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【1】

●情緒が不安定な子ども

【掲示板への相談より……】

教員ではありませんが、小学校で子どもと関わる仕事をしています。教員免許は持っていま
す。

お手伝い先生のような仕事です。大卒後、企業で8年間、勤務し、退職後、初めての職場。初
めての教育の現場です。詳しく書くことができなく、申し訳ありません。不適切なら削除してくだ
さい。

現在、ある小2女子児童の担当になっています。(Mさんとしておきます。)・・・と言っても、日替
わりで上から指示されるので、とても不安定です。

Mさんは両親が離婚したあと、4月中旬に転校してきました。前の学校では不登校。現在は毎
日来ていますが、徐々に完全に保健室登校になってきています。

毎朝お母さんが送ってきますが、子どもがお母さんから離れられません。お母さんは、Mさん
を、車からぽーんと出し、バン!と閉めて、そのまま帰ってしまいます。そこでMさんは、泣き叫
び後を追いかけます。

道路でMさんを出すのは危険なのでというような指導が、学校側からあったようです。それから
は、お母さんは、Mさんを、学校の中まで中まで送ってきます。が、送ってくると、Mさんは、抱
きついたままお母さんの髪をぎゅーっとつかんで離しません。

そのとき、お母さんの靴を隠す、持ち物を隠す、取り合いになったりすることもあります。転んだ
すきに、お母さんは逃げるように、振り返らず去っていきます。

そのあとも、切れ端(ゴミのようなもの)を握り締め、「ママ・・・」と、しくしく泣き、「それどうする
の?」と聞くと、「お守りだから・・・」と。それを聞くと、胸が張り裂けそうになります。

私にはこの子を抱きしめる事しかできません。背中をさすって、「そう、そう、つらかったんだ
ね」と、沢山聞いてあげる事しかできません。担任からはくわしく話を聞かせてもらうこともあり
ません。でも一応、Mさんの担当なのです。

学校の担任の先生は、「早く教室に入りなさい」と言うだけです。クラスの児童からは、常に、
「この学校は、○○なんだぞ!」とか、「○○ちゃんがきたから、席が替わったじゃない!」と言
われ、みなは、どこかMさんをじゃまにしているような雰囲気です。

私がMさんの担当になる前は、誰も付いていなかったので、たとえば教室前でもじもじしている
と、担任(女性)から腕をつかまれ、引きずられるように入れられていたそうです。

Mさんが、抵抗すると、担任は、お腹をつねっていたようです。そしてとうとう教室を見ただけで
吐き気が起こすようになったり、担任を見ると逃げたり、隠れたり、さらには、クラスの児童を見
ると、「恐い・・・」と消えそうな声で、つぶやくようになってしまいました。

「恐い」にしても、初めの段階では、「集団が恐い」と言っていました。が、最近ではクラスの児
童に限定されてきたようです。優しい子もふくめて、どの子も恐がっているようです。

時限ごとに、Mさんが、「教室へ行ってみる・・・でも無理だったら戻ってもいい?」と言うので、
一緒について行くと、やはり、「恐い・・・やっぱりダメ」という感じです。

また、学校の対応もバラバラです。「今日は1日、この部屋で2人でいていいですよ」というの
で、それなりにおたがいに楽しそうに、じゃあ、今、国語だから漢字ドリルしようか、というような
調子でやっていると、ガラっ!と、突然開いて、知らない先生が「次! 図工だよ! 行け
る!?」と、Mさんのランドセルを持って行ってしまうのです。

子どもは一気に緊張した顔で、条件反射的に、「はい」と答え、部屋を出る。が、やはり行けな
い。そこでその先生が、「はいって言ったじゃない、どうしていけないの?」となじったりしま
す・・・・。と、思ったらまた急に他の先生が入ってきて、保健室にいてもいいですよ。いつ来ても
いいですよー、と言う始末。

はやし先生。これでこの子はどうなってしまうのでしょう。「ママ、バイバイしないで行っちゃった
ー」と泣くことから1日が始まり、クルクルと周りの指導が変わり、(私も規則で12時までしかい
っしょに、いられません)、Mさんにしてみれば、親に裏切られ、先生に裏切られ、友達も・・・と
いうような状況ですよね。

お母さんの話をするときは、赤ちゃん言葉です。以前、過呼吸に近い状態になり驚きました。
最近、混乱してくると頭を、自分で、げんこつでボカボカと自分で殴ります。見ていて恐いくらい
です。

本人の話しによると、以前は、お父さんの実家で同居していたそうです。いとこ(中学生)たちも
いたようで、よく殴られたと言います。

そして現在、お母さんにはお友達がいて、私の話ををちっとも聞いてくれない。お友達は男性
で、毎日のように泊まっていくとのこと。

また、反対にMさんのお母さんからの話しでは、家ではまったく甘えない。そんなそぶりさえ見
せない。学校でこんなに離れないなんてウソみたい。帰ったら遊ぶ約束をしてやっているのに、
宿題が終わらないから泣いてばかりで、遊べない、ということです。
(高知県在住・KUより)

【KU先生へ、はやし浩司より】

 掲示板の記事を読んで、その内容が、最近経験した、Z君(中2男子)と、あまりにも酷似して
いるので、驚きました。

 Z君は、乳幼児のときから、母親の冷淡、無視、育児放棄を経験しています。母親は、「生ま
れつき、そうだ」と言いますが、Z君は、見るからに弱々しい感じがします。全体に、幼く見え、
言動も幼稚ぽく、その年齢にふさわしい人格の核(コア・アイデンティティ)の確立がみられませ
ん。

 はきがなく、追従的で、いつも他人の同情をかうような行動をします。かなり強烈なマイナス
のストロークが、働いているようで、何をしても、「ぼくはできない」「ぼくはだめな人間」と言いま
す。

 ほかの子どもたちのいじめの対象にもなっています。母親は、そういうZ君を「かわいい」「か
わいい」とでき愛していますが、その実、Z君を、外へ出したがりません。「外へ出すと、みなに
いじめられるから」を理由にしています。典型的な、代償的過保護ママです。

 特徴としては、つぎのようなことがあります。思い浮かんだまま、並べてみます。

(1)自己管理能力がない……薬箱のドリンク剤を一日で、全部(10本ほど)、飲んでしまう。そ
のため、ますます母親に強く叱られる。届け物に買ってきた、菓子などを、勝手に封をあけて、
食べてしまったこともある。

(2)特定のものに、強くこだわる……カードゲームのカードをたいへん大切にしている。それを
毎日、戸棚から出し、また並べなおしたりしている。下に、6歳離れた弟がいるが、弟がそのカ
ードに触れただけで、パニック状態(オドオドとして、混乱状態)になる。

(3)時刻にこだわる……片時も腕時計を身からはなさず、いつも、時計ばかり見ている。行動
も、数分単位で、正確。朝、目をさましても、その時刻(6時半)がくるまで、床の中でじっと待っ
ている。そのときも、時計ばかり、見ている。メガネをかけているが、寝るときでさえも、かけた
まま。

(4)衝動的な自傷行為……ときどき、壁に頭をうちつけたりする。あるいは、ものを、壁にぶつ
けて、壊してしまう。ラジカセが思うようにならなかったときも、かんしゃく発作を起こして、こわし
てしまったこともある。が、満足しているときは、借りてきた猫の子のようにおとなしく、おだやか
だが、ふとしたことで急変。二階へつづく階段から、大の字のまま、下へ飛び降りたこともあ
る。現在、前歯が2本、欠損しているが、自傷行為のために、そうなったと考えられる。

(5)異常なまでの依存性……独特の言い方をする。おなかがすいたときも、「〜〜を食べた
い」というような言い方をしない。「〜〜君は、何も食べなかったから、死んでしまった」「ぼくは、
10日くらいだったら、何も食べなくても、平気」などと言ったりする。自主的な行動ができず、他
人の同情をかいながら、全体に、何かをしてもらうといった生活態度が目につく。

(6)幼児がえり……しばらく話しあって、打ち解けあうと、とたんに、幼児言葉になる。年齢的に
は、4〜5歳くらいの話し方をする。「ママが、ぼくを、たたいた」「○○さん(Z君の叔母)が、ぼく
をバカにした」と。

 母親は、仮面型タイプの人間で、私のような他人の前では、きわめて穏やか。始終、やさしそ
うな笑みを浮かべて、さもZ君を心底、思いやっているというようなフリをします。私が会ったと
きも、母親は、Z君の背中を、さすりながら、「元気を出そうね」と言っていました。

 このZ君というより、Z君の母親について、問題点をあげたら、キリがありません。代償的過保
護のほか、代理ミュンヒハウゼン症候群、虐待、基本的不信関係、仮面型人間、ペルソナ…
…。

 これらの原稿については、このあとに添付しておきますので、どうか、参考にしてください。

 で、私もこうした事例に、よく出会います。そしてそのつど、(限界)というか、(無力感)を味わ
います。ここにあげたZ君にしても、最終的に、私が預かるという覚悟ができれば、話は別です
が、そうでなければ、結局は、母親に任すしかないということになります。

 またこういう母親にかぎって、私のようなものの話を聞きません。何かを説明しようとすると、
ここにも書いたように、「生まれつきそうだ」とか、「遺伝だ」とか、さらには、「父親(夫)が、ひど
いことをしたからだ」と、他人のせいにします。

 ものの考え方が、きわめて自己中心的なのが、特徴です。もっと言えば、自分の子どもを、モ
ノ、あるいは奴隷かペットのように考えています。ひとりの人間として、みていません。

 で、30代のころは、そういう子どもばかり預かって、四苦八苦したことがあります。夜中中、
車で、走り回ったこともあります。しかしその結果たどりついたのが、「10%のニヒリズム」とい
う考え方です。

 若いころ、どこかの教師が、何かの会議で教えてくれた言葉です。

 決して、全力投球はしない。90%は、その子どものために働いても、残りの10%は、自分の
ためにとっておくという考え方です。そうでないと、身も心も、ズタズタにされてしまいます。今の
KU先生、あなたが、そうかもしれません。

 が、ご心配なく。もっと複雑で、深刻なケースを、たくさんみてきましたが、子どもは子どもで、
ちゃんと、大きくなっていくものです。もちろん心に大きなキズを残しますが、そのキズをもった
まま、おとなになっていきます。が、やがて自分で、それを克服していきます。つまりそういう人
間が本来的にもつ(力)を信じて、やるべきことはやりながらも、子どもに任すところは、任す。

 あとは、時間が解決してくれます。

 で、Mさんは、明らかに、分離不安ですね。心はいつも緊張状態にあって、その緊張状態か
ら解放されないでいるとみます。家庭の中でも、心が休まることがないのでしょう。一応、母親
の前では、(いい子?)でいるのでしょうが、それは、本来のMさんの姿でないことは、確かなよ
うです。

 (いい子?)でいることで、母親の愛情を取り戻そうとしているのです。私がときどき書く、「悲
しいピエロ」タイプの子どもというのは、このタイプの子どもをいいます。

 が、肝心の母親は、それに気づいていない。つまりここにこの種の問題の悲劇性がありま
す。

 また閉ざされた子どもの心を開くことは、容易なことではありません。1年や2年は、かかるか
もしれません。ちょっとしたことで、また閉じてしまう。この繰りかえしです。しかしあきらめては
いけません。ただ、このタイプの子どもは、いろいろな方法で、あなたの心を試すような行動に
出てくることがあります。

 急にわがままを言ってみたり、乱暴な行動に出てみたりする、など。こちらの限界を見極めな
がら、ギリギリのことをしてくるのが、特徴です。で、そういうときは、まさに根競べ。とことん根
競べをします。子どもの方があきらめて手を引くまで、根競べをします。

 「私はどんなことがあっても、あなたを見放しませんからね」と。

 それに納得したとき、子どもははじめて、あなたに対して心を開きます。

 幸いなことに、Mさんは、あなたというすばらしい先生に、出会うことができました。何が大切
かといって、あなたの今の(思い)ほど、大切なものは、ありません。その(思い)が、あなたとM
さんの絆(きずな)、あるいはMさんの心を支えるゆいいつの柱になっていると思います。

 ところで私は、最近、はじめて、ADHD児の指導を断りました。今までは、むしろそういう子ど
もほど、求めて教えてきたようなところがあります。

 しかし体力の限界だけは、もうどうしようありません。1〜2時間、接しただけで、ものすごい
疲労感を覚えるようになりました。それで断りました。

 そのとき感じた、敗北感というか、虚脱感には、ものすごいものがありました。悶々とした気
持ちで、数日を過ごしました。

 しかしあなたは、まだ若いし、いくらでも、そういう仕事ができます。どうかあきらめないで、が
んばってください。

 繰りかえしますが、あなたのような先生に出会えたことは、Mさんにとっては、本当に幸いなこ
とです。Mさんにかわって、喜んでいます。どうか、どうか、がんばってください。応援します。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●代償的過保護

 同じ過保護でも、その基盤に愛情がなく、子どもを自分の支配下において、自分の思いどお
りにしたいという過保護を、代償的過保護という。

 ふつう「過保護」というときは、その背景に、親の濃密な愛情がある。

 しかし代償的過保護には、それがない。一見、同じ過保護に見えるが、そういう意味では、代
償的過保護は、過保護とは、区別して考えたほうがよい。

 親が子どもに対して、支配的であると、詫摩武俊氏は、子どもに、つぎのような特徴がみられ
るようになると書いている(1969)。

 服従的になる。
 自発性がなくなる。
 消極的になる。
 依存的になる。
 温和になる。

 さらにつけ加えるなら、現実検証能力の欠如(現実を理解できない)、管理能力の不足(して
よいことと悪いことの区別ができない)、極端な自己中心性なども、見られるようになる。

 この琢摩氏の指摘の中で、私が注目したのは、「温和」という部分である。ハキがなく、親に
追従的、依存的であるがために、表面的には、温和に見えるようになる。しかしその温和性
は、長い人生経験の中で、養われてできる人格的な温和性とは、まったく異質のものである。

 どこか、やさしい感じがする。どこか、柔和な感じがする。どこか、穏かな感じがする……とい
ったふうになる。

 そのため親、とくに母親の多くは、かえってそういう子どもほど、「できのいい子ども」と誤解す
る傾向がみられる。そしてますます、問題の本質を見失う。

 ある母親(70歳)は、そういう息子(40歳)を、「すばらしい子ども」と評価している。臆面もな
く、「うちの息子ほど、できのいい子どもはいない」と、自慢している。親の前では、借りてきたネ
コの子のようにおとなしく、ハキがない。

 子どもでも、小学3、4年生を境に、その傾向が、はっきりしてくる。が、本当の問題は、その
ことではない。

 つまりこうした症状が現れることではなく、生涯にわたって、その子ども自身が、その呪縛性
に苦しむということ。どこか、わけのわからない人生を送りながら、それが何であるかわからな
いまま、どこか悶々とした状態で過ごすということ。意識するかどうかは別として、その重圧感
は、相当なものである。

 もっとも早い段階で、その呪縛性に気がつけばよい。しかし大半の人は、その呪縛性に気が
つくこともなく、生涯を終える。あるいは中には、「母親の葬儀が終わったあと、生まれてはじめ
て、解放感を味わった」と言う人もいた。

 題名は忘れたが、息子が、父親をイスにしばりつけ、その父親を殴打しつづける映画もあっ
た。アメリカ映画だったが、その息子も、それまで、父親の呪縛に苦しんでいた。

 ここでいう代償的過保護を、決して、軽く考えてはいけない。

【自己診断】

 ここにも書いたように、親の代償的過保護で、(つくられたあなた)を知るためには、まず、あ
なたの親があなたに対して、どうであったかを知る。そしてそれを手がかりに、あなた自身の中
の、(つくられたあなた)を知る。

( )あなたの親は、(とくに母親は)、親意識が強く、親風をよく吹かした。

( )あなたの教育にせよ、進路にせよ、結局は、あなたの親は、自分の思いどおりにしてき
た。

( )あなたから見て、あなたの親は、自分勝手でわがままなところがあった。

( )あなたの親は、あなたに過酷な勉強や、スポーツなどの練習、訓練を強いたことがある。

( )あなたの親は、あなたが従順であればあるほど、機嫌がよく、満足そうな表情を見せた。

( )あなたの子ども時代を思い浮かべたとき、いつもそこに絶大な親の影をいつも感ずる。

 これらの項目に当てはまるようであれば、あなたはまさに親の代償的過保護の被害者と考え
てよい。あなた自身の中の(あなた)である部分と、(つくられたあなた)を、冷静に分析してみる
とよい。

【補記】

 子どもに過酷なまでの勉強や、スポーツなどの訓練を強いる親は、少なくない。「子どものた
め」を口実にしながら、結局は、自分の不安や心配を解消するための道具として、子どもを利
用する。

 あるいは自分の果たせなかった夢や希望をかなえるための道具として、子どもを利用する。

 このタイプの親は、ときとして、子どもを奴隷化する。タイプとしては、攻撃的、暴力的、威圧
的になる親と、反対に、子どもの服従的、隷属的、同情的になる親がいる。

 「勉強しなさい!」と怒鳴りしらしながら、子どもを従わせるタイプを攻撃型とするなら、お涙ち
ょうだい式に、わざと親のうしろ姿(=生活や子育てで苦労している姿)を見せつけながら、子
どもを従わせるタイプは、同情型ということになる。

 どちらにせよ、子どもは、親の意向のまま、操られることになる。そして操られながら、操られ
ているという意識すらもたない。子ども自身が、親の奴隷になりながら、その親に、異常なまで
に依存するというケースも多い。
(はやし浩司 代償的過保護 過保護 過干渉)

【補記2】

 よく柔和で穏やか、やさしい子どもを、「できのいい子ども」と評価する人がいる。

 しかし子どもにかぎらず、その人の人格は、幾多の荒波にもまれてできあがるもの。生まれ
ながらにして、(できのいい子ども)など、存在しない。もしそう見えるなら、その子ども自身が、
かなり無理をしていると考えてよい。

 外からは見えないが、その(ひずみ)は、何らかの形で、子どもの心の中に蓄積される。そし
て子どもの心を、ゆがめる。

 そういう意味で、子どもの世界、なかんずく幼児の世界では、心の状態(情意)と、顔の表情と
が一致している子どものことを、すなおな子どもという。

 うれしいときには、うれしそうな顔をする。悲しいときには、悲しそうな顔をする。怒っていると
きは、怒った顔をする。そしてそれらを自然な形で、行動として、表現する。そういう子どもを、
すなおな子どもという。

 子どもは、そういう子どもにする。 
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 代償
的過保護 すなおな子ども 素直な子供 子どもの素直さ 子供のすなおさ)









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【2】

●子どもの夢

【掲示板への投稿記事より……】

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昨日(9月13日)の講演について、
掲示板のほうに、Yさんという方から
書き込みがありました。

うれしかったので、報告します。

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はやし先生、今日は、豊田町での講演会に参加させていただきました。
あっという間の2時間で、自分の子育てを振り返るいい機会になりました。改めて、
お礼を申し上げたいと思い、投稿しました。

いろいろなお話が印象に残っているのですが、特に、共感したのは、次男の方のお話
でした。私の長女も、小さい時に難病にかかり、死にかけたので、「生きていてくれたら
それでいい」という気持ちは、本当に同感でした。

私は、長女が死に直面していたとき、本当にどうしたらよいのかわかりませんでした。
代わってあげられるのなら、いくらでも代わってあげるのですが、そうすることもできず、
ただただ見ているだけの自分が情けなく、辛く、本当に子供が目の前で死んでしまったら
どうしたらいいのか・・・こんなことを考えてはいけないと思いながら、考えてしまい、
毎日、何とか泣かずに耐えていました。

ある時、ふっと、「そうだ、この子がひとりで死んでいくのが、そんなにかわいそうなら、
私もついていって、一緒に死ねばいいんだ」と思ったら、すごく気が楽になりました。子供が、一
人っ子だったから、こんな風に思えたのでしょうね。

幸い、長女は難病を克服し、今では、病気だったことがうそのようです。私も、3人の子供の母
となりました。

私は、「自分の死」より怖い「子供の死」に直面し、「自分の死」は、ある意味で平気になりまし
た。・・・平気は、言いすぎですが・・・。

大きくなった長女に「将来の夢は?」と聞くと、「公務員」という返事が返ってきます。
昔は「コックさん」だったのに、なんて現実的になってしまったのでしょうか・・・。

はやし先生の講演を聞いて、「子供に夢をもってほしい」と思いましたが、まあ、現実的ではあ
りますが、これも「子供の夢」と思い、励ましていってあげたいと思っています。

また、私自身についても、すっかり大人になってしまいましたが、夢や目的を持った人生を送っ
ていけたら・・・、と思います。前向きな気持ちになれる、いい講演でした。

末筆にはなりますが、お体を大切に、これからもがんばっていってほしいと願っております。メ
ルマガも楽しみです。

【Yさんへ、はやし浩司より】

 投稿、ありがとうございました。いつも、「今日の講演が最後」という思いで、講演に臨んでい
ます。私にとっては、真剣勝負の場です。

 しかし終わってみると、いつも後悔ばかり。実は、昨日(9月13日)もそうでした。「2時間」と
いうことで、かなり余裕を感じながら話し始めたのですが、結局は、あちこちを省略しながらの
講演となってしまいました。

 いつだったか、間に15分間ほどの休息を入れて、4時間、話したことがあります。時間的に
はそれくらいほしいです。が、しかし、今では、4時間は、とても無理です。昨日も、1時間ほど
話したところで、スーッと意識が弱くなっていくのを感じました。講演は、まさに体力、気力との
勝負です。

 ほめていただいてうれしいのですが、私のできとしては、60点くらいです。あのようなすばらし
い会場(大ホール)でしたから、もっとよい講演ができたはずと、悔やまれます。

 で、母親と父親のちがいは……と聞かれれば、Yさんのご指摘どおりです。「自分の命すらも
惜しくない」という、まさに至上の愛を感ずることができるのは、またそういう立場に近いのは、
実は、母親のほうなのですね。

 その至上の愛を知っているからこそ、母親は、強い。それが母親と、父親のちがいとなって、
表れてくるわけです。Yさんの書いてくださったことのほうが、私の講演した話より、はるかに中
身が濃い。深い。ホント!

 逆に、私の力の限界を感じてしまいます。

 しかしあの「幼稚園ママさん」が、講演に来てくださったとは! (ハンドル・ネームだけは、よく
覚えています。)ひょっとしたら、以前と同じ話をしてしまったのではないかと、心配になってきま
した。もしそうなら、お許しください。

 しかしすばらしい会場ですね。あの会場(アミューズ豊田・ゆやホール)での講演は、今回で3
度目ですが、本当に話しやすいというか、よくできたホールです。「今度、またあの会場で話す
機会があったら、そのときこそ!」と思っています。つまり「今度こそ、100点満点の講演を」
と。

 ともかくも、講演を聞きにきてくださって、ありがとうございました。マガジンのほうも、どうか、
よろしくお願いします。

 そうそう、講演のあと、控え室で、KさんやYさん(主催者代表)の方が、「本は出さないのです
か」「新聞にはコラムを書かないのですか」と、聞かれてしまいました。

 いろいろ言い訳がましいことを言いましたが、本当は、もう、本も、新聞も、どうでもよくなりま
した。今は、何と言っても、インターネットの時代です。こうして書いた文章にしても、月に、1万
5000人から2万人の人たちが読んでくれます。しかも世界中の人たちが、です。

 私には、こちらのほうが、ずっと楽しいです。少しでも余分なエネルギーがあれば、電子マガ
ジンのほうに傾注しています。

 (電子マガジンのほうでは、単行本に換算して、月に、3〜4冊分の原稿を書いているのです
よ!)

 では、また! 投稿ありがとうございました。うれしかったです。







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【3】

【キレる子ども】

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キレる子どもについて、
私の経験から……

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 突発的に、きわめて衝動的に暴力を振るう子どもというのは、たしかにいる。私は、大きく、
つぎの3つのタイプに分けて考えている。

(1)ピリピリ型(いつも神経がピリピリしているタイプ、頭のキレる子どもに多い)
(2)むっつり型(何を考えているかわからないタイプ。ふだんは静かで、穏やか)
(3)ゲーム型(目的もわからないまま、ゲーム感覚で、とんでもないことをする。)

 ピリピリ型というのは、ふだんから、神経が過敏状態になっていて、静かな落ち着きが見られ
ないタイプをいう。頭の回転が速く、その分、学習面で、優秀な成績を示す。ささいなことで、突
発的に衝動的な行動に出る。

【Kさん(小6女児)】

 私が、いつもKさんが座る席でお茶を飲んでいたときのこと。休み時間でのことである。突
然、Kさんがうしろからやってきて、笑い声で、「やあ、先生!」と声をかけてきた。私が、「ああ」
と答えたその瞬間、もっていたバッグで、思いっきり、頭を側面から叩いてきた。

 メガネはふっとび、私は、イスからころげ落ちた。

【Tさん(小5女児)】

 私が別の子ども(小5女児)と、何かのことでふざけて冗談を言いあっていたときのこと。Tさ
んが、私に何かを話しかけてきた。無視したわけではないのだが、そのまま別の子を、笑いあ
っていた、そのとき。もっていた大型のワークブックで、私の頭を上からバシッと叩いてきた。衝
撃で、メガネは下に落ち、鼻の横を1センチほど、切った。

 むっつり型というのは、ふだんは、何を考えているかわからないタイプの子どもをいう。印象
に残っている子どもに、R子(小6)がいた。4年前に書いた原稿だが、それをそのまま紹介す
る。

++++++++++++++++

●不自然さは要注意

 子どもの動作や、言動で、どこか不自然さを感じたら、要注意。反応や歩き方、さらにはしぐ
さなど。「ふつう、子どもなら、こうするだろうな」と思うとき、子どもによっては、そうでない反応
を示すことがある。最近、経験した例をいくつかあげてみる。

【S子の例】

教室へ入ってくるやいなや、突然大声で、「先生、先週、ここにシャープペンシルは落ちていま
せんでしたか!」と。「気がつかなかった」と答えると、大げさなジェスチャでその女の子(小5)
は、あたりをさがし始めた。

しばらくすると、「先生、今日は、筆箱を忘れました」と。そこで私が、「忘れたら忘れたで、最初
からそう言えばいいのに」とたしなめると、さらに大きな声で、「そんなことはありません!」と。
そして授業中も、どうも納得できないというような様子で、ときおり、あたりをさがすマネをしてみ
せる。私が「もういいから、忘れなさい」と言うと、「いえ、たしかにここに置きました!」と。

【A君の例】

A君(小3男児)が、連絡ノートを忘れた。そこでまだ教室に残っていたB君(小三男児)にそれ
を渡して、「まだA君はそのあたりにいるはずだから、急いでもっていってあげて!」と叫んだ。

が、B君はおもむろに腰をあげ、のんびりと自分のものを片づけたあと、ノソノソと歩き出した。
それではまにあわない。そこで私が「いいから、走って!」と促すと、こちらをうらめしそうな顔を
して見るのみ。そしてゆっくりと教室の外に消えた。

【R子の例】

R子(小6)が教室に入ってきたので、いつものように肩をポンとたたいて、「こんにちは」と言っ
たときのこと。何を思ったからR子は、いきなり私の腹に足蹴りをしてきた。「この、ヘンタイ野
郎!」と。ふつうの蹴りではない。R子は空手道場に通っていた。私はしばらく息もできない状
態で、その場にうずくまってしまった。そのときR子の顔を見ると、ぞっとするような冷たい目を
していた。

こうした「ふつうでない様子」を見たら、それを手がかりに、子どもの心の問題をさぐってみる。
何かあるはずである。が、このとき大切なことは、そうした症状だけをみて、子どもを叱ったり、
注意してはいけないということ。何か原因があるはずである。だからそれをさぐる。

たとえばシャープペンシルをさがした女の子は、異常とも言えるような親の過関心で心をゆが
めていた。B君は、いわゆる緩慢行動を示した。精神そのものが萎縮している子どもによく見ら
れる症状である。また私を足蹴りにした女の子は、そのころ両親は離婚、母親には、愛人と再
婚話をしている最中だった、など。

 一方、心がまっすぐ伸びている子どもは、行動や言動が自然である。「すなお」という言い方
のほうがふさわしい。こちらの予想どおりに反応し、そして行動する。心を開いているから、や
さしくしてあげたり、親切にしてあげると、そのやさしさや親切が、スーッと子どもの心にしみて
いくのがわかる。そしてうれしそうにニコニコと笑ったりする。

「おいで」と手を広げてあげると、そのままこちらの胸に飛び込んでくる。そこであなたの子ども
を観察してみてほしい。何人か子どもが集まっているようなところで観察するとわかりやすい。
もしあなたの子どもの行動や言動が自然であればよい。しかしどこか不自然であれば、あなた
の子育てのし方そのものを反省してみる。子どもではない。あなた自身の、だ。
(02−10−20)

++++++++++++++++

 この中に書いたR子については、そのとき受けた暴力がふつうではなかったため、とくに印象
に残っている。へたをすれば内臓が破裂していたかもしれない。それほど強烈な蹴りであっ
た。

 このR子については、そのあと母親とゆっくり話す機会があったので、そのことを報告すると、
母親はこう言った。

 当時R子の両親は離婚を前提とした別居状態であった。父親には愛人がいて、家に帰らない
日も多かったという。母親は「それが原因ではないでしょうか」と言った。

 もう1人印象に残っている子どもに、T君(小3・男児)がいた。

 ある日、子どもたちの解いた問題を順に採点しているときのこと。あと1、2人でT君というとき
になったそのとき、突然、T君が、「ギャーッ」と動物的な声を張りあげて、暴れ出した。

 あまりにも突発的で、制止する間はなかった。近くにあった机をもちあげると、それを、となり
の机に向かって投げた。私はT君にとびかかって、T君を床に押し倒し、上から自分の体重で、
T君を押さえた。

 あとで見たら、T君の解答用紙は、ほとんど白紙だった。

 また3番目のゲーム型についても、印象に残っている子どもに、F君(小4・男児)がいた。つ
ぎの原稿に出てくる、(2)の、(バランス感覚に欠け、善悪の判断ができない子ども)というの
が、その子どもである。

 この原稿は、「乱暴な子ども」というテーマで書いたもので、話が少し脱線するかもしれない
が、許してほしい。

+++++++++++++++++

●乱暴な子ども

乱暴な子どもといっても、一様ではない。いろいろなタイプがある。かなりおおざっぱな分け方
で、正確ではないが、思いついたままあげてみると……。

(1)家庭不和など、愛情問題が原因で荒れる子ども……いわゆる欲求不満型で、乱暴のし方
が、陰湿で、相手に対して容赦しないのが特徴。先生に叱られても、口をきっと結んだまま、涙
を見せないなど。どこかに心のゆがみを感ずることが多い。自ら乱暴をしながら、相手の心を
確かめるようなこともする。ふつう嫉妬がからむと、乱暴のし方が、陰湿かつ長期化する。

(2)バランス感覚に欠け、善悪の判断ができない子ども……このタイプの子どもは、ときとし
て、常識をはずれた乱暴をする。たとえば先生のコップに、殺虫剤を入れたり、イスの上に、シ
ャープペンシルを立てたりする、など。(知らないで座ったら、おおけがをする。)相手の子ども
がイスに座ろうとしたとき、さっとイスを引き、相手の子どもにおおけがをさせた子どももいた。
してよいことと、悪いことの判断ができないために、そうなる。もともと遅進傾向がある子ども
に、よく見られる。

(3)小心タイプの子ども……よく観察すると、乱暴される前に、自ら乱暴するという傾向がみら
れる。しかったりすると、おおげさに泣いたり、あやまったりする。ひとりでは乱暴できず、だれ
かの尻馬に乗って、乱暴する。乱暴することを、楽しんでいるような雰囲気になる。どこか小ず
るい感じがするのが特徴。

(4)情緒不安定型の子ども……突発的に、大声を出し、我を忘れて乱暴する。まさにキレる状
態になる。すごんだ目つき、鋭い目つきになるのが特徴。一度興奮状態になると、手がつから
れなくなる。ふだんは、どちらかというと、おとなしく、目立たない。

このタイプの子どもは、その直前に、異様な興奮状態になることが多い。直前といっても、ほん
の瞬間的で、おさえるとしても、そのときしかない。心の緊張感がとれないため、ふだんからど
こかピリピリとした印象を与えることが多い。

(5)乱暴であることが、日常化している子ども……日ごろから、キックやパンチをしながら、遊
んでいる。あいさつがわりに乱暴したりする。そのためほかの子どもには、こわがられ、嫌われ
る。

 乱暴な子どもについて考えてみたが、たいていは複合的に現れるため、どのタイプの子ども
であるかを特定するのはむずかしい。また特定してもあまり意味はない。そのときどきに、「乱
暴は悪いこと」「乱暴してはいけない」ことを、子どもによく言って聞かせるしかない。力でおさえ
ようとしても、たいてい失敗する。とくに突発的に錯乱(さくらん)状態になって暴れる子どものば
あいは、しかっても意味はない。私のばあいは、相手が年少であれば、抱き込むようにしてそ
れをおさえる。しばらくその状態を保つと、やがて静かになる。

【S君、小2のケース】

 ささいなことでキレやすく、一度キレると、手や足のほうが、先に出てくるというタイプ。能力的
には、とくに問題はないが、どこかかたよっている感じはする。算数は得意だが、漢字がまった
く書けない、など。

 そのS君は、学校でも、何かにつけて問題を起こした。突発的に暴れて、イスを友だちに投げ
つけたこともある。あるいはキックをして、友だちの前歯を折ってしまったこともある。ときに自
虐的に、机をひどくたたいて、自分で手にけがをすることもあった。私も何度か、S君がキレる
様子を見たことがあるが、目つきが異常にすごむのがわかった。無表情になり、顔つきそのも
のが変わった。

 そういうS君を、乳幼児のときから、母親は、ひどくしかった。しばしば体罰を加えることもあっ
たという。しかしそのため、しかられることに免疫性ができてしまい、先生がふつうにしかったく
らいでは効果がなかった。そこで先生がさらに語気を荒げて、強くしかると、そのときだけは、
それなりにしおらしく、「ごめん」と言ったりした。

 今、S君のように、原因や理由がわからないまま、突発的に錯乱状態になって暴れる子ども
がふえている。脳の微細障害が原因だとする研究者もいる。「まだ生まれる前に、母親から胎
盤をとおして、胎児の体の中に侵入した微量の化学物質が脳の発達に変化をもたらし、その
人の生涯の性格や行動を決めてしまうのではないか」(福島章氏「子どもの脳が危ない」PHP
新書)と。

じゅうぶん考えなければならない説である。

++++++++++++++++++++

 さらに私も、一度、こんな経験をしている。記録によれば、03年とあるから、もうそれから3年
になる。しかしそのとき受けたキズは、今でも、目の上に、しっかりと残っている。私は、あやうく
失明するところだった。

 そのとき書いた原稿をそのまま紹介する。

++++++++++++++++++++

●メガネ

 このところ朝起きると、どこかモノがかすんで見える。白内障か?、と思ったが、原因は、メガ
ネの汚れだった。もうこのメガネも、買って10年になる。硬質ガラスでできているというが、表
面は、すり傷だらけ。そろそろ買い替えの時期がきたようだ。

 私がメガネをかけるようになったのは、中学1、2年のころではなかったか。周囲にメガネを
かけている人が多く、私のばあい、メガネをかけるのに、それほど抵抗はなかった。以来、40
年以上、メガネをかけている。

 メガネを嫌う人も多いが、もしメガネをかけていなければ、私は、3度、失明していただろうと
思う。1度は、山の中へタラの芽を取りに入ったときのこと。バシッとタラの木が、私のメガネを
たたいた。タラの芽を取ろうと、木を引き寄せたときのことだった。あとで見ると、メガネの上と
下に、大きな切り傷ができていた。

 もう1度は、バイクで運転していたときのこと。S湖のまわりを猛スピードで走っていたら、これ
またバシッと、メガネに何か当たった。見ると、コガネ虫だった。コガネ虫がメガネに当たり、メ
ガネの上で飛び散っていた。

 さらにもう1度は、こんな事件だった。中学2年生のM君と対峙して、数学を教えていたときの
こと。私が目を閉じたまま、うつらうつらと、M君の話を聞いていた。そのときだ。何を考えた
か、M君が、シャープペンシルを、私の顔と机の間に立てた。私はそれを知らず、そのまま頭
を下へ振った。とたん激痛!

 シャープペンシルの先はメガネのおかげで目をそれ、眉間の下に突き刺さった。とたん、大
量の鮮血が顔面に飛び散った。もしそのときメガネをかけていなければ、シャープペンシルの
先は、まともの眼球に突き刺さっていた。そういう位置関係にあった。

 だからメガネに、私は3度、目を守られたことになる。いろいろ不便はあるが、これからもずっ
とかけつづけるつもり。

 そのメガネについての余談だが、私は、いわゆるメガネ族だから、どういうわけか、メガネを
かけている人に親しみを覚える。女性でも、メガネをかけている人のほうに魅力を感ずる。これ
はどういう心理によるものかわからないが、本当の話。

 もう一つ余談だが、あのシャープペンシルをつき立てたM君は、いわゆるお宅族と呼ばれる
子どもで、幼いときからテレビゲームばかりしていた。そのためか、ものの考え方が、どこか現
実離れしていた。恐らくシャープペンシルをつき立てたときも、ゲーム感覚ではなかったか? 
このタイプの子どもは、何かにつけて常識ハズレになりやすい。
(030216)※

++++++++++++++++++

 キレるといっても、内容はさまざま。それに応じて、原因もいろいろ考えられる。で、私のばあ
い、こうした例が、あまりにも多いため、「子どもというのは、そういうもの」という前提で、対処し
ている。

 さらにここに書いた、(ピリピリ型の子ども)にしても、親に報告しても、ほとんど意味がない。
親(とくに母親自身)も、ピリピリした感じの人が多い。私の頭を側面からバッグでたたいてきた
Kさん(小6・女児)にしても、一度、母親にそのことを報告しなければと思いつつ、結局は、そ
の機会がないまま終わってしまった。

 母親に話したら、今度はその母親がキレて、娘のKさんに暴力を振るっていたかもしれない。

 以下、参考までに、今まで書いた原稿のうち、いくつかをここに収録しておく。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【かんしゃく発作】

++++++++++++++++++++++++++

私のHPの掲示板の相談コーナーに、つぎのような相談がありました。
かんしゃく発作が、あまりにもはげしいので、どうしたらよいかというご質問です。
今回は、これについて、考えてみたいと思います。

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生後2週間の頃から、15時間連続で起きていたこともあるほど、まとめて寝ない子(寝る環境
作りはいろいろと工夫しましたが無理でした)で、起きている時間は抱っこして歩きまわらない
と、グズってばかりの娘でした。

寝る子は育つと言うのに、こんなに寝なくて大丈夫なものかと病院に行ったほどでしたが、至っ
て健康で、人なつっこく男の子顔負けのやんちゃ娘に成長していきました。

好奇心旺盛で、喜怒哀楽がとてもハッキリしていて(嬉しいと興奮しすぎるほど喜ぶし、怒ると
手がつけられないほど泣き暴れます)、活発なので、やんちゃすぎて手はかかりますが、幼い
頃おとなしかった私にしてみたら、すごく張り合いがあって自慢の娘です。

でもやっぱり神経質というか、頑固すぎるところがあり、2歳になってどう扱ったらいいか分から
なくなることが増えました。魔の2歳児というほど、2歳は周りの子もみんな反抗期+何でも自
分で!、という時期なので、ある程度は仕方ないと腹をくくって毎日気長に接していました。

赤ちゃんの頃から手がかかる子だったので、今でも私にベッタリなこともあり、スキンシップは
たっぷり取れているつもりでいるのですが・・・。はやしさんのエッセイで、「わがまま」と「頑固」
の違いなどについて書かれていたを読んで、うちの娘は頑固すぎるのかなぁと思い、相談させ
ていただこうと思いました。

2歳になってから、とにかく何でも自分でしないと気が済みません。着替えも、ちょっと手を出す
と気が狂ったように泣き叫んで、怒って服が破れそうなほど引っ張って全部脱いでしまいます。

もともと好奇心旺盛な子なので、1歳のころから自分でできることなら、何分でもつき合ってあ
げて、危険なことでない限り何にでも挑戦させてあげてきました。でもまだ2歳だからどうがん
ばっても無理なこともいっぱいあります・・・。

三輪車も、何としても自分で運転する!っていう気迫で、購入して1週間で自分でこげるように
なり、私が後ろの押し手を押すと、「イヤ!」と言って横断歩道の真ん中でも足を踏ん張って動
かなくなってしまいます。

また、夫に似て、正義感が強く変に真面目なところがあり、公園などでは順番や物の貸し借り
のルールをすごく理解しています。なので順番を守れない子がいたり、自分はおもちゃを「どう
ぞ」と貸してあげられたのに、相手が貸してくれないようなことが何度も重なると、手がつけられ
ないほど暴れて30分以上泣き止んでくれなくなります。

以上に書いたようなことは、2歳児ならみんなあることだとは思うのですが、かんしゃくを起こし
たときの激しさが、ほんとにすごいんです。

今日はおもちゃの貸し借りがうまくできないことが続いて(相手の子が何が何でも自分のおもち
ゃは貸さない!と言ってすぐ泣く子でした)、お友だちも娘もお昼寝の時間になり眠たそうで機
嫌が悪かったので、お片づけして今日は「バイバイ」しようと言った後、気が狂ったように泣き出
しました。

「バイバイ嫌!!」と言って、すごい勢いで走り出して、道路に何度も飛びだそうとするから、阻
止して、落ち着かせようと抱きしめてあげたら余計に泣き叫びました。すごく激しく暴れるので
何度も道路や壁に頭を打って大変でした。

パニックになると「ぎゃーー!!」と泣き叫びながら私から離れて、走って行ってしまいます。室
内など、少々走り回っても大丈夫な場所なら、ある程度落ち着くまで暴れさせてあげて、落ち着
き始めた頃にギューっと抱きしめてあげると少しずつ私に寄り添ってくれて、笑顔を見せてくれ
るます。

が、走り回れない野外だと、私が触れるたびにさらに火がついたように泣き叫んで、いつまで
たっても落ち着いてくれず、親子ともどもどろんこになりながら、1時間近く格闘しなきゃいけな
いことになります。あまりに激しいので、街行く人たちも白い目で見るというのを通り越して、ど
こか病気?にでもなったのかというぐらい怖い物を見るように心配されたりします。

1歳代の頃から、気に入らないことがあるとしょっちゅう道路に寝転がってダダをこねる子だっ
たので、それぐらいのことで人目が気になったりはしないのですが、ここまで激しいと私まで泣
きたくなります。

「どうぞ」ができたことをいくら誉めてあげても、相手が泣いていたりすると自分が悪いと思って
しまい、何度も何度もそういうことが重なると爆発するみたいです。気は強いので、自分が今遊
びたいものを我慢して貸してあげたりすることはなく、今遊んでないものをきっちり選んで貸して
あげます。なので我慢が爆発するという感じでもないです。

こんなに激しく泣き続けても、泣き止んだら何事もなかったように、いつもの太陽みたいな笑顔
を見せてくれます。私にギューっと抱きついて、「お母さん、大好き〜」と言ってくれます。「イヤ
イヤ!」は思いっきり発散させた子の方が後々いい子になるって聞くので、反抗期が激しいの
はいいことなのかもしれませんが、こんな娘の性格を伸び伸びと伸ばしてあげるにはどう接し
ていけばいいのでしょうか?

うまく文章に表せたか分かりませんが、アドバイスいただけたらとても嬉しいです。よろしくお願
いします。

++++++++++++++++++++++++++++++

【YK様へ】

 かんしゃく発作にしては、かなりはげしいようですね。2歳前後であれば、ダダをこねる、がん
こになる、泣き叫ぶ程度で、しばらくすると、静かになるはずですが……。

 私の印象では、脳内で、何らかの仰天現象が起きているように思います。突発的な興奮性
と、その持続性が気になります。こういうケースで最近、よく話題になるのが、セロトニン悪玉説
です。

 脳内伝達物質にセロトニンがあり、それが過剰に分泌されると、子どもは、興奮状態になり、
過剰行動に出ることが知られれています(アメリカのミラー博士ほか)。

 その過剰分泌を引き起こすのが、たとえば、インシュリンの過剰分泌と言われています。つま
りたとえば一時的に、甘味の強い食品(精製された白砂糖の多い食品)を多量に接種すると、
インシュリンが、ドッと、分泌されます。

 血糖値はそれでさがるのですが、そのあともインシュリンが血中に残り、さらに血糖をさげま
す。こうしていわば、子どもが、低血糖の状態になるわけです。少し話がそれるかもしれません
が、少し前に書いた原稿を、参考までに、添付します。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

●キレる子どもの原因?

 キレる子ども……、つまり突発的に過剰行動に出る子どもの原因として、最近にわかにクロ
ーズアップされてきたのが、「セロトニン悪玉説」である。

つまり脳間伝達物質であるセロトニンが異常に分泌され、それが毒性をもって、脳の抑制命令
を狂わすという(生化学者、ミラー博士ほか)。

アメリカでは、もう20年以上も前から指摘されていることだが、もう少し具体的に言うとこうだ。
たとえば白砂糖を多く含む甘い食品を、一時的に過剰に摂取すると、インスリンが多量に分泌
され、それがセロトニンの過剰分泌を促す。そしてそれがキレる原因となるという(岩手大学の
大澤名誉教授ほか)。

 このタイプの子どもは、独特の動き方をするのがわかっている。ちょうどカミソリの刃でスパス
パとものを切るように、動きが鋭くなる。なめらかな動作が消える。そしていったん怒りだすと、
カッとなり、見境なく暴れたり、ものを投げつけたりする。ギャーッと金切り声を出すことも珍しく
ない。幼児でいうと、突発的にキーキー声を出して、泣いたり、暴れたりする。興奮したとき、体
を小刻みに震わせることもある。

 そこでもしこういう症状が見られたら、まず食生活を改善してみる。甘い食品を控え、カルシ
ウム分やマグネシウム分の多い食生活に心がける。リン酸食品も控える。リン酸は日もちをよ
くしたり、鮮度を保つために多くの食品に使われている。

リン酸をとると、せっかく摂取したカルシウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出してしま
う。一方、昔からイギリスでは、『カルシウムは紳士をつくる』という。日本でも戦前までは、カル
シウムは精神安定剤として使われていた。それはともかくも、子どもから静かな落ち着きが消
えたら、まずこのカルシウム不足を疑ってみる。ふつう子どものばあい、カルシウムが不足して
くると、筋肉の緊張感が持続できず、座っていても体をクニャクニャとくねらせたり、ダラダラさ
せたりする。

 ここに書いたのはあくまでも1つの説だが、もしあなたの子どもに以上のような症状が見られ
たら、一度試してみる価値はある。効果がなくても、ダメもと。そうでなくても子どもに缶ジュース
を1本与えておいて、「少食で悩んでいます」は、ない。

体重15キロの子どもに缶ジュースを1本与えるということは、体重60キロのおとなが、同じ缶
ジュースを4本飲むのに等しい。おとなでも4本は飲めないし、飲めば飲んだで、腹の中がガボ
ガボになってしまう。もしどうしても「甘い食べもの」ということであれば、精製されていない黒砂
糖を勧める。黒砂糖には天然のミネラル分がバランスよく配合されているため、ここでいうよう
な弊害は起きない。ついでに一言。

 子どもはキャーキャーと声を張りあげるもの、うるさいものだと思っている人は多い。しかしそ
ういう考えは、南オーストラリア州の幼稚園を訪れてみると変わる。そこでは子どもたちがウソ
のように静かだ。サワサワとした風の音すら聞こえてくる。理由はすぐわかった。その地方では
どこの幼稚園にも、玄関先に大きなミルクタンクが置いてあり、子どもたちは水代わりに牛乳を
飲んでいた。
(はやし浩司 切れる子供 キレる子供 突発的過剰行動 過剰な行動)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

子どもの脳が乱舞するとき

●収拾がつかなくなる子ども

 「先生は、サダコかな? それともサカナ! サカナは臭い。それにコワイ、コワイ……、あ
あ、水だ、水。冷たいぞ。おいしい焼肉だ。鉛筆で刺して、焼いて食べる……」と、話がポンポ
ンと飛ぶ。頭の回転だけは、やたらと速い。

まるで頭の中で、イメージが乱舞しているかのよう。動作も一貫性がない。騒々しい。ひょうき
ん。鉛筆を口にくわえて歩き回ったかと思うと、突然神妙な顔をして、直立! そしてそのまま
の姿勢で、バタリと倒れる。ゲラゲラと大声で笑う。その間に感情も激しく変化する。目が回る
なんていうものではない。まともに接していると、こちらの頭のほうがヘンになる。

 多動性はあるものの、強く制止すれば、一応の「抑え」はきく。小学2、3年になると、症状が
急速に収まってくる。集中力もないわけではない。気が向くと、黙々と作業をする。30年前には
このタイプの子どもは、まだ少なかった。が、ここ10年、急速にふえた。

小1児で、10人に2人はいる。今、学級崩壊が問題になっているが、実際このタイプの子ども
が、1クラスに数人もいると、それだけで学級運営は難しくなる。あちらを抑えればこちらが騒
ぐ。こちらを抑えればあちらが騒ぐ。そんな感じになる。

●崩壊する学級

 「学級指導の困難に直面した経験があるか」との質問に対して、「よくあった」「あった」と答え
た先生が、66%もいる(98年、大阪教育大学秋葉英則氏調査)。

「指導の疲れから、病欠、休職している同僚がいるか」という質問については、15%が、「1名
以上いる」と回答している。そして「授業が始まっても、すぐにノートや教科書を出さない」子ども
については、90%以上の先生が、経験している。

ほかに「弱いものをいじめる」(75%)、「友だちをたたく」(66%)などの友だちへの攻撃、「授
業中、立ち歩く」(66%)、「配布物を破ったり捨てたりする」(52%)などの授業そのものに対
する反発もみられるという(同、調査)。

●「荒れ」から「新しい荒れ」へ
 昔は「荒れ」というと、中学生や高校生の不良生徒たちの攻撃的な行動をいったが、それが
最近では、低年齢化すると同時に、様子が変わってきた。「新しい荒れ」とい言葉を使う人もい
る。ごくふつうの、それまで何ともなかった子どもが、突然、キレ、攻撃行為に出るなど。多くの
教師はこうした子どもたちの変化にとまどい、「子どもがわからなくなった」とこぼす。

日教組が98年に調査したところによると、「子どもたちが理解しにくい。常識や価値観の差を
感ずる」というのが、20%近くもあり、以下、「家庭環境や社会の変化により指導が難しい」(1
4%)、「子どもたちが自己中心的、耐性がない、自制できない」(10%)と続く。そしてその結果
として、「教職でのストレスを非常に感ずる先生が、8%、「かなり感ずる」「やや感ずる」という
先生が、60%(同調査)もいるそうだ。

●原因の一つはイメージ文化?

 こうした学級が崩壊する原因の一つとして、(あくまでも、一つだが……)、私はテレビやゲー
ムをあげる。「荒れる」というだけでは、どうも説明がつかない。家庭にしても、昔のような崩壊
家庭は少なくなった。むしろここにあげたように、ごくふつうの、そこそこに恵まれた家庭の子ど
もが、意味もなく突発的に騒いだり暴れたりする。

そして同じような現象が、日本だけではなく、アメリカでも起きている。実際、このタイプの子ど
もを調べてみると、ほぼ例外なく、乳幼児期に、ごく日常的にテレビやゲームづけになっていた
のがわかる。

ある母親はこう言った。「テレビを見ているときだけ、静かでした」と。「ゲームをしているとき
は、話しかけても返事もしませんでした」と言った母親もいた。たとえば最近のアニメは、幼児
向けにせよ、動きが速い。速すぎる。しかもその間に、ひっきりなしにコマーシャルが入る。ゲ
ームもそうだ。動きが速い。速すぎる。

●ゲームは右脳ばかり刺激する

こうした刺激を日常的に与えて、子どもの脳が影響を受けないはずがない。もう少しわかりや
すく言えば、子どもはイメージの世界ばかりが刺激され、静かにものを考えられなくなる。

その証拠(?)に、このタイプの子どもは、ゆっくりとした調子の紙芝居などを、静かに聞くこと
ができない。浦島太郎の紙芝居をしてみせても、「カメの顔に花が咲いている!」とか、「竜宮
城に魚が、おしっこをしている」などと、そのつど勝手なことをしゃべる。一見、発想はおもしろ
いが、直感的で論理性がない。

ちなみにイメージや創造力をつかさどるのは、右脳。分析や論理をつかさどるのは、左脳であ
る(R・W・スペリー)。テレビやゲームは、その右脳ばかりを刺激する。こうした今まで人間が経
験したことがない新しい刺激が、子どもの脳に大きな影響を与えていることはじゅうぶん考えら
れる。その一つが、ここにあげた「脳が乱舞する子ども」ということになる。

 学級崩壊についていろいろ言われているが、一つの仮説として、私はイメージ文化の悪弊を
あげる。

(付記)

●ふえる学級崩壊

 学級崩壊については減るどころか、近年、ふえる傾向にある。99年1月になされた日教組と
全日本教職員組合の教育研究全国大会では、学級崩壊の深刻な実情が数多く報告されてい
る。

「変ぼうする子どもたちを前に、神経をすり減らす教師たちの生々しい告白は、北海道や東北
など各地から寄せられ、学級崩壊が大都市だけの問題ではないことが浮き彫りにされた」(中
日新聞)と。「もはや教師が一人で抱え込めないほどすそ野は広がっている」とも。

 北海道のある地方都市で、小学1年生70名について調査したところ、
 授業中おしゃべりをして教師の話が聞けない……19人
 教師の指示を行動に移せない       ……17人
 何も言わず教室の外に出て行く       ……9人、など(同大会)。

●心を病む教師たち

 こうした現状の中で、心を病む教師も少なくない。東京都の調べによると、東京都に在籍する
約6万人の教職員のうち、新規に病気休職した人は、93年度から4年間は毎年210人から2
20人程度で推移していたが、97年度は、261人。さらに98年度は355人にふえていること
がわかった(東京都教育委員会調べ・99年)。

この病気休職者のうち、精神系疾患者は。93年度から増加傾向にあることがわかり、96年
度に一時減ったものの、97年度は急増し、135人になったという。

この数字は全休職者の約52%にあたる。(全国データでは、97年度は休職者が4171人で、
精神系疾患者は、1619人。)さらにその精神系疾患者の内訳を調べてみると、うつ病、うつ
状態が約半数をしめていたという。原因としては、「同僚や生徒、その保護者などの対人関係
のストレスによるものが大きい」(東京都教育委員会)ということである。

●その対策

 現在全国の21自治体では、学級崩壊が問題化している小学1年クラスについて、クラスを1
クラス30人程度まで少人数化したり、担任以外にも補助教員を置くなどの対策をとっている
(共同通信社まとめ)。

また小学6年で、教科担任制を試行する自治体もある。

具体的には、小学1、2年について、新潟県と秋田県がいずれも1クラスを30人に、香川県で
は40人いるクラスを、2人担任制にし、今後5年間でこの上限を36人まで引きさげる予定だと
いう。

福島、群馬、静岡、島根の各県などでは、小1でクラスが30〜36人のばあいでも、もう1人教
員を配置している。さらに山口県は、「中学への円滑な接続を図る」として、一部の小学校で
は、6年に、国語、算数、理科、社会の4教科に、教科担任制を試験的に導入している。大分
県では、中学1年と3年の英語の授業を、1クラス20人程度で実施している(01年度調べ)。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 キレ
る子供 キレる子供 突発的に暴れる子供 暴れる子ども 子供の暴力 暴力行為 衝動的 
衝動性)


Hiroshi Hayashi+++++++++Sep 06+++++++++++はやし浩司

●キレる子どもの相談

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数年前、キレる子どもについて、
ある母親から、こんな相談が届いて
いる。

そのとき書いた原稿をそのまま
ここに紹介する。

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●小食で困ったら、冷蔵庫をカラに

 体重15キロの子どもが、缶ジュースを1本飲むということは、体重60キロのおとなが、四本
飲む量に等しい。いくらおとなでも、缶ジュースを4本は飲めない。飲めば飲んだで、腹の中が
ガボガボになってしまう。アイスやソフトクリームもそうだ。子どもの顔よりも大きなソフトクリー
ムを1個子どもに食べさせておきながら、「うちの子は小食で困っています」は、ない。

 突発的にキーキー声をはりあげて、興奮状態になる子どもは少なくない。このタイプの子ども
でまず疑ってみるべきは、低血糖。

一度に甘い食品(精製された白砂糖の多い食品)を大量に与えると、その血糖値をさげようと
インスリンが大量に分泌される。が、血糖値がさがっても、さらに血中に残ったインスリンが、
必要以上に血糖値をさげてしまう。

つまりこれが甘い食品を大量にとることによる低血糖のメカニズムだが、一度こういう状態にな
ると、脳の抑制命令が変調をきたす。そしてここに書いたように、突発的に興奮状態になって
大声をあげたり、暴れたりする。

このタイプの子どもは、興奮してくるとなめらかな動きがなくなり、カミソリでものを切るように、
スパスパした動きになることが知られている。アメリカで「過剰行動児」として、20年ほど前に
話題になったことがある。

日本でもこの分野の研究者は多い(岩手大学名誉教授の大澤氏ほか)。そこでもしあなたの
子どもにそういう症状が見られたら、一度砂糖断ちをしてみるとよい。効果がなくて、ダメもと。
一周間も続けると、子どものによってはウソのように静かに落ち着く。

  話がそれたが、子どもの小食で悩んでいる親は多い。「食が細い」「好き嫌いがはげしい」
「食事がのろい」など。幼稚園児についていうなら、全体の約50%が、この問題で悩んでいる。
で、もしそうなら、一度冷蔵庫をカラにしてみる。お菓子やスナック菓子類は、思いきって捨て
る。「もったいない」という思いが、つぎからのムダ買いを止める力になる。そして子どもが食事
の間に口にできるものを一掃する。子どもの小食で悩んでいる親というのは、たいてい無意識
のうちにも、間食を黙認しているケースが多い。もしそうなら、間食はいっさい、やめる。

(小食児へのアドバイス)

(1)ここに書いたように、冷蔵庫をカラにし、菓子類はすべて避ける。
(2)甘い食品(精製された白砂糖の多い食品)を断つ。
(3)カルシウム、マグネシウム分の多い食生活にこころがける。
(4)日中、汗をかかせるようにする。

 ただ小食といっても、家庭によって基準がちがうので、その基準も考えること。ふつうの家庭
よりも多い食物を与えながら、「少ない」と悩んでいるケースもある。子どもが健康なら、小食
(?)でも問題はないとみる。

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以前、同じような相談を受けたことがあります。
もっと年齢の大きなお子さんについてのものでしたが……。
それについて、書いた原稿を添付します。
あくまでも参考資料の一つとして、考えてください。

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●島根県のUYさんより

はじめまして。
HPをよく拝見させて頂いています。
 
娘の事を相談させていただきたく、メールをしています。
娘は5歳半になる年中児で、下に3歳半の妹がいます。

小さい頃から動作の一つ一つが乱暴で、よくグズリ、キーキー興奮しては些細な事で泣く子でし
た。

それは今でも続いており、集中が長く続かず、こだわりも他の子供よりも深い気がします。
話も目を見て心を落ち着けてゆっくり会話をする事が出来ません。

真剣な話をしながら足の先を神経質に動かしたり、手を振ったりして、とても聞いている態度に
は見えません。

走りまわるほどの多動ではありませんが、落ち着いて、じっとしていることが出来ないようです。

そのせいか、話し言葉も五歳にしては表現力がないと思われます。
物の説明はとても難解で、結局何を言っているのか分からない事も多々あります。
 
私自身、過関心であったと思います。
気をつけているつもりですが、やはり完全には治っていません。
今、言葉の方は『おかあさん、牛乳!』や、『あの冷たいやつ!』というような言い方について
は、それでは分からないという事を伝える様にしています。

できるだけ言葉で説明をさせるようにしています。これは少しは効果があるようです。
また食生活ではカルシウムとマグネシウム、そして甘いものには気をつけています。
食べ物の好き嫌いは全くありません。
 
そこで私の相談ですが、もっとしっかり人の話を聞けるようになってほしいと思っています。

心を落ち着かせることが出来るようになるのは、やはり親の過干渉や過関心と関係があるの
でしょうか。

また些細な事(お茶を飲むときのグラスの柄が妹の方がかわいい柄っだった、公園から帰りた
くない等)で、泣き叫んだりするのは情緒不安定ということで、過干渉の結果なのでしょうか。

泣き叫ぶときは、『そーかー、嫌だったのね。』と、私は一応話を聞くようにはしていますが、私
が折れる事はありません。

その事でかえって、泣き叫ぶ機会を増やして、また長引かせている気もするのですが。。。

そしてテーブルの上でオセロなどのゲーム中に、意味も無く飛び上がったりしてテーブルをゆら
してゲームを台無しにしたりする(無意識にやってしまうようです)ような乱雑な動作はどのよう
にすれば良いのか、深く悩んでいます。『静かに落ち着いて、意識を集中させて動く』ことが出
来ないのはやはり干渉のしすぎだったのでしょうか。
自分自信がんばっているつもりですが、時々更に悪化させているのではないかと不安に成りま
す。

できましたら,アドバイスをいただけますでしょうか。宜しくお願い致します。

【UYさんへ、はやし浩司より】

 メール、ありがとうございました。原因と対処法をいろいろ考える前に、大前提として、「今す
ぐ、なおそう」と思っても、なおらないということです。またなおそうと思う必要もありません。こう
書くと、「エエッ!」と思われるかもしれませんが、この問題だけは、子どもにその自覚がない以
上、なおるはずもないのです。

 UYさんのお子さんが、ここに書いた子どもと同じというわけではありませんが、つぎの原稿
は、少し前に私が書いたものです。まず、その原稿を先に、読んでいただけたらと思います。

+++++++++++++++++
 
●汝(なんじ)自身を知れ

「汝自身を知れ」と言ったのはキロン(スパルタ・7賢人の1人)だが、自分を知ることは難しい。
こんなことがあった。

 小学生のころ、かなり問題児だった子ども(中2男児)がいた。どこがどう問題児だったかは、
ここに書けない。書けないが、その子どもにある日、それとなくこう聞いてみた。

「君は、学校の先生たちにかなりめんどうをかけたようだが、それを覚えているか」と。するとそ
の子どもは、こう言った。「ぼくは何も悪くなかった。先生は何でもぼくを目のかたきにして、ぼく
を怒った」と。私はその子どもを前にして、しばらく考えこんでしまった。いや、その子どものこと
ではない。自分のことというか、自分を知ることの難しさを思い知らされたからだ。

ある日1人の母親が私のところにきて、こう言った。「学校の先生が、席決めのとき、『好きな子
どうし、並んですわってよい』と言った。しかしうちの子(小1男児)のように、友だちのいない子
はどうしたらいいのか。配慮に欠ける発言だ。これから学校へ抗議に行くから、一緒に行って
ほしい」と。

もちろん私は断ったが、問題は席決めことではない。その子どもにはチックもあったし、軽いが
吃音(どもり)もあった。神経質な家庭環境が原因だが、「なぜ友だちがいないか」ということの
ほうこそ、問題ではないのか。その親がすべきことは、抗議ではなく、その相談だ。

話はそれたが、自分であって自分である部分はともかくも、問題は自分であって自分でない部
分だ。ほとんどの人は、その自分であって自分でない部分に気がつくことがないまま、それに
振り回される。よい例が育児拒否であり、虐待だ。

このタイプの親たちは、なぜそういうことをするかということに迷いを抱きながらも、もっと大きな
「裏の力」に操られてしまう。あるいは心のどこかで「してはいけない」と思いつつ、それにブレ
ーキをかけることができない。「自分であって自分でない部分」のことを、「心のゆがみ」という
が、そのゆがみに動かされてしまう。ひがむ、いじける、ひねくれる、すねる、すさむ、つっぱ
る、ふてくされる、こもる、ぐずるなど。自分の中にこうしたゆがみを感じたら、それは自分であ
って自分でない部分とみてよい。

それに気づくことが、自分を知る第一歩である。まずいのは、そういう自分に気づくことなく、い
つまでも自分でない自分に振り回されることである。そしていつも同じ失敗を繰り返すことであ
る。

+++++++++++++++

 おとなですら、自分のことを知るのはむずかしい。いわんや、子どもをやということになりま
す。ですからUYさんが、お子さんに向かって、「静かにしなさい」「落ち着きなさい」と言っても、
子どもにその自覚がない以上、子どもの立場からしたら、どうしようもないのです。

 意識には、大きく分けて(1)潜在意識と、(2)自意識(自己意識)があります※。潜在意識と
いうのは、意識できない世界のことです。自意識というのは、自分で自覚できる意識のことで
す。いろいろな説がありますが、教育的には、小学3、4年生を境に、急速にこの自意識が育
ってきます。つまり自分を客観的に見ることができるようになると同時に、その自分を、自分で
コントロールすることができるようになるわけです。

 幼児期にいろいろな問題ある子どもでも、この自意識をうまく利用すると、それを子ども自ら
の意識で、なおすことができます。言いかえると、それ以前の子どもには、その自意識を期待
しても、無理です。たとえば「静かにしなさい」と親がいくら言っても、子ども自身は、自分ではそ
れがわからないのだから、どうしようもありません。UYさんのケースを順に考えてみましょう。

●小さい頃から動作の一つ一つが乱暴で、よくグズリ、キーキー興奮しては些細な事で泣く子
でした。
●それは今でも続いており、集中が長く続かず、こだわりも他の子供よりも深い気がします。
●話も目を見て心を落ち着けてゆっくり会話をする事が出来ません。
●真剣な話をしながら足の先を神経質に動かしたり、手を振ったりして、とても聞いている態度
には見えません。
●走りまわるほどの多動ではありませんが、落ち着いて、じっとしていることが出来ないようで
す。
●そのせいか、話し言葉も5歳にしては表現力がないと思われます。

 これらの問題点を指摘しても、当然のことですが、満5歳の子どもに、理解できるはずもあり
ません。こういうケースで。「キーキー興奮してはだめ」「こだわっては、だめ」「落ち着いて会話
しなさい」「じっとしていなさい」「しっかりと言葉を話しなさい」と言ったところで、ムダというもので
す。

たとえば細かい多動性について、最近では、脳の微細障害説、機能障害説、右脳乱舞説、ホ
ルモン変調説、脳の仰天説、セロトニン過剰分泌説など、ざっと思い浮かんだものだけでも、
いろいろあります。

されにさらに環境的な要因、たとえば下の子が生まれたことによる、赤ちゃんがえり、欲求不
満、かんしゃく発作などもからんでいるかもしれません。またUYさんのメールによると、かなり
神経質な子育てが日常化していたようで、それによる過干渉、過関心、心配先行型の子育て
なども影響しているかもしれません。こうして考え出したら、それこそ数かぎりなく、話が出てき
てしまいます。

 では、どうするか? 原因はどうであれ、今の症状がどうであれ、今の段階では、「なおそう」
とか、「あれが問題」「これが問題」と考えるのではなく、あくまでも幼児期によく見られる一過性
の問題ととらえ、あまり深刻にならないようにしたらよいと思います。

むしろ問題は、そのことではなく、この時期、親が子どものある部分の問題を、拡大視すること
によって、子どものほかのよい面をつぶしてしまうことです。とくに「あれがダメ」「これがダメ」と
いう指導が日常化しますと、子どもは、自信をなくしてしまいます。生きザマそのものが、マイナ
ス型になることもあります。

 私も幼児を35年もみてきました。若いころは、こうした問題のある子どもを、何とかなおして
やろうと、四苦八苦したものです。しかしそうして苦労したところで、意味はないのですね。子ど
もというのは、時期がくれば、何ごともなかったかのように、自然になおっていく。

UYさんのお子さんについても、お子さんの自意識が育ってくる、小学3、4年生を境に、症状は
急速に収まってくるものと思われます。自分で判断して、自分の言動をコントロールするように
なるからです。「こういうことをすれば、みんなに嫌われる」「みんなに迷惑をかける」、あるいは
「もっとかっこよくしたい」「みんなに認められたい」と。

 ですから、ここはあせらず、言うべきことは言いながらも、今の状態を今以上悪くしないことだ
けを考えながら、その時期を待たれたらどうでしょうか。すでにUYさんは、UYさんができること
を、すべてなさっておられます。母親としては、満点です。どうか自信をもってください。私のHP
を読んでくださったということだけでも、UYさんは、すばらしい母親です。(保証します!)

ただもう一つ注意してみたらよいと思うのは、たとえばテレビやテレビゲームに夢中になってい
るようなら、少し遠ざけたほうがよいと思います。このメールの終わりに、私が最近書いた原稿
(中日新聞発表済み)を、張りつけておきます。どうか参考にしてください。

 で、今度はUYさん自身へのアドバイスですが、どうか自分を責めないでください。「過関心で
はないか?」「過干渉ではないか?」と。

 そういうふうに悩むこと自体、すでにUYさんは、過関心ママでも、過干渉ママでもありませ
ん。この問題だけは、それに気づくだけで、すでにほとんど解決したとみます。ほとんどの人
は、それに気づかないまま、むしろ「私はふつうだ」と思い込んで、一方で、過関心や過干渉を
繰りかえします。UYさんにあえていうなら、子育てに疲れて、やや育児ノイローゼ気味なのかも
しれません。ご主人の協力は得られませんか? 少し子育てを分担してもらったほうがよいか
もしれません。

 最後に「そしてテーブルの上でオセロなどのゲーム中に、意味も無く飛び上がったりしてテー
ブルをゆらしてゲームを台無しにしたりする(無意識にやってしまうようです)ような乱雑な動作
はどのようにすれば良いのか、深く悩んでいます。『静かに落ち着いて、意識を集中させて動
く』ことが出来ないのはやはり干渉のしすぎだったのでしょうか」という部分についてですが、こ
う考えてみてください。

 私の経験では、症状的には、小学1年生ぐらいをピークにして、そのあと急速に収まっていき
ます。そういう点では、これから先、体力がつき、行動半径も広くなってきますから、見た目に
は、症状ははげしくなるかもしれません。UYさんが悩まれるお気持ちはよくわかりますが、一
方で、UYさんの力ではどうにもならない部分の問題であることも事実です。

ですから、愛情の糸だけは切らないようにして、言うべきことは言い、あとはあきらめます。コツ
は、完ぺきな子どもを求めないこと。満点の子どもを求めないこと。ここで愛情の糸を切らない
というのは、子どもの側から見て、「切られた」と思わせいないことです。

それを感じると、今度は、子どもの心そのものが、ゆがんでしまいます。が、それでも暴れたら
……。私のばあいは、教室の生徒がそういう症状を見せたら、抱き込んでしまいます。叱った
り、威圧感を与えたり、あるいは恐怖心を与えてはいけません。あくまでも愛情を基本に指導し
ます。それだけを忘れなければ、あとは何をしてもよいのです。あまり神経質にならず、気楽に
構えてください。

 約束します。UYさんの問題は、お子さんが小学3、4年生になるころには、消えています。ウ
ソだと思うなら、このメールをコピーして、アルバムか何かにはさんでおいてください。そして、
四、五年後に読み返してみてください。「林の言うとおりだった」と、そのときわかってくださると
確信しています。もっとも、それまでの間に、いろいろあるでしょうが、そこは、クレヨンしんちゃ
んの母親(みさえさん)の心意気でがんばってください。コミックにVOL1〜10くらいを一度、読
まれるといいですよ。テレビのアニメは、コミックにくらべると、作為的です。

 また何かあればメールをください。なおこのメールは、小生のマガジンの2−25号に掲載し
ますが、どうかお許しください。転載の許可など、お願いします。ご都合の悪い点があれば、至
急、お知らせください。
(030217)

※……これに対して、「自己意識」「感覚運動的意識」「生物的意識」の三つに分けて考える考
え方もある。「感覚的運動意識」というのは、見たり聞いたりする意識のこと。「生物的意識」と
いうのは、生物としての意識をいう。いわゆる「気を失う」というのは、生物的意識がなくなった
状態をいう。このうち自己意識があるのは、人間だけと言われている。この自己意識は、四歳
くらいから芽生え始め、三〇歳くらいで完成するといわれている(静岡大学・郷式徹助教授「フ
ァミリス」03・3月号)。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

【YK様へ(2)】

 食生活がどうなっているのか、私にはわかりませんが、まず試してみるべきことは、(1)食生
活の改善、です。

 ここにも書いたように、MG、CA、Kの多い食生活(自然海産物中心の献立)に切りかえてみ
てください。

 精製された白砂糖を多く含む食品は、避けます。(与えると意識しなくても、今では、ありとあ
らゆる食品に含まれています。幼児のばあい、2歳児でしたら、1日、10グラム前後でじゅうぶ
んです。)

 感情の起伏がはげしく、手にあまるようなら、一度、小児科を訪れてみられてはいかがでしょ
うか。以前とちがい、最近では、すぐれた薬も開発されています。(薬を使うときは、慎重にしま
すが、そのあたりのことは、よくドクターと相談して決めてください。)

 食生活の改善……徹底してするのが、コツです。アイス、ソフト、乳酸飲料などは、避けま
す。徹底してすれば、1、2週間ほどで、効果が現われてきます。

 同じようなケースを、もう一つ、思い出しました。その原稿を添付します。少し古い原稿なの
で、先に書いたことと、内容が少し異なるかもしれませんが、異なっている部分については、先
に書いたほうを、優先してください。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

【栄養学の分野からの考察】

●過剰行動性のある子ども

 もう二〇年以上も前だが、アメリカで「過剰行動性のある子ども」(ヒュー・パワーズ・小児栄養
学)が、話題になったことがある。ささいなことがきっかけで、突発的に過剰な行動に出るタイプ
の子どもである。

日本では、このタイプの子どもはほとんど話題にならなかったが、中学生によるナイフの殺傷
事件が続いたとき、その原因の一つとして、マスコミでこの過剰行動性が取りあげられたこと
がある(九八年)。日本でも岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授らが、こ
の分野の研究者として知られている。

●砂糖づけのH君(年中児)

 私の印象に残っている男児にH君(年中児)という子どもがいた。最初、Hさん(母親)は私に
こう相談してきた。「(息子の)部屋の中がクモの巣のようです。どうしたらいいでしょうか」と。

話を聞くと、息子のH君の部屋がごちゃごちゃというより、足の踏み場もないほど散乱してい
て、その様子がふつうではないというのだ。が、それだけならまだしも、それを母親が注意する
と、H君は突発的に暴れたり、泣き叫んだりするという。始終、こきざみに動き回るという多動
性も気になると母親は言った。私の教室でも突発的に、耳をつんざくような金切り声をあげ、興
奮状態になることも珍しくなかった。そして一度そういう状態になると、手がつけられなくなっ
た。私はその異常な興奮性から、H君は過剰行動児と判断した。

 ただ申し添えるなら、教育の現場では、それが学校であろうが塾であろうが、子どもを診断し
たり、診断名をくだすことはありえない。第一に診断基準が確立していないし、治療や治療方
法を用意しないまま診断したり、診断名をくだしたりすることは許されない。仮にその子どもが
過剰行動児をわかったところで、それは教える側の内心の問題であり、親から質問されてもそ
れを口にすることは許されない。

診断については、診断基準や治療方法、あるいは指導施設が確立しているケース(たとえば
自閉症児やかん黙児)では、専門のドクターを紹介することはあっても、その段階で止める。こ
の過剰行動児についてもそうで、内心では過剰行動児を疑っても、親に向かって、「あなたの
子どもは過剰行動児です」と告げることは、実際にはありえない。教師としてすべきことは、知
っていても知らぬフリをしながら、その次の段階の「指導」を開始することである。
 
●原因は食生活?

ヒュー・パワーズは、「脳内の血糖値の変動がはげしいと、神経機能が乱れ、情緒不安にな
り、ホルモン機能にも影響し、ひいては子どもの健康、学習、行動に障害があらわれる」とい
う。メカニズムは、こうだ。ゆっくりと血糖値があがる場合には、それに応じてインスリンが徐々
に分泌される。しかし一時的に多量の砂糖(特に精製された白砂糖)をとると、多量の、つまり
必要とされる量以上の量のインスリンが分泌され、結果として、子どもを低血糖児の状態にし
てしまうという(大沢)。

そして(1)イライラする。機嫌がいいかと思うと、突然怒りだす、(2)無気力、(3)疲れやすい、
(4)(体が)震える、(5)頭痛など低血糖児特有の症状が出てくるという(朝日新聞九八年2・1
2)。これらの症状は、たとえば小児糖尿病で砂糖断ちをしている子どもにも共通してみられる
症状でもある。私も一度、ある子ども(小児糖尿病患者)を病院に見舞ったとき、看護婦からそ
ういう報告を受けたことがある。

 こうした突発的な行動については、次のように説明されている。つまり脳からは常に相反する
二つの命令が出ている。行動命令と抑制命令である。たとえば手でものをつかむとき、「つか
め」という行動命令と、「つかむな」という抑制命令が同時に出る。

この二つの命令がバランスよく調和して、人間はスムーズな動きをすることができる。しかし低
血糖になると、このうちの抑制命令のほうが阻害され、動きがカミソリでスパスパとものを切る
ような動きになる。先のH君の場合は、こまかい作業をさせると、震えるというよりは、手が勝
手に小刻みに動いてしまい、それができなかった。また抑制命令が阻害されると、感情のコン
トロールもできなくなり、一度激怒すると、際限なく怒りが増幅される。そして結果として、それ
がキレる状態になる。

●恐ろしいカルシウム不足

 砂糖のとり過ぎは、子どもの心と体に深刻な影響を与えるが、それだけではない。砂糖をとり
過ぎると、カルシウム不足を引き起こす。

糖分の摂取が、体内のカルシウムを奪い、虫歯の原因になることはよく知られている。体内の
ブドウ糖は炭酸ガスと水に分解され、その炭酸ガスが、血液に酸性にする。その酸性化した血
液を中和しようと、骨の中のカルシウムが、溶け出るためと考えるとわかりやすい。

体内のカルシウムの98%は、骨に蓄積されている。そのカルシウムが不足すると、「(1)脳の
発育が不良になったり、(2)脳神経細胞の興奮性を亢進したり、(3)精神疲労をしやすくまた
回復が遅くなるなどの症状が現われる」(片瀬淡氏「カルシウムの医学」)という。わかりやすく
言えば、カルシウムが不足すると、知恵の発達が遅れ、興奮しやすく、また精神疲労を起こし
やすいというのだ。甘い食品を大量に摂取していると、このカルシウム不足を引き起こす。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

●生化学者ミラー博士らの実験

 精製されてない白砂糖を、日常的に多量に摂取すると、インスリンの分泌が、脳間伝達物質
であるセロトニンの分泌をうながし、それが子どもの異常行動を引き起こすという。アメリカの
生化学者のミラーは、次のように説召している。

 「脳内のセロトニンという(脳間伝達)ニューロンから脳細胞に情報を伝達するという、神経中
枢に重要な役割をはたしているが、セロトニンが多すぎると、逆に毒性をもつ」(「マザーリン
グ」八一年(7)号)と。日本でも、自閉症や子どもの暴力、無気力などさまざまな子どもによる
問題行動が、食物と関係しているという研究がなされている。ちなみに、食品に含まれている
白砂糖の量は、次のようになっている。

製品名             一個分の量    糖分の量         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー        
 ヨーグルト    【森永乳業】     90ml  9・6g         
 伊達巻き       【紀文】     39g  11・8g         
 ミートボール   【石井食品】 1パック120g  9・0g         
 いちごジャム   【雪印食品】  大さじ30g  19・7g         
 オレンジエード【キリンビール】    250ml  9・2g         
 コカコーラ              250ml 24・1g         
 ショートケーキ    【市販】  一個100g  28・6g         
 アイス      【雪印乳業】  一個170ml  7・2g         
 オレンジムース  【カルピス】     38g   8・7g         
 プリン      【協同乳業】  一個100g  14・2g         
 グリコキャラメル【江崎グリコ】   4粒20g   8・1g         
 どら焼き       【市販】   一個70g  25g          
 クリームソーダ    【外食】  一杯      26g           
 ホットケーキ     【外食】  一個      27g          
 フルーツヨーグルト【協同乳業】    100g  10・9g         
 みかんの缶詰   【雪印食品】    118g  15・3g         
 お好み焼き   【永谷園食品】  一箱240g  15・0g         
 セルシーチョコ 【江崎グリコ】   3粒14g   5・5g         
 練りようかん     【市販】  一切れ56g  30・8g         
 チョコパフェ     【市販】  一杯      24・0g       

●砂糖は白い麻薬

 H君の母親はこう言った。「祖母(父親の実母)の趣味が、ジャムづくりで、毎週ビンに入った
ジャムを届けてくれます。うちでは、それを食べなければもったいないということで、パンや紅茶
など、あらゆるものにつけて食べています」と。

私はH君の食生活が、かなりゆがんだものと知り、とりあえず「砂糖断ち」をするよう進言した。
が、異変はその直後から起きた。幼稚園から帰ったH君が、冷蔵庫を足げりにしながら、「ビス
ケットがほしい、ビスケットがほしい」と泣き叫んだというのだ。母親は「麻薬患者の禁断症状の
ようで、恐ろしかった」と話してくれた。が、それから数日後。今度はH君が一転、無気力状態
になってしまったという。私がH君に会ったのは、ちょうど一週間後のことだったが、H君はまる
で別人のようになっていた。ボーッとして、反応がまるでなかった。母親はそういうH君を横目で
見ながら、「もう一度、ジャムを食べさせましょうか」と言ったが、私はそれに反対した。

●カルシウムは紳士をつくる

 戦前までは、カルシウムは、精神安定剤として使われていた。こういう事実もあって、イギリス
では、「カルシウムは紳士をつくる」と言われている。子どもの落ち着きなさをどこかで感じた
ら、砂糖断ちをする一方、カルシウムやマグネシウムなど、ミネラル分の多い食生活にこころ
がける。私の経験では、幼児の場合、それだけで、しかも一週間という短期間で、ほとんどの
子どもが見違えるほど落ち着くのがわかっている。

川島四郎氏(桜美林大学元教授)も、「ヒステリーやノイローゼ患者の場合、カルシウムを投与
するだけでなおる」(「マザーリング」八一年(7)号)と述べている。効果がなくても、ダメもと。そ
うでなくても、缶ジュース一本を子どもに買い与えて、「うちの子は小食で困ります」は、ない。体
重15キロ前後の子どもに、缶ジュースを一本与えるということは、体重60キロの人が、4本飲
む量に等しい。おとなでも缶ジュースを四本は飲めないし、飲めば飲んだで、腹の中がガボガ
ボになってしまう。

 なお問題となるのは、精製された白砂糖をいう。どうしても甘味料ということであれば、精製さ
れていない黒砂糖をすすめる。黒砂糖には、天然のミネラル分がほどよく配合されていて、こ
こでいう弊害はない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 過剰
行動児 セロトニン悪玉説 キレる子供の原因 キレる子どもの原因 切れる子供 原因 キ
レる子ども 原因 原因物質)




【キレる子供・補足】

●シシリー宣言

1995年11月、イタリアのシシリー島のエリゼに集まった18名の学者が、緊急宣言を行った。
これがシシリー宣言である。その内容は「衝撃的なもの」(グリーンピース・JAPAN)なものであ
った。

いわく、「これら(環境の中に日常的に存在する)化学物質による影響は、生殖系だけではな
く、行動的、および身体的異常、さらには精神にも及ぶ。これは、知的能力および社会的適応
性の低下、環境の要求に対する反応性の障害となってあらわれる可能性がある」と。つまり環
境ホルモンが、人間の行動にまで影響を与えるというのだ。

が、これで驚いていてはいけない。シシリー宣言は、さらにこう続ける。「環境ホルモンは、脳の
発達を阻害する。神経行動に異常を起こす。衝動的な暴力・自殺を引き起こす。奇妙な行動を
引き起こす。

多動症を引き起こす。IQが低下する。人類は50年間の間に5ポイントIQが低下した。人類の
生殖能力と脳が侵されたら滅ぶしかない」と。ここでいう「社会性適応性の低下」というのは、具
体的には、「不登校やいじめ、校内暴力、非行、犯罪のことをさす」(「シシリー宣言」・グリーン
ピース・JAPAN)のだそうだ。

 この事実を裏づけるかのように、マウスによる実験だが、ビスワエノールAのように、環境ホ
ルモンの中には、母親の胎盤、さらに胎児の脳関門という二重の防御を突破して、胎児の脳
に侵入するものもあるという。つまりこれらの環境ホルモンが、「脳そのものの発達を損傷す
る」(船瀬俊介氏「環境ドラッグ」より)という。

(4)教育の分野からの考察

 前後が逆になったが、当然、教育の分野からも「キルる子ども」の考察がなされている。しか
しながら教育の分野では、キレる子どもの定義すらなされていない。なされないままキレる子ど
もの議論だけが先行している。ただその原因としては、

(1)親の過剰期待、そしてそれに呼応する子どもの過負担。
(2)学歴社会、そしてそれに呼応する受験競争から生まれる子ども側の過負担などが、考えら
れる。こうした過負担がストレッサーとなって、子どもの心を圧迫する。

ただこの段階で問題になるのが、子ども側の耐性である。最近の子どもは、飽食とぜいたくの
中で、この耐性を急速に喪失しつつあると言える。わずかな負担だけで、それを過負担と感
じ、そしてそれに耐えることがないまま、怒りを爆発させてしまう。親の期待にせよ、学歴社会
にせよ、それは子どもを取り巻く環境の中では、ある程度は容認されるべきものであり、こうし
た環境を子どもの世界から完全に取り除くことはできない。これらを整理すると、次のようにな
る。

(1)環境の問題
(2)子どもの耐性の問題。

●終わりに……

以上のように、「キレる子ども」と言っても、その内容や原因はさまざまであり、その分野に応じ
て考える必要がある。またこうした考察をしてのみ、キレる子どもの問題を正面からとらえるこ
とができる。一番危険なのは、キレる子どもを、ただばくぜんと、もっと言えば感傷的にとらえ、
それを論ずることである。こうした問題のとらえ方は、問題の本質を見誤るばかりか、かえって
教育現場を混乱させることになりかねない。


Hiroshi Hayashi+++++++++Sep 06+++++++++++はやし浩司

【砂糖は白い麻薬】

++++++++++++++++++

子どもの突発的な凶暴性は、
低血糖によると考えられている。

しかし、だからといって、
甘味料(白砂糖)の多い食品を
子どもに与えろということでは
ない。

誤解のないようにしたい。

+++++++++++++++++

●独特の動き

 キレるタイプの子どもは、独特の動作をすることが知られている。動作が鋭敏になり、突発的
にカミソリでものを切るようにスパスパとした動きになるのがその一つ。

原因についてはいろいろ言われているが、脳の抑制命令が変調したためにそうなると考えると
わかりやすい。

そしてその変調を起こす原因の一つが、白砂糖(精製された砂糖)だそうだ(アメリカ小児栄養
学・ヒューパワーズ博士)。つまり一時的にせよ白砂糖を多く含んだ甘い食品を大量に摂取す
ると、インスリンが大量に分泌され、そのインスリンが脳間伝達物質であるセロトニンの大量分
泌をうながし、それが脳の抑制命令を阻害する、と。

●U君(年長児)のケース

U君の母親から相談があったのは、4月のはじめ。U君がちょうど年長児になったときのことだ
った。母親はこう言った。「部屋の中がクモの巣みたいです。どうしてでしょう?」と。U君は突発
的に金きり声をあげて興奮状態になるなどの、いわゆる過剰行動性が強くみられた。このタイ
プの子どもは、まず砂糖づけの生活を疑ってみる。聞くと母親はこう言った。

 「おばあちゃんの趣味がジャムづくりで、毎週そのジャムを届けてくれます。それで残したらも
ったいないと思い、パンにつけたり、紅茶に入れたりしています」と。そこで計算してみるとU君
は一日、100〜120グラムの砂糖を摂取していることがわかった。かなりの量である。そこで
私はまず砂糖断ちをしてみることをすすめた。が、それからがたいへんだった。

●禁断症状と愚鈍性

 U君は幼稚園から帰ってくると、冷蔵庫を足で蹴飛ばしながら、「ビスケットをくれ、ビスケット
をくれ!」と叫ぶようになったという。

急激に砂糖断ちをすると、麻薬を断ったときに出る禁断症状のようなものがあらわれることが
ある。U君のもそれだった。夜中に母親から電話があったので、「砂糖断ちをつづけるように」
と私は指示した。が、その一週間後、私はU君の姿を見て驚いた。

U君がまるで別人のように、ヌボーッとしたまま、まったく反応がなくなってしまったのだ。何かを
問いかけても、口を半開きにしたまま、うつろな目つきで私をぼんやりと私を見つめるだけ。母
親もそれに気づいてこう言った。「やはり砂糖を与えたほうがいいのでしょうか」と。

●砂糖は白い麻薬

これから先は長い話になるので省略するが、要するに子どもに与える食品は、砂糖のないも
のを選ぶ。今ではあらゆる食品に砂糖は含まれているので、砂糖を意識しなくても、子どもの
必要量は確保できる。ちなみに幼児の一日の必要摂取量は、約10〜15グラム。この量はイ
チゴジャム大さじ一杯分程度。

もしあなたの子どもが、興奮性が強く、突発的に暴れたり、凶暴になったり、あるいはキーキー
と声をはりあげて手がつけられないという状態を繰り返すようなら、一度、カルシウム、マグネ
シウムの多い食生活に心がけながら、砂糖断ちをしてみるとよい。効果がなくてもダメもと。砂
糖は白い麻薬と考える学者もいる。子どもによっては一週間程度でみちがえるほど静かに落
ち着く。

●リン酸食品

なお、この砂糖断ちと合わせて注意しなければならないのが、リン酸である。リン酸食品を与え
ると、せっかく摂取したカルシウム分を、リン酸カルシウムとして体外へ排出してしまう。

と言っても、今ではリン酸(塩)はあらゆる食品に含まれている。たとえば、ハム、ソーセージ
(弾力性を出し、歯ごたえをよくするため)、アイスクリーム(ねっとりとした粘り気を出し、溶けて
も流れず、味にまる味をつけるため)、インスタントラーメン(やわらかくした上、グニャグニャせ
ず、歯ごたえをよくするため)、プリン(味にまる味をつけ、色を保つため)、コーラ飲料(風味を
おだやかにし、特有の味を出すため)、粉末飲料(お湯や水で溶いたりこねたりするとき、水に
よく溶けるようにするため)など(以上、川島四郎氏)。

かなり本腰を入れて対処しないと、リン酸食品を遠ざけることはできない。

●こわいジャンク・フード

ついでながら、W・ダフティという学者はこう言っている。「自然が必要にして十分な食物を生み
出しているのだから、われわれの食物をすべて人工的に調合しようなどということは、不必要
なことである」と。

つまりフード・ビジネスが、精製された砂糖や炭水化物にさまざまな添加物を加えた食品(ジャ
ンク・フード)をつくりあげ、それが人間を台なしにしているというのだ。「(ジャンク・フードは)疲
労、神経のイライラ、抑うつ、不安、甘いものへの依存性、アルコール処理不能、アレルギーな
どの原因になっている」とも。

●U君の後日談

 砂糖漬けの生活から抜けでたとき、そのままふつう児にもどる子どもと、U君のように愚鈍性
が残る子どもがいる。それまでの生活にもよるが、当然のことながら砂糖の量が多く、その期
間が長ければ長いほど、後遺症が残る。

U君のケースでは、それから小学校へ入学するまで、愚鈍性は残ったままだった。白砂糖はカ
ルシウム不足を引き起こし、その結果、「脳の発育が不良になる。先天性の脳水腫をおこす。
脳神経細胞の興奮性を亢進する。痴呆、低脳をおこしやすい。精神疲労しやすく、回復がおそ
い。神経衰弱、精神病にかかりやすい。一般に内分泌腺の発育は不良、機能が低下する」(片
瀬淡氏「カルシウムの医学」)という説もある。

子どもの食生活を安易に考えてはいけない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 子ど
もの食生活 子供の食生活 ジャンクフード ジャンク・フード 低血糖児 砂糖 白い麻薬)







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【4】

●キーキー泣く子ども

●島根県のUYさんより

はじめまして。
HPをよく拝見させて頂いています。
 
娘の事を相談させていただきたく、メールをしています。
娘は5歳半になる年中児で、下に3歳半の妹がいます。

小さい頃から動作の一つ一つが乱暴で、よくグズリ、キーキー興奮しては些細な事で泣く子でし
た。

それは今でも続いており、集中が長く続かず、こだわりも他の子供よりも深い気がします。
話も目を見て心を落ち着けてゆっくり会話をする事が出来ません。

真剣な話をしながら足の先を神経質に動かしたり、手を振ったりして、とても聞いている態度に
は見えません。

走りまわるほどの多動ではありませんが、落ち着いて、じっとしていることが出来ないようです。

そのせいか、話し言葉も五歳にしては表現力がないと思われます。
物の説明はとても難解で、結局何を言っているのか分からない事も多々あります。
 
私自身、過関心であったと思います。
気をつけているつもりですが、やはり完全には治っていません。
今、言葉の方は『おかあさん、牛乳!』や、『あの冷たいやつ!』というような言い方について
は、それでは分からないという事を伝える様にしています。

できるだけ言葉で説明をさせるようにしています。これは少しは効果があるようです。
また食生活ではカルシウムとマグネシウム、そして甘いものには気をつけています。
食べ物の好き嫌いは全くありません。
 
そこで私の相談ですが、もっとしっかり人の話を聞けるようになってほしいと思っています。

心を落ち着かせることが出来るようになるのは、やはり親の過干渉や過関心と関係があるの
でしょうか。

また些細な事(お茶を飲むときのグラスの柄が妹の方がかわいい柄っだった、公園から帰りた
くない等)で、泣き叫んだりするのは情緒不安定ということで、過干渉の結果なのでしょうか。

泣き叫ぶときは、『そーかー、嫌だったのね。』と、私は一応話を聞くようにはしていますが、私
が折れる事はありません。

その事でかえって、泣き叫ぶ機会を増やして、また長引かせている気もするのですが。。。

そしてテーブルの上でオセロなどのゲーム中に、意味も無く飛び上がったりしてテーブルをゆら
してゲームを台無しにしたりする(無意識にやってしまうようです)ような乱雑な動作はどのよう
にすれば良いのか、深く悩んでいます。『静かに落ち着いて、意識を集中させて動く』ことが出
来ないのはやはり干渉のしすぎだったのでしょうか。
自分自信がんばっているつもりですが、時々更に悪化させているのではないかと不安に成りま
す。

できましたら,アドバイスをいただけますでしょうか。宜しくお願い致します。

【UYさんへ、はやし浩司より】

 メール、ありがとうございました。原因と対処法をいろいろ考える前に、大前提として、「今す
ぐ、なおそう」と思っても、なおらないということです。またなおそうと思う必要もありません。こう
書くと、「エエッ!」と思われるかもしれませんが、この問題だけは、子どもにその自覚がない以
上、なおるはずもないのです。

 UYさんのお子さんが、ここに書いた子どもと同じというわけではありませんが、つぎの原稿
は、少し前に私が書いたものです。まず、その原稿を先に、読んでいただけたらと思います。

+++++++++++++++++
 
●汝(なんじ)自身を知れ

「汝自身を知れ」と言ったのはターレスだが、自分を知ることは難しい。
こんなことがあった。

 小学生のころ、かなり問題児だった子ども(中2男児)がいた。どこがどう問題児だったかは、
ここに書けない。書けないが、その子どもにある日、それとなくこう聞いてみた。

「君は、学校の先生たちにかなりめんどうをかけたようだが、それを覚えているか」と。するとそ
の子どもは、こう言った。「ぼくは何も悪くなかった。先生は何でもぼくを目のかたきにして、ぼく
を怒った」と。私はその子どもを前にして、しばらく考えこんでしまった。いや、その子どものこと
ではない。自分のことというか、自分を知ることの難しさを思い知らされたからだ。

ある日1人の母親が私のところにきて、こう言った。「学校の先生が、席決めのとき、『好きな子
どうし、並んですわってよい』と言った。しかしうちの子(小1男児)のように、友だちのいない子
はどうしたらいいのか。配慮に欠ける発言だ。これから学校へ抗議に行くから、一緒に行って
ほしい」と。

もちろん私は断ったが、問題は席決めことではない。その子どもにはチックもあったし、軽いが
吃音(どもり)もあった。神経質な家庭環境が原因だが、「なぜ友だちがいないか」ということの
ほうこそ、問題ではないのか。その親がすべきことは、抗議ではなく、その相談だ。

話はそれたが、自分であって自分である部分はともかくも、問題は自分であって自分でない部
分だ。ほとんどの人は、その自分であって自分でない部分に気がつくことがないまま、それに
振り回される。よい例が育児拒否であり、虐待だ。

このタイプの親たちは、なぜそういうことをするかということに迷いを抱きながらも、もっと大きな
「裏の力」に操られてしまう。あるいは心のどこかで「してはいけない」と思いつつ、それにブレ
ーキをかけることができない。「自分であって自分でない部分」のことを、「心のゆがみ」という
が、そのゆがみに動かされてしまう。ひがむ、いじける、ひねくれる、すねる、すさむ、つっぱ
る、ふてくされる、こもる、ぐずるなど。自分の中にこうしたゆがみを感じたら、それは自分であ
って自分でない部分とみてよい。

それに気づくことが、自分を知る第一歩である。まずいのは、そういう自分に気づくことなく、い
つまでも自分でない自分に振り回されることである。そしていつも同じ失敗を繰り返すことであ
る。

+++++++++++++++

 おとなですら、自分のことを知るのはむずかしい。いわんや、子どもをやということになりま
す。ですからUYさんが、お子さんに向かって、「静かにしなさい」「落ち着きなさい」と言っても、
子どもにその自覚がない以上、子どもの立場からしたら、どうしようもないのです。

 意識には、大きく分けて(1)潜在意識と、(2)自意識(自己意識)があります※。潜在意識と
いうのは、意識できない世界のことです。自意識というのは、自分で自覚できる意識のことで
す。いろいろな説がありますが、教育的には、小学3、4年生を境に、急速にこの自意識が育
ってきます。つまり自分を客観的に見ることができるようになると同時に、その自分を、自分で
コントロールすることができるようになるわけです。

 幼児期にいろいろな問題ある子どもでも、この自意識をうまく利用すると、それを子ども自ら
の意識で、なおすことができます。言いかえると、それ以前の子どもには、その自意識を期待
しても、無理です。たとえば「静かにしなさい」と親がいくら言っても、子ども自身は、自分ではそ
れがわからないのだから、どうしようもありません。UYさんのケースを順に考えてみましょう。

●小さい頃から動作の一つ一つが乱暴で、よくグズリ、キーキー興奮しては些細な事で泣く子
でした。
●それは今でも続いており、集中が長く続かず、こだわりも他の子供よりも深い気がします。
●話も目を見て心を落ち着けてゆっくり会話をする事が出来ません。
●真剣な話をしながら足の先を神経質に動かしたり、手を振ったりして、とても聞いている態度
には見えません。
●走りまわるほどの多動ではありませんが、落ち着いて、じっとしていることが出来ないようで
す。
●そのせいか、話し言葉も5歳にしては表現力がないと思われます。

 これらの問題点を指摘しても、当然のことですが、満5歳の子どもに、理解できるはずもあり
ません。こういうケースで。「キーキー興奮してはだめ」「こだわっては、だめ」「落ち着いて会話
しなさい」「じっとしていなさい」「しっかりと言葉を話しなさい」と言ったところで、ムダというもので
す。

たとえば細かい多動性について、最近では、脳の微細障害説、機能障害説、右脳乱舞説、ホ
ルモン変調説、脳の仰天説、セロトニン過剰分泌説など、ざっと思い浮かんだものだけでも、
いろいろあります。

されにさらに環境的な要因、たとえば下の子が生まれたことによる、赤ちゃんがえり、欲求不
満、かんしゃく発作などもからんでいるかもしれません。またUYさんのメールによると、かなり
神経質な子育てが日常化していたようで、それによる過干渉、過関心、心配先行型の子育て
なども影響しているかもしれません。こうして考え出したら、それこそ数かぎりなく、話が出てき
てしまいます。

 では、どうするか? 原因はどうであれ、今の症状がどうであれ、今の段階では、「なおそう」
とか、「あれが問題」「これが問題」と考えるのではなく、あくまでも幼児期によく見られる一過性
の問題ととらえ、あまり深刻にならないようにしたらよいと思います。

むしろ問題は、そのことではなく、この時期、親が子どものある部分の問題を、拡大視すること
によって、子どものほかのよい面をつぶしてしまうことです。とくに「あれがダメ」「これがダメ」と
いう指導が日常化しますと、子どもは、自信をなくしてしまいます。生きザマそのものが、マイナ
ス型になることもあります。

 私も幼児を35年もみてきました。若いころは、こうした問題のある子どもを、何とかなおして
やろうと、四苦八苦したものです。しかしそうして苦労したところで、意味はないのですね。子ど
もというのは、時期がくれば、何ごともなかったかのように、自然になおっていく。

UYさんのお子さんについても、お子さんの自意識が育ってくる、小学3、4年生を境に、症状は
急速に収まってくるものと思われます。自分で判断して、自分の言動をコントロールするように
なるからです。「こういうことをすれば、みんなに嫌われる」「みんなに迷惑をかける」、あるいは
「もっとかっこよくしたい」「みんなに認められたい」と。

 ですから、ここはあせらず、言うべきことは言いながらも、今の状態を今以上悪くしないことだ
けを考えながら、その時期を待たれたらどうでしょうか。すでにUYさんは、UYさんができること
を、すべてなさっておられます。母親としては、満点です。どうか自信をもってください。私のHP
を読んでくださったということだけでも、UYさんは、すばらしい母親です。(保証します!)

ただもう一つ注意してみたらよいと思うのは、たとえばテレビやテレビゲームに夢中になってい
るようなら、少し遠ざけたほうがよいと思います。このメールの終わりに、私が最近書いた原稿
(中日新聞発表済み)を、張りつけておきます。どうか参考にしてください。

 で、今度はUYさん自身へのアドバイスですが、どうか自分を責めないでください。「過関心で
はないか?」「過干渉ではないか?」と。

 そういうふうに悩むこと自体、すでにUYさんは、過関心ママでも、過干渉ママでもありませ
ん。この問題だけは、それに気づくだけで、すでにほとんど解決したとみます。ほとんどの人
は、それに気づかないまま、むしろ「私はふつうだ」と思い込んで、一方で、過関心や過干渉を
繰りかえします。UYさんにあえていうなら、子育てに疲れて、やや育児ノイローゼ気味なのかも
しれません。ご主人の協力は得られませんか? 少し子育てを分担してもらったほうがよいか
もしれません。

 最後に「そしてテーブルの上でオセロなどのゲーム中に、意味も無く飛び上がったりしてテー
ブルをゆらしてゲームを台無しにしたりする(無意識にやってしまうようです)ような乱雑な動作
はどのようにすれば良いのか、深く悩んでいます。『静かに落ち着いて、意識を集中させて動
く』ことが出来ないのはやはり干渉のしすぎだったのでしょうか」という部分についてですが、こ
う考えてみてください。

 私の経験では、症状的には、小学1年生ぐらいをピークにして、そのあと急速に収まっていき
ます。そういう点では、これから先、体力がつき、行動半径も広くなってきますから、見た目に
は、症状ははげしくなるかもしれません。UYさんが悩まれるお気持ちはよくわかりますが、一
方で、UYさんの力ではどうにもならない部分の問題であることも事実です。

ですから、愛情の糸だけは切らないようにして、言うべきことは言い、あとはあきらめます。コツ
は、完ぺきな子どもを求めないこと。満点の子どもを求めないこと。ここで愛情の糸を切らない
というのは、子どもの側から見て、「切られた」と思わせいないことです。

それを感じると、今度は、子どもの心そのものが、ゆがんでしまいます。が、それでも暴れたら
……。私のばあいは、教室の生徒がそういう症状を見せたら、抱き込んでしまいます。叱った
り、威圧感を与えたり、あるいは恐怖心を与えてはいけません。あくまでも愛情を基本に指導し
ます。それだけを忘れなければ、あとは何をしてもよいのです。あまり神経質にならず、気楽に
構えてください。

 約束します。UYさんの問題は、お子さんが小学3、4年生になるころには、消えています。ウ
ソだと思うなら、このメールをコピーして、アルバムか何かにはさんでおいてください。そして、
四、五年後に読み返してみてください。「林の言うとおりだった」と、そのときわかってくださると
確信しています。もっとも、それまでの間に、いろいろあるでしょうが、そこは、クレヨンしんちゃ
んの母親(みさえさん)の心意気でがんばってください。コミックにVOL1〜10くらいを一度、読
まれるといいですよ。テレビのアニメは、コミックにくらべると、作為的です。

 また何かあればメールをください。なおこのメールは、小生のマガジンの2−25号に掲載し
ますが、どうかお許しください。転載の許可など、お願いします。ご都合の悪い点があれば、至
急、お知らせください。
(030217)

※……これに対して、「自己意識」「感覚運動的意識」「生物的意識」の三つに分けて考える考
え方もある。「感覚的運動意識」というのは、見たり聞いたりする意識のこと。「生物的意識」と
いうのは、生物としての意識をいう。いわゆる「気を失う」というのは、生物的意識がなくなった
状態をいう。このうち自己意識があるのは、人間だけと言われている。この自己意識は、四歳
くらいから芽生え始め、三〇歳くらいで完成するといわれている(静岡大学・郷式徹助教授「フ
ァミリス」03・3月号)。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

【YK様へ(2)】

 食生活がどうなっているのか、私にはわかりませんが、まず試してみるべきことは、(1)食生
活の改善、です。

 ここにも書いたように、MG、CA、Kの多い食生活(自然海産物中心の献立)に切りかえてみ
てください。

 精製された白砂糖を多く含む食品は、避けます。(与えると意識しなくても、今では、ありとあ
らゆる食品に含まれています。幼児のばあい、2歳児でしたら、1日、10グラム前後でじゅうぶ
んです。)

 感情の起伏がはげしく、手にあまるようなら、一度、小児科を訪れてみられてはいかがでしょ
うか。以前とちがい、最近では、すぐれた薬も開発されています。(薬を使うときは、慎重にしま
すが、そのあたりのことは、よくドクターと相談して決めてください。)

 食生活の改善……徹底してするのが、コツです。アイス、ソフト、乳酸飲料などは、避けま
す。徹底してすれば、1、2週間ほどで、効果が現われてきます。

 同じようなケースを、もう一つ、思い出しました。その原稿を添付します。少し古い原稿なの
で、先に書いたことと、内容が少し異なるかもしれませんが、異なっている部分については、先
に書いたほうを、優先してください。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

【栄養学の分野からの考察】

●過剰行動性のある子ども

 もう二〇年以上も前だが、アメリカで「過剰行動性のある子ども」(ヒュー・パワーズ・小児栄養
学)が、話題になったことがある。ささいなことがきっかけで、突発的に過剰な行動に出るタイプ
の子どもである。

日本では、このタイプの子どもはほとんど話題にならなかったが、中学生によるナイフの殺傷
事件が続いたとき、その原因の一つとして、マスコミでこの過剰行動性が取りあげられたこと
がある(九八年)。日本でも岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授らが、こ
の分野の研究者として知られている。

●砂糖づけのH君(年中児)

 私の印象に残っている男児にH君(年中児)という子どもがいた。最初、Hさん(母親)は私に
こう相談してきた。「(息子の)部屋の中がクモの巣のようです。どうしたらいいでしょうか」と。

話を聞くと、息子のH君の部屋がごちゃごちゃというより、足の踏み場もないほど散乱してい
て、その様子がふつうではないというのだ。が、それだけならまだしも、それを母親が注意する
と、H君は突発的に暴れたり、泣き叫んだりするという。始終、こきざみに動き回るという多動
性も気になると母親は言った。私の教室でも突発的に、耳をつんざくような金切り声をあげ、興
奮状態になることも珍しくなかった。そして一度そういう状態になると、手がつけられなくなっ
た。私はその異常な興奮性から、H君は過剰行動児と判断した。

 ただ申し添えるなら、教育の現場では、それが学校であろうが塾であろうが、子どもを診断し
たり、診断名をくだすことはありえない。第一に診断基準が確立していないし、治療や治療方
法を用意しないまま診断したり、診断名をくだしたりすることは許されない。仮にその子どもが
過剰行動児をわかったところで、それは教える側の内心の問題であり、親から質問されてもそ
れを口にすることは許されない。

診断については、診断基準や治療方法、あるいは指導施設が確立しているケース(たとえば
自閉症児やかん黙児)では、専門のドクターを紹介することはあっても、その段階で止める。こ
の過剰行動児についてもそうで、内心では過剰行動児を疑っても、親に向かって、「あなたの
子どもは過剰行動児です」と告げることは、実際にはありえない。教師としてすべきことは、知
っていても知らぬフリをしながら、その次の段階の「指導」を開始することである。
 
●原因は食生活?

ヒュー・パワーズは、「脳内の血糖値の変動がはげしいと、神経機能が乱れ、情緒不安にな
り、ホルモン機能にも影響し、ひいては子どもの健康、学習、行動に障害があらわれる」とい
う。メカニズムは、こうだ。ゆっくりと血糖値があがる場合には、それに応じてインスリンが徐々
に分泌される。しかし一時的に多量の砂糖(特に精製された白砂糖)をとると、多量の、つまり
必要とされる量以上の量のインスリンが分泌され、結果として、子どもを低血糖児の状態にし
てしまうという(大沢)。

そして(1)イライラする。機嫌がいいかと思うと、突然怒りだす、(2)無気力、(3)疲れやすい、
(4)(体が)震える、(5)頭痛など低血糖児特有の症状が出てくるという(朝日新聞九八年2・1
2)。これらの症状は、たとえば小児糖尿病で砂糖断ちをしている子どもにも共通してみられる
症状でもある。私も一度、ある子ども(小児糖尿病患者)を病院に見舞ったとき、看護婦からそ
ういう報告を受けたことがある。

 こうした突発的な行動については、次のように説明されている。つまり脳からは常に相反する
二つの命令が出ている。行動命令と抑制命令である。たとえば手でものをつかむとき、「つか
め」という行動命令と、「つかむな」という抑制命令が同時に出る。

この二つの命令がバランスよく調和して、人間はスムーズな動きをすることができる。しかし低
血糖になると、このうちの抑制命令のほうが阻害され、動きがカミソリでスパスパとものを切る
ような動きになる。先のH君の場合は、こまかい作業をさせると、震えるというよりは、手が勝
手に小刻みに動いてしまい、それができなかった。また抑制命令が阻害されると、感情のコン
トロールもできなくなり、一度激怒すると、際限なく怒りが増幅される。そして結果として、それ
がキレる状態になる。

●恐ろしいカルシウム不足

 砂糖のとり過ぎは、子どもの心と体に深刻な影響を与えるが、それだけではない。砂糖をとり
過ぎると、カルシウム不足を引き起こす。

糖分の摂取が、体内のカルシウムを奪い、虫歯の原因になることはよく知られている。体内の
ブドウ糖は炭酸ガスと水に分解され、その炭酸ガスが、血液に酸性にする。その酸性化した血
液を中和しようと、骨の中のカルシウムが、溶け出るためと考えるとわかりやすい。

体内のカルシウムの98%は、骨に蓄積されている。そのカルシウムが不足すると、「(1)脳の
発育が不良になったり、(2)脳神経細胞の興奮性を亢進したり、(3)精神疲労をしやすくまた
回復が遅くなるなどの症状が現われる」(片瀬淡氏「カルシウムの医学」)という。わかりやすく
言えば、カルシウムが不足すると、知恵の発達が遅れ、興奮しやすく、また精神疲労を起こし
やすいというのだ。甘い食品を大量に摂取していると、このカルシウム不足を引き起こす。

++++++++++++++++++++++++++はやし浩司

●生化学者ミラー博士らの実験

 精製されてない白砂糖を、日常的に多量に摂取すると、インスリンの分泌が、脳間伝達物質
であるセロトニンの分泌をうながし、それが子どもの異常行動を引き起こすという。アメリカの
生化学者のミラーは、次のように説召している。

 「脳内のセロトニンという(脳間伝達)ニューロンから脳細胞に情報を伝達するという、神経中
枢に重要な役割をはたしているが、セロトニンが多すぎると、逆に毒性をもつ」(「マザーリン
グ」八一年(7)号)と。日本でも、自閉症や子どもの暴力、無気力などさまざまな子どもによる
問題行動が、食物と関係しているという研究がなされている。ちなみに、食品に含まれている
白砂糖の量は、次のようになっている。

製品名             一個分の量    糖分の量         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー        
 ヨーグルト    【森永乳業】     90ml  9・6g         
 伊達巻き       【紀文】     39g  11・8g         
 ミートボール   【石井食品】 1パック120g  9・0g         
 いちごジャム   【雪印食品】  大さじ30g  19・7g         
 オレンジエード【キリンビール】    250ml  9・2g         
 コカコーラ              250ml 24・1g         
 ショートケーキ    【市販】  一個100g  28・6g         
 アイス      【雪印乳業】  一個170ml  7・2g         
 オレンジムース  【カルピス】     38g   8・7g         
 プリン      【協同乳業】  一個100g  14・2g         
 グリコキャラメル【江崎グリコ】   4粒20g   8・1g         
 どら焼き       【市販】   一個70g  25g          
 クリームソーダ    【外食】  一杯      26g           
 ホットケーキ     【外食】  一個      27g          
 フルーツヨーグルト【協同乳業】    100g  10・9g         
 みかんの缶詰   【雪印食品】    118g  15・3g         
 お好み焼き   【永谷園食品】  一箱240g  15・0g         
 セルシーチョコ 【江崎グリコ】   3粒14g   5・5g         
 練りようかん     【市販】  一切れ56g  30・8g         
 チョコパフェ     【市販】  一杯      24・0g       

●砂糖は白い麻薬

 H君の母親はこう言った。「祖母(父親の実母)の趣味が、ジャムづくりで、毎週ビンに入った
ジャムを届けてくれます。うちでは、それを食べなければもったいないということで、パンや紅茶
など、あらゆるものにつけて食べています」と。

私はH君の食生活が、かなりゆがんだものと知り、とりあえず「砂糖断ち」をするよう進言した。
が、異変はその直後から起きた。幼稚園から帰ったH君が、冷蔵庫を足げりにしながら、「ビス
ケットがほしい、ビスケットがほしい」と泣き叫んだというのだ。母親は「麻薬患者の禁断症状の
ようで、恐ろしかった」と話してくれた。が、それから数日後。今度はH君が一転、無気力状態
になってしまったという。私がH君に会ったのは、ちょうど一週間後のことだったが、H君はまる
で別人のようになっていた。ボーッとして、反応がまるでなかった。母親はそういうH君を横目で
見ながら、「もう一度、ジャムを食べさせましょうか」と言ったが、私はそれに反対した。

●カルシウムは紳士をつくる

 戦前までは、カルシウムは、精神安定剤として使われていた。こういう事実もあって、イギリス
では、「カルシウムは紳士をつくる」と言われている。子どもの落ち着きなさをどこかで感じた
ら、砂糖断ちをする一方、カルシウムやマグネシウムなど、ミネラル分の多い食生活にこころ
がける。私の経験では、幼児の場合、それだけで、しかも一週間という短期間で、ほとんどの
子どもが見違えるほど落ち着くのがわかっている。

川島四郎氏(桜美林大学元教授)も、「ヒステリーやノイローゼ患者の場合、カルシウムを投与
するだけでなおる」(「マザーリング」八一年(7)号)と述べている。効果がなくても、ダメもと。そ
うでなくても、缶ジュース一本を子どもに買い与えて、「うちの子は小食で困ります」は、ない。体
重15キロ前後の子どもに、缶ジュースを一本与えるということは、体重60キロの人が、4本飲
む量に等しい。おとなでも缶ジュースを四本は飲めないし、飲めば飲んだで、腹の中がガボガ
ボになってしまう。

 なお問題となるのは、精製された白砂糖をいう。どうしても甘味料ということであれば、精製さ
れていない黒砂糖をすすめる。黒砂糖には、天然のミネラル分がほどよく配合されていて、こ
こでいう弊害はない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 過剰
行動児 セロトニン悪玉説 キレる子供の原因 キレる子どもの原因 切れる子供 原因 キ
レる子ども 原因 原因物質)


【キレる子供・補足】

●シシリー宣言

1995年11月、イタリアのシシリー島のエリゼに集まった18名の学者が、緊急宣言を行った。
これがシシリー宣言である。その内容は「衝撃的なもの」(グリーンピース・JAPAN)なものであ
った。

いわく、「これら(環境の中に日常的に存在する)化学物質による影響は、生殖系だけではな
く、行動的、および身体的異常、さらには精神にも及ぶ。これは、知的能力および社会的適応
性の低下、環境の要求に対する反応性の障害となってあらわれる可能性がある」と。つまり環
境ホルモンが、人間の行動にまで影響を与えるというのだ。

が、これで驚いていてはいけない。シシリー宣言は、さらにこう続ける。「環境ホルモンは、脳の
発達を阻害する。神経行動に異常を起こす。衝動的な暴力・自殺を引き起こす。奇妙な行動を
引き起こす。

多動症を引き起こす。IQが低下する。人類は50年間の間に5ポイントIQが低下した。人類の
生殖能力と脳が侵されたら滅ぶしかない」と。ここでいう「社会性適応性の低下」というのは、具
体的には、「不登校やいじめ、校内暴力、非行、犯罪のことをさす」(「シシリー宣言」・グリーン
ピース・JAPAN)のだそうだ。

 この事実を裏づけるかのように、マウスによる実験だが、ビスワエノールAのように、環境ホ
ルモンの中には、母親の胎盤、さらに胎児の脳関門という二重の防御を突破して、胎児の脳
に侵入するものもあるという。つまりこれらの環境ホルモンが、「脳そのものの発達を損傷す
る」(船瀬俊介氏「環境ドラッグ」より)という。

(4)教育の分野からの考察

 前後が逆になったが、当然、教育の分野からも「キルる子ども」の考察がなされている。しか
しながら教育の分野では、キレる子どもの定義すらなされていない。なされないままキレる子ど
もの議論だけが先行している。ただその原因としては、

(1)親の過剰期待、そしてそれに呼応する子どもの過負担。
(2)学歴社会、そしてそれに呼応する受験競争から生まれる子ども側の過負担などが、考えら
れる。こうした過負担がストレッサーとなって、子どもの心を圧迫する。

ただこの段階で問題になるのが、子ども側の耐性である。最近の子どもは、飽食とぜいたくの
中で、この耐性を急速に喪失しつつあると言える。わずかな負担だけで、それを過負担と感
じ、そしてそれに耐えることがないまま、怒りを爆発させてしまう。親の期待にせよ、学歴社会
にせよ、それは子どもを取り巻く環境の中では、ある程度は容認されるべきものであり、こうし
た環境を子どもの世界から完全に取り除くことはできない。これらを整理すると、次のようにな
る。

(1)環境の問題
(2)子どもの耐性の問題。

●終わりに……

以上のように、「キレる子ども」と言っても、その内容や原因はさまざまであり、その分野に応じ
て考える必要がある。またこうした考察をしてのみ、キレる子どもの問題を正面からとらえるこ
とができる。一番危険なのは、キレる子どもを、ただばくぜんと、もっと言えば感傷的にとらえ、
それを論ずることである。こうした問題のとらえ方は、問題の本質を見誤るばかりか、かえって
教育現場を混乱させることになりかねない。


Hiroshi Hayashi+++++++++Sep 06+++++++++++はやし浩司

【砂糖は白い麻薬】

++++++++++++++++++

子どもの突発的な凶暴性は、
低血糖によると考えられている。

しかし、だからといって、
甘味料(白砂糖)の多い食品を
子どもに与えろということでは
ない。

誤解のないようにしたい。

+++++++++++++++++

●独特の動き

 キレるタイプの子どもは、独特の動作をすることが知られている。動作が鋭敏になり、突発的
にカミソリでものを切るようにスパスパとした動きになるのがその一つ。

原因についてはいろいろ言われているが、脳の抑制命令が変調したためにそうなると考えると
わかりやすい。

そしてその変調を起こす原因の一つが、白砂糖(精製された砂糖)だそうだ(アメリカ小児栄養
学・ヒューパワーズ博士)。つまり一時的にせよ白砂糖を多く含んだ甘い食品を大量に摂取す
ると、インスリンが大量に分泌され、そのインスリンが脳間伝達物質であるセロトニンの大量分
泌をうながし、それが脳の抑制命令を阻害する、と。

●U君(年長児)のケース

U君の母親から相談があったのは、4月のはじめ。U君がちょうど年長児になったときのことだ
った。母親はこう言った。「部屋の中がクモの巣みたいです。どうしてでしょう?」と。U君は突発
的に金きり声をあげて興奮状態になるなどの、いわゆる過剰行動性が強くみられた。このタイ
プの子どもは、まず砂糖づけの生活を疑ってみる。聞くと母親はこう言った。

 「おばあちゃんの趣味がジャムづくりで、毎週そのジャムを届けてくれます。それで残したらも
ったいないと思い、パンにつけたり、紅茶に入れたりしています」と。そこで計算してみるとU君
は一日、100〜120グラムの砂糖を摂取していることがわかった。かなりの量である。そこで
私はまず砂糖断ちをしてみることをすすめた。が、それからがたいへんだった。

●禁断症状と愚鈍性

 U君は幼稚園から帰ってくると、冷蔵庫を足で蹴飛ばしながら、「ビスケットをくれ、ビスケット
をくれ!」と叫ぶようになったという。

急激に砂糖断ちをすると、麻薬を断ったときに出る禁断症状のようなものがあらわれることが
ある。U君のもそれだった。夜中に母親から電話があったので、「砂糖断ちをつづけるように」
と私は指示した。が、その一週間後、私はU君の姿を見て驚いた。

U君がまるで別人のように、ヌボーッとしたまま、まったく反応がなくなってしまったのだ。何かを
問いかけても、口を半開きにしたまま、うつろな目つきで私をぼんやりと私を見つめるだけ。母
親もそれに気づいてこう言った。「やはり砂糖を与えたほうがいいのでしょうか」と。

●砂糖は白い麻薬

これから先は長い話になるので省略するが、要するに子どもに与える食品は、砂糖のないも
のを選ぶ。今ではあらゆる食品に砂糖は含まれているので、砂糖を意識しなくても、子どもの
必要量は確保できる。ちなみに幼児の一日の必要摂取量は、約10〜15グラム。この量はイ
チゴジャム大さじ一杯分程度。

もしあなたの子どもが、興奮性が強く、突発的に暴れたり、凶暴になったり、あるいはキーキー
と声をはりあげて手がつけられないという状態を繰り返すようなら、一度、カルシウム、マグネ
シウムの多い食生活に心がけながら、砂糖断ちをしてみるとよい。効果がなくてもダメもと。砂
糖は白い麻薬と考える学者もいる。子どもによっては一週間程度でみちがえるほど静かに落
ち着く。

●リン酸食品

なお、この砂糖断ちと合わせて注意しなければならないのが、リン酸である。リン酸食品を与え
ると、せっかく摂取したカルシウム分を、リン酸カルシウムとして体外へ排出してしまう。

と言っても、今ではリン酸(塩)はあらゆる食品に含まれている。たとえば、ハム、ソーセージ
(弾力性を出し、歯ごたえをよくするため)、アイスクリーム(ねっとりとした粘り気を出し、溶けて
も流れず、味にまる味をつけるため)、インスタントラーメン(やわらかくした上、グニャグニャせ
ず、歯ごたえをよくするため)、プリン(味にまる味をつけ、色を保つため)、コーラ飲料(風味を
おだやかにし、特有の味を出すため)、粉末飲料(お湯や水で溶いたりこねたりするとき、水に
よく溶けるようにするため)など(以上、川島四郎氏)。

かなり本腰を入れて対処しないと、リン酸食品を遠ざけることはできない。

●こわいジャンク・フード

ついでながら、W・ダフティという学者はこう言っている。「自然が必要にして十分な食物を生み
出しているのだから、われわれの食物をすべて人工的に調合しようなどということは、不必要
なことである」と。

つまりフード・ビジネスが、精製された砂糖や炭水化物にさまざまな添加物を加えた食品(ジャ
ンク・フード)をつくりあげ、それが人間を台なしにしているというのだ。「(ジャンク・フードは)疲
労、神経のイライラ、抑うつ、不安、甘いものへの依存性、アルコール処理不能、アレルギーな
どの原因になっている」とも。

●U君の後日談

 砂糖漬けの生活から抜けでたとき、そのままふつう児にもどる子どもと、U君のように愚鈍性
が残る子どもがいる。それまでの生活にもよるが、当然のことながら砂糖の量が多く、その期
間が長ければ長いほど、後遺症が残る。

U君のケースでは、それから小学校へ入学するまで、愚鈍性は残ったままだった。白砂糖はカ
ルシウム不足を引き起こし、その結果、「脳の発育が不良になる。先天性の脳水腫をおこす。
脳神経細胞の興奮性を亢進する。痴呆、低脳をおこしやすい。精神疲労しやすく、回復がおそ
い。神経衰弱、精神病にかかりやすい。一般に内分泌腺の発育は不良、機能が低下する」(片
瀬淡氏「カルシウムの医学」)という説もある。

子どもの食生活を安易に考えてはいけない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 子ど
もの食生活 子供の食生活 ジャンクフード ジャンク・フード 低血糖児 砂糖 白い麻薬)








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【5】

●子どもの睡眠儀式

【愛知県のR子さんより、はやし浩司へ】

こんにちは、先日は講演すごくよかったです。
ありがとうございました。
ホームページもとても充実していますね、びっくりしました。 先生が作ったのですか?

はっきりわかりました。
自分は「マズイ」ぞっと、思いました。
お話の中心は幼稚園に通う子どもの年齢だったのですが、
上の子は八歳で男、下の子は四歳で女です。
下の子は特に問題はないと思うのですが、
(上の子は)保育園の時からなんですけど嫌な事をいやと言わないみたいです。
だからたたかれたりしても、怒らないし、やり返したりしないみたいで、
保育園では年下の子には人気があったようですが
(なにしても怒らない優しい子だったようです)

園長先生にもこのままだといつか爆発するよ!っといわれました。
本人に聞いたこともあるのですが。(嫌な事されても言わないから)
「遊びだからいいんだ!」っと言っていて? 大人みたいっと思っていました。

家ではものすごくいやだーと泣くし妹とよく喧嘩をするし、
パパがあきれてうるさがるくらいの大声で泣きます。
でも、小学校に通ってもどうもたたかれたり、しているみたいで、
帽子のゴムをきられてしまったり、まあふざけているうちはいいんですけど、
エスカレートしたら困るなと思っています。

私が小学校の時に三、四年の頃いじめられていて本当にいやで、
先生にそれらの子と、別なクラスにして欲しいっとお手紙をだしたりしました。
クラスが変わってからは明るい人生でしたが、あの時のようになったら
困るなーと心配になります。

私が情緒不安定で怒りっぽいし、だから安心できなくって
どっしりとできないのかなぁーっと思いました。
人の顔色をうかがうように、上手い事を言ってくれるのもそうなのかぁー。
っと思いました。
それをやはり私が自覚して気をつけるようにしないとだめなんだなぁー
つくづく思いました。まったく
自分の母親やパパから、よくそこがあんたの悪い所だよ、よくないよっとは言われても
実際に私の悩みの答えがそこにあるとは思わなかったです。

「子供がおびえるようになるよ。」っと母に言われても
私は「?」なんで???
「だってイライラが爆発してしまうと、、、
子供が忙しい時にあーでもないコーでもないとなると。
爆発しちゃうもん。」「反省はしているけどさー。」って感じでしたが。。
先生の言っていることがあんまりにも当たっているのでびっくりでした。

大泣きをしている時、ママを求めてぶそくりながらもわざとキーキーないている時は
「わかっているから」っと言って抱きしめてあげるようにしてはいます。
でも忙しくって大半は
パパは「いいかげんにしろ」っと怒鳴るまでほって置いてしまいます。
あまえているのか、あまったれているのか?
いまだに赤ちゃんの火がついたように泣いている時
どうやった安心できるのかと思ってしまいます。

パパもD君を怒りすぎて悪かったっと思っています。
太陽のお母さんになりたいのですが、大地の母になりたいのですが、
現実はそうもいかず。反省
でもお話を聞く事はやっぱりいい事ですよね、知らない事いっぱいあるし
そうなんだ-っと思うことが出来たし。
今回ぎくっと特にしてしまったので、いきなり長いメールになってしまったのですが。

下の子は上の子を見ているのか甘え上手です。
両方ともとっても可愛くって大好きです。

「勉強は何故しないといけないの?」っといつも上の子に聞かれます。
「K子ばっかり遊んでいてずるい」っと
宿題をする時間より遊んでいたいから、だっと言っています。

私は「知ることは面白いよ、字が読めれば本人の好きなプラモデルが自分で作れるし、
恐竜の本も自分で読めるよ」とは言ってみても、わかんないっと言っています。
できたとかやれるようになった喜びをいっぱい感じて欲しいし、と思うのですが

私は勉強が嫌いで高校でもう勉強はまっぴらご免って感じでした。
二〇歳の頃仕事をしながら宅建の勉強をした時に覚える事が面白いと思いまして、
あーもっと前に気が付いてやっていたらなぁーっと思いました。

去年はパソコンの勉強を会社でさせてもらい、朝早起きをして勉強する一年でした。
教室が夜の六時から八時週二回だったので子どもたちが寂しかったかも?
でも充実していました。

大泣きをしている時いまさら恥ずかしいんだけど、どうしたらいいのでしょうか?
勉強は何故しないとっと聞かれた時の私の返事はマズイでしょうか?
夜寝る時には「D君が大好き、D君だーいじ、D君ちゃん大丈夫。ママや
パパがいるからね」っと、言っているのはかえって良くないのかしら?
安心できるかなぁっと思ってたまに言ったりするのですが、

学童保育に行っていてもどーも、いい子みたいでおとなしいようです。        
家ではくそババーとか言っているし、威勢はいいのに。
でもそれは私の情緒不安定が悪かったのには参りました。

今先生の講演を聴けたきっかけを忘れずにしようと思いました。
ありがとうございました。
パパにも聞かせてやりたかったなぁと思いました。
二人で聞けばもっとD君について話ができるから。

またメールします。

(愛知県T市・R子より)

+++++++++++++++++++++++

【R子さんへ、はやし浩司より】

 メールから浮かびあがってくるご家庭は、とてもすばらしいですね。どこか全体にほのぼのと
して、それでいて活気があって。R子さんの、生き生きしたママぶりが、目に浮かんできます。ま
ったく問題ないですよ。順にご質問について、考えてみます。

●いやなことを、『いや』と言わないこと……長男、長女は、総じてみれば、神経質な子育てを
してしまうため、その分、子どもも萎縮し、(あるいは無理をするため)、どうしても意思表示が
へたになります。いやなことがあっても、「いや」と、はっきり言うことができないわけです。しか
し「がまん強い子」と誤解してはいけません。このタイプの子どもは、ストレスを内にためやす
く、そしてその分だけ、心をゆがめやすくなります。ひねくれる、いじける、ぐずる、つっぱるなど
の症状があれば、要注意です。

 しかし一度、そういった行動パターンができると、なおすのは容易ではありません。ただしここ
で誤解していけないのは、そのパターンはだれに対しても、同じというのではありません。子ど
もは相手によって、パターンを変えますので、一部分だけをみて、それが子どものすべてと思っ
てはいけません。家の中で見せる様子と、友だちとの世界で見せる様子が、大きく違うというこ
とはよくあります。A君に見せるパターンと、B君に見せるパターンが、大きく違うということもよく
あります。

 だから一部だけを見て、「うちの子はダメ」とか、「心配だ」と思ってはいけません。もちろん威
圧的な過干渉や、神経質な過関心が日常化すると、子どもの心は内閉しますが、(あるいは反
対に粗放化することもあります)、そういうケースでは、全体に行動や言動が萎縮します。もし
そうなら、それは子どもの問題ではなく、親の問題だということです。

●「いつか爆発するよ」と言われたこと……多分、園長先生は、「ストレスがたまると、それが心
をゆがめ、それがあるとき臨界点を超えて、爆発することもある」という意味で言われたのだと
思います。

 一般に、ふつうでない家庭状況で育てられた子どもは、大きく分けてつぎの二つの経過をた
どります。ひとつは、そのままのパターンでおとなになるタイプ。もうひとつは、その途中で、ゆ
がんだ自分を、自ら、軌道修正しようとするタイプ、です。

 たとえば親の過干渉で、精神そのものが内閉したような子どものばあい、そのまま内閉した
ままおとなになるタイプと、その途中で、そうした自分を一度リシャッフルするタイプがあります。
リシャッフルといっても、ふつうのリシャッフルではありません。心に受けたキズが大きければ
大きいほど、あるいはあとになればなるほど、はげしいリシャフルのし方をします。はげしい暴
力をともなう家庭内騒動に発展することも珍しくありません。子どもの成長ということを考えるな
ら、一見、扱い方がたいへんなように見えるかもしれませんが、後者のほうが、好ましいという
ことになります。

 もちろんR子さんのケースがそうだと言っているのではありません。これも一般論ですが、幼
児教育の世界では、「いい子」ほど、心配な子どもなのです。親に向かって、「ババア」とか、「ク
ソババア、早く死んでしまえ」と言う子ども、あるいはそういうことが言える子どものほうが、正常
だということです。子どもの口が悪いことを、あまり深刻に悩まないこと。言いたいだけ言わせ
ながら、相手にしないようにします。相手は、子どもなのですから。

●イライラすることについて……約72%の母親が、子育てでイライラしています(日本女子社
会教育会・平成七年調査)。そのうち、7%は、「いつもイライラする」と答えています。だから、
ほとんどの母親は、子育てをしながら、イライラしていると考えて、まちがいないようです。R子
さんだけが、例外ではないということです。
 
 そこで大切なことは、そのイライラを、自分の範囲にとどめ、それを子どもにぶつけないこと。
……と言っても、子育てはいちいち考えてするものではありません。子育てはいわば、条件反
射のかたまりのようなものです。たいていの母親は、「頭の中ではわかっているのですが、いざ
その場になると、つい……」と言います。子育てというのは、そういうものです。あまり自分を責
めないように。子どもにも適応能力があるので、その能力を信じてください。情緒不安もある一
定の範囲なら、子どものほうがそういう親でも適応してしまいます。

 子育てをしていて、イライラしたら、子育てそのものから離れる方法を考えます。少し無責任
な言い方かもしれませんが、ときには、「なるようになれ!」と、子育てそのものから離れるよう
な「いいかげんさ」も大切だということです。またそのほうが、子どもも羽をのばすことができ、
かえって子どもの表情も明るくなります。

●「赤ちゃんが火がついたように怒る」について……かんしゃく発作が疑われます。時期的に
は、もうそろそろ落ちついてくるものと、思われます。自意識(自分の意思)で、コントロールす
るようになるからです。ただこのタイプの子どもは、興奮性だけは残りやすく、そのため年齢が
大きくなっても、緊張したりすると、声がうわずったり、反対におどおどしたりすることがありま
す。興奮させないように。食生活の面で、カルシウム分やマグネシウム分の食生活が、この時
期、たいへん効果的ですので、一度、ためしてみてください。

●甘えじょうず……心の開いている子どもは、甘えじょうずです。甘え方が自然で、親のほうが
やさしくしてあげると、そのやさしさが、スーッと子どもの心の中にしみていくのがわかります。R
子さんのお子さんは、「甘えじょうず」ということですので、心の問題はないとみます。このままス
キンシップを大切にして、お子さんたちが心を開いてきたら、それをいつもやさしく包んであげ
てください。一般に愛情豊かな家庭に育った子どもは、ぬいぐるみを見せたりすると、ほっとす
るようなやさしさを見せます。

●「どうして勉強しなければいけないの?」について……R子さんの答え方は、満点です。視線
がお子さんの目の高さにあるのが、よくわかります。コツは、言うべきことはしっかり言いながら
も、あとは「時」を待つということです。その場で、「わかんない」とか言って、反応がなくても、あ
せってはいけません。子どもと接するときのコツは、言うべきことは言いながらも、そのときは、
わからせようと思わないこと。

イギリスの格言に、『子どもの耳は長い』というのがあります。もともとの意味は、「子どもはおと
なのヒソヒソ話でも聞いてしまうから、注意しろ」という意味ですが、私は勝手に、「子どもの耳
は長く、耳に入ってから脳に届くまで時間がかかる」と解釈しています。参考にしてください。

●寝る前の愛情表現……心安らかな眠りは、子どもの情緒の安定のためには、とても重要で
す。欧米では、「ベッドタイムゲームの時間」として、たいへん大切にしています。日本でも就眠
儀式といいますが、子どもは毎晩、眠りにつく前、同じ行為を繰り返すという習性があります。

まずいのは、子どもをベッドへ無理に追い込み、電気を消してしまうような、乱暴な行為です。
子どもの情緒が不安定になることがあります。R子さんのやり方でよいと思います。概して言え
ば、日本人は、元来スキンシップの少ない民族です。遠慮せず、ポイント的に濃厚な愛情を表
現してみてください。ベタベタの愛情表現がよいわけではありません。要するに、子どもを安心
させるようなスキンシップを大切にします。

●「いい子みたいでおとなしいようです」について……内弁慶外幽霊というのですね。

 以上です。R子さんの子育てで、参考にしていただければ、うれしく思います。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 幼児
の就眠儀式 就眠儀式 ベッドタイムゲーム ベッド・タイム・ゲーム)







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【6】

●体に障害をもつ子ども

●Tさん(群馬県)からのメール

++++++++++++++

体に障害をもつ子どもをもつ、Tさん。
そのTさんから、こんなメールが届いた。

++++++++++++++

はじめて相談いたします。 今悩んでいるのは、3男(中2)のことです。

生まれつき右足が不自由で、2才のときに手術をしました。現在、歩行には問題がありません
が、速く走ったりなどは、できません。自分はみんなと違い、自由に運動ができないと知ったこ
ろ(4年生)から、なんで俺だけ・・・という気持ちが強くなったようです。

中学で職業調べを始め、運動に制約があると、資格をとる上での第一条件(主に航海士など)
と知り、ショックを受け、私に向かい、お前のせいで俺の夢が奪われた・・責任とれ・・と、くどく
ど言いつづけたり、暴力を振るったりするようになりました。

また、寝起きなどは特に悪く、お前の声がキモイ出て行けなどと言い、腕や背中を殴ったりしま
す。塾や学校に遅刻するのも、お前のせいだ・・と何事も自分は反省せず、私のせいにしま
す。

俺の右足を奪ってどうする気だ・・何かいうことはないのか、と毎日のように怒鳴ります。私は、
わざとじゃないけどごめんね、と謝るだけです。夢がなくなったから、勉強してもしょうがない、と
いい、宿題はしません。成績は悪いです。

去年、仲の良かった友達とけんかしてから、親友もいないようです。家で会話するのも、私だけ
で、夫や兄弟とはほとんど会話しません。

二学期になり、学校行かないといい、5日ほど休みました。 言いがかりと暴力で、毎日がとて
も不安です。どうしたら、息子の心が平和になってくれるのでしょうか。将来にもっと夢と希望を
持ってほしいのですが・・・障害をもってなかったら・・と私もいまさらながらに思ってしまうことも
あります。家族で笑い会える日心待ちにしています。アドバイスをよろしくお願いします。
(07年9月)

【はやし浩司よりTさんへ】

拝復

こんばんは!

メールを読みました。

読んで、こう思いました。

愛し合うべき人たちが、たがいに憎しみ合っている。
キズつけ合っている、とです。とても悲しい話ですね。

お子さんは、反抗期(燃え上がってくる、エネルギー)
+自我の同一性の危機的(自分で何をしたらよいか
わからない)状況で、情緒的にも混乱していると
考えてください。

障害のことは、半ば口実にすぎません。

私も個人的に似たような場面を経験していますが、
『許して、忘れる』です。

この言葉だけを念じて、この時期を過ぎてください。

あなたの思いは、必ず、お子さんに届きます。
時間はかかりますが、そのときあなたたちは、
真の親子関係を築くことができます。

不登校の問題も同時進行の形で起きていますが、
この際、子どもの心だけを考え、最優先します。

不登校など、何でもない問題です。

運命は受け入れましょう。運命にさからうと、
運命はキバをむいて、あなたの襲いかかってきます。
しかし運命というのは、受け入れてしまえば、
何ともありません。運命のほうが、シッポを巻いて
逃げていきます。

そういうものです。

子どもの混乱は、今しばらくつづきますが、今こそ
あなたの愛がためされているときだと思ってください。
そしてあなた自身が、「十字架のひとつやふたつ何だ!」と、
いっしょに背負う姿を見せてあげてください。

ここが正念場ですよ。逃げてはいけませんよ。

「あなたはさみしいのね」「孤独なのね」「つらいのね」と
子どもに話しかけてみてください。そしてどんなことが
あっても、子どもを見捨てない……今はその混乱期
です。

このタイプの子どもは、一度、どこかで自分の運命を
受け入れてしまえば、ウソのように静かになります。
その時期は、近いと思います。というのも、
こういう状態で、いちばんつらい思いをしているのは、
あなたの子ども自身だからです。

そのつらさに、子ども自身が耐えられなくなります。
心理学にも、(フリップ・フロップ理論)というのがあります。

心が不安定な状態では、本人自身が疲れるため、
やがてどちらかに転ぶ……という理論です。

そのとき、静かになります。

以前、書いた原稿を添付します。

++++++++++++++++++++++++++

【子育てのすばらしさを学ぶ法(許して忘れろ!)】


子育てのすばらしさを教えられるとき


●子をもって知る至上の愛    


 子育てをしていて、すばらしいと思うことが、しばしばある。その一つが、至上の愛を教えられ
ること。ある母親は自分の息子(三歳)が、生死の境をさまよったとき、「私の命はどうなっても
いい。息子の命を救ってほしい」と祈ったという。こうした「自分の命すら惜しくない」という至上
の愛は、人は、子どもをもってはじめて知る。


●自分の中の命の流れ


 次に子育てをしていると、自分の中に、親の血が流れていることを感ずることがある。「自分
の中に父がいる」という思いである。私は夜行列車の窓にうつる自分の顔を見て、そう感じたこ
とがある。その顔が父に似ていたからだ。そして一方、息子たちの姿を見ていると、やはりどこ
かに父の面影があるのを知って驚くことがある。



 先日も息子が疲れてソファの上で横になっていたとき、ふとその肩に手をかけた。そこに死ん
だ父がいるような気がしたからだ。いや、姿、形だけではない。ものの考え方や感じ方もそう
だ。私は「私は私」「私の人生は私のものであって、誰のものでもない」と思って生きてきた。し
かしその「私」の中に、父がいて、そして祖父がいる。自分の中に大きな、命の流れのようなも
のがあり、それが、息子たちにも流れているのを、私は知る。つまり子育てをしていると、自分
も大きな流れの中にいるのを知る。自分を超えた、いわば生命の流れのようなものだ。 



●神の愛と仏の慈悲


 もう一つ。私のような生き方をしている者にとっては、「死」は恐怖以外の何ものでもない。死
はすべての自由を奪う。死はどうにもこうにも処理できないものという意味で、「死は不条理な
り」とも言う。そういう意味で私は孤独だ。いくら楽しそうに生活していても、いつも孤独がそこに
いて、私をあざ笑う。



 すがれる神や仏がいたら、どんなに気が楽になることか。が、私にはそれができない。しかし
子育てをしていると、その孤独感がふとやわらぐことがある。自分の子どものできの悪さを見
せつけられるたびに、「許して忘れる」。これを繰り返していると、「人を愛することの深さ」を教
えられる。いや、高徳な宗教者や信仰者なら、深い愛を、万人に施すことができるかもしれな
い。が、私のような凡人にはできない。できないが、子どもに対してならできる。いわば神の
愛、仏の慈悲を、たとえミニチュア版であるにせよ、子育ての場で実践できる。それが孤独な
心をいやしてくれる。


●神や仏の使者


 たかが子育てと笑うなかれ。親が子どもを育てると、おごるなかれ。子育てとは、子どもを大
きくすることだと誤解するなかれ。子育ての中には、ひょっとしたら人間の生きることにまつわ
る、矛盾や疑問を解く鍵が隠されている。それを知るか知らないかは、その人の問題意識の
深さにもよる。が、ほんの少しだけ、自分の心に問いかけてみれば、それでよい。それでわか
る。



 子どもというのは、ただの子どもではない。あなたに命の尊さを教え、愛の深さを教え、そして
生きる喜びを教えてくれる。いや、それだけではない。子どもはあなたの命を、未来永劫にわ
たって、伝えてくれる。つまりあなたに「生きる意味」そのものを教えてくれる。子どもはそういう
意味で、まさに神や仏からの使者と言うべきか。いや、あなたがそれに気づいたとき、あなた
自身も神や仏からの使者だと知る。そう、何がすばらしいかといって、それを教えられることぐ
らい、子育てですばらしいことはない。


+++++++++++++++++++++++++++

【子どもへの愛を深める法(子どもは下から見ろ!)】


親が子どもを許して忘れるとき


●苦労のない子育てはない


 子育てには苦労はつきもの。苦労を恐れてはいけない。その苦労が親を育てる。親が子ども
を育てるのではない。子どもが親を育てる。



 よく「育自」という言葉を使って、「子育てとは自分を育てること」と言う人がいる。まちがっては
いないが、しかし子育てはそんな甘いものではない。親は子育てをしながら、それこそ幾多の
山や谷を越え、「子どもを産んだ親」から、「真の親」へと、いやおうなしに育てられる。



 たとえばはじめて幼稚園へ子どもを連れてくるような親は、確かに若くてきれいだが、どこか
ツンツンとしている。どこか軽い(失礼!)。バスの運転手さんや炊事室のおばさんにだと、あ
いさつすらしない。しかしそんな親でも、子どもが幼稚園を卒園するころには、ちょうど稲穂が
実って頭をさげるように、姿勢が低くなる。人間味ができてくる。


●子どもは下からみる


 賢明な人は、ふつうの価値を、それをなくす前に気づく。そうでない人は、それをなくしてから
気づく。健康しかり、生活しかり、そして子どものよさも、またしかり。


 私には三人の息子がいるが、そのうちの二人を、あやうく海でなくすところだった。とくに二男
は、助かったのはまさに奇跡中の奇跡。あの浜名湖という広い海のまん中で、しかもほとんど
人のいない海のまん中で、一人だけ魚を釣っている人がいた。あとで話を聞くと、国体の元水
泳選手だったという。



 私たちはそのとき、湖上に舟を浮かべて、昼寝をしていた。子どもたちは近くの浅瀬で遊んで
いるものとばかり思っていた。が、三歳になったばかりの三男が、「お兄ちゃんがいない!」と
叫んだとき、見ると上の二人の息子たちが流れにのまれるところだった。私は海に飛び込み、
何とか長男は助けたが、二男はもう海の中に沈むところだった。



 私は舟にもどり、懸命にいかりをたぐろうとしたが、ロープが長くのびてしまっていて、それも
できなかった。そのときだった。「もうダメだア」と思って振り返ると、その元水泳選手という人
が、海から二男を助け出すところだった。


●「こいつは生きているだけでいい」


 以後、二男については、問題が起きるたびに、「こいつは生きているだけでいい」と思いなお
すことで、私はその問題を乗り越えることができた。花粉症がひどくて、不登校を繰り返したと
きも、受験勉強そっちのけで作曲ばかりしていたときも、それぞれ、「生きているだけでいい」と
思いなおすことで、乗り越えることができた。



 昔の人は、いつも、こう言っていた。『上見てキリなし。下見てキリなし』と。人というのは、上
ばかりみていると、いつまでたっても安穏とした生活はやってこないということだが、子育てで行
きづまったら、「下」から見る。「下」を見ろというのではない。下から見る。「生きている」という
原点から子どもを見る。そうするとあらゆる問題が解決するから不思議である。


●子育ては許して忘れる 


 子育てはまさに「許して忘れる」の連続。昔、学生時代、私が人間関係のことで悩んでいる
と、オーストラリアの友人がいつもこう言った。「ヒロシ、許して忘れろ」(※)と。 




 英語では「Forgive and Forget」という。この「フォ・ギブ(許す)」という単語は、「与えるため」と
も訳せる。同じように「フォ・ゲッツ(忘れる)」は、「得るため」とも訳せる。しかし何を与えるため
に許し、何を得るために忘れるのか。私は心のどこかで、この言葉の意味をずっと考えていた
ように思う。が、ある日。その意味がわかった。


 私が自分の息子のことで思い悩んでいるときのこと。そのときだ。この言葉が頭を横切った。
「どうしようもないではないか。どう転んだところで、お前の子どもはお前の子どもではないか。
許して忘れてしまえ」と。



 つまり「許して忘れる」ということは、「子どもに愛を与えるために許し、子どもから愛を得るた
めに忘れろ」ということになる。そしてその深さ、つまりどこまで子どもを許し、忘れるかで、親の
愛の深さが決まる。



 もちろん許して忘れるということは、子どもに好き勝手なことをさせろということではない。子ど
もの言いなりになるということでもない。許して忘れるということは、子どもを受け入れ、子ども
をあるがままに認めるということ。子どもの苦しみや悲しみを自分のものとして受け入れ、仮に
問題があったとしても、その問題を自分のものとして認めるということをいう。


 難しい話はさておき、もし子育てをしていて、行きづまりを感じたら、子どもは「生きている」と
いう原点から見る。が、それでも袋小路に入ってしまったら、この言葉を思い出してみてほし
い。許して忘れる。それだけであなたの心は、ずっと軽くなるはずである。

※……聖書の中の言葉だというが、私は確認していない。


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あなたはけっしてひとりではないし、またほとんどの親が
それぞれ問題をかかえて、がんばっています。

外からは、それが見えないだけです。

また気が向いたら、いただいたメールを、みなさんに
紹介させてください。よろしくお願いします。

マガジンでは、いろいろな方の問題をよく取りあげます。
また参考にしてください。

おやすみなさい。

どうか、心安らかに!

そうそうもし荒れがあまりひどいようでしたら、
まずTさんだけで、心療内科を訪れて
みてください。アドバイスがもらえるはずです。

今は、よい薬もあります。

ひとりで悩まないこと。

では、

はやし浩司










 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【7】

●子どもの情緒不安

静岡県Y市の、YNさん(母親)から、子どもの情緒不安についての相談をもらった。よく誤解さ
れるが、情緒が不安定だから、情緒不安というのではない。心の緊張感がとれない状態を、情
緒不安という。

心が緊張しているときに、不安や心配が入り込むと、その不安や緊張を解消しようと、子ども
の心は、一挙に不安定になる。情緒が不安定になるのは、あくまでも、その結果でしかない。

だから子どもが情緒不安症状を示したら、何が、どう作用し、そしてなぜ、心が緊張状態になる
かを、知る。たいていは、愛情問題がからんでいるとみるが、恐怖症、神経症など、何かの大
きなショックが原因で、心が緊張状態になることもある。

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こんにちは。五歳の娘についての相談です。

今年四月に年中で家の目の前にある幼稚園に入園し、二か月ほどは楽しそうに通っていて、
新しい友達もしょっちゅう家に誘うなどして、順調にみえました。

が、ある日いつものように園まで送ると、先生を見たとたん泣き出し、「帰る」と、おお泣きし、そ
の日から園内ではすごく情緒不安定になり、先生の話によれば、なんでもないのに泣き出した
り、人がわ〜っと集まると泣き出し、一日中先生と手をつないでいて、給食も自分の席では座
れず、先生のそばにいないと、不安で不安でしょうがないようです。  

娘に理由を聞くと、イロイロ言うのですが、「誰々が怖いから」「牛乳が飲めないから」「折り紙が
できないから」と、聞くたびに理由が変わります。

毎日、幼稚園行きたくないとか、やめるとか言っていたのですが、無理をして連れて行っていま
した。
 
一度体育参観で様子を見たときは、ショックでした。まず、顔つきがいつもと全く違うのです。

終始オドオドした目つきで、先生と少し手が離れだけで、明らかにビクビクした目つきになり、
泣きはらした真っ赤な目で、その場にいるだけで必死な様子でした。
 
娘は不器用なほうだし、遊具で遊ぶのも(鉄棒など)苦手なのですが、今までは、少し、できた
だけで、親が褒めていたので、娘は多分幼稚園に入るまで、自分が周りに比べて、何でも出来
るほうだと思っていたと思うのですが、それが違うと分かり、イヤになってしまったのかな?、と
も思いました。

夏休みの間に、鉄棒で前周りができるようになり、二学期はそれをきっかけに幼稚園の鉄棒を
楽しみに、通っていたのですが、一〇月中気管支炎になり、何日か休んだのを多分きっかけと
して、また不安定になってきました。

朝行く時は大丈夫だけど、園について、私と別れる頃になると泣き出し、クラスの子に誘われ
ても返事もできず、ひきつった顔をしています。

ここ何日かは、また行きたくないと言い出しました。
 
一度夏休み明けに、心配していたのに、損したな〜と思ってしまうほど、あっさり幼稚園でくつ
ろいだ様子で通えていたので、一学期の時のように「ガンバレガンバレ」と無理に通わせたほう
がいいのか、無理させずしばらく気のすむまで休ませた方がいいのか、悩んでいます。
 
はやし先生のページを読んで思い当たったのですが、幼稚園に入るか入らないか……という
時期から、昼寝をしたがらなくなり、理由を聞くと「怖い夢をみるから」というのです。最近も言い
ます。悪夢を見ているということですよね? 寝ている時まで不安な気持ちなのでしょうか?
 
二歳半の弟がいます。私にべったりで、上の娘を抱っこしてなだめていると、怒って割り込んで
きます。上の娘は体が学年で一番大きく重いので、つい背中に乗られると、「重いからやめて」
と言ってしまったり、聞き分けがいいので、何でも我慢させてしまっていたのかもしれないと、後
悔することが、たくさんあります。
 
でも私は、娘のこれからの事を前向きに、どうしたら娘にとって一番いいのかを考えたいので
す。きびしく具体的なアドバイスをお願いします!

++++++++++++++++++

まず、子どもの情緒不安について、以前、
書いた原稿(発表済み)を、参考にしてほしい。

(1)情緒不安
(2)欲求不満
(3)分離不安
(4)基底不安

++++++++++++++++++

(1)子どもの心が不安定になるとき 

●情緒が不安定な子ども

 子どもの成長は、次の四つをみる。@精神の完成度、A情緒の安定度、B知育の発達度、
それにC運動能力。このうち情緒の安定度は、子どもが肉体的に疲れていると思われるとき
をみて、判断する。運動会や遠足のあと、など。

そういうときでも、ぐずり、ふさぎ込み、不機嫌、無口(以上、マイナス型)、あるいは、暴言、暴
力、イライラ、激怒(以上、プラス型)がなければ、情緒が安定した子どもとみる。子どもは、肉
体的に疲れたときは、「疲れた」とは言わない。「眠い」と言う。子どもが「疲れた」というときは、
神経的な疲れを疑う。子どもはこの神経的な疲れにたいへん弱い。それこそ日中、五〜一〇
分、神経をつかっただけで、ヘトヘトに疲れてしまう。

●情緒不安とは……?

 外部の刺激に左右され、そのたびに精神的に動揺することを情緒不安という。二〜四歳の
第一反抗期、思春期の第二反抗期に、とくに子どもは動揺しやすくなる。

 その情緒が不安定な子どもは、神経がたえず緊張状態にあることが知られている。気を許さ
ない、気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にする、よい子ぶるなど。その緊張状
態の中に、不安が入り込むと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不安
定になる。

症状が進むと、周囲に溶け込めず、引きこもったり、怠学、不登校を起こしたり(マイナス型)、
反対に攻撃的、暴力的になり、突発的に興奮して暴れたりする(プラス型)。

表情にだまされてはいけない。柔和な表情をしながら、不安定な子どもはいくらでもいる。この
タイプの子どもは、ささいなことがきっかけで、激変する。母親が、「ピアノのレッスンをしよう
ね」と言っただけで、激怒し、母親に包丁を投げつけた子ども(年長女児)がいた。また集団的
な非行行動をとったり、慢性的な下痢、腹痛、体の不調を訴えることもある。

●原因の多くは異常な体験

 原因としては、乳幼児期の何らかの異常な体験が引き金になることが多い。たとえば親自身
の情緒不安のほか、親の放任的態度、無教養で無責任な子育て、神経質な子育て、家庭騒
動、家庭不和、何らかの恐怖体験など。

ある子ども(五歳男児)は、たった一度だが、祖父にはげしく叱られたのが原因で、自閉傾向
(人と心が通い合わない状態)を示すようになった。また別の子ども(三歳男児)は、母親が入
院している間、祖母に預けられたことが原因で、分離不安(親の姿が見えないと混乱状態にな
る)になってしまった。

 ふつう子どもの情緒不安は、神経症による症状をともなうことが多い。ここにあげた体の不調
のほか、たとえば夜驚、夢中遊行、かん黙、自閉、吃音(どもり)、髪いじり、指しゃぶり、チッ
ク、爪かみ、物かみ、疑惑症(臭いかぎ、手洗いぐせ)、かみつき、歯ぎしり、強迫傾向、潔癖
症、嫌悪症、対人恐怖症、虚言、収集癖、無関心、無感動、緩慢行動、夜尿症、頻尿症など。

●原因は、家庭に!

 子どもの情緒が不安定になると、たいていの親は原因さがしを、外の世界に求める。しかし
まず反省すべきは、家庭である。

強度の過干渉(子どもにガミガミと押しつける)、過関心(子どもの側からみて神経質で、気が
抜けない環境)、家庭不和(不安定な家庭環境、愛情不足、家庭崩壊、暴力、虐待)、威圧的
な家庭環境など。夫婦喧嘩もある一定のワク内でなされているなら、子どもにはそれほど大き
な影響を与えない。が、そのワクを越えると、大きな影響を与える。子どもは愛情の変化には、
とくに敏感に反応する。

 子どもが小学生になったら、家庭は、「体を休め、疲れた心をいやす、いこいの場」でなけれ
ばならない。アメリカの随筆家のソロー(一八一七〜六二)も、『ビロードのクッションの上より、
カボチャの頭』と書いている。

人というのは、高価なビロードのクッションの上に座るよりも、カボチャの頭の上に座ったほう
が気が休まるという意味だが、多くの母親にはそれがわからない。わからないまま、家庭を「し
つけの場」と位置づける。学校という「しごきの場」で、いいかげん疲れてきた子どもに対して、
家の中でも「勉強しなさい」と子どもを追いまくる。「宿題は終わったの」「テストは何点だった
の」「こんなことでは、いい高校へ入れない」と。これでは子どもの心は休まらない。

●子どもの情緒を安定させるために

 子どもの情緒が不安定になったら、スキンシップをより濃厚にし、温かい語りかけを大切にす
る。叱ったり、冷たく突き放すのは、かえって情緒を不安定にする。一番よい方法は、子どもが
ひとりで誰にも干渉されず、のんびりとくつろげるような時間と場所をもてるようにすること。親
があれこれ気をつかうのは、かえって逆効果。

 ほかにカルシウムやマグネシウム分の多い食生活に心がける。とくにカルシウムは天然の
精神安定剤と呼ばれている。戦前までは、日本では精神安定剤として使われていた。錠剤で
与えるという方法もあるが、牛乳や煮干など、食品として与えるほうがよいことは言うまでもな
い。

なお情緒というのは一度不安定になると、その症状は数か月から数年単位で推移する。親が
あせって何とかしようと思えば思うほど、ふつう子どもの情緒は不安定になる。また一度不安
定になった心は、そんなに簡単にはなおらない。今の状態をより悪くしないことだけを考えなが
ら、子どものリズムに合わせた生活に心がける。

 (参考)

●子どもの神経症について
心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。子どもの
神経症は、精神面、身体面、行動面の三つの分野に分けて考える。

@精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状
(周囲の者には理解できないものに対して、おののく、こわがる)、不安症状(理由もなく悩
む)、抑うつ感(ふさぎ込む)など。混乱してわけのわからないことを言ってグズグズしたり、反
対に大声をあげて、突発的に叫んだり、暴れたりすることもある。

A身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿症、
頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発
熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面で
の神経症に先立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号とと
らえて警戒する。

B行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって行動面
に表れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、無気力、怠学、無
関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになる。パンツ一枚で出
歩くなど、生活習慣がだらしなくなることもある。

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(2)子どもが欲求不満になるとき

●欲求不満の三タイプ

 子どもは自分の欲求が満たされないと、欲求不満を起こす。この欲求不満に対する反応は、
ふつう、次の三つに分けて考える。

@攻撃・暴力タイプ

 欲求不満やストレスが、日常的にたまると、子どもは攻撃的になる。心はいつも緊張状態に
あり、ささいなことでカッとなって、暴れたり叫んだりする。私が「このグラフは正確でないから、
かきなおしてほしい」と話しかけただけで、ギャーと叫んで私に飛びかかってきた小学生(小四
男児)がいた。

あるいは私が、「今日は元気?」と声をかけて肩をたたいた瞬間、「このヘンタイ野郎!」と私を
足げりにした女の子(小五)もいた。こうした攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩する、暴力を振る
う、暴言を吐く)と、裏に隠れてするタイプ(弱い者をいじめる、動物を虐待する)に分けて考え
る。

A退行・依存タイプ

 ぐずったり、赤ちゃんぽくなったり(退行性)、あるいは誰かに依存しようとする(依存性)。こ
のタイプの子どもは、理由もなくグズグズしたり、甘えたりする。母親がそれを叱れば叱るほ
ど、症状が悪化するのが特徴で、そのため親が子どもをもてあますケースが多い。

B固着・執着タイプ

 ある特定の「物」にこだわったり(固着性)、あるいはささいなことを気にして、悶々と悩んだり
する(執着性)。ある男の子(年長児)は、毛布の切れ端をいつも大切に持ち歩いていた。最近
多く見られるのが、おとなになりたがらない子どもたち。赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起
こす。

ある男の子(小五)は、幼児期に読んでいたマンガの本をボロボロになっても、まだ大切そうに
カバンの中に入れていた。そこで私が、「これは何?」と声をかけると、その子どもはこう言っ
た。「どうチェ、読んでは、ダメだというんでチョ。読んでは、ダメだというんでチョ」と。子どもの
未来を日常的におどしたり、上の兄や姉のはげしい受験勉強を見て育ったりすると、子どもは
幼児がえりを起こしやすくなる。

 またある特定のものに依存するのは、心にたまった欲求不満をまぎらわすためにする行為と
考えるとわかりやすい。これを代償行為というが、よく知られている代償行為に、指しゃぶり、
爪かみ、髪いじりなどがある。別のところで何らかの快感を覚えることで、自分の欲求不満を
解消しようとする。

●欲求不満は愛情不足

 子どもがこうした欲求不満症状を示したら、まず親子の愛情問題を疑ってみる。子どもという
のは、親や家族の絶対的な愛情の中で、心をはぐくむ。ここでいう「絶対的」というのは、「疑い
をいだかない」という意味。

その愛情に「ゆらぎ」を感じたとき、子どもの心は不安定になる。ある子ども(小一男児)はそれ
までは両親の間で、川の字になって寝ていた。が、小学校に入ったということで、別の部屋で寝
るようになった。とたん、ここでいう欲求不満症状を示した。その子どものケースでは、目つき
が鋭くなるなどの、いわゆるツッパリ症状が出てきた。

子どもなりに、親の愛がどこかでゆらいだのを感じたのかもしれない。母親は「そんなことで…
…」と言ったが、再び川の字になって寝るようになったら、症状はウソのように消えた。

●濃厚なスキンシップが有効

 一般的には、子どもの欲求不満には、スキンシップが、たいへん効果的である。ぐずったり、
わけのわからないことをネチネチと言いだしたら、思いきって子どもを抱いてみる。最初は抵抗
するような様子を見せるかもしれないが、やがて静かに落ちつく。あとはカルシウム分、マグネ
シウム分の多い食生活に心がける。

 なおスキンシップについてだが、日本人は、国際的な基準からしても、そのスキンシップその
ものの量が、たいへん少ない。欧米人のばあいは、親子でも日常的にベタベタしている。よく
「子どもを抱くと、子どもに抱きグセがつかないか?」と心配する人がいるが、日本人のばあ
い、その心配はまずない。

そのスキンシップには、不思議な力がある。魔法の力といってもよい。子どもの欲求不満症状
が見られたら、スキンシップを濃厚にしてみる。それでたいていの問題は解決する。

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(3)子どもが分離不安になるとき

●親子のきずなに感動した!?     

 ある女性週刊誌の子育てコラム欄に、こんな手記が載っていた。日本でもよく知られたコラム
ニストの書いたものだが、いわく、「うちの娘(三歳)をはじめて幼稚園へ連れていったときのこ
と。娘ははげしく泣きじゃくり、私との別れに抵抗した。私はそれを見て、親子の絆の深さに感
動した」と。

そのコラムニストは、ワーワーと泣き叫ぶ子どもを見て、「親子の絆の深さ」に感動したと言うの
だ。とんでもない! ほかにもあれこれ症状が書かれていたが、それはまさしく分離不安の症
状。「別れをつらがって泣く子どもの姿」では、ない。

●分離不安は不安発作

 分離不安。親の姿が見えなくなると、発作的に混乱して、泣き叫んだり暴れたりする。大声を
あげて泣き叫ぶタイプ(プラス型)と、思考そのものが混乱状態になり、オドオドするタイプ(マイ
ナス型)に分けて考える。

似たようなタイプの子どもに、単独では行動ができない子ども(孤立恐怖)もいるが、それはと
もかくも、分離不安の子どもは多い。四〜六歳児についていうなら、一五〜二〇人に一人くら
いの割合で経験する。親が子どもの見える範囲内にいるうちは、静かに落ちついている。が、
親の姿が見えなくなったとたん、ギャーッと、ものすごい声をはりあげて、そのあとを追いかけ
たりする。

●過去に何らかの事件

 原因は……、というより、分離不安の子どもをみていくと、必ずといってよいほど、そのきっか
けとなった事件が、過去にあるのがわかる。はげしい家庭内騒動、離婚騒動など。母親が病
気で入院したことや、置き去り、迷子を経験して、分離不安になった子どももいる。

さらには育児拒否、冷淡、無視、親の暴力、下の子どもが生まれたことが引き金となった例も
ある。子どもの側からみて、「捨てられるのでは……」という被害妄想が、分離不安の原因と考
えるとわかりやすい。

無意識下で起こる現象であるため、叱ったりしても意味がない。表面的な症状だけを見て、「集
団生活になれていないため」とか、「わがまま」とか考える人もいるが、無理をすればかえって
症状をこじらせてしまう。いや、実際には無理に引き離せば混乱状態になるものの、しばらくす
るとやがて静かに収まることが多い。しかしそれで分離不安がなおるのではない。「もぐる」の
である。一度キズついた心は、そんなに簡単になおらない。この分離不安についても、そのつ
ど繰り返し症状が表れる。

●鉄則は無理をしない

 こうした症状が出てきたら、鉄則はただ一つ。無理をしない。その場ではやさしくていねいに
説得を繰り返す。まさに根気との勝負ということになるが、これが難しい。現場で、そういう親子
を観察すると、たいてい親のほうが短気で、顔をしかめて子どもを叱ったり、怒ったりしている
のがわかる。「いいかげんにしなさい」「私はもう行きますからね!」と。

こういう親子のリズムの乱れが、症状を悪化させる。子どもはますます強く被害妄想をもつよう
になる。分離不安を神経症の一つに分類している学者も多い(牧田清志氏ほか)。

 分離不安は四〜五歳をピークとして、症状は急速に収まっていく。しかしここに書いたよう
に、一度キズついた心は、簡単にはなおらない。ある母親はこう言った。「今でも、夫の帰宅が
予定より遅くなっただけで、言いようのない不安発作に襲われます」と。姿や形を変えて、おと
なになってからも症状が表れることがある。

(付記)

●分離不安は小児うつ病?

子どもは離乳期に入ると、母親から身体的に分離し始め、父親や周囲の者との心理的つなが
りを求めるようになる。自我の芽生え、自立心、道徳的善悪の意識などがこの時期に始まる。
そしてさらに三歳前後になると、母親から心理的にも分離しようとするが、この時期に、母子の
間に問題があると、この心理的分離がスムーズにいかず、分離不安を起こすと考えられてい
る(クラウスほか)。小児うつ病の一形態と考える学者も多い。症状がこじれると、慢性的な発
熱、情緒不安症状、さらには神経症による諸症状を示すこともある。

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(4)基底不安

心を許さない子ども

 無視、冷淡、親の拒否的態度は、子どもに深刻な影響を与える。乳幼児期に、心のさらけ出
しができないため、親のみならず、他人と良好な人間関係を結べなくなる。子どもは、絶対的な
信頼関係のある親子関係の中で、心をはぐくむことができる。「絶対的な信頼関係」というの
は、どんなことをしても、また何をしても、許されるという信頼関係である。親に対して疑いをい
だかない安心感をいう。

 この信頼関係が欠落すると、子どもは絶対的な安心感を得られなくなり、不安を基底とした
心理状態になる。これを「基底不安」というが、その不安を解消しようと、子どもはさまざまな方
法で、心を防衛する。@服従的態度(ヘラヘラとへつらう)、A攻撃的態度(威圧したり、暴力で
相手を屈服させる)、B回避的行動(引きこもる)、C依存的行動(同情を求める)などがある。
これを「防衛機制」という。

 このタイプの子どもは、孤独と不安を繰りかえしながら、そのつど相手を求めたり、拒絶した
りする。まさに「近づけば遠ざかり、遠ざかれば近づく」の人間関係をつくる。本人はそれでよい
としても、困惑するのは、周囲の人たちである。あるときはベタベタと近づいてきたかと思うと、
つぎに会うと、一転、冷酷な態度をとったりする。親しみと憎しみ、依存と拒絶、密着と離反、親
切と不親切が、同居しているように感ずることもある。

 が、悲劇はつづく。

 他者とのつながりがうまく結べない分だけ、独善的、独断的な行動が多くなる。一見すると主
体的な生き方に見えるかもしれないが、その主体そのものがない。私の印象に残っている女
の子(中二)に、Bさんという子どもがいた。

 Bさんは、がんばり屋だった。能力的には、それほどでもなかったが、そのため勉強も、よくで
きた。親は、そんなBさんを、よくほめた。先生も、ほめた。とくに気になったのは、融通(ゆうづ
う)がきかなかったこと。ジョークを言っても、通じない。このタイプの子どもは、自分だけのカラ
に閉じこもりやすく、がんこになりやすい。

 そのBさんが、ここに書いた、決して心を許さないタイプの子どもだった。そのときまでに、す
でに私のところへ五、六年、通っていたが、いつも心を風呂敷で包んだような感じがした。俗に
いう「いい子」ではあったが、何を考えているか、よくわからなかった。

 決して勉強が好きというわけではなかった。しかしBさんにとっての勉強は、まさに自己主張
の道具だった。(勉強ができる)=(優秀であるという証明)=(みなにチヤホヤされる)というよ
うに、である。ここにも書いたように、一見、主体性があるようで、どこにもない。Bさんは、いつ
も自分の評価を他人の目の中でしていた。

 もうおわかりかと思う。このBさんが、とっていた一連の行為は、自分の心の中の不安を解消
するためであった。勉強という手段を用いて、他人に対して優位に立つことにより、自分にとっ
て居心地のよい世界を、まわりに作るためであった。先にあげた防衛機制の中の、A攻撃的
態度の一つということになる。

 Bさんは、勉強がよくできる分だけ、孤独だった。友だちもいなかった。しかも自分より目立つ
仲間は、すべてライバルだった。Bさんの前で、ほかの子どもをほめたりすると、嫉妬心から
か、Bさんは、よく顔をしかめた。が、そのBさんが、ある日、とうとう勉強でつまずいてしまっ
た。最初は「勉強がわからない」と、よくこぼした。つぎに数か月先のテストのことを心配したり
した。親はBさんに頼まれるまま、進学塾をもう一つふやし、家庭教師もつけた。しかしそうす
ればするほど、Bさんの勉強は空回りをし始めた。

 とたん、Bさんは、プツンしてしまった。ふつうの燃え尽き症候群と違うのは、無気力症状は出
てこないこと。別の形で、攻撃的になるということ。Bさんのケースでは、そのまま、本当にあっ
という間に、非行の道へ入ってしまった。髪の毛を染め、ツメにマニキュアをし、そしてあやしげ
な下着を身につけるようになった。と、同時に、私の教室をやめた。しばらくしてから、ほかの
子どもたちに、Bさんが、学校でも札つきのワルになったという話を聞いた。

 Bさんを知る、ほかの母親たちは、こう言う。「えっ? あのBさんが、ですか?」と。実のとこ
ろ、この私ですら、その変化に驚いたほどである。授業中でも、先生を汚い言葉で罵倒(ばと
う)して、部屋から出て行くこともあるという。

 ……では、どうするかということではない。あなたの子どもは、だいじょうぶかということ。あな
たの子どもは、乳幼児のとき(二〜四歳の第一反抗期)から、あなたに対して、好き勝手なこと
をしていただろうか。わがままというのではない。言いたいことを言い、したいことをしたかとい
うこと。もしそうなら、それでよし。しかし乳幼児のとき、どこかおとなしく、仮面をかぶり、手がか
からない子どもだったとしたら、ここでいう「心を許せない子ども」を疑ってみたらよい。そして今
は、その「いい子」かもしれないが、そのうちそうでなくなるかもしれないと、警戒をしたほうがよ
い。

 心の問題は、簡単にはなおらない。なおらないが、警戒するだけでも、仮に問題が起きたとき
でも、原因がわかっているから、対処しやすいはず。またあなたの子どもが〇〜二歳であるな
ら、これからの反抗期を、うまく通り過ぎることを考える。この時期は、子どもの心を形成すると
いう意味で、きわめて重要な時期である。

++++++++++++++++++++++

【YNさんへ】

 いただいたメールの範囲内で判断するかぎり、下の子どもが生まれたあたりから、欲求不満
が慢性的に累積し、それが不安の原因になっているように思われます。症状としては、集団恐
怖症、対人恐怖症などが疑われますが、もう一歩進んで、小児神経症もしくは、小児うつ病(ド
クターによっては、小児うつ病はないと主張する人もいます)なども、どこかで考えながら、対処
しなければならないと思います。もちろんこれは最悪のばあいです。

 一つ、疑われるのは、その先生との関係です。どこかで大きなショックを、子どもに与えた可
能性も否定できません。先生が、強く叱ったとか、など。「先生を見ておお泣きした」、しかし「そ
の先生のそばを離れない」という、どこか矛盾した行動は、子どもの世界では、よく見られる現
象です。

 たとえばイヤなもの、嫌いなものを、逆に受け入れることによって、表面的には、好きになっ
たようなフリをする。心の中に、まったく正反対の感情を移入するわけです。これを「反動形成」
といいますが、よく知られた例としては、下の弟や妹に対して、表面的には、いい兄や姉を演じ
て見せるケースがあります。

 それ以前の問題としては、基底不安も疑われます。つまりは、YNさんという母親と、その子ど
もの関係です。全幅の信頼関係が、結ばれていたかという問題ですが、これについては、いた
だいたメールの範囲では、よくわかりません。ここでは、そうした信頼関係については、問題な
いという前提で考えます。

 YNさんは、子どもの悪夢について心配していますが、私の調査でも、約五〇%の子ども(年
長児)が、ほとんど毎日、こわい夢を見ていることがわかっています。ただYNさんのお子さんの
ように、「こわい夢を見るから、昼寝をするのがいや」というケースは、珍しく、それだけ、心が
緊張(不安)状態にあるとみます。

 ふつう子どもが悪夢を見るようになったら、(またそう感じたら)、スキンシップを濃厚にし、添
い寝などをしてやります。「気のせい」「わがまま」と突き放せば、かえって子どもの情緒は不安
定になりますから、注意してください。

 ついでに、このタイプの子どもに、「がんばれ!」式の励ましは、タブーですから、ご注くださ
い。言うべきことは、「あなたは、よくがんばっている」式の、ねぎらいの言葉です。これについ
ては、またいつか電子マガジンのほうでとりあげて考えてみます。

 「夏休みあけに症状が軽減した」ということですので、症状は、それほど、こじれていないと判
断できます。しかしながら、この種の問題は、「以前のほうが、まだ症状が軽かった……」という
ことを繰りかえしながら、悪化することがありますので、これも、ご注意ください。

 とくに注意しなければならないのが、小児神経症です。ほかに、身体的な変調を訴えていな
いかを、観察してみてください。腹痛、頭痛、夜尿、爪かみなど。(あとで、原稿を添付しておき
ます。)

 もしこうした症状があわせて見られたら、とにかく家庭では、心を休ませることだけを考えて対
処します。「暖かい無視」という言葉が、最近よく使われますが、子どもを、暖かい愛情で包み
ながら、子ども自身がひとりで、のんびりとくつろげる環境を用意してあげます。

 が、それでも症状が悪化するようであれば、私は、無理をして幼稚園へ行かせる必要はない
と思います。それはYNさんが、ご自分で、判断してください。

 とりあえずしてみることは、

(1)濃厚なスキンシップの復活……下の子が生まれると同時に、上の子どもへの接触が半減
したと考えられます。親からみれば、「平等」ということになりますが、上の子には、そうではな
いということです。これについては、たびたび電子マガジンでとりあげてきましたので、ここで
は、省略します。添い寝、手つなぎ、だっこ、いっしょの入浴など、子どもの心から緊張感がと
れるまで、つづけます。

(2)食事面での対処……不安定に感じたら、CA、MGの多い食生活に切りかえます。要する
には、海産物主体の食生活にするということです。甘い食品、肉類、リン酸食品などは、ひかえ
ます。

(3)なおそうと思わないこと……この種の問題は、「なおそう」とは思わないこと。「今の状態
を、より悪くしないこと」だけを考えて対処します。親は、どうしても、今の状態だけをみて、「最
悪」と考えがちですが、この種の問題には、その下に、さらに二番底、三番底があるということ
です。じゅうぶん、ご注意ください。

(4)半年単位で様子をみる……そのつどの症状の変化に、一喜一憂してはいけません。もう
少し長いスパンで、子どもの心の変化を観察しながら、判断します。できれば「半年前はどうだ
った……」「一年前はどうだった……」というように、です。そのつどの変化に振り回されている
と、子どもの心の状態がわからなくなります。ほとんどの親は、「少しよくなった……」と言って
は、つぎの無理をする。そして症状をこじらせ、悪化させていきます。

 いただいたメールだけでは、お子さんが、どういう状態なのか、よくわかりません。かといっ
て、私の立場では、診断することもできません。ここに書いたことは、あくまでも、参考意見とし
て、お考えください。あとは、あなた自身が、判断してください。

 このあたりが、私が今、あなたにアドバイスできる限界かと思いますので、今日は、このあた
りで失礼します。また何か、あれば、メールをください。
(031103)
 
+++++++++++++++++++++

【参考】子どもの神経症(中日新聞発表済み)

子どもの神経症

 心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。脳の機
能が変調したために起こる症状と考えると、わかりやすい。ふつう子どもの神経症は、@精神
面、A身体面、B行動面の三つの分野に分けて考える。そこであなたの子どもをチェック。次
の症状の中で思い当たる症状(太字)があれば、丸(○)をつけてみてほしい。

 精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる。高所恐怖症、
赤面恐怖症、閉所恐怖症、対人恐怖症など)、強迫症状(ささいなことを気にして、こわがる)、
不安症状(理由もなく思い悩む)、抑うつ症状(ふさぎ込んだり、落ち込んだりする)、不安発作
(心配なことがあると過剰に反応する)など。混乱してわけのわからないことを言ったり、グズグ
ズするタイプと、大声をあげて暴れるタイプに分けて考える。ほかに感情面での神経症として、
赤ちゃんがえり、幼児退行(しぐさが幼稚っぽくなる)、かんしゃく、拒否症、嫌悪症(動物嫌悪、
人物嫌悪など)、嫉妬、激怒などがある。

 身体面の神経症……夜驚症(夜中に突然暴れ、混乱状態になる)、夢中遊行(ねぼけてフラ
フラとさまよい歩く)、夜尿症、頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、遺尿(その意識がないまま尿もら
す)、睡眠障害(寝つかない、早朝起床、寝言、悪夢)、嘔吐、下痢、原因不明の慢性的な疾患
(発熱、ぜん息、頭痛、腹痛、便秘、ものもらい、眼病など)、貧乏ゆすり、口臭、脱毛症、じん
ましん、アレルギー、自家中毒(数日おきに嘔吐を繰り返す)、口乾、チックなど。指しゃぶり、
爪かみ、髪いじり、歯ぎしり、唇をなめる、つば吐き、ものいじり、ものをなめる、手洗いグセ
(潔癖症)、臭いかぎ(疑惑症)、緘黙、吃音(どもる)、あがり症、失語症、無表情、無感動、涙
もろい、ため息なども、これに含まれる。一般的には精神面での神経症に先だって、身体面で
の神経症が現われることが多い。

 行動面の神経症……神経症が行動面におよぶと、さまざまな不適応症状となって現われる。
不登校もその一つだが、その前の段階として、無気力、怠学、無関心、無感動、食欲不振、過
食、拒食、異食、小食、偏食、好き嫌い、引きこもり、拒食などが断続的に起こることが多い。
生活習慣が極端にだらしなくなることもある。忘れ物をしたり、乱れた服装で出歩いたりするな
ど。ほかに反抗、盗み、破壊的行為、残虐性、帰宅拒否、虚言、収集クセ、かみつき、緩慢行
動(のろい)、行動拒否、自慰、早熟、肛門刺激、異物挿入、火遊び、散らかし、いじわる、いじ
めなど。

こうして書き出したら、キリがない。要するに心と身体は、密接に関連しあっているということ。
「うちの子どもは、どこかふつうでない」と感じたら、この神経症を疑ってみる。ただし一言。こう
した症状が現われたからといって、子どもを叱ってはいけない。叱っても意味がないばかりか、
叱れば叱るほど、逆効果。神経症は、ますますひどくなる。原因は、過関心、過干渉、過剰期
待など、いろいろある。

 さて診断。丸の数が、一〇個以上……あなたの子どもの心はボロボロ。家庭環境を猛省す
る必要がある。九〜五個……赤信号。子どもの心はかなりキズついている。四〜一個……注
意信号。見た目の症状が軽いからといって、油断してはならない。









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【8】

●音読と黙読

【Fさんからの質問に答えて……】

 Fさんから、「音読と、黙読は、どちらがよいですか?」という質問をもらった。当然、黙読がよ
いに決まっている。それについて書いた原稿を、二作、ここに添付する。

+++++++++++++++++++

●音読と黙読は違う

 小学三年生くらいになると、読解力のあるなしが、はっきりしてくる。たとえば算数の文章題。
読解力のない子どもは、問題を読みきれない、読みまちがえる、など。あちこちの数字を集め
て、めちゃめちゃな式を書いたりする。親は「どうしてうちの子は、問題をよく読まないのでしょ
う」とか、「そそっかしくて困ります」とか言うが、ことはそんな簡単なことではない。

 話は少しそれるが、音読と、黙読とでは、脳の中でも使う部分がまったく違う。音読は、一度
自分の声で文章を読み、その音を聞いて文の内容を理解する。つまり左脳がそれをつかさど
る。

一方黙読は文字を図形として認識し、その図形の意味を判断して文の内容を理解する。つま
り右脳がそれをつかさどる。音読ができるから黙読ができるとは限らない。ちなみに文字を覚
えたての幼児は、黙読では文を読むことができない。そんなわけで子どもが文字をある程度読
むことができるようになったら、黙読の練習をさせるとよい。方法は、「口をとじて本を読んでご
らん」と指示する。

ある研究団体の調査によれば、黙読にすると、小学校の低学年児で、約三〇%程度、読解力
が落ちることが」わかっている(国立国語研究所)。

 ではどうするか。もしあなたの子どもの読解力が心配なら、方法は二つある。一つは、あえて
音読をさせてみる。たとえば先の文章題でも、「声を出して問題を読んでごらん」と言って、問題
を声を出させて読ませてみる。読んだ段階で、たいていの子どもは、「わかった!」と言って、
問題を解くことができる。が、それでも効果があまりないときは、こうする。

問題そのものを、別の紙に書き写させる。子どもは文字(問題)を一度文字で書くことによっ
て、文字の内容を「音」ではなく、「形」として認識するようになる。少し時間はかかるが、黙読が
苦手な子どもには、もっとも効果的な方法である。

 読解力は、すべての科目に影響を与える。文章の読解力を訓練しただけで、国語はもちろん
のこと、算数や理科、社会の成績があがったということはよくある。決して軽くみてはいけない。
(はやし浩司のサイト:http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/)

++++++++++++++++++++++

子どもの国語力が決まるとき

●幼児期に、どう指導したらいいの?

 以前……と言っても、もう二〇年近くも前のことだが、私は国語力が基本的に劣っていると思
われる子どもたちに集まってもらい、その子どもたちがほかの子どもたちと、どこがどう違うか
を調べたことがある。結果、次の三つの特徴があるのがわかった。

@使う言葉がだらしない……ある男の子(小二)は、「ぼくジャン、行くジャン、学校ジャン」とい
うような話し方をしていた。「ジャン」を取ると、「ぼく、行く、学校」となる。たまたま『戦国自衛隊』
という映画を見てきた中学生がいたので、「どんな映画だった?」と聞くと、その子どもはこう言
った。「先生、スゴイ、スゴイ! バババ……戦車……バンバン。ヘリコプター、バリバリ」と。何
度か聞きなおしてみたが、映画の内容は、まったくわからなかった。

A使う言葉の数が少ない……ある女の子(小四)は、家の中でも「ウン、ダメ、ウウン」だけで
会話が終わるとか。何を聞いても、「まあまあ」と言う、など。母「学校はどうだったの?」、娘「ま
あまあ」、母「テストはどうだったの?」、娘「まあまあ」と。

B正しい言葉で話せない……そこでいろいろと正しい言い方で話させようとしてみたが、どの
子どもも外国語でも話すかのように、照れてしまった。それはちょうど日本語を習う外国人のよ
うにたどたどしかった。私「山の上に、白い雲がありますと、言ってごらん」、子「山ア……、上に
イ〜、白い……へへへへ」と。

 原因はすぐわかった。たまたま子どもを迎えにきていた母親がいたので、その母親にそのこ
とを告げると、その母親はこう言った。「ダメネエ、うちの子ったら、ダメネエ。ホントにモウ、ダ
メネエ、ダメネエ」と。原因は母親だった!

●国語能力は幼児期に決まる

 子どもの国語能力は、家庭環境で決まる。なかんずく母親の言葉能力によって決まる。毎
日、「帽子、帽子、ハンカチ、ハンカチ! バス、バス、ほらバス!」というような話し方をしてい
て、どうして子どもに国語能力が身につくというのだろうか。こういうケースでは、たとえめんどう
でも、「帽子をかぶりましたか。ハンカチを持っていますか。もうすぐバスが来ます」と言ってあ
げねばならない。……と書くと、決まってこう言う親がいる。「うちの子はだいじょうぶ。毎晩、本
を読んであげているから」と。

 言葉というのは、自分で使ってみて、はじめて身につく。毎日、ドイツ語の放送を聞いている
からといって、ドイツ語が話せるようにはならない。また年中児ともなると、それこそ立て板に水
のように、本をスラスラと読む子どもが現れる。しかしたいていは文字を音にかえているだけ。
内容はまったく理解していない。

なお文字を覚えたての子どもは、黙読では文を理解できない。一度文字を音にかえ、その音を
自分の耳で聞いて、その音で理解する。音読は左脳がつかさどる。一方黙読は文字を「形」と
して認識するため、一度右脳を経由する。音読と黙読とでは、脳の中でも使う部分が違う。そ
んなわけである程度文字を読めるようになったら、黙読の練習をするとよい。具体的には「口
を閉じて読んでごらん」と、口を閉じさせて本を読ませる。

●幼児教育は大学教育より奥が深い

 今回はたいへん実用的なことを書いたが、幼児教育はそれだけ大切だということをわかって
もらいたいために、書いた。相手が幼児だから、幼稚なことを教えるのが幼児教育だと思って
いる人は多い。私が「幼稚園児を教えています」と言ったときのこと。ある男(五四歳)はこう言
った。「そんなの誰にだってできるでしょう」と。

しかし、この国語力も含めて、あらゆる「力」の基本と方向性は、幼児期に決まる。そういう意
味では、幼児教育は大学教育より重要だし、奥が深い。それを少しはわかってほしかった。








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【9】

●離婚と子ども

はじめまして。MRと申します。

貴HPを拝見させていただき、ぜひ相談に乗ってもらいたいと
思いましてメールを書いております。

私には小学一年生の娘がおります。

娘が産まれて間もなく離婚をして、六年間母子家庭で育ててき
ました。

最初の四年間は私の実母と3人で暮らしていましたが、私と折り合
いが悪く、別々に暮らすことになりました。

私が小さいころに母が家を出てから、父方の祖父母と父と兄弟三人
とで暮らしていましたが、祖母がとても気が強い人で、兄を溺
愛し、私を認めようとしない人で、とても厳しく育てられました。

そのせいか、私も娘には厳しいしつけをしてきました。

去年、趣味のサークルのバーベキュー大会で知り合った男性を、
娘が気に入った事がきっかけで、私はその方と今年再婚しました。

二月に主人の暮らす佐賀県に引っ越して来たのですが、それか
ら娘の行動がおかしくなりました。

嘘をついたり、過食をしたり、反抗をしたり・・・

主人も厳しい両親の元にそだったので、間違った行動をする娘
に厳しく接してきました。
もちろんちゃんとしている時には、かわいがって遊んだりしてい
ます。

時には手を上げる事もあり、児童虐待の容疑で通報され、今は児
童相談所に通所もしていますが、まったく良くなりません。

最近ではわざと反抗しているので、「中間反抗期」を疑っている
のですが、娘は「この家に居たくない。何も頑張りたくない」と
言います。

学校ではとてもよい子なので、担任の先生からは私たち親が白い目
で見られています。

娘が気に入ったから大丈夫だと思って再婚したのですが、嫌い
になったのでしょうか?

主人と娘が遊んでいる時は、とても楽しそうで本当の親子のよう
です。
主人も早く仲良く生活がしたいと言っていますが、これから先
どうしたら良いのでしょうか?

私達は離婚したほうが良いのでしょうか?
お力をお貸しください。よろしくお願いします。

         佐賀県S市、MRより

++++++++++++++++++++++

 MRさんのケースでは、どこか、親としての気負いを強く感ずる。MRさん自身が指摘している
ように、MRさんは、あまり心豊かな家庭に育っていない。

 一般論として、「きびしい家庭」というのは、基本的に親の愛情の欠落した家庭とみてよい。
愛情が欠落すると、子どものすることなすこと、気になってしかたない。その(気になってしかた
ない部分)が、(きびしさ)となって、子どもにはねかえってくる。

 わかりやすく言うと、MRさんの中には、豊かな親像が入っていない。そのため、そうでない親
より、心豊かな家庭を築くのが、むずかしい立場にある。これはたとえて言うなら、みなより、一
〇メートルとか、二〇メートル、遅れて、一〇〇メートル競争に臨むようなものである。

 メールを読むかぎり、MRさんは、それに気づかないまま、MRさん自身の過去に振りまわさ
れている。わかりやすく言うと、MRさんが、子どもにきびしいのも、そして児童虐待の容疑がか
けられたのも、MRさん自身の責任というよりは、MRさん自身の過去の責任である。もっとい
えば、MRさんの親の責任である。

 ここで重要なことは、だからといって、MRさんが、自分の過去をのろってもしかたないという
こと。重要なことは、自分の過去を冷静にみつめること。自分を知ること。なぜ、今の自分がそ
うなのかを、自分で知ること。

 これはとても勇気のいることである。ほとんどの人は、その勇気がないまま、この問題から逃
げてしまう。そして同じ失敗を、繰りかえす。

 で、MRさんの相談だが、このメールを読むかぎり、離婚しなければならない理由など、どこ
にもない。離婚するかしないかは、夫婦の問題であって、子どもの問題ではない。現に、娘と父
親の関係は、良好である。MRさんと、夫の関係も、このメールを読むかぎり、良好である。

 問題は、MRさんと娘の関係だが、この程度の不協和音は、いまどき、珍しくも何ともない。た
だ年齢が、小学一年生ということだから、本来なら、親子関係(とくに母子関係)は良好でなけ
ればならない。しかしだからといって、つまり良好でないからといって、MRさんは、自分を責め
てはいけない。

 仮に離婚すれば、それで母子関係は、正常になるのだろうか? 今の状況からすれば、悪
化することはあっても、好転することは、考えられない。

 MRさんは、自分が受けた子育てを、そのまま、自分の娘に繰りかえしている。「自分がきび
しい子育てをされたから、娘にもきびしくしている」と。あるいは何か問題があると、すぐ「離婚」
という解決方法につなげてしまう。

 このことからもわかるように、MRさんは、自分の心的外傷(トラウマ)を、そのまま娘に対し
て、繰りかえしている。問題は、そこに気づくこと。そしてその心的外傷が、虐待容疑の理由に
もなっている!

【MRさんへ】

 私は、メールを読むかぎり、離婚しなければならないような理由など、どこにもないと思いま
す。あなたと子ども(娘さん)の関係がギクシャクしていることを除けば、何も、問題はないでは
ないですか。


 あなたは自分の中の問題に振りまわされているだけです。「いい家庭を築こう」「いい親でい
よう」と。が、娘の心がうまくつかめない。「だから、私は母親として失格だ」「妻として失格だ」
「だから、離婚しなければ」とです。

 どうしてそんなに不幸が好きなのですか? あなたはあえて自分から、不幸を追い求めてい
るだけのような気がします。

 幸福というのは、つくるものではなく、残り火の中から、火箸でかき分けるようにして、さがし
て、見つけるものです。が、あなたは、その残り火すら、足で踏んで消している。あえて悲劇の
主人公になろうとしている。

 あなたと子どもの関係がおかしかったら、あなたの子どもは、夫に任せて、あなたはあなたで
好きなことをすればよいのです。どうせ親子というのは、そういうもの。やがてあなたの子ども
が、小学三、四年生(もうすぐですよ……)になれば、親離れしていきます。そういうものです。

 勇気を出して、小さな幸福に、しがみついてください。しがみつくのです。小さいからダメとか、
そういうふうに考えてはいけません。最後の残り火が残っているかぎり、その残り火を、大切
に。決して、自分で、消してはいけません。

 そうしてがんばっているのは、あなただけではない。みんなそうなのです。私もそうだし、あな
たの隣の人もそうなのです。外から見ると、幸福そうに見えますが、それはあくまでも、外見。
みんなそれぞれの問題をかかえて、必死になってがんばっているのです。

 あなたと子どもの関係について言えば、あなたは母親として、つまりは、(へたくそな母親)で
す。しかし、それでいいのです。あなたはやるべきことを、今、懸命にやっている。それでいい
のです。

 大切なことは、前にも書いたように、(へたくそな母親)であることを認め、子どもの前で謙虚
になることです。「私は、こんな母親だけど、ごめんね」とです。あなたが謙虚になれば、あなた
の子どもは、必ず、あなたに心を開きます。

 あとは「許して忘れる」。これだけを心の中で念じながら、子どもと根比べをしてください。負け
ても、負けても、ただひたすら負けるのです。ほら、昔から、日本では、こう言うでしょ。『負ける
が、勝ち』と。それでよいのです。

 今、あなたが「何かに勝とう」と思えば、その先は、離婚しかありません。しかし今、ここで負け
を認めれば、その先には、すばらしい幸福が待っています。約束します。だから勇気を出して、
負けを認めなさい。

 あなたは、失格ママです。ヘタクソママです。
 あなたは、どうしようもないほど、バカな母親です。
 あなたは、妻としても、失格です。
 あなたが、がんばったところで、どうにもなりません。
 あなたの力など、まったく価値がありません。

 さあ、それを勇気を出して、認めなさい。そして子どもや夫の前で、頭をさげる。それでよいの
です。あなたから、今の張りつめた気負いが取れたとき、あなたは、その向こうに、広くて、お
おらかな世界を見るはずです。

 「離婚すべきでしょうか」という質問には、答は、もう一つです。「どこにも、離婚しなければな
らない理由など、ない」です。今ある幸福を、しっかりと握って、もう放してはだめですよ。繰りか
えしますが、勇気を出して、見栄もプライドも、外聞も捨てて、それにしがみつくのです。

 「あなたを、愛している」「みんなを、愛している」「こんな私だけど、いっしょにいて!」とです。

 このつづきは、またあとで考えてみます。

+++++++++++++++++++++++

●夫婦とは……

 ついでながら、夫婦について、考えてみる。

 フランシス・ベーコンは、こう言った。『若い男にとっては、妻は、女主人であり、中年の男にと
っては、友であり、老年の男にとっては、看護婦である』(「結婚と独身生活」)と。

 男の側から見た、夫婦というのは、そういうものかもしれない。では、女の側から見た、夫婦
というのは、どういうものか。最初に思い浮かんだのが、イプセンの「人形の家」で夫婦は、どう
いうものか。それを如実に表したのが、イプセンの『人形の家』である。

 『私はあなたの人形妻になりました。ちょうど父の家で、人形子であったように……』と。

 最初は他人どうしで始まる夫婦だが、何年もいっしょに暮らしていると、1+1=1になってし
まう。たがいにからみあう木のようなもので、一体化してしまう。どこからどこまでが、「私」で、ど
こから先が、「妻」なのか、「夫」なのか、わからなくなってしまう。

 そういう点では、ベーコンも、イプセンも、たがいの間に、一線を引いている。1+1=2の原
則を、貫いている? 夫婦でいながら、どこか他人行儀。それがよいことなのか、悪いことなの
かという議論はさておき、世の中には、(1+1=1夫婦)と、(1+1=2夫婦)がいる。あるい
は、(1+1=1+1夫婦)というのも、いる?

【1+1=1夫婦】

 ショッピングセンターの中でみかける夫婦でも、服装の趣味から、雰囲気、様子までそっくり
の夫婦がいる。ワイフは、「奥さんが、ダンナの衣服をそろえていると、夫婦も、ああなるのよ」
と言うが、そうかもしれない。『似たもの夫婦』とは、よく言ったものだ。

 で、農村へ行くと、この(1+1=1夫婦)に、よくであう。仕事も、生活も、あらゆる面で、夫婦
が、一体化している。原付リアカーで、うしろに奥さんを乗せて、トコトコと走っている夫婦が、そ
の一例である。

 こうした夫婦は、二人に、分けることはできない。どちらか一方が欠けても、仕事も、生活も、
できなくなる。二人の境界が、溶けて混ざりあうように、密着している。

【1+1=2夫婦】

 宇宙飛行士の夫婦に、そういう人がいる。奥さんのMさんは、アメリカで宇宙飛行士として活
躍している。ダンナさんは、日本に残って、「家」を守っている……。

 ダンナさんは、得意になって本まで書いているが、しかしそういう夫婦の形が理想的だとは、
だれも思っていない。だいたいにおいて、「夫婦」と呼んでよいものか、どうか?

 もっとも最近の傾向としては、(1+1=2夫婦)が、標準的になりつつある。概して言えば、サ
ラリーマン家庭では、そうではないか。夫の仕事の中に、(妻の存在)を組みこむということ自
体、無理がある。それで、「夫は夫、妻は妻」となる。

 本来は、やはり(1+1=1夫婦)が自然だとは思うが、社会も変わってきたので、そうばかり
は言っておられない。(1+1=1・5夫婦)とか、(1+1=2夫婦)というのがあっても、しかたな
いということになる。どこかで夫婦としての接点があれば、それでよいということか。

 どちらを選ぶかというよりも、どちらの夫婦になるかということは、生活の「形」が決めること。
あくまでも、成り行き。夫婦というのは、結果として、(1+1=1夫婦)になったり、(1+1=2夫
婦)になったりする。

 たがいに個性的に生きるなら、(1+1=2夫婦)がよいということにもなるが、私のように、も
ともと依存性が強い男には、そういう夫婦は、さみしい気もする。仮に、ワイフが、アメリカへ行
き、そこで宇宙飛行士として活躍し始めたら、それを受入れる前に、別れてしまうだろうと思う。

 その宇宙飛行士にしても、今は花形職業(?)だが、たかが宇宙飛行士ではないのか。明治
のはじめ、東京、新橋間を走る、あのチンチン電車の運転手は、まさに英雄だったという。そう
いうチンチン電車の運転手になるため、妻が、逆単身赴任で、東京に出た。状況的には、それ
と、どこも違わない。このタイプの夫婦は、(1+1=2夫婦)ではなく、(1+1=1+1夫婦)とい
うことになるのかもしれない。

 (私が言いたいのは、宇宙飛行士になるため、夫婦が別々に暮らすというが、それほどまで
の価値が、宇宙飛行士という職業に、あるかということ。)

 夫婦は、同居して、夫婦なのである。守りあい、教えあい、励ましあって、夫婦なのである。セ
ックスだって、重要な要素だ。この大原則は、昔も、今も、変わらない。あるいは、これからは、
(1+1=1+1夫婦)というのも、ごくふつうのことになるのかもしれない。が、それを決めるの
も、やはり成り行き。

 わかりやすく言えば、夫婦に形はない。最初はみな、同じでも、その形は、それぞれが決め
る。大切なことは、それがどんな形であっても、たがいに認めあい、尊重するということ。自分
の形を、決して、他人に押しつけてはいけない。

 ここまでのところをワイフに読んで聞かせたら、ワイフは、こう言った。「ホモの人どうしが、結
婚するということもあるからねエ……」と。

 ナルホド! ワイフの一言が、私の夫婦論を、根底から粉々に、破壊してしまった!

 つきつめれば、一人の人間と、一人の人間が、それぞれに納得すれば、それでよいというこ
とか。「夫婦」という名称にこだわるほうが、おかしいということになる。となると、ここに書いた、
(1+1=1夫婦)も、(1+1=2夫婦)も、そうして考えること自体、無意味ということになる。

 ああああ。

 私が今まで考えてきたことは、無意味ということか。私はときどき、この(1+1=1夫婦)と、
(1+1=2夫婦)の話を、あちこちでしてきたのだが……。

 となると、話は、振り出しにもどってしまう。「夫婦とは、何か?」と。このつづきは、また別の
機会に……。

+++++++++++++++++++++
 
【MRさんよりの返事】

はやし様

早速の返答を、ありがとうございます。

はやし様の言うとおりで、読んでいて、涙が出ました。
私は主人を愛しています。
できれば離婚はしたくないのです。

主人も娘の事で悩んだりはしていますが、私との夫婦関係には何
も問題がないので「幸せだ」と言ってくれています。

私は血の繋がらない親子関係は、難しいと思い込み
主人の親戚たちにも、何とか娘を認めてもらおうと必死でした。

主人の母は主人をとても愛しているので、主人が悩んでいると、私へ
の当たりが強くなります。
「あなたがしっかりしてちょうだい」と・・・。

娘はとても良い子です。
明るくてやさしくて思いやりもあれば、礼儀も正しいです。
娘がずっと欲しがっていたお父さんができたのです。
みんなで仲良く暮らしたいです。

主人には前妻さんとの間に、私の娘より一歳年上の男の子がいます。
まったく面会などはないのですが、その子と比べられるのが
一番イヤで、娘に必要以上に良い子を要求していたのだと反省し
ています。

良い母、良い妻、良い嫁・・・。
頑張りすぎていたのかも知れませんね。

これからは肩の力を抜いて、楽しんで生活したいと思います。

はやし様ありがとうございました。

+++++++++++++++++++++

【MRさんへA】

 参考になるかどうかわかりませんが、
以前書いた原稿を、二作、添付しておきます。
夫婦、孤独、愛について、書いたものです。

+++++++++++++++++++++

●心について

●反動感情
 人は、ときとして、本当の自分の心を隠し、それと正反対の感情をもつことがある。私は、こ
れを勝手に「反動感情」と呼んでいる。心理学の世界に、「反動形成」という言葉がある。反動
形成というのは、自分の心を抑圧すると、その反動から、正反対の自分を演ずるようになるこ
とをいう。

たとえば性的興味を押し殺したような人は、他方で、人前では、まったく性には関心がないよう
に振るまうことがある。性に対して、ある種の罪悪感をもった人が、そうなりやすい。ほかに、た
とえば神経質な人が、外の世界では、おおらかな人間のフリをするのも、それ。その反動形成
に似ているから、「反動感情」とした。

●Aさんのケース
 私がAさん(三四歳女性、当時)に会ったのは、私が四〇歳くらいのことだった。もともとは奈
良県の生まれの人で、夫の転勤とともに、このH市にやってきた。どこかその古都の雰囲気を
感じさせる、静かな人だった。Aさんは、いつもこう言っていた。「私は、夫を愛しています」「娘
を愛しています」と。

 当時、「愛する」という言葉を、ふだんの会話の中で使う人は、それほど多くはなかった。それ
で私の印象に強く残ったのだが、話を聞くと、どうもそうではなかった。つまり私は最初、Aさん
の家庭について、心豊かな、愛に包まれた、すばらしい家族を想像していた。が、そうではなか
ったということ。

 Aさんは、不本意な結婚をした。そしてそのまま、不本意な子どもを産んだ。それがそのとき
六歳になる娘だった。

Aさんには、結婚前に、ほかに好きな人がいたのだが、ささいなことがきっかけで、別れてしま
った。今の夫と結婚したのは、その好きな人を忘れるため? あるいは、その好きな人に、腹
いせをするため? ともかくも、それを感じさせるような、どこか、ゆがんだ結婚だった。

 Aさんは、夫とは、フィーリングが合わなかった。合わなかったというより、「(信仰を始める前
までは)、夫の体臭をかいだだけで、気持ちが悪くなったこともある」(Aさん)という。が、離婚は
しなかった。……できなかった。Aさんの実家と、夫の実家は、同業で、たがいにもちつ、もた
れつの関係にあった。離婚すれば、ともに実家に迷惑がかかる。

 そこでAさんは、キリスト教系宗教団体に入信。そのまま熱心な信者になった。そしてその教
え(?)に従い、「愛する」という言葉を、よく使うようになった?

●反動形成

 たとえばあなたがXさんを、嫌ったとする。そのときXさんと、それほど近い関係でなければ、
あなたは、そのままXさんと距離をおくことで、Xさんを忘れようとする。「いやだ」という感覚を味
わうのは、不愉快なこと。人は、無意識のうちにも、そういう不快感を避けようとする。

 が、そのXさんと、何かの理由で離れることができないときは、一時的には、Xさんに反発する
ものの、やがて、それを受け入れ、反対に、自分の心の中で、反対の感情を作ろうとする。反
対の感情を作ることで、その不快感を克服しようとする。これが私がいう、「反動感情」である。
このばあい、あなたはXさんを、積極的に自分の心の中に入れこもうとする。わかりやすく言え
ば、好きになる。(正確に言えば、好きだというフリをする。)好きになることで、不快感を克服し
ようとする。

 よくある例としては、@相手につくし、服従する方法。A相手に対して敗北を認め、自分を劣
位に置く方法。B自分の弱さを強調し、相手の同情を誘う方法などがある。自分という「主体」
を消すことで、相手に対する感情を消す。そして結果的に、「好き(affection)」という状態をつく
るが、このばあい、「好き」といっても、それはネガティブな好意でしかない。若い男女が、電撃
的に打たれるような恋をしたときに感ずるような、「好き(love)」とは、異質のものである。

 特徴としては、自虐的(自分さえ犠牲になれば、それですむと考える)、厭世的(自分や社会
は、どうなってもよいと考える)な人間関係になる。これに関してよく似たケースに、「ストックホ
ルム症候群」※というのがある。これはたとえば、テロリストの人質になったような人が、そのテ
ロリストといっしょに生活をつづけるうち、そのテロリストに好意をいだくようになり、そのテロリ
ストのために献身的に働き始めるようになることをいう。

 先にあげたAさんのケースでも、Aさんは、口グセのように、「愛しています」と、よく言ったが、
どこか不自然な感じがした。あるいは、Aさんは、そう思いこんでいただけなのかもしれない。A
さんは、夫や子どもに尽くすことで、自らの感情を押し殺してしまっていた?

●偽(にせ)の愛

 Aさんが口にする「愛」は、反動感情でつくられた、いわば偽の愛ということになる。しかし夫
婦はもちろんのこと、親子でも、こうした偽の愛を、本物の愛と信じ込んでいる人は、いくらでも
いる。

 Bさん(四〇歳女性)は、こう言った。夫が、一週間ほど、海外出張で上海へ行くことになった
ときのこと。「飛行機事故で死んでくれれば、補償金がたくさんもらえますね」と。「冗談でし
ょ?」と言うと、ま顔で、「本気です」と。しかしそのBさんにしても、表面的には、仲のよい夫婦
に見えた。たがいにそう演じていただけかもしれない。そこで「じゃあ、どうして離婚しないので
すか?」と聞くと、「私たちは、そういう夫婦です」と。

 親子でも、そうだ。C氏(四五歳男性)は、高校生になる息子と、家の中では、あいさつすらし
なかった。たがいに姿を見ると、それぞれの部屋に姿を、隠してしまった。しかしC氏は、人前
では、よい親子を演じた。演ずるだけではなく、息子が中学生のときは、その学校のPTAの副
会長まで努めた。

 一方、息子は息子で、ある時期まで、父親に好かれようと、懸命に努力した。私がよく覚えて
いるのは、その息子がちょうど中学生になったときのこと。父親に、敬語を使っていたことだ。
父親に電話をしながら、「お父さん、迎えにきてくださいますか」と。

 しかしこうした偽の愛は、長くはつづかない。仮面をかぶればかぶるほど、たがいを疲れさせ
る。問題は、そのどちらかが、その欺瞞(ぎまん)性に気づいたときである。今度は、その反動
として、その絆(きずな)は粉々にこわれる。もっともそこまで進むケースは、少ない。たいてい
は、夫婦であれば、どちらかが先に死ぬまで、その偽の愛はつづく。つづくというより、もちつづ
ける。

 ここまで書いて、ヘンリック・イプセンの「人形の家」を思い出した。娘時代は、親の人形として
生活し、結婚してからは、夫の人形として生活した、ある女性の物語である。その中でも、よく
知られた会話が、夫ヘルメルと、妻ノラの会話。

ヘルメルが、ノラに、「(家事という)神聖な義務を果せ」と迫ったのに対して、ノラはこう答える。
「そんなこともう信じないわ。あたしは、何よりもまず人間よ、あなたと同じくらいにね」(「人形の
家」岩波書店)と。そのノラが、親に感じていた愛、あるいは夫に感じていた愛が、ここでいう反
動感情で作られた愛ではないかということになる。もし、ノラが「愛」のようなものを感じていたと
したら、ということだが……。

 しかしこの問題は、結局は、私たち自身の問題であることがわかる。私たちは今、いろいろな
人とつきあっている。が、そのうちの何割かの人たちは、ひょっとしたら、嫌いで、本当は、つき
あいたくないのかもしれない。無理をしてつきあっているだけなのかもしれない。あるいは「私
はそういうつきあいはしていない」と、自信をもって言える人は、いったい、どれだけいるだろう
か。

 さらにあなたの子どもはどうかという問題もある。あなたの子どもは、あなたという親の前で、
ごく自然な形で、自分をすなおに表現しているだろうか。あるいは反対に、無理によい子ぶって
いないだろうか。そしてそういうあなたの子どもを見て、あなたは「私たちはすばらしい親子関
係を築いている」と、思いこんでいないだろうか。

ひょっとしたら、あなたの子どもは、あなたと良好な関係にあるフリをしているだけかもしれな
い。本当はあなたといっしょに、いたくない。いたくないが、し方がないから、いっしょにいるだ
け、と。もしあなたが、「うちの子は、いい子だ」と思っているなら、その可能性は、ぐんと高くな
る。一度、子どもの心をさぐってみてほしい。
(030314)

?ストックホルム症候群……スウェーデンの首都、ストックホルムで起きた銀行襲撃事件に由
来する(一九七三年)。その事件で、六日間、犯人が銀行にたてこもるうち、人質となった人た
ちが、その犯人に協力的になった現象を、「ストックホルム症候群」と呼ぶ。のちにその人質と
なった女性は、犯人と結婚までしたという。

?イプセンの「人形の家」……自己の立場と、出世しか大切にしない夫、ヘルメル。好意でした
ことをののしられてから、ノラは、一人の人間としての自分に気づく。それがここに取りあげた
会話。最後に、ノラは、偽善的な夫に愛想をつかし、ヘルメルと、三人の子どもを残して、家を
出る。

【付記】

 父親に虐待されていた子ども(小二男児)がいた。いつも体中に大きなアザを作っていた。そ
こでその学校の校長が、地元の教育委員会に相談。児童相談所がのり出して、その子どもを
施設へ保護した。

 が、悲しいかな、そこが子ども心。そんな父親でも、施設の中では、「お父さんに会いたい、会
いたい」と泣いていたという。そこで相談員が、「あなたはお父さんのことを好きなの?」と聞く
と、その子どもは、「好き」と答えたという。

 こうした子どもの心理も、反動感情で説明できる。つまり父親の虐待に対して、その子ども
は、本当の自分の感情とは反対の感情をもつことで、与えられた状況に適応しようとした。そ
の子どものばあい、「いやだ」と言って、家を飛びだすわけにもいかない。また父親に嫌われた
ら、生きていくことすらできない。そこでその子どもは、「好きだ」という感情を、自分の中につく
ることで、自分の心を防衛したと考えられる。

+++++++++++++++++++++

●真理と孤独

 キリストや釈迦は、多くの人を救った。しかしキリストや釈迦自身は、どうだったか? 救われ
たか? もっと言えば、孤独ではなかったか?※

 キリストにも釈迦にも、弟子はいた。しかし師と弟子の関係は、あくまでも師と弟子の関係。
師は、あくまでも智慧(ちえ)を与える人。弟子は、あくまでもその智慧を受け取る人。弟子たち
はそれでよいとしても、師であるキリストや釈迦は、どうだったのか? それでよかったのか?

 真理の荒野をひとりで歩くことは、それ自体は、スリリングで楽しい。しかし同時に、それは孤
独な世界でもある。(私が求めている真理など、真理ではないかもしれないが、それでもそう感
ずることがよくある。)とくに、現実の世界に引き戻されたとき、その孤独を強く感ずる。「人生
は……」などと考えていたところへ、幼児がやってきて、「先生、ママがいなア〜イ」と。

 そこで心の調整をしなければならないが、私のばあい、思索の世界から離れたときは、その
反動からか、今度は極端に、バカになる。バカになって、心の緊張感を解く。孤独から離れる。
もしあなたが、私の近くへやってきて、私を知ったら、私のことを、ひょうきんで、おもしろい男だ
と思うだろう。私は子どものみならず、おとなに対しても、笑わせ名人で、いつも周囲の人たち
をゲラゲラ笑わせている。私のワイフですら、「あんたといると、退屈しない」と言っている。昨夜
も寝るまで、ワイフを笑わせてやった。

 が、反対に、そういう外での私しか知らない人は、私の作品を読んだりすると、「これ、本当に
あなたの文ですか?」と聞いたりする。そこまではっきりと言わないまでも、驚く人は多い。「あ
の『はやし浩司』って、あなたのことでしたか?」と言った人もいる。

 が、キリストや釈迦は、そうではない。あるいはひょっとしたら、ひょうきんで、おもしろい人だ
ったかもしれないが、そういう話は、伝わっていない。……となると、やはり、キリストや釈迦
は、どうやって、孤独と戦ったかということになる。ふつうなら……という言い方はしてはいけな
いのだろうが、しかしふつうなら、何らかの形で自分の心をいやさないと、とても孤独には、耐
えられない。

 もっともキリストにせよ、釈迦にせよ、私たちをはるかに超越した世界に住んでいたのだか
ら、孤独ということはなかったかもしれない。……となると、また別の問題が生まれてくる。

 もし、仮に、だ。もし、あなたが、ある惑星に落とされたとする。そしてその惑星は、サルの惑
星で、サルたちが、サルのまま、野蛮な生活をしていたとする。一方、あなたには、知性があ
る。言葉もある。道徳も、倫理もある。もしあなたがそういう世界に落とされたとしたら、あなた
はどうなるだろうか。あなたは神や仏のように祭られるだろう。しかしあなたはその世界がも
つ、孤独に耐えられるだろうか。もう少しわかりやすい例で考えてみよう。

 幼児教育をしていて、ゆいいつ、つまらないと思うのは、いくら幼児と接しても、私と幼児の間
には、人間関係が生まれないということ。この点、大学生や高校生を教える先生は、うらやまし
い。教えながら、人間対人間の関係になる。そこから人間関係が生まれる。が、幼児教育に
は、それがない。で、そういう幼児だけの世界にいると、ときどき、言いようのない孤独感に襲
われるときがある。私が考えていることの、数千分の一も、子どもたちには伝わらない。説明し
てあげようと思うときもあるが、あまりの「へだたり」に、呆然(ぼうぜん)とする。

 つまり、人は、その世界を超越すればするほど、その分だけ、孤独になる? キリストや釈迦
のような「人」であれば、なおさらだ。となると、話は、また振りだしに戻ってしまう。「キリストや
釈迦は、多くの人を救った。しかしキリストや釈迦自身は、どうだったか? 救われたか? も
っと言えば、孤独ではなかったか?」と。

 もちろんキリストや釈迦を、私たちと同列に置くことはできない。本当にそうであったかどうか
は、私にはわからないが、彼らは真理に到達した「人」たちである。もしそうなら、その時点で、
孤独からは解放され、その時点で、さらに真の自由を手に入れていたことになる。あるいは、
キリストや釈迦は、私たちが考えもつかないような世界で、もっと別の考え方をしていたのかも
しれない。

 考えていくと、この問題は、結局は、私自身の問題ということになる。真理などというのは、簡
単に見つかるものではない。恐らく私が、何百年も生き、そして考えつづけたとしても、見つか
らないだろう。もしそうであるとするなら、私はその真理に到達するまで、つまり死ぬまで、その
一方で、この孤独と戦わねばならない。

もちろん、キリストや釈迦のように、真理に到達すれば、あらゆる孤独から解放されるのだろ
う。が、そうでないとしたら、一生、解放されることはない? しかも、だ。皮肉なことに、真理に
近づけば近づくほど、ほかの人たちからの孤立感が大きくなり、そしてその分だけ、孤独感は
ますます強くなる?

 そういう意味で、真理と孤独は、密接に関連している。紙にたとえて言うなら、表と裏の関係と
いってもよい。世界の賢者たちも、この二つの問題で、頭を悩ました。いくつかをひろってみよ
う。

●この世の中で、いちばん強い人間とは、孤独で、ただひとり立つ者なのだ。(イプセン「民衆
の敵」)
●われは孤独である。われは自由である。わらは、われ自らの王である。(カント「断片」)
●つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ。まぎるる方なく、ただ一人(ひとり)あるのみこそよ
けれ。(吉田兼好「徒然草」)
●孤独はすぐれた精神の持ち主の運命である。(ショーペンハウエル「幸福のための警句」)
●人はひとりぼっちで死ぬ。だから、ひとりぼっちであるかのごとく行為すべき。(パスカル「パ
ンセ」)

 簡単に「孤独」と言うが、孤独がもつ問題は、そういう意味でも、かぎりなく大きい。人生にお
ける最大のテーマと言ってもよい。そうそうあの佐藤春夫(一八九二〜一九六四、詩人・作家)
は、こう書いている。『神は人間に孤独を与へた。然も同時に人間に孤独ではゐられない性質
も与へた』と。この言葉のもつ意味は、重い。

※マザーテレサの言葉より……

●孤独論

 孤独は、あらゆる人が共通してもつ、人生、最大の問題といってよい。だからもしあなたが
今、孤独だからといって、それを恥じることはない。隠すこともない。大切なことは、その孤独
と、いかにうまく共存するかということ。さあ、あなたも声を出して叫んでみよう。「私はさみしい」
と。マザーテレサは、つぎのように語っている。

 訳はかなりラフにつけたので、必要な方は、原文をもとに、自分で訳してほしい。

When Christ said: "I was hungry and you fed me," he didn't mean only the hunger for bread 
and for food; he also meant the hunger to be loved. Jesus himself experienced this 
loneliness. He came amongst his own and his own received him not, and it hurt him then and 
it has kept on hurting him. The same hunger, the same loneliness, the same having no one to 
be accepted by and to be loved and wanted by. Every human being in that case resembles 
Christ in his loneliness; and that is the hardest part, that's real hunger. 

キリストが言った。「私は空腹だった。あなたが食事を与えてくれた」と。彼は、ただ食物として
のパンを求める空腹を意味したのではなかった。彼は、愛されることの空腹を意味した。キリ
スト自身も、孤独を経験している。つまりだれにも受け入れられず、だれにも愛されず、だれに
も求められないという、孤独を、である。彼自身も、孤独になった。そしてそのことが彼をキズつ
け、それからもキズつけつづけた。どんな人も孤独という点では、キリストに似ている。孤独は、
もっともきびしい、つまりは、真の空腹ということになる。








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【10】

●子どもの虚言癖

愛知県名古屋市のHTさんより、こんな相談をもらった。

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はやし様

先日は、相談にのっていただき、ありがとうございました。
子ども(小学一年生、女児)のことで相談と言いながら、
夫婦のことで相談していたように思い、肝心の、
娘のことで、相談にのってもらうのを忘れていました。

あのあと、
「私は主人と、娘の仲が悪いのだと思い、主人が娘にきびしいから
だと決めつけていたけど、私が悪かったんだと思う」
と主人に話をしました。

主人は、「俺が短気なのが悪いんだろうな。でもまちがったことをし
ている娘にやさしくはできないよ」
と言いました。

そして話しあい、私は娘と仲よくしたいので、態度を改めることに
しました。

今までは娘のウソをやめさせるために、「ウソをついたら叩くよ」と言
い、ウソをついた分だけ、叩いてきました。

お尻が真っ青になるまで叩かれても、娘は、ウソをつくのはやめませんで
した。

また、家では「ウソをつくとペナルティ」という約束ごとがあります。

ペナルティは廊下の雑巾がけなのですが、いろんな理由をつけ
ては、どうにかしてやらないようにしようと頑張っているので
すが、結局、私に言われて泣きながらやっています。

そこで叩くのをやめて(ペナルティはやらせています)、はや
し様がHPで書いている通りに、「うそをつぶす」ことを、はじめました。

一回目は娘が、ウソを認めるまで一時間半かかりました。
二回目も・・・。

毎日、何回もウソをつくのでそのたびに話をするのは大変でした。
ウソを認めるまでにはまだ時間がかかります。
ウソを認めたくないから「絶対に本当です。私を信じてくだ
さい」などと、わかりやすいウソのばあいでも言います。

何一〇回でも言うのです。「信じてください。ウソじゃない」と

それでもウソを認めたときには、「もうウソはつかないのよ」と、それで
済ませています。

娘には、この接し方でよいのでしょうか?
本当にそれで娘のウソは、なおるのでしょうか?

娘の実の父(離婚した前夫)は、信じられないくらい、ウソつきでした。

私の財布から生活費を盗んでは、「泥棒じゃないのかい? 警察
に届けようよ」とか、

パチンコをしていて帰りが遅くなれば、「友だちにつかまった」
とかなど、わかりやすいウソをたくさんつく人でした。

娘がウソをつくと、彼と重なってイライラするのです。
あんな風にはなってもらいたくない!、と・・・

あともう一つ、娘のことで気になるのは「過食」です。

娘と二人で暮らしていたとき、私は大検の資格を取るために、毎日
勉強していました。

娘とは一緒の布団で寝ていましたが、同じ時間に布団に入ること
はありませんでしたし、仕事も忙しかったので、あまりかまって
やれず、ぐずると叱りつけていました。

去年九月に合格したのを境に、少しずつ娘の過食がはじまりました。

今年二月に、名古屋に越してきてから、ひどくなりました。
さらに四月に小学校に入学して、給食がはじまると、二人分の給食
を食べるようになったのです。

娘はクラスで一番背が小さく、動くのが嫌いなので、どんどんと太
っていきました。

食べ物の量が多く、消化できないため、口臭と便秘がひどいです。

私や主人がどんなに怒っても、給食を食べ過ぎた分だけ、夕食を
減らしても一向に効果がありません。

学校から帰って来てからも友だちと遊んだりしないので、主人が
家でできる体操を教えました。

それをやるのも嫌がります。

小さいときから食べる事は大好きでしたが、体がちいさいので小
食でした。

朝食のパンが食べられなくてゴミ箱の底に隠したときもありました。

それが今では・・・?

今は娘のことを考えて、パンも自分で焼き、娘の好きな和食を作
っています。

和食はローカロリーなのでよいと思っていますが、学校で食べ
るので、効果がありません。

学校ではおかわりをしないように、先生にも娘にも言ってあります。

これらのことすべてを、児童相談所へ相談しても、何も具体的なことを言
ってはくれません。

私の話を聞くだけでなに、一つアドバイスもしてくれません。

一度「好きなだけ食べさせなさい」と言われたことがあり、好きに
させたのですが、体調が悪くなり、胃もたれや腹痛があっても
食べるのをやめませんでした。

今は娘の体調を考えて、給食を食べ過ぎたときには、夕食を抜いた
りしています。

「中間反抗期」「環境の変化」「主人との折り合いの悪さ」
「やきもち」など・・・

いろんなことを疑ったのですが、やはり原因は私でしょうか?

娘のため、じぶんのため、主人のため。
がんばっていきたいと思います。

はやし様、どうかお力をお貸しください。
よろしくお願いします。

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子どものウソについては、たびたび書いてきましたので
その中から、三作を選んで、ここに掲載します。

まず、子どものウソについて、よく理解してください。
一部、内容がダブりますが、お許しください。

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(1)子どもの虚言癖

●子どものウソ

 子どものウソは、つぎの三つに分けて考える。

@空想的虚言(妄想)
A行為障害による虚言
Bそれに虚言。

空想的虚言というのは、脳の中に虚構の世界をつくりあげ、それをあたかも現実であるかのよ
うに錯覚してつくウソのことをいう。行為障害による虚言は、神経症による症状のひとつとして
表れる。習慣的な万引き、不要なものをかいつづけるなどの行為障害と並べて考える。これら
のウソは、自己正当化のためにつくウソ(いわゆる虚言)とは区別して考える。空想的虚言に
ついては、ほかで書いたのでここでは省略する。

 で、行為障害によるウソは、ほかにも随伴症状があるはずなので、それをさぐる。心理的な
要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症というが、ふつう神経症に
よる症状は、つぎの三つに分けて考える。

@精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状
(周囲の者には理解できないものに対して、おののく、こわがる)、虚言癖(日常的にウソをつ
く)、不安症状(理由もなく悩む)、抑うつ感(ふさぎ込む)など。混乱してわけのわからないことを
言ってグズグズしたり、反対に大声をあげて、突発的に叫んだり、暴れたりすることもある。

A身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿症、
頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発
熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面で
の神経症に先立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号とと
らえて警戒する。

B行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって行動面
に表れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、無気力、怠学、無
関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになる。パンツ一枚で出
歩くなど、生活習慣がだらしなくなることもある。

 こうした症状があり、そのひとつとして虚言癖があれば、神経症による行為障害として対処す
る。叱ったり、ウソを追いつめても意味がないばかりか、症状をさらに悪化させる。愛情豊かな
家庭環境を整え、濃厚なスキンシップを与える。あなたの親としての愛情が試されていると思
い、一年単位で、症状の推移を見守る。「なおそう」と思うのではなく、「これ以上症状を悪化さ
せないことだけ」を考えて対処する。神経症による症状がおさまれば、ウソも消える。

+++++++++++++++++++++

(2)ウソにもいろいろ

 ウソをウソとして自覚しながら言うウソ「虚言」と、あたかも空想の世界にいるかのようにして
つくウソ「空想的虚言」は、区別して考える。

 虚言というのは、自己防衛(言い逃れ、言いわけ、自己正当化など)、あるいは自己顕示(誇
示、吹聴、自慢、見栄など)のためにつくウソをいう。子ども自身にウソをついているという自覚
がある。母「誰、ここにあったお菓子を食べたのは?」、子「ぼくじゃないよ」、母「手を見せなさ
い」、子「何もついてないよ。ちゃんと手を洗ったから……」と。

 同じようなウソだが、思い込みの強い子どもは、思い込んだことを本気で信じてウソをつく。
「昨日、通りを歩いたら、幽霊を見た」とか、「屋上にUFOが着陸した」というのがそれ。その思
い込みがさらに激しく、現実と空想の区別がつかなくなってしまった状態を、空想的虚言とい
う。こんなことがあった。

●空想の世界に生きる子ども

 ある日突然、一人の母親から電話がかかってきた。そしてこう言った。「うちの子(年長男児)
が手に大きなアザをつくってきました。子どもに話を聞くと、あなたにつねられたと言うではあり
ませんか。どうしてそういうことをするのですか。あなたは体罰反対ではなかったのですか!」
と。ものすごい剣幕だった。が、私には思い当たることがない。

そこで「知りません」と言うと、その母親は、「どうしてそういうウソを言うのですか。相手が子ど
もだと思って、いいかげんなことを言ってもらっては困ります!」と。

 その翌日その子どもと会ったので、それとなく話を聞くと、「(幼稚園からの)帰りのバスの中
で、A君につねられた」と。そのあと聞きもしないのに、ことこまかに話をつなげた。が、そのあ
とA君に聞くと、A君も「知らない……」と。結局その子どもは、何らかの理由で母親の注意をそ
らすために、自分でわざとアザをつくったらしい……、ということになった。こんなこともあった。

●「お前は自分の生徒を疑うのか!」

 ある日、一人の女の子(小四)が、私のところへきてこう言った。「集金のお金を、バスの中で
落とした」と。そこでカバンの中をもう一度調べさせると、集金の袋と一緒に入っていたはずの
明細書だけはカバンの中に残っていた。明細書だけ残して、お金だけを落とすということは、常
識では考えられなかった。

そこでその落としたときの様子をたずねると、その女の子は無表情のまま、やはりことこまか
に話をつなげた。「バスが急にとまったとき体が前に倒れて、それでそのときカバンがほとんど
逆さまになり、お金を落とした」と。しかし落としたときの様子を覚えているというのもおかしい。
落としたなら落としたで、そのとき拾えばよかった……?

 で、この話はそれで終わったが、その数日後、その女の子の妹(小二)からこんな話を聞い
た。何でもその女の子が、親に隠れて高価な人形を買ったというのだ。値段を聞くと、落とした
という金額とほぼ一致していた。が、この事件だけではなかった。そのほかにもおかしなことが
たびたび続いた。「宿題ができなかった」と言ったときも、「忘れ物をした」と言ったときも、その
つど、どこかつじつまが合わなかった。

そこで私は意を決して、その女の子の家に行き、父親にその女の子の問題を伝えることにし
た。が、私の話を半分も聞かないうちに父親は激怒して、こう叫んだ。「君は、自分の生徒を疑
うのか!」と。そのときはじめてその女の子が、奥の部屋に隠れて立っているのがわかった。
「まずい」と思ったが、目と目があったその瞬間、その女の子はニヤリと笑った。

ほかに私の印象に残っているケースでは、「私はイタリアの女王!」と言い張って、一歩も引き
さがらなかった、オーストラリア人の女の子(六歳)がいた。「イタリアには女王はいないよ」とい
くら話しても、その女の子は「私は女王!」と言いつづけていた。

●空中の楼閣に住まわすな

 イギリスの格言に、『子どもが空中の楼閣を想像するのはかまわないが、そこに住まわせて
はならない』というのがある。子どもがあれこれ空想するのは自由だが、しかしその空想の世
界にハマるようであれば、注意せよという意味である。

このタイプの子どもは、現実と空想の間に垣根がなくなってしまい、現実の世界に空想をもちこ
んだり、反対に、空想の世界に限りないリアリティをもちこんだりする。そして一度、虚構の世
界をつくりあげると、それがあたかも現実であるかのように、まさに「ああ言えばこう言う」式の
ウソを、シャーシャーとつく。ウソをウソと自覚しないのが、その特徴である。

●ウソは、静かに問いつめる

 子どものウソは、静かに問いつめてつぶす。「なぜ」「どうして」を繰り返しながら、最後は、「も
うウソは言わないこと」ですます。必要以上に子どもを責めたり、はげしく叱れば叱るほど、子
どもはますますウソがうまくなる。

 問題は空想的虚言だが、このタイプの子どもは、親の前や外の世界では、むしろ「できのい
い子」という印象を与えることが多い。ただ子どもらしいハツラツとした表情が消え、教える側か
ら見ると、心のどこかに膜がかかっているようになる。いわゆる「何を考えているかわからない
子ども」といった感じになる。

 こうした空想的虚言を子どもの中に感じたら、子どもの心を開放させることを第一に考える。
原因の第一は、強圧的な家庭環境にあると考えて、親子関係のあり方そのものを反省する。
とくにこのタイプの子どものばあい、強く叱れば叱るほど、虚構の世界に子どもをやってしまう
ことになるから注意する。

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(3)ウソと空想的虚言

 幼児教育では、ウソをウソと自覚しながらつく虚言と、空想的虚言(妄想)は、区別して考え
る。虚言というのは、自己防衛や自己正当化のためにつくウソだが、その様子から、それがウ
ソとわかる。……わかりやすい。

母「誰かな? ここにあったお菓子を食べたのは?」
子「ぼくじゃないよ」
母「じゃあ、手を見せてごらん。手にお菓子のカスが残っているはずよ」
子「残っていない。ぼく、ちゃんとなめたから」と。

 これに対して、空想的虚言は、現実と空想の間に垣根がない。自分の頭の中に虚構の世界
をつくりあげ、それがあたかも現実のできごとであるかのように、ウソをつく。本人もウソをウソ
と自覚しない。まさに「ああ言えばこう言う」式のウソを、シャーシャーとつく。こんなことがあっ
た。ある夜遅く、一人の母親から電話がかかってきた。そしていきなりこう怒鳴った。

「今日、うちの子が、腕に大きなアザを作ってきました。先生が手でつねったそうですね。どうし
てそんなことをするのですか!」と。そこで私が、「知りません」と言うと、「相手が子どもだと思
って、いいかげんなことを言ってもらっては困ります。正直に言いなさい!」と。

 翌日、園へ行くと、園長のところに一通の手紙が届いていた。その母親が朝早く届けたもの
だ。読むと、「はやし先生が、うちの子どもに体罰を加えている。よく監視しておいてほしい。な
お、この手紙のことは、はやし先生には内密に」と。そこで私がその子どもをつかまえて、それ
となく腕のアザのことを聞くと、こう言った。「ママが、つねったから」と。私は何がなんだか、さっ
ぱりわけがわからなくなってしまった。そこでどういう状況でつねられたかを聞くと、その子ども
は、こと細かに、そのときの様子を説明し始めた。

 英語に、『子どもが空中の楼閣を想像するのは構わないが、その楼閣に住まわせてはならな
い』という格言がある。空想するのは自由だが、空想の世界にハマるようであれば注意せよと
いう意味である。

が、実際の指導で難しいのは、子どもというより、親自身にその自覚がないこと。このタイプの
子どもは、親の前や外の世界では、信じられないほど、よい子を演ずる。柔和な笑みを絶やさ
ず、むしろできのよい子という印象を与える。

これを幼児教育の世界では、「仮面をかぶる」という。教える側から見ると、心に膜がかかった
かのようになり、何を考えているかわからない子どもといった感じになる。が、親にはそれもわ
からない。別のケースだが、私がそれをある父親に指摘すると、「君は、自分の生徒を疑うの
か! 何という教師だ!」と、反対に叱られてしまった。

 原因は、強圧的(頭からガミガミ言う)、閉塞的(息が抜けない)、権威主義的(押しつけ)な子
育て。こういう環境が日常化すると、子どもは虚構の世界をつくりやすくなる。姉妹でも同じよう
な症状を示した子どももいたので、遺伝的な要素(?)も無視できない。が、原因の第一は、家
庭環境にあるとみる。

子どもの心を解放させることを第一に考え、「なぜ、どうして?」の会話をやさしく繰り返しなが
ら、ウソをていねいにつぶす。頭から叱れば叱るほど、心は遊離し、妄想の世界に子どもを追
いやることになる。

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【HTさんへ】

 虚言癖にしても、過食症にしても、まず、神経症が基本にあることが疑われます。しかし問題
とすべきは、まだお嬢さんが、小学一年生だ、ということです。(一年生ですよ!)少しきびしす
ぎるというより、酷な感じがします。もっとはっきり言えば、痛々しい……?

 HTさんが、前夫のウソに苦しんだという話は、よくわかります。心理学的には、こうしたわだ
かまりが、(固着)となって、HTさんを、ウラから操っていると思われます。HTさん自身が、すで
にそのことについて、お気づきのとおりです。

 つまり、子どものウソが、気になってしかたないわけです。そのため、HTさんは、お嬢さんの
ウソに、過剰反応なさっておられるのではないでしょうか。

 はっきり言いましょう。子どものウソくらいで、一時間半も、子どもを責めてはいけません。小
学一年生でしたら、せいぜい、五分。親からみて、ウソだとわかっているなら、相手にしないこ
と。「ウソはだめだよ〜」とか言って、笑ってすますのが、ふつうです。そういうふうには、できな
いのでしょうか。

とくに、ここでいう神経症による虚言癖は、責めれば責めるほど、かりにそのウソをつぶすこと
はできても、それ以上に深刻な、別の症状を引き起こすことが、よくあります。過食が、まさに、
それです。

 (しかし実際には、症状は、もっとたくさん出ているはずです。多分、見落とされていると思い
ます。口臭や便秘もそうですが、ほかに腹痛、頭痛、夜尿など……。)

 あなたは、前夫との、不愉快な思い出(わだかまりや、こだわり)を、無意識のうちにも、お嬢
さんに、ぶつけていませんか? あなたは子どものウソがいやなのではありません。あなたの、
前夫に対する、(うらみ)や(嫌悪感)を、子どものぶつけている? 私には、そうとしか思えない
のですが、いかがでしょうか。

 「いろんなことを疑ったのですが、やはり原因は私でしょうか?」ということですが、原因はとも
あれ、今、お嬢さんが一番、必要としているのは、「やすらぎを感ずる、暖かい家庭」です。

 思春期が近くなって、節食障害(過食症)になる子どものケースは、たくさん知っていますが、
小学一年生という年齢の子どもについては、私も、はじめてです。このあたりの深刻さを、どう
か、ご理解ください。

 メールを読むかぎり、問題の原因は、子どもにあるのではなく、あなた自身にあると思われま
す。あなたは、子どもを愛しているのではなく、子どもを自分の思いどおりにしたいだけでは、な
いでしょうか。これを私は、「代償的愛」と呼んでいます。

一見、子どものことを心配しているようですが、その実、自分の心配や不安を子どもにぶつけ、
子どもをその心配や不安を解消するための道具にしているだけではないかということです。ま
ずもって、どうか、それに気づいてください。

 では、どうするか?

 子どもは『許して、忘れます』。これを繰りかえします。どんなことがあっても、それを繰りかえ
します。あとは、根気くらべです。それともあなたは、風邪で熱を出している子どもに、水をかけ
たり、熱を出している子どもを、叱ったりするとでもいうのでしょうか。

 お嬢さんは、かなり重度の神経症による症状を、いくつか示していると考えらえます。つまり、
心が風邪をひいた状態です。この心の風邪は、外から見えない分だけ、安易に考えがちです
が、しかし実際には、半年から、一年単位で、症状は推移します。

 ウソにしても、一度や二度くらい、強く叱ったくらいで、なおるはずもないのです。どうして暖か
い愛情で、お子さんを包んであげないのですか。私には、あなたよりも、お嬢さんの、声なき悲
鳴のほうが、気になってしかたありません。

 それに誤解も、多いようです。

 たとえば口臭にしても、「食べものが多いから」では、ありません。神経を病んでいるからで
す。

 また「給食を食べ過ぎたときには、夕食を抜いたりしています」とのこと。どうして、そんな残酷
なことをするのですか! かえって夕食を抜けば、血糖値がさがり、脳間伝達物質が変調し、
過食(摂食障害)がすすむだけです。少量でもよいから、規則正しい食生活にこころがけてくだ
さい。

 「中間反抗期」というのは、幼児から少女への、脱皮期をいいます。「反抗」するのではなく、
自己主張がはげしくなることを意味します。ウソをついたり、過食するのは、「反抗」とは、言い
ません。

 「ウソをついた分だけ、子どもを叩く」「お尻が真っ青になるまで叩かれても、娘は、ウソを、つ
くのは、やめません」とのこと。

 痛い思いをさせても、この種のウソには、効果はありません。……あるはずもないのです。ま
た、お尻が真っ青になるまで、子どもを叩いていけません。絶対に、いけません。こういうのを、
世間では、「虐待」と言います。あなたには、その重大さが、わかっていますか?

 実のところ、あなたの心も、またキズつき、病んでいると考えたほうが、よさそうです。あなた
はあなたなりに、がんばっている。それはわかります。しかし一方で、あなたは、自分がかかえ
る、不安や心配を、お嬢さんに、そのままぶつけている。

 本来なら、あなた自身の内部で処理しなければならない問題を、子どもにぶつけているので
す。

 今、あなたに必要なことは、『許して、忘れる』です。

 お嬢さんを、許して、忘れなさい。子どもに愛を与えるために、許し、子どもから愛を得るため
に、忘れるのです。まだ間にあいます。だから、今から、そうしなさい。

 ウソをなおそうと思うのではなく、ウソとわかった段階で、無視すればよいのです。相手は、ま
だ小学一年生の、子どもでしょう! 未熟で未完成で、未経験な子どもでしょう! 体力でも、
知力でも、あなたにかなうわけがないのです。

 決しておとなの優位性を、子どもに押しつけてはいけません。はっきり言えば、本気で相手に
してはいけません。

 子どもの神経症の特効薬は、濃密なスキンシップです。抱く、手をつなぐ、いっしょに入浴す
る、添い寝をする。そしてあなたが子どもに言うべきことは、もっと謙虚な気持ちで、子どもにわ
びる言葉です。

 「ごめんね。私は、こんなママだけど、許してね」と、です。子どもがつくウソくらい、何ですか!
 子どもは、みんな、ウソつきですよ。それともあなたは、ウソをつかない、高潔な人ですか? 
自信をもって、そう言えますか?

 たしかに私は、「子どものウソは、質問責めにして、つぶせ」と書きました。しかし、それは、理
づめで、つぶせという意味です。威圧したり、恐怖心を与えたり、あるいは体罰を加えたりとい
うことではありません。どうか、誤解しないでください。

 HTさん、繰りかえしますが、「まだ間にあいます」。ですから、あなたにその気があるなら、こ
こで子育ての方向を、大きく、軌道修正してください。もし時間があるなら、私のホームページ
を、片っぱしから、読んでみてください。そしてあなたの、子育てのしかた、そのものを変えてみ
てください。

 やがてあなたも、あなた自身の中に、巣をつくっている、トラウマ(心的外傷)に気づくときがき
ます。それに気づけば、今のトンネルを抜け出ることができます。

 とりあえずは、私の『許して、忘れる』の原稿を読んでみてください。Eマガのほうでも、最近、
特集しましたので、そちらから読んでいただいても結構です。Eマガのバックナンバーの項目か
ら、拾ってみてください。
http://www.emaga.com/bn/bn.cgi?hhayashi2

 あなたは今、(ごくふつうの母親)から、(真の母親)に、脱皮しようとしています。あなたの子
どもが、それを、体を使って、あなたに教えているのです。あなたが、あなた自身の中の(あな
た)に気づけば、あなたは、必ず、(真の母親)になれます。

 どうか勇気を出して、足を一歩、前に踏みだしてみてください。また力になります。

 繰りかえします。『許して、忘れる』ですよ。それだけを心に念じて、お嬢さんに接してみてくだ
さい。

 たいへんきびしいことを書きましたが、あなたは、すばらしい、ここでいう(真の親)になる、一
歩手前にいます。あなた自身が、今、脱皮の苦しみを味わっています。しかしトンネルから、抜
け出るのは、もうすぐです。

 そのトンネルから抜け出れば、今のあなたは、大きく変わります。

 憎んだり、うらんだりするなら、あなたの前夫に対して、そうしなさい。あなたの過去に対して、
そうしなさい。憎んで、憎んで、憎みまくるのです。うらんで、うらんで、うらみまくるのです。ヘト
ヘトになるまで、そうします。

 しかしあなたの子どもに対しては、してはなりません。あなたの子どもは、関係ないのです。
今のままでは、あなたが受けたトラウマ以上のトラウマを、あなたの子どもに与えることになっ
てしまいます。深い、どこまでも深い、心のキズです。

 その分、つまりあなたにエネルギーがあるなら、そのエネルギーは、あなたや家族の幸福の
ために、使用します。子どもを見ないで、前向きに、あなた自身の幸福を、追求します。ここに
も書いたように、子どもなど、相手にしないことです。たかが小学一年生の子どもでしょう!

 子どもがウソを言ったら、「♪バレバレヨ〜」とか何とか言って、笑ってすまします。そしてあと
は、『許して、忘れる』。その度量の広さが、あなたの子どもの心に、風穴をあけます。そしてそ
れが、結果として、子どものウソを、こなごなにつぶします。ほかの神経症による症状が消えた
とき、そのウソも消えます。約束します。ですから、ウソをつぶすのではなく、あなた自身のトラ
ウマと戦うのです。

 あなたが一歩でも前進すれば、あなたは、ほかの親たちより、数歩も、幸福に近づくはずで
す。なぜなら、あなたは、不幸というものが、どういうものか、すでに知っている。そして幸福と
いうものが、どういうものか、すでに知っている。

 ですから不幸であったことを、恥じることはないのです。その不幸を土台として、幸福になれ
ばよいのです。決して、その幸福を、手放しては、いけませんよ。あなたは、もうすぐ、ほかの
人よりも、何倍も、幸福になります。約束します。

 お父さんも、「まちがったことは嫌い」などと、肩に力を入れないで、もう少し気楽に考えたらよ
いのです。決していいかげんになれということではありません。おもしろい父親になれということ
です。どこかギスギスな感じがしないでも、ありません。子育てを、もっと、気楽に楽しんでくださ
い。子ども自身がもつ、自ら伸びる力をもっと信じて……!

 今日はこれで失礼しますが、また何か悩んだり、苦しんだりしたら、メールで書いて送ってくだ
さい。では、今日は、ここで失礼します。
(031112)











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