Q&A10
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【1】

●義父との問題

●神奈川県のMさん(五五歳・女性)からの相談

 このところ、老人問題について書くことが多くなった。それについて、神奈川県Z市に住んでい
る、Mさんから、こんなメールをもらった。(文章は、私の方で、書き改めた。)

++++++++++++++++

 相談ではありません。話だけを聞いてくだされば、うれしいです。

 私の夫は、一人息子です。義父と義母は、現在、埼玉県のT町に住んでいます。義父が、七
八歳、義母が、七九歳です。

 その義父のことですが、満五五歳で定年退職して、今年で、ほぼ二五年になります。しかし、
ここ一〇年、家の中で、庭仕事をするだけで、ほとんど人と会いません。義母の話では、人と
会って話をするのは、年に数回、あるかないかということです。

 昼間は、雨戸をあけるのですが、その時刻になると、まだ明るくても、雨戸をすべてしめ、部
屋の中に引きこもってしまいます。

 毎日の生活は、電車の時刻表のように決まっていて、かつ正確です。午前五時三〇分、起
床。午前七時、朝食。午後一二時、昼食……と決まっています。新聞を読む時刻、時間まで、
しっかりと、決まっています。義母が、そうした時刻に少しでも遅れると、義父は、一日中、機嫌
が悪いのです。

 最近、近所の人とのトラブルが、あったらしく、ますます神経質になったようです。一日中、庭
と部屋を往復しているだけの生活ですが、庭の小さなスコップでも、ほんの少し義母が動かす
ことさえ、許しません。

 トラブルというのは、近所の人が、義父の家の前に、自動車を止めたのです。それを義父
が、写真でとって、警察へ送ったのですね。「家の前に車を止められて、迷惑している」というよ
うな手紙を添えたらしいです。

 近所の人が、車を止めたのは、そのとき、一回だけだったそうです。それでその近所の人
が、義父のところへ、怒鳴り込んできたというのです。

 庭は、一五〇坪ほどあります。もともとは畑だったのですが、高いブロック塀で囲み、今は、
庭にしています。

 夫ですら、「気が疲れるから、帰りたくない」と言います。私も、いやです。この数年、盆や暮
れに帰るのは、年に一度あるかないかというところです。帰っても、日帰りですませています。
孫たちが、庭で遊ぶのを、義父が、嫌うからです。

しかし義父も年ですし、義母も、太りすぎで、このところ、めっきり弱くなってきました。これから
のことを考えると、ゆううつでなりません。

+++++++++++++++++

 心の病気は、何も、若い人だけのものではない。老人にも、ある。しかしこうしたメールを読ん
でも、その心の病気がどんなものであるか、私には、具体的な姿が、見えてこない。

 これは私の経験不足によるものか。それとも、老人のそれは、それだけ、症状が、こじれて
いるためか。私もその老人に近いから、懸命に、自分に当てはめて考えてみようとするが、や
はり、よくわからない。

 子育てで、いろいろ苦労したはずの老人でありながら、今度は反対に、まったく同じパターン
で、子どもたちに、苦労をかけている。こうした老人たちは、いったい、子育てで、何を学んだと
いうのか。

 ただ言えることは、私たちも、みな、等しくいつかは、老人になる。子育てを夢中でしている間
は、それに気づかない。しかしその子育てが終わり、ほっと一息ついたようなとき、「老後」が、
どっとやってくる。

 その老後を、いかに、美しく生きるか。今は、子育ての真っ最中で、うしろを見る余裕はない
かもしれないが、しかし心のどこかで老後の準備をしていくことも、大切なことだと思う。

 いつかだれかが言ったが、「いかに美しく老いるか」は、人生の一つのテーマと言ってもよい。
(031117)

【教訓】

●老後になったら、人と会おう

いろいろな人と会うだけでも、「角落し」ができる。角落しというのは、つまりは、人間が丸くなる
ということ。引きこもって、がんこになっていはいけない。

●プライドを捨てよう

退職前の地位や肩書きにぶらさがればぶらさがるほど、また、その亡霊に毒されれば毒され
るほど、角落しができなくなる。本人はそれでよいとしても、まわりの人にとっては、迷惑。その
ため、みなから、敬遠される。

退職したら、ただの人。そういう前提で、一度、裸になって、自分を見つめてみよう。とくに権威
主義的な生き方をしてきた人ほど、要注意。








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【2】

●学習障害児

+++++++++++++

G県のKさん(母親)から、
学習障害児についての相談が
あった。

相談内容は、転載不許可という
ことなので、ここでは回答だけを
紹介する。

+++++++++++++

【はやし浩司よりKさんへ】

●学習障害児

 とくに知的能力には問題がないと思われるのに、ある特殊な分野のみ、(あるいは広く全体と
して)、「できない」という段階を超えて、「勉強ができない」子どもを、「学習障害児(LD)」と呼ん
でいる。

 学習障害児は、大きく、つぎの八つの分野にわけて考える。

(1)読みができない。……たとえば、本を読ませてみると、独特のたどたどしさを、示す。「秋に
なりとてもすがすがしくなりました」という文章を、「秋・にな・りとて・もすが・すがし・くなりま・し
た」と読む。だから本人も、意味がつかめないばかりか、聞いている人も、何の話かわからなく
なってしまう。

一つずつの言葉が、意味のある言葉として、把握できないための現象と考えてよい。

(2)書きができない。……何度書いても、覚えない、すぐ忘れるを、繰りかえす。英語の単語を
覚えさせても、一時間にやっと、数個(中一レベル)。しかもその直後には、すぐ忘れてしまう。

記憶そのものがされない、記銘障害。保持することができない、保持障害。あるいは記憶とし
て取り出すことができない、想起障害に分けて考える。

(3)計算ができない。……数に独特の、鈍感さを示す。「12は、10と2に分けられる」(小一レ
ベル)と教えても、「12」の概念そのものが理解できない。「10と2で、12」ということも、理解で
きない。

よく観察すると、「ハチ」と言ったとき、「ハチ」という言葉のみにこだわり、「8個」もしくは、「○○
○○○○○○」というふうに、具体的に考えていないのがわかる。

足し算はともかくも、引き算が、できない。「5から3をとる」「引く」という概念そのものが、理解
できない。「4−2」の問題も、4に一度2を足し、そこから2を引いたりする。そのため、答が、4
になったりする。子どもによって、独特の考え方をする。どんな考え方をしているかは、子ども
によって、ちがう。

(4)会話ができない。……言葉のつながりが混乱していて、会話をしていても、何を話している
か、わからなくなる。独特の話し方をする。

たとえば「私が冷蔵庫をあけて、牛乳を飲もうとしたら、兄がやってきて、それを横取りした」と
いうことを話すときも、「私、冷蔵庫を開けると、やってきて、牛乳が、飲んだ、お兄ちゃん」と。

ビジュアルな情景を頭に描きながら、会話をすることができない。そのため、直前の言葉に、
会話そのものが、支配されてしまう。そのため、相手の話を聞くこともなく、一方的に話す傾向
が強くなる。

(5)聞くことができない。……単語の意味はわかっても、「……なので」「……だから」「……のと
き」「……だけれども」というふうに、文をつなげると、意味がわからなくなる。

「昨日は雨だったから、みんなはカサをもってきました」と話しても、「雨」と、「カサ」を直接、結
びつけてしまう。だからたとえば、「雨のカサがどうしたの?」と聞き返したりする。「どうしてカサ
をもってきたの?」と聞いても、「きれいだったから」と答えたりする。

(6)話すことができない。……的確な言葉を、自分で選ぶことができない。そのため、どうして
も、使う言葉の数が少なくなる。「イヤ」「ダメ」「ウウン」というあいまいな言い方で、その場を、
ごまかすことが多い。

たとえば「友だちに、マンガの本を取られた」と言うべきときでも、「マンガ、ぼくのマンが、いや」
というような言い方をする。

(7)論理的に考えることができない。「君は、セキがひどいから、今日は、保健室でマスクをも
らってきて、それをつけてください」と話しても、それを理解することができない。

「保健室へ行くのがイヤ」「マスクをつけるのがイヤ」と、へんなところでがんばってしまう。

そこで、「君が悪いからではない。セキがひどいと、みんなに、うつるかもしれない。みんなが迷
惑をするからだよ」と何度も話すのだが、どこかヌカにクギのような反応しか示さない。

(8)推論することができない。……「お皿が三枚あって、ミカンが、二個ずつ乗っている。そこか
らミカンを、四個取って、食べた。今、残っているミカンはいくつかな」(小三レベル)という問題
を出したとする。

そうでない子どもは、全体の個数(六個)を求め、そこから四を引いて、「答は二個」と言う。

しかしこのタイプの子どもは、数字そのものが、頭の中で乱舞してしまう。答を求めると、「3」
「2」「4」の数字を、勝手に足したり、引いたりして、答を出す。

 原因は、脳の中で、@情報が整理されないケース(ここでいう(1)や(4)など)、A記憶能力
(記銘、保持、想起)に問題があるケース(ここでいう(2)など)、B脳の間の、情報の受け渡し
がうまくできないケース(ここでいう(6)や(7)など)に分けて考える。

 脳の中枢神経系および、脳間伝達物質のどこかに機能的な障害があるのが、原因と思われ
る。しかしここにも書いたように、症状が複雑、かつ千差万別で、また、ある特定分野に、強く
障害が現れることもあって、その把握がむずかしい。

 一般の遅進児とちがい、どこか独特の、ヌボーッとした表情を示すことはある。しかしそういう
表情をしているから、学習障害児ということにはならない。また言動が活発な子どもの中にも、
ここでいう学習障害児と呼んでよい子どもも、よく見られる。

【W君のケース】

 私は、W君を、小学一年の終わりから、中学二年の終わりまで、最終的には、週三回、家庭
教師として、教えた。

 W君の第一印象は、集中力が、極端に不足していたこと。学習に集中できるのは、ほんの数
分。ものごとにあきっぽく、それでいて、退屈する様子でもない。

 母親は、「文字を覚えない」「言葉の発達が遅れている」などと言ったが、とくに記憶が苦手だ
った。

 ……ここまで書いて、以前、そのW君について書いた原稿のことを思い出した。直接、学習
障害児について書いたものではないが、それをここに添付する。

++++++++++++++++++

●ただより高いものはない

 昔から『ただより高いものはない』という。教育の世界ほどそうで、とくに受験勉強のような「き
わもの」は、割り切ってプロに任せたほうがよい。

実のところ、私も若いころ、受験塾の講師もしたことがあるが、身内や親戚、あるいは親しい知
人の子どもについては、引き受けなかった。理由はいくつかある。

 まず受験勉強ほど、その子どものプライバシーに切り込むものはない。学校での成績を知る
ということは、そういうことをいう。つぎに成績があがればよいが、そうでなければ、たいていは
人間関係そのものまでおかしくなる。ばあいによっては、うらまれる。

さらに身内や親類となると、そこに「甘え」が生じ、この甘えが、金銭関係をルーズにする。私も
ある時期、遠い親戚の子ども(小二のときから中二まで)預かったことがあるが、最後は月謝と
いっても、ほとんどただに近いものだった。しかし最初こそ感謝されても、半年、一年とたつと、
それが当たり前になってしまう。が、本当の問題は、これだけではない。

 受験指導というが、子どもの側からみると、「しごき」以外の何ものでもない。子どもの側で考
えてみれば、それがわかる。勉強がしたくて勉強する子どもなど、いない。偏差値はどうだ、順
位はどうだ、希望校はどこだとやっているうちに、子どもの心はどんどんと離れていく。

私もある時期、ほんの数年前までだが、受験期の子どもについては、無料で(本当に無料
で!)、七月から一一月ごろまで、ほとんど毎晩部屋を開放して受験指導をしたことがある。夜
七時から一一時ごろまで、である。

教えたといっても、ときどき顔を出し、勉強の進みぐあいをみたり、わからないところを教えた
程度だが、しかし率直に言えば、親に感謝されたことはあっても、子どもに感謝されたことは一
度もなかった。

受験勉強というのは、もともとそういうもの。「教育」という名前を使う人もいるが、受験指導は
指導であって、教育ではない。もともと豊かな人間関係が育つ土壌など、どこにもない。

 そこで本論。中に子どもの受験勉強を、親類や知人に頼む人がいる。そのほうが安いだろう
とか、ていねいにみてもらえるだろうとか考えて、そうするが、実際には、冒頭に書いたように、
ただより高いものはない。相手がプロなら、成績がさがれば、「クビ!」と言うこともできるが、
親類や知人ではそういうわけにもいかない。ズルズルしている間に、あっという間に受験期は
過ぎてしまう。そんなわけで教訓。

受験勉強は、多少お金を出しても、その道のプロに任せたほうがよい。結局はそのほうが安全
だし、長い目で見て、安あがりになる。

++++++++++++++++

 W君の指導を断ったのは、親の期待にそえないと判断したため。少し成績が伸びれば、「も
っと……」と言う。しかしさがれば、「どうして……」「もっと時間をふやしてほしい」と言う。それ
で、私のほうが疲れてしまった。この静岡県では、中二から中三が、受験競争のピークを迎え
る。親たちが、もっとも神経質になるのは、この時期である。

 そのW君は、時間ツブシが、うまかった。つぎにエッセーは、その「時間ツブシ」について、書
いたもの。直接W君についてではない。時間ツブシというのが、どういうものか、わかってもらえ
ると思う。

++++++++++++++++

●三〇分で五分

 子どもの勉強は、三〇分やって五分と思うこと。つまり三〇分の間で、五分間だけ勉強らしき
ことをすればよいとみる。家庭でする勉強というのは、しょせんそういうもの。

小学一年生や二年生が、家へ帰ってから、一時間も二時間も、黙々と漢字の書き取りをする
ほうがおかしい。もしそうなら、心の病気を疑ってみたほうがよい。

 無理や強制が日常化すると、子どもは勉強から逃げるようになる。これは当然のことだが、さ
らにその症状が進むと、@フリ勉、A時間つぶしがうまくなる。フリ勉というのは、いかにも勉強
していますという様子だけを見せる勉強法をいう。が、その実、何もしていない。たとえば一時
間で、計算問題を数問解くだけ、あるいは英文を数行書くだけなど。つぎに時間つぶし。つめを
ほじったり、鉛筆をかんだりして、時間ばかりムダにする。先生や親の視線を感ずると、そのと
きだけ、いそいそと本のページをめくってみせたりする。

 こうしたフリ勉や時間つぶしをするようになったら、家庭教育のあり方をかなり反省したほうが
よい。……というより、一度、こういう症状(これを「空回り」という)が身につくと、それをなおす
のは容易ではない。たいてい(親が叱る)→(ますますフリ勉、時間つぶしがうまくなる)の悪循
環の中で、子どもは勉強から遠ざかっていく。

 要は集中力の問題。ダラダラと時間をかけるよりも、短時間にパッパッと勉強を終えるほう
が、子どもの勉強としては望ましい。実際、勉強ができる子どもというのは、そういう勉強のし
方をする。私が今知っている子どもに、K君(小四男児)という子どもがいる。彼は中学一年レ
ベルの数学の問題を、自分の解き方で解いてしまう。

そのK君だが、「家ではほとんど勉強しない」(母親)とのこと。「学校の宿題も、朝、学校へ行っ
てからしているようです」とも。

 ついでながら静岡県の小学五、六年生についてみると、家での学習時間が三〇分から一時
間が四三%、一時間から一時間三〇分が三一%だそうだ(静岡県出版文化会発行「ファミリ
ス」県内一〇〇名について調査・二〇〇一年)。

 小学六年生で、だいたい一時間程度勉強すれば、ほぼ平均的とみてよい。

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 たとえば一時間、W君の横にすわっていたとする。するとW君は、「さも、考えています」という
ようなフリをして、頭をかかえて、下を向いている。そして私の視線を感じたときだけ、鉛筆を動
かすフリをする。

 しかし実際には、一時間で、英語の単語を数個しか書いていない! ……つまりこういう勉強
を繰りかえす。もちろん、時間の割には、効果はない。まったく、ない。

 こうした学習障害児で問題なのは、親にそれだけの自覚と、理解がないこと。「やればできる
はず」と、子どもを追いたてる。症状を、こじらせるだけ、こじらせてしまう。つまり「障害」がある
上に、子どもを、勉強嫌いにしてしまう。

 W君にしても、最初私のところへやってきたとき、バッグいっぱいのワークブックをもってき
た。しかも、難解なものばかり! こうした無理が、子どもの症状をこじらせてしまう。

 ……と、ショッキングなことばかり書いたが、こうした「障害」(この言葉は、本当に不愉快だが
……)をもった子どもこそ、暖かいケアが必要なことは言うまでもない。たしかに勉強は苦手だ
が、だからといって、それは子どもの責任ではない。子どもを伸ばすコツは、「苦手分野を克服
することではなく、得意分野をさらに伸ばす」である。得意な分野が、さらに伸びれば、苦手な
分野も、つられて伸びるということは、よくある。つまりどんな子どもにも、それぞれ、よい面が
ある。そのよい面をみつけ、それを伸ばす。

 もう一人、印象に残っている子どもに、T君がいた。そのT君について書いたのが、つぎの原
稿である。

++++++++++++++++

●どんな雲にも銀のふちどり

 イギリスの格言に、『どんな雲にも銀のふちどり』という格言がある。つまりどんな雲にも、そ
のまわりには銀色に輝くふちどりがあることを言ったもの。「どんなに苦しいときでも、必ず希望
があるから、その希望を捨ててはいけない」と。

 ひとつの固定した視点からみると、どうしても絶望的にならざるをえない子どもというのは、た
しかにいる。T君(中一男子)がそうだった。何を教えても、ザルで水をすくうように、その教えた
ことがどこかへ消えていく。

教室といっても、私の教室は一クラス五、六人の小さな教室だが、しかしT君のような生徒がい
ると、ほかの生徒がどんどんとやめていく。それくらいT君というのは学校でも有名な(?)子ど
もだった。

で、彼が中学三年生になるころには、生徒は二人だけになってしまった。いや、少しでもT君が
ふざけた態度をしたら、それを理由に私はT君を教室から追い出していたかもしれない。が、T
君はただひたすらに私のところで勉強をした。

そんなある日のこと、私はT君にこう言った。「どんな大工でも建てたところからどんどん壊され
たら、怒るぞ」と。教えても教えてもそれがムダになっていく自分のはがゆさを、K君にぶつけ
た。が、それでも、T君は涙をこぼしながら、私に従った。

 希望というのは、視点を変えると、それが希望でなくなるときがある。しかし視点を変えると、
今まで以上に明るく輝き始めるときがある。あるいは希望など何もないと思っていたところに、
実はすばらしい希望が隠されていたりすることがある。

大切なことは、そのつど視点を変えたり、あるいはもう一度、自分を振り返ってみることだ。もっ
と言えば希望は向こうからやってくるものではない。見つけるもの。

 そののち、T君は高校進学をあきらめ、調理師の専修学校に入学。今は家業であるラーメン
屋を手伝っている。で、ある日、そのラーメン屋へ行ってみると、T君がちょうど配達のラーメン
をどこかへ届けるところだった。

私が母親に、「元気そうですね」と声をかけると母親はこう言って笑った。「まじめだけがとりえ
でねえ」と。T君にとっては、その「まじめ」こそが、銀のふちどりだったということになる。

+++++++++++++++++

 こうした学習障害児で、教えていてつらいのは、あることがせっかくできるようになっても、学
校の勉強が、いつもさらに先に進んでしまうということ。たとえば掛け算がやっと理解できるよう
になったころには、学校では、もう割り算の学習が終わっているなど。

 こうしてこのタイプの子どもは、「なまけ者」「落ちこぼれ」というレッテルを張られ、人知れず
苦しみ、そしてキズつく。もちろん自信もなくすが、そのまま心をゆがめることもある。

 先のW君だが、こんな事件があった。

 W君は、中学二年生だったが、私の事情で、小五のクラスで勉強してもらったことがある。そ
のときのこと。W君が、私の目を盗んでは、小五の男の子を、いじめていた。「お前、こんなの
もできないのか。バカだなあ」と。

 ふつうの言い方ではなく、陰湿ないじめ方だった。

 で、W君は、六年間、私の教室に通ってくれたが、その間、W君にしてみても、苦痛の連続で
はなかったかと思う。よく図書館や、近くの本屋、ゲームセンターや、飲食店につれていってや
ったが、そういうことをしても、彼の心を救うことはできなかった。

 事実、W君が私の教室をやめるとき、W君は、どこか私を蹴飛ばすようにして、やめていっ
た。以後、W君はもちろんのこと、母親からも、一度も連絡はない。

 このあたりが、「私の限界」だと思う。つまり、こうした障害のある子どもを、「ワク」の中に、無
理の押しこもうとすること自体、まちがっている。たとえば勉強の遅れている子どもに、残り勉
強をさせたとする。教える側は、子どものためと思って、そうするが、子ども自身は、それを自
分のためとは、とらえない。「バツ」ととらえる。つまり残り勉強までさせて、「ワク」に閉じこめよ
うとすること自体が、まちがっている。

だからといって、あきらめろということではない。しかし一方、だからといって、今のままでよいと
は、だれも思っていない。

 日本の教育、なかんずく、受験教育の世界では、「みなが、一〇〇点でも困る。差がつかな
いから。しかしみなが、〇点だと、もっと困る。差がわからないから」が基本になっている。つま
り、人間選別が、その基本になっている。

 こういう世界では、「できる子ども」が、生まれる一方、その反面、必然的に、「できない子ど
も」が生まれる。そしてその「できない子ども」は、その底辺へと追いやられる。「学習障害児」と
いう言葉も、そういう「できない子ども」の間から、生まれてきた言葉である。

 教育のレベルの高さは、弱者にいかにやさしいかで決まる。進学率や、進学実績ではない。
日本では、進学率の高い学校ほど、「よい学校」ということになっているが、それこそが日本の
社会の不平等性の象徴ということになる。

 学習障害児であるにせよ、ないにせよ、要は、一人ひとりにあった教育が可能になるよう、私
たちは、前に向かって努力しなければならない。今、その第一歩が、始まったばかりである。

 こうして、「障害児」というレッテルを張り、その分析をすることは、私はあまり好きではない
が、ここに書いたことが、その第一歩のヒントになれば、うれしい。
(031117)





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【3】

●断絶する親子

 埼玉県U市にお住まいの、SHさん(女性・主婦)の方から、義父母との問題について、メール
をいただきました。それについて、考えてみたいと思います。ただ、そのあと、SHさんからのメ
ールの掲載について、承諾が得られませんでしたので、こちらでメールの内容を、要約させて
いただきます。

+++++++++++++++++++

【SHより、はやし浩司へ】

 私の夫と、両親(私にとっては、義父母)とは、断絶しています。きっかけは、夫が、職を変え
たことについて、その職を認めてくれなかったこと。「そんな職は、中卒の仕事だ」と、軽蔑した
ことです。その精神性の低さには、驚くばかりです。

 また義母が、何かにつけて、私たち夫婦に干渉してきたこともあります。「こうあるべき」という
親子像をつくり、それを私たちに押しつけてきました。

 それで夫が、ある日、とうとう、義父母に、絶縁を申し出ました。

 夫には、姉(私の義姉になります)がいますが、義父母と義姉は、ともに子離れできない、親
離れできない関係にあります。ベタベタの関係です。そのため義姉は、私から見ると、まさにド
ラ娘という感じがします。

 その義姉も、あれこれ、私たちに干渉してきます。間に一人、叔母がいるのですが、その叔
母も、あれこれ干渉してきます。

 義父母は、モノや権力に執着する人です。私が生まれ育った家庭とは、あまりにもちがうた
め、とまどっています。その上、義父は、かんしゃく発作のある人で、自分の気に入らないこと
があると、大声を出したり、暴れたりします。

 このまま断絶していていいとは思いませんが、こういうときは、どうしたらいいのか、どうかアド
バイスをお願いします。
(埼玉県U市、SHより)

++++++++++++++++++

【SHさんへ】

 こうしたケースでは、親を説得して……とか、親に理解してもらおう……と考えても、意味はあ
りません。ムダです。親自身が、何らかの方法(たとえば、私のマガジンを読むとか……)で、
自分で気がつくしかありません。

 私の身内のケースも含めて、親が変わったという事例は、ありません。その親自身の人生観
がからんでいるため、ことはやっかいです。ヘタに責めると、親自身が、役割混乱を起こしてし
まいます。自己否定から、自己嫌悪に陥ることもあります。つまりは、混乱状態になるというこ
とです。狂乱状態になることも、珍しくありません。

 今、思い出した事例に、こんな話があります。

 その家では、父親と息子の、喧嘩(けんか)が絶えませんでした。そこで息子が、近くの占い
師にみてもらったところ、「あなたの家には、神様と、仏様がいる。どちらか一方にしなさい」と。

 そのあたりでは、どこの家でも、神様と仏様の両方を祭っています。で、その息子は、その占
い師の言葉を真に受けて、家に帰って、「神様を処分する」と言い出したのです。

 さあ、たいへん! ふつうでも一触即発の状態なのに、息子が、神様を処分すると言いだし
たのです。この事件は、父親と息子の間で、「殺す」「殺してやる」の大騒動になってしまいまし
た。妻が止めに入ったときには、父親が、ナタを息子に振りおろす寸前だったといいます。

 あなたの義父母についていうなら、義父は、かなりの権威主義者ですね。昔ながらの男尊女
卑思想のもち主かもしれません。学歴信仰、出世主義的なものの考え方も、見え隠れします。
見栄、メンツ、世間体だけで生きている人かもしれません。この世界には、「そんな仕事」も、
「こんな仕事」もありません。「中卒の仕事」も、「大卒の仕事」もありません。

 こういうケースでは、問題がこじれると、とことんこじれます。親子であるだけに、問題は、か
えって深刻になります。(他人なら、たがいに蹴飛ばして、別れることもできますが、親子だと、
それもできません。)

 で、行くつく先は、断絶か、さもなければ、妥協して生きるかのどちらかになります。しかしそ
れとて、簡単なことではありません。そこに親類、縁者がからんでくるからです。あなたのばあ
いは、義姉や叔母など。

 こういうとき、外国の人は、おもしろい割り切り方をします。たとえば『二人の人に、いい顔は
できない』という格言があります。たとえ親でも、よい顔ばかりはしておられないという意味で
す。夫の立場で、「妻を選ぶか(結果として、親と断絶するか)、親を選ぶか(結果として、妻と
離婚するか)」となれば、まちがいなく、夫は、妻を選びます。

 断絶するにしても、そのあたりまで割り切らないと、問題は、解決しません。つまり「親戚(義
姉、叔母ほか)に、どう思われようが、知ったことではないという、割り切りです。親とは断絶し
ながら、しかし義姉や叔母とは、うまくつきあうというのは、さらに難しいことです。

 改めて「断絶」という言葉は使わないで、ここは自然の成り行きにまかせるのが、最善かと思
います。この種の問題は、ここにも書いたように、こじれると、とことん、こじれます。そのため、
それに巻きこまれた当事者たちは、とことん、神経をすり減らします。

 もちろん義父には、いくつかの問題があります。戦後の高度成長期にサラリーマンをしてきた
人は、独特の、社会観をもっています。仕事第一主義もそうです。金権主義もそうです。それか
ら「モノ」への執着心も、ほかの世代にくらべて、強いです。

 つまりは、義父の世代は、私の世代ということになりますが、この世代は、戦前というか、江
戸時代の身分制度という亡霊も、引きずっています。仕事によって、人間を判断するというか、
人間の価値を、その仕事で決めるようなところがあります。いわゆる「いい仕事」と、「悪い仕
事」を区別します。

 「いい仕事」というのは、いわゆる学歴によって裏打ちされたような仕事をいいます。「悪い仕
事」というのは、そうでない仕事をいいます。おかしいですね。本当に、おかしいですね。

 しかしこうしたおかしさを、この世代にぶつけても、意味はありません。この世代の人たちは、
そういう価値観の中で生きてきました。ですからここで、「あなたがたの価値観はおかしい」など
と言うと、この世代の人たちは、役割混乱を起こしてしまうのです。

 私は、あなたの義父と同じ世代の人間ですが、しかし若いころ、幸いにも、世界中を渡り歩い
ていました。オーストラリアにしばらく留学していたこともあります。そういう経験をとおして、そ
の「おかしさ」に、若いころ、気づくことができました。

 このことは、私の『世にも不思議な留学記』の中に書いておきました。また機会があれば、H
Pのほうから、のぞいてみてください。(近く、HTML版のマガジンのほうで、写真入りで、みなさ
んに、お届けするつもりでいます。)

 いわば私たちは、化石のような世代です。しかし同時に、あわれむべき世代でもあります。

 私たちの世代は、一方で親に仕(つか)え、一方で、子どもに仕える世代です。わかりやすく
言うと、私のばあいも、二三、四歳のころから、収入の約半分は、実家の母に届けていました。
しかし親となった今、今度は、息子たちに対しては、お金は、いまだに出ていく一方です。こうい
うのを、『両取られ』というのですね。

 あなたの義父のぼやきも、そんなところにあります。

 親の権威も失墜しました。「親だから……」という、威光も通じなくなりました。昔の子どもな
ら、「お父様」「お母様」と、ひざまづいたものですが、今は、そういう時代でもありません。

SHさんの義父母は、「親は絶対」と教えられて育ってきた世代です。で、今度は、自分が親の
立場になり、「親の私は絶対」と考えるわけです。そしてそれに応じない子どもは、「できそこな
い」となるわけです。

考えてみれば、おかしな間隔ですが、しかし感覚というか、意識は、そんなに簡単には変えら
れません。今、SHさんが感じておられる世代ギャップというのは、そのあたりから生まれてきて
います。

 この問題は、成りゆきに任せるしかありません。努力して、どうにかなる問題でもありません。
少し前までなら、SHさん夫婦のような方は、「親不孝者」(多分、あなたの義父は、そう思って
いるはずです)と、ののしられたものですが、今は、そういう時代でもありません。

 親子関係も、基本的には、一対一の人間関係です。人間と人間の関係です。こわれるとき
は、こわれます。またこわれたからといって、だれの責任とか、また失敗とかいうことでは、あり
ません。

 問題はこわれることによって、その当事者が、苦しむことです。たいていは、お節介焼きの叔
父や叔母がいて、それに介入してきます。「親子はこうあるべきだ」という通俗的な常識を押し
つけてきます。

しかしね、SHさん、世の中には、親をだます子どもはいくらでもいますが、子どもをだます親だ
って、いくらでもいるのです。子どもを虐待している親だって、います。そういう親をもった子ども
に対して、「親孝行をしろ」「親を絶対と思え」と言っても、酷というものです。

 どこかきびしいことを書きましたが、親であるということは、それくらいきびしいことなのです。
今まで、日本人は、いわゆる甘えの構造(ベタベタの依存関係)の中で、その「きびしさ」を、見
落としてきたのではないでしょうか。

 あなたの義父は、「産んでやった」「育ててやった」「大学まで出してやった」と考えているかも
しれません。しかしこれほど、身勝手な考え方もありません。勝手に産んでおいて、「産んでや
った」とは! 産んだ以上、育てるのが義務ではありませんか。それを「育ててやった」とは!

 しかし、です。今さら、こんなことを義父母に言っても、意味はありません。あなたはあなた
で、義父母たちは、そういう世代だと知った上で、納得すればよいのです。本来なら、そういう
「おかしさ」を気づかせてあげたいのですが、それは前にも書いたように、それを知れば、あな
たの義父母は、かえって大混乱するだけです。だから、ここは、そっとしておいてあげましょう。

 ただ全体として、SHさんの生きザマが、内向きなのは、少し気になります。「内向き」というの
は、本来、相手にしてはいけない、あるいは相手にもならない人たちを、相手にしすぎていると
いうことです。

 私の近所にも、そういう老人がいます。私のほうは、まったく相手にしていないのですが、何
かにつけて、私を相手にしてくる老人です。本人は、大まじめなのですね。私のほうが無視す
ればするほど、ムキになってくるという感じです。(この話は、SHさんとは、逆の話ということに
なりますか?)

 要するに、義父母など相手にしないこと。あなた自身が、「精神性が低い」という言葉を使って
おられます。そう、精神性は、低いのです。「親だから、それなりの精神性をもっているはず」と
いう幻想をもちやすいですが、人間も、四〇歳をすぎると、精神性の向上は、停止します。そし
てそれ以後は、かえって低下します。(人にもよりますが……。)

 ウソだと思うなら、新幹線に乗ってごらんなさい。周囲の迷惑も考えずに、ギャーギャーと大
声で騒いでいるのは、そのレベルのオバチャン連中(失礼!)たちです。ただひたすら、ペチャ
クチャと、意味のないことをしゃべっているオバチャン連中(失礼!)もいます。しかもその話の
内容の、低俗なことと言ったら、ありません。むしろ、幼児たちのほうが、聞き分けがよいくらい
です。ホント!

 今、義父母が気になるというのは、ひょっとしたら、あなたも、その義父母と同じレベルにいる
ことが疑われます。だから気になる……。だから対立する……。だから断絶する……。

 そこでどうでしょう。たとえば私のHPの「随筆集」でも、片っ端から読んでみて、(コマーシャル
ですみません……)、そういう人たちを乗り越えてみては……。もし私の随筆集を読んでくださ
れば、そのあと、義父母が、小さく、とるに足りない人たちだとわかってくるはずです。

 そしてあなたはあなたで、前向きに、外に向かって、何かにぶつかっていけばよいのです。あ
なたにも、したいことがあるでしょう。できることがあるでしょう。それを追求するのです。そして
結果として、精神性の低い義父母など、相手にしなくなることです。

 私も、この幼児教育の世界に入るとき、母には泣かれました。母は、半狂乱になりました。そ
のことは、別のところでまた書きますが、たとえば私が子ども時代には、「役者(今のタレント)」
たちは、最下層の人間に思われていました。「マンガ家」というだけで、バカにされたものです。
「幼稚園の講師」というのは、さらに下でした。

 そういう価値観がいかにおかしいかは、すでにSHさんが、お気づきのとおりです。

 以上のことから、私はつぎのようにアドバイスします。

(1)義父母との関係の修復は、自然体に任せなさい。まだお元気のようですから、今しばらく、
放っておいてあげればよいでしょう。あまり深く考えないで。また肩に力を入れないで。あなた
のほうは、会いたければ会いに行けばよいし、会いたくなければ、会わなくてもよいのです。

(2)今、あなたの価値観と義父母の価値観は、はげしく対立しています。で、あなたの価値観
はともかくも、相手(つまりは敵)の価値観を、まず知ることです。どんな価値観を、またどうし
て、そういう価値観をもつようになったか、をです。意外と単純な価値観ですよ。あるいは、「価
値観」と呼べるような価値観ではないかもしれません。

私なども、よく、旧世代の人たちに、叩かれます。本当に、よく叩かれます。「君は、日本人の
美徳である、孝行論を否定するのか?」「先祖を否定する教育者は失格だ!」「君には、日本
人としてのアイデンティティはないのかね?」「欧米かぶれしすぎている」とか。ごく最近も、「君
のような頭でっかちの人間が、教育論を説いてもらっては困る」と言ってきた人もいます。

(3)義父母のような世代は、相手にしないことです。本気に相手にしても、意味はありません。
私も、いろいろな原稿を書いていますが、またいろいろな人と議論しますが、相手が、その程
度の「精神性」しかもっていないとわかったときには、相手にしないようにしています。「適当に
……」という言い方は、誤解を生みやすいですが、適当に、つきあっておけばよいのです。

たとえばその人が、「親を粗末にするものは、地獄へ落ちる」などと言ったら、「そうですよ。そう
ですとも」と言ってあげればよいのです。それが、相手を乗り越えるという意味です。一度、た
めしてみてください。相手を、人格者だと思わないこと。未熟な幼児だと思えばよいのです。

わかりやすく言えば、頭のネジがサビついたような人は、相手にしないこと。一見、ズルい言い
方に聞こえるかもしれませんが、その人はその人なりに、懸命に生きてきたのです。ですから
精神性はともかくも、その「懸命さ」を感じたら、一歩退いてあげる。そういう意味で、「相手にし
ない」です。

 こうした問題をかかえて悩んでいるのは、あなただけではありません。今、本当に多いです。
こうした問題のない家庭のほうが、少ないのではないかと思います。そういう意味では、今、日
本は、大きな過渡期にきています。今、SHさんが経験しておられる混乱は、まさにその過渡期
の混乱ということになります。

 私たちが、今、すべきことは、そういう過渡期にあって、この流れを、決して逆行させてはなら
ないということです。もっとも、その過渡期も、ほぼ終盤を迎えたというか、終わりつつあります
が……。

 最後に、一言。

子どもが親のために犠牲になるのは、美徳でも何でもないのです。それともあなたは、あなた
の子どもがあなたのために犠牲になるのを、よしとしますか。それでよいですか。

 一方、同時に、親が子どものために犠牲になるのも、もう美徳でも何でもないのです、それと
もあなたは、あなたの親が、あなたに、「私の人生は、おまえのために尽くした。お前こそが、
私の生きがいだった」と言ったとき、それを喜びますか。それでよいですか。

 そういう視点で、これからの親子関係を、いっしょに考えていきましょう。ここに書いたことが、
何かの参考になれば、うれしいです。
(031118)






 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【4】

●よりよい親子関係のために……

+++++++++++++++

子どもの不登校、そして断絶。
それに苦しむ母親から相談が届いた。

相談内容は、「転載不許可」ということ
なので、回答だけを、ここに掲載する。

+++++++++++++++

●さらけ出し

 たがいの信頼関係を結ぶためには、たがいに(さらけ出し)、そしてそれを、たがいに(受け
入れ)なければならない。

 この(さらけ出し)と、(受け入れ)があってはじめて、その上に、信頼関係が、結ばれる。

 ここで「たがいに」という言葉を使ったが、それは一方的なものであってはいけない。相互的
なものでなければならない。たとえば親子の関係で、考えてみよう。

 たとえば母親が、子どもの前で、プリプリと、ガスを放出したとしよう。これはいわば、母親の
(さらけ出し)になる。

 そのときその臭いをかいだ子どもが、「ママ、臭いよ! こんなところでしないで!」と叫んで
笑えば、子どもは、それを(受け入れた)ことになる。

 一方、今度は、子どもが、ガスを放出したとする。同じように母親が、「臭いわねえ。こんなと
ころでしないで!」と子どもを叱り、子どもも、ヘラヘラと笑ってすませば、(さらけ出し)と、(受け
入れ)が、できたことになる。

 わかりやすいので、ガスを例にあげたが、私がいう(さらけ出し)と、(受け入れ)とは、こういう
ことをいう。

●さらけ出しの障害

このさらけ出しは、ここにも書いたように、相互的なものでなければならない。しかしそのさらけ
出しが、たがいにうまくできないときがある。何らかの障害があって、どこかで心にブレーキを
かけてしまうようなばあいである。私は、その障害として、二つのものを考える。

その二つというのは、物理的障害と、精神的障害である。何だか、理科の学習のようになって
きたが、ほかによい言葉が、思い浮かばなかったので、この言葉を使う。

 物理的障害というのは、たとえば親側の威圧、権威主義、あるいは育児拒否、冷淡、無視
で、子どもの側から、さらけ出しができないことをいう。母親の中に潜む、何かのわだかまり
や、こだわりが原因となることが多い。望まない結婚であったとか、望まない子どもであったと
か、など。家庭騒動や、経済問題、健康問題が、「わだかまり」になることもある。

 この物理的障害が、子どもの(さらけ出し)の障害になる。

 精神的障害というのは、母親自身の心に問題があって、子どもの側からの(さらけ出し)を、
受け入れることができない状態をいう。あるいは母親自身が、自分をさらけ出すことができない
状態をいう。

 母親自身が、不幸にして不幸な家庭に育てられた、など。そういう意味で、子育てというの
は、世代を超えて、親から子どもへと、連鎖しやすい。母親自身が、子どものころ、その親に、
何かの理由があって、自分をさらけ出すことができなかった。だから今度は、自分の子どもに
対して、自分をさらけ出すことができない……というようにである。

 この精神的障害が、子どもの(さらけ出し)の障害になる。

●母子関係の不全
 
 母子関係の不全が、子どもにいかに大きな影響を与えるか。今さら、ここで改めて言うまでも
ない。

 たとえば乳幼児期の母子関係の不全が、そのあと、子どもの心のみならず、身体の発育に
も、深刻な影響を与えるということがわかっている。たとえば乳児院や孤児院での、子どもの死
亡率が高いなどの事実は、以前から、指摘されている。

こうしたことから、J・ボウルビーらは、「母親の愛情は、子どもの精神衛生の基本である」と説
いた。

 さらにR・A・スピッツや、W・ゴールドファーブらは、知的な発育にも、悪影響があることを指
摘している。

 ここで問題になるのは、母子関係は、ここに書いたとおりだが、では、父親と子どもの、父子
関係はどうかということ。

 これについては、母子関係と、父子関係は、平等ではない、つまり同じ親子関係でも、異質
のものであるというのが、通説と考えてよい。

 母親というのは、妊娠期間の間、子どもを、自分の体内に宿す。そして子どもが生まれたあと
も、乳を与えるという意味で、子どもの「命」を育てる。つまり母子関係は、その当初から絶対
的なものであるのに対して、父子関係は、あくまでも「(精液)一しずく」の関係でしかない。

 フロイトも、そうした父子関係を指摘しながら、「血統空想」という言葉を使って、母子関係と父
子関係の基本的な違いを説明している。

 つまり自分と母親との関係を疑う子どもはいない。しかし自分と父親の関係を疑う子どもは、
多い。「私(ぼく)は、ひょっとしたら、あの父親の子どもではないぞ。私(ぼく)は、もっと血筋の
いい父親の子どもかもしれない」と。こうした空想を、フロイトは、「血統空想」と名づけた。

 わかりやすく言えば、母子関係は、その当初から、絶対的な関係で始まる。しかしそれに比
較して、父子関係は、不安定な関係で始まる。だから、ここでいう(さらけ出し)と、(受け入れ)
は、母子の間では、きわめて自然になされるのに対して、父子の間では、そうではないことが
多い。

 (だからといって、母子の関係が絶対であるとか、父子の関係は、そうでないと言っているの
ではない。現実に、約七%の母親は、自分の子どもを愛することができないと、人知れず、悩
んでいる(※1)。一方、母親以上の愛情を、子どもの感じている父親も少なくない。しかし総合
してみれば、母子の関係は、父子の関係より、濃密であり、その絆(きずな)は、太い。)

 たとえばウンチを考えてみる。「自分のクソは、いい臭い」と言ったのは、あのソクラテスだ
が、母親にとって、自分の子どものクソは、(自分のクソのクソ)ということになる。だからほとん
どの母親にとって、赤ん坊のウンチは、自分のウンチと同じということになる。

 しかし父親が、母親と同じ心境になるためには、いくつかのハードルを越えなければならな
い。その「越えなければならない」という部分が、母子関係と、父子関係の違いということにな
る。

●基本的信頼関係

信頼関係は、母子の間で、はぐくまれる。

絶対的な(さらけ出し)と、絶対的な(受け入れ)。「絶対的」というのは、「疑いをいだかない」と
いう意味である。こうした相互の関係が、その子ども(人)の、信頼関係の基本となる。

 つまり子ども(人)は、母親との間でつくりあげた信頼関係を基本に、その関係を、先生、友
人、さらには夫(妻)、子どもへと応用していくことができる。だから母親との間で構築される信
頼関係を、「基本的信頼関係」と呼ぶ。

 が、母子との間で、信頼関係を結ぶことに失敗した子どもは、その反対に、「基本的不信関
係」に陥(おちい)る。いわゆる「不安」を基底とした、生きザマになる。そしてこうして生まれた
不安を、「基底不安」という。

 こういう状態になると、その子ども(人)は、何をしても不安だという状態になる。遊んでいて
も、仕事をしていても、その不安感から逃れることができない。その不安感は、生活のあらゆる
部分に、およぶ。おとなになり、結婚してからも、消えることはない。夫婦関係はもちろんのこ
と、親子関係においても、である。

 こうして、たとえば母親について言うなら、いわゆる不安先行型、心配先行型の子育てをしや
すくなる。

●基底不安

 親が子育てをしてい不安になるのは、親の勝手だが、ほとんどのばあい、親は、その不安や
心配を、そのまま子どもにぶつけてしまう。

 しかし問題は、そのぶつけることというより、親にその自覚がないことである。ほとんどの親
は、不安であることや、心配していることを、「ふつうのこと」と思い、そして不安や心配になって
も、「それは子どものため」と思いこむ。

 が、本当の問題は、そのつぎに起こる。

 こうした母子との間で、基本的信頼関係の構築に失敗した子どももまた、不安を基底とした
生きザマをするようになるということ。

 こうして親から子どもへと、生きザマが連鎖するが、こうした連鎖を、「世代連鎖」、あるいは
「世代伝播(でんぱ)」という。

 ある中学生(女子)は、夏休み前に、夏休み後の、実力テストの心配をしていた。私は、「そん
な先のことは心配しなくていい」と言ったが、もちろんそう言ったところで、その中学生には、説
得力はない。その中学生にしてみれば、そうして心配するのは、ごく自然なことなのである。

●人間関係を結べない子ども(人)

人間関係をうまく結ぶことができない子どもは、自分の孤独を解消し、自分にとって居心地の
よい世界をつくろうとする。その結果、大きく分けて、つぎの四つのタイプに分かれる。

(1)攻撃型……威圧や暴力によって、相手を威嚇(いかく)したりして、自分にとって、居心地
のよい環境をつくろうとする。
(2)依存型……ベタベタと甘えることによって、自分にとって居心地のよい環境をつくろうとす
る。
(3)服従型……だれかに徹底的に服従することによって、自分にとって居心地のよい環境を
つくろうとする。
(4)同情型……か弱い自分を演ずることにより、みなから「どうしたの?」「だいじょうぶ?」と同
情してもらうことにより、自分にとって、居心地のよい世界をつくろうとする。

それぞれに(プラス型)と、(マイナス型)がある。たとえば攻撃型の子どもも、プラス型(他人に
対して攻撃的になる)と、マイナス型(自虐的に勉強したり、運動をしたりするなど、自分に対し
て攻撃的になる)に分けられる。

 スポーツ選手の中にも、子どものころ、自虐的な練習をして、有名になった人は多い。このタ
イプの人は、「スポーツを楽しむ」というより、メチャメチャな練習をすることで、自分にとって、
居心地のよい世界をつくろうとしたと考えられる。

●子どもの仮面

 人間関係をうまく結べない子ども(人)は、(孤立)と、(密着)を繰りかえすようになる。

 孤独だから、集団の中に入っていく。しかしその集団の中では、キズつきやすく、また相手を
キズつけるのではないかと、不安になる。自分をさらけ出すことが、できない。できないから、相
手が、自分をさらけ出してくると、それを受入れることができない。

 たとえば自分にとって、いやなことがあっても、はっきりと、「イヤ!」と言うことができない。一
方、だれかが冗談で、その子ども(人)に、「バカ!」と言ったとする。しかしそういう言葉を、冗
談と、割り切ることができない。

 そこでこのタイプの子どもは、集団の中で、仮面をかぶるようになる。いわゆる、いい子ぶる
ようになる。これを心理学では、「防衛機制」という。自分の心がキズつくのを防衛するために、
独特の心理状態になったり、独特の行動を繰りかえすことをいう。

 子ども(人)は、一度、こういう仮面をかぶるようになると、「何を考えているかわからない子ど
も」という印象を与えるようになる。さらに進行すると、心の状態と、表情が、遊離するようにな
る。うれしいはずなのに、むずかしい顔をしてみせたり、悲しいはずなのに、ニンマリと笑って
みせるなど。

 この状態になると、一人の子ども(人)の中に、二重人格性が見られるようになることもある。
さらに何か、大きなショックが加わると、人格障害に進むこともある。

●すなおな子ども論

 従順で、おとなしく、親や先生の言うことを、ハイハイと聞く子どものことを、「すなおな子ども」
とは、言わない。すなおな子どもというときには、二つの意味がある。

一つは情意(心)と表情が一致しているということ。うれしいときには、うれしそうな顔をする。い
やなときはいやな顔をする。

たとえば先生が、プリントを一枚渡したとする。そのとき、「またプリント! いやだな」と言う子
どもがいる。一見教えにくい子どもに見えるかもしれないが、このタイプの子どものほうが「裏」
がなく、実際には教えやすい。

いやなのに、ニッコリ笑って、黙って従う子どもは、その分、どこかで心をゆがめやすく、またそ
の分、心がつかみにくい。つまり教えにくい。

 もう一つの意味は、「ゆがみ」がないということ。ひがむ、いじける、ひねくれる、すねる、すさ
む、つっぱる、ふてくされる、こもる、ぐずるなど。

ゆがみというのは、その子どもであって、その子どもでない部分をいう。たとえば分離不安の子
どもがいる。親の姿が見えるときには、静かに落ちついているが、親の姿が見えなくなったとた
ん、ギャーとものすごい声をはりあげて、親のあとを追いかけたりする。その追いかけている様
子を観察すると、その子どもは子ども自身の意思というよりは、もっと別の作用によって動かさ
れているのがわかる。それがここでいう「その子どもであって、その子どもでない部分」というこ
とになる。

 仮面をかぶる子どもは、ここでいうすなおな子どもの、反対側の位置にいる子どもと考えると
わかりやすい。

●仮面をかぶる子どもたち

 たとえばここでいう服従型の子どもは、相手に取り入ることで、自分にとって、居心地のよい
世界をつくろうとする。

 先生が、「スリッパを並べてください」と声をかけると、静かにそれに従ったりする。あるいは、
いつも、どうすれば、自分がいい子に見られるかを、気にする。行動も、また先生との受け答え
のしかたも、優等生的、あるいは模範的であることが多い。

先生「道路に、サイフが落ちていました。どうしますか?」
子ども「警察に届けます」
先生「ブランコを取りあって、二人の子どもがけんかをしています。どうしますか?」
子ども「そういうことをしては、ダメと言ってあげます」と。

 こうした仮面は、服従型のみならず、攻撃型の子どもにも見られる。

先生「君、今度のスポーツ大会に選手で、出てみないか?」
子ども「うっセーナア。オレは、そんなのに、興味ネーヨ」
先生「しかし、君は、そのスポーツが得意なんだろ?」
子ども「やったこと、ネーヨ」と。

 こうした仮面性は、依存型、同情型にも見られる。

●心の葛藤

 基本的信頼関係の構築に失敗した子ども(人)は、集団の中で、(孤立)と(密着)を繰りかえ
すようになる。

 それをうまく説明したのが、「二匹のヤマアラシ」(ショーペンハウエル)である。

 「寒い夜だった。二匹のヤマアラシは、たがいに寄り添って、体を温めようとした。しかしくっつ
きすぎると、たがいのハリで相手の体を傷つけてしまう。しかし離れすぎると、体が温まらない。
そこで二匹のヤマアラシは、一晩中、つかず離れずを繰りかえしながら、ほどよいところで、体
を温めあった」と。

 しかし孤立するにせよ、密着するにせよ、それから発生するストレス(生理的ひずみ)は、相
当なものである。それ自体が、子ども(人)の心を、ゆがめることがある。

一時的には、多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になることが多い。たとえば急激に緊張す
ると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心臓がドキドキし、さらにその結
果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や筋肉の活動が活発になる。

が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、「食欲不振や性機
能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反応が引き起こされる」(新井康
允氏)という。

こうしたストレスが日常的に重なると、脳の機能そのものが変調するというのだ。たとえば子ど
ものおねしょがある。このおねしょについても、最近では、大脳生理学の分野で、脳の機能変
調説が常識になっている。つまり子どもの意思ではどうにもならない問題という前提で考える。

 こうした一連の心理的、身体的反応を、神経症と呼ぶ。慢性的なストレス状態は、さまざまな
神経症による症状を、引き起こす。

●神経症から、心の問題

ここにも書いたように、心理的反応が、心身の状態に影響し、それが身体的な反応として現れ
た状態を、「神経症」という。

子どもの神経症、つまり、心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害)
は、まさに千差万別。「どこかおかしい」と感じたら、この神経症を疑ってみる。

(1)精神面の神経症…恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状(周囲の者には理解できないも
のに対して、おののく、こわがる)、不安症状(理由もなく悩む)など。 
(2)身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿症、
頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発
熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面で
の神経症に先立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号とと
らえて警戒する。 
(3)行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって行動面
に現れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、無気力、怠学、無
関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになる。 
●たとえば不登校

こうした子どもの心理的過反応の中で、とくに問題となっているのが、不登校の問題である。

しかし同じ不登校(school refusal)といっても、症状や様子はさまざま(※)。私の二男はひどい
花粉症で、睡眠不足からか、毎年春先になると不登校を繰り返した。

が、その中でも恐怖症の症状を見せるケースを、「学校恐怖症」、行為障害に近い不登校を
「怠学(truancy)」といって区別している。これらの不登校は、症状と経過から、三つの段階に
分けて考える(A・M・ジョンソン)。心気的時期、登校時パニック時期、それに自閉的時期。こ
れに回復期を加え、もう少しわかりやすくしたのが、つぎである。 
@前兆期……登校時刻の前になると、頭痛、腹痛、脚痛、朝寝坊、寝ぼけ、疲れ、倦怠感、吐
き気、気分の悪さなどの身体的不調を訴える。症状は午前中に重く、午後に軽快し、夜になる
と、「明日は学校へ行くよ」などと、明るい声で答えたりする。これを症状の日内変動という。学
校へ行きたがらない理由を聞くと、「A君がいじめる」などと言ったりする。そこでA君を排除す
ると、今度は「B君がいじめる」と言いだしたりする。理由となる原因(ターゲット)が、そのつど
移動するのが特徴。 
Aパニック期……攻撃的に登校を拒否する。親が無理に車に乗せようとしたりすると、狂った
ように暴れ、それに抵抗する。が、親があきらめ、「もう今日は休んでもいい」などと言うと、一
転、症状が消滅する。ある母親は、こう言った。「学校から帰ってくる車の中では、鼻歌まで歌
っていました」と。たいていの親はそのあまりの変わりように驚いて、「これが同じ子どもか」と
思うことが多い。 
B自閉期……自分のカラにこもる。特定の仲間とは遊んだりする。暴力、暴言などの攻撃的
態度は減り、見た目には穏やかな状態になり、落ちつく。ただ心の緊張感は残り、どこかピリピ
リした感じは続く。そのため親の不用意な言葉などで、突発的に激怒したり、暴れたりすること
はある(感情障害)。この段階で回避性障害(人と会うことを避ける)、不安障害(非現実的な不
安感をもつ。おののく)の症状を示すこともある。が、ふだんの生活を見る限り、ごくふつうの子
どもといった感じがするため、たいていの親は、自分の子どもをどうとらえたらよいのか、わか
らなくなってしまうことが多い。こうした状態が、数か月から数年続く。 
C回復期(この回復期は、筆者が加筆した)……外の世界と接触をもつようになり、少しずつ
友人との交際を始めたり、外へ遊びに行くようになる。数日学校行っては休むというようなこと
を、断続的に繰り返したあと、やがて登校できるようになる。日に一〜二時間、週に一日〜二
日、月に一週〜二週登校できるようになり、序々にその期間が長くなる。

●前兆をいかにとらえるか 
 この不登校について言えば、要はいかに@の前兆期をとらえ、この段階で適切な措置をとる
かということ。たいていの親はひととおり病院通いをしたあと、「気のせい」と片づけて、無理を
する。この無理が症状を悪化させ、Aのパニック期を招く。

この段階でも、もし親が無理をせず、「そうね、誰だって学校へ行きたくないときもあるわよ」と
言えば、その後の症状は軽くすむ。一般にこの恐怖症も含めて、子どもの心の問題は、今の
状態をより悪くしないことだけを考える。なおそうと無理をすればするほど、症状はこじれる。悪
化する。 

※……不登校の態様は、一般に教育現場では、@学校生活起因型、A遊び非行型、B無気
力型、C不安など情緒混乱型、D意図的拒否型、E複合型に区分して考えられている。

 またその原因については、@学校生活起因型(友人や教師との関係、学業不振、部活動な
ど不適応、学校の決まりなどの問題、進級・転入問題など)、A家庭生活起因型(生活環境の
変化、親子関係、家庭内不和)、B本人起因型(病気など)に区分して考えられている(「日本
教育新聞社」まとめ)。しかしこれらの区分のし方は、あくまでも教育者の目を通して、子どもを
外の世界から見た区分のし方でしかない。

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【参考】

●学校恐怖症は対人障害の一つ 

 こうした恐怖症は、はやい子どもで、満四〜五歳から表れる。乳幼児期は、主に泣き叫ぶ、
睡眠障害などの心身症状が主体だが、小学低学年にかけてこれに対人障害による症状が加
わるようになる(西ドイツ、G・ニッセンほか)。集団や人ごみをこわがるなどの対人恐怖症もこ
の時期に表れる。ここでいう学校恐怖症はあくまでもその一つと考える。

●ジョンソンの「学校恐怖症」

「登校拒否」(school refusal)という言葉は、イギリスのI・T・ブロードウィンが、一九三二年に最
初に使い、一九四一年にアメリカのA・M・ジョンソンが、「学校恐怖症」と命名したことに始ま
る。ジョンソンは、「学校恐怖症」を、(1)心気的時期、(2)登校時のパニック時期(3)自閉期
の三期に分けて、学校恐怖症を考えた。

●学校恐怖症の対処のし方

 第一期で注意しなければならないのは、本文の中にも書いたように、たいていの親はこの段
階で、「わがまま」とか「気のせい」とか決めつけ、その前兆症状を見落としてしまうことである。
あるいは子どもの言う理由(ターゲット)に振り回され、もっと奥底にある子どもの心の問題を見
落としてしまう。しかしこのタイプの子どもが不登校児になるのは、第二期の対処のまずさによ
ることが多い。

ある母親はトイレの中に逃げ込んだ息子(小一児)を外へ出すため、ドライバーでドアをはずし
た。そして泣き叫んで暴れる子どもを無理やり車に乗せると、そのまま学校へ連れていった。
その母親は「このまま不登校児になったらたいへん」という恐怖心から、子どもをはげしく叱り
続けた。

が、こうした衝撃は、たった一度でも、それが大きければ大きいほど、子どもの心に取り返しが
つかないほど大きなキズを残す。もしこの段階で、親が、「そうね、誰だって学校へ行きたくない
ときもあるわね。今日は休んで好きなことをしたら」と言ったら、症状はそれほど重くならなくて
すむかもしれない。

 また第三期においても、鉄則は、ただ一つ。なおそうと思わないこと。私がある母親に、「三
か月間は何も言ってはいけません。何もしてはいけません。子どもがしたいようにさせなさい」
と言ったときのこと。母親は一度はそれに納得したようだった。しかし一週間もたたないうちに
電話がかかってきて、「今日、学校へ連れていってみましたが、やっぱりダメでした」と。

親にすれば一か月どころか、一週間でも長い。気持ちはわかるが、こういうことを繰り返してい
るうちに、症状はますますこじれる。

 第三期に入ったら、@学校は行かねばならないところという呪縛から、親自身が抜けること。

A前にも書いたように、子どもの心の問題は、今の状態をより悪くしないことだけを考えて、子
どもの様子をみる。

B最低でも三か月は何も言わない、何もしないこと。子どもが退屈をもてあまし、身をもてあま
すまで、何も言わない、何もしないこと。

C生活態度(部屋や服装)が乱れて、だらしなくなっても、何も言わない、何もしないこと。とくに
子どもが引きこもる様子を見せたら、そうする。よく子どもが部屋にいない間に、子どもの部屋
の掃除をする親もいるが、こうした行為も避ける。

 回復期に向かう前兆としては、@穏やかな会話ができるようになる、A生活にリズムができ、
寝起きが規則正しくなる、B子どもがヒマをもてあますようになる、C家族がいてもいなくいて
も、それを気にせず、自分のことができるようになるなどがある。こうした様子が見られたら、
回復期は近いとみてよい。

 要は子どものリズムで考えること。あるいは子どもの視点で、子どもの立場で考えること。そ
ういう謙虚な姿勢が、このタイプの子どもの不登校を未然に防ぎ、立ちなおりを早くする。

●不登校は不利なことばかりではない

 一方、こうした不登校児について、不登校を経験した子どもたち側からの調査もなされてい
る。文部科学省がした「不登校に関する実態調査」(二〇〇一年)によれば、「中学で不登校児
だったものの、成人後に『マイナスではなかった』と振り返っている人が、四割もいる」という。不
登校はマイナスではないと答えた人、三九%、マイナスだったと答えた人、二四%など。そして
学校へ行かなくなった理由として、

友人関係     ……四五%
教師との関係   ……二一%
クラブ・部活動  ……一七%
転校などでなじめず……一四%と、その多くが、学校生活の問題をあげている。  

+++++++++++++++++ 

●自己診断

 子育てにおいて、母子関係の重要性については、今さら、改めて言うまでもない。そしてその
中でも、母子の間で構築される「基本的信頼関係」が、その後、その子ども(人)の人間関係の
みならず、生きザマにも、決定的な影響を与える。まさに「基本的」と言う意味は、そこにある。

 そこで子どもの問題もさることながら、親である、あなた自身が、その基本的信頼関係を構築
しているかどうかを、一度、疑ってみるとよい。

 あなたは自分の子どものときから、いつも自分をさらけ出していただろうか。またさらけ出す
ことができたただろうか。もしつぎのような項目に、三〜五個以上、当てはまるなら、ここに書い
たことを参考に、一度、自分の心を、冷静に見つめてみるとよい。

 それはあなた自身のためでもあるし、あなたの子どものためでもある。

○子どものころから、人づきあいが苦手。遠足でも、運動会でも、みなのように楽しむことがで
きなかった。今も、同窓会などに出ても、よく気疲れを起こす。
○他人に対して気をつかうことが多く、敬語を使うことが多い。気を許さない分だけ、よそよそし
くつきあうことが多い。
○ひとりで、静かに部屋の中に閉じこもっているほうが、気が楽だったが、ときどきさみしくなっ
て、孤独に耐えられないこともあった。
○いつも他人の目を気にしていたように思う。そして外の世界では、いい子ぶることが多かっ
た。無理をして、精神疲労を起こすことも、多い。
○夫(妻)や子どもにさえ、自分の心を許さないときがある。過去の話や、実家の話でも、恥ず
かしいと思うことは、話すことができない。
○言いたいことがあっても、がまんすることが多い。その反面、他人の言った言葉が、気にな
り、それでキズつくことが多い。
○自分は、どこかひねくれていると思う。他人の言葉のウラを考えたり、ねたんだり、嫉妬(しっ
と)することが多い。
○子どものころから、親に対しても、言いたいことが言えなかった。どこか遠慮していた。親や
先生に気に入られることばかりを、考えていた。

●勇気を出して、自分をさらけ出してみよう!

 もしあなたがここでいう「信頼関係」に問題がある人(親)なら、勇気を出して、自分をさらけ出
してみよう。

 まず、手はじめに、あなたの夫(妻)に対して、それをしてみるとよい。言いたいことを言う。し
たいことをする。身も心も、素っ裸になって、体当たりで、ぶつかってみる。何も、セックスだけ
が、さらけ出しということにはならないが、夫婦であることの特権は、このセックスにある。

 そのとき大切なことは、自分をさらけ出すのと同時に、夫(妻)の、どんなさらけ出しにも、寛
容であること。つまり受入れること。「おかしい……」とか、「変態とか……」とか、そういうふうに
考えてはいけない。

 あるがままを、あるがままに受入れて、あなたがた夫婦だけの問題として、処理すればよい。

 で、こうした夫婦の絆(きずな)を、伸ばす形で、つぎに精神面でのさらけ出しをする。思った
ことを話し、考えたことを伝える。

 これは私のばあいだが、私は、ある時期まで、講演をするたびに、ものすごい疲労感を覚え
た。そのつど、聖人ぶったりしたからだ。自分を飾ったり、つくったりしたこともある。

 しかしそれでは、聞きに来てくれた人の心をつかむことはできない。役にもたたない。

 そこでは私は、講演をしながら、その講演を利用して、自分をさらけ出すことに心がけた。あ
りのままの自分を、ありのままに話す。それで相手が、私のことを、「おかしい」と思っても気に
しない。そのときは、そのとき。

 自分に居直ったわけだが、そうすることで、私は自分にすなおになることができた。そう、もと
もと、私は、どこかゆがんだ人間だった。(今も、ゆがんでいる?)私のこうした生きザマが、ギ
クシャクした親子関係で悩んでいる人のために、一つの参考になればうれしい。

【注】この原稿は、W小学校区の教員研修会のための資料として書き始めたものです。まだ公
表できるような段階ではないかもしれませんが、マガジンにこのまま掲載します。時期をおい
て、また書き改めてみます。
(031121)

(※1)実際には、人知れず子どもを愛することができないと悩んでいる母親は多い。「弟は愛
することができるが、兄はどうしてもできない」とか、あるいは「子どもがそばにいるだけで、わ
ずらわしくてしかたない」とかなど。

私の調査でも子どもを愛することができないと悩んでいる母親は、約一〇%(私の母親教室で
約二〇〇人で調査)。東京都精神医学総合研究所の調査でも、自分の子どもを気が合わない
と感じている母親は、七%もいることがわかっている。そして「その大半が、子どもを虐待して
いることがわかった」(同、総合研究所調査・有効回答五〇〇人・二〇〇〇年)そうだ。

同じく妹尾栄一氏らの調査によると、約四〇%弱の母親が、虐待もしくは虐待に近い行為をし
ているという。妹尾氏らは虐待の診断基準を作成し、虐待の度合を数字で示している。

妹尾氏は、「食事を与えない」「ふろに入れたり、下着をかえたりしない」などの一七項目を作
成し、それぞれについて、「まったくない……〇点」「ときどきある……一点」「しばしばある……
二点」の三段階で親の回答を求め、虐待度を調べた。その結果、「虐待あり」が、有効回答(四
九四人)のうちの九%、「虐待傾向」が、三〇%、「虐待なし」が、六一%であったという。







 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【5】

●ADHD児(第1回)

●この12月に、K市W小学校区、教員研修会のための資料を整理しています。その席で、A
DHD児と不登校児についての、私見を述べることになっています。その資料を、ここに公開し
ます。

●全体で、A4原稿で、70ページ以上ありますので、今回から、何回かに分けて、お送りしま
す。今回(第一回)は、ADHD児の歴史と、診断基準について、報告します。どうか、参考にし
てください。


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ADHD児(第1回目)
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ADHD児には、前兆があります。その時期にその前兆をしっかりととらえ、適切に対処すること
が必要です。ADHD治療薬として知られている、「CONCERTA」を発売する、MCNEIL社が
主宰するホームページからの記事を中心に、ADHD児と、アメリカの現状について、レポートし
ます。

                     はやし浩司

アメリカの雑誌「Better Homes」(1)を読んでいた。ごく広く、一般に読まれている、婦人雑誌
である。
その中に、「ADHD児をもつ保護者のためのコマーシャルページ」(2)があった。しかもその間
には、「指導」を申し込むための、カードも挿入されていた。

アメリカでは、ADHD児に対して、広く薬物治療がなされている。
よく知られている薬物としては、つぎのようなものがある。(市販名)

CONCERTA 
Adderall XR
Adderall generic amphetamine salts
Ritalin genetic methylphenidate
Strattera

こうした事実からも、アメリカでは、ADHD児の問題は、学校という閉ざされた世界だけの問題
ではなく、広く、一般世間の問題として認知されていることがわかる。

以下は、その「指導」を主宰する、
MCNEIL FULFILLMENT CENTERが発行する、ホームページからの記事を、翻訳したも
のである。
(転載許可については、MFCに、申し込み中)

+++++++++++++++++++++

       Focus on ADHD 
                 ADHDについて
? McNeil Consumer & Specialty Pharmaceuticals, a Division of McNeil-PPC, Inc.
2000-2003 makers of CONCERTA? (methylphenidate HCl) CII
Ft. Washington PA, USA. All rights reserved.
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History of ADHD Diagnosis and Treatment
 ADHDの診察、および治療の歴史
●100 Years of ADHD History(100年の歴史)
Symptoms of Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD) were first observed among 
children in the early 1900s, with the behaviors extensively studied for more than 50 years. 
You may have already heard of Attention Deficit Disorder (ADD). Although ADD may be the 
more well-known name to describe the symptoms associated with the disorder, ADD is 
considered a subclassification of ADHD.
● 
●1902: ADHD "Discovered"(1902年に、ADHDが発見された)
In a paper on the development of treatment models for ADHD, Ian N. Ford, BA, DMS, FRSH, 
explained that much of the early clinical work on ADHD and associated disorders came from 
England. In 1902 British pediatrician G.F. Still first described hyperactive behavior in children 
as a "defect of moral control." However, he also believed that a medical cause, and not a 
spiritual one, was at the root of this yet to be discovered diagnosis.

●1937: Medical Treatments May Help(1937年に医学的治療がなされた)
In 1937, doctors discovered that amphetamines could be used to reduce hyperactive and 
impulsive behaviors. (多動性を抑えるために、アンフェタミンが使われた。アンフェタミンは、食
欲抑制剤として、よく知られている。)

●1950s: Stimulants First Used as Therapy(1950年代に、治療として、刺激剤が使用され
た)
In the 1950s, stimulant medication (i.e., amphetamines, methylphenidate) became used as 
therapy for hyperactivity and impulsive disorders. 

●1960s: Stimulants Became Widely Used(1960年代になると、刺激剤が広く使われるように
なった)
Dr. Ford noted that it was only after researcher Stella Chess coined the term "Hyperactive 
Child Syndrome" in the early 1960s, that stimulants became a widespread treatment. He 
also said that Chess felt the "syndrome" had a biological cause, even though many others 
at the time believed the cause to be anything from poor parenting and food additives to 
environmental toxins.

●1980s: ADHD Officially "Classified" Under its Current Name(1980年代に、ADHDという
名前が、今日のように、一般的な言葉として、使われるようになった)
By 1980, the American Psychiatric Association identified a collection of behavior patterns 
as Attention Deficit Disorder with or without hyperactivity. They named these disorders 
ADHD and ADD respectively.
In 1987, ADD was renamed Attention Deficit Hyperactivity Disorder to include the 
symptoms of hyperactivity-impulsivity as well as inattention. The APA classified ADHD as a 
medical condition that causes specific behavioral problems. They also noted that the 
behavioral problems caused by ADHD are different from behavioral problems that may be 
caused by an upsetting event like divorce, changing schools, or moving to a new area.

●2000: First Once-Daily, 12-Hour Release Medication Available(2000年になって、一日一
度、12時間の治療行為が、政府によって承認された)
In 2000, the U.S. Food and Drug Administration approved the first once-daily 12-hour ADHD 
medication which provided improvements in attention and behavior. Click here for more 
information on this medication.

●2001-2002: New ADHD Treatment Guidelines, Practice Parameters(2001−2002に、新
しいADHDの治療基準が確立された)
In October 2001, the American Academy of Pediatrics published recommendations for the 
treatment of children diagnosed with ADHD in the journal Pediatrics. The guideline is 
intended for use by pediatricians working in primary care settings. Recommendations for 
doctors are as follows:
(以下が、ドクターのための、治療基準である)
●Primary care doctors should establish a treatment program recognizing ADHD as a 
chronic condition. 
●The doctor, parents, and child-working together with school personnel- should specify 
appropriate goals to guide the daily management of ADHD. 
●The doctor should recommend stimulant medication and/or behavior therapy as 
appropriate to improve target outcomes in children with ADHD. 
●When the selected management for a child with ADHD has not met target outcomes, 
doctors should evaluate the original diagnosis, the use of all appropriate treatments, 
whether the treatment plan was followed properly, and the presence of coexisting 
conditions. 
●The doctor should periodically provide follow-up for the child with ADHD. Monitoring 
should be directed to target outcomes and adverse effects (i.e., negative side effects), with 
information gathered from parents, teachers, and the child. 

In February 2002, the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry also published 
stimulant medicine practice parameters to aid physicians in the use of stimulant 
medications in children, adolescents, and adults. The guidelines, which were determined 
through extensive, independent reviews of literature and expert consultant interviews, 
provide physicians with evidence-based recommendations for the treatment of ADHD with 
stimulant medications. 

●2002: Non-Stimulant Medication Approved(2002年に、政府は、非刺激性の医療行為を
承認した)
In November 2002, the U.S. Food and Drug Administration approved a non-stimulant 
medication for the treatment of ADHD.

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Childhood ADHD (子どものADHD)
According to the National Institutes of Health, ADHD is the most commonly diagnosed 
behavioral disorder of childhood. In fact, ADHD is estimated to affect up to 5% of school-age 
children. But sometimes it can be hard to know if a child's over-activity or inattention is 
normal for his or her age, especially because children with ADHD do the same things that 
other children do. An evaluation by a doctor can help rule out other possible explanations 
for the symptoms of ADHD, and recommend treatments that can help.
(ADHDというと子どもの問題と考えられている。事実、子どもの5%に、ADHD児が発見され
ている。しかし多動性があるからといって、そうでない子どもとの区別がむずかしい。)

●Diagnosing Childhood ADHD(子どものADHD児の診断)
Diagnosing ADHD can be difficult, and requires information from a number of sources, 
including parents, doctors and teachers. A proper diagnosis depends on the report of 
characteristic behavior and observations, input from the child, and a doctor's evaluation.
A positive diagnosis of ADHD, especially in children, requires:
●Symptoms of inattention and/or hyperactivity-impulsivity have been observed for at 
least six months. With ADHD, these symptoms will be more frequent and severe than 
typically seen in individuals at a comparable level of development.
●Some symptoms have been present before age seven.
●Symptoms have been present in at least two settings-for instance, at school and at 
home. 
The symptoms have affected social or academic functioning. This means above all, the 
symptoms must be interfering with a child's daily functioning

 ●American Psychiatric Association's Diagnostic Criteria for ADHD(ADHD児の診断基準)
The American Psychiatric Association's Diagnostic and Statistical Manual of Mental 
Disorders (DSM-IV), lists the following symptoms for inattention and hyperactivity-
impulsivity: 

●Symptoms of Inattention(注意力散漫の診断基準)
1.Often fails to give close attention to details or makes careless mistakes in schoolwork, 
work, or other activities. 
2.Often has difficulty sustaining attention in tasks or play activities. 
3.Often does not seem to listen when spoken to directly. 
4.Often does not follow through on instructions and fails to complete schoolwork, chores, or 
duties (not due to oppositional behavior or failure to understand instructions). 
5.Often has difficulty organizing tasks and activities. 
6.Often avoids, dislikes, or is reluctant to engage in tasks that require sustained mental 
effort (such as schoolwork or homework). 
7.Often loses things necessary for tasks or activities (toys, school assignments, pencils, 
books, or tools). 
8.Is often easily distracted by extraneous stimuli 
9.Is often forgetful in daily activities. 
1 学校での学習面において、こまかいことに集中できず、不注意なまちがいをしばしば繰りか
えす。
2 勉強や、運動面において、注意力を集中することが、しばしば困難である。
3 直接話しかけられても、しばしば聞いていないように見える。
4 先生の指示に、しばしば従うことができなかったり、学校での勉強や、合唱、すべきことが、
しばしばできない。(ただし反抗的な態度だったり、指示の内容が理解ができなくて、そうなるの
ではない。)
5 勉強や活動をまとめることが、しばしばできない。
6 持続的な集中が必要な作業において、しばしば、それを避けたり、嫌ったり、取り組むのを
いやがったりする。(たとえば宿題など)
7 勉強や活動に必要なものを、しばしばなくしたりする。(おもちゃや、学校の成績表、鉛筆、
本、道具など)
8 しばしば外部からの刺激で、気が散ってしまう。
9 毎日の活動において、忘れっぽい面が見られる。
 ●Symptoms of Hyperactivity/Impulsivity(多動性の診断基準)
1.Often fidgets with hands or feet or squirms in seat. 
2.Often leaves seat in classroom or in other situations in which the child is expected to 
remain seated. 
3.Often runs about or climbs excessively in situations in which it is inappropriate (in 
adolescents and adults, may be limited to subjective feelings of restlessness). 
4.Often has difficulty playing or engaging in leisure activities quietly. 
5.Is often "on the go" or often acts as if "driven by a motor." 
6.Often talks excessively. 
7.Often blurts out answers before questions have been completed. 
8.Often has difficulty awaiting turn. 
9.Often interrupts or intrudes on others (butts into conversations or games). 
1 手や足を、しばしばもじもじさせたり、席に座って、もがく。
2 教室でも、ほかの子どもたちが、座っていられるような状況でも、しばしば席を離れる。
3 そうしてはいけないとわかっているような状況で、しばしば走り回ったり、まわりのものに登
ったりする。(青年期やおとなになってからは、感情が落ちつかないといった様子を見せる。)
4 レジャー活動などを楽しんだり、することについて、しばしば静かにできない。
5 しばしば行動が暴走したり、モーターで動くように、行動が制御できなくなる。
6 しばしば一方的に、しゃべりつづける。
7 質問内容をじゅうぶん聞かないうちに、しばしば唐突に答を言ったりする。
8 しばしば自分の順番を待つことができない。
9 しばしばほかの子どもに割り込んだり、ほかの子どもをさえぎったりする。(会話やゲームに
干渉したりする。)
The first step in getting help for ADHD is making a correct diagnosis. After the diagnosis is 
made, a number of different treatments can offer help for people who have been diagnosed 
with ADHD.

The information on this page is intended to help you identify behaviors and signs that may 
be consistent with ADHD. Talk to your doctor or your child's doctor if you recognize any of 
these symptoms. He or she can guide a proper diagnosis and recommend the right 
treatment. Print the symptoms checklist to help guide your discussion with your doctor.

 ●Diagnosis Subtypes(類似タイプ)
While most people with ADHD experience a combination of inattention and hyperactivity-
impulsivity, in most cases, one symptom pattern may stand out. To make the distinction 
between symptoms, doctors classify ADHD diagnosis into three subtypes. (つぎの3タイプに
分けて考える)

●Predominantly Hyperactive-Impulsive(顕著な衝動的多動性)
A person may be diagnosed "Predominantly Hyperactive-Impulsive" if he or she has:
●Six (or more) symptoms of hyperactivity-impulsivity. 
●Fewer than six signs of inattention, that have lasted at least six months. However, it is 
important to note that inattention may still be a significant feature. 

●Predominantly Inattentive(顕著な怠慢性)
A person may be diagnosed as "Predominantly Inattentive" if he or she has: 
●Six (or more) symptoms of inattention. 
●Fewer than six signs of hyperactivity-impulsivity, that have lasted at least six months. 
 

●Combined Type(複合タイプ)
A person may be diagnosed as the "Combined Type" if he or she has: 
●Six (or more) symptoms of hyperactivity-impulsivity. 
●Six (or more) signs of inattention, that have lasted at least 6 months. 

Most children and adolescents with ADHD are diagnosed as the "Combined Type." ●Four 
Signs(4つの兆候)
Medical help may be needed if inattention or hyperactivity is causing significant problems at 
home, in school, and with relationships. Talk to your doctor if you have observed these 
behaviors. He or she can evaluate your child and determine the right course of treatment. 
In identifying ADHD, doctors often look for four major signs. In their book, The A.D.D. Book, 
New Understandings, New Approaches to Parenting Your Child, William Sears, M.D., and 
Lynda Thompson, Ph.D. talk about the four signs as follows:(つぎのような兆候が見られたら、
ドクターに相談したらよい。)
●Selective Inattention-Instead of maintaining a relatively even attention span, children 
with ADHD fluctuate between inattention and hyperfocusing-showing extended 
concentration on things like video games, TV, or something that is of particular interest to 
them.
●Distractibility-A child quickly jumps from one idea or activity to the next, often without 
completing the thought or task. The child may also "daydream" when you are talking to him 
or her.
●Impulsivity-A child with ADHD often acts without thinking, says things repeatedly, or 
makes careless errors on schoolwork.
●Hyperactivity-Not everyone who has ADHD is hyperactive, but identifying this trait may 
make the diagnosis easier. 
(1)不安定な集中力……ADHD児は、不注意な面が見られる一方、異常なまでの集中力、た
とえばテレビゲームやテレビなど、自分が興味あるものについては、ふつうでない集中力をみ
せるなど、その集中性が一定していない。

(2)散漫性……一つの仕事や考えを完成させる前に、一つの考えや行動から、つぎの考えや
行動にジャンプしてしまう。話しかけても、ぼんやりとうわの空になることがある。

(3)衝動性……ADHD児は、しばしば考えることなしに、同じことを繰りかえしたり、学習面で、
不注意な失敗をする。

(4)多動性……ADHD児だからといって、多動性があるわけではない。しかしこの多動性があ
れば、診断ははやくできる。
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Teenage ADHD(ティーンエイジのADHD)
For years, doctors thought that children outgrew ADHD symptoms by the time they 
reached adolescence. But for many teens, this is not the case. In fact, about 70% of children 
with ADHD have problems with impulsivity, problem solving, decision making, and inattention 
throughout their teenage years. 

●From Child to Teen: The Picture Changes(子どもから、一〇代の少年少女へ、変わる様
子)
In an article published in the journal Contemporary Pediatrics, Martin Baren M.D. notes that 
as children with ADHD reach adolescence, the characteristics of the condition typically 
change. During adolescence, some symptoms become less noticeable, including 
hyperactivity, attention span, and impulse control. As a result, many teens who were 
diagnosed with the Combined Type of ADHD no longer meet the criteria. However, 
impulsivity is still a major problem for many ADHD teens, and can cause difficulties with 
school, work, family, and social relationships.
(子どもの時代の症状は、外からはわかりにくくなる。たとえば、多動性、注意力散漫、衝動的
な行動などは、姿をひそめる。しかし一〇代になっても、衝動的行為は、大きな問題として残
る。
Dr. Baren notes that, for ADHD teens, while independence and responsibilities increase, so 
may driving accidents, low self-esteem, drug and alcohol abuse or encounters with the law. 
Issues associated with identity, peer-group acceptance, and physical development can be a 
source of extra stress. In his work with ADHD teens, Dr. Baren has noted that adolescents 
often deny symptoms and refuse to take medication at school because they do not want to 
be 'different.' 
(独立心と責任感が大きくなる一方、交通事故、低い自己意識、薬物やアルコールの濫用、さ
らには犯罪に染まりやすい。そこで自分を認めさせ、同じような仲間の集まるグループでの治
療などを試みるが、しかしこれがうまくいかないケースが多い。子どものときとちがって、自分
がふつうでないことを認めるのをいやがり、しばしばその兆候をこの時期の子どもは否定し、
学校での治療を拒否する。)
Growing older and becoming more independent can be an exciting adventure for teens. 
Especially for ADHD teens 16 and older, learning how to set goals and make good decisions 
will help give them the direction they need to stay on course. But it is important for the 
ADHD teen to learn that managing symptoms is a key part of developing life skills and 
handling everyday situations. 
(この年齢の子どもには、人生の目標を設定することは、重要なことである。) 

●Evaluation and Diagnosis(評価と診断)
Since ADHD cannot be determined by a simple blood test or physical evaluation, the 
diagnosis should only be made after symptoms have persisted over an extended period of 
time, and interfere with a teen's ability to function. At that point, a thorough evaluation by 
a doctor experienced in ADHD diagnosis and treatment may be necessary. Also, a psycho-
educational evaluation can rule out associated learning disabilities and other illnesses and 
identify areas of strength and weakness.
(ADHD児は、血液検査などでは評価できない。そのため、ある一定期間の観察をとおして、ド
クターによる診断が必要である。)


●A Note About ADHD in Teenage Girls(一〇代の少女のついてのノート)
For girls and women, ADHD can be a hidden disorder, ignored or misdiagnosed by the 
educational and medical communities, which may cause these girls and women to suffer in 
silence. 
(少女にとっては、ADHDは、隠された障害となることが多い。そのため、人知れず苦しんでい
る少女や女性がいる。)
In view of the serious consequences of ADHD in adolescence and adulthood, there is an 
urgent need for increased awareness of the prevalence of this disorder in teenagers. 
Adolescent girls, often are not identified until school underachievement has become chronic. 
To prevent this from happening, earlier diagnosis and management are essential. Primary 
care physicians, pediatricians, and psychiatrists all must be able to recognize the symptoms 
of ADHD. 
(少女のばあい、学業不振が長く続いたようなとき、発見されることが多い。そのため初期段階
での適切な診断が大切である。)

Learn more about ADHD in teenage girls at the websites of the National Center for Gender 
Issues and ADHD and the National Women's Health Resource Center.
 ●Getting Help(助けを得る)
According to Dr. Baren, "Parents often incorrectly interpret restlessness and thoughtless 
behavior by teens as malicious, fueling negative reactions and increasing conflict. In the 
case of adolescents with ADHD, parent interaction and response is affected by ADHD 
symptoms. Parents should be guided toward reasonable expectations and accurate 
interpretation of their teens' behavior." 
Teenagers who have difficulties in school, with friends, or have ongoing negative thoughts 
about themselves may benefit from an evaluation. Treatment, including counseling and/or 
medication, may help address difficulties with concentration and attention span. Counseling 
can also help address emotional and social issues, including:
(つぎのような問題について、カウンセリングがなされることが望ましい)
●Anxiety (不安)
●Depression (うつ状態)
●Low self-esteem (低い自己意識)
●Problems with friends, family, and teachers. (友だちや先生との問題)
A few things that may point to having ADHD: 
1.General untidiness, in school and at home. 
2.Consistently late with assignments. 
3.Constantly losing things such as homework. 
4.Easily distracted with a brief attention span. 
5.Regularly running late for school. 
6.Everything with a deadline is done at the very last minute. 
7.An unusual sense of fairness. 
8.Many excuses for things not getting done. 
9.People think you are not listening when they are speaking to you. 
The Diagnostic and Statistical Manual for Primary Care, Child and Adolescent Version has 
formulated a behavioral description that differentiates normal developmental variations 
from behavioral problems and true disorders (ADHD)
傾向としては、つぎのようなことが、見られる。

1 学校や家庭における、一般的なだらしなさ
2 約束ごとについて、いつも遅れる
3 宿題などを、よくなくす
4 注意力が散漫で、短い間でも集中できない
5 いつも学校に遅刻する
6 いつも何かのことで、時間的にギリギリといった行動になる
7 公正さに対するふつうでない、感覚
8 できなかったことについて、言い訳をよくする
9 「君は、私の話をよく聞いていない」と、人から言われることが多い

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司


子育て随筆byはやし浩司(361)

ADHD児(第2回)

●ADHD児の診断基準


(アメリカ・MCNEIL社のホームページより転載・翻訳。これらの記事は、非営利目的のため、
個人が参考文献として使うことは許可されていますが、それ以外の目的で使うことは禁じられ
ています。そのため、転載、引用などは、かたくお断りします。)

+++++++++++++++++++++
あなたの子どもは、だいじょうぶですか?
一度、自己診断してみてください。
+++++++++++++++++++++

 アメリカでは、ADHD児について、以下のような診断基準が、おおむね採用されている。日本
でも、約5%の子ども(二〇人に一人)が、ADHD児とみる。

【Symptoms of Inattention(注意力散漫の診断基準)】

1.Often fails to give close attention to details or makes careless mistakes in schoolwork, 
work, or other activities. 
2.Often has difficulty sustaining attention in tasks or play activities. 
3.Often does not seem to listen when spoken to directly. 
4.Often does not follow through on instructions and fails to complete schoolwork, chores, or 
duties (not due to oppositional behavior or failure to understand instructions). 
5.Often has difficulty organizing tasks and activities. 
6.Often avoids, dislikes, or is reluctant to engage in tasks that require sustained mental 
effort (such as schoolwork or homework). 
7.Often loses things necessary for tasks or activities (toys, school assignments, pencils, 
books, or tools). 
8.Is often easily distracted by extraneous stimuli 
9.Is often forgetful in daily activities. 

1 学校での学習面において、こまかいことに集中できず、不注意なまちがいをしばしば繰りか
えす。
2 勉強や、運動面において、注意力を集中することが、しばしば困難である。
3 直接話しかけられても、しばしば聞いていないように見える。
4 先生の指示に、しばしば従うことができなかったり、学校での勉強や、合唱、すべきことが、
しばしばできない。(ただし反抗的な態度だったり、指示の内容が理解ができなくて、そうなるの
ではない。)
5 勉強や活動をまとめることが、しばしばできない。
6 持続的な集中が必要な作業において、しばしば、それを避けたり、嫌ったり、取り組むのを
いやがったりする。(たとえば宿題など)
7 勉強や活動に必要なものを、しばしばなくしたりする。(おもちゃや、学校の成績表、鉛筆、
本、道具など)
8 しばしば外部からの刺激で、気が散ってしまう。
9 毎日の活動において、忘れっぽい面が見られる。


【Symptoms of Hyperactivity/Impulsivity(多動性の診断基準)】

1.Often fidgets with hands or feet or squirms in seat. 
2.Often leaves seat in classroom or in other situations in which the child is expected to 
remain seated. 
3.Often runs about or climbs excessively in situations in which it is inappropriate (in 
adolescents and adults, may be limited to subjective feelings of restlessness). 
4.Often has difficulty playing or engaging in leisure activities quietly. 
5.Is often "on the go" or often acts as if "driven by a motor." 
6.Often talks excessively. 
7.Often blurts out answers before questions have been completed. 
8.Often has difficulty awaiting turn. 
9.Often interrupts or intrudes on others (butts into conversations or games). 

1 手や足を、しばしばもじもじさせたり、席に座って、もがく。
2 教室でも、ほかの子どもたちが、座っていられるような状況でも、しばしば席を離れる。
3 そうしてはいけないとわかっているような状況で、しばしば走り回ったり、まわりのものに登
ったりする。(青年期やおとなになってからは、感情が落ちつかないといった様子を見せる。)
4 レジャー活動などを楽しんだり、することについて、しばしば静かにできない。
5 しばしば行動が暴走したり、モーターで動くように、行動が制御できなくなる。
6 しばしば一方的に、しゃべりつづける。
7 質問内容をじゅうぶん聞かないうちに、しばしば唐突に答を言ったりする。
8 しばしば自分の順番を待つことができない。
9 しばしばほかの子どもに割り込んだり、ほかの子どもをさえぎったりする。(会話やゲームに
干渉したりする。)

++++++++++++++++++

 日本では、「多動児」という見方で、「注意力散漫」と、「多動性」を、まとめてとらえる。しかし
アメリカでは、「注意力散漫」と、「多動性」を区別して考える。

 こうした項目に、思い当たる点や、該当することが多ければ、ADHD児を疑ってみる。

 その前に、あなたのADHD児に対する、常識をテストしてみよう。

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あなたのADHD児に対する理解度は、どれくらいでしょうか。
一度、あなたの理解度を、自己診断してみてください。
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Test Your ADHD AQ (Awareness Quotient) 
(あなたのADHD理解力テスト)
Here is your opportunity to separate fact from fiction and test your own ADHD knowledge. 
Answer the questions below, then click "submit" to measure your awareness quotient.
1.Is ADHD just a label used by doctors for difficult children?
(ADHDというのは、困難児に対して、ドクターによって張られるラベルか。)

(YES/NO)
 

2.Can girls have ADHD?
(女子に、ADHD児はいるか。)

(YES/NO)
 
 
3.Does junk food or the environment cause ADHD?
(ジャンクフード、もしくは環境が、ADHDを引き起こすか。)

 (YES/NO)
 

4.Would ADHD behavior problems happen if parents just used "old-fashioned" discipline?
(親が、『古いタイプの主義』を子どもに当てはめたとき、ADHDの問題は起こるか。……子育て
のし方が原因で、ADHD児になるか。)

 (YES/NO)
 

5.Can children who only focus on things they like to do, have ADHD?
(子どもが自分の好きなことだけに集中するとしたら、ADHDが疑われるか。)

 (YES/NO)
 

6.Are children with ADHD as smart as children who don't have ADHD?
(ADHD児は、そうでない子どもと同じくらい、頭はよいbのか。)

 (YES/NO)
 

7.Can ADHD be cured with medication?
(ADHDは、薬で治るか。)

(YES/NO)
 
 
8.Is ADHD just a "phase" children grow out of?
(ADHDというのは、成長とともに消える、ただの『一面』か。)

(YES/NO)
 

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上のテストの結果が、つぎです。8問中、5〜6問以上正解なら
あなたは、よく勉強している人と、みてよいでしょう。
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Test Results (テスト結果)
1.Is ADHD just a label used by doctors for difficult children?
(正解はNO)
You selected No. 
No. ADHD has been a recognized disorder for over 20 years. However, because doctors now 
more easily identify and understand the disorder, ADHD diagnoses are more prevalent than 
in the past. In the U.S., ADHD is diagnosed in three to five percent of the population.
Learn more about the history of ADHD diagnosis.
(ドクターだけが診断できるのではない。しかしドクターのほうが、適切に診断できる。)

2.Can girls have ADHD?
(正解はYES)
You selected Yes. 
Yes. ADHD affects both males and females. Boys are diagnosed with the disorder 2-3 times 
more than girls. In fact, for girls and women, ADHD can be a hidden disorder, ignored or 
misdiagnosed by the educational and medical communities which may cause these girls and 
women to suffer in silence. (男子は、女子より、2〜3倍、多い。女子のばあいは、表に現れる
ことが少ない。)

Learn more about ADHD in teenage girls at the Web sites of the National Center for 
Gender Issues and ADHD and the National Women's Health Resource Center. 


3.Does junk food or the environment cause ADHD?
(正解はNO)
You selected No. 
No. Special diets and limiting food additives will not prevent ADHD. 
(食事療法や、添加物を減らしても、ADHDを防ぐことはできない。)
 

4.Would ADHD behavior problems happen if parents just used "old-fashioned" discipline?
(正解はNO)
You selected No. 
No. Research has shown that parenting and discipline styles do not cause ADHD. However, 
like diabetes and other disorders, parental involvement in treatment (behavioral 
management strategies and/or medications) can help manage ADHD symptoms. 
(ADHD児の診断基準は、最近の研究とともに、大きく変わってきている。ここでいう「古い診断
基準」というのは、1990年代に決められた診断基準をいう。以前は、育て方の問題とされて
いた。)
 


5.Can children who only focus on things they like to do, have ADHD?
(正解はYES)
You selected Yes. 
Yes. People who can concentrate some of the time may still have ADHD. People with ADHD 
have difficulty attending to most tasks for periods of time, but they (like many people) can 
concentrate on things that interest them and are stimulating, such as computer games. (た
とえばコンピュータ・ゲームなどの、特別な分野には、並外れた集中力を見せることがある。)

Read Ben's Story to learn more.

6.Are children with ADHD as smart as children who don't have ADHD?
(正解はYES)
You selected Yes. 
Yes. ADHD does not affect intellectual ability. Although just as smart as others, children 
with ADHD may not function as well academically. Your child's school can work with you and 
your pediatrician to develop strategies to assist your child in the classroom.(ADHDは、知的
な部分には、影響を与えない。)
Learn more about the positive side of ADHD.

7.Can ADHD be cured with medication?
(正解はNO)
You selected No. 
No. While no treatment today cures ADHD, treatment programs that include medication and
/or behavior modification help manage symptoms. Decades of research have shown 
stimulant medications improve many symptoms for about 70% of those with ADHD. 
Learn more about treatments for ADHD.
(今のところ、薬物で治療することはできない。治療法はない。薬物治療で、70%の子どもに、
改善が見られたという報告がある。)
8.Is ADHD just a "phase" children grow out of?
(正解はNO)
You selected No. 
No. Children with ADHD may or may not "grow out of it." Between 60% to 80% of children 
continue to have ADHD symptoms as teenagers, and some are affected into adulthood. As 
children grow, hyperactive symptoms appear to decrease. However, attention problems 
often persist. Adults who develop successful coping strategies may find symptoms less 
bothersome as they grow older. (60〜80%の子どもは、10代になっても、ADHDの症状を残
す。しかし成長とともに、症状は軽減される。)
Read Carmen's Story to learn more. 
(031124)

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

子育て随筆byはやし浩司(362)

●よく知られた、ADHDの人たち

エジソンも、チャーチルも、モーツアルトも、ADHDだった!

ADHD児というと、マイナス面ばかりが強調されるが、もちまえの集中力や、固執力、さらに
は、バイタリティなどから、すぐれた能力を示す例も、少なくない。MCNEIL社のGPでは、エジ
ソン、チャーチル卿、モーツアルトの例をあげ、ADHDであることが、悪いことばかりでないこと
を指摘している。大切なことは、いかにしてADHDを「治す」かではなく、その「よさを、指導によ
り引き出すか」である(はやし浩司)。


Famous People and ADHD (ADHD児でよく知られた人たち)

Although not all of the following people have been officially diagnosed with ADHD, they have 
exhibited many of its signs. This list is included here to inspire those facing similar challenges.
つぎの人たちは、公式には、ADHDであったと診断されたわけではない。しかしADHDの多く
の症状を示していた。現在同じような問題をかかえている人のために参考になれば、うれし
い。

●Thomas Alva Edison (トーマス・A・エジソン)is cited more than any other historical figure 
for his classic ADHD behavior. As an inventor, his creative curiosity enabled him to 
constantly explore new ideas. Later in life, Edison showed his tenacity in sticking with things 
that caught his imagination in his many inventions.(エジソンの多動性はよく知られている。し
かし彼のねばり強さは、突出したものであった。)

●エジソンは、他のどんな歴史上の人物よりも、古典的ADHDの持ち主として、注目されてい
る。発明者として、彼の想像的好奇心は、つぎつぎと新しいアイデアを生み出した。晩年になっ
て、エジソンは、多くの発明にかかりきりになるという、ねばり強さを示した。


●Sir Winston Churchill(W・チャーチル卿) was described as hyperactive and naughty as a 
child, and was often sent out of the classroom to run around the schoolyard and get rid of 
his extra energy. In his autobiography "My Early Life," Churchill talks about his impulsivity 
and his difficult school experiences. Interestingly, once out of school and serving in the 
British Army in India, Churchill read crate after crate of history books. His high energy level, 
creative problem solving, and hyperfocus as prime minister of Great Britain during WWII 
inspired his nation and the world. (チャーチル自身が、回顧録で、自分のわんぱくぶりを書い
ている。彼はもちまえの集中力をもって、歴史書をよみあさり、やがて英国の首相となった。)

●チャーチルは、子どものころ、多動性とわんぱくで知られていた。そのためよく教室から追い
出され、そのエネルギーをへらすため、運動場を走らされた。チャーチルは、自分の伝記、「私
の子ども時代」の中で、自分の衝動的行動や、学校での困難な生活ぶりを書いている。興味
深いことは、彼が学校を出て、インドで軍に従事したとき、チャーチルは、歴史書を読みあさっ
たということ。チャーチルの高いエネルギーと、創造力豊かな問題解決の方法、第二次大戦中
の、英国軍の首相としての、並外れた集中力は、イギリスや世界を、鼓舞した。

●Wolfgang Amadeus Mozart(W・A・モーツアルト) is known for his abilities as a brilliant 
composer. During periods of hyperfocus, he could compose an opera in just a few weeks; 
other times he left commissioned work to the last minute, or didn't finish it at all. It has 
been said that his impulsive social behavior kept him from major court positions and great 
financial reward. (モーツアルトは、人並みはずれた集中力で、二、三週間でオペラを完成させ
たりした。)


●モーツアルトは、すぐれた作曲家として、その能力を知られている。モーツアルトは、その集
中力が高揚しているときは、オペラを、ほんの数週間で完成させている。ほかのときは、申し付
けられた仕事を、最後の瞬間までしなかったり、あるいはまったくしなかったりした。一説による
と、彼のこうした衝動的な行動が、宮廷での地位や、財政的な立場を、苦しくした理由だと言わ
れている。

大切なことは、ここにも書いたように、いかにして、「よい面を引き出すか」である。MCNEIL社
のHPにも、つぎのようにある。


●ADHD: A Positive Perspective(ADHDのよい面)
The terms "deficit" and "disorder" in ADHD, by their very nature, may lead people to think 
that ADHD is not a positive condition. But people with ADHD can accomplish great things 
when they properly channel their energy.(「障害」という言葉は、マイナス面ばかりを連想させ
るが、そうではない。)


●Looking on the Bright Side (明るい面を見よう)
Many children with ADHD are very funny, entertaining, and highly creative. In fact, some of 
the brightest and most talented students and business people can attribute much of their 
success to the positive qualities of ADHD. People with ADHD may exhibit:(ADHD児は、愉快
で、高度に創造的である。また学業面において、すぐれた成績を示すことも少なくない。)

ADHD児には、つぎのようなすぐれた面も見られる。こうした面を伸ばすことこそ、大切。

●Spontaneity (自発的行動)
●Creativity (創造力)
●Fast thinking (はやい思考性)
●Hyperfocus (高い集中力)
●Tenacity (ねばり強さ)
●High energy (高い意欲)


It is especially important for children with ADHD to gain self-confidence and a positive self-
image. Recognizing and rewarding positive qualities like the ones described above will help 
focus positive energy in the right direction.(本人に自信を持たせることが、大切である。)
(031124)

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

子育て随筆byはやし浩司(363)

●ADHD児の指導(家庭では……)

Caring for ADHD Children (ADHD児のケア)
You can make it easier for children with ADHD to create friendships and handle stress. At 
the same time, there are simple things you can do for yourself that may make it easier for 
you to deal with the challenges that ADHD caregivers often face. 

ADHD児の子どもが、友情を育てたり、ストレスを処理できるようにしてあげましょう。またその
ために、あなたにも、できることがあります。


●Helping Your Child Make and Keep Friends (友だちをつくれるようにしてあげよう)

Because children with ADHD often get angry when things do not go their way, or have 
difficulty waiting their turn, making and keeping friends may be tough. Below are a few ways 
you can help your child increase their level of success in maintaining friendships.

1.Use language that communicates success and ability. Teach your child about desirable 
behavior by talking about it positively. Show your child you believe he or she can succeed.
2.Structure successful "play dates" with peers. Arrange and supervise a well-structured 
activity for your child and one of his or her friends. Keep the "play date" short. Keep the 
rules of the activity simple and easy to follow. Then compliment and reward your child with 
quality time, or other reinforcements for playing well.
3.Limit electronic games and encourage socially interactive play. The more opportunities 
you provide for your child to play with and relate to other children his or her own age, the 
more chances he or she will have to learn what it takes to make and keep friends. 


1 うまくできたときや、能力を示したら、子どもが理解できる言葉で、ほめてあげよう。前向き
に子どもをとらえ、望ましい行動を教えてあげよう。子どもができるということをあなたが信じて
いることを、子どもに示してあげよう。

2 仲間との「遊び」を、用意してあげよう。友だちとよく遊べるように、遊びを組み立て、指導し
てあげよう。遊びの時間を短くし、規則を簡単にするのが、コツ。励ましたり、ほめたりしなが
ら、その遊びを、強化してあげよう。

3 電子的な遊びを制限し、人との交流をふやしてあげよう。同じ年齢の子どもと交流する機会
がふえればふれるほど、友だちをもつ機会がふえることを、子どもが学ぶだろう。


●Overcoming Negative Feedback(否定的な側面を克服させてあげよう)

Children often interpret negative feedback as being told they are "bad" or "stupid." To help 
children gain a positive feeling about understanding and accepting criticism, as well as 
building a better self-image, consider the following:

このタイプの子どもは、外の世界で、「悪い子」「バカな子」と言われやすい。そのため、つぎの
ようなことを考えながら、よりよい「自己イメージ」をつくることができるように、指導する。

1.Teach your child that behaving poorly or making a bad choice does not mean he or she is 
a "bad person."
2.Cut down on negative feedback by ignoring small behavior problems such as not 
completing chores on time.
3.Build your child's self-confidence be encouraging involvement in sports or activities that 
he or she enjoys or does well.
4.Praise your child when doing well in activities, and offer comfort and support to help 
overcome fears of trying new challenges.
5.Give your child at least four positive comments for each bad one. 

1 たとえおかしな行動をしたり、まちがった選択をしたとしても、それは「悪い子」ということで
はないことを、教える。

2 時間どおりに雑用ができないなど、ささいな行動的問題については無視することで、子ども
の中に、否定的な側面をつくらないようにする。(自分をダメ人間と思わせないようにする。)

3 子どもがうまくできるスポーツなどを通して、それを励まし、自分に自信をつけさせてあげ
る。

4 何かの活動でじょうずにできたら、それをほめ、なぐさめたり、新しいチャレンジをすること
についての恐れを克服できるようにしてあげる。

5 それぞれの一つの悪い面について、少なくともその四つの前向きなコメントを与えてあげ
る。


●Managing Stress at Home(家庭でのストレス対策)
Encouraging children with ADHD to focus on a specific activity or chore can be exhausting 
and frustrating for both of you. You can help yourself to remain calm, patient, and 
understanding if you:

(家庭では、つぎのような点を守る。)
1.Take deep breaths and think about the words "calm down" until you feel better.
2.Count backwards, slowly, from 10, 20, or 100.
3.Listen to enjoyable music.
4.Give yourself a "time-out" from what is upsetting, as a way to come up with other 
solutions for a situation.
5.Imagine a STOP sign to help you slow down and stop before continuing.
6.Use exercise to reduce over-activity. 
7.Ask for a hug when either of you feels like yelling or are getting frustrated. 

1 あなたの気分がよくなるまで、息を深く吸い込み、「落ちつく」という言葉の意味を考える。

2 10、20もしくは100から、ゆっくりと逆に数える。

3 楽しい音楽を聞く。

4 その状況に対処するための方法として、動揺していることについて「時間切れ」と思う。

5 頭の中で、「停止信号」を想像し、今の状態をつづける前に止まる。

6 子どもに対して過剰行動しないように、運動する。

7 あなたのどちらかが叫びそうになったり、爆発しそうになったら、子どもを抱く。

(以上、MCNEIL社のハンドブックから)
(031124)

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

子育て随筆byはやし浩司(364)

●ADHD児の症例

 
(本当は集中しようとしている。しかしできない……)

Ben's Story (事例、ベンのばあい)
No matter how hard Ben tried, it always seemed that the teacher's instructions went by 
too fast. At school and at home, completing homework assignments was a struggle, filled 
with distractions and frequent breaks to sharpen a pencil or just stare at a page. 

どんなにベンが努力しても、先生の指示のほうが、はやく行き過ぎるといった感じ。学校でも家
でも、宿題を完成させるだけでも、たいへん。混乱したり、鉛筆を削ったり、ただページをみつ
めているだけ。

On the flip side, if something interested Ben, his focus was intense. He knew all the words to 
commercials for his favorite toys, but not his math tables. He was great at being a goalie on 
the soccer team, but complained about playing forward. When it came to science projects, 
his creativity and effort were endless, yet report cards often read, "needs more 
consistency."

反対に、何か、興味があることがあると、ベンは、それに集中する。彼の好きなおもちゃのコマ
ーシャルは、すべて知っている。が、かけざんの九九などは、覚えない。サッカーチームのゴー
ルキーパーでは、すぐれた才能を見せるが、フォワードはいやだという。理科の学習では、彼
の創造力と熱意は、無限のようだが、しかし成績には、しばしば「もう少し、一貫性が必要」と書
かれる。

Ben was exhibiting many of the classic symptoms of ADHD, a condition that according to 
the National Institutes of Health, is one of the most common neuro-behavioral disorders 
among children. Today, ADHD affects approximately 3 to 5 percent of the school-age 
population, with boys diagnosed three to four times more often than girls.

ベンは、「保健省」の基準に従えば、古典的なADHDの症状を示していた。その一つが、神経
行動障害である。今日、就学児童の全人口のうち、3〜5%に、その症状がみられ、男児は、
女児のそれより、3〜5倍、症例が多い。

The symptoms of ADHD affect children in all aspects of their lives, not just academically. 
Without proper attention, a child with ADHD can feel alone, and have difficulty making and 
keeping friends, maintaining family relationships, and participating in activities outside of 
school. Left unmanaged, children with ADHD may have poor academic performance and can 
experience behavioral and emotional problems into adulthood.

ADHDの症状は、学業面のみならず、生活のあらゆる場面で現れる。適切なケアをしないと、
ADHD児は孤立し、交友関係、家族関係、種々の課外活動などをするのがむずかしくなる。放
置されることにより、ADHD児は、学習面でも遅れたり、おとなになってからも、行動面、感情
面で問題を残すことになる。

+++++++++++++++

Symptoms may include, but not be limited to:

●Selective Inattention-Instead of maintaining a relatively even attention span, Ben 
fluctuated between inattention and hyperfocusing. 
●Distractibility-Ben would quickly jump from one idea or activity to the next, often without 
completing the thought or task. 
●Impulsivity-Ben often acted without thinking, saying things repeatedly, and making 
careless errors on schoolwork. 
●Hyperactivity-Ben simply could not sit still. He would often talk excessively, and fidget 
with his hands. 

ベンの症状から(主な症状のみ)

 選択的集中力の欠落……比較的、集中力を維持できるものの、散漫なときと、集中過度の
間をいったりきたりする。

 混乱性……ベンは、その考えや仕事を完成させる前に、つぎからつぎへと、考えや行動を飛
躍させてしまう。

衝動性……ベンはしばしば、考えることになしに、ものごとを繰り返し言う。学校の宿題でも、
不注意によるミスが多い。

 過剰行動性……ベンは、じっとしていることができない。過激に話したり、いつも手をつかって
そわそわする。

++++++++++++++++++

Because everyone shows signs of these behaviors at one time or another, the guidelines for 
determining whether a person has ADHD are very specific. Establishing a diagnosis of ADHD 
is complex and requires reports of characteristic behaviors from multiple sources, such as 
parents, physicians, and teachers. The diagnosis should also include input from the patient 
and a physician's physical examination.
 どんな子どもでも、こうしたサインをそのときどきに示す。そのためどの子どもがADHDである
かを判断するのは、とてもむずしい。ADHDの診断をするのは、むずかしく、両親、医師、教師
など、多方面からの情報が必要である。診断には、患者と医師の検査の報告が、含まれねば
ならない。
(031124)

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

子育て随筆byはやし浩司(365)

●10代の子どものADHD

ADHDは、乳幼児から幼児期にかけて、その症状が現れる。落ち着きがない、集中力に欠け
る、多動性があるなどの症状が、一般的だが、そうした症状は、年齢とともに、変化してくる。

一つには、自己意識が発達し、自分で自分をコントロールするようになるからだが、指導のポ
イントは、この自己意識をどう伸ばし、育てるかにある。

MCNEIL社のハンドブックは、「コミュニケーション、サポート、理解が必要だ」と、説く。

++++++++++++++++++++

Caring for ADHD Teens (10代のADHD児)
When faced with the challenges of ADHD in the teenage years, you and your teen can 
develop new strategies for dealing with social, academic, and personal growth issues. Your 
communication, support, and understanding can help your ADHD teen develop good decision-
making skills that will help him or her handle life's challenges now and in the future.

10代のADHD児と対処するときは、社会生活、個人的な成長に関する問題などを扱う上にお
いて、新しい考えをもたねばならない。あなたのコミュニケーションや、サポート、あるいは理解
が、10代のADHD児の判断能力を伸ばし、未来に向かって、その子どものチャレンジを伸ば
す。
 
●Succeeding at Home(家庭での指導)
●Teens with ADHD often make impulsive decisions that get in the way of parents granting 
them increased freedom and responsibility. Use the strategies below to help establish 
expectations and support productive behavior at home.
(10代のADHD児は、しばしば衝動的な決断をくだしやすい。つぎの方法を、家庭での指導で、
応用してみてほしい。)

1.Use positive incentives, such as earning time with friends, to achieve desired behaviors.
2.Implement consequences for undesirable behavior as soon as possible.
3.Review non-negotiable house rules regularly, including associated rewards and penalties.
4.Discuss which rules can be negotiated and under what circumstances.
5.Help your teen make better decisions by reviewing and evaluating a variety of solutions 
and/or behaviors for a number of situations.
6.Provide regular supervision for younger teens by having them check in after school, limit 
time with friends when adults are not home, schedule times for regular parent-child contact, 
and set a curfew. 

1 友だちとの時間をふやしたり、望ましい行為を達成するために、前向きな動機付けをしてあ
げる。
2 望ましくない行為については、できるだけ早く、結果を出すようにしてあげよう。
3  ほうびとバツなど、交渉不能なハウス・ルールについて、もう一度、みなおしてみよう。
4 どの規則が、どのような状況で、交渉可能なのかを、子どもと話しあってみよう。
5 いろいろなばあいに、いろいろな解決方法があることを示しながら、子どもが、よりよい判
断ができるように示してあげよう。
6 10代前半の子どもについては、放課後の様子を規則正しく監督してあげよう。おとながい
ないときは、家で友だちと会うのを、制限しよう。そして親子のふれあいを、スケジュール化し
て、門限を正しくしよう。

++++++++++++++++++++

 ADHD児が問題なのは、ADHDであることというよりは、家庭での不適切な指導により、症
状がこじれてしまうことである。それについて書いたのが、つぎの原稿である(中日新聞発表済
み)。

++++++++++++++++++++

子どもの多動性を考えるとき

●抑えがきかない子ども 

 集中力欠如型多動性児(ADHD児)と言われるタイプの子どもがいる。無遠慮(隣の家へあ
がりこんで、勝手に冷蔵庫の中の物を食べる)、無警戒(塀の中にいる飼い犬に手を出して、
かまれる)、無頓着(一階の屋根の上から下へ飛びおりる)などの特徴がある。

ふつう意味のないことをペラペラとしゃべり続ける、多弁性をともなう。が、何といっても最大の
特徴は、抑えがきかないということ。強く制止しても、その場だけの効果しかない。一分もしない
うちに、また騒ぎだす。たいていは乳幼児期からきびしいしつけを受けているため、叱られると
いうことに対して免疫性ができている。それがますます指導を難しくする。

 このタイプの子どもの指導でたいへんなのは、「秩序」そのものを破壊してしまうこと。勝手に
騒いで、授業をメチャメチャにしてしまう。それだけではない。

その子どもだけを集中的に指導していると、ほかの子どもたちが神経質になってしまう。私もこ
んな失敗をしたことがある。その子ども(年長男児)を何とか抑えようと四苦八苦していたのだ
が、ふと横を見ると、隣の女の子が涙ぐんでいた。「どうしたの?」と聞くと、小さい声で、「先生
がこわい……」と。

●DSM・Wのマニュアルより

 出現率は、小学校の低学年児では、二〇人に一人ぐらいだが、症状にも軽重があり、その
傾向のある子どもまで含めると、一〇人に一人ぐらいの割合で経験する。

学習面での特徴としては、@ここにあげた多動性(めまぐるしく動き回る)のほか、A注意力持
続困難(注意力が散漫で、先生の話が聞けない。集中できない。根気が続かない)、B衝動性
(衝動的行為が多く、突発的に叫んだり暴れたりする)があげられている(アメリカ、障害児診
断マニュアル、DSM・Wより)。

●「ママのパンティね、花柄パンティよ!」

 能力的には、遅れが目立つ子どもが約七割、ある特定の分野に、ふつう程度以上の能力を
見せる子どもが約三割と私はみている。が、問題はそのことではなく、親自身にその自覚がほ
とんどないということ。

このタイプの子どもは、乳幼児期には、何ごとにつけ天衣無縫。言うことなすこと活発で、その
ためほとんどの親は、自分の子どもをむしろ優秀な子どもと誤解する。これがまた指導を難しく
する。Mさん(年中児)もそうだった。赤ちゃんのときから、柱にヒモでつながれて育った。その
Mさん、参観日のとき、突然、「今日のママのパンティね、花柄パンティよ!」と叫んだ。言って
よいことと悪いことの区別がつかない。

が、Mさんの母親は、遊戯会の日まで、天才児と信じていた。その遊戯会でのこと。Mさんは、
一人だけ皆から離れて、舞台の前で、ほかの子どもたちに向かって、アッカンベーを繰り返し
た。そこで私に相談があったので、私は、Mさんが、活発型遅進児の疑いがあると告げた。も
う二五年近くも前のことで、当時は多動児という言葉すら、まだ一般的ではなかった。その説明
をすると、母親はその場で泣き崩れてしまった。

●教師の経験や技量は関係ない

 脳の機能変調説が有力で、アメリカでは別の施設に移した上で、薬物治療までしている。し
かし効果は一時的。たとえば「リタリン」という薬を与えて治療しているそうだが、その薬にして
も、三〜四時間しか効果がないといわれている。

この日本でも薬物療法をするところがふえてはいるが、現場指導が中心。たとえばこの静岡県
では、現場の教師に指導が任されている。補助教員や学校ボランティアの付き添いを制度化
している市町村もあるが、しかしこの方法では、おのずと限界がある。

仮にこのタイプの子どもが、一クラス(三五名)に二〜三名もいると、先にも書いたように、クラ
スそのものがメチャメチャになってしまう。これには教師の経験や技量は、あまり関係ない。

●もちまえのバイタリティが、よい作用に!

 ……こう書くと、このタイプの子どもには未来はない、ということになるが、そうではない。小学
三、四年生を過ぎると、それ以後は、自分で自分をコントロールするようになる。騒々しさは残
ることは多いが、見た目にはわかりにくくなる。持ち前のバイタリティが、よい方向に作用するこ
ともある。

集団教育になじまないというだけで、それを除けば子どもとしては、まったく問題はない。つまり
そういう視点に立って、仮にここでいうような症状があっても、乳幼児期は、それ以上に、症状
をこじらせないことに心がける。こじらせればこじらせるほど、その分、立ちなおりが遅れる。

+++++++++++++++++++

【日本の診断基準】

行動が幼い
注意が続かない
落ちつきがない
混乱する
考えにふける
衝動的
神経質
体がひきつる
成績が悪い
不器用
一点をみつめる

++++++++++++++

たいへんまたはよくあてはまる……2点、
ややまたは時々あてはまる  ……1点、
当てはまらない       ……0点として、
男子で4〜15歳児のばあい、
12点以上は障害があることを意味する「臨床域」、
9〜11点が「境界域」、
8点以下なら「正常」

【厚生労働省がまとめた診断基準(親と教師向けの「子どもの行動チェックリスト」より)】

++++++++++++++
(031124)

++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司


子育て随筆byはやし浩司(366)

●居なおって生きる

 いくらエネルギーが残っていても、それをうしろ向きに使ったのでは、意味がない。悩んだり、
クヨクヨしたりするのが、それだが、しかし年齢が進むにつれて、どうしても、ものの考え方が、
うしろ向きになる。

 「明日は、どうなるのだろう」「来年は、どうなるのだろう」「一〇年後は、どうなるのだろう」と。
健康問題や経済問題がからむと、さらに深刻になる。

 私の知人の中には、定年退職したとたん、うつ病になってしまった人がいる。それまでは、
「退職したら、女房と二人で、石垣島で一年、暮らす」と言っていた人が、である。実のところ、
私も休みになったとたん、体の調子が悪くなる。「休み」といっても、一、二週間前後つづく休み
のことをいう。

 たとえばこうして毎日、原稿を書いているが、休みになったとたん、もっと原稿が書けるはず
のだが、かえって、書けなくなってしまう。気が抜けてしまうというか、緊張感が消えてしまうとい
うか……。本来なら時間ができて、もっと書けるはずなのだが……。

 だから最近は、私はワイフにこう言っている。「どんなことがあっても、ぼくは、死ぬ直前まで、
仕事をするよ」と。いろいろと計画はある。たとえば数年間、オーストラリアで暮らすとか、同じ
ように、数年をかけて、世界を一周するとか。しかしそれらは、多分、「夢」で終わると思う。

 そこで私は、こんなことを心がけている。もともと(うつ病に近い)「うつ気質」なので、油断する
と、そのままうつ状態になってしまう。だから、朝起きたら、その日にやることを決める。そして
それがどんなに小さいことでも、前向きにぶつかっていく。

 たとえば今朝は、子ども(生徒)たちへのクリスマスプレゼントを考えた。先日、コンビニで見
つけた、恐竜の組みあわせパズル(M社製「恐竜の卵」)が、よい。そこでインターネットを使っ
て、会社を調べ、XX人分の見積もりを出してもらうことにした。

 その組みあわせパズルをつかって、ゲームもできる。「早く組みたてた人は、○○賞!」と
か、何とか。高学年の子どもには、さらに何匹かの恐竜のパーツを、ごちゃ混ぜにしてやらせ
るという方法もある。……などなど。

 一見、つまらないことのように見えるが、しかし、どうにもならないことを、クヨクヨ悩むよりは、
よい。そこで私なりの、処世術をまとめてみることにした。

(1)無責任、おおいに結構……私はもともと無責任な男なので、そうたいして努力しなくても、
無責任でいられる。神経は、細いくせに、あるところまでくると、居なおってしまう。「勝手にしろ」
と。

(2)二人の人に、いい顔はできない……私のことを、悪く思っている人は多い。もう少し若けれ
ば、そういう人たちとの関係を修復しようと思うのだろうが、このところ、そういう意欲が、ほとん
ど、なくなってしまった。どうがんばったところで、残りの人生は、あとX十年(?)。それまでに頭
もボケるだろうし、行動範囲は、さらに狭くなる。修復するエネルギーが残っているなら、今、良
好な関係にある人との関係を、もっと大切にしたい。

(3)どうせ先細り……これからの人生は、どうせ先細り。「仕事があるだけでも、ありがたい」
「家族がいるだけでも、ありがたい」「生きているだけでも、ありがたい」と、まあ、そんなふうに、
あきらめて生きている。私の年代になると、「明日が、今日よりよくなる」などということは、あり
えない。「来年が、今年よりよくなる」ということは、さらにありえない。

(4)ありのままで……「飾る」ということに、このところ、ほとんど興味がない。世間体や、見栄、
メンツなどは、まったく気にしない。それはよいことなのだろうが、同時にさみしいことかもしれ
ない。いや、本当のところは、ときには、いい格好(かっこう)もしてみたいと思うこともある。し
かしそう思ったとたん、同時に、「だから、それがどうなのだ!」という、別の思いが、それを打
ち消してしまう。

 こうして処世術を並べてみて気づいたが、要するに「居なおって生きる」ということか。言いか
えると、老後をうまく生きるということは、いかにじょうずに、居なおって生きるかということにな
る。その居なおりのし方が、これからの人生を決める。

 私のことを悪く思いたければ、思え。勝手に、そう思え。
 私のことをバカだと思うなら、思え。勝手に、そう思え。
 私は、気にしないぞ。そんなヒマとエネルギーがあるなら、
 私は、それを、自分のために使うぞ。バカヤロー、と。

 みなさんは、どうですか? 生きザマが、どこかうしろ向きになっていませんか?
(031124)

+++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩


子育て随筆byはやし浩司(367)
 
●学校拒否症と怠学

 学校拒否症(school refusal)と怠学(truancy)は、分けて考える。

+++++++++++++++

 学校拒否症の主な症状は、以下のようである(アメリカ内科医学会)。

★Severe emotional distress about attending school; may include anxiety, temper tantrums, 
depression, or somatic symptoms.
学校に通うことについて、心配、不安、腹立たしさ、うつ、体の変調などの、苦痛が見られる。

★Parents are aware of absence; child often tries to persuade parents to allow him or her 
to stay home. 
両親がそれ気づいていて、子どもが、「行きたくない」と、親を説得する。

★Absence of significant antisocial behaviors such as juvenile delinquency. 
少年非行などの、顕著な、反社会的行動をともなわない。

★During school hours, child usually stays home because it is considered a safe and secure 
environment. 
学校へ行く時間に、家にいることが多い。そのほうが安全と考えるからである。

★Child expresses willingness to do schoolwork and complies with completing work at home. 
子ども自身は、家庭で宿題をしたり、宿題をすることに応ずる。

+++++++++++++++

 ふつう日本で「不登校」というときは、この「学校拒否症」もしくは、「学校恐怖症」をいう。

+++++++++++++++++

 一方、「怠学(truency)」というときは、以下のような診断基準に当てはまる子どもを、いう
(同、アメリカ内科学会)。

★Lack of excessive anxiety or fear about attending school. 
学校に通うことについて、大きな不安や恐れはない。

★Child often attempts to conceal absence from parents. 
両親の知らないところで、勝手に学校へ行くのを、さぼったりする。

★Frequent antisocial behavior, including delinquent and disruptive acts (e.g., lying, stealing), 
often in the company of antisocial peers. 
(ウソ、盗みなどの)反社会的行動をともなうことが多い。集団非行グループに属することが多
い。

★During school hours, child frequently does not stay home . 
学校へ行く時間でも、家にいないことが、多い。

★Lack of interest in schoolwork and unwillingness to conform to academic and behavior 
expectations. 
学校の勉強そのものに興味を示さず、勉強するのをいやがる。

++++++++++++++++

 怠学については、たとえば、大阪府立M高校などでは、つぎのような対策を立てている(M高
校HPより)。あくまでも参考のため。

+++++++++++++

●怠学指導の方法について

(10ポイント制指導)

1.正当な理由のない遅刻登校、3分以上の授業遅刻、各授業の中抜け、無断早退を各1点と
して合算し、定期考査毎に五分割した期間に10点に達した者を保護者召喚のうえ一日謹慎さ
せ作文課題などを課して指導する。
 
2.この後も引き続き怠学習慣の改善がない者は15点に達したところで保護者召喚のうえ三日
間の謹慎、作文課題などを課す。 

3.定期考査中に10点もしくは15点に達した者は考査終了後に謹慎指導に入る。 

4.定期考査終了後に合算点は全員0点に戻る。 

5.遅刻の理由が正当か否かの判断は各学年の生徒指導担当者と担任で協議し決定する。 

6.生徒及び保護者への申し渡し、解除は各学年の生徒指導担当者(又は学年主任)と担任で
行う。(申し渡し、解除の時間は原則として8時00分とする) 

7.3年生の3学期は4点に達した者を謹慎の対象とする。 

8.この謹慎期間の出欠の取り扱いは通常の懲戒処分と同様に出席停止扱いとする。
(但し、翌日になっても課題等の指導が実行されない場合はその日以降は欠席、欠課扱いと
する) 

+++++++++++++

 要するに、心身に何らかの病変をともなって、学校へ行けなくなる状態を、「学校拒否症」とい
い、サボることを、「怠学」と考えるとわかりやすい。(だからといって、不登校児がみな、何らか
の病変をともなっていることにはならない。念のため。)
(031125)

【参考】

●なお、アメリカ内科医学会は、「学校拒否症」の要因となる、不安障害(Anxiety disorders)と
して、つぎのものをあげている。 

Separation anxiety (分離不安)
Anxiety disorder(不安障害)
Generalized anxiety disorder (不安障害全般)
Social phobia (社会恐怖症)
Simple phobia (孤立恐怖症)
Panic disorder (パニック障害)
Panic disorder with agoraphobia (広場恐怖症をともなうパニック障害)
Post-traumatic stress disorder (PTSD)
Agoraphobia(広場恐怖症) 
Mood disorders(気分障害) 
Major depression (うつ病)
Dysthymia(抑うつ症)

●また同じく、「学校拒否症」の要因となる、破滅行動障害(Disruptive behavior disorders)に
ついては、つぎのようなものをあげている(同)。 

Oppositional defiant disorder (反抗障害)
Conduct disorder (行為障害)
Attention-deficit/hyperactivity disorder (注意力散漫、過集中障害)
Disruptive behavior disorder,(破滅的行為障害) 
Other disorders(他の障害) 
Adjustment disorder (with depressed mood or anxiety) (うつをともなう、適応障害)
Learning disorder (学習障害)
Substance abuse 
Other







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【6】

●受験期の子ども(うまく子育てができない)

●名古屋市のSさんへ

 マガジンの読者(母親)の方から、こんな相談をもらった。

++++++++++++++++

 中学生になる息子がいる。しかし頭の中ではわかっていても、実際に、子どもを前にすると、
思うように、子育てができない。今は、受験期で、どうしてもピリピリとしてしまう。

 私自身も、高学歴で、それを子どもに求めてしまうのか。小学校のときは、何も言うことがな
いほど優秀な子どもだったが、このところ、成績もさがってきた。そのため、よけに、ピリピリし
てしまう。

 『許して忘れる』と、心の中で思うのだが、どうも、うまく子育てができない。どうしたら、いい
か。

++++++++++++++++

この相談を読んで、最初に思い出し
たのが、つぎの原稿(中日新聞発表
済み)です。

++++++++++++++++

親が過去を再現するとき

●親は子育てをしながら過去を再現する 

 親は、子どもを育てながら、自分の過去を再現する。そのよい例が、受験時代。

それまではそうでなくても、子どもが、受験期にさしかかると、たいていの親は言いようのない
不安に襲われる。受験勉強で苦しんだ親ほどそうだが、原因は、「受験勉強」ではない。受験
にまつわる、「将来への不安」「選別されるという恐怖」が、その根底にある。それらが、たとえ
ば子どもが受験期にさしかかったとき、親の心の中で再現される。

つい先日も、中学一年生をもつ父母が、二人、私の自宅にやってきた。そしてこう言った。「一
学期の期末試験で、数学が二一点だった。英語は二五点だった。クラスでも四〇人中、二〇
番前後だと思う。こんなことでは、とてもS高校へは入れない。何とかしてほしい」と。二人とも、
表面的には穏やかな笑みを浮かべていたが、口元は緊張で小刻みに震えていた。

●「自由」の二つの意味

 この静岡県では、高校入試が人間選別の重要な関門になっている。その中でもS高校は、最
難関の進学高校ということになっている。私はその父母がS高校という名前を出したのに驚い
た。「私は受験指導はしません……」と言いながら、心の奥で、「この父母が自分に気がつくの
は、一体、いつのことだろう」と思った。

 ところで「自由」には、二つの意味がある。行動の自由と魂の自由である。行動の自由はとも
かくも、問題は魂の自由である。

実はこの私も受験期の悪夢に、長い間、悩まされた。たいていはこんな夢だ。……どこかの試
験会場に出向く。が、自分の教室がわからない。やっと教室に入ったと思ったら、もう時間がほ
とんどない。問題を見ても、できないものばかり。鉛筆が動かない。頭が働かない。時間だけが
刻々と過ぎていく……。

●親と子の意識のズレ

親が不安になるのは、親の勝手だが、中にはその不安を子どもにぶつけてしまう親がいる。
「こんなことでどうするの!」と。そういう親に向かって、「今はそういう時代ではない」と言っても
ムダ。脳のCPU(中央処理装置)そのものが、ズレている。親は親で、「すべては子どものた
め」と、確信している。

こうしたズレは、内閣府の調査でもわかる。内閣府の調査(二〇〇一年)によれば、中学生で、
いやなことがあったとき、「家族に話す」と答えた子どもは、三九・一%しかいなかった。これに
対して、「(子どもはいやなことがあったとき)家族に話すはず」と答えた親が、七八・四%。

子どもの意識と親の意識が、ここで逆転しているのがわかる。つまり「親が思うほど、子どもは
親をアテにしていない」(毎日新聞)ということ。が、それではすまない。

「勉強」という言葉が、人間関係そのものを破壊することもある。同じ調査だが、「先生に話す」
はもっと少なく、たったの六・八%! 本来なら子どものそばにいて、よき相談相手でなければ
ならない先生が、たったの六・八%とは! 

先生が「テストだ、成績だ、進学だ」と追えば追うほど、子どもの心は離れていく。親子関係も、
同じ。親が「勉強しろ、勉強しろ」と追えば追うほど、子どもの心は離れていく……。

 さて、私がその悪夢から解放されたのは、夢の中で、その悪夢と戦うようになってからだ。試
験会場で、「こんなのできなくてもいいや」と居なおるようになった。あるいは皆と、違った方向
に歩くようになった。どこかのコマーシャルソングではないが、「♪のんびり行こうよ、オレたち
は。あせってみたとて、同じこと」と。夢の中でも歌えるようになった。……とたん、少しおおげさ
な言い方だが、私の魂は解放された!

●一度、自分を冷静に見つめてみる

 たいていの親は、自分の過去を再現しながら、「再現している」という事実に気づかない。気
づかないまま、その過去に振り回される。子どもに勉強を強いる。先の父母もそうだ。それまで
の二人を私はよく知っているが、実におだやかな人たちだった。

が、子どもが中学生になったとたん、雰囲気が変わった。そこで……。あなた自身はどうだろう
か。あなた自身は自分の過去を再現するようなことをしていないだろうか。今、受験生をもって
いるなら、あなた自身に静かに問いかけてみてほしい。あなたは今、冷静か、と。

そしてそうでないなら、あなたは一度、自分の過去を振り返ってみるとよい。これはあなたのた
めでもあるし、あなたの子どものためでもある。あなたと子どもの親子関係を破壊しないためで
もある。受験時代に、いやな思いをした人ほど、一度自分を、冷静に見つめてみるとよい。
 
+++++++++++++++++

 親が、子どもに残せるものは、何か? ……ときどき、そんなことを考える。

 私のばあい、財産といっても、ほとんど、ない。コツコツとためた小銭は、多少はあるが、これ
からの老後を考えると、とても、足りない。

 名誉も、地位もない。「○○家」というような、家柄でもない。それにほぼ、一生を終えつつあ
るが、これといって、何かをしてきたわけではない。平凡であるのが悪いとは思わないが、しか
し私の人生は、本当に、平凡だった。

 そういう私が、子どもに残せるものは、何か?

 昔、学生時代に、こんな歌を歌ったことがある。

♪死んだ親が、あとに残す 宝物は何ぞ
力強く男らしい それは仕事の歌
力強く男らしい それは仕事の歌
ヘイこの若者よ ヘイ前へ進め 
さあ、みんな前へ進め(ロシア民謡・津川主一訳詞)

 この歌を、少し、もじるとこうなる。

   ♪死んだ親が、あとに残す、宝物は何ぞ
    子どもを信じきったという、かたい信念
    子どもを守りきったという、強い自信
    そして子どもを愛しきったという、熱い愛情
    さあ、子どもたちよ、それを土台に、前へ進め

 決して、ふざけているのではない。むしろ、今、本気でそう思っている。もちろん私とて、今ま
でに何度も、デッドロックにのりあげたことがある。不安や心配を、そのまま子どもにぶつけた
こともある。決して、よい親でも、父親でもなかった。

 しかし今、自分の子育てを振りかえってみて、心の中で、光り輝き始めているのは、ほかでも
ない、まがりなりにも、子どもを信じ、子どもを守り、子どもを愛したという、その自負心である。
財産でも、名誉でも、地位でもない。学歴でも、ない。その自負心である。

 名古屋市のSさんは、今、子育てをしながら、その混乱の中で、もがき、苦しんでいる。しかし
そうであるかといって、それは、Sさん自身の責任ではない。一方で、私たちの体の中には、日
本独特の学歴信仰、学歴社会、そして受験競争がしみこんでいる。

 いくら「私は私だ」と思っていても、私たちは、こうした体質とは、無縁ではいられない。無意識
の世界は、意識の世界より、はるかに広い。私たちの心は、常に、この無意識の世界に支配
されている。「頭の中ではわかっていても……」というSさんの思いは、そういうところから生ま
れる。

 だから、その体質を変えるのは、容易なことではない。たとえばこんな例がある。

 A氏(三五歳)は、子どものころから、親とともに、ある宗教団体で、信仰を重ねてきた。が、
ある日、その信仰に疑問をもってしまった。A氏に異変が起きたのは、そのときからだった。

 A氏の妻からの手紙だが、こう書いてきた。

 「夫は、国立大学の工学部を出たような人で、それなりにインテリだと思います。そんな夫
が、毎日、毎晩、バチが当たると言って、こわがって、体を震わせています」と。

 決して、オーバーに書いたのではない。むしろ、私は、控えめに書いた。その宗教団体では、
その団体を批判したり、その「長」の悪口を言っただけで、地獄へ落ちるとか、バチが当たると
か言って、信者をおどしている。

 私のような部外者からみると、何ともおかしな話だが、本人にとっては、そうではない。子ども
のときから信仰してきた宗教だけに、よけいに、そうなのだろう。いわんや、明治時代以来、国
策(?)として、日本の教育の「柱」となってきた、学歴信仰をや!

【Sさんへ……】

 今が、正念場だと思います。無意識のうちにも、あなたは自分の少女時代を再現しているの
です。このことは、心理学の世界でも、常識です。つまり親は、子育てをしながら、無意識のう
ちにも、自分の過去を、そのつど再現します。

 今、あなたが、極度の不安状態になるのは、かつてあなたが少女のとき、そうであったから
に、ほかなりません。

 しかし幸いなことに、すでにあなた自身が、自分を客観的に見る目をもっている。これはとて
も重要なことです。ほとんどの親は、そういう目ももたないまま、そしてわけがわからないまま、
「私であって私でない部分」に、振りまわされてしまうのです。

 もちろん客観的に見ることができるからといって、そのまま、問題が解決するということはあり
ません。身にしみこんだ体質というのは、そういうものです。しかしここで恐れたり、ひるんだり
してはいけません。とにかく、前に向って進むのです。あとは、必ず、時間が解決してくれます。

 ちなみに、あなたのまわりにいる人を、観察してみてください。あなたのまわりには、子どもの
受験勉強で、狂奔(きょうほん)している人は、多いはずです。そういう人たちを見ると、つまり
今のあなたの目から見ると、「私であって私でない部分」に、動かされているのが、よくわかる
はずです。客観的に自分を見つめる目をもっているというだけでも、他人を見る目が、大きく違
ってきます。

 今のあなたの子どもは、かつてあなたがそうであったように、苦しんでいます。毎日を悶々と
した状態で、過ごしています。この日本では、こうした受験競争は避けられない道かもしれませ
んが、それでも、あなたの見方が変われば、あなた自身も、それで救われますが、あなたの子
どもも救われます。それともあなたは、自分がそうであったことを、あなたの子どもにしてほしい
ですか? それを望んでいますか?

 そうでないなら、あなたも、勇気を出して、あなたの子どもに、こう言ってみてください。

 「いいのよ。あなたはあなただから。あなたはあなたの信ずる道を行きなさい。あなたはよく
がんばってきた。今も、がんばっている。お母さんは、あなたを信じていますよ」と。

 実は、今、私も、同じような悩みをかかえています。

 三男が、今度、今の大学をやめて、パイロットになると言っています。先日、宮崎県で、その
三次試験を受けてきたところです。最終的な合格発表は、もうすぐですが、親の私の心境は、
複雑です。

 「パパは、反対か?」と、ときどき聞きますが、賛成する親はいないと思います。これから先、
飛行機事故のニュースを聞くたびに、私は、ハラハラしなければなりません。(私自身も飛行機
事故を経験し、飛行機恐怖症ということもあります。)

 しかし、三男が、それを望むというのであれば、私は、それを支えるしかありません。三男を
信じるしかありません。「お前の人生は、お前のものだから、勝手に生きろ」とです。

 親というのは、いつも、その「限界」の中で、生きるものかもしれません。「何とかならないもの
か」と思いつつ、しかしその限界を感じ、そしてそれを受入れる……。が、それとて、簡単なこと
ではありません。

 限界を認めないで、子どもを苦しませるか。反対に限界を認めて、親が苦しむか。最終的に
は、その選択を迫られます。今、Sさんは、その最終的な選択を迫られているといってもよいで
しょう。しかし、決して今の状態が、結論ということでもなければ、またこれから先、ずっとつづく
ということではありません。

 もうすぐあなたも、今の状況から抜け出し、(ただの親)から、(真の親)へと、脱皮するはずで
す。そしてそのとき、あなたは、真の親の喜びを感ずるはずです。それが、私がここでいう、「子
どもを信じきった」「子どもを守りきった」「子どもを愛しきった」という喜びです。

 あとのことは、子どもに任せましょう。そういう親の心を土台にして、どう生きていくかは、もう
親の関知することではないのです。ただ、今、ここであなたが、自分を変えれば、あなたの子ど
もは、今度、自分が親になったとき、今のあなたが感じているような苦しみや悩みは、覚えなく
てもすむだろうということです。

 もうあんな愚劣な、苦しみは、たくさん。コリゴリ。もちろんだからといって、私は、今の制度を
否定しているのではありません。勉強(学問)を否定しているのではありません。しかし考えよう
によっては、もっと別の方法があるのではないかということ。少なくとも、親子の絆(きずな)を、
こなごなにしてまでする価値は、ないということです。もしそれがわからなければ、今のあなた
と、あなたの両親の関係を、冷静に見つめてみることです。

 きついことを書きましたが、何かの参考になればうれしいです。またこのマガジンを、あちこち
に紹介してくださっているとか。ありがとうございます。ご恩は決して忘れません。また何かあれ
ば、ご連絡ください。
(031205)









 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【7】

●親子の葛藤

●読者(福岡県在住)の方からの投稿より、つぎのようなメールをいただきました。掲載の許可
がいただけましたので、紹介します。

+++++++++++++++++++

はやし様へ

最初に貴殿のホームページを拝見し、その後、いろいろアドバイスいただき、ありがとうござい
ました。私自身、色々と不安定な状態だったこともあって、お礼が、遅くなりました。

最近、やっと落ち着いた状態になれたことから、「お礼」申しあげます。

最初に御挨拶のメールをお送りしたのは、たしか今年の、10月初めごろだったと思います。

貴殿のホームページに出会ったのは、その1ケ月ほど前でした。
その頃、私はかなり追い詰められた状態でした。子供との関係についてで、悩んでいました。

自分でもその原因がわからず、ただ、「いらいら」した毎日を過ごし、「空回り」を繰り返しており
ました。

子供の教育には、人一倍、熱心だと自負し、とくに「しつけ」には厳しかったです。

子どもはは、7歳の息子と、3歳の娘の、2人です。「かたづけ」や「言葉使い」など、かなりきび
しく接していたと思います。

私が子供時代、金銭的にも愛情的にかなり苦しんだこともあって、息子や娘たちは、「十分な
余裕をもたせてやりたい、将来きちっとした人間にさせたい。」と気負っていました。

ただ、息子は、「がんこ」な性格で時として反抗的な態度を取ることがあり、私も感情的に手を
あげていました。

そんな繰り返しがどんどん増え、徐々にエスカレートしていくことに自分でも「あせり」と「不安」を
感じる日々でした。

「なぜ、なぜなんだ。こんなに息子や娘の幸せな成長を望んでいるのに。俺のような苦しい子
供時代は、させないようにがんばっているのに。」

もう、おわかりですよね。

そうです。原因は、私自身にありました。
私の子供時代は、幸せではありませんでした。
幼少の頃から両親は、不仲。喧嘩ばかり見せられました。母は、父親の「悪口」ばかり。

「お前たちさえ、いなければとっくに離婚している。」といつも聞かされました。

父親も酒好きでお金にルーズな人だったので金銭的にも、精神的にもかなり「貧しい」家庭でし
た。

父親の悪口を言う時の母は、いやでしたが、私たち(私と姉)の面倒を見てくれるのは母であ
り、母の味方につくしかなく、結果として父親を嫌うしかなかった。

夜遅くに父親が帰宅、まもなく喧嘩が始まる。酔った父が母に暴力を振るったらどうしようかと
びくびくしながら、布団の中で息を殺していた。

なんとかしたいが、なんの力もない子供の自分にはどうにもできない。父親が帰らない夜は「ほ
っ」とする。

そんな日々でした。

こどもにとって親は、絶対的な存在であるはずです。絶対的な「愛情」の。だから、時として叱ら
れ、たとえ殴られてもその存在感は変わらない。

10歳のこどもが親を嫌いになれるはずはない。でも私は父親を嫌いました。無理やりにそう自
分の心を曲げたのだと思います。

ただ、ただ、逃げたい。そんな毎日だったと思います。だからわたしは、結婚しても決して「こど
も」を望まなかったが、強く望む家内に押し切られるようにして父親になりました。

でも不思議なもので、息子が生まれ、病院で初めて彼を抱いた瞬間、身体に電気が流れるよ
うな感覚を感じ、すばらしい「充実感」に包まれました。

今、思い出しても「最高」の気分でした。「俺も父親になれた。この子には、生まれてきてよかっ
たと思えるようにしてやる。絶対に俺のような辛い思いはさせない。」 

そう心に誓ったことを覚えています。

その「気負い」だけが、「ずれた」方向に突っ走ってしまったようです。
反抗され、感情的に息子を殴っていた頃の私は、「なぜだ。なぜ判らない。俺の子供のころの
ような苦労をさせないために、お前たちのために必死でがんばっているのに、なぜわからな
い。」

そう、泣きながら殴り続けていたと思います。「いけない。このままでは、いけない。」と思いなが
ら。

気がつけば、子供達と接することが怖くなり、また「おっくう」に感じだし、休みの日は、用事が
あると言っては、こどもから逃げて一人で出かけるようになっていました。

そんな時、先生の「ホームページ」に出会いました。

私自身が原因であること。私の「生い立ち」が傷となり、同じことが繰り返されつつあることに気
づきました。と、同時に背筋が寒くなりました。心底、怖かったです。

同じ「不幸」を繰り返さないために、息子や娘が「生まれてきて良かった。」と思えるように、私
がまずすべきことは、自分を変えることです。リセットすることです。

自分を「変える」ことは、難しいことですね。約3ヶ月、かなり苦労しましたが、なんとか「まし」に
なったようです。事あるごとに、息子が生まれ、初めて抱いた時のことを思い出す様にしていま
す。

「指の数を数え、泣き声を聞き、その体温を感じ、五体満足に生まれてくれたことを喜んだ。」、
その瞬間を。

最近は、息子や娘に手をあげることも、怒鳴ることもなくなりました。時として彼らがすねて、反
抗した時も抱き寄せ、言い聞かせることができています。そうすると、決まって「こめんなさい」と
言ってくれます。まるで魔法のように。。。

休みの日は、必ず二人の手をひいて、公園に遊びに行きます。いっしょに過ごす時間が増える
ほど、今まで見えていなかった(見ようとしていなかった)ものが見えるようになりました。

「これ以上、何をこの子達に望むつもりだ。」と思えます。
先日、息子が「パパと公園に来るのは楽しい。」と言ってくれました。たったそれだけの言葉で
すが、涙が出そうになりました。初めて聞いた言葉でした。

情けない最低の父親でした。

間に合ったのでしょうか? 間に合ったと信じたいです。
これからも努力します。息子や娘の中に「もう一人の私」を育てないために。

長々と書いてしまいましたが、救って頂いた「感謝」とお受け取り下さい。
以前、「中傷や批判も多いし、メルマガなんか止めてしまおうと思うこともある。」と書かれてい
ましたね。

大変な活動をしかも無償でやっておられる苦労には、頭が下がります。くだらない中傷や批判
など、無視すべきでしょう。そもそもホームページやメルマガというものは、「情報源」であり、受
け側が自分のフィルタを通して受け取るべき性質のものです。

必要ない情報、賛成できない内容は、読み飛ばせば良いのです。

それをわざわざ批判するような人間は、「単なる自意識過剰な暇人」でしょう。

可能な限り、続けてください。「救われるべき人、気づくべき人」が必ずいるはずです。
少なくとも私は、救われた。

人一倍、子育てに熱心な親。自分の生い立ちに多少なりとも「傷」を持っているからこそ、そう
なる人。

実は、そんな人が一番、危険なのでしょう。皮肉なことですが。そんな方々をこれからも救って
あげて下さい。

今後のさらなる活躍を心からお祈り致します。

                     福岡県T市、DT(父親、三九歳)

+++++++++++++++++++++++

【DTさんへ】

 自分を知るということは、本当に、むずかしいですね。私も、自分の姿が、おぼろげながらわ
かり始めたのは、四五歳を過ぎてからではなかったかと思います。「私のことは、私が一番、よ
く知っている」と、思っていました。……思いこんでいました。

 そして私自身の「欠陥(けっかん)」が、実は、乳幼児期につくられたものであることに気づい
たのは、そのあとのことです。

 私たちの中には、(私であって、私である)部分と、(私であって、私でない)部分とがありま
す。その(私であって、わたしでない)部分は、実は、その人の乳幼児期につくられるのです
ね。しかも私の中には、その(私であって、私でない)部分のほうが、はるかに大きいのです。

 どの人も、(私は私だ)と思いこんで、(私であって、私でない)部分に、動かされているだけな
のですね。よい例が、性欲です。

 フロイトは、人間のすべての行動力の原点になっているエネルギー(=リピドー)は、(性的エ
ネルギー)だと言っています。いろいろな反論もあるようですが、たしかにそういう部分は、あり
ますね。そのことは、女性たちが化粧する姿を見ていると、よくわかります。

 先日も、ローカル線に乗っていたら、反対側に座っていた若い女性が、人目もはばからず、
懸命に、化粧をしていました。ああいう姿を見ると、「ああこの女性も、(私であって、私でない)
部分に、動かされているんだな」と。

 わかりやすく言うと、(私であって、私でない)部分が、大きな土台で、(私であって、私である)
部分というのは、その上に咲いた、小さな花のようなものかもしれません。私たちは、何かにつ
けて、(私であって、私でない)部分に振りまわされているだけ?、ということになります。

 子育ても、まさに、そのとおり。

 いちいち頭の中で考えながら、子育てをしている人は、まず、いません。「頭の中では、わか
っているのですが、いざ、その場になると……」というのが、たいていの親たちの、偽らざる感
想です。

 もっとはっきり言えば、子育てというのは、条件反射のかたまりのようなものかもしれません。
いつも、(私であって、私でない)部分が、勝手に、反応してしまいます。もう少し深刻な例では、
子どもを愛せない母親たちです。

 公式の調査でも、そういう母親は、約七%はいるということですが、このことは、幼児を調べ
てみても、わかります。

 それとなく幼児(年中児、年長児)のそばに、ぬいぐるみを置いてあげるのですが、「かわいイ
〜」とか何とか言って、プラスの反応を示す子どもは、約八〇%。残りの二〇%の子どもは、反
応を示さないばかりか、中には、足で、キックする子どもさえいます。

 すでにこの時期、母性愛(父性愛)は、ほぼ、完成されているのですね。

 では、その原因は何かとさぐっていくと、ここでいう乳幼児期にあるということがわかってきま
す。この時期、両親の愛に、たっぷりと恵まれ、不安や心配のない環境の中で育てられた子ど
もは、自然と、母性愛(父性愛)を身につけ、そうでない子どもは、そうでないということです。

 ……と考えていくと、いつも、「では、私自身はどうか?」という問題にぶつかります。幼児教
育のおもしろさは、ここにありますが、その話は、また別の機会にするとして、「では、私自身
は、どうなのか?」と。

 ここで重要なことは、(子どもを愛することができる)親も、(子どもを愛することができない)親
も、それはその人自身が、自分でそうなったというよりは、生まれ育った環境の中で、そのよう
に、つくられたということです。

 私も、結構、不幸な家庭で育っています。まったく育児をしない父親。反面、私を溺愛した母
親。そんな私が、かろうじて(?)、自分でありつづけることができたのは、祖父母が同居してい
たからに、ほかなりません。加えて、戦後直後の混乱期。今の常識から考えれば、もう、めち
ゃ、めちゃな時代でした。

 いつしか私は、(私であって、私でない)部分さがしを、始めるようになりました。

 恐怖症的体質は、どうして、そうなったのか。
 分離不安的体質は、どうして、そうなったのか。
 なぜ、私は興奮性が強いのか。

 子育てについても、どうして私の子育てのし方は、ぎこちないのか、などなど。

 ……こうして考えていくと、実は、(私であって私である)部分というのは、ほとんど、ないことに
気づきました。「ない」というより、私は、(私であって私でない)部分を、「私」と思いこんでいた
だけと、思い知らされました。

 これもよい例ですが、ときどき町の中を歩いていると、車の中から、通りを歩く女性を、ギラギ
ラとした目つきで、見つめている若い男たちを、見かけます。ナンパしようとしているのですね。
ときどき、ヒワイな笑みを浮かべあって、たがいにニヤニヤしあっています。

 そういうとき、その男たちは、自分では、自分の意思でそうしていると思っているかもしれませ
んが、やはり、性欲という、(私であって私でない)部分に、動かされているだけということになり
ます。「動かされている」というより、「操られている」と言ったほうが、正確かもしれません。

 そう、まさに操られているわけですが、子育ての世界にも、たとえば、「虐待」というのがありま
す。

 虐待する親に会って、話を聞いたりすると、そういう親たちも、自分の意思ではどうにもならな
い部分で、操られているのがわかります。虐待する親にしても、いつもいつも、虐待しているわ
けではないのですね。あるときの、ある瞬間に、突発的に、カーッとなって、虐待してしまうので
す。自分の意思ではないものに操られて、です。

 ……またまた話が脱線しそうになったので、この話も、ここまでにしておきます。

 しかしDTさんへ、いろいろな問題があるにせよ、こうした(私であって私でない)部分が引きお
こす問題は、それに気づくだけで、ほぼ解決したとみます。あとは時間が解決してくれます。

 問題は、そうした問題があることではなく、そうした問題があることに気がつかないで、それに
引きずりまわされることです。そして同じ失敗を、繰りかえす……。DTさんも、幸いなことに、
今、それに気づき始めています。私は、それを、率直に、喜んでいます。

 で、あえて、一言、アドバイスさせてもらうなら、「居なおりなさい」ということ。

 「いい親でいよう」とか、「いい家庭をつくろう」とか、そういうふうに、考えてはいけません。自
分が不完全であることを認めた上で、「私は、私だ!」「不完全で、どうしようもない私だが、私
は、私だ!」と居なおるのです。DTさんだけではない。みんな、十字架の一つや二つ、あるい
は三つや四つは、背負っています。そしてみんな、ボロボロの心を、懸命に修復しながら、がん
ばって生きています。

 不完全であることを、恥じることはないし、そういう自分を、失格者だと思うことも、ないので
す。しかたないでしょう。それが人間ですから……。

 ほとんど役にたたない、長い返事になってしまいましたが、メール、ありがとうございました。
むしろ私のほうが、勇気づけられ、励まされました。ありがとうございました。これからも、よろし
くお願いします。

 なお、抗議というわけではありませんが、昨日、実に愉快な(失礼!)FAXをもらいました。そ
れについては、別の原稿で、書いてみます。ときどき、こういうことがあるから、人生は、おもし
ろいですね。
(031210)









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【8】

●虐待

【三重県S市のHSさんより、虐待の相談がありました。】

 母親のうち、約五〇%が、子どもに、体罰を加えている。そしてそのうち、七〇%が、かなり
はげしい、体罰を加えている。計算してみると、約三分の一の母親が、はげしい体罰を加えて
いることになる※。(虐待といっても、暴力的な体罰だけが、虐待ではない。)

 この中でも、とくにはげしい体罰を、虐待という。が、虐待パパであるにせよ、虐待ママである
にせよ、いつもいつも、子どもを虐待しているわけではない。ある一定の周期性がある。

虐待期……ささいなことや、ちょっとしたきっかけで、子どもにはげしい体罰を加える。

移行期……興奮がやがておさまり、それにかわって、子どもに対する、いとおしさが生まれる。

平静期……むしろ子どもへのサービスが、平均的な親よりも、濃厚となることが多い。子ども
の機嫌を必要以上にとったり、子どもに好かれようと、あれこれ努力をする。

油断期……「虐待してはいけない」という思いが強い間は、それがブレーキとして働く。しかしそ
の緊張感が、急速に薄れていく。

虐待期……ささいなことや、ちょっとしたきっかけで、子どもにはげしい体罰を加える。

 このタイプの親の虐待には、ギリギリの限界まで、まさに破滅的な暴力を繰りかえすという特
徴がある。「叱る」という範囲を超え、子どもの存在そのものを否定してしまう。バットで、長男
の顔を殴りつけていた母親(F市)の話を、聞いたことがある。

 この周期には、個人差がある。一週間単位の親もいれば、一か月単位、あるいはそれ以上
の親もいる。ただここにも書いたように、平静期には、むしろ「いい親」でいることが多い。

 一方、子どもの側にしても、虐待されながらも、親を慕う傾向が見られる。施設へ保護して
も、それでも、「ママ(パパ)のところにもどりたい」とか言う子どもは、多い。あるいは自分を虐
待する親に、献身的に尽くすという傾向も見られる。悲しい、子どもの心理である。

 こうした虐待を、子ども(夫や妻)に対して繰りかえすときは、自分自身の中の、「わだかまり
(固着)」を疑ってみる。あるいは、自分自身も、子どものころ、そうした暴力行為を、日常的に
経験していた可能性も高い。

 そのわだかまりが、何であるかをまず、知る。望まない結婚であったとか、望まない子どもで
あったとか、など。経済的困苦や、妊娠や出産に対する不安や、心配が、わだかまりになるこ
ともある。

 ある母親は、子ども(中一男子)に、はげしい体罰を加えていた。ときに、瀬戸物の花瓶を投
げつけることもあったという。その理由について、その母親は、こう話した。

 「自分を捨てた男の横顔に、息子がそっくりだったから」と。その母親は、ある時期、ある男性
と同棲していたが、そのときできた子どもが、その中学一年生の男の子だった。

 こどもがを虐待する親を、一方的に悪いと決めてかかってはいけない。その親自身も、大き
なキズをもっている。それは社会的、環境的キズと言ってもよい。その親自身も、そのキズを、
どうしてよいのか、わからないでいる。

 もちろんあなたが、虐待ママやパパであるとしても、自分を責める必要はない。あなたはあな
ただ。しかしもし、あなたにほんの少しでも、勇気があるなら、冷静に、自分の過去をのぞいて
みるとよい。そしてあなたの心を、裏から操っている、わだかまりが何であるかを、さぐってみる
とよい。

 あとは、時間が、解決してくれる。

++++++++++++++++++++++

※……東京都精神医学総合研究所の妹尾栄一氏は、虐待の診断基準を作成し、虐待の度合
を数字で示している。

妹尾氏は、「食事を与えない」「ふろに入れたり、下着をかえたりしない」などの一七項目を作
成し、それぞれについて、「まったくない……〇点」「ときどきある……一点」「しばしばある……
二点」の三段階で親の回答を求め、虐待度を調べた。その結果、「虐待あり」が、有効回答(四
九四人)のうちの九%、「虐待傾向」が、三〇%、「虐待なし」が、六一%であった。この結果か
らみると、約四〇%弱の母親が、虐待もしくは虐待に近い行為をしているのがわかる。

 一方、自分の子どもを「気が合わない」と感じている母親は、七%。そしてその大半が何らか
の形で虐待していることもわかったという(同、総合研究所調査)。「愛情面で自分の母親との
きずなが弱かった母親ほど、虐待に走る傾向があり、虐待の世代連鎖もうかがえる」とも。
(031212)

++++++++++++++++

以前、こんな原稿を書きました。
(中日新聞発表済み)

++++++++++++++++

●虐待される子ども
                    
 ある日曜日の午後。一人の子ども(小五男児)が、幼稚園に駆け込んできた。富士市で幼稚
園の園長をしているI氏は、そのときの様子を、こう話してくれた。

「見ると、頭はボコボコ、顔中、あざだらけでした。泣くでもなし、体をワナワナと震わせていまし
た」と。虐待である。逃げるといっても、ほかに適当な場所を思いつかなかったのだろう。その
子どもは、昔、通ったことのある、その幼稚園へ逃げてきた。

 カナーという学者は、虐待を次のように定義している。

@過度の敵意と冷淡、
A完ぺき主義、
B代償的過保護。

ここでいう代償的過保護というのは、愛情に根ざした本来の過保護ではなく、子どもを自分の
支配下において、思い通りにしたいという、親のエゴに基づいた過保護をいう。その結果子ども
は、

@愛情飢餓(愛情に飢えた状態)、
A強迫傾向(いつも何かに強迫されているかのように、おびえる)、
B情緒的未成熟(感情のコントロールができない)などの症状を示し、さまざまな問題行動を起
こすようになる。

 I氏はこう話してくれた。「その子どもは、双子で生まれたうちの一人。もう一人は女の子でし
た。母子家庭で、母親はその息子だけを、ことのほか嫌っていたようでした」と。私が「母と子の
間に、大きなわだかまりがあったのでしょうね」と問いかけると、「多分その男の子が、離婚した
夫と、顔や様子がそっくりだったからではないでしょうか」と。

 親が子どもを虐待する理由として、ホルネイという学者は、

@親自身が障害をもっている。
A子どもが親の重荷になっている。
B子どもが親にとって、失望の種になっている。
C親が情緒的に未成熟で、子どもが問題を解決するための手段になっている、の四つをあげ
ている。

それはともかくも、虐待というときは、その程度が体罰の範囲を超えていることをいう。I氏のケ
ースでも、母親はバットで、息子の頭を殴りつけていた。わかりやすく言えば、殺す寸前までの
ことをする。そして当然のことながら、子どもは、体のみならず、心にも深いキズを負う。学習
中、一人ニヤニヤ笑い続けていた女の子(小二)。夜な夜な、動物のようなうめき声をあげて、
近所を走り回っていた女の子(小三)などがいた。

 問題をどう解決するかということよりも、こういうケースでは、親子を分離させたほうがよい。
教育委員会の指導で保護施設に入れるという方法もあるが、実際にはそうは簡単ではない。

父親と子どもを半ば強制的に分離したため、父親に、「お前を一生かかっても、殺してやる」と
脅されている学校の先生もいる。あるいはせっかく分離しても、母親が優柔不断で、暴力を振
るう父親と、別れたりよりを戻したりを繰り返しているケースもある。

 結論を言えば、たとえ親子の間のできごととはいえ、一方的な暴力は、犯罪であるという認識
を、社会がもつべきである。そしてそういう前提で、教育機関も警察も動く。いつか私はこのコ
ラムの中で、「内政不干渉の原則」を書いたが、この問題だけは別。子どもが虐待されている
のを見たら、近くの児童相談所へ通報したらよい。

「警察……」という方法もあるが、「どうしても大げさになってしまうため、児童相談所のほうがよ
いでしょう。そのほうが適切に対処してくれます」(S小学校N校長)とのこと。









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【9】

●育児ノイローゼ

●被害妄想

 育児ノイローゼから、子どもの受験ノイローゼ。母親たちが、陥りやすい「うつ病?」の一種
に、こうしたノイローゼがある。

 子どもが選別されるという恐怖。子どもの将来への不安や心配。そういうものが、混然一体と
なって、母親たちの心をゆがめる。

 しかしたいていの人は、この段階で、自分がおかしいと気がつく。こういうのを「病識」という。
が、中には、その病識がない人がいる。

 夫が、妻の異変に気づき、夫が、妻に、「病院へ行ってみたら」と勧めるのだが、妻が、がん
として、それを拒否したりする。「私は、何ともない!」と。

 「こうした病識のない人が一番、困る」と、いつか、かかりつけの内科医(ドクター)が、そう言
っていたのを、覚えている。つまり、それだけ、脳の中枢部が変調していることになる。

 こうしたノイローゼになるのは、その母親の勝手だが、そういった母親が、「自分は、まとも」と
いう前提で、周囲の人たちを巻きこんで、騒ぐことがある。その中でも、周囲の人たちが、もっ
とも迷惑するのが、被害妄想。

 私も、もともと、うつ気質の人間だから、その被害妄想というのが、どういうものか、よく知って
いる。

 まず、ささいなことが気になる。そして一度、気になると、それが、心のカベにペタッと張りつ
く。そして一度、張りつくと、そのことばかり、気になる。

 私のばあい、たいていこの段階で、ワイフに相談する。「今のぼくは、おかしいか?」と。する
と、ワイフは、「おかしい」と答えてくれる。そこで私は、自分の心に、ブレーキをかける。

 ここで注意しなければならないことは、一度、気になり始めると、それがあらゆる方向に、飛
び火しやすいということ。「あれも、ダメだ」「これも、ダメだ」と考えやすくなる。つまり妄想が、生
まれる。この妄想が、こわい。

 で、さらに私のばあい、一度、こういう状態になったら、そのことについては、結論を出さない
ようにする。つまり、塩漬けにする。そしてできるだけ、その問題からは、遠ざかる。

 が、母親たちにとっては、そうではない。子育ては、毎日のことであり、それから逃れることが
できない。しかも問題は、好むと、好まざるとにかかわらず、向こうから、つぎからつぎへと、や
ってくる。

 Kさん(四三歳、母親)は、このところ、マンションの階下の人が出す騒音が気になってしかた
ないという。料理をする音。人が歩く音。音楽を聞く音など。夫は、床に耳をあてなければ聞こ
えないような音だというが、Kさんには、それが聞こえるという。

 が、この段階で、ふつうの人は、(「ふつう」という言い方には、問題があるが……)、その瞬
間には、そう思うことはあっても、その問題は、すぐ忘れる。しかしノイローゼ気味の人は、そう
でない。

 「最近、うちの子の成績がさがってきたのは、階下の人が出す、騒音が原因にちがいない」
「私が不眠になったのは、階下の人の家の冷蔵庫のモーターが発する、低周波振動によるも
のだ」と。

 こうしてとりとめのない、妄想の世界に入っていく。

 この段階でも、病識のある人は、自分のほうがおかしいと気づき、行動にブレーキをかける。
しかし、その病識がないと、今度は、新たな行動に出る。階下の人のところへ行き、「息子が、
うるさくて勉強できないと言っています。もっと、静かに歩いてください!」と。

 もっともそういうふうに、直接、声を出していく人は、まだ性質(たち)がよいほう。中には、階
下の人に対して、執拗ないやがらせを始める人がいる。真夜中に無言電話をかけてみたり、
玄関先に、ゴミをまき散らしてみるなど。

 こうなると、もう育児ノイローゼとか、受験ノイローゼという範囲を超えてしまう。

 以前、育児ノイローゼについて書いた原稿(中日新聞発表済み)があるので、それを添付す
る。

++++++++++++++++++++

母親が育児ノイローゼになるとき

●頭の中で数字が乱舞した    

 それはささいな事故で始まった。まず、バスを乗り過ごしてしまった。保育園へ上の子ども(四
歳児)を連れていくとちゅうのできごとだった。

次に風呂にお湯を入れていたときのことだった。気がついてみると、バスタブから湯がザーザ
ーとあふれていた。しかも熱湯。すんでのところで、下の子ども(二歳児)が、大やけどを負うと
ころだった。

次に店にやってきた客へのつり銭をまちがえた。何度レジをたたいても、指がうまく動かなかっ
た。あせればあせるほど、頭の中で数字が勝手に乱舞し、わけがわからなくなってしまった。

●「どうしたらいいでしょうか」

 Aさん(母親、三六歳)は、育児ノイローゼになっていた。もし病院で診察を受けたら、うつ病と
診断されたかもしれない。しかしAさんは病院へは行かなかった。子どもを保育園へ預けたあ
と、昼間は一番奥の部屋で、カーテンをしめたまま、引きこもるようになった。食事の用意は何
とかしたが、そういう状態では、満足な料理はできなかった。

そういうAさんを、夫は「だらしない」とか、「お前は、なまけ病だ」とか言って責めた。昔からの
米屋だったが、店の経営はAさんに任せ、夫は、宅配便会社で夜勤の仕事をしていた。

 そのAさん。私に会うと、いきなり快活な声で話しかけてきた。「先生、先日は通りで会ったの
に、あいさつもしなくてごめんなさい」と。私には思い当たることがなかったので、「ハア……、別
に気にしませんでした」と言ったが、今度は態度を一変させて、さめざめと泣き始めた。そして
こう言った。

「先生、私、疲れました。子育てを続ける自信がありません。どうしたらいいでしょうか」と。冒頭
に書いた話は、そのときAさんが話してくれたことである。

●育児ノイローゼ

 育児ノイローゼの特徴としては、次のようなものがある。
@生気感情(ハツラツとした感情)の沈滞、
A思考障害(頭が働かない、思考がまとまらない、迷う、堂々巡りばかりする、記憶力の低
下)、
B精神障害(感情の鈍化、楽しみや喜びなどの欠如、悲観的になる、趣味や興味の喪失、日
常活動への興味の喪失)、
C睡眠障害(早朝覚醒に不眠)など。さらにその状態が進むと、Aさんのように、
D風呂に熱湯を入れても、それに気づかなかったり(注意力欠陥障害)、
Eムダ買いや目的のない外出を繰り返す(行為障害)、
Fささいなことで極度の不安状態になる(不安障害)、
G同じようにささいなことで激怒したり、子どもを虐待するなど感情のコントロールができなくな
る(感情障害)、
H他人との接触を嫌う(回避性障害)、
I過食や拒食(摂食障害)を起こしたりするようになる。
Jまた必要以上に自分を責めたり、罪悪感をもつこともある(妄想性)。こうした兆候が見られ
たら、黄信号ととらえる。育児ノイローゼが、悲惨な事件につながることも珍しくない。子どもが
間にからんでいるため、子どもが犠牲になることも多い。

●夫の理解と協力が不可欠

 ただこうした症状が母親に表れても、母親本人がそれに気づくということは、ほとんどない。
脳の中枢部分が変調をきたすため、本人はそういう状態になりながらも、「私はふつう」と思い
込む。あるいは症状を指摘したりすると、かえってそのことを苦にして、症状が重くなってしまっ
たり、さらにひどくなると、冷静な会話そのものができなくなってしまうこともある。

Aさんのケースでも、私は慰め役に回るだけで、それ以上、何も話すことができなかった。

 そこで重要なのが、まわりにいる人、なかんずく夫の理解と協力ということになる。Aさんも、
子育てはすべてAさんに任され、夫は育児にはまったくと言ってよいほど、無関心であった。そ
れではいけない。子育ては重労働だ。私は、Aさんの夫に手紙を書くことにした。この原稿は、
そのときの手紙をまとめたものである。

++++++++++++++++++++

 育児ノイローゼであるにせよ、子どもの受験ノイローゼであるにせよ、大切なことは、自分が
そうであることに、自分で気がつくこと。気がつけば、問題のほとんどは、解決したとみてよい。

 この世の中、自分、一人が生きていくだけでも、本当に、たいへん。わずらわしいことが、多
すぎる。その上、子どもの心配、仕事や健康の心配。日本や世界の心配。心が、かなりタフな
人でも、そのつど、そういったウズに巻きこまれてしまう。

 仮にあなたが、育児ノイローゼや、受験ノイローゼになったとしても、何も、恥ずべきことでは
ない。まじめな親、懸命に子育てをしている親ほど、そうなる。ただ、とても残念なことだが、そ
ういう人ほど、たとえばこうした私の文章を読まない。つまり言いかえると、今、こうして私の文
章を読んでいる「あなた」は、まず、心配ないということ。

 どうか、ご安心ください。
(031212)








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【10】

●子どもの神経症

●子どもの神経症(心身症)

【長野県にお住まいのSSさんより】

はやし先生はじめまして 四月に入学を控えている6才と1才(ともに12月生ま
れ)の男児をもつ、N市(長野県)の、SSと申します。

長男のことで悩んでおります。ネットで色々検索し、先生のHPにたどり着きました。
これまでモヤモヤと長男についておかしいと思っていた事が神経症の症状にすべてあ
てはまり、また自分にも心あたりがあります。

神経症の診断をしてみたところA24、B12と高得点でした。

(A24というのは、現在、思い当たる症状の合計点。それが24点ということ。またB12というの
は、過去にそういう症状があったという症状の合計点。それが12点ということ。平均はそれぞ
れ3〜5点。24点というのは、異常な高得点と考えてよい。障害が現れる一歩手前の状態と考
えてよい。診断テストを希望の方は、はやし浩司のサイト→トップページ→ビデオでごあいさつ
→資料庫へ。はやし浩司、注)

今のところ一番ひどいのは、手洗いと臭いかぎの潔癖症と疑惑症、靴下をつねに上にひっぱ
っている症状です。一緒にいるとガマンしきれずとがめてしまいます。

以前はやたらと手を洗っていたのですが、近頃はかなり儀式化しており、たとえば入
浴後パジャマを着終わると手を洗う、決まった取っ手を触ったら洗うなどです。

今夜も、「お風呂に入ってきれいになって、きれいなパジャマを着たんだから手を洗わな
くても大丈夫だよ」と言うと「僕はオチンコを触ったら絶対に手を洗いたいんだ」
「あと、ちょっとでも汚い物を触った時も手を洗いたいんだ」と言いました。

この子の神経症の原因はやはり家庭にあると思います。初めての育児で私はかなり気
負い型の育児をしてきました。

結婚したと同時に夫の両親と同居しています。初孫とあって育児にも何かと口を出さ
れ、よくイライラしていました。

その事で夫ともよく衝突し、息子が2歳になる頃に義父が亡くなりました。一家の中
心だった義父が亡くなり家の中は一気に険悪めちゃくちゃになり

私は孤立しました。息子が3歳になった頃、半年間は完全に家庭内別居でした。
離婚も真剣に考え、決心した所で夫と歩み寄る事ができ少しずつ関係修復に努めてき
ました。

しかし、その間は私の情緒が乱れに乱れ、間近にいた長男は相当傷ついていると思い
ます。
親の修羅場を見せてしまった罪悪感は今も消えずずっとその事が気がかりでした。

夫とはお互い努力を重ねて関係修復し、長男が年中になった春、ちょうど2年前に次
男を妊娠しました。

妊娠初期から切迫流産の危機で入院、長男は実家に預けました。
退院後もつわりがひどく、次は早産の危険もあるハイリスク妊婦のため
安静生活をよぎなくされました。ずっと抱っこもしてあげられず、息子はけなげに耐
え気遣ってくれていました。相当のストレスだったと思います。

その頃はつめ噛みと小さい頃気に入っていた、しまじろうの人形をまたひっぱり出して
きて肌身離さず持っていました。

妊娠後期、少しずつ動けるようになり息子との時間を持てるようになりました。検診
について行きたがったので、幼稚園を休ませ、のんびりバスにゆられて(普段は車生
活です)、のんびり過ごしました。私が動けるようになると同時に情緒も安定するのが
よくわかりました。

そして5歳の誕生日の4日後に次男誕生。一緒に妊娠生活を乗り越えてくれた長男は
当然のように出産にも立ち会いました。しかし、難産で私が苦しむ姿(痛い、死にそ
うーと叫んだ)を見てかなりのショックを受けたようで、それ以後、不安症が出てきま
した。

そして出産したとたん、それまでいい子にしていたガマンが爆発するかのように赤ち
ゃん返り。半年間は長男優先で育児をしてきたつもりです。

そして、今回の症状が出始めた昨年夏ごろ、次男が動くようになり後回しにはいかな
くなりました。と同時に次男のベビーベッドをやめ息子二人と三人で寝るようになり
ました。が、これが次男真ん中で私と長男は離れる形態になってしまったのです。長
男は夫と就寝ですが夜中目覚めると私と次男の間にねじ入ってきました。

秋から冬にかけ手洗いの症状はエスカレートしました。幼稚園に相談すると、とくに
園生活に問題はなく少しトイレが近いかな、との事でした。スキンシップを大切にと
のアドバイスを受けましたが、私を含め皆であの手この手で手洗いを阻止しようとそち
らへ意識が向いてしまっていました。

手洗い意外にもいじけ、すねるのもひどく何か叱るだけで、「ママ僕の事きらいなん
だ、MMちゃん(弟)の方が大事なんだ」と、毎日毎日何回もネチネチと言い続けてき
ました。その都度「そんな事ないよ。二人とも大事だよ」と返して来ましたがあまりの
しつこさに「こんなに大事って言うのにどうしてそんなにわからないの!」と怒鳴っ
てしまった事も数回あります。

振り返ると、長男にずっといいお兄ちゃんを求めてしまっていました。嫌がるのにお
もちゃを貸すように強要しました。手洗いなどの潔癖は弟がおもちゃをなめて汚すよ
うになってから出てきました。

「どうしてそんなに手を洗うの?」と聞くと「僕は汚れた手でおもちゃを触っておも
ちゃが汚れるのがいやなんだ」と言いました。私への悪態も日に日にひどくなってい
ます。

先生のHPを知り、著書も読ませていただきました。

スキンシップは心がけていましたが、やはり要所要所で足りなかったようです。ベッド
のレイアウトも変え、私が真ん中で長男次男と川の字で寝るようになると、体は授乳で
次男側を向いていても嬉しそうに、私の背中へ寄り添ってきます。次男が遊びに夢中に
なっている時に長男においでと呼ぶと、これまた嬉しそうに膝の上に座って甘えます。

寝る前の絵本や長男の小さい頃の思い出話もとても喜びます。

一番驚いたのは「TGちゃん(長男)が一番大事だよ。ママは大好きだよ。」と、初
めて'一番好きだよ'と言ったとたんに、口癖だった「ママは僕の事が嫌い」という
イジケがなくなったのです。

そして、可愛がっていた次男を拒絶するようになりました。帰宅拒否でしょうか?
のんびりマイペースで遊べる義母の居間に入り浸っています。

もっと早く先生の育児論を知っていたら、ここまでひどい症状には至らなかったと思っ
ています。

私は今のままスキンシップを心がけていけば大丈夫でしょうか?  手洗いは好きにさせ
ていいのですか? 思いこんでいることに対し、洗う必要がないよと言わなくていいです
か?

今、長男をここまでしてしまった罪悪感でかなり自信がなくなっています。こんな小
さいうちに神経症を発してしまい、将来が不安でたまりません。治る事にこだわって
いけないと頭で思っても心がついていきません。心配で不安で長男が卒園し、春休み
になった今、苦しくてプレッシャーでつぶれそうです。

先生、お忙しい中あつかましいですが、どうかアドバイスお願いします

+++++++++++++++++++++

【SSさんへ】

 神経症の診断結果は、高得点ですね。平均は、Aが5点、Bが3点です。20点以上というと、
かなりいろいろな症状が出ていると同時に、精神的にも、大きなダメージを受けていると思いま
す。

 まず第一に、早く気づかれてよかったということ。「遅すぎた」というのではなく、「早くてよかっ
た」ということです。5〜6歳という年齢は、まだじゅうぶん、修復が可能な年齢ということです。

青年期に、こうした症状が出てくると、もろもろの障害(摂食障害、行為障害、不安障害、回避
性障害、妄想性、睡眠障害)へ、そのまま結びついていきます。精神障害になることもありま
す。

 で、順に、問題点を洗ってみます。

 TG君(長男)の心を不安定にしている最大の原因は、赤ちゃんがえりです。つぎに乳幼児期
の家庭騒動、家庭不安です。この時期、子どもは、絶対的な安心感の中で、心をはぐくみま
す。「絶対的」というのは、「疑いをいだかない」という意味です。

 しかしそれができなかった。TG君は、この先、何かにつけて、不安先行型の人生観をもつも
のと思われます。赤ちゃんがえりそのものは、症状的には消えていきますが、それが原因でゆ
がんだ心(ひがみやすい、いじけやすい、つっぱりやすいなど)は、これからも残っていきます。

 だからといって、SSさんの育児が失敗だったというのではありません。多かれ少なかれ、み
なそうだということです。問題のない家庭はないし、そのため、問題のない子どもは、いませ
ん。もっとはっきり言えば、この程度の問題なら、みんなもっているということ。

 どの家庭も、どの子どもも、外から見ると、みんなうまくいっているように見えますが、それは
あくまでも、「外見」。だから、今までは今までとして、これからは先だけを見て、前に進むことで
す。

 私がSSさんで、すばらしいと思うのは、まだお若いはずなのに、よくも、ここまでご自身のこと
を知っておられるということ。また子育てを、よくも、ここまで客観的に見ておられるということ。

 いろいろあったご様子ですが、SSさんは、その結果、かなり精神的に成長なさったと思いま
す。あなたの年齢で、ここまで自分をしっかりと見つめておられる方は、そんなにいません。そ
の点について、まず、自信をもつこと。

 ふつうは、それにさえ気づかないで、我流、独断、独善で、ますます子どもの心をゆがめてし
まうものです。

 気になっている点から、順に話していきます。

●疑惑症、潔癖症について……

 これらはあくまでも、「外に出た症状」です。インフルエンザで言えば、「熱」のようなものです。

 熱を冷ますために、水をかけてはいけないように、症状だけをみて、それを抑えようとしても、
うまくいきません。かえって症状をこじらせます。

 原因は、慢性的な欲求不満と、ストレスです。

 方法は、スキンシップに始まり、スキンシップに終わります。親側からベタベタする必要はあり
ません。『求めてきたときが、与えどき』と覚えておきます。子どもがそれとなく求めてきたら、そ
のときは、濃密に、子どもが満足するまで、ぐいと抱いてあげたりします。

 多少の抱き癖、依存性なども生まれますが、ここは無視してください。

 幸いにも、SSさんは、たいへん愛情豊かな方だと思われます。この世界では、『愛は万能』と
いいます。愛が基本的にあれば、子どもの心はゆがみません。しかし愛がないと、いくら体裁
をとりつくろっても、失敗します。

 コツは、『許して、忘れる』です。(私のHPのあちこちに、それについて書いてありますので、
またヒマなときに、お読みください。)

 こうした行為(手洗い、臭いかぎ)を、「悪」と決めてかかるのではなく、『暖かい無視』をしま
す。ときには、子どもの心になって、「あなたは、きれい好きなのね。お母さんも、手を洗うわ」
と、いっしょに洗ってみてください。

 まずいのは、子どもに罪悪感をもたせることです。扱い方をまちがえると、さらにやっかいな
神経症(心身症)を併発します。火遊び、不登校、動物虐待など。だから今は、「なおそう」と思
うのではなく、「これ以上、症状を悪化させない」ことだけを考えて対処してください。

●赤ちゃんがえり……

 赤ちゃんがえりについては、今の対処法でよいと思われます。弟さんには悪いですが、全幅
に、TG君に、愛情を注ぎなおします。年齢的にも、自己意識が芽生えてくるころですから、症
状が消えるまでに、それほど時間はかからないと思います。

 子どもは、小学3、4年生ごろから親離れを始めます。これから数年が、勝負ですね。勝負と
いうことは、濃密かつ良好な親子関係を取りもどす、最後のチャンスということです。

 また幼稚園では、先生が、「問題ない」とおっしゃったことですが、それだけTG君は、外の世
界では無理をしているのかもしれません。家の中では、その分、荒れたり、ぐずったりするかも
しれません。家の中では、ゆるめてあげてください。

とくに4月からは、小学校が始まりますので、神経質な育児姿勢は、禁物です。(慎重に子ども
の心を観察してみてください。無理強いはしてはいけませんよ。かなり不安定になっていますか
ら、妄想性が、対人恐怖症になり、それが原因で、学校恐怖症、さらには不登校へと進む可能
性は、ないとは言えません。)

 あくまでも子どもの心になって考えるということです。ときどきぐずったら、「そうね、だれだっ
て、ときどきは学校へ行きたくないときもあるわね」式の理解を示してあげてください。KG君に
は、とくに、それが必要です。

●子育てのプレッシャー……

 子どもというのは、不思議なもので、親が何かをしたから、育つものでも、また何もしなかった
から、育たないものでもありません。

 重要なことは、(子ども自身がもつ育つ力)を信ずることです。たしかにSSさんの育児姿勢
は、気負い先行型です。「いい親でいよう」「いい親はこういうものだ」「いい子どもを育てよう」
と、気負っておられる様子がよくわかります。

 さらに「私は親だ」「子どもの問題の責任は、すべて親にある」という、どこかN県独特の親意
識もあるようです。

 子ども自身のもつ力を、もっと信じなさい。それはちょうど、子どもが風邪をひいて寝ていると
きのようなものです。親は、子どもの風邪をなおすために、薬をのませたりしますが、本当に子
どもの風邪をなおすのは、子ども自身がもつ治癒力のようなものです。体力といっても、よいか
もしれません。

 私たちができることと言えば、せいぜい、その(子ども自身がもつ力)を、横から援助すること
でしかないのです。すべてを、あなた自身が、背負ってはいけません。

 (多分、そういう意味で、あなた自身も、あまり恵まれた家庭環境で育っていない可能性もあ
ります。とくにあなたの父親との関係を疑ってみてください。)

 いいですか、今のKG君の症状が、これから先、いつまでもつづくと考えるのは、正しくありま
せん。同時に、しかし失敗すれば、さらに二番底、三番底へと落ちていきます。今の症状がす
べてではないということです。

ですからここは、先に書いたように、「これ以上、症状を悪化させない」ことだけを考えて対処し
てください。しかもその様子は、半年単位でみます。「今日、改善したから、明日なおる」という
問題では、決してありません。

 このあと、いくつか、参考になりそうな原稿をいくつか張りつけておきます。参考にしてくだされ
ば、うれしいです。

 なお、いただきましたメールは、少し私のほうで改変し、小生発行の電子マガジンのほうで使
わせてください。もし都合の悪い点があれば、至急、お知らせください。改めます。同じような問
題をかかえておられる、ほかの母親たちのためにも、よろしくご協力くださいますよう、お願い
申しあげます。

+++++++++++++++++

●子どもの情緒不安

 子どもの発達をみるときは、次の四分野をみる。

情緒の安定度、精神の完成度、知能の発達度、それに運動能力。

そのうちの情緒の安定度は、体力的に疲れたと思われるときに観察して、判断する。

たとえば運動会や遠足から帰ってきたようなとき。そういうときでも、不安定症状(ぐずる、ふさ
ぎ込む、ピリピリする、イライラするなどの精神的動揺)がなければ、情緒の安定した子どもと
みる。

あるいは子どもは寝起きをみる。毎朝、不機嫌なら不機嫌でもよい。寝起きの様子が安定して
いれば、情緒の安定した子どもとみる。子どもは2〜3歳の第一反抗期、思春期の第二反抗
期に、特に動揺しやすいということがわかっている。

経験的には、乳幼児期から少年少女期への移行期(4〜5歳)、および小学2年から4年ぐらい
にかけても、不安定になることがわかっている。この時期を中間反抗期と呼ぶ人もいる。

 情緒が不安定な子どもは、心が絶えず緊張状態にあるのが知られている。外見にだまされ
てはいけない。柔和な笑みを浮かべながら、心はまったく別の方向を向いているということは、
よくある。

このタイプの子どもは、気を許さない、気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にす
る。よい子ぶることもある。そういう状態の中に、不安や心配が入り込むと、それを解消しよう
と一挙に緊張感が高まり、情緒が不安定になる。

症状としては、攻撃的、暴力的になるプラス型。周囲に溶け込めず、引きこもったり、怠学、不
登校を繰り返したりするマイナス型に分けて考える。

プラス型は、ささいなことでカッとなることが多い。さらに症状が進むと、集団的な非行行動をと
ったり、慢性的な下痢、腹痛、体の不調を訴えるようになったりする。

原因としては、乳幼児期の何らかの異常な体験が引き金になることが多い。たとえば親の放
任的態度、無教養で無責任な子育て、神経質な子育て、家庭騒動、家庭不和、恐怖体験な
ど。ある子ども(5歳男児)は、たった一度だが、祖父にはげしく叱られたのが原因で、自閉傾
向(親と心が通い合わない状態)を示すようになった。

また別の子ども(3歳男児)は、母親が入院している間、祖母に預けられたことが原因で、分離
不安(親の姿が見えないと混乱状態になる)になってしまった。

 子どもの情緒が不安定になると、親はその原因を外の世界に求めようとする。しかし原因の
第一は、家庭環境にあると考え、反省する。子どもの側から見て、息が抜けないような環境な
ど。子どもの心に負担になっているもの、心を束縛しているようなものがあれば、取り除く。

一番よい方法は、家庭の中に、誰にも干渉されないような場所と時間を用意すること。あれこ
れ親が気をつかうこと(過関心)は、かえって逆効果。

子どもが情緒不安症状を示したら、スキンシップを大切にし、温かい語りかけを大切にする。
叱ったり、冷たく突き放すのは、かえって子どもの情緒を不安定にする。

なお一般的には、情緒不安は、神経症(心身症)の原因となることが多い。たとえば、夜驚(や
きょう)、夢中遊行、かん黙、自閉、吃音(どもり)、髪いじり、指しゃぶり、チック症、爪かみ、物
かみ、疑惑症(臭いかぎ、手洗いぐせ)、かみつき、歯ぎしり、強迫傾向、潔癖症、嫌悪症、対
人恐怖症、虚言、収集癖、無関心、無感動、緩慢行動、夜尿症、頻尿症など。症状は千差万
別で、定型がない。

++++++++++++++++++++++

●子どもの神経症

 心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。脳の機
能が変調したために起こる症状と考えると、わかりやすい。

ふつう子どもの神経症は、精神面、身体面、行動面の三つの分野に分けて考える。そこであな
たの子どもをチェック。次の症状の中で思い当たる症状(太字)があれば、丸(○)をつけてみ
てほしい。

 精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる。高所恐怖症、
赤面恐怖症、閉所恐怖症、対人恐怖症など)、強迫症状(ささいなことを気にして、こわがる)、
不安症状(理由もなく思い悩む)、抑うつ症状(ふさぎ込んだり、落ち込んだりする)、不安発作
(心配なことがあると過剰に反応する)など。混乱してわけのわからないことを言ったり、グズグ
ズするタイプと、大声をあげて暴れるタイプに分けて考える。ほかに感情面での神経症として、
赤ちゃんがえり、幼児退行(しぐさが幼稚っぽくなる)、かんしゃく、拒否症、嫌悪症(動物嫌悪、
人物嫌悪など)、嫉妬、激怒などがある。

 身体面の神経症……夜驚症(夜中に突然暴れ、混乱状態になる)、夢中遊行(ねぼけてフラ
フラとさまよい歩く)、夜尿症、頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、遺尿(その意識がないまま尿もら
す)、睡眠障害(寝つかない、早朝起床、寝言、悪夢)、嘔吐、下痢、原因不明の慢性的な疾患
(発熱、ぜん息、頭痛、腹痛、便秘、ものもらい、眼病など)、貧乏ゆすり、口臭、脱毛症、じん
ましん、アレルギー、自家中毒(数日おきに嘔吐を繰り返す)、口乾、チックなど。指しゃぶり、
爪かみ、髪いじり、歯ぎしり、唇をなめる、つば吐き、ものいじり、ものをなめる、手洗いグセ
(潔癖症)、臭いかぎ(疑惑症)、緘黙、吃音(どもる)、あがり症、失語症、無表情、無感動、涙
もろい、ため息なども、これに含まれる。一般的には精神面での神経症に先だって、身体面で
の神経症が現われることが多い。

 行動面の神経症……神経症が行動面におよぶと、さまざまな不適応症状となって現われる。
不登校もその一つだが、その前の段階として、無気力、怠学、無関心、無感動、食欲不振、過
食、拒食、異食、小食、偏食、好き嫌い、引きこもり、拒食などが断続的に起こることが多い。
生活習慣が極端にだらしなくなることもある。忘れ物をしたり、乱れた服装で出歩いたりするな
ど。ほかに反抗、盗み、破壊的行為、残虐性、帰宅拒否、虚言、収集クセ、かみつき、緩慢行
動(のろい)、行動拒否、自慰、早熟、肛門刺激、異物挿入、火遊び、散らかし、いじわる、いじ
めなど。こうして書き出したら、キリがない。

要するに心と身体は、密接に関連しあっているということ。「うちの子どもは、どこかふつうでな
い」と感じたら、この神経症を疑ってみる。ただし一言。こうした症状が現われたからといって、
子どもを叱ってはいけない。叱っても意味がないばかりか、叱れば叱るほど、逆効果。神経症
は、ますますひどくなる。原因は、過関心、過干渉、過剰期待など、いろいろある。

 さて診断。丸の数が、10個以上……あなたの子どもの心はボロボロ。家庭環境を猛省する
必要がある。9〜5個……赤信号。子どもの心はかなりキズついている。4〜1個……注意信
号。見た目の症状が軽いからといって、油断してはならない。

++++++++++++++++++

●愛情は落差の問題

 下の子どもが生まれたりすると、よく下の子どもが赤ちゃんがえりを起こしたりする。(赤ちゃ
んがえりをマイナス型とするなら、下の子をいじめたり、下の子に乱暴するのをプラス型という
ことができる。)

本能的な嫉妬心が原因だが、本能の部分で行動するため、叱ったり説教しても意味がない。
叱れば叱るほど、子どもをますます悪い方向においやるので、注意する。

 こういうケースで、よく親は「上の子どもも、下の子どもも同じようにかわいがっています。どう
して上の子は不満なのでしょうか」と言う。親にしてみれば、フィフティフィフティ(50%50%)だ
から文句はないということになる。が、上の子どもにしてみれば、その「五〇%」というのが不満
なのだ。

つまり下の子どもが生まれるまでは、一〇〇%だった親の愛情が、五〇%に減ったことが問
題なのだ。もっとわかりやすく言えば、子どもにとって愛情の問題というのは、「量」ではなく「落
差」。それがわからなければ、あなたの夫(妻)が愛人をつくったことを考えてみればよい。あな
たの夫が愛人をつくり、あなたに「おまえも愛人も平等に愛している」とあなたに言ったとした
ら、あなたはそれに納得するだろうか。

 本来こういうことにならないために、下の子を妊娠したら、上の子どもを孤立させないように、
上の子教育を始める。わかりやすく言えば、上の子どもに、下の子どもが生まれてくるのを楽
しみにさせるような雰囲気づくりをする。

「もうすぐあなたの弟(妹)が生まれてくるわね」「あなたの新しい友だちよ」「いっしょに遊べるか
らいいね」と。まずいのはいきなり下の子どもが生まれたというような印象を、上の子どもに与
えること。そういう状態になると、子どもの心はゆがむ。ふつう、子ども(幼児)のばあい、嫉妬
心と闘争心はいじらないほうがよい。

 で、こうした赤ちゃんがえりや下の子いじめを始めたら、(1)様子があまりひどいようであれ
ば、以前と同じように、もう一度一〇〇%近い愛情を与えつつ、少しずつ、愛情を減らしていく。
(2)症状がそれほどひどくないよなら、フィフティフィフティ(五〇%五〇%)を貫き、そのつど、
上の子どもに納得させるのどちらかの方法をとる。あとはカルシウム、マグネシウムの多い食
生活にこころがける。

++++++++++++++++

●子どもの分離不安

 ある女性週刊誌の子育てコラム欄に、こんな手記が載っていた。日本でもよく知られたコラム
ニストのものだが、いわく、「うちの娘(むすめ)(三歳児)をはじめて幼稚園へ連れていったとき
のこと。娘ははげしく泣きじゃくり、私との別れに抵抗した。私はそれを見て、親子の絆の深さ
に感動した」と。

とんでもない! ほかにも詳しくあれこれ症状が書かれていたが、それを読むと、それは、「別
れをつらがって泣く子どもの姿」ではない。分離不安の症状そのものだった。

 分離不安症。親の姿が見えなくなると、混乱して泣き叫んだり暴れたりする。大声をあげて泣
き叫ぶタイプ(プラス型)と、思考そのものが混乱状態になり、オドオドするタイプ(マイナス型)
に分けて考える。

私はこのほかに、ひとりで行動ができなくなってしまうタイプ(孤立恐怖)にも分けて考えている
が、それはともかくも、このタイプの子どもは多い。四〜六歳児についていうなら、一五〜二〇
人に一人くらいの割合で経験する。

親がそばにいるうちは、静かに落ち着いているが、親の姿が見えなくなったとたん、ギャーッと
ものすごい声をはりあげて、そのあとを追いかけたりする。

 原因は……、というより、分離不安の子どもをみていくと、必ずといってよいほど、そのきっか
けとなった事件が、過去にあるのがわかる。はげしい家庭内騒動、離婚騒動など。母親が病
気で入院したことや、置き去りや迷子を経験して、分離不安になった子どももいた。

さらには育児拒否、虐待、下の子どもが生まれたことが引き金となった例もある。子どもの側
からみて、「捨てられるのではないか」という被害妄想が、分離不安の原因と考えるとわかりや
すい。

無意識下で起こる現象であるため、叱ったりしても意味がない。表面的な症状だけを見て、「集
団生活になれていないため」とか、「わがまま」とか考える人もいる。無理をすればかえって症
状をこじらせてしまう。

いや、実際には無理に引き離せば、しばらくは混乱状態になるものの、やがて静かに収まるこ
とが多い。しかしそれで症状が消えるのではない。「もぐる」のである。一度キズついた心は、そ
んなに簡単になおらない。この分離不安についても、そのつど繰り返し症状が現われる。

 こうした症状が出てきたら、鉄則はただ一つ。無理をしない。その場ではやさしくていねいに
説得を繰り返す。まさに根気との勝負ということになるが、これが難しい。現場で、そういう親子
を観察すると、たいてい親のほうが短気で、顔をしかめて子どもを叱ったりしているのがわか
る。「いいかげんにしなさい!」とか、「私はもう行きますからね」とか。こういう親子のリズムの
乱れが、症状を悪化させる。子どもはますます被害妄想をもつようになる。

 分離不安は四〜五歳をピークとして、症状は急速に収まっていく。しかしここにも書いたよう
に、一度キズついた心は、簡単にはなおらない。ある母親はこう言った。「今でも、夫の帰宅が
予定より遅くなっただけで、言いようのない不安感に襲われます」と。姿や形を変えて、おとな
になってからも症状が現われることがある。
(040320)











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