」がないこと。いじける、ひがむ、つっぱる、ひねくれるな
どの心のゆがみがない子どもを、すなおな子どもという。心がいつもオープンになってい
て、やさしくしてあげたり、親切にしてあげると、それがそのままスーッと子どもの心の
中にしみこんできくのがわかる。が、心がゆがんでくると、どこかでそのやさしさや親切
がねじまげられてしまう。私「このお菓子、食べる?」、子、「どうせ宿題をさせたいの
でしょう」と。

 ついでに、子どもの心は風船玉のようなもの。「家庭」で圧力を加えると、「園や学校」
で荒れる。反対に「園や学校」で圧力を加えると、「家庭」で荒れる。友人との「外の世
界」で荒れることもある。問題は、荒れることではなく、こうした子どもたちが、いわゆ
る仮面をかぶり、二重人格性をもつことだ。親の前では、恐ろしくよい子ぶりながら、そ
の裏で、陰湿な弟や妹いじめを繰り返す、など。家庭内暴力を起こす子どもなどは、外の
世界では、信じられないほど、よい子を演ずることが多い。

●こわい遊離と仮面

 一般論として、情意(心)と表情が遊離し始めると、心に膜がかかったかのようになる。
教える側から見ると、「何を考えているかわからない子ども」、親から見ると、「ぐずな
子ども」ということになる。あるいは「静かで、おとなしい子ども」という評価をくだす
こともある。ともかくも心と表情が、ミスマッチ(遊離)するようになる。ブランコを横
取りされても、笑みを浮かべながら渡す。失敗して皆に笑われているようなときでも、表
情を変えず平然としている、など。「ふつうの子どもならこういうとき、こうするだろう
な」という自然さが消える。が、問題はそれで終わらない。

 このタイプの子どもは、表情のおだやかさとは別に、その裏で、虚構の世界を作ること
が多い。作るだけならまだしも、その世界に住んでしまう。ゲームのキャラクターにハマ
りこんでしまい、現実と空想の区別がつかなくなってしまう、など。ある中学生は、毎晩、
ゲームで覚えた呪文を、空に向かって唱えていた。「超能力をください」と。あるいはも
のの考え方が極端化し、先鋭化することもある。異常な嫉妬心や自尊心をもつことも多い。

 原因の多くは、家庭環境にある。威圧的な過干渉、権威主義的な子育て、親のはげしい
情緒不安、虐待など。異常な教育的過関心も原因になることがある。子どもの側からみて、
息を抜けない環境が、子どもの心をゆがめる。子どもは、先ほども書いたように、一見「よ
い子」になるが、それはあくまでも仮面。この仮面にだまされてはいけない。こうした仮
面は、家庭内暴力を繰り返す子どもに、共通して見られる。

 子どもの心を遊離させないためにも、子育ては、『まじめ八割、いいかげん二割』と覚
えておく。これは車のハンドルの遊びのようなもの。子どもはこの「いいかげんな部分」
で、羽をのばし、自分を伸ばす。が、その「いいかげん」を許さない人がいる。許さない
というより、妥協しない。外から帰ってきたら、必ず手洗いさせるとか、うがいさせるな
ど。このタイプの親は、何ごとにつけ完ぺきさを求め、それを子どもに強要する。そして
それが子どもの心をゆがめる。が、悲劇はまだ続く。このタイプの親に限って、その自覚
がない。ないばかりか、自分は理想的な親だと思い込んでしまう。中には父母会の席など
で、堂々とそれを誇示する人もいる。

 なお子どもの二重人格性を知るのは、それほど難しいことではない。園や学校の参観日
に行ってみて、家庭における子どもと、園や学校での子どもの「違い」を見ればわかる。
もしあなたの子どもが、家庭でも園や学校でも、同じようであれば、問題はない。しかし
園や学校では、別人のようであれば、ここに書いた子どもを疑ってみる。そしてもしそう
なら、心の開放を、何よりも大切にする。一人静かにぼんやりとできる時間を大切にする。

●前兆症状に注意
 子どもの心の変化を、的確にとらえることによって、子どもの心の病気を未然に防ぐこ
とができる。チェック項目を考えてみた。

○ ときどきもの思いに沈み、ふきげんな表情を見せる(抑うつ感)
○ 意味もなく悲しんだり、感傷的になって悲嘆する(悲哀感)
○ 「さみしい」「ひとりぼっち」という言葉を、ときどきもらす(孤独感)
○ 体の調子が悪いとか、勉強が思い通りに進まないとこぼす(不調感)
○ 「どうせ自分はダメ」とか、「未来は暗い」などと考えているよう(悲観)
○ 何をするにも、自信がなく、自らダメ人間であると言う(劣等感)
○ 好きな番組やゲームのはずなのに、突然ポカンとそれをやめてしまう(感情の喪
失)
○ ちょっとしたことで、カッと激怒したり、人が変わったようになる(緊張感)
○ イライラしたり、あせったりして、かえってものごとが手につかないよう(焦燥
感)
○ ときどき苦しそうな表情をし、ため息をもらうことが多くなった(苦悶)
○ 同じことを堂々巡りに考え、いつまでもクヨクヨしている(思考の渋滞)
○ 考えることをやめてしまい、何か話しかけても、ただボーッとしている(思考の
停止)
○ 何かの行動をすることができず、決断することができない(優柔不断)
○ ワークなど、問題集を見ているはずなのに、内容が理解できない(集中困難)
○ 「自分はダメだ」「悪い人間だ」と、自分を責める言動がこのところ目立つ(自
責感)
○ 「生きていてもムダ」「どうせ死ぬ」と、「死」という言葉が多くなる(希死願
望)
○ 行動力がなくなり、行動半径も小さくなる。友人も極端に少なくなる(活動力低
下)
○ 動きが鈍くなり、とっさの行動ができなくなる。動作がノロノロする(緩慢行動)
○ ブツブツと独り言をいうようになる。意味のないことを口にする(内閉性)
○ 行動半径が小さくなり、行動パターンも限られてくる(寡動)
○ 独りでいることを好み、家族の輪の中に入ろうとしない(孤立化)
○ 何をしても、時間ばかりかかり、前に進まない(作業能率の低下)
○ 具体的に死ぬ方法を考え出したり、死後の世界を頭の中で描くようになる(自殺
企画)

こうした前兆症状を繰り返しながら、子どもの心は、本来あるべき状態から、ゆがんだ状
態へと進んでいく。

●家庭内暴力の特徴
 家庭内暴力といわれる暴力には、ほかには見られない特徴がいくつかある。

(1) 区域限定的

 家庭内暴力は、その名称のとおり、「家庭内」のみにおいて、なされる。これは子ども
の側からみて、自己の支配下のみで、かつ自己の抑制下でなされることを意味する。その
暴力が、家庭を離れて、学校や社会、友人の世界で起こることはない。

(2) 最終的危害行為にまでは及ばない

 子どもは、自分ができる、またできるギリギリのところまでの暴力を繰り返すが、その
一線を越えることはない。(たまに悲惨な事件がマスコミをにぎわすが、ああいったケー
スはむしろ例外で、ほとんどのばあい、子ども自身が、暴力をどこかで抑制する。)どこ
か子ども自身が、「ここまでは許される」というような冷静な判断をもちつつ、暴力を繰
り返す。これを私は「精神の二重構造性」と呼んでいる。言いかえると、これを反対にう
まく利用して、子どもの心に訴えるという方法もある。私もよく、そういう家庭の中に乗
り込んでいって、子どもと対峙したことがある。そういうとき、もう一方の冷静な子ども
がいることを想定して、つまりその子どもに話しかけるようにして、諭すという方法をと
る。「これは暴れる君ではない。もう一人の君だ。わかるかな。本当の君だよ。本当の君
は、やさしくて、もう一人の君を嫌っているはずだ。そうだろ?」と。大切なことは、決
して子どもを袋小路に追い込まないこと。励ましたり、脅したりするのは、タブー中のタ
ブー。

(3) 計算された恐怖

 子どもが暴力を振るう目的は、親や兄弟に、恐怖を与えること。その恐怖を与えること
によって、相手を自分の支配下に置こうとする。方法としては、暴力団の構成員が、恐怖
心を相手に与えて、自分の優位性を誇示しているのに似ている。そしてその恐怖は、計算
されたもの。決して突発的、偶発的なものではない。繰り返すが、ここが、子どもがほか
で見せる暴力とは違うところ。妄想性を帯びることもあるが、たとえば分裂病患者がもつ
ような、非連続的な妄想や、了解不能な妄想をもつことはない。このタイプの子どもは、
どうすれば相手が自分の暴力に恐怖を覚え、自分に屈服するかを計算しながら、行動する。
そういう意味では、「依存」と「甘え」が混在した、アンビバレンツ(両価的)な状態と
いうことになる。

●家庭内暴力には、どう対処するか
 家庭内暴力に対処するには、いくつかの鉄則がある。

(1) できるだけ初期の段階で、それに気づく

家庭内暴力が家庭内暴力になるのは、初期の段階での不手際、家庭教育の失敗によるとこ
ろが大きい。子どもが荒れ始めると、親はこの段階で、説教、威圧、暴言、暴力を使って
子どもを抑えようとする。体力的にもまだ親のほうが優勢で、一時はそれで収まる様子を
見せることが多い。しかしこうした無理や強制は、それがたとえ一時的なものであっても、
子どもの心には取り返しがつかないほどのキズを残す。このキズが、その後、家庭内暴力
を、さらに凶暴なものにする。

(2)「直そう」とか、「治そう」と思わないこと

一度、悪循環に入ると、「以前のほうが、まだ症状が軽かった」ということを繰り返しな
がら、あとはドロ沼の悪循環におちいる。この悪循環の「輪」に入ると、あとは何をして
も裏目、裏目と出る。子どもの心の問題というのは、そういうもので、たとえばこれは非
行の例だが、「門限を過ぎても帰ってきた、そこで親は強く叱る」→「外泊する。そこで
親は強く叱る」→「家出を繰り返す、そこで親は強く叱る」→「年上の男性(女性)と、
同棲生活を始める、そこで親は強く叱る」→「性病になったり、妊娠したりする……」と
いう段階を経て、状態は、どんどんと悪化する。

そこで大切なことは、一度、こうした空回り(悪循環と裏目)を感じたら、「今の状態を
それ以上悪くしないこと」だけを考えて、親は子どもの指導から思い切って手を引く。「直
そう」とか、「治そう」と思ってはいけない。つまり子どもの側からみて、子どもを束縛
していたものから子どもを解き放つ。(親にはその自覚がないことが多い。)その時期は
早ければ早いほどよい。また子どもの症状は、数か月、半年、あるいは一年単位で観察す
る。一時的な症状の悪化、改善に、一喜一憂しないのがコツ。

(2) 愛情の糸は切らない

 家庭内暴力は、あくまでも「心の病気」。そういう視点で対処する。脳そのものが、イ
ンフルエンザにかかったと思うこと。熱病で、苦しんでいる子どもに、勉強などさせない。
ただ脳がインフルエンザにかかっても、外からその症状が見えない。だから親としては、
子どもの病状がつかみにくいが、しかし病気は病気。そういう視点で、いつも子どもをみ
る。無理をしてはいけない。無理を求めてもいけない。この時点で重要なことは、「どん
なことがあっても、私はあなたを捨てません」「あなたを守ります」という親の愛情を守
り抜くこと。ここに書いたように、これはインフルエンザのようなもの。本当のインフル
エンザのように、数日から一週間で治るということはないが、しかし必ず、いつか治る。
(治らなかった例はない。症状がこじれて長期に渡った例や、副次的にいろいろな症状を
併発した例はある。)必ず治るから、そのときに視点を置いて、「今」の状態をみる。こ
の愛情さえしっかりしていれば、子どもの立ち直りも早いし、予後もよい。あとで笑い話
になるケースすらある。

(3) 心の緊張感をほぐす

 一般の情緒不安と同じに考え、心の緊張感をほぐすことに全力をおく。そのとき、何が、
「核」になっているかを、知ることが大切。多くは、将来への不安や心配が核になってい
ることが多い。自分自身がもつ学歴信仰や、「学校へは行かねばならないもの」という義
務感が、子ども自らを追い込むこともある。よくあるケースとしては、子どもの心を軽減
しようとして、「学校へは行かなくてもいい」と言ったりすると、かえって暴力がはげし
くなることがある。子ども自身の葛藤に対しては、何ら解決にはならないからである。

 だいたい親自身も、それまで学歴信仰を強く信奉するケースが多い。子どもはそれを見
習っているだけなのだが、親にはその自覚がない。意識もない。子どもが家庭内暴力を起
こした段階でも、「まともに学校へ行ってほしい」「高校くらいは出てほしい」と願う親
は多い。が、それも限界を超えると、そのときはじめて親は、「学校なんかどうでもいい」
と思うようになるが、子どもはそれほど器用に自分の考えを変えることができない。そこ
で葛藤することになる。「どんどん自分がダメになる」という恐怖の中で、情緒は一挙に
不安定になる。

 ただ症状が軽いばあいは、子どもが学校へ行きやすい環境を用意してあげることで、暴
力行為が軽減することがある。A君は、夏休みの間、断続的に暴力行為を繰り返していた
が、母親が一緒になって宿題を片づけてやったところ、その暴力行為は停止した。このケ
ースでも、子ども自身が、自分を追い込んでいたことがわかる。

(4) 食生活の改善

 家庭内暴力とはやや、内容を異にするが、「キレる子ども」というのがいる。そのキレ
る子どもについて、最近にわかにクローズアップされてきたのが、「セロトニン悪玉説」
である。つまり脳間伝達物質であるセロトニンが異常に分泌され、それが毒性をもって、
脳の抑制命令を狂わすという(生化学者、ミラー博士ほか)。アメリカでは、「過剰行動
児」として、もう二〇年以上も前から指摘されていることだが、もう少し具体的に言うと
こうだ。たとえば白砂糖を多く含む甘い食品を、一時的に過剰に摂取すると、インスリン
が多量に分泌され、それがセロトニンの過剰分泌を促す。そしてそれがキレる原因となる
という(岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授ほか)。

 このタイプの子どもは、独特の動き方をするのがわかっている。ちょうどカミソリの刃
でスパスパとものを切るように、動きが鋭くなる。なめらかな動作が消える。そしていっ
たん怒りだすと、カッとなり、見境なく暴れたり、ものを投げつけたりする。ギャーッと
金切り声を出すことも珍しくない。幼児でいうと、突発的にキーキー声を出して、泣いた
り、暴れたりする。興奮したとき、体を小刻みに震わせることもある。

 そこでもしこういう症状が見られたら、まず食生活を改善してみる。甘い食品を控え、
カルシウム分やマグネシウム分の多い食生活に心がける。リン酸食品も控える。リン酸は
日もちをよくしたり、鮮度を保つために多くの食品に使われている。リン酸をとると、せ
っかく摂取したカルシウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出してしまう。一方、昔
からイギリスでは、『カルシウムは紳士をつくる』という。日本でも戦前までは、カルシ
ウムは精神安定剤として使われていた。それはともかくも、子どもから静かな落ち着きが
消えたら、まずこのカルシウム不足を疑ってみる。ふつう子どものばあい、カルシウムが
不足してくると、筋肉の緊張感が持続できず、座っていても体をクニャクニャとくねらせ
たり、ダラダラさせたりする。

 これはここにも書いたように、キレる子どもへの対処法のひとつだが、家庭内暴力を繰
り返す子どもにも有効である。

 最後に家庭内暴力を起こす子どもは、一方で親の溺愛、あるいは育児拒否などにより、
情緒的未熟性が、その背景にあるとみる。親は突発的に変化したと言うが、本来子どもと
いうのは、その年齢ごとに、ちょうど昆虫がカラを脱ぐように、段階的に成長する。その
段階的な成長が、変質的な環境により、阻害されたためと考えられる。よくあるケースは、
幼児期から少年少女期にかけて、「いい子」で過ごしてしまうケース。こうした子どもが、
それまで脱げなかったカラを一挙に脱ごうとする。それが家庭内暴力の大きな要因となる。
そういう意味では、家庭内暴力というのは、もちろん心理的な分野からも考えられなけれ
ばならないが、同時に、家庭教育の失敗、あるいは家庭教育のひずみの集大成のようなも
のとも考えられる。子どもだけを一方的に問題にしても意味はないし、また何ら解決策に
はならない。

(以上、未完成ですが、また別の機会に補足します。)
(02−9−1)








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