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【1】

●フリースクールに通う二男

++++++++++++++++

TKさんの息子が、
フリースクールに通うようになって、
3か月になるという。

ときどき横ぎる親の不安。
その不安と戦いながら、
TKさんは、今、子育ての最前線で、
その息子と懸命に向かいあっている。

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【掲示板より、はやし浩司へ】

3、4月に二男が進学が決まった高校への入学を拒否したことでご相談いたしましたTKという
ものです。
いつもEマガジン楽しみに読ませていただいています。

その後、二男はM市の隣のN市のフリースクールに、毎日通っています。

毎日、朝7:30に起床し、9時に家を出て、9時30分にスクールに着き、高認の試験勉強を
し、12時にそこで弁当を食べ、1時にスクールを出て帰宅します。

家では相変わらずのランニングや筋トレ、「脳力道場」というソフトでHQを向上させるんだと、こ
れも規則正しく生活しています。

もちろん家の近所や駅で、中学の同級生に会うことを嫌がり、かなり神経を使っています。
それでも毎日、リュックサックを背負って通う姿を見ると、何か胸にくるものがあります。

こういう生活をしだしてから、普段イライラすることも少なくなり、暴言をはくことも一度あったの
みです。その時は大声を上げてから、泣き声に変わり「本当は高校に行きたいけれど、行ける
高校がない」と言い、本人もとても苦しいのだなと私にも、わかりました。

中学の担任だった先生には、本人からお詫びも含め、手紙を書きましたが、何も返事がありま
せん。「やはり嫌われたかな」と、とても気にしています。「返事がないのは、先生も理解したと
いうことだよ」と言うと、「そうかな」と言いましたが、返事は待っているようです。

残念ながらフリースクールには朝から来るような生徒さんはおらず、先生と二人で学習してい
ます。お友達がいれば、いろいろ話せるだろうなと思いますが、先生もこんなに規則正しく通う
生徒さんははじめてだそうです。

高認の試験に合格したあとは、アルバイトするか、留学するか考えているようです。以前から
みれば、突拍子もない希望や要望も少なくなり、またあまり希望が変化することがなくなってき
ました。

私たち夫婦には、よく話しかけてきます。やはり話し相手がほしいのだろうなと思います。

高校に行かなくて将来に影響が出ないのかという親の不安も、依然あります。それをあおるよ
うに今何とかしないと、将来大変なことになるという、別のスクールからのお話も聞きました。そ
のスクールに入れると、半年でとんでもない費用がかかります。

(ちなみにN市のUTやRE塾など。二男が通っている、TYスクールではありません)。

しかし本人が今のスクールの先生と相性がよく、スクールもこじんまりしていて、気に入ってい
るようです。彼の意思にまかせています。

これからの彼がどういうふうに自分の道を切り開くのか、見守りたいと思います。

【はやし浩司より】

 掲示板への投稿ありがとうございました。同じような問題をかかえ、同じように悩んでいる多く
の父母にたいして、おおきな励みになると思います。

 TKさんの書きこみの中で、一番重要な部分は、『私たち夫婦には、よく話しかけてきます。や
はり話し相手がほしいのだろうなと思います』という部分です。

 そして息子さん自身が、TKさんに、『本当は高校に行きたいけれど、行ける高校がない』とい
うようなことを、語った部分です。

 すばらしい親子ではありませんか! わかりますか、TKさん。すばらしい親子ですよ!

 今のTKさんには理解できないことかもしれませんが、こうした問題(今、TKさんがかかえてい
る問題)は、終わってみると、「何だ、こんなことだったのか」と、ウソのように静かになります。
あたかも何ごともなかったかのように、終わります。

 私が知るかぎり、例外なく、そうなっています。「時」の流れには、不思議な力があります。そ
の時々は、遅々として進まなく見える時の流れも、終わってみると、あっという間。しかもそのつ
ど、「今」という時点でみると、それまでの過去が、きれいに消えてしまっているものです。

 もともと過去などというものは、どこにもないのですから……。

 だから不安に思わないこと。息子さんは、すでに自分の道を歩み始めています。『高校に行
かなくて、将来に影響が出ないのかという親の不安も、依然あります』という部分ですが、そう
いうことは、まったく、ありません。

 『それをあおるように今何とかしないと、将来大変なことになるという、別のスクールからのお
話』という部分ですが、私の返事は、ただひとつ。『今どき、バカじゃなア〜イ?』です。正直言っ
て、この珍説には、笑ってしまいました。

 何が、将来、大変なことになるのですか? 何をもって、大変というのですか? 学歴信仰の
亡者どもめ!、です。こういうバカがいるから、日本の学歴信仰、学校神話はいつまでたって
も、なくならないのです。コースに乗った子どもだけが正常で、コースからはずれた子どもは、
そうでないという、実にバカげた、まさに日本型非常識が、いまだに、大手を振って歩いてい
る!

 (塾の先生というと、高邁な人格者を想像しがちですが、実際には、レベルが低い人が多い
ですよ(失礼!)。思想や哲学が背景にあって、塾の先生になった人など、ほとんどいません
(本当に、失礼!)。教材の元セールスマンが、そのまま塾の経営者になったりしています。

 何も、元セールスマンが、塾を経営してはいけないと言っているのではありません。ただ金儲
け第一主義で、塾の経営をしている人も、多いということです。)

 そしてその結果、善良な親や、子どもたちが、必要以上に苦しめられるのです。

 しかし何が大切かといって、今のTKさんと息子さんにとって、たがいの(支えあい)ほど、大切
なものはありません。それがあれば、この先、どんな苦労も、問題も、乗り越えることができま
す。

 その(支えあい)のない状態。それを『大変なこと』というのですよ。

 TKさん、まず、あなたが、堂々としていなさい。息子さんは、今、どこか自分を卑下していま
す。しかしなぜそうするかといえば、あなたのシャドウ(心の陰)を引きずっているからです。あ
なた自身の学歴信仰を引きずっているからです。TKさん、あなたには、それがわかりますか?

 あなたが、あなた自身の生き様を、まず示す。それを見て、子どもは、自分の生き様を決め
ていきます。世間体や、世間の目なんて、クソ食らえ、ですよ。どうして自分の道を進んでいる
あなたの息子が、小さくなっていなければならないのですか?

 コースにのって、楽な道を歩んでいる連中のほうこそ、小さくなっているべきでしょう。

 私の長男も、いろいろあって、ある時期、半年ほどですが、道路工事の旗振りの仕事をしまし
た。正直言って、私にしても、つらい時期でした。しかしあるとき、息子のほうが、私に聞きまし
た。

 「パパは、ぼくが、こんな仕事をしていて、恥ずかしくないか」とです。

 道路では、いろいろな人に会います。息子の友人たちにも会います。そういう友人たちが、家
に帰って、親たちに、「あの林の息子が、旗振りをしている」と。(このあたりでは、私も、少しだ
け、よく名が知られた存在なものですから……。)

 みな、陰で、そう言いあっているのが、私にも、よくわかりました。息子も、それを感じたのでし
ょう。それで私に、そう聞きました。

(またそういうことだけを、やたらと大声で話題にするバカが、いるのですね。本物のバカです。
どうして林の息子が、旗振りをしてはいけないのですか?)

 正直言って、「もう少しちがった仕事をしてほしい」と思いました。しかしそれは、仕事そのもの
が悪いというよりも、息子の健康が心配だったからです。夏の炎天下で、しかも排気ガスを、ボ
ンボンと吸い込むような環境です。とても、「よい仕事」とは、言えません。

 私は、「何を恥ずかしがるのだ!」と、長男に言い聞かせました。長男は、「自分を鍛えるた
め、いちばんきびしい仕事をしてみたい」と言って、その仕事を自分で選んだからです。息子が
最初に、私にそう言いました。で、私たち夫婦は、日焼け止めクリームを買ってきて、彼の部屋
の前に置いてやりました。

 最高級品の日焼け止めクリームです。彼の1週間分の給料よりも、高額だったかもしれませ
ん。

 親としてできることは、せいぜい、その程度のことです。

 そのあとも長い時間がかかりましたが、今では、ごくふつうの親子として、たがいに思いやり
ながら、生活しています。そういう「今」から見ると、過去など、何でもありません。

 いいですか、TKさん、今の親子関係だけを信じ、大切にして、あなたは子どものことだけを考
えて、今、できることを、懸命にすればよいのです。そうすれば、必ず、明日は、やってきます。

 今がいちばんつらいときです。しかしこのときも、やがて終わります。これからも苦しいときが
あるでしょう。つらいときも、あるでしょう。しかしどんなときも、『許して、忘れる』。それだけを守
って、前に進みます。

 幸いなことに、……というより、息子さんも、少し無理をしているかなという感じはありますが、
息子さんは、がんばって、フリースクールに通っています。ですからあまり先のことは心配しな
いで、今は今で、懸命にできることだけをすればよいのです。

 あのね、「世間」も、少しずつですが、変わってきましたよ。日本にも、やっと「自由」がやって
きたという感じです。それぞれの生き様を認める時代が、もう、すぐそこまでやってきています。

 そのために、私もがんばっています。TKさんも、どうか、がんばってください。みんなで力を合
わせて、この日本を変えていきましょう! 未熟な国から、成熟した国へと、です。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 不登
校 フリースクール)


【補足】

●自由とは……

 自由とは、あるがままの自分を、さらけ出しながら、あるがままに生きること。他人の目や、
世間体など、気にしない。他人がどう思うと、知ったことではない。それが自由。

 しかし、そんな自由が、この日本にあるだろうか?

 昨日、Tさんという母親から、掲示板に、こんな書きこみがあった。

 Tさんの息子は、高校へ入学はしたものの、そのまま不登校。今は、隣町にあるフリースクー
ルへ通っているという。
 
 そのフリースクール(塾)へ通う途中、Tさんの息子は、まわりの人たちに、かなり気を使って
いるらしい。とくに中学時代の友人たちに会うのを、何よりもいやがっているという。

 しかし、どうして? どうして中学時代の友人たちを気にするのか? どうしてその息子は、あ
るがままの自分をさらけ出して、あるがままに生きることができないのか。

 つまり、ここに、「自由」の問題がある。

 学校へ行かないことは、何も、恥ずべきことではない。アメリカには、学校へ行かないで、家
庭で勉強している、いわゆるホームスクーラーと呼ばれる子どもたちが、約200万人以上もい
る。希望すれば、州政府が、先生まで派遣してくれる。私の二男の嫁の実母が、その仕事をし
ている。

 学校へ行かないことで、差別されることはない。本人も家族も、そしてだれも、それをおかし
いこととは思わない。ついでながら、小学校から高校まで、一度も学校へ行かなかった子ども
でも、現在、ほとんどの大学が、そういった子どもを、受け入れている。

 しかしこの日本では、そうはいかない。日本には、コースというものがある。形というものがあ
る。そのコースからはずれ、形とはちがったことをすることが、たいへんむずかしい。

 他人がそれを許さないというより、自分が許さない。自分の中につくられた、(コース)意識、
(形)意識が、それを許さない。つまり自分で自分をがんじがらめにする。意識というのは、そう
いうもの。こんなことがあった。

 A県で公認会計士をしている友人がいる。その友人が、この町へ遊びにきて、こう言った。私
が「自転車通勤をしている」と話すと、「よく、そんな恥ずかしいことができるなア」と。

 自転車通勤をすることを、彼は、「恥ずかしいこと」というのだ。そしてこう言った。「ぼくらは、
見栄えをよくしないと、仕事ができない」と。彼のばあい、いつも運転手つきの大型車で、それ
ぞれの会社を回るという。「自転車なんかで行ったら、バカにされて仕事にならない」とも。

 しかしどうして、公認会計士が、自転車で通勤をしたら、いけないのか。あるいは、医師が、
自転車で往診をしたら、いけないのか。自転車通勤は、健康には、たいへんよい。立場があ
る? 世間体がある? 地位や名誉がある? それはそれとして、私たちにまわりには、こうい
う一見常識的に見える非常識(?)が、満ち満ちている。その非常識が、自分をしばる。
 
 自由とは、あるがままの自分をさらけ出しながら、あるがままに生きること。他人の目や、世
間体など、気にしない。他人がどう思うと、知ったことではない。それが自由。

 さあて、今、「私は自由だ」と、自信をもって言える人は、いったい、どれだけいるだろうか。

(付記)

 一方で、この日本では今、おかしな復古主義が台頭してきている。「伝統」とか、「文化」とか、
そういった言葉を使って、自分を正当化する。こういった言葉は、まさに伝家の宝刀。そういう
意味では、「過去」をぶらさげた人は、強い。改革による失敗よりも、保守による安全のほう
が、居心地がよい。その居心地のよさに中に、どっぷりとつかって、改革を批判する。

 伝統なんて、クソ食らえ! 文化なんて、クソ食らえ! ……というのは、言いすぎだが、しか
しその伝統や文化が、いかに日本人の意識をがんじがらめにしているかということについて、
私たちは、気づくべきではないだろうか。

 大切なことは、それぞれの人が、自分らしく、明るく楽しく生きること。Tさんの子どもについて
言うなら、他人の目や友人たちの目を気にすることなく、堂々と自分の道を歩くこと。通りでだ
れかに会っても、明るい声で、たがいに、あいさつができること。

 それが「自由」。そういう国を、日本もめざそう!
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 自由
とは 自由論 伝統と文化)







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【2】

●家庭内暴力

●壮絶な家庭内暴力

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東京都に住んでいる、Eさんという
母親が、長男の家庭内暴力に
苦しんでいる。

父親と、二男とは、そのため別居。
疲れきったEさんは、「死んでしまいたい」
とまで思うようになったという。

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E様へ

拝復

 パソコン上で原稿を書くと、どこかに記録が残ってしまいます。それがいつか、思わぬところ
で、表に出てきてしまうことがあります。それでここでは、「E様」とします。お許しください。

 また、同じような問題をかかえている、ほかの多くの親たちの参考と励みになるよう、一部、E
様からいただいた相談内容を、引用させていただきますが、どうか、ご了解の上、お許しくださ
い。

 E様からのメールを、要約させていただきます。

++++++++++++++++

【Eより、はやし浩司へ】

 2年前に相談したことがある、東京都のEです。

 現在、兄は、高校1年生、弟は、中学2年生です。以前は、父親と私、子ども2人で、生活して
いました。

 その兄、つまり長男のことです。

 中学3年になるころから、暴力がはげしくなり、「こんな俺にしたのは、お前だ」と、私を殴った
り、蹴ったりします。タバコを吸い始め、髪の毛も茶色に染め始めました。3年の中ごろから、
学校へも、ほとんど行かなくなりました。

 学校の先生から、「排除」という言葉が出てきたのも、そのころです。長男を、学校から排除
するというのです。それで長男の荒れは、ますますひどくなりました。

 そこで父親(私の夫)と、二男は、近くにアパートを借りて、別居。現在は、私と、長男だけが、
いっしょに暮らしています。食事は、私が作り、毎日、父親と二男に届けています。

 長男の暴力はひどいですが、一線だけは守ってくれているようです。今のところ、指の骨折程
度ですんでいます。

 一応、単位制の通信高校に通っていますが、ほとんど学校へは行っていません。昼夜が逆
転し、夜中に起きてきて、私に、「食事を作れ」「こうなったのは、お前のせいだ」「弟は、お前と
別れて、よくなっただろ」「お前は、この家から出て行け」と、蹴ったりします。

 私の精神はボロボロで、自殺願望も生まれてきました。

 『許して、忘れる』という先生から教えてもらった言葉を口ずさみながら、何とか、それに耐え
ていますが、本当にこれでいいのでしょうか。一言、アドバイスをしてください。
(東京都・Eより)

+++++++++++++++++++++++

Eさんの転載許可がいただけましたので、
Eさんからのメールを、ほぼそのまま、
ここに紹介します。

上記の内容とダブりますが、お許しください。

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【Eより、はやし浩司へ】


+++++++++++++++++++++++++++

転載許可がいただけましたので、Eさんからのメールを、
そのまま紹介させていただきます。(6・21)
Eさん、ありがとうございました。

+++++++++++++++++++++++++++

【Eより、はやし浩司へ】

2年ほど前、当時小学6年生だった。次男の不登校のことでご相談した事がある者です。
長男は、当時、中学2年生でした。

その長男が中3になり、中1とし、弟は同じ中学校に入学してきましたが、そのときもまだ、弟
の学校恐怖症がつづき、学校へは、行けない状況にありました。

そのことで長男は友達から、弟のことで、いろいろとつらいことがあったようです。

家でゴロゴロと寝ている弟をみて登校していく長男でしたが、6月の運動会が終わったあたりか
ら、変わってきました。

タバコを、学校帰りに、友達と吸ったり、不良なんだとわざと見せるような行動をとるようになり
ました。

深夜徘徊をしたり、学校から排除されるようなことを先生に言われたりし、しのともあって、友達
も、みんな長男から、引いてしまったようです。孤立してしまいました。

2学期からはほとんど学校へは行かず、受験も拒否。

髪は茶髪、金髪、弟へのプロレスごっこと称しての暴力もはじまり、それを止めないといって弟
は、容赦ない暴力を私へ向けてきました。

去年の12月に主人と次男は隣町のマンションへ、出て行きました。

次男は中学も変わり、中1の3月までは不登校でしたが、中2になり4月からはまだ1日も休む
ことなく楽しく登校できているようです。

長男は卒業式にも出席することなく、一応単位制の通信高校に入学はしましたが、ほとんど登
校していません。

昼夜が逆転し、夕方ぐらいに起きてきて、夜中にわたしを起こし、飯を作れとか、耳元で、わざ
と、うるさい音楽を流したりと、嫌がらせがつづいています。

『お前がこんなにしたんだ、お前が出て行けば俺はよくなる! ○○(次男)もお前から離れた
からよくなっただろう』と、蹴ったり殴ったりします。

それでも手加減はしてくれているようで、いままで病院へ行ったのは右手小指の骨折だけで
す。
私も学校へ行けだとか、昼夜が逆転していることを、なおしなさいとか、言わないようにしていま
す。

次男へは毎日夕食を運んでいます。

自分を高めなければ精神がボロボロになってしまって、自殺願望が強くなるばかりです。
許して、許して忘れるの先生のお言葉を毎日、念仏のように口ずさみ、耐えています。
やがて時間が解決してくださると・・・

先生、それでいいのでしょうか、何も言わず、待つことがいちばんなんですよね。
もし、それでよけでば、それでよしとお答えくだされば、とても強い力になります。

孤独に閉鎖された中で戦う私に、後押ししてくださいませんでしょうか。
どうか、よろしくお願いします。
((はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 家庭
内暴力 親への暴力)


【追伸、Eより、はやし浩司へ】

長男のことについての相談のお返事、ありがとうございました。
ブログへの掲載はかまいません。

昨日も、長男が、弟は、おたくっぽくてかっこ悪いというので、そんなことないよ、かっこいいよと
いったことに腹を立て、殴ったり、ものをこわしたり、網戸を破ってそれにライターで火をつけよ
うとしました。

私はそれに驚き、集合住宅でもあるし、火を出したら大変だと、脅す大河をそれだけはいけな
いと叫びました。

私が嫌がる事はわざとやるので、ソファーも火をつけたり、(すぐ消える程度)していたので、私
がまず、家を出なければと急いで家を出ました。

そして一晩帰宅しませんでした。
長男へはメールで、「火をつけたり、暴力が続くとお互い傷つくし、自分も他人も取り返しのつ
かないことになったら大変だから、暴力が治まるまで帰りません。何がそんなに哀しいのか
な・・・みんな、大河を愛しているよ、それはいつまでも変わりません。」
と送りました。

警察の少年サポートセンターの方が暴力からは逃げてください、受けたそのときに家を出てく
ださい、毎日連絡は入れてください、と指導されました。

私も、どうしていいやら家を出て実家に帰ったものの、心配でなりません。
今は荷物を取りに帰宅しています。

次男へ食事も運べませんし、夫がコンビニの弁当を買ってきているようです。
2〜3日したら帰宅しようとは思いますが、どうなんでしょうか。

火をつけたり、そんなまねごとでも危険な事は、許すわけにはいきません。

私は内科でデパスとメイラックスという、不安を取り除くお薬を処方してもらい、寝る前に飲んで
います。

メイラックスと言う薬は次男も、G大病院思春期外来で処方され、飲んでいました。
長男に、飲ませてはどうでしょうか。

とても、病院に一緒に行ってくれる状態ではありません。
長男が苦しんでいるのはわかります。
だから、強がって仮面をかぶって外に出るのもわかります。
不良になりたがるのも、よくわかります。

私も、そんな格好を非難する言葉や、世間体が悪いだとか、罵るような事を言ってしまいまし
た。

反省しています。

それなのに、今からでも大丈夫でしょうか、母と子の関係を修復できるでしょうか。  

今回はご返答ありがとうございました。
私は「許して忘れて、諦める」を念頭に、がんばって母親をやっていきます。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【はやし浩司より、Eさんへ】

 家庭内暴力の背景には、つぎのような素因があると考えてください。ざっと、急いで書きあげ
たので、不備があるかもしれません。

(1)子ども自身の、うつ病。(心の病気)
(2)子ども自身の人間関係調整機能の喪失。(基本的信頼関係の構築の失敗)
(3)子ども自身の自己管理能力の欠落。(幼児性の持続。わがまま)
(4)子ども自身の二重人格性。(自分とは別の自分による暴力行為)
(5)子ども自身の欲求不満。(性的欲求不満も含まれる。)
(6)子ども自身の生育上の問題。(乳幼児期に「いい子」で通ってしまった。)
(7)下の弟との関係。(「兄」であることから受ける重圧感。欲求不満)

 が、何よりも大きな素因は、(8)自己嫌悪から発生する、自暴自棄的自虐性です。

 このタイプの子どもは、自分の中にある、(自己嫌悪感)を解消したくても、それができないジ
レンマに陥っていることが多いです。自己管理能力のしっかりしている子ども(人)は、それを、
うまく処理できるのですが、それができません。

 それで弱い母親に対して、「こんなオレにしたのは……!」という言葉が出てきます。つまり自
分で、自分を嫌っているわけです。(嫌う)というよりも、みなに嫌われているもどかしさ、本当の
自分を認めてもらえないつらさ、それを(暴力)にかえていると思ってください。

 だから本当に、母親であるあなたを嫌っているというわけではありません。形こそ、少しいび
つですが、暴力的な(甘え)と理解すれば、よいかもしれません。

 もちろんその(甘え)の中には、さまざまな要因がつまっています。

 ここにあげた(人間関係調整機能の喪失)も、そのひとつです。つまり人間関係がじょうずに
調整できない子どもは、依存的になったり、服従的になったり、同情的になったりしますが、他
者に対して攻撃的になったりします。

 お子さんは、最後の攻撃型タイプということになります。(攻撃型タイプも、他者に対して攻撃
的になるタイプと、自分に対して自虐的になるタイプがあります。)

 が、心理状態は、いつも、孤独で、心の中に空虚感を覚えていると理解してください。つまり
心の中は、さみしいのです。そのさみしさを、埋めるために、あなたに対して暴力を振るってい
るのです。

 ……と書くと、どうして?、と思われるかもしれませんね。

 実は、あなたはお子さんのことを思ったり、心配してはいますが、そのつど、同時に、お子さ
んを、突き放すような言動をしているからだと考えてください。これは無意識のうちに、そうして
いるのがふつうです。

 子どもの心というのは、そういう意味では、たいへん敏感です。あなたのささいな言動から、
それをさぐり当ててしまいます。

 そこであなたのお子さんは、ギリギリのところまでしながら、あなたの心を試そうとします。ギリ
ギリのところです。

 家庭内暴力を起こす子どもは、いつもその限界の内側で暴れます。あなたが言う(自制)とい
う言葉は、それを言います。「これ以上のことをしたら、おしまい」という、その一歩手前で、暴
力を止めます。

 これはお子さんの中に、もう一人の別のお子さんがいて、それを制御しているためと考えれ
ば、わかっていただけると思います。つまりそのつど、もう一人のお子さんが、「もう、やめてお
け」「そのへんで、ストップしろ」と命令をくだしているわけです。

 それで「指の骨折程度」ですんでいるわけです。

 つまりあなたのお子さんがしていることは、典型的な、「家庭内暴力」ということになります。で
すから、今は、つらいかもしれませんが、(お気持ちは察しますが)、問題としては、とくに変わ
った問題ではないということです。

 少なくとも、まったく同じような状況で、引きこもりを起こす子どもよりは、立ちなおるのがずっ
と楽ですし、立ちなおったあと、むしろ、かえって常識豊かな人間になります。

 私はそういう子どもの例を、何十例も見てきました。ですから、決して希望を捨てず、あきらめ
ず、短気を起こさず、前に向かって進んでください。必ず、一過性のもので終わります。そして
みな、なにごともなく、終わっていきます。

 『許して、忘れる』……これは何も、まちがっていません。今こそ、あなたの愛というよりも、深
い人間性が、子どもによって確かめられているのです。わかりますか? 

 親が子どもを育てるのではありません。親は、子育てで苦しみながら、子どもによって育てら
れるのです。

 そこでつぎのことに注意してみてください。

(1)突き放すようなことは言わない。 

 一方でお子さんのことを心配しながら、他方で、お子さんを突き放すようなことを言ったり、し
たりしていませんか? たとえば、「ごめん、ごめん」と口で言いながら、少し、お子さんの機嫌
がよくなると、「もう、あなたなんかイヤ」とか言う、など。

 これは究極の状態ということになりますが、「私はもう殺されてもいい。それでも、私はあなた
を見捨てませんからね」という状態になったとき、あなたのお子さんは、はじめて、あなたに安
心感を覚えるようになります。

 あなたにその覚悟はできていますか。が、あなたには、その覚悟は、まだできていない。「殺
されるのはいやだ」「世間体が悪い」「子育ては、もうこりごり」と。

 あなたのお子さんは、そのスキをついて、家の中で暴れます。満たされない愛への欲求不満
を、あなたにぶつけてきます。ですから、あなたはつぎの言葉だけを、子どもの前では、繰りか
えします。

 「ごめんなさい。お母さんが、悪かった」「どんなことがあっても、私はあなたを愛しつづけま
す」と。何があっても、最後の最後まで、その言葉を繰りかえします。これはまさに、壮絶な根く
らべです。

(2)子どもも苦しんでいる。

 あなたには想像できないかもしれませんが、あなたのお子さんも、そういうあなたを見なが
ら、苦しんでいます。あなたが苦しんでいる以上に、お子さんも苦しんでいるということです。(今
のあなたには、想像できないかもしれませんが……。)

 あなたは、お子さんにとって、最後の(心の拠り所)です。砦(とりで)です。その拠り所を、自
分で破壊しながら、お子さん自身は、自分でそれをよしとはしていないのです。愛する人(=あ
なた)をキズつけながら、それをしている、自分が苦しいのです。

 自己嫌悪から自暴自棄になるのは、そのためと考えてください。

 しかも自分に関することが、すべてうまくいかない。中学校の友人たちには嫌われる。高校へ
も進めなかった。何をしてよいのかわからない。何をしたいのかもわからない。家族もバラバラ
になってしまった。(現実の自分)と、(自分が頭の中に描く自分)が、一致せず、混乱している。

 それは思春期のお子さんにしてみれば、たいへんな苦しみということになります。

 今のお子さんの心理状態は、そういう状態であると考えてください。つまりあなたが、それをま
ず、理解します。その上で、「あなたも苦しんでいるのね」と、子どもを暖かく包んであげます。

(3)心の病気と考えてください。

 できれば、一度、心療内科を訪れてみてください。今ではすぐれた薬も開発されていて、お子
さんの(突発的なキレ)(異常なこだわり)(うつ症状)などにも、すぐれた効果があります。

 心の病気といっても、脳の機能的な障害ですから、おおげさに考えないこと。決してお子さん
が、このまま人格障害者になるとか、そういうことではありません。いわば、一過性の、はげし
い熱病のようなものです。

 しかも、確実になおる見込みのある熱病です。今までの私の経験からしても、今が山で、18
歳ごろまでには、ウソのように落ち着いてきます。先にも書きましたが、引きこもりを起こすタイ
プよりは、ずっと回復も早く、予後(その後の経過)もいいです。

(家庭内暴力を起こすタイプを、「プラス型」というなら、引きこもりを起こすタイプは、「マイナス
型」ということになります。まったく正反対の症状ですが、原因も、対処の仕方も、同じです。)

 ですから、薬で落ち着かせる部分については、薬に頼ります。あなた自身が、カプセルの中
に入ってしまわないで、他人に任すところは、任せます。

 私はドクターではありませんが、心療内科のドクターも、「うつ病」に準じて、治療を開始する
はずです。

 ただこのときも、注意しなければならないことは、たとえ心療内科へ連れていくとしても、(突き
放すような言動)は、タブーだということです。施設へ入れるとか、入院させるとか、そういう話
は子どもの前では、ぜったいに、してはいけません。

 少し前、子どもの立場で、自分の心の状態を語ってくれた青年がいました。(私のBLOGなど
に書いておきましたが、ご覧になってくださいましたか? マガジンでも取りあげたことがありま
す。)

 このBLOGの中で、「じじさん」というのは、その青年を批判した男性のことをいいます。内容
はわからいませんが、多分、その男性は、その青年を、「引きこもりは、怠け病だ」とでも言っ
たのではないかと思います。それでその青年が、反発しました。

+++++++++++++++++

【宮沢KさんのBLOGより転載、転載許可済み】

● 引きこもりは、病気だ!

お気楽にやっていきたいのに、今日もシビアになっちまう。

「引きこもり者更生支援施設内で暴行か、引きこもり男性死亡」って事件の話。

不条理日記さんのIMスクールについて、KMさんという人のコメント。

「このケースは、言ってみれば、自信過剰の民間療法の素人が、
癌の治療に手を出したようなものでしょう。
引きこもりの一部は精神科の病気、
それもとても治療の難しい病気なのだという対応が必要です。」

この人が正しい。タイコバン!

それに対して管理人のじじさんが

「引きこもりが病気!?
そのように病気病気言うから病気に甘えて
薬に甘えて医者、病院にあまえて何もできなくなってしまうから
それがひきこもりって、そのまんまの名前の病気になってしまうんではないでは? 」

じじさん、あんたねえ、
KMさんも「引きこもりの一部は」って、言ってるでしょ。
引きこもりには怠けもんも多いけど
正しい? 病気の人も多いの。

世間一般、じじさんと同じように思ってるだろうけど、
メラトニンやコルチゾールの分泌異常とか
前頭葉領域の血流低下とかアセチルコリンの消費量増大とか、
あとはPTSDとか親の共依存とか
かなり脳科学や臨床心理学で解明されてきてる。

やる気だって、脳内の化学物質の反応なんだよ。
無知だよなあ、世間のやつらは。

++++++++++++++++++

●引きこもり者更生支援施設依存症の親

IMスクールの事件じゃ、どうやら家庭内暴力で疲れ果てた家族が
施設に引き渡したらしいね。

精神科の世界で誰にもわからないから閉じ込めるしかない 
今の医学ではそんなもの。

本人が一番辛かったはず、「なんでおれは暴れちまうんだろう」ってね。
原因はあるんだろうが、わたしにはもちろんわからない 

引きこもりに正面から向き合うこともなく、
病理的な勉強も怠り、
甘えだとかやる気がないとかほかの子はちゃんとやってるのに
とか言ってる大人たちが、こんな、社会やこんな子供を作った。 

あんたらこそ、やる気だしてみろよ
薬打って中毒になってみろよ 
病気で足を切断されて足の大切さがわかり、
元通りにならない事をはじめて認める。

どうにもならない事って、その状況にならないとわからない事って、
あるだろう。

自分が正常でございと思ってるすべての連中、
あんたらは
感性が擦り切れて、何も感じられないからこんな世の中で平気でいられるだけだ。
宮沢Kの感性の爪の垢でも飲みやがれ!

この施設がどういう人たちがやってて、
どういうことが行われたかはわからない。
事故だったのかなんだったのかはわからない。
引きこもりにはそれなりの意義があるんだけど
わかってないんだろうな、こんな施設つくるくらいだから
(引きこもりの人生の意義の話は、またこんどね)

 親が、子どもの暴力に耐えかねて
預かってくれる施設があると聞いて喜んで拉致させた。

親がこの施設に依存した。
親と子がいっしょに戦うことをあきらめた。
その結果、子どもは死んだ。
これだけだ。

臭いものにはフタか?
わが子は臭いものか?
誰かにまるごと頼みます、であとは平穏な暮らしが戻るのか?

(暴力で苦しんでる家庭では、
いっぺん親だけでも精神科や心療内科に相談に行くといい。
ハロペリドールなどの精神安定剤の処方で、おおかた静まる。
それからゆっくり時間をかけて話をしていってほしい。
相談するなら素人じゃなく専門家にしないとね。

ただ精神科くらい、医者の当たり外れの大きいところもないから
気に入る医者に出会うまで何人も回ること。

わたしは5つくらい、病院、回って奇跡的にいいドクターに会えて
やっと回復できた。

どうしてこんな無知で精神科の医者やってんの?というのが多い。
答えは「精神科は楽に儲かるから」。
(点数がいろいろ有利なのは事実)

+++++++++++++++++++++

★今日は最後に怠け者へ一言★

じじさんの言ってた、
たんなる「怠け者」の引きこもりやニート、不登校のあんたらに言っておく。
怠け者の末路は悲惨だよ。

生活保護って制度もいつまであるかわかんない。
バス代さえなくて何キロも歩いて病院にきてるおばさん、
家族から見放されて無縁墓地にはいるのを待って
光の入らない4畳半に住んでるおじさん。。。

やっぱ、施設とか、病院って、世の中にすごく必要。
こういう同病者をまじかにみれるもの。

自分の明日が見れるし
いっしょに抜け出そうとする仲間に出会えるもの。

ただし、自分から入りたい、と覚悟するまでが、時間、かかるのね。

これから医学はもっともっと進むよ。
病気かそうでないかは、かんたんに見破られるから
病気のフリもできない。
怠け者にはじじさんだけじゃなく、私も世間も、やさしくないよ。


【宮沢Kさんへ】

 たいへん参考になりました。あなたのような体験をもった人たちが、もっと声をあげれば、IM
スクールのような、おかしな更生支援施設(?)は、なくなると思います。

++++++++++++++++++++

【再び、Eさんへ……】 

 ここで宮沢Kさんが、書いていることは、何かの参考になると思います。宮沢KさんのBLOG
は、今のあなたのお子さんの立場で、自分の過去の経験を語っています。あとでそのBLOG
のアドレスを添付しておきますので、一度、あなたも、のぞいてみられたらよいかと思います。

 ともかくも、『許して、忘れる』ですよ。

 あなたがこれを乗り切ったとき、あなたはすばらしいものを手にするはずです。つまり(真の
愛)がどういうものであるかを、知るはずです。今は、その試練のとき。あなたのお子さんは、
あなたにそれを教えるために、今、そこにいます。

 決して短気を起こさず、決してあきらめず!

 そうそうあなたの自殺願望ですが、これは育児にかぎらず、介護に疲れた人も、みな覚える
ものです。あなた自身も、一度、心療内科で、精神安定剤を処方してもらうとよいかもしれませ
ん。

 私も、姉に教えられて以来、女性用の精神安定剤をのんでいますが、よくききます。

 なお、あなたからのメールを、こちらで一度手なおしして、私のマガジンに掲載したいのです
が、その許可をいただけませんか。あなたであることは、ぜったいわからないように、書き改め
ます。

 よろしくお願いします。

【宮沢Kの風・BLOG】

 ここに書いた宮沢KさんのBLOGです。子どもの立場がよくわかり、Eさんの参考になると思
います。

http://kenjinokaze.livedoor.biz/archives/50669992.html

 どうか、めげないで、がんばってください。必ず解決する問題ですから。約束します。

(つづきは、Eマガのほうで。7月26日号、掲載予定)


Hiroshi Hayashi++++++++++June 06+++++++++++はやし浩司

●子どもの家庭内暴力で苦しんでいるEさんへ、

 基本的には、心の病気と考えますが、この(病気)にいたるまでに、さまざまな原因や理由
が、そこにからんでいると考えてください。

 糸が複雑にからむようにからんでいるため、それを解きほぐすのは、容易なことではありませ
ん。それこそ、乳幼児期からの糸がからんでいることもあります。

 ついでながら、乳幼児期から、(いい子)で通ってきた子どもほど、思春期を迎えるころから、
この家庭内暴力も含めて、さまざまな問題行動を起こすことがわかっています。

(そういう点でも、子どものころから、(何を考えているかわからない子ども)ほど、心配な子ども
ということになりますね。)

 で、その家庭内暴力を起こす子どもの行動には、一定のパターンがあります。

(1)限界状況の把握

 家庭内暴力を繰りかえす子どもの最大の特徴は、自ら、無意識のうちにも、限界状況を設定
するということです。つまり子どもは、「これ以上のことをしたら、おしまい」という、その限界ギリ
ギリのことまではします。が、しかしそれ以上のことはしません。

 (自分に対する怒り)を、(家族)にぶつけているだけだからです。つまり本当に相手(あなたと
いう親や兄弟)を憎んでいるから、暴力行為を繰りかえしているのでないということです。(自分
でも、自分をどうしたらいいかわからない)という思いを、(怒り)に変えているだけなのです。

 そういう点では、わがままな子、あるいは、俗な言い方をすれば、「甘ったれた子」ということ
になります。それだけ、人格の核形成(コア・アイデンティティ)の遅れた子どもということになり
ます。

(2)自虐的な愛の確認

 家庭内暴力を起こす子どもは、完ぺきな愛を、家族、なかんずく母親に求めようとします。完
ぺきな愛です。「どんなことをしても、自分は許されるのだ」「愛で包んでもらえるのだ」という
愛、です。

 その点、マザーコンタイプの子どもの心理に似ています。で、その完ぺきな愛を確認するた
めに、暴力行為を繰りかえします。

 が、暴力行為を加えられるほうは、たまったものではありません。当然のことながら、(子ども
を愛したい)という気持ちと、(子どもから離れたい)という気持ちの間で、はげしく葛藤します。

 その葛藤の間げきをついて、子どもは暴れます。たとえば親が、「病院へ一度、行ってみよう
か?」「そんなに私(=母親)が嫌いなら、私は、この家から出て行こうか?」「ひとりでアパート
に住んでみる?」などという言葉を口にすると、突然暴れ出す子どもが多いのは、そのためで
す。

 子どもは、その一言に、大きな不安を覚えることになります。

(3)二面性

 家庭内暴力を起こす子どもについて、多くの親たちが、「どうして?」と悩んでしまうのが、二
面性の問題です。

 はげしく暴れながらも、それが収まったようなときには、別人のようにやさしくなったり、親をい
たわったりします。

 実はそうした二面性は、暴力行為を繰りかえしている最中でも、それがあります。ある男性
は、こう言いました。彼は高校時代から青年期にかけて、その家庭内暴力を繰りかえしまし
た。

 「親を殴りつけている間も、もう1人の、別のぼくが自分の中にいて、『やめろ』『止めろ』と叫
んでいた」と。

 そこで私が、「では、どうしてそのとき、暴力をやめなかったのだ?」と聞くと、その男性は、こ
う言いました。

 「やめようと思っても、もう1人の自分が、どんどんと勝手に怒ってしまった」「途中でやめる
と、かえって、自分がへんな人間に見られるようで、できなかった」「自分でも、どうしようもなか
った」と。

 で、その男性のばあい、家庭内暴力をやめるきっかけになった事件があったそうです。

 ある夜のこと。その男性は、いつものように自分の母親を殴ったり、蹴ったりしました。で、そ
のあとのこと。その男性が、いつものように家を出ようとしたところ、(本当は出るつもりではな
く、庭先にあるガレージの二階に行こうとしたのですが)、母親がその男性を追いかけてきて、
「出て行かないで」「どこへも行かないで」と、泣きながら懇願したそうです。

 それを見て、その男性は、自分にそんなことまでされて、なおかつ、「出て行かないで」と泣き
叫んだ母親に、自分が求めていたものが、それだったと気がついたというのです。以後、その
男性は、それまでの男性とは別人のように、穏やかになっていったそうです(母親談)。

(4)緊張状態

 子どもが暴れるメカニズムは、つぎのようです。

 基本的に、子どもの心は、極度の緊張状態にあると考えます。この緊張状態が、日常的に
悶々とつづいています。

 この緊張状態の中に、不安(将来への不安、現実への不安、孤独への不安など)、心配(将
来への心配)などが入りきんでくると、それを解消しようと、心の緊張状態が、一気に倍加しま
す。

 それが突発的な暴力行為へと発展します。

 ですから、このタイプの子どもについては、(1)緊張状態の緩和を心がける、(2)不安や心
配ごとを持ちこまないということになりますが、ふと言った言葉が、キーワードになり、それが子
どもを激怒させるということも、少なくありません。

 これはある年長児の女の子の例ですが、母親が、「ピアノのレッスンをしようね」と声をかけた
だけで、激変し、あるときは、母親に向かって、包丁まで投げつけたといいます。

 そこで対処のし方ということになります。

 今ではすぐれた薬もあり、またこうした心の病気に対する理解も深まってきましたから、決し
て、ひとりでは、悩まないこと。本人は、なかなか行きたがらないかもしれませんが、よく説得し
て、一度、心療内科の医院を訪問してみることが、第一です。

 つぎに子どもが暴れだしたら、説教したり、自分の意見を述べたりするのは、タブーと心得ま
す。かえって火に油を注ぐようなことになりかねません。ですから、「ごめんなさい」とだけ言い、
それを、どんなことがあっても、繰りかえします。子どもが意見を求めてきたようなときでも、「ご
めんなさい」とだけ言って、それですまします。

 「子どもが暴力行為を始めたら、家から出て、逃げろ」と教える指導員もいるようですが、私
は、反対です。

 そのときはそれですむかもしれませんが、つぎのとき、それが理由で、また暴力が始まること
が多いからです。「この前の夜は、ぼくを捨てて、家を出て行ったではないかア!」「どうして、オ
レを捨てたア!」とです。

 それまでに苦労してつくりあげた、親子の信頼関係を、破壊することにも、なりかねません。
親のほうには、そのつもりはなくても、子どものほうが、そう感じてしまいます。
 
 Eさんの息子さんが、ソファにライターで火をつける行為も、「火をつけて家を燃やしたい」から
ではなく、「オレをひとりにしておくと、オレはたいへんなことをするぞ」「だからオレをひとりにす
るな」ということを、あなたに伝えたいからです。またそう解釈すると、あなたのお子さんの心理
が、より理解できるのではないでしょうか。

 この問題の根底には、根深い、相互の不信関係(基本的不信関係)がからんでいます。そし
てそれは、どこかにも書きましたが、子どもが、乳幼児期に始まります。

 本来なら、子どもは、親に向かって、言いたいことを言い、したいことをしながら、そのつど自
分を発散しながら成長するのが、好ましいのですが、それができなかった。それが回りまわっ
て、子どもの心を、ゆがめてしまった。それが今、はげしい暴力行為となって、家庭の中で起き
ている。現状を解説すれば、そういうことになります。

 で、家庭内暴力を経験した子ども(おとな)は、みな、こう言います。

 「あんなことをしたのに、親は、自分を見捨てなかった」「それが自分を立ちなおらせるきっか
けになった」と。

 反対に、そうでないケースも、少なくありません。親のほうが、根をあげてしまい、子どもを施
設へ送ったりするようなケースです。それぞれの親には、それぞれの、やむにやまれない事情
もあるのでしょう。が、それをするのは、最後の最後。またそれをしたからといって、この問題
は、解決しません。

 さらに二番底、三番底へと、子どもは、落ちていきます。

 しかし心の病気と考えれば、気も楽になるはずです。しかも、この病気だけは、必ず、なおり
ます。そういう病気です。ですから、どうか、短気だけは起こさないでください。ただ家庭内暴力
にかぎらず、どんな(心の病気)もそうですが、1年単位の時間はかかります。それは覚悟して
おいてください。

 許して、忘れる。あとは、「今の状態を、今以上に悪くしないことだけを考えて、対処する」で
す。静かな無視、暖かい無視を大切に。ほどよい親でいることに心がけます。

 もちろん、「こんなことでは、落ちこぼれになってしまう」とか、「がんばれ」などと、子どもを、脅
したり、励ましたりするのは、タブーです。かえって子どもの心を窮地に追いこんでしまうことに
もなりかねません。

 つまり、その度量の深さによって、あなたのお子さんへの愛情の深さが決まります。子どもを
投げ出したとき、あなたは、親として、はげしい敗北感を味わいます。ですから、決して、投げ
出さないこと。

 谷が深ければ深いほど、そのあと、あなたと息子さんは、すばらしい親子関係を築くことがで
きます。それを信じて、前に進んでください。

 いくつか、役にたちそうな原稿を、ここに添付します。


Hiroshi Hayashi++++++++++June 06+++++++++++はやし浩司

【アルバムの効用】

 子育てをしていて、苦しいことや悲しいことがあったら、アルバムをのぞくとよいですよ。ある
いは、アルバムを、家の中心に置いてみてください。

 アルバムには、私たちが想像する以上の力があります。理由は簡単です。そこには、楽しか
ったとき、うれしかったときが、凝縮されているからです。

 ぜひ、Eさんも、一度、ためしてみてください。それだけで、心が軽くなるはずです。お子さんへ
の、愛情も、それで取りもどせるはずです。ひょっとしたら、お子さん自身も、です。

++++++++++++++++

原稿を一作、添付します。
(中日新聞掲載済み)

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●子どもの心をはぐくむ法(アルバムをそばに置け!)

子どもがアルバムに自分の未来を見るとき

●成長する喜びを知る 

 おとなは過去をなつかしむためにアルバムを見る。しかし子どもは、アルバムを見ながら、成
長していく喜びを知る。それだけではない。

子どもはアルバムを通して、過去と、そして未来を学ぶ。

ある子ども(年中男児)は、父親の子ども時代の写真を見て、「これはパパではない。お兄ちゃ
んだ」と言い張った。子どもにしてみれば、父親は父親であり、生まれながらにして父親なの
だ。

一方、自分の赤ん坊時代の写真を見て、「これはぼくではない」と言い張った子ども(年長男
児)もいた。ちなみに年長児で、自分が哺乳ビンを使っていたことを覚えている子どもは、まず
いない。

哺乳ビンを見せながら、「こういうのを使ったことがある人はいますか?」と聞いても、たいてい
「知らない」とか、「ぼくは使わなかった」と答える。

記憶が記憶として残り始めるのは、満4・5歳前後からとみてよい(※)。このころを境にして、
子どもは、急速に過去と未来の概念がわかるようになる。それまでは、すべて「昨日」であり、
「明日」である。「昨日の前の日が、おととい」「明日の次の日が、あさって」という概念は、年長
児にならないとわからない。

が、一度それがわかるようになると、あとは飛躍的に「時間の世界」を広める。その概念を理
解するのに役立つのが、アルバムということになる。話はそれたが、このアルバムには、不思
議な力がある。

●アルバムの不思議な力

 ある子ども(小五男児)は、学校でいやなことがあったりすると、こっそりとアルバムを見てい
た。また別の子ども(小三男児)は、寝る前にいつも、絵本がわりにアルバムを見ていた。

つまりアルバムには、心をいやす作用がある。それもそのはずだ。悲しいときやつらいときを、
写真にとって残す人は、まずいない。アルバムは、楽しい思い出がつまった、まさに宝の本。
が、それだけではない。

冒頭に書いたように、子どもはアルバムを見ながら、そこに自分の未来を見る。さらに父親や
母親の子ども時代を知るようになると、そこに自分自身をのせて見るようになる。それは子ども
にとっては恐ろしく衝撃的なことだ。いや、実はそう感じたのは私自身だが、私はあのとき感じ
たショックを、いまだに忘れることができない。母の少女時代の写真を見たときのことだ。「これ
がぼくの、母ちゃんか!」と。あれは私が、小学三年生ぐらいのときのことだったと思う。

●アルバムをそばに置く

 学生時代の恩師の家を訪問したときこと。広い居間の中心に、そのアルバムが置いてあっ
た。小さな移動式の書庫のようになっていて、そこには一〇〇冊近いアルバムが並んでいた。

それを見て、私も、息子たちがいつも手の届くところにアルバムを置いてみた。最初は、恩師
のまねをしただけだったが、やがて気がつくと、私の息子たちがそのつど、アルバムを見入っ
ているのを知った。

ときどきだが、何かを思い出して、ひとりでフッフッと笑っていることもあった。そしてそのあと、
つまりアルバムを見終わったあと、息子たちが、実にすがすがしい表情をしているのに、私は
気がついた。そんなわけで、もし機会があれば、子どものそばにアルバムを置いてみるとよ
い。あなたもアルバムのもつ不思議な力を発見するはずである。

※……「乳幼児にも記憶がある」と題して、こんな興味ある報告がなされている(ニューズウィー
ク誌二〇〇〇年一二月)。

 「以前は、乳幼児期の記憶が消滅するのは、記憶が植えつけられていないためと考えられて
いた。だが、今では、記憶はされているが、取り出せなくなっただけと考えられている」(ワシント
ン大学、A・メルツォフ、発達心理学者)と。

 これまでは記憶は脳の中の海馬という組織に大きく関係し、乳幼児はその海馬が未発達な
ため記憶は残らないとされてきた。現在でも、比較的短い間の記憶は海馬が担当し、長期に
わたる記憶は、大脳連合野に蓄えられると考えられている(新井康允氏ほか)。しかしメルツォ
フらの研究によれば、海馬でも記憶されるが、その記憶は外に取り出せないだけということに
なる。

 現象的にはメルツォフの説には、妥当性がある。たとえば幼児期に親に連れられて行った場
所に、再び立ったようなとき、「どこかで見たような景色だ」と思うようなことはよくある。これは
記憶として取り出すことはできないが、心のどこかが覚えているために起きる現象と考えるとわ
かりやすい。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 アル
バム アルバムの効用 アルバムのすばらしさ 心を癒すアルバム)


Hiroshi Hayashi++++++++++June 06+++++++++++はやし浩司

親の口グセが子どもを伸ばすとき

●相変わらずワルだったが……  

 子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、よい面を見せようとする。そういう性質を
利用して、子どもを伸ばす。こんなことがあった。

 昔、私が勤めていた幼稚園にどうしようもないワルの子ども(年中男児)がいた。友だちを泣
かす、けがをさせるは、日常茶飯事。それを注意する先生にも、キックしたり、カバンを投げつ
けたりしていた。どの先生も手を焼いていた。

が、ある日、ふと見ると、その子どもが友だちにクレヨンを貸しているのが目にとまった。私は
すかさずその子どもをほめた。「君は、やさしい子だね」と。数日後もまた目が合ったので、私
はまたほめた。「君は、やさしい子だね」と。それからもその子どもはワルはワルのままだった
が、しかしどういうわけか、私の姿を見ると、パッとそのワルをやめた。そしてニコニコと笑いな
がら、「センセー」と手を振ったりした。

●子どもの心はカガミ

 しかしウソはいけない。子どもとて心はおとな。信ずるときには本気で信ずる。「あなたはよい
子だ」という「思い」が、まっすぐ伝わったとき、その子どももまた、まっすぐ伸び始める。

 正直に告白する。私が幼稚園で教え始めたころ、年に何人かの子どもは、私をこわがって幼
稚園へ来なくなってしまった。そういう子どもというのは、初対面のとき、私が「いやな子ども」と
思った子どもだった。つまりそういう思いが、いつの間にか子どもに伝わってしまっていた。人
間関係というのは、そういうものだ。

イギリスの格言にも、『相手は、あなたが相手を思うように、あなたを思う』というのがある。つま
りあなたが相手をよい人だと思っていると、相手も、あなたをよい人だと思うようになる。いやな
人だと思っていると、相手も、あなたをいやな人だと思うようになる。

一週間や二週間なら、何とかごまかしてつきあうということもできるが、一か月、二か月となる
と、そうはいかない。いわんや半年、一年をや。思いというのは、長い時間をかけて、必ず相手
に伝わってしまう。では、どうするか。

 相手が子どもなら、こちらが先に折れるしかない。私のばあいは、「どうせこれから一年もつ
きあうのだから、楽しくやろう」ということで、折れるようにした。それは自分の職場を楽しくする
ためにも、必要だった。もっともそれが自然な形でできるようになったのは、三〇歳も過ぎてか
らだったが、それからは子どもたちの表情が、年々、みちがえるほど明るくなっていったのを覚
えている。そこで家庭では、こんなことを注意したらよい。

●前向きな暗示が心を変える

 まず「あなたはよい子」「あなたはどんどんよくなる」「あなたはすばらしい人になる」を口グセ
にする。子どもが幼児であればあるほど、そう言う。もしあなたが「うちの子は、だめな子」と思
っているなら、なおさらそうする。

最初はウソでもよい。そうしてまず自分の心を作りかえる。人間関係というのは、不思議なもの
だ。日ごろの口グセどおりの関係になる。互いの心がそういう方向に向いていくからだ。が、そ
れだけではない。相手は相手で、あなたの期待に答えようとする。相手が子どものときはなお
さらで、そういう思いが、子どもを伸ばす。こんなことがあった。

 その家には四人の男ばかりの兄弟がいたのだが、下の子が上の子の「おさがり」のズボンや
服をもらうたびに、下の子がそれを喜んで、「見て、見て!」と、私たちに見せにくるのだ。ふつ
う下の子は上の子のおさがりをいやがるものだとばかり思っていた私には、意外だった。そこ
で調べてみると、その秘訣は母親の言葉にあることがわかった。

母親は下の子に兄のおさがりを着せるたびに、こう言っていた。「ほら、あんたもお兄ちゃんの
ものがはけるようになったわね。すごいわね!」と。母親はそれを心底、喜んでみせていた。そ
こでテスト。

 あなたの子どもは、何か新しいことができるようになるたびに、あるいは何かよいニュースが
あるたびに、「見て、見て!」「聞いて、聞いて!」と、あなたに報告にくるだろうか。もしそうな
ら、それでよし。そうでないなら、親子のあり方を少し反省してみたほうがよい。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 前向
きな働きかけ 強化の原理 子どもを伸ばす 伸びやかな子供 親の口癖 口ぐせ))


Hiroshi Hayashi++++++++++June 06+++++++++++はやし浩司

親が過去を再現するとき

●親は子育てをしながら過去を再現する 

 親は、子どもを育てながら、自分の過去を再現する。そのよい例が、受験時代。それまでは
そうでなくても、子どもが、受験期にさしかかると、たいていの親は言いようのない不安に襲わ
れる。受験勉強で苦しんだ親ほどそうだが、原因は、「受験勉強」ではない。受験にまつわる、
「将来への不安」「選別されるという恐怖」が、その根底にある。

それらが、たとえば子どもが受験期にさしかかったとき、親の心の中で再現される。つい先日
も、中学一年生をもつ父母が、二人、私の自宅にやってきた。そしてこう言った。「一学期の期
末試験で、数学が二一点だった。英語は二五点だった。クラスでも四〇人中、二〇番前後だと
思う。こんなことでは、とてもS高校へは入れない。何とかしてほしい」と。二人とも、表面的には
穏やかな笑みを浮かべていたが、口元は緊張で小刻みに震えていた。

●「自由」の二つの意味

 この静岡県では、高校入試が人間選別の重要な関門になっている。その中でもS高校は、最
難関の進学高校ということになっている。私はその父母がS高校という名前を出したのに驚い
た。「私は受験指導はしません……」と言いながら、心の奥で、「この父母が自分に気がつくの
は、一体、いつのことだろう」と思った。

 ところで「自由」には、二つの意味がある。行動の自由と魂の自由である。行動の自由はとも
かくも、問題は魂の自由である。実はこの私も受験期の悪夢に、長い間、悩まされた。たいて
いはこんな夢だ。……どこかの試験会場に出向く。が、自分の教室がわからない。やっと教室
に入ったと思ったら、もう時間がほとんどない。問題を見ても、できないものばかり。鉛筆が動
かない。頭が働かない。時間だけが刻々と過ぎていく……。

●親と子の意識のズレ

親が不安になるのは、親の勝手だが、中にはその不安を子どもにぶつけてしまう親がいる。
「こんなことでどうするの!」と。そういう親に向かって、「今はそういう時代ではない」と言っても
ムダ。脳のCPU(中央処理装置)そのものが、ズレている。

親は親で、「すべては子どものため」と、確信している。こうしたズレは、内閣府の調査でもわか
る。内閣府の調査(二〇〇一年)によれば、中学生で、いやなことがあったとき、「家族に話す」
と答えた子どもは、三九・一%しかいなかった。これに対して、「(子どもはいやなことがあったと
き)家族に話すはず」と答えた親が、七八・四%。子どもの意識と親の意識が、ここで逆転して
いるのがわかる。つまり「親が思うほど、子どもは親をアテにしていない」(毎日新聞)というこ
と。が、それではすまない。

「勉強」という言葉が、人間関係そのものを破壊することもある。同じ調査だが、「先生に話す」
はもっと少なく、たったの六・八%! 本来なら子どものそばにいて、よき相談相手でなければ
ならない先生が、たったの六・八%とは! 先生が「テストだ、成績だ、進学だ」と追えば追うほ
ど、子どもの心は離れていく。親子関係も、同じ。親が「勉強しろ、勉強しろ」と追えば追うほ
ど、子どもの心は離れていく……。

 さて、私がその悪夢から解放されたのは、夢の中で、その悪夢と戦うようになってからだ。試
験会場で、「こんなのできなくてもいいや」と居なおるようになった。あるいは皆と、違った方向
に歩くようになった。どこかのコマーシャルソングではないが、「♪のんびり行こうよ、オレたち
は。あせってみたとて、同じこと」と。夢の中でも歌えるようになった。……とたん、少しおおげさ
な言い方だが、私の魂は解放された!

●一度、自分を冷静に見つめてみる

 たいていの親は、自分の過去を再現しながら、「再現している」という事実に気づかない。気
づかないまま、その過去に振り回される。子どもに勉強を強いる。先の父母もそうだ。それまで
の二人を私はよく知っているが、実におだやかな人たちだった。が、子どもが中学生になった
とたん、雰囲気が変わった。そこで……。

あなた自身はどうだろうか。あなた自身は自分の過去を再現するようなことをしていないだろう
か。今、受験生をもっているなら、あなた自身に静かに問いかけてみてほしい。あなたは今、冷
静か、と。そしてそうでないなら、あなたは一度、自分の過去を振り返ってみるとよい。これはあ
なたのためでもあるし、あなたの子どものためでもある。あなたと子どもの親子関係を破壊しな
いためでもある。

受験時代に、いやな思いをした人ほど、一度自分を、冷静に見つめてみるとよい。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 受験
の再現 過去の再現 過去を再現する親たち)






 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【3】

●内弁慶

●掲示板への投稿記事より

++++++++++++++++

掲示板に、こんな投稿記事があった。

それについて、考えてみたい。

++++++++++++++++

【KTさんより、はやし浩司へ】

はじめまして。はやし先生の子育て論を、いつも読ませていただいています。「?」と思う事柄に
も納得できる解説で、感動しています!

うちの第二子、男の子のことについてですが、つい先ごろ6歳になりました。が、まだまだ甘え
ん坊です。幼稚園では、私の姿が見えなければ、頑張り屋さんです。が、自分でできることで
も、参観授業などで、私の姿を見たとたん、「できない」と泣いてしまったりします。そういうとき
の二男は、まるで別人のようです。

家では、のんびりご機嫌で遊んでいて大らかな子供です。担任の先生も驚かれて、私がいない
と、「きっと、泣くこともない。」とのことです。

ちなみに幼稚園は、スパルタ教育方式で、押さえつけが厳しいです。転園を何度か考えなが
ら、ここまできてしまいました。

本人は、情緒不安なのでしょうか? ずっとこの状態なわけではなく、大丈夫なときと、ダメなと
きが、交互に出ているようです。

私としては、ただ抱きしめて、安心させてあげるだけです。時々「泣かないでよ」と言ってしまう
事があります。良いアドバイスお願いします。

【はやし浩司より、KTさんへ】

 基本的には、現在の状況を守ってください。

 幼稚園でがんばっている分だけ、家の中では、息抜きをしようとします。態度が横柄になった
り、ぞんざいになったりします。暴言を吐いたり、暴れたりすることもあるかもしれません。

 そういうときは、「ああ、うちの子は、外でがんばっているから、家の中では、こうなのだ」と思
いなおすようにしてください。

 コツは、3つあります。

(1)暖かい無視
(2)ほどよい親
(3)求めてきたときが与えどき、です。

 つまり愛情で子どもを包むようにして、そっとしておいてあげるということです。また親として、
やりすぎない。過干渉、過関心にならないということ。それに、このタイプの子どもは、ときどき
子どものほうから、スキンシップなど、突発的に求めてくるときがありますので、そのときは、す
かさず、抱いてあげるなどの行為をしてあげます。

 「あとでね」とか、「忙しいから」は、禁句です。

 幼稚園は、スパルタ方式とか。現在、年長児ですので、あなたのお子さんは、すでにじゅうぶ
ん、それに耐え、乗り越えたと思います。あなたのすべきことは、あなたのお子さんをほめ、「よ
くがんばったわね」と、ねぎらうことです。

 (ほかに、とくに神経症あるいは心身症による症状が見られなければ、という話ですが…
…。)

 文面から、たいへん暖かいあなたの愛情を感じます。今のままでよいと思います。

 あなたの姿を見て泣くのは、その瞬間、心の緊張感がゆるむからです。分離不安も考えられ
ます。これらについての原稿は、このあとに添付しておきますので、参考にしてください。

 問題としては、たいへんよくある問題で、この時期の子どもの問題としては、それほど心配し
なくてもよいと思います。一過性の問題として、終わるはずです。(神経症、心身症による諸症
状が見られたら、話は別ですが……。幼児の神経症については、私のHPのどこかに一覧表と
して載せてありますので、参考にしてください。)

 では、今日は、これで失礼します。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●内弁慶、外幽霊

 家の中ではおお声を出していばっているものの、一歩家の外に出ると、借りてきたネコの子
のようにおとなしくなることを、「内弁慶、外幽霊」という。

といっても、それは二つに分けて考える。自意識によるものと、自意識によらないもの。緊張し
たり、恐怖感を感じて外幽霊になるのが、前者。情緒そのものに何かの問題があって、外幽霊
になるのが、後者ということになる。たとえばかん黙症タイプの子どもなどがいるが、それにつ
いてはまた別のところで考える。

 子どもというのは、緊張したり、恐怖感を覚えたりすると、外幽霊になる。が、それはごく自然
な症状であって、問題はない。しかしその程度を超えて、子ども自身の意識では制御できなくな
ることがある。対人恐怖症、集団恐怖症など。子どもはふとしたきっかけで、この恐怖症になり
やすい。その図式はつぎのように考えるとわかりやすい。

 もともと手厚い親の保護のもとで、ていねいにかつわがままに育てられる。→そのため社会
経験がじゅうぶん、身についていない。この時期、子どもは同年齢の子どもととっくみあいのけ
んかをしながら成長する。→同年齢の子どもたちの中に、いきなりほうりこまれる。→そういう
変化に対処できず、恐怖症になる。→おとなしくすることによって、自分を防御する。

 このタイプの子どもが問題なのは、外幽霊そのものではなく、外で幽霊のようにふるまうこと
によって、その分、ストレスを自分の内側にためやすいということ。そしてそのストレスが、子ど
もの心に大きな影響を与える。

家の中で暴れたり、暴言をはくのをプラス型とするなら、ぐずったり、引きこもったりするのはマ
イナス型ということになる。

こういう様子がみられたら、それをなおそうと考えるのではなく、家の中ではむしろ心をゆるめ
させるようにする。リラックスさせ、心を開放させる。多少の暴言などは、大目に見て許す。とく
に保育園や幼稚園、さらには小学校に入学したりすると、この緊張感は極度に高くなるので注
意する。仮に家でおさえつけるようなことがあると、子どもは行き場をなくし、さらに対処がむず
かしくなる。

 本来そうしないために、子どもは乳幼児期から、適度な刺激を与え、社会性を身につけさせ
る。親子だけのマンツーマンの子育ては、子どもにとっては、決して好ましい環境とはいえな
い。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●分離不安(プラス型とマイナス型)

 情緒が不安定な子どもというのは、心がいつも緊張状態にあるのが知られている。その緊張
状態のところに、不安が入り込むと、その不安を解消しようと一挙に緊張状態が高まり、情緒
が不安定になる。

で、そのとき、激怒したり、暴れたりするタイプの子どもと、内閉したりぐずったりするタイプの子
どもがいることがわかる。一見、正反対な症状に見えるが、ともに「不安を解消しようとする動
き」ということで共通点がみられる。それはともかく、私は前者をプラス型、後者をマイナス型と
して考えるようにしている。

 ……というわけで、「プラス型」「マイナス型」という言葉は、私が考えた。この言葉を最初に使
うようになったのは、分離不安の子どもを見ていたときのことである。子どもの世界には、「分
離不安」というよく知られた現象がある。親の姿が見えなくなると興奮状態(あるいは反対に混
乱状態)になったりする。

年長児についていうなら、程度の差もあるが、15〜20人に一人くらいの割で経験する。

その子どもを調べていたときのことだが、症状が、(1)興奮状態になり、ワーワー叫ぶタイプ
と、(2)オドオドし混乱状態になるタイプの子どもがいることがわかった。

そのときワーワーと外に向かって叫ぶ子どもを、私は「プラス型」、内にこもって、混乱状態にな
る子どもを、「マイナス型」とした。

 この分類方法は、使ってみるとたいへん便利なことがわかった。たとえば過干渉児と呼ばれ
るタイプの子どもがいる。親の日常的な過干渉がつづくと、子どもは独特の症状を示すように
なるが、このタイプの子どもも、粗放化するプラス型と、内閉するマイナス型に分けて考えるこ
とができる。子ども自身の生命力の違いによるものだが、もちろん共通点もある。ともに常識
ハズレになりやすいなど。

 ほかにたとえば赤ちゃんがえりをする子どもも、下の子に暴力行為を繰りかえすタイプをプラ
ス型、ネチネチといわゆる赤ちゃんぽくなるタイプをマイナス型と分けることができる。

いじめについても、攻撃的にいじめるタイプをプラス型、もの隠しをするなど陰湿化するタイプ
をマイナス型に分けるなど。また原因はともあれ、家庭内暴力を起こす子どもをプラス型、引き
こもってしまう子どもをマイナス型と考えることもできる。表面的な症状はともかくも、その症状
を別とすると、共通点が多い。またそういう視点で指導を始めると、たいへん指導しやすい。

 こうした考え方は、もちろん確立された考え方ではないが、子どもをみるときには、たいへん
役に立つ。あなたも一度、そういう目であなたの子どもを観察してみてはどうだろうか。
 
 
Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●子どもの神経症

子どものおねしょと、ストレス

 いわゆる生理的ひずみをストレスという。多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になることが
多い。

たとえば急激に緊張すると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心臓がドキ
ドキし、さらにその結果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や筋肉の活動が活発にな
る。

が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、「食欲不振や性機
能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反応が引き起こされる」(新井康
允氏)という。こうした現象はごく日常的に、子どもの世界でも見られる。

 何かのことで緊張したりすると、子どもは汗をかいたり、トイレが近くなったりする。さらにその
緊張感が長くつづくと、脳の機能そのものが乱れ、いわゆる神経症を発症する。

ただ子どものばあい、この神経症による症状は、まさに千差万別で、定型がない。「尿」につい
ても、夜尿(おねしょ)、頻尿(たびたびトイレに行く)、遺尿(尿意がないまま漏らす)など。私が
それを指摘すると、「うちの子はのんびりしています」と言う親がいるが、日中、明るく伸びやか
な子どもでも、夜尿症の子どもはいくらでもいる。(尿をコントロールしているのが、自律神経。
その自律神経が何らかの原因で変調したと考えるとわかりやすい。)

同じストレッサー(ストレスの原因)を受けても、子どもによっては受け止め方が違うということも
ある。

 しかし考えるべきことは、ストレスではない。そしてそれから受ける生理的変調でもない。(ほ
とんどのドクターは、そういう視点で問題を解決しようとするが……。)

大切なことは、仮にそういうストレスがあったとしても、そのストレスでキズついた心をいやす場
所があれば、それで問題のほとんどは解決するということ。ストレスのない世界はないし、また
ストレスと無縁であるからといって、それでよいというのでもない。

ある意味で、人は、そして子どもも、そのストレスの中でもまれながら成長する。で、その結果、
言うまでもなく、そのキズついた心をいやす場所が、「家庭」ということになる。
 
子どもがここでいうような、「変調」を見せたら、いわば心の黄信号ととらえ、家庭のあり方を反
省する。手綱(たづな)にたとえて言うなら、思い切って、手綱をゆるめる。

一番よいのは、子どもの側から見て、親の視線や存在をまったく意識しなくてすむような家庭
環境を用意する。たいていのばあい、親があれこれ心配するのは、かえって逆効果。子ども自
身がだれの目を感ずることもなく、ひとりでのんびりとくつろげるような家庭環境を用意する。

子どものおねしょについても、そのおねしょをなおそうと考えるのではなく、家庭のあり方そのも
のを考えなおす。そしてあとは、「あきらめて、時がくるのを待つ」。それがおねしょに対する、
対処法ということになる。







 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【4】

●自分をつかめない子ども

+++++++++++++++++++++

目的(?)の学校には入ってはみたものの、
自分をつかめない子ども。
そんな子どもが、ふえている。

Dさんの娘さん(中3)も、ひょっとしたら、
そんな子どもかもしれない。

こんな相談が届いている。

+++++++++++++++++++++

【Dさんより、はやし浩司へ】

久しぶりにメールを送らせていただきます。お元気でいらっしゃいますか?
 中3になる娘のことで、最近思うことがあります。

娘は現在、地元の私立女子中学校に通っていますが、高校は他へ行きたいと言うのです。理
由を聞くと、元々どうしてもその学校へ行きたかったわけではないとか、小学校時代の友人と
同じ高校へ行きたかったとか、今の学校に不満は無いが、このまま居続けるのはイヤだとか
言います。

 志があって他へというのなら、私は応援するつもりですが、娘の場合はどうも違うようです。中
途半端な気持ちで他校へ行ったところで、同じことの繰りかえしになるのではと心配です。

このまま今の学校に通っていても不登校になると思うなどと、脅かしてもきました。これには呆
れましたが、大きなことを言っては、実行できずに終わる娘です。部活もロクに活動をしていな
いような部を転々とし、勉強もそこそこ。趣味は寝ることで、夢は妄想めいた事ばかり。

 私には甘えに思えてなりません。やりたいようにやらせ、本人が痛い思いをするのもいい経
験では、とも思うのですが、迷っています。

 はやし先生のご意見をお聞かせいただけるとありがたいです。お忙しいところ申し訳ありませ
んが、どうぞよろしくお願いいたします。
(長崎県・DIより)


【はやし浩司より、Dさんへ】

 こんにちは!

 以前、似たような相談を受け、それについて書いた原稿がありますので、それをまず、ここに
添付します。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【非行のメカニズム】

 子どもの非行。その非行に子どもが走るメカニズムは、意外に単純なもの。言いかえると、
子どもを非行から防ぐ方法も、簡単。

【第一期・遊離】

 (したいこと)と、(していること)が、遊離し始める。「ぼくは、サッカーをしたい。しかし塾へ行
かなければならない」など。「私はケーキ屋さんになりたいのに、親は、勉強をして、いい大学
へ入れと言う」など。

 (〜〜したい)と思っていることと、(現実にしていること)が、遊離し始める。つまり子ども中
で、アイデンティティ(自我の同一性)が、混乱し始める。

 アイデンティティが、混乱し始めると、子どもの心理状態は、不安定になる。怒りっぽくなった
り(プラス型)、反対にふさぎやすくなったりする(マイナス型)。

 この状態を、「同一性の危機」という。

 この段階の状態に対して、抵抗力のある子どもと、そうでない子どもがいる。幼少期から、甘
やかされて育った子どもほど、当然、抵抗力がない。遊離したとたん、一気に、つぎの(同一性
の崩壊)へと進む。

一方、幼少期から、家事の手伝いなどを日常的にしてきた子どもほど、抵抗力が強い。子ども
の世界では、(いやなことをする力)を、「忍耐力」という。その忍耐力がある。

 アイデンティティが混乱したからといって、すぐ、つぎの第二期に進行するわけではない。個
人差は、当然、ある。

【第二期・崩壊】

 (したいこと)と(していること)が、大きくズレてくると、子どもは、まず、自分を支えようとする。
がんばる。努力する。が、やがて臨界点にさしかかる。子ども自身の力では、それを支えきれ
なくなる。

「野球の選手をめざして、もっとがんばりたいのに、毎日、勉強に追われて、それもできない」
「勉強はおもしろくない」「成績が悪く、つまらない」と。

 こうして同一性は、一気に、崩壊へと向かう。子ども自身が、「自分は何をしたいのか」「何を
すべきなのか」、それがわからなくなる。

【第三期・混乱】

 アイデンティティが崩壊すると、精神状態は、きわめて不安定になる。ささいなことで、激怒し
たり、突発的に暴れたりする(プラス型)。

 反対に落ち込んだり、家の奥にひきこもったりする(マイナス型)。外界との接触を断つことに
よって、不愉快な気分になるのを避けようとする。このとき、無気力になり、ボーッとした表情
で、一日を過ごすようになることもある。

【第四期・非行】

 アイデンティティが崩壊すると、子どもは、主につぎの5つのパターンの中から、自分の道を
模索する。

(1)攻撃型
(2)同情型
(3)依存型
(4)服従型
(5)逃避型

 このうち、攻撃型が、いわゆる非行ということになる。独特の目つきで、肩をいからせて歩く。
独特の服装に、独特の暴言などなど。暴力行為、暴力事件に発展することも珍しくない。

 このタイプの子どもに、「そんなことをすれば、君は、みなに、嫌われるんだよ」と説いても意
味はない。このタイプの子どもは、非行を通して、(自分の顔)をつくろうとする。顔のない自分
よりは、嫌われても、顔のある自分のほうが、よいというわけである。

 アイデンティティそのものが、崩壊しているため、ふつうの、合理的な論理は通用しない。ささ
いなどうでもよいことに、異常なこだわりを見せたりする。あるいは、それにこだわる。自己管
理能力も低下するため、自分をコントロールできなくなる。

 以上が、非行のメカニズムということになる。

 では、子どもを非行から守るためには、どうすればよいか。もうその答はおわかりかと思う。

 つねに(子どものしたいこと)と、(子どもがしていること)を、一致させるようにする。あるいは
その接点だけは、切らないようにする。

 仮に受験勉強をさせるにしても、「成績がさがったから、サッカーはダメ」式の乱暴な、指導は
しない。受験勉強をしながらも、サッカーはサッカーとして、別に楽しめるワクを用意する。

 言うまでもなく、(自分のしたいこと)と、(していること)が一致している子どもは、精神的に、き
わめて安定している。どっしりしている。方向性がしっかりしているから、夢や希望も、もちやす
い。もちろん、目的もしっかりしている。

 また方向性がしっかりしているから、誘惑にも強い。悪の世界からの誘惑があっても、それを
はねかえすことができる。自己管理能力もしっかりいているから、してよいことと、悪いことの判
断も的確にできる。

 だから……。

 今までにも何度も書いてきたが、子どもが、「パン屋さんになりたい」と言ったら、「そうね、す
てきね」「こんど、いっしょにパンを焼いてみましょう」などと、答えてやる。そういう子どもの夢や
希望には、ていねいに耳を傾けてやる。そういう思いやりが、結局は、自分の子どもを非行か
ら守る最善の方法ということになる。
(はやし浩司 非行 子どもの非行 子供の非行 非行から子供を守る方法 非行防止 アイ
デンティティ アイデンテティ 自我同一性の崩壊 顔のない子ども 子供 はやし浩司 非行
のメカニズム)


●スチューデント・アパシー

 無気力、無表情、無感動の状態を総称して、「アパシー」という。そのアパシーが、若者を中
心に、部分的に現れることがある。とくに、男子学生に多い。それを、「スチューデント・アパシ
ー」(ウォルターズ)という。

 このスチューデント・アパシーが、燃えつき症候群や、荷おろし症候群とちがう点は、ここにも
書いたように、学業なら学業だけというように、アパシーになる部分が、かぎられているという
点。学業面では、無気力でも、アルバイトや、交友、遊びは、人一倍、活発にする。

 が、大学の講義室に入ったとたん、別人のように、無気力状態になる。反応もなく、ただぼん
やりとしているだけ。眠ってしまうこともある。

 こうした症状も、(本人がやりたいこと)と、(現実にしていること)のギャップが、大きいことが
原因でそうなると考えると、わかりやすい。「大学へは入ってみたが……」という状態である。と
くに、目標もなく、ただ点数をあげるためだけの受験勉強をしてきたような子どもに、多く見られ
る。

 このタイプの学生は、まず本人自身が、何をしたいかを正確に知らなければならない。しかし
たいていのケースでは、それを知るという気力そのものすら、消えていることが多い。

 「君は、本当は、何をしたいのか?」
 「わからない」
 「でも、君にも、何か、やりたいことがあるだろ?」
 「ない……」
 「でも、今のままでいいとは、君だって、思っていないだろ?」
 「……」と。

 こうした症状は、早い子どもで、小学校の高学年児でも、見られるようになる。概して、従順
で、まじめな子どもほど、そうなりやすい。友だちと遊ぶときはそれなりに活発なのだが、教室
へ入り、机に向かってすわったとたん、無気力になってしまう。

 こうした症状が見られたら、できるだけ初期の段階で、それに気づき、子どもの心を取りもど
す。よく誤解されるが、「いい高校に入りなさい」「いい大学に入りなさい」というのは、子どもに
とっては、(したいこと)ではない。一見、子どものためを思った言葉に聞こえるかもしれない
が、その実、子どもの心を破壊している。

 だから今、目的の高校や大学へ入ったとたん、燃え尽きてしまったりして、無気力になる子ど
もは、本当に多い。市内の進学高校でも、5〜10%が、そうでないかと言われている(教師
談)。大学生となると、もっと多い。
(はやし浩司 アパシー スチューデントアパシー 無気力な子ども 自我の崩壊 同一性の危
機 同一性の崩壊)

+++++++++++++++++++++

少し前、こんな相談がありました。再掲載します。

+++++++++++++++++++++ 

【E氏より】

甥(おい)っ子についてなんですが、小学二年生でサッカークラブに入っています。ところがこの
ところ、することがないと、ゴロゴロしているというのです。

とくに友だちと遊ぶでもなく、何か自分で遊ぶのでもなく……。サッカーもヤル気がないくせに、
やめるでもない。こういう時は、どこに目を向ければいいのでしょうか。

やる気がないのは、今、彼の家庭が関心を持っている範疇にないというだけで、親自身が持っ
ている壁を越えさせることがポイントかな、と思ったりしたのですが……。 

【はやし浩司より】

●消去法で

 こういう相談では、最悪のケースから、考えていきます。

 バーントアウト(燃え尽き、俗にいう「あしたのジョー症候群」)、無気力症候群(やる気が起き
ない、ハキがない)、自我の崩壊(抵抗する力すらなくし、従順、服従的になる)など。さらに回
避性障害(人との接触を避ける)、引きこもり、行為障害(買い物グセ、集団非行、非行)など。
自閉症はないか、自閉傾向はないか。さらには、何らかの精神障害の前兆や、学校恐怖症の
初期症状、怠学、不登校の前兆症状はないか、など。

 軽いケースでは、親の過干渉、溺愛、過関心、過保護などによって、似たような症状を見せ
ることがあります。また学習の過負担、過剰期待による、オーバーヒートなどなど。この時期だ
と、暑さにまけた、クーラー病もあるかもしれません(青白い顔をして、ハーハーあえぐ、など)。

 「無気力」といっても、症状や程度は、さまざまです。日常生活全体にわたってそうなのか。あ
るいは勉強面なら勉強面だけにそうなのか。あるいは日よって違うのか。また一日の中でも、
変動はあるのかないのか。

こうした症状にあわせて、何か随伴症状があるかないかも、ポイントになります。ふつう心配な
ケースでは、神経症による緒症状(身体面、行動面、精神面の症状)が伴うはずです。たとえ
ばチック、夜驚、爪かみ、夜尿など。腹痛や、慢性的な疲労感、頭痛もあります。行動面では、
たとえば収集癖や万引きなど。

さらに情緒障害が進むと、心が緊張状態になり、突発的に怒ったり、キレたりしやすくなりま
す。この年齢だと、ぐずったりすることもあるかもしれません。

こうした症状をみながら、順に、一つずつ、消去していきます。「これではない」「では、これでは
ないか?」とです。

●教育と医療

 つまりいただいた症状だけでは、私には、何とも判断しかねるということです。したがって、ア
ドバイスは不可能です。仮に、そのお子さんを前に置いても、私のようなものが診断名をくだす
のは、タブーです。資格のあるドクターもしくは、家の人が、ここに書いたことを参考に、自分で
判断するしかありません。

 治療を目的とする医療と、教育を目的とする教育とは、基本的な部分で、見方、考え方が違
うということです。

 たとえばこの時期、子どもは、中間反抗期に入ります。おとなになりたいという自分と、幼児
期への復帰と、その間で、フラフラとゆれ戻しを繰りかえしながら、心の状態が、たいへん不安
定になります。

 「おとなに扱わないと怒る」、しかし「幼児のように、母親のおっぱいを求める」というようにで
す。

 そういう心の変化も、加味して、子どもを判断しなければなりません。医療のように、検査だ
けをして……というわけにはいかないのですね。私たちの立場でいうなら、わかっていても、知
らないフリをして指導します。

 しかしそれでは、回答になりませんので、一応の答を書いておきます。

 相談があるということから、かなり目立った症状があるという前提で、話をします。

 もっとも多いケースは、親の過剰期待、それによるか負担、過関心によって、脳のある部分
(辺縁系の帯状回)が、変調しているということ。多くの無気力症状は、こうして生まれると説明
されます。

 特徴としては、やる気なさのほか、無気力、無関心、無感動、脱力感、無反応など。緩慢動
作や、反応の遅延などもあります。こうした症状が慢性化すると、昼と夜の逆転現象や回避性
障害(だれにも会いたがらない)などの症状がつづき、やがて依存うつ病へと進行していきま
す。(こわいですね! Eさんのお子さんのことではなく、甥のことということで、私も、少し気楽
に書いています。)

 ですから安易に考えないこと。

●二番底、三番底へ……

 この種の問題は、扱い方をまちがえると、二番底、三番底へと落ちていきます。さらに最悪の
状態になってしまうということです。たとえば今は、何とか、まだサッカーはしているようですが、
そのサッカーもしなくなるということです。(親は、これ以上悪くならないと思いがちですが……。
決して、そうではないということです。)

 小学二年生という年齢は、好奇心も旺盛で、生活力、行動力があって、ふつうなのです。そ
れが中年の仕事疲れの男のように、家でゴロゴロしているほうが、おかしいのです。どこかに
心の変調があるとみてよいでしょう。

 では、なおすために、どうしたらよいか?

 まず、家庭が家庭として、機能しているかどうかを、診断します。

●家庭にあり方を疑う……

 子どもにとって、やすらぎのある、つまり外の世界で疲れた心と体を休める場所として機能し
ているかどうかということです。簡単な見分け方としては、親のいる前で、どうどうと、ふてぶてし
く、体を休めているかどうかということです。

 親の姿を見たら、コソコソと隠れたり、好んで親のいないところで、体や心を休めるようであ
れば、機能していないとみます。ほかに深刻なケースとしては、帰宅拒否があります。反省す
べきは、親のほうです。

 つぎに、達成感を大切にします。「自身が持っている壁を越えさせることがポイント」というの
は、とんでもない話で、そういうやり方をすると、かえってここでいう二番底、三番底へと、子ど
もを追いやってしまうから注意してください。

 この種の問題は、(無理をする)→(ますます無気力になる)→(ますます無理をする)の悪循
環に陥りやすいので、注意します。一度、悪循環に陥ると、あとは底なしの悪循環を繰りかえ
し、やがて行き着くところまで、行き着いてしまいます。
 
「壁を越えさせる」のは、風邪を引いて、熱を出している子どもに、水をかけるような行為と言っ
てもよいでしょう。仮に心の病にかかっているということであれば、症状は、この年齢でも、半年
単位で推移します。今日、改めたから、明日から改善するなどということは、ありえません。

 私なら、学校恐怖症による不登校の初期症状を疑いますが、それについても、私はその子ど
もを見ていませんので、何とも判断しかねます。

 ただコツは、いつも最悪のケースを考えながら、「暖かい無視」を繰りかえすということです。
子どものやりたいようにさせます。過関心であれば、親は、子育てそのものから離れます。

 多少生活態度がだらしなくなっても、「うちの子は、外でがんばっているから……」と思いなお
し、大目にみます。

 ほかに退行(幼児がえり)などの症状があれば、スキンシップを濃厚にし、CA、MGの多い食
生活にこころがけます。(下にお子さんがいらっしゃれば、嫉妬が原因で、かなり情緒が不安定
になっていることも、考えられます。)

 子どもの無気力の問題は、安易に考えてはいけません。今は、それ以上のことは言えませ
ん。どうか慎重に対処してください。親やまわりのものが、あれこれお膳立てしても、意味がな
いばかりか、たいていは、症状を悪化させてしまいます。そういう例は、本当に多いです。

 またもう少し症状がわかれば、話してください。症状に応じて、対処方法も変わります。あまり
深刻でなければ、そのまま様子を見てください。では、今日は、これで失礼します。
(はやし浩司 バーントアウト 燃え尽き あしたのジョー症候群 無気力症候群 自我の崩壊
 回避性障害 引きこもり はやし浩司 行為障害 買い物グセ 集団非行 非行 学校恐怖
症 初期症状 怠学 不登校の前兆症状

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【Dさんへ、はやし浩司より(2)】

 少し話が脱線するかもしれませんが、同一性の
危機について、別の角度から書いたのが、つぎの
原稿です。

 どうか、参考にしてください。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●日本人のアイデンティティ
 
 日本人は、日本がどうあるべきだと思っているのか。どうあったらよいと考えているのか。

 日本人が、日本人として、したいことと、日本が今、進んでいるべき道が、一致していればよ
い。問題は、ない。心理学の世界にも、アイデンティティ(自己同一性)という言葉がある。

 (自分のしたいこと)と、(自分のしていること)が一致していれば、その子どもは、落ちついて
いる。安定している。これを、アイデンティティという。が、ときとして、その両者がかみあわなく
なるときがある。

 A君(小学3年生)は、「おとなになったら、サッカー選手になりたい」と思っていた。地元のサ
ッカークラブでも、そこそこに、よい成績を出していた。が、そこへ進学問題がからんできた。ま
わりの子どもたちが、進学塾に通うようになった。

 A君は、それでもサッカー選手になりたいと思っていた。が、現実は、そうは甘くなかった。4
年生になったとき、さらに優秀な子どもたちが、そのサッカークラブに入ってきた。A君は、相対
的に、目だたなくなってしまった。

 ここでA君は、(自分の進みたい道)と、現実とのギャップを、思い知らされることになる。が、
こうした不一致は、ただの不一致では、すまない。

 A君は、心理的に、たいへん不安定な状態に置かれることになる。いわゆる「同一性の危機」
というのが、それである。が、さらに進学の問題が、A君に深くからんできた。母親が、A君にこ
う言った。

 「成績がさがったら、サッカーはやめて、勉強しなさい」「サッカーなんかやっていても、プロの
サッカー選手になるのは、東大へ入ることより、むずかしいのよ」と。

 子どもというのは、自我に目覚めるころから、自分のまわりに、(自分らしさ)をつくっていく。
これを役割形成という。が、その(自分らしさ)がこわされ始めると、そこで役割混乱が起きる。

 それは、心理的にも、たいへんな不安定な状態である。

 たとえて言うなら、好きでもない男と、妥協して結婚した、女性の心理に近いのではないか。
そんな男に、毎夜、毎夜、体を求められたら、その女性は、どうなる?

 こうしてアイデンティティの崩壊が始まる。

 一度、こういう状態になると、程度の差もあるが、子どもは、自分を見失ってしまう。いわゆる
(だれでもない自分)になってしまう。自分の看板、顔、立場をなくしてしまう。が、そこで悲劇が
止まったわけではない。

 A君は、進学塾に通うことになった。母親が、「いい中学へ入りなさい」と、A君を攻めたてた。
A君は、ますます、自分を見失っていった。

 こういう状態になると、子どもは、つぎの二つのうちの、一つを選択することに迫られる。

 (だれでもない自分)イコール、無気力になった自分のままで、そのときを、やりすごすか、代
償的な方法で、自分のつぎの道をさがし求めるか。

 代償的な方法としては、攻撃的方法(非行など暴力的行為に走る)、服従的方法(集団を組
み、だれかに盲目的に服従する)、依存的方法(幼児ぽくなり、だれかにベタベタと依存する)、
同情的方法(弱々しい自分を演じて、いつもだれかに同情を求める)などがある。

 ふつうこの時期、多くの子どもたちは、攻撃的方法、つまり非行に走るようになる。(だれでも
ない、つまり顔のない人間)になるよりは、(害はあっても、顔のある人間になる)ことを望むよう
になる。

 この時期の子どもの非行化は、こうして説明される。

 で、自分の存在感をアピールするために、学校でわざと暴れたりするなど。このタイプの子ど
もに、「そんなことをすれば、みんなに嫌われるだけだよ」と諭(さと)しても意味はない。みなに
恐れられること自体が、その子どもとっては、ステータスなのだ。

 これは子どもの世界の話である。

 で、日本人も、今、私の印象では、その「同一性の危機」の状態にあるとみてよい。(日本人
として、したい道)と、(進んでいる道)が、一致していない。そのため日本人全体が、今、たい
へん不安定な心理状態にある。

 民主主義国家として、平和と自由を愛する国民になるのか、それとも、復古主義的な流れの
中で、武士道に代表される過去の日本にもどるのか。Y神社を参拝して、戦前の軍神たちに頭
をさげるのか。つまりはわけのわからない状態の中で、混沌(こんとん)としている。

 だから中国や韓国で、反日運動が起きても、「どうしたらいい……」と、ただ右往左往するだ
け。自分の主張すら、ない。ないから、声をあげることもできない。

 では、どうするか。

 私は、もう過去の日本とは決別をして、自由と、平和と、平等の三つを旗印にかかげ、国際
化のうねりの中で、まっしぐらに前に進むしかないと思う。その向こうにあるのは、かつて200
年前にカントが提唱した、世界国家である。コスモポリタンである。

 はからずも今朝(4・21)、オーストラリアのハワード首相が、日本との間で、FTA(自由貿易)
協定を結ぼうと提唱したというニュースが、飛びこんできた。オーストラリアは、イラクの自衛隊
を保護するために、オーストラリア軍を派遣してくれた。

 そういう国もある。(Advance Australia!)

 そういう国の存在を信じて、前に進む。それこそが、まさに日本のアイデンティティの確立に
つながる。

 ついでに一言。よく「アイデンティティ」という言葉を使って、「武士道こそが、日本人が誇るべ
き、アイデンティティだ」と説く人がいる。

 しかしそもそも言葉の使い方が、まちがっている。そういう人は、アイデンティティというのは、
個性のことだと思っている。さらに言えば、武士道など、日本人が誇らなければならない精神で
も、なんでもない。

 わずか数%の、為政者たちが、刀を振りまわして、大半の民衆を虐(しいた)げてきた。その
中で生まれた、自分勝手な論理と精神訓、それが武士道である。あえて言うなら、官僚道、役
人道ということになる。

 自分たちの先祖は、その大半が、武士とは無縁の、町民や農民であった。そういう立場を忘
れて、150年たった今、自分が武士にでもなったつもりで、武士道をたたえるのは、どうかと思
う。少なくとも、私はついていけない。

 もちろん文化は文化だし、歴史は歴史。だからそれなりに尊重はしなければならない。が、そ
れを今、もちだす必要は、どこにもない。改めて日本の「柱」にしなければならない理由など、ど
こにもない。

 私たちが進むべき道は、前にある。うしろではない。

 日本人の心を、発達心理学にからめて、考えてみた。
(はやし浩司 日本人 アイデンティティ 自己同一性)

(追記)

 農業問題もあるが、オーストラリア、シンガポールと、自由貿易協定を結べば、それ自体が、
韓国、中国にとっては、たいへんな脅威になる。

 日本には、ほかに、ブラジルがある。インドがある。アメリカも、カナダもある。EUもある。

 日本は、決して孤立していない。

 去年、オーストラリアの友人(国防省勤務)が、メールで私にこう書いてきた。(このことは、当
時のマガジンに原稿として書いた。)

 「ヒロシ、日本が、K国に攻撃されたら、オーストラリアは、自動的にK国を攻撃することになっ
ている。安心しろ」と。日本とK国の間の緊張感が、極度に高まっていたときでもある。

 私はそのメールをもらったとき、どういうわけか、涙が出るほど、うれしかった。そういう心が、
今回の、オーストラリア軍のイラク派遣へと、具体的につながっている。日本の自衛隊を守るた
めに、だ。

 韓国のN大統領よ、日本は、決して世界から、孤立なんかしていないぞ! バカめ! 孤立さ
せたいのは、N大統領、実は、あなた自身ではないのか! 中国で反日運動が起きたとき、イ
の一番に、「これで日本の安保理入りは、流れた」と喜んだのは、どこのどなたでしたか? 私
たち、日本人は、それを忘れないぞ!

 ……とまあ、たがいに、敵意を育てていてもしかたないですよね。しかしね、N大統領、日本
人も変わりましたよ。どうか戦前の日本人のイメージのままで、今の日本人を見ないでくださ
い。くれぐれも、よろしくお願いします。

 やがていつかすぐ、日本と韓国が、FTA協定を結ぶことになると思います。そういう時代は、
すぐそこまできています。そういう共通の目標に向って、いっしょに、前に進もうではありません
か。
(050421)

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【はやし浩司より、Dさんへ(3)】

 で、いよいよ本論ということになります。

 まず、現在の娘さんの心理状態を知るために、
以下の原稿を読んでくだされば、うれしく思います。

Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

●同一性の危機

万引き、自転車盗、薬物濫用、暴走、家庭内暴力、校内暴力、性非行、無断外泊、いじめを、
非行という(会津若松警察書)。子どもは、(自分のしたいこと)と、(現実にしていること)の間に
遊離感を覚えたとき、無意識のうちにも、その距離を、縮めようとする。子どもの耐性にもよる
が、それが一定の限界(個人差は当然ある)を超えたとき、子どもの自己の同一性は、危機に
立たされる。


●夢・希望・目的

夢・希望・目的は、子どもを伸ばす、三種の神器。これら夢・希望・目的は、(自分のしたいこ
と)と、(現実にしていること)が一致しているとき、あるいは、そこに一体感があるとき、そこか
ら生まれる。「ぼくはサッカー選手になる」「私はケーキ屋さんになる」と。そしてサッカーの練習
をしたり、ケーキを自分で焼いてみたりする。「プロの選手になる」とか、「パン屋さんになる」と
かいう目的は、そこから生まれる。


●子どもの忍耐力

同一性が危機に立たされると、子どもは、それを修復しようとする。(自分のしたいこと)を、別
のものに置きかえたり、(現実にしていること)を、修正しようとしたりする。あるいは「したくない
が、がんばってやってみよう」と考えたりする。ここで登場するのが、忍耐力ということになる。
子どもにとって、忍耐力とは、(いやなことをする力)をいう。この忍耐力は、幼児期までに、ほ
ぼ完成される。


●同一性の崩壊

同一性を支えきれなくなると、そこで同一性の崩壊が始まる。子ども自身、自分が何をしたい
か、わからなくなってしまう。また何をしてよいのか、わからなくなってしまう。「私は何だ」「私は
だれだ」と。「私はどこへ行けばよいのか」「何をすればよいのか」と。それは「混乱」というよう
な、なまやさしいものではない。まさに「自己の崩壊」とも言うべきもの。当然、子どもは、目的
を見失う。


●顔のない自分

同一性が崩壊すると、いわゆる(顔のない自分)になる。で、このとき、子どもは、大きく分け
て、二つの道へと進む。(1)自分の顔をつくるため、攻撃的かつ暴力的になる(攻撃型)。(2)
顔のない自分のまま、引きこもったり、カラに閉じこもったりする(逃避型)。ほかに、同情型、
依存型、服従型をとる子どももいる。顔のない自分は、最悪のケースでは、そのまま自己否定
(=自殺)へとつながってしまう。


●校内暴力

暴力的な子どもに向かって、「そんなことをすれば、君がみなに嫌われるだけだよ」と諭(さと)
しても、意味はない。その子どもは、みなに嫌われ、怖れられることで、(自分の顔)をつくろうと
する。(顔のない自分)よりは、(顔のある自分)を選ぶ。だからみなが、恐れれば、怖れるほ
ど、その子どもにとっては、居心地のよい世界となる。攻撃型の子どもの心理的のメカニズム
は、こうして説明される。


●子どもの自殺

おとなは、生きるのがいやになって、その結果として、自殺を選ぶ。しかし子どものばあいは、
(顔のない自分)に耐えきれず、自殺を選ぶ。自殺することによって、(自分の顔)を主張する。
近年ふえているリストカットも、同じように説明できる。リストカットすることで、自分を主張し、他
人からの注目(同情、あわれみなど)を得ようとする。「贖罪(しょくざい)のために、リストカット
する」と説く学者もいる(稲富正治氏ほか)。


●自虐的攻撃性

攻撃型といっても、2つのタイプがある。外に向って攻撃的になる(校内暴力)と、内に向って攻
撃的になる(ガリ勉、猛練習)タイプ。「勉強しかしない」「勉強しかできない」「朝から寝るまで勉
強」というタイプは、後者ということになる。決して、勉強を楽しんでいるのではない。「勉強」とい
う場で、(自分の顔)をつくろうとしていると考えるとわかりやすい。近年、有名になったスポーツ
選手の中には、このタイプの人は少なくない。


●自我の同一性
 
(子どもがしたがっている)ことに、静かに耳を傾ける。そしてそれができるように、子どもの環
境を整えていく。そうすることで、子どもは、(自分のしたいこと)と、(自分がしていること)を一
致させることができる。これを「自我の同一性」という。この両者が一致している子どもは、夢や
希望もあり、当然、目的もあるから、見た目にも、落ちついていて、どっしりとしている。抵抗力
もあるから、誘惑にも強い。


●心の抵抗力

「私は〜〜をしたい」「ぼくは〜〜する」と、目的と方向性をしっかりともっている子どもは、心の
抵抗力も強い。外部からの誘惑があっても、それをはねのける。小学校の高学年から中学校
にかけては、その誘惑が、激増する。そうした誘惑をはね返していく。が、同一性が崩壊してい
る子どもは、生きザマが、せつな的、享楽的になるため、悪からの誘いがあると、スーッとその
世界に入ってしまう。


●夢や希望を育てる

たとえば子どもが、「花屋さんになりたい」と言ったとする。そのとき重要なことは、親は、それ
に答えて、「そうね、花屋さんはすてきね」「明日、球根を買ってきて、育ててみましょうか」「お花
の図鑑を買ってきましょうか」と、子どもの夢や希望を、育ててやること。が、たいていの親は、
この段階で、子どもの夢や希望を、つぶしてしまう。そしてこう言う。「花屋さんも、いいけど、ち
ゃんと漢字も覚えてね」と。


●子どもを伸ばす三種の神器

子どもを伸ばす、三種の神器が、夢、目的、希望。しかし今、夢のない子どもがふえた。中学
生だと、ほとんどが、夢をもっていない。また「明日は、きっといいことがある」と思って、一日を
終える子どもは、男子30%、女子35%にすぎない(「日本社会子ども学会」、全国の小学生3
226人を対象に、04年度調査)。子どもの夢を大切に、それを伸ばすのは、親の義務と、心
得る。


●役割混乱

子どもは、成長するにつれて、心の充実をはかる。これを内面化というが、そのとき同時に、
「自分らしさ」を形成していく。「花屋さんになりたい」と言った子どもは、いつの間にか、自分の
周囲に、それらしさを作っていく。これを「役割形成」という。子どもを伸ばすコツは、その役割
形成を、じょうずに育てていく。それを破壊すると、子どもは、「役割混乱」を起こし、精神的に
も、情緒的にも、たいへん不安定になり、混乱する。


●思考プロセス(回路)

しかし重要なのは、「思考プロセス」。幼いときは、「花屋さんになりたい」と思ってがんばってい
た子どもが、年齢とともに、今度は、「看護婦さんになりたい」と言うかもしれない。しかし幼いと
きに、花屋さんになりたいと思ってがんばっていた道筋、あるいは思考プロセスは、そのまま残
る。その道筋に、花屋さんにかわって、今度は、看護婦が、そこへ入る。中身はかわるかもし
れないが、今度は、子どもは、看護婦さんになるために、がんばり始める。


●進学校と受験勉強

たいへんよく誤解されるが、「いい高校」「いい大学」へ入ることは、一昔前までは、目的になり
えたが、今は、そういう時代ではない。学歴の権威を支える、権威主義社会そのものが崩壊し
てしまった。親は、旧態依然の考え方で、「いい大学へ入ることが目的」と考えやすいが、子ど
もにとっては、それは、ここでいう目的ではない。「受験が近いから、(好きな)サッカーをやめ
て、受験塾へ行きなさい」と子どもを追うことで、親は子どもの夢をつぶす。「つぶしている」とい
う意識すらないまま……。


●これからはプロの時代

これからはプロが生き残る時代。オールマイティなジェネラリストより、一芸にひいでたプロの
ほうが、尊重される。大手のT自動車の面接試験でも、学歴不問。そのかわり、「君は何ができ
るか?」と聞かれる時代になってきている。大切なことは、子どもが、生き生きと、自分の人生
を歩んでいくこと。そのためにも、子どもの一芸を大切にする。「これだけは、だれにも負けな
い」というものを、子どもの中につくる。それが将来、子どもを伸ばす。


●大学生の問題

現在、ほとんどの高校生は、入れる大学の入れる学部という視点で、大学や学部を選んでい
る。もともと、勉強する目的すらもっていない。そのため、入学すると同時に、無気力になってし
まったり、遊びに夢中になってしまう大学生が多い。燃え尽きてしまったり、荷おろし症候群と
いって、いわゆる心が宙ぶらりんになってしまう子どもも多い。当然、誘惑にも弱くなる。


●自我の同一性と役割形成

子どもをまっすぐ伸ばすためには、(子どもがしたがっていること)を、(現在していること)に一
致させていく。そしてそれを励まし、伸ばす。親の価値観だけで、「それはつまらない仕事」「そ
んなことは意味がない」などと、言ってはいけない。繰りかえすが、子どもが、「お花屋さんにな
りたい」と言ったら、すかさず、「それはすてきね」と言ってあげる。こういう育児姿勢が、子ども
を、まっすぐ伸ばす基礎をつくる。

(はやし浩司 子どもを伸ばす 子供を伸ばす 自我の同一性 役割形成 思考プロセス 子
供の非行 子どもの非行 はやし浩司 子供を非行から守る 非行のメカニズム)


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

【はやし浩司より、Dさんへ(4)】

 Dさんのメールを読んでいて、まず感じたことは、全体に、親のエゴばかりが目立つというこ
と。娘さんは、当初から、その私立女子中学校を望んでいたのでしょうか?

 あるいは、「そこへ行け、行け」と、たきつけたのは、ひょっとしたら、Dさん自身ではなかった
のではないでしょうか?

 「志」……なんて、おおげさなものを、この時期の子どもに期待する方が、おかしいです。今の
娘さんの心理状態は、その前の段階で、自分をつかめないでいるのです。「自分でも、どうした
らいいかわからない」といった状態です。

 理由を言えば、Dさん自身が、子どもの前に立ち、手を引くことだけしかしてこなかった。つま
り娘さんの気持ちを、そのつど、確かめることをしてこなかった。つまりは一方的に、押しつけ
てきただけ。それが積み重なって、今の状態になったと考えられます。

 今からでも遅くありませんから、娘さんの横に立ち、友として、娘さんの相談にのることです。
(友として、です!)娘さんの心には、今、ポッカリと穴があいていますから、誘惑にもたいへん
もろくなっています。どうか、お気をつけください。

 で、つぎのことに注意します。

●一過性の迷いなのか、本気なのか、見極めること。

 こうしたケースは珍しくありません。で、たいていは一過性の迷いのまま、やがて子どもの心
は落ちついていきます。

 一過性のものであれば、暖かく無視する……という方法で、対処します。

 が、本気で、そのほかに随伴症状が見られたら、転校などは、娘さんに任されるとよいでしょ
う。

「大きなことを言っては、実行できずに終わる娘です。部活もロクに活動をしていないような部
を転々とし、勉強もそこそこ。趣味は寝ることで、夢は妄想めいた事ばかり。

 私には甘えに思えてなりません。やりたいようにやらせ、本人が痛い思いをするのもいい経
験では、とも思うのですが、迷っています」(Dさんからのメール)というような見方では、娘さん
は、あなたに対して、心を開くことはないでしょう。

 頭から、「大きなことを言っては、実行できず」とは?
 「部活もロクに活動をしていないような部を転々とし、勉強もそこそこ。趣味は寝ることで、夢
は妄想めいた事ばかり」とは?

 さらに「本人が痛い思いをするのもいい経験では、とも思うのですが」とは?

 率直に言って、「これが親の言う言葉かな?」(失礼!)と思いました。

 おそらく、娘さんが幼いときから、Dさんは、過干渉ぎみ、過関心ぎみで、娘さんとのリズムが
合っていなかったのではないかと思っています。今も、そのリズムがかみあわないままでいま
す。

 どこかあなた自身、少し親意識が強すぎませんか? 今ここで、舵取りを誤ると、娘さんは、
このまま二番底、三番底へと落ちていきます。たいへん微妙な段階です。

 仮に「痛い思い」をしそうであれば、それをカバーするのが、あなたという親の役目ではないで
しょうか。言うべきことは、「また何かあったら、お母さんがあなたを守ってあげるから、心配し
なくてもいいのよ」です。

 さらにひょっとしたら、娘さんが、その私立女子中学校をやめたら、困るのは、あなたなので
はないでしょうか。あなたは娘さんの気持ちよりも、親のメンツ、世間体を気にしているのかもし
れません。

 もしそうなら、親子の断絶も、時間の問題かもしれませんね。(あなた自身も、親意識の強
い、権威主義的な家庭環境で、育てられている可能性も大きいです。ご自身の過去を、冷静
に、振りかえってみてください。)

 なお、気うつ的な状態になると、症状的には、生活態度がだらしなくなり、全体として、怠けて
いるような様子をしてみせるようになります。ですから表面的な症状だけを見て、「怠け」とか、
「甘え」とか、そういうふうに決めてかかってはいけません。

 本来なら、娘さんは、年齢的にも、ハツラツと、明るい表情で、生き生きとしているべきときで
す。が、それが本人も、できない。つまり、一番苦しみ、もがいているのは、娘さん自身だという
ことです。なのに、家に帰ると、母親のあなたから、ガミガミと言われる。冷たくあしらわれる。
「甘えだ」「怠けている」「部活もロクにできない」と。

 私があなたの娘さんなら、「このクソババア!」と叫んで、家を出ますよ! (ホント!)

 ともかくも、ここは、こうしてください。

(1)娘さんのよき聞き役に回ること。(これが重要です!)
(2)転校も考えてやること。(失敗するとわかっていても、です。)
(3)先に書いた、自己の同一性を、娘さんの中に作ってあげること。
(4)一方的に、親の価値観を、娘さんに押しつけないこと。

 一過性の(迷い)のようなものであれば、それほど、深刻に考える必要はありません。ただ、
いただきましたメールの内容からすると、すでに娘さんは、軽い気うつ状態から、うつ症、ある
いはうつ病的になっているのではないかと心配されます。「不登校を起こす」と娘さんは言って
いるようですが、決して、安易に考えないこと。本当に、そうなる可能性は、大です。

 やりたいこともできず、悶々としているより、やってみて失敗するほうが、気分もずっと楽で
す。後悔もしません。私なら、子どもを信じて、本人のやりたいように、させますが……。

 以上です。どうか、参考にしてください。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 自分
をつかめない子ども 子供の転校 転校問題 中学生の心理 迷う子供)








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【5】

●父親の不倫

++++++++++++++++++++

T県に住んでいる女性(34歳)がいる。
その女性から、つぎのような相談をもらった。

++++++++++++++++++++

【YYさんより、はやし浩司へ】

父に不倫をやめてもらうということは、無理なことでしょうか?
(父は現在60歳です。バイアグラを所持していたこともあります。)

私がどんなに訴えても、私の心は、父には届かないのでしょうか?

「勝手にすればいい」と思うこともありますが、母の気持ちや、離婚後の母の生活(経済的に)
を考えると、放置しようという気持ちにもなれません。

母は、証拠をつかんだら、愛人から慰謝料をもらいたいと言っています。
(相手が誰なのかは知っています。)
証拠など簡単につかめるものではないのですが・・・。

父に直接問い詰めても、父は、白を切るだけです。

愛人には、「誰にも迷惑はかけていない。これは俺の楽しみだからやめる気はない」と言ってい
るようです。
(家族には、十分迷惑をかけていると思うのですが・・・)

母には、「今は冷静に父を観察して 時期が来たら、(夫の年金を半分受け取れるようになるら
しいです)、愛人がいる、いないにかかわらず、離婚届をつきつけたらいいよ」と言ったことがあ
ります。

(母は父の裏切りに対する憎しみで、いっぱいなんです。父にどうやって復讐をしてやろうと、そ
れをいつも考えているといった感じです。)

父に心を入れかえてもらうことが無理なら、私は母に対してどう対応していけばいいのでしょう
か?


【はやし浩司よりYYさんへ】

拝復

私の知人の中にも、何人か、不倫をしているのがいます。
その中のひとりは、立派な肩書きもあり、社会的地位もあり、
広く人望も集めています。

「どうして別れないのか?」と聞くと、「できない」と。

そうそうその男性は、あなたのお父さんと同じ、60歳です。

「性」のもつ力には、ものすごいものがあります。どの人も
最初は、遊びで始めるのですが、そのうち、ハマってしまう……。

こんな話もあります。

若いころ、日本を代表する文豪と呼ばれる人と、
近くで交際させてもらったことがあります。
名前を出せば、100%の人がよく知っている、人物です。

その文豪と呼ばれる人が、あるとき私にふと、こう言いました。

「オレは、若いころから無精子症なんだよな」と。

私が驚いて、「だって、先生には、息子さんがいるではないですか……!?」と
言うと、その先生は、笑ってこう答えました。

「ええじゃねえか」「ええじゃねえか」と。

つまり妻の浮気は公認していたというのです。その奥さんは、
その文豪と言われていた人物が死ぬまで、ずっとベッドの横についていました。
片時も離れず、です。

私は最初会ったとき、あまりにもみすぼらしい服装をしていたので、
家政婦さんか、何かと思ったほどです。

で、こういうケースでは、あなたがたが、復讐を考えたり、仕返しを考えたり
するほど、あなたの父親は、あなたたちから遠くへ行ってしまうでしょう。

あなたの父親が求めているのは、(やすらぎ)だからです。たいへん
むずかしいことかもしれませんが、『許して、忘れる』ということは、
できませんか?

最大の復讐は、「後悔させること」です。不倫をしたことを、心底、後悔
させることです。もっともそれをするには、こちら側が、その何倍も、
心が広くなければなりませんが……。

父親に対する、「親」という幻想を捨てなさい。また父親と母親の関係に対しても、
「男と女」という関係で、みなさい。ただの「男と女」です。

そういう視点でみると、意外と、道は見えてくるものです。「親だから許せない」
と、あなたが思っているとしたら、あなた自身も、たいへん権威主義的な
人ということになりますが、ちがうでしょうか。

こうした問題は、あせっているときは、どうにもならないものです。
やがて水が、低い場所を求めて流れていくように、その時機が
くれば、すんなりと解決するものです。

ですからここは、お母さんの相談役にはなっても、あなたがカリカリ
しないこと。カリカリしても、どうにもなりませんから……。

あなたはあなたで、親たちを反面教師としながら、自分の幸福をめざしなさい。
あとは、ここにも書いたように、時間が解決してくれます。時機がくれば、
そのとき、解決します。

いただいたメール、少し改変して、使用することを、お許しください。

では、今日は、これで失礼します。

はやし浩司

【付記】

●男の不倫

++++++++++++++++

夫が不倫をしたからといって、
それまでの過去を、すべて否定してよいものか?

結婚し、家庭を築き、子をもうけ、
子を育てた。

そのドラマまで、否定してよいものか?

夫が不倫をしたからといって、
裏切られたと思いはしかたないとしても、
復讐を考えてよいものか?

しかしそれこそ、自分の過去を否定することになる。

何度も人生があるなら、それもよし。
しかし一度しかない人生の、その過去を否定するとしたら、
それこそ、自分自身を否定することになるのでは?

++++++++++++++++

 セックス(性行為)を目的とした、不倫願望は、どんな男性にもある。それがない男性は、いな
い。もし不倫願望がないというのなら、その男性は、(男)として、健康ではないと考えてよい。

 男性にとって(射精)は、まさに、(排泄行為)の一部でしかない。

 が、その範囲を超えて、つまりセックスだけの関係から、人間と人間の関係になったとき、不
倫は不倫となる。

 ただ(思い)と、(行動)の間には、不倫にかぎらず、どんなばあいも、そこには(距離)があ
る。たとえば「若い女性とセックスをしてみたい」と思うのと、実際に、行動を起こすということと
の間には、距離がある。

 その距離の長い人を、自己規制力の強い人といい、そうでない人を、自己規制力の弱い人と
いう。

 その(距離)を長くするのが、その人の道徳観であり、倫理観である。それらが自己規範とな
って、その人を規制する。心理学の世界では、その規範を、内的規範と外的規範に分けて考
える。内的規範というのは、要するにその人の精神的な強靭(きょうじん)さをいう。外的規範と
いうのは、社会的地位や名誉をいう。

 しかし、こと、こうした本能に根ざす問題のばあい、外的規範というのは、恐ろしく無力でしか
ない。よい例が、学校の教師による、ハレンチ事件である。「先生だから……」という『ダカラ
論』ほど、こういうケースのばあい、アテにならないものはない。

 かく言う私は、(私を、平均的な男とみてよいかどうかという点については、疑問に思う人もい
るかもしれないが)、ごく平均的な男である。しかしそんな私でも、心の奥底では、いつも異性で
ある女性を意識している。セックス(性行為)を目的とした、不倫願望となると、いつでもある。
四六時中、ある。

 本能の力、つまりフロイト流の言い方を借りるなら、「イド」、性の力は、それほどまでに強力
である。生きる原動力にもなっている。もともと個人の理性や知性で、コントロールできるような
代物(しろもの)ではない。

 だから不倫を避けるためには、確固たる価値観をつくりあげ、それを道徳観や倫理観で、自
分を補強するしかない。が、それとて、たいへんなこと。簡単ではない。それこそ信仰者がする
ような、きびしい修行をしなければならない。……と書いていくと、絶望的にならざるをえない。
言いかえると、一夫一妻制そのものが、人間が動物としてもっている本能に、そぐわないので
はないか。話がそこまで飛躍してしまう。

 つまり一生の間、同一の配偶者を愛し、その配偶者だけと性生活を営み、それで満足しろと
いうほうが、無理なのかもしれない。恋愛感情にしても、最近では、それは脳内ホルモン(フェ
ニルエチルアミン)によるものという説が有力になっている※。しかも賞味期間というのがあっ
て、長くても、3〜4年ということだそうだ。

 わかりやすく言えば、どんな恋愛でも、そのままでは、3〜4年もすれば、火は消えるというこ
と。 

 さて、YYさんの話に戻るが、YYさんは、女性ということもあって、母親の立場だけでものを考
えている。そんなきらいが、ないわけではない。が、私は男だから、少しだけ、ちがった見方を
する。YYさんの父親が、「誰にも迷惑はかけていない。これは俺の楽しみだからやめる気はな
い」と言ったことについては、身勝手な論理だと思う。そこまでは、納得できる。

 しかしそれをもって、「裏切られた」とか、「復讐する」とかいうことになると、それはどうかと思
う。言いかえると、配偶者に対する忠誠心というのは、あくまでも双方向的なものである。YYさ
んの父親は、不倫という形で、YYさんの母親を裏切ったことにはなる。が、では、YYさんの母
親は、YYさんの父親に対して、それを責めるだけに足りる忠誠心があったかどうかということ
になると、それは疑わしい。

 「私は良妻だ」と思っている女性にほど、悪妻が、多い。「私は夫を愛している」と公言する女
性ほど、自分のエゴのために、夫を利用しているケースが多い。もちろんYYさんの母親がそう
であると言っているのではない。しかし「復讐」という言葉を使うこと自体、そもそもその基盤
に、(愛情)がなかったのではないか。あるいはとっくの昔に、夫婦関係は破綻していたのかも
しれない。

 そのため、YYさんの父親は、その愛情飢餓という砂漠から抜け出るため、別の女性に救い
を求めたのかもしれない。話がわかりにくくなってしまったが、要するに、YYさんの父親にも、
それなりの言い分というものがあるのかもしれないということ。その言い分に耳を傾けてやるの
も、こういうケースでは、必要なことではないのか。

 で、それに納得できなければ、「復讐」ということは考えず、さっさと、年金を等分して、離婚す
ればよい。復讐のため離婚するとしたら、YYさんは、残り少ない自身の人生を、自ら、汚(け
が)すことになる。つまりそれこそ、結婚生活全体、ひいては、人生の大半を、自ら否定するこ
とになる。

 夫婦として、楽しかった思い出まで、否定してしまうのか? 家族として、楽しかった思い出ま
で、否定してしまうのか? 結婚し、家庭を築き、子をもうけ、その子を育てたという過去まで否
定してしまうのか? もしそうなら、それこそ、自己否定につながってしまう。

 「私の人生は、まちがっていた」と。復讐を考えるということは、そういうことになる。

 しかし、それはおかしい。日本人は、仏教(チベット密教)の影響を強く受けているから、「結
果」だけをみて、すべてを判断する傾向が強い。しかし大切なのは、結果ではない。そこにいた
るプロセスである。

 私は多くの不倫劇、そしてそれにつづく離婚劇を見聞きしてきた。が、最近では、「それもドラ
マ」と、納得できるようになった。不倫が悪いとか、離婚が悪いとか、頭から決めてかかっては
いけない。もっと言えば、もともと(男)と(女)の関係は、そういうもの。最近の私は、そう割り切
ることができるようになった。

 だからこそ、夫婦というのは、夫婦である過程で、それなりに何かを積み重ねていかなけれ
ばならない。(男)と(女)という関係を、超えて、(人間)と(人間)という関係で、つねに、何かを
積み重ねていかねばならない。決して、安住の地に、満足してはいけない。そうでないと、夫婦
の関係といっても、こわれるときには、もろくも、こわれる。

 もっとわかりやすく言えば、夫婦の価値というのは、その歴史の長さと、深さで決まる。

 その歴史があれば、仮に不倫願望があったとしても、配偶者への背信行為におのおいて、そ
れができなくなる。自分に恥じて、それができなくなる。

 またそうした人間関係があれば、ひょっとしたら、配偶者の不倫に対しても、もう少し、別の考
え方ができるのではないか。

「夫がそれで本当に幸福になれるというのなら、私は愛する夫のために、妻の座をおります」
と。それは決して、不可能なことではない。

あの文豪なる人物が言った、「ええじゃねえか」「ええじゃねえか」という言葉の中に、私は、そう
いった、つまりは極限にまで昇華された夫婦の関係をみるが、あなたはどうだろうか。

【注】この「男の不倫」は、ボツ原稿にしようかと迷いましたが、このまま収録、掲載します。実に
まわりくどく、意味のない原稿です。支離滅裂。文もヘタクソです。これが他人の原稿で、採点
を頼まれたら、(ABC評価)で、まちがいなく、Cをつける原稿です。お許しください。今は、この
ままにしておき、近く、もう一度あとで、推敲してみます。

 
Hiroshi Hayashi+++++++++Sep 06+++++++++++はやし浩司

【注※】

●恋愛の寿命

+++++++++++++++++

心ときめかす、恋心。しかしその恋心
にも、寿命がある。

+++++++++++++++++

 その人のことを思うと、心がときめく。すべてが華やいで見える。体まで宙に浮いたようになる
……。恋をすると、人は、そうなる。

 こうした現象は、脳内で分泌される、フェニルエチルアミンという物質の作用によるものだとい
うことが、最近の研究で、わかってきた。恋をしたときに感ずる、あの身を焦がすような甘い陶
酔感は、そのフェニルエチルアミンの作用によるもの、というのだ。

その陶酔感は、麻薬を得たときの陶酔感に似ているという人もいる。(私自身は、もちろん、麻
薬の作用がどういうものか、知らない。)しかしこのフェニルエチルアミン効果の寿命は、それ
ほど長くはない。短い。

 ふつう脳内で何らかの物質が分泌されると、フィードバックといって、しばらくすると今度は、
それを打ち消す物質によって、その効果は、打ち消される。この打ち消す物質が分泌されるか
らこそ、脳の中は、しばらくすると、再び、カラの状態になる。体が、その物質に慣れてしまった
ら、つぎから、その物質が分泌されても、その効果が、なくなってしまうからである。

しかしフェニルエチルアミンは、それが分泌されても、それを打ち消す物質は、分泌されない。
脳内に残ったままの状態になる。こうしてフェニルエチルアミン効果は、比較的長くつづくことに
なる。が、いつまでも、つづくというわけではない。やがて脳のほうが、それに慣れてしまう。

 つまりフェニルエチルアミン効果は、「比較的長くつづく」といっても、限度がある。もって、3年
とか4年。あるいはそれ以下。当初の恋愛の度合にもよる。「死んでも悔いはない」というよう
な、猛烈な恋愛であれば、4年くらい(?)。適当に、好きになったというような恋愛であれば、半
年くらい(?)。

 その3年から4年が、恋愛の寿命ということにもなる。言いかえると、どんな熱烈な恋愛をして
も、3年から4年もすると、心のときめきも消え、あれほど華やいで見えた世界も、やがて色あ
せて見えるようになる。もちろん、ウキウキした気分も消える。

 ……と考えると、では、結婚生活も、4年程度が限度かというと、それは正しくない。恋愛と、
結婚生活は、別。その4年の間に、その2人は、熱烈な恋愛を繰りかえし、つぎのステップへ進
むための、心の準備を始める。

 それが出産であり、育児ということになる。一連のこうした変化をとおして、今度は、別の新し
い人間関係をつくりあげていく。それが結婚生活へとつながっていく。

 が、中には、そのフェニルエチルアミン効果による、甘い陶酔感が忘れられず、繰りかえし、
恋愛関係を結ぶ人もいる。たとえばそれが原因かどうかは別にして、よく4〜5年ごとに、離
婚、再婚を繰りかえす人がいる。

 そういう人は、相手をかえることによって、そのつど甘い陶酔感を楽しんでいるのかもしれな
い。

 ただここで注意しなければならないのは、このフェニルエチルアミンには、先にも書いたよう
に麻薬性があるということ。繰りかえせば繰りかえすほど、その効果は鈍麻し、ますますはげし
い刺激を求めるようになる。

 男と女の関係について言うなら、ますますはげしい恋愛をもとめて、さ迷い歩くということにも
なりかねない。あるいは、体がそれに慣れるまでの期間が、より短くなる。はじめての恋のとき
は、フェニルエチルアミン効果が、4年間、つづいたとしても、2度目の恋のときは、1年間。3
度目の恋のときは、数か月……というようになる。

 まあ、そんなわけで、恋愛は、ふつうは、若いときの一時期だけで、じゅうぶん。しかも、はげ
しければはげしいほど、よい。二度も、三度も、恋愛を経験する必要はない。回を重ねれ重ね
るほど、恋も色あせてくる。

が、中には、「死ぬまで恋を繰りかえしたい」と言う人もいるが、そういう人は、このフェニルエチ
ルアミン中毒にかかっている人とも考えられる。あるいはフェニルエチルアミンという麻薬様の
物質の虜(とりこ)になっているだけ。

 このことを私のワイフに説明すると、ワイフは、こう言った。

 「私なんか、半年くらいで、フェニルエチルアミン効果は消えたわ」と。私はそれを横で聞きな
がら、「フ〜ン、そんなものか」と思った。さて、みなさんは、どうか?
(はやし浩司 恋愛 恋愛の寿命 フェニルエチルアミン ドーパミン効果 麻薬性)

+++++++++++++++++++

 つまり、恋愛にも寿命があるということ。今風に言えば、賞味期限があるということ。しかもそ
れを繰りかえせば繰りかえすほど、賞味期間は、短くなる。

 だから……というわけでもないが、不倫は不倫として、あるいは浮気は浮気として、さらにそ
れから恋愛感情が生まれたとしても、決して、急いで結論を出してはいけない。どうせ、冷め
る。時間がくれば、冷める。人間の脳ミソというのは、もともと、そうできている。

 知人のケースでいうなら、こうした不倫は、静かに見守るしかない。へたに反対すれば、恋心
というのは、かえって燃えあがってしまう。しかし時間がくれば、冷める。長くても、それは4年以
内。だから私は、こう言った。「放っておけばいい。そのうち、熱も冷める。バレたときは、奥さ
んにぶん殴られればいい。それですむ」と。

 しかし不倫や浮気ができる人は、それなりに幸福な人かもしれない。いや、不幸な人なのか
もしれない。よくわからないが、私の知らない世界を、そういう人たちは、知っている。ただこう
いうことは言える。

 「真剣にその人を愛してしまい、命がけということになったら、それは、もう、不倫でも、浮気で
もない」と。夫や妻の間で、それこそ死ぬほどの苦しみを味わうことになるかもしれないが、そ
のときは、そうした恋愛を、だれも責めることはできない。人間が人間であるがゆえの、恋愛と
いうことになる。

 どうせ不倫や浮気をするなら、そういう不倫や浮気をすればよい。そうでないなら、夫婦の信
頼関係を守るためにも、不倫や浮気など、しないほうがよい。いわんやセックスだけの関係ほ
ど、味気なく、つまらないものはない。(……と思う。)それで得るものより、失うもののほうが、
はるかに多い。(……と思う。)

 いらぬお節介だが……。

 昔、別の、直木賞も取ったことのある、ある作家は、私が、東京の築地にある、がんセンター
を見舞うと、こう話してくれた。

 「所詮、性(セックス)なんて、無だよ」と。私も、そう思う。しかしその「無」にどうして人は、こう
まで振り回されるのだろう。








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【6】

【アスペルガー障害】

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症状から、明らかに「アスペルガー障害」と
思われる子どもについての相談があった。

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【はやし浩司より、GN先生へ】

GN先生へ

拝復

 お手紙、ありがとうございました。相談のあった子どもを、以下、T君(男児)としておきます。

 私はドクターではありませんので、子どもを診断することはできませんが、症状からすると、T
君は、アスペルガー障害(アスペルガー症候群)と、活発型自閉症の複合したタイプと考えてよ
いのではないでしょうか。それが基本にあって、不適切な家庭環境と指導で、症状がこじれてし
まっている。私は、そう判断しました。

 以下、アスペルガーついて、いくつかの文献から、資料をあげてみます。


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●文献より

【臨床心理学・稲富正治・日本文芸社】

 自閉性障害の中でも、言葉や、記憶の発達に遅れがないケースを、「アスペルガー障害」と
呼ぶ。

 対人関係の障害と興味や活動が限定されているという点が、特徴である。

 高機能自閉症とともに、高機能広汎性発達障害に含まれる。

 圧倒的に男児に多く、知能は平均以上であるものの、コミュニケーションがうまく取れなかっ
たり、不器用であるため、孤立しやすくなる。

 計算や文字、地図など限定されたものに対して、異常なほどの関心を示し、その中で独創性
を発揮する人もいる。が、自分が守っている範囲に、他人が侵入してきたり、乱されたりするこ
とに対して、著しく、攻撃的になる。

 原因は、中枢神経の障害であると言われているが、まだ解明されたわけではない。遺伝の要
素も強く、パーソナリティ障害や情緒障害と診断されるケースもあるため、診断には最新の注
意が必要。

 最近では、対人関係のトラブルをどのように解決するかを意識的にトレーニングする、行動
療法などの治療法がある。


【発達心理学・山下富美代・ナツメ社】

 アスペルガー障害は、言語発達に遅れがみられないほか、知能も高い水準を維持していると
いわれる。しかし自閉症と同様に、相互的な対人関係の障害がみられること、ある特定のもの
に対する関心の程度が高すぎることなどが特徴である。

 また自閉症とともに、男の子に多い障害でもあり、医学的な治癒は難しいとされている。

 特徴としては、(1)正常な対人関係をもつことは困難、(2)特定のものに対する、こだわり、
興味の偏(かたよ)りがみられる。(3)言語障害はみられない。


【心理学用語・渋谷昌三・かんき出版】

 ……ウィングは、自閉症には、3つの特徴があると説明している。

(1)社会性の問題

 自分の体験と他人の体験が重なりあわない。(他人がさっと顔色を変え、怒った表情をすれ
ば、自分が悪いことをその人に言ったのではないかと思うが、自閉症の人は、こうした他人の
感情を推し量るのが、非常に苦手。)

(2)コミュニケーションの問題

 言葉の遅れから、双方のコミュニケーションが、うまくとれない。(声の大きさや、イントネーシ
ョンの調整が苦手、自分の意見を言うとき、どのように言うべきかを迷う。)

(3)想像力の遅れ

 1つの対象に、異常なほど興味を示す。特定の儀式にこだわる。

 これらの特徴のうち、コミュニケーションの障害が、非常に軽いものを、「アスペルガー症候
群」と呼ぶ。軽い遅れというのは、冗談が通じにくい、比喩を使った表現が理解しにくいことをい
う。

 すなわち、アスペルガー症候群は、言語発達の遅れが目立たず、知的には正常だが、生ま
れつき社会性の障害と、こだわり行動をもっている自閉症を指す。


【臨床心理学・松原達哉・ナツメ社】

 アスペルガー障害は、乳児期後半から特徴が出始め、6〜7歳に顕著になる。ほとんど男児
のみにみられる障害である。

 言語的な発達には遅滞はないが、言葉は単調で、抑揚がないという特徴がある。言語や容
貌に子どもらしさがなく、コミュニケーションがとれず、集団の中では孤立することが多い。

 特定の対象、数字・文字・地図・貨幣などに興味を示し、独創性もあり、知能は平均以上と推
定される。しかし自己の領域を侵されると、パニックを起こし、攻撃的になる。また、多くの全体
的な知能は正常だが、著しく、不器用であることが多い。

 青年期から成人期へ、症状が持続する傾向が強いが、統合失調症(精神分裂病)の診断基
準は満たさないので、成人後も、精神分裂病にはならないといわれている。

 治療法は、その子どもの特性を理解し、それに合った、治療・教育をすれば、じゅうぶん社会
に適応できるようになる。大切なことは、病態に対する周辺の理解であり、治療においても、社
会福祉的な領域が重要になる。

 ……アスペルガー症状は、自閉症と類似しており、自閉症の軽度の例にもみえるため、それ
ぞれの診断は困難である。

症状の例として、本人のやっていることを中断させると、突然、怒り出すなどがある。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 アス
ペルガー アスペルガー障害 アスペルガー症候群 アスペルガー症)

++++++++++++++++ 

●親自身の問題

 こうした事例で、まず注意しなくてはいけないのは、親自身が、すべてを話しているかどうかと
いうことです。つまりほとんどの親は、自分に都合の悪いこと、たとえば不適切な対処法で、子
どもの症状を、かえってこじらせてしまったようなことについては、話しません。

 無意識のうちに、こじらせてしまうというケースもありますが……。

 T君について言えば、乳幼児期から多動性があったということですが、この段階で、母親が、
かなりきびしく叱ったり、怒ったり、あるいは体罰としての暴力を振るったことも、じゅうぶん、考
えられます。

 T君にみられる、一連の不安症状、さらには、基本的な不信関係は、そういうところから発生
したと考えられます。母親からの報告内容にしても、まるで他人ごとのような観察記録といった
感じで、私はそれを読ませてもらったとき、「?」と思いました。あたかも、「うちの子は、生まれ
つきそうで、それは、私の責任ではない」と言わんばかりの内容ですね。

 で、私の経験を話します。

●私の経験より

【U君(小3児)のケース】

 U君を最初に預かったのは、まだ、「アスペルガー症候群」という言葉が、ほとんど知られてい
ないころでした。1990年代の中ごろです。(1944年に、オーストリアの小児科医のアスペル
ガーが、その名前の由来とされていますが、日本でこの名称が使われ始めたのは、90年代に
入ってからです。)

 最初、自閉症かなと思いましたが、知的能力の遅れはなく、言語障害も、みられませんでし
た。が、いくつかのきわだった特徴がみられました。

(1)ほかの子どもと仲間になれない

 そのあと、U君が小学校を卒業するまで、私が週2回指導しましたが、最後の最後まで、結局
は、友だちができませんでした。いつも集団から1歩、退いているといった感じで、軽い回避性
障害もありました。集団の中へ入ると、心身が緊張状態になってしまうからです。

(2)ずば抜けた算数の力

 計算力はもちろん、算数全般について、ずば抜けた能力を示しました。知的能力は、平均児
より高かったのですが、最後まで、乱筆には、悩まされました。文字を書かせても、メチャメチ
ャでした。こうした不器用さは、アスペルガー障害の子どもに、共通しています。こまかい作業
が苦手で、それをさせると、混乱状態から、突然、キレた状態になることもあります。

(3)極端な自己閉鎖性

 U君のばあいは、まちがいを指摘しただけで、突然、キレて、激怒することもありました。(軽
いばあいは、顔をひきつらせて、大粒の涙だけを流す、など。)たとえば計算問題などで、まち
がいを見つけ、「やりなおしなさい」と指示しただけで、キレてしまう、など。

(キレないときもありましたが、あとでノートを見ると、エンピツで、きわめて乱暴に、それを塗り
つぶしてあったりしました。)

 こうした特徴を総合すると、U君には、心の持続的な緊張感、特別なものへのこだわり、自己
閉鎖性があったことになります。

 幸いなことに、U君のケースでは、母親が、たいへん穏やかで、心のやさしい人でした。です
からそれ以上、心がゆがむということは、U君のばあいは、ありませんでした。私は、当時は、
「U君は、ほかの子どもとはちがう」と判断し、U君はU君として、指導しました。

●治療は考えない

 こういうケースで重要なのは、アスペルガー症候群にかぎらず、子どもの心の問題に関する
ことは、「治そう」とか、「直そう」と思わないことです。

 「あるがままを認め」、「現在の状態を、今より悪くしないことだけを考えながら」、「半年、ある
いは1年単位で、様子をみる」です。

 で、相談をいただきましたT君にケースですが、全体に、周囲の人たちが、「治そう」とか、「直
そう」とか、そういう視点でしかT君をみていないのが、気になります。「少しよくなれば、すぐ無
理をする」。その結果、症状を再発させたり、悪化させたりしている。あとは、その繰りかえし。
そんな感じがします。

 U君のケースのほか、兄と弟でアスペルガー障害のケースなど、「アスペルガー」という言葉
がポピュラーになってから、(2000年以後ですが……)、私は、4例ほど、子どもを指導してき
ました。

 (最近は、体力の限界を感ずることが多く、指導を断るケースが、多くなりました。)

 その結果ですが、アスペルガー障害そのものの(治癒)は、たいへんむずかしいということで
す。そのかわり、小学3、4年生ごろから、自己意識が急速に育ってきますから、それを利用
し、子ども自らに自己管理させることで、見た目には、症状を落ち着かせるということはできま
す。

 子ども自身が、自分で自分を管理できるように、指導していくわけです。

 しかしこれも、1年単位の根気と、努力が必要です。とくに指導する側は、その生意気な態度
のため、カッとなることもあります。たとえばU君のばあいでも、私がまちがいを指摘しただけ
で、私に向かってものを投げつけてきたことがあります。あるいは、ぞんざいな態度で、「ウル
セー」と、言い返してきたこともあります。

 そういうとき、ふと、その子どもが、アスペルガー障害であることを忘れ、「何だ、その態度
は!」と叱ってしまうこともありました。「根気が必要だ」というのは、そういう意味です。

 先生からいただいた報告の中に、担任の教師が、かなり乱暴な指導をしたという記録が書い
てありますが、それもその一例と考えてよいのではないでしょうか。記録だけを読むと、担任の
教師が悪いように思われますが、このタイプの子どもの指導のむずかしさは、ここにあります。

子どもがキレた状態になったとき、きわめて生意気な様子をしてみせるからです。ふつうの態
度ではありません。おとなを、なめ切ったような態度です。

●親側の問題

 で、先にも書きましたが、現在、T君と母親の関係についても、考えなければなりません。親と
いうのは、こういうケースでは、自分に都合の悪いことは、話しません。そういう母親がよく使う
言葉が、先にも書きましたが、「生まれつき」という言葉です。

 「うちの子は、生まれつき、こうです」と。

 子どもの症状を悪化させながら、その意識も、自覚もない。もっとも、だからといって、親を責
めてもいけません。親は親で、そのときどきにおいて、懸命に子育てをしているからです。懸命
にしている中で、客観的に自分を見る目を失ってしまう。よい例が、不登校児です。

 子どもが「学校へ行きたくない」などとでも言おうなら、その時点で、たいていの親はパニック
状態になり、子どもを、はげしく叱ったり、暴力的に学校へ行かせようとします。この無理が、症
状を悪化させてしまいます。

 たった一度の一撃でも、子どもの心が大きくゆがむということは、珍しくありません。

 で、その時点で、親が冷静になり、「そうね。どうして行きたくないのかな? 気分が悪けれ
ば、無理をしなくていいのよ」と親が言ってやれば、不登校は不登校でも、それほど長期化しな
くてすんだかもしれません。そういうケースも、私は、やはり何十例と経験してきました。

●年単位の観察を

 先生からいただいた報告書を読むかぎり、親も、担任の教師も、みな、少しせっかちすぎる
のではないかと思います。先にも書きましたが、この問題だけは、1年単位、2年単位で、症状
の推移をみていかなければなりません。

 「先月より今月はよくなった」ということは、本来、ありえないのです。ですから週単位、月単位
の変化を記録しても、意味はありません。またそうした変化に一喜一憂したところで、これまた
意味がありません。もう少し、長いスパンで、ものを考える必要があります。

 簡単に言えば、現在のT君を、あるがままに認め、そういう子どもであるということに納得し、
(もっとわかりやすく言えば、あきらめて)、対処するしかありません。T君は、給食におおきなわ
だかまりをもっているようですが、そういう子どもと、先に認めてしまうのです。

 それを何とか、食べさせようと、みなが無理をする。それが症状をして、一進一退の状態にし
てしまう。あるいはときに、もとの木阿弥にしてしまう。

 ……といっても、年齢的に、小4ということですから、症状は、すでにこじれにこじれてしまって
いると考えられます。本来なら、乳幼児期にそれに気づき、その時点で、親がそれに納得し、
指導を開始するのが望ましいのですが、報告書を読むかぎり、そういった記録がありません。

 ご指摘のように、T君の親は、学校側の指導法ばかりを問題にしているようですね。しかし、
これでは、いけない。本来なら、専門のドクターに、しっかりとした診断名をくだしてもらい、そう
であると親自身が納得しなければなりません。

 で、指導する側の私たちとしては、「知って、知らぬフリ」をして指導するわけです。私が指導
してきた子どもたちにしても、現在、指導している子どもたちにしても、私は、「知らぬフリ」をし
て、指導してきました。今もそうしています。もちろん私のほうから、診断名をくだすということ
は、絶対に、ありえません。またしてはなりません。

 が、親のほうから、たとえば「アスペルガー」という言葉が出てきたときは、話は別です。その
ときはそのときで、「アスペルガー」という言葉を前面に出し、指導します。しかしそれまでは、
知らぬフリ、です。

 ただ「そうでない」という判断はくだすことがあります。自閉症の子どもではないかと心配して
きた親に対して、「自閉症ではないと思います」というように、です。そういうことは、しばしばあり
ます。

●親の無知

 で、やはり、ここは親に、それをわかってもらうという方法をとるしかありません。しかしこれ
も、むずかしいですね。

 最近でも、明らかにADHD児の子ども(小5)がいました。で、それとなく親に聞いてみたので
すが、親は、まったく自分の子どもがそうであることさえ疑っていないのを知り、がく然としたこと
があります。「うちの子は、活発な面はあるが、ふつうだ」と。

 つまり親の無知、無理解をどう克服するかという問題も、生まれてきます。アスペルガー障害
であれば、なおさらでしょう。幼児教育の世界でも、この言葉がポピュラーになったのは、ここ
5、6年のことですから……。

 以上、私の独断で、T君を判断してしまいましたが、まちがっていることもじゅうぶん、考えら
れます。一番よいのは、私自身が、T君を直接観察してみることです。また機会があれば、そっ
と遠くから観察してみてもよいです。ご一考ください。

 あまりよい返事になっていませんが、さらに最近の研究では、環境ホルモンによる脳の微細
障害説を唱える学者もいます。アスペルガー障害にかぎらず、このところ、どこか「?」な子ども
がふえているのは、そのためだ、と。

 あくまでも、参考的意見として、お読みいただければうれしいです。

 では、今日は、これで失礼します。

 長々とすみませでした。相談いただいたことをたいへん光栄に思い、感謝しています。ありが
とうございました。


敬具


                                はやし浩司

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 アス
ペルガー アスペルガー障害 アスペルガー症候群 アスペルガーの子ども)










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【7】

●ガールフレンドの妊娠、出産

●掲示板への相談より

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9月3日、日曜日。長旅から帰ってみると、
掲示板に、2件の書き込みがありました。

今すぐ返事を書きたかったのですが、今日は疲れました。
そのため相談だけをここに、紹介させていただきます。

Nさん、しんさん、どうか、勝手をお許しください。
(9月3日記)

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【Nさんより、はやし浩司へ】

5月と7月に、大1の息子のことで相談させていただきましたNです。
たびたび書き込みをして、申し訳ございません。

今朝、息子の元彼女の母親から、電話ありました。
主人が出ました。 

「(息子の)赤ん坊は生まれました。息子さんと連絡つかないので、その旨、伝えてください」と
いう内容でした。主人は、「そうですか」しか、答えなかったそうです。

息子にそのことを伝え、どうするのか聞きました。息子はもうすでにそのことを知っていました。
が、息子の返事は、「まだ考えてないので、考えたら連絡する」でした。

先生のおっしゃる通り、今まで静観してきました。が、今回の電話では、とくに要求はありませ
んでした。

息子はまるで人ごとのようです。私も主人も、妊娠6か月まになるまで、何も知らせてくれなか
った、元彼女と両親に対して、憤慨しています。が、その一方で、息子には責任をとってもらい
たいという気持ちもあります。

主人はまだ、静観しようと言います。 それでいいのでしょうか?!

9月からも、大学に行くかどうかさえ分からない息子。
なのに、車の免許をとったので、車買う!とまで言う、無責任な息子。
まだまだ、こうした状態を受け入れ、口にチャックをし、水が流れように、今の状態を見守った
ほうがいいのでしょうか?!

(まだ私は、子離れできていませんね。しかし人が一人、この世に生まれてきたのです。息子
のように、安易でいいとは、どうしても思えないのです。)
何度も何度もお許しください。


【しんさんより、はやし浩司へ】

長男、高校2年の息子のことで、ご相談させていただきます。

家族構成は、夫48歳、(自分)44歳、長女高校3年、長男です。夫の両親共に、74歳。6人
家族です。KN県在住。

長男は公立中学校を卒業した後、東京都内の、農学部のある大学の付属高校へ通っていま
す。

小さいころから、生き物など大好きで、中学に入ってからは、果樹や熱帯果樹に興味をもち、
今では狭い庭ですが、季節ごとに色々な果樹が実りを見せてくれます。

中学のときの成績は中の上で、進路を決めた高校も、長男の学力に見合った学校と思ってい
ました。推薦入試ののち、一般入試で受けた、難関クラスへ入学しました。

(難関クラスというのは、長男が入学する年にできた、国公立大や有名大をめざすクラスのこと
です。)

部活はハンドボール部に入部しました。親としては小柄で、痩せていて、体力がなく、通学にも
1時間半かかるので、賛成できない気持ちもありましたが、本人の強い意志に任せました。

ところが高1年の3学期ごろから、気持ち悪い、頭痛を訴えるようになりました。中学のころか
らの慢性じんましん症状を訴えていましたが、そんなわけで、通学途中、何度となく電車を途中
下車して、引き返してくることがありました。

高校1年の2学期ころから、集中力がない自分に気づいたようです。あとはあせればあせるほ
ど、勉強が手につかなくなる。そういう状態でした。

成績も下がりはじめ、2年の1学期に、さらに成績は落ちていきました。

そして2年の1学期の成績で赤点2つ。夏休み直前に担任と面談しました。このとき、この先、
自分はどうするかを考えて報告するという約束を、学校側にしました。が、その結果、7月末
に、息子は、担任へ、「退学」を宣言してしまいました。私には「部活も友達もいいから、(いらな
いから)、学校を辞めたい」と言いました。

(難関コースから進学コースへの変更はできないとのことです。)

私からみても自信がなさそうで、ただ時間に追われている長男に気づいたのは、春休みぐらい
のことでした。膨大な量の宿題もはかどらず、部活に追われていました。でも心の内は話しても
くれませんでした。私はただ漠然と悩み、さらに日々、一方的な『あらねば論』、つまり「あなた
はこうあるべきだ」というようなことを、長男に言いつづけていました。

2年の1学期期末テストが終わったぐらいから、行動も投げやりになり、何とか、かろうじて生き
抜いているといった状態でした。そういう中、ネットで調べて、(はやし浩司のHPにたどりつ
き)、やっと親の過干渉や抑圧と、度を越した勉強管理で、息子が自立できないで、苦しんでい
ることが判りました。

私はカウンセリングをうけたあと、長男に対して、すべての話しかけは辞めています。そのため
息子の表情は、少し柔らかくなり、機嫌のいい時は、息子のほうから話をしてくれます。

が、夏休み中、学校からの転校の提案がありました。「東京都内では可能だが、神奈川では無
理」ということでした。それで、9月から不登校をつづけています。

自立しなくてはいけない子どもに、余計な働きかけをしてはいけないことは、承知しています。
が、私たち親も信じられず、学校は行けない後ろめたさとか、退学すると宣言しても、本心は学
校に行きたいなどの気持ちなど、このまま誰にも心を明かすことなく、息子が、孤独と戦ってい
かねばならないのかと思うと、どこかでカウンセリングを無理にでも受けたほうがいいのかとも
考えてしまいます。

今度のことで今までの自分がいかに子どもを信頼していなかったか気づき、ありのままの長男
を受け入れられる自信がでてきたのですが、自分だけが楽になっているように思い、こうして相
談させていただくことにしました。

よろしくお願いします。


【はやし浩司より、Nさん、しんさんへ】

 Nさんのやり場のない、怒りというか、不安というか、そういうものが、私にも、ひしひしと伝わ
ってきます。一日とて、心が晴れることもない。安心して、眠ることもできない。忘れようとすれ
ばするほど、こうした問題は、心の内側にペッタリと張りつき、気をふさぎます。それが私にも、
よくわかります。

 しんさんも、そうだろうと思います。「この先、うちの子はどうなるのだろう」という、心配と不
安。それらが、しんさんの心の中で、渦を巻いている。一日、一日が、機械じかけの責め具の
ように、胸を押しつぶす。それも、私には、よくわかります。

 他人の子どもなら、足で蹴飛ばして、「ハイ、さようなら」と言うこともできるかもしれません。
が、それができない。できないから、Nさんも、しんさんも、宿業と言えるような、大きなジレンマ
の中で、もがき、苦しんでしまうのです。

 しかしね、Nさん、しんさん、どこの家庭も、そしてどこの親子も、みな、同じような問題をかか
えているものですよ。外から見ると、みな、うまくやっているように見えますが、それはあくまで
も、外見。問題のない家庭などないし、問題のない親子など、ないのです。

 こうした問題が、家族の中で起こると、だれしも、「どうして、うちの子が……」「どうして、うち
の子だけが……」と思うものです。しかしこの種の話は、いまどき、珍しくも、何ともありません。
ゴマンどころか、ジューマン単位で、あります。

 一見、子どもの問題に見えますが、これは子どもの問題ではありません。要は、その運命
を、受け入れるかどうかという問題です。受け入れてしまえば、何でもないのです。

 Nさんについて言えば、「孫ができた」。それだけのことです。形にこだわることはないので
す。また家族に、形など、ありません。結婚して子どもができた直後に離婚……というケース
は、いくらでもあります。

またしんさんについて言えば、「高校を中退した」。それだけのことです。が、Nさんも、しんさん
も、「コース」にこだわっている。そのコースにこだわり、自分を、がんじがらめにしている。

 そして自分の心配や不安を妄想的にふくらませ、ああでもない、こうでもないと悩んでいる。

 アメリカなどでは、女子高校生の妊娠、出産など、まさに日常茶飯事ですよ。高校の中に託
児所があるほどですから。また同じくアメリカには、現在、ホームスクーラー、つまり学校へ行
かないで、自宅で学習している子どもが、推定で、200万人以上、いますよ。

 シングルマザーにしても、みな、たくましく、自分の子どもを育てています。あえて結婚という形
を選ばない、シングルマザーたちです。

 運命というのは、それを恐れたとき、悪魔となって、キバをむいて、あなたを襲ってきます。し
かしそれを笑えば、運命というのは、向こうから退散していきます。Nさんも、しんさんも、運命
を恐れるあまり、自分を見失ってしまっている。

 私には、そんな感じがします。

 で、どうでしょう。もうこの際ですから、自分の運命を、前向きに受け入れてしまっては……?
 何でもないことですよ。もっと言えば、私もあなたも、息子さんたちも、今、こうして元気で、こ
の地球の上で生きている。そこを原点にして考えれば、何でもないことですよ。

 ハハハと、「少し早いけど、孫ができちゃった」と、笑えばいいのです。
 ハハハと、「うちの子も、高校を中退しまして」と、笑えばいいのです。

 「もう一度、子育て、やってやるか」と、前向きに考えればいいのです。
 「何年後でもいい。そのうち専門学校で勉強したくなったら、勉強すればいい。今は、心を休
めるとき」と、前向きに考えればいいのです。

 だって、どうにもならないでしょ。いや、あなたがたが、何とかしようとあせればあせるほど、か
えって、ものごとは、(あくまでもあなたがたにとっての話ですが)、悪いほうへ、悪いほうへと、
進んでしまう。

 私も、自分の子育てをしながら、いろいろな問題にぶつかりました。実家の問題も、ありま
す。でもね、そのつど、そうした運命を受け入れることで、そうした問題を乗り越えることができ
ました。

 「さあ、来たければ来い」とね。そして、その分、私はこう思うようにしました。「お前たちの分ま
で、がんばってやる!」と。そう思ったとたん、気持ちがウソのように楽になったのを覚えていま
す。またそれがバネとなって、私に生きる活力を与えてくれました。

 以前、その女性についての原稿を書いたことがありますが、Nさんや、しんさんのかかえてい
る問題など、何でもないと言えるほど、深刻で不幸な境遇の人(女性、30歳くらい)がいまし
た。

 父親は、その女性が、3、4歳のとき、自殺。以後、養女として、親戚をたらい回しにされたあ
と、叔父に強姦され、家出。それが中学2年生のとき。そのあとは、お決まりの流転生活。非
行。妊娠、中絶。その繰りかえし。やっと現在の夫と結婚し、2人の子どもをもうけたが、そのこ
ろ、今度は、兄が自殺。おまけに下の子(8歳)が、重い病気に……。

 その女性は、「もう何がなんだか、わけがわからなくなりました」と手紙に書いていましたが、
そんな女性でも、今、懸命に生きていますよ。明るく、前向きに生きていますよ。「今、ここで幸
福を逃がしたら、私は、本当に不幸になってしまう」「幸いにも、夫は、私を愛してくれています」
「すばらしい家庭を築いています」と。

 Nさんについて言うなら、養育費の問題が出てきたら、そのときは、そのとき。それをバネにし
て、あなたはもう一度、人生にチャレンジすればいいのです。またしんさんについて言うなら、も
う学校など、あきらめなさい。

 何が、難関コースですか!! 笑わせるな!! そんな愚劣な高校なら、あなたのほうから、
蹴飛ばしてやりなさい。つまずいて、ころんでいく子どもに転校を勧めるような学校は、もう学校
ではありません。ただの訓練校。進学塾。バカを育てる、家畜の養育場。

 そういう学校に背を向ける、あなたの子どものほうが、よっぽど、正常です。わかりますか?
 ただしばらく、今までの後遺症が残り、ここ数年は、あなたの子どもは、宙ぶらりんの状態に
なるかもしれません。

 しかし大切なことは、あなたたちは、自分の子どもを最後の最後まで、信ずることです。だま
されても、だまされたフリをして、無視することです。わかりますか?

 あなたたちの子どもは、あなたたちの過干渉と、過関心で、心の中がズタズタにされている。
私があなたたちの子どもなら、「もう、いいかげんにしてくれ」と、叫ぶでしょうね。きっと……。う
るさくてしかたない……。何かをするたびに、ああでもない、こうでもないと、否定ばかりする。
たまらないでしょうね。きっと……。

 とくにNさんは、何かあるたびに、ものごとを悪いほうに、悪いほうに考えてしまう(?)。車の
運転免許を取ったら、だれだって、つぎに車をほしがうようになりますよ。どうしてそれが悪いこ
となのですか。親の価値観を、子どもに押しつけないこと。

 こうした身勝手さが、あなたと、あなたの子どもの間を遠ざけている。そういうことを、あなた
は考えたことがありますか? あなたは、いつも、自分のことしか、考えていない! あるいは
自分の不安や心配を、自分の息子にぶつけているだけ! 自分がしてきた、数々の、失敗
は、すべて棚にあげて、それを正面から見ようともしていない。それともあなたは、「私はすばら
しい母親だった」「すばらしい母親になるために、努力してきた」と、あなたは胸を張って、それ
を言えるとでもいうのでしょうか。

 あなたにして、あなたの子どもなのです。

 だから、もう運命を受け入れなさい。前にも書いたと思いますが、あなたの孫が生まれたので
す。今は、愛情は感じないかもしれませんが、会って、世話をするうちに、あなたの感情も変わ
ってくるはずです。もしあなたが心のどこかで、祖母としての、責任を感ずるならの、話しですが
……。

 毎回、きびしいことを書いていますが、これはあなた自身を救うためと、許してください。しか
しもしここであなたが、この問題から逃げるようなことがあれば、つまりあなたの息子に問題を
押しつけて逃げるようなことがあれば、あなたはあなたのままだということです。

 しかし運命を前向きに受け入れれば、あなたはこの時点を境に、もっとすばらしい世界をそこ
に見ることになります。あなたは、すばらしい女性になることができます。

 どうですか? それができますか? が、もしそれができないというのなら、もう私のような人
間に相談するのは、やめなさい。相談したところで、問題は、何も解決しませんよ。あなたはい
つまでも、ジクジクと悩みつづけるだけです。

 しんさんも、同じです。今、あなたの子どもは、自分の命をかけて、あなたに何かを教えようと
しているのです。それに謙虚に耳を傾ければよいのです。「あなたは苦しかったのね」と、で
す。

 いいですか、親が子どもを育てるのではありませんよ。子どもが、親を育てるのですよ。幾多
の山を越え、谷を越えるうちに、親が、子どもに育てられるのです。それに気づけば、あなたた
ちは、すばらしい親になれます。と、同時に、こうした問題は、笑い話となって、闇のかなたに消
えていくのです。

 あと一歩ですよ、みなさん! がんばってください! 


++++++++++++++++++++

話は変わりますが、運命について書いた
原稿を、一作、添付しておきます。

++++++++++++++++++++

●ある姉妹の運命

+++++++++++++++++

それぞれの人には、それぞれ、
クモの糸のように、無数の
人間関係がからんでいる。

そしてそのクモの糸にからまれている
うちに、その人の人生がどうあるべきかが
決まってくる。

それを「運命」というなら、運命は、
だれにでもある。

+++++++++++++++++

 運命というのは、それを受け入れた者には、喜びを与え、それを拒否する者には、苦痛と悲
しみを与える。運命というのは、それを前向きに構えた者には、笑顔を見せ、それに背を向け
たものには、キバをむく。

 大切なことは、どこでどう、その運命を受け入れ、どこでどう前向きに構えるかということ。…
…というほど大げさな問題ではないが、最近、こんなことがあった。ワイフの友人の問題だが、
それには、いろいろ考えさせられた。

それを話す前に、少し、説明しておきたいことがある。

子育ての世界には、「代償的過保護」という言葉がある。一見、過保護のように見えるが、過保
護ではない。過保護には、その背景に、深い親の愛情が見え隠れするが、代償的過保護に
は、それがない。

 子どもを自分の支配下において、子どもを自分の思いどおりにしたいというのが、代償的過
保護。つまりは、過保護もどきの過保護。もっと言えば、子どもを、親の心のすき間を埋めるた
めの、道具として利用する。よい例が、子どもの受験勉強に狂奔する親たち。「子どものため」
と言いながら、何も、子どものことなど、考えていない。自分の不安や心配を解消するために、
子どもをして、受験勉強にかりたてる。あるいは自分が果たせなかった夢や希望を、子どもを
通して達成するために、子どもを利用する。それが、「代償的過保護」。

 この代償的過保護になる親には、共通のパターンがある。

(1)心のすき間、つまり精神的未熟さ、情緒的不安定さがある。
(2)いつも満たされない欲求不満をかかえている。
(3)「産んでやった」「育ててやった」を口ぐせにしやすい。
(4)子どもの自立、独立を阻止しようとする。自分から離れていくのを許さない。
(5)ベタベタの親子関係をつくりやすい。子どもに依存心をもたせやすい。
(6)自己愛的傾向が強く、ものの考え方が、自己中心的で、人格の完成度が低い。
(7)独得の子ども観をもっている。

 最後の「独得の子ども観」というのは、親にベタベタ甘える子どもほど、いい子で、かわいい
子と考えやすいことをさす。そして、子どもを大切にするということは、子どもにいい思いや、楽
をさせることと誤解する。

 Aさん(60歳、女性)は、まさに、そんなタイプの母親だった。虚栄心が強く、世間体を、異常
なまでに、気にした。その上、自分勝手でわがまま。2人の娘がいたが、その娘たちとは、はや
くから絶縁状態。顔を合わせることもあったが、会うたびに、Aさんは、娘たちに、「親不孝者
め!」とか、「地獄へ落ちるぞ!」とか言って、娘たちをおどした。Aさんは夫とは、その5年ほど
前に、死別していた。

 が、不幸は突然やってきた。不幸といっても、Aさん自身のことではない。娘たちの不幸であ
る。ある朝、Aさんは、脳梗塞を起こして、倒れてしまった。幸い、症状が軽く、運動マヒは残ら
なかった。しかし人格が、変ってしまった。「母は、まるで別人のように、無表情で、怒りっぽくな
った」(妹)とのこと。しかしそれは同時に、娘たちの苦しみのはじまりだった。

 2人の娘は、たがいにけんかをした。「あんたが長女だから、めんどうみろ」「あんたのほう
が、母にかわいがってもらったのだから、あんたが、めんどうをみろ」と。

 結局、生活費は妹夫婦が負担して、姉のほうが、Aさんのめんどうをみることになった。暗黙
の了解ということだったが、娘たちは、自分の人生をのろった。とくに姉のほうが、その負担を
大きく感じた。

 姉は、毎週のように妹の家に来て、グチを言った。そのグチが、ときには、1時間以上もつづ
くことがあった。姉は、介護ノイローゼから、うつ病の一歩手前という状態ではなかったか。

 夜眠れない。朝早く、目がさめてしまう。耳鳴りがひどい。食欲がない。血圧があがった。腰
が痛い。頭痛がする。吐き気がする、などなど。

 そして母親のささいなことを取りあげて、ああでもない、こうでもないと不平、不満を並べた。
たとえば、インスタントラーメンが、台所のシンクの穴につまっていた。洗面所のお湯が流しっ
ぱなしになっていた。パンが、戸だなの中で、腐っていた。植木鉢の花が、枯れてしまった、な
ど。

 そしてあれこれ理由を並べて、妹が出すお金では、足りないと不満を言った。「往復するだけ
でも、20キロはある。ガソリン代が高い」と。

 妹のほうは、言われるまま、そのつど、2万円とか3万円とか、払っていた。が、それが当たり
前になると、今度は、「時間が取られる」「夫の仕事が手伝えなくなった」「旅行に行けなくなっ
た」と、妹に訴えた。

 母親はまだ、そのとき、65歳になっていなかった。一応、身の回りのことは、自分でできるの
で、介護の認定審査も受けられなかった。姉は、母親を、グループ・ホームへ入れたいと言っ
た。が、月々の費用だけで、13万円。プラス、小遣い。

 が、ここで、事件が起きた。母親が、姉に、それまでは自分で隠しもっていた、銀行の通帳と
印鑑を、渡した。見ると、そこには、1000万円近い金額があった。夫、つまり姉妹の父親の生
命保険金も、それに含まれていた。姉は、「私が預かる」と言って、その通帳と印鑑を、自分の
ところへもっていってしまった。が、このことは、妹には、話さなかった。

 しかし、それは、やがて妹の知るところとなった。母親が、妹のほうへ、電話をした。その通帳
と印鑑の話をした。妹は、即、姉に電話をして、金額をたしかめた。が、姉は、「見ていない」
「計算していない」「300万円くらいかな」と、とぼけた。

 とたん、妹は、姉への不信感をもつようになった。それまでは姉の健康に気をつかっていた。
母親のめんどうをみない自分に恥じて、姉の言うままに、お金を出していた。その妹は、私の
ワイフにこう言った。

 「母も母ですが、姉も姉です。私たち姉妹は、母のおもちゃのようなものでした。ウソのかたま
りというか、何が本当で、そうでないのか、わからない人でした。私たちは、母に、いいように操
られていただけです。そういう自分に気がついて、母とは絶縁しましたが、姉まで、ウソつきと
知って、もう何を信じていいのか、わからなくなりました」と。そして、こう言ったという。

 「しばらくしてから、私の心の中に、大きな変化が起きたのがわかりました。姉に対して、平気
でウソをつくようになってしまったということです。たとえば毎週のように私の家までやってきて、
グチを言っていましたが、それに対して、私と夫は、居留守を使うようになりました。息子たちに
も、口裏をあわせさせています。

 電話機をナンバーディスプレイにして、姉からの電話を受けないようにしました。携帯電話の
番号も変えました。姉には、携帯電話はもうやめたと話してあります。

 で、姉が来そうな日には、わざと何か用をつくって、家にはいないようにしています。以前の私
なら、それだけでも、罪の意識をもったでしょうが、今は、もう、ありません」と。

 こうした現象は、シャドウ論で説明できる。

 人はだれしもある程度の「仮面(ペルソナ)」をかぶる。仮面をかぶって生きている。よい例
が、ショッピングセンターの女性である。いつもにこやかな笑みを絶やさない。しかしそれは仮
面。

 で、その仮面を仮面と気づいている間は、問題ない。しかし中には、その仮面を脱ぎ忘れてし
まう人がいる。仮面を仮面とわからなくなってしまう。そして自分を、「善人」と錯覚してしまう。

 ここに書いた、Aさんが、そうではなかったか。妹は、こう言う。「私の母は、他人の前では、ま
るで牧師か何かのように振る舞います。しかしその他人の目の届かないところでは、他人の悪
口ばかり。他人の不幸が、何よりも楽しい、といった感じの話し方をします」と。

 が、やがて、2人の娘たちと疎遠になると、Aさんは、その娘たちにも、まるで牧師のような振
る舞いをするようになったという。で、あるとき、妹が、Aさんにこう言ったという。「母さん、私
に、そんな手を使っても、無駄ですよ。私は、母さんが、本当は、どんな人かよくわかっていま
すから」と。

 しかしもうそのときには、Aさんには、妹の言った言葉を理解する能力がなかった。仮面が、
仮面であるとさえわからなくなっていた。

 が、仮面をかぶればかぶるほど、自分の中の邪悪な部分を、心のどこかに閉じこめようとす
る。意識的にそうすることもあるし、無意識的にそうすることもある。そしてその邪悪な部分に
ついては、あえて「私ではない」と、言い切ったりする。

 その一例として、反動形成がある。牧師が、ことさらセックスや不倫の話を嫌ってみせたりす
るのが、それ。よい人間を演じつづけていると、その反動として、邪悪なものを、おおげさに遠
ざけようとする。

 が、問題は、ここで終わるわけではない。

 こうして仮面をかぶることにより、その邪悪な部分が、心の奥に閉じこめられる。しかしそこで
その邪悪な部分が消えるわけではない。その邪悪な部分が、その人のシャドウ(影)となって、
その人をウラから、操ることがある。

 が、それはそれ。その人の勝手。実は、親がこうしたシャドウをもつと、そのシャドウを、子ど
もが引きついでしまうことがある。そういう例は、たいへん、多い。Aさんのケースで言うなら、姉
が、Aさんのシャドウを引きついでしまったことになる。妹は、こう言う。

 「姉も、私も、あれほど母を嫌っていたのに、その姉が、母そっくりの人間になっていったのに
は、驚きました。もちろん姉は、それに気づいていません。今でも、『私は、母とはちがう』と思っ
ているようです。しかし一歩退いてみると、つまり私から見ると、母と姉は、一卵双生児のように
よく似ています」と。

 ここまで書いて、私は、2つの話をしなければならない。ひとつは、「運命論」。冒頭に書いた
のが、それ。もうひとつは、「代償的過保護論」。これはそのつぎに書いた。

 まず運命論についてだが、姉が、心安くなるためには、運命を受け入れるしかない。が、現
状では、姉は、その運命を拒絶している。だから、つぎからつぎへと、問題が起きてくる。もっと
もこれについては、私のワイフは、こう言う。

 「愛情の問題ではないかしら。その姉妹に、母親に対する愛情があれば、問題は、問題でな
くなってしまうはずよ」と。つまりその愛情が欠落しているから、母親の介護が重荷になるので
は、と。

 そこで、問題なのは、なぜ、その姉妹の愛情が消えてしまったかということ。その理由が、実
は、代償的過保護ということになる。Aさんは、もともと、娘たちを愛してはいなかった。口では、
「かわいがってやった」とよく言うそうだが、娘たちは、そうは思っていない。

 姉が結婚するときも、妹が結婚するときも、「スープが冷めない距離」を条件に出したという。
とくに妹のほうは、そのため、遠地に住む恋人と別れねばならなかったという。つまりAさんは、
姉妹の幸福よりも、自分の幸福を優先させた。それが長い時間をかけて、現在の親子関係
を、つくった。

私「今のままじゃあ、姉のほうも、たいへんだね」
ワ「要するに、2人とも、Aさん(母親)を、心の中では、うらんでいるのね」
私「そういうこと。が、うらめばうらむほど、母親のもつシャドウの呪縛のとりこになってしまう。ク
モの巣の糸にからまれるように、ね」
ワ「母親を嫌えば嫌うほど、母親のような人間になってしまうということ?」

私「そういうケースは、多いよ。本来なら、親子関係を清算するのがいいのだけれど、それはで
きないしね」
ワ「すべての原因は、Aさんにあるのよね。子育てそのものが、最初から、ゆがんでいた。Aさ
ん自身の生きザマにも、問題があったと思うわ」
私「ぼくも、そう思う。で、姉のほうもたいへんだろうけど、妹さんのほうは、これから先、もっと
たいへんだろうね。Aさんが死ぬまで、10年とか、20年も、この問題はつづくからね……」と。

 運命というのは、それを受け入れた者には、喜びを与え、それを拒否する者には、苦痛と悲
しみを与える。運命というのは、それを前向きに構えた者には、笑顔を見せ、それに背を向け
たものには、キバをむく。

++++++++++++++++++

【補記】

 ここに書いた、Aさんというのは、架空の母親です。もともと、この話は、私の義姉から聞いた
ものです。その話をワイフが私にしたので、さらに詳しくということで、私が義姉に会って、内容
をたしかめてきました。

 一部、その人とわからないようにするため、説明不足の点もありますが、それはお許しくださ
い。義姉から、「Aさんがだれか、ぜったいにわからないように書いてね」と、強くクギを刺されて
います。

 なお、本文の中で、「代償的過保護」「シャドウ」という言葉を使いましたが、それは義姉との
会話の中で、私が、義姉に説明した部分です。「そういうのを、代償的過保護というのですよ」と
か、「シャドウとかいうのですよ」とか。

 それについても、どこか説明不足なところもありますが、この原稿は、また日を改めて、書き
なおしてみたいと思います。

【付記】

 ウソをつく人に会うと、こちらまで、ウソをつくことに抵抗感がなくなってしまう。そしてさらにそ
の人と、長く会っていると、ウソをつくことが平気になってしまう。

 こうしてウソつきのまわりには、ウソをつく人ばかりが集まるようになる。そして一趣、独特の
世界をつくるようになる。

 だから、ウソをつく人とは、できるだけ早く、別れたほうがよい。距離をおいたほうがよい。で
ないと、自分の人間性まで、腐ってしまう。長い時間をかけて、そうなる。

 親や、兄弟、親類、縁者のばあいは、そうは簡単ではないかもしれない。そこで重要なこと
は、ウソにはウソで返すのではなく、そのつど、自分と戦う必要がある。心して、正直、誠実を
つらぬく。

 実は、ここに書いた妹さん自身も、すでに、姉のウソの呪縛の虜(とりこ)になりつつある。居
留守を使ったり、ナンバーディスプレイの電話にしたり、さらには、「携帯電話はもうやめた」と
ウソをつくことなど。息子たちに、口裏をあわせるように指示することによって、今度は、息子た
ちが、その呪縛の虜になってしまう可能性もある。

 このままでは、妹さんのほうも、やがて、Aさんのシャドウに巻きこまれてしまう。もちろん妹さ
んも、それに気づいていないが……。ユングが説いた、シャドウ論の本当のこわさは、ここにあ
る。
(はやし浩司 代償的過保護 親の育児姿勢 シャドウ シャドウ論 兄弟の確執 親子の確
執)







 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【8】

●荒れる子ども(子どものウソ)

++++++++++++++++++++

掲示板に、つぎのような相談が寄せられた。

友だちに乱暴する、ウソをつくなど、母親の
Nさんは、そういう子どもを、「どうしたら
いいか」と。

++++++++++++++++++++

【Nさんより、はやし浩司へ】

はじめまして。小1の男の子のことですが、この4月に小学校に入学してから、問題ばかり起こ
すようになりました。

4月は、授業妨害と教室から飛び出す。(言葉尻を捉えて、面白いことをいう。叱られたら、我
慢できない。)

5月は、特定の子を嫌って、言葉の暴力を浴びせかける。(その子に非はありません。)

6月は、いじめっ子に応戦する形で、暴力を振るう。(棒で応戦。)

7月は、架空の話を作り上げ、特定の子供を犯人扱いする。(そのことは何のつながりもありま
せん。)

9月は、授業妨害。また作り話をして特定の子を犯人扱いする。自分で傘を壊しておきながら、
嘘の出来ごとをでっちあげる。

入学してから、チックを指摘されたので、余程、抑圧されているのかと思い、厳しく叱らず諭す
形で接してきましたが、嘘をつくようになってからは、相当厳しく叱るようになり、それがアダに
なったのか、嘘の頻度が増してしまいました。

チックは軽くなっています。

対処のしようがなく、とりあえず、嘘はすぐ見ぬくようにし、なぜ嘘ついたのか聞き、そのあと
に、オモチャの禁止など、罰をあたえるようにしています。

本には、嘘をついてはいけないと思うけど、ついてしまう、などと気になることも言います。

どういう教育をしたらいいのでしょうか?

家でくだらない嘘をつく事は無視すればいいのですが、学校で人に迷惑をかけてはいけないと
思い、悩んでおります。

よろしくお願いします。

【はやし浩司よりNさんへ】

 いろいろな症状が複合しているように思います。多動性、衝動性、虚言癖、かんしゃく発作な
ど。授業妨害がはげしいようであれば、ADHD児の心配もあります。

 環境的には、極端な甘やかしと、極端なきびしさ。この2つが同居していたことが疑われま
す。一方できびしくしながら、結局は、子どもの言いなりになってしまうような環境です。

 虚言癖については、妄想性の虚言癖(空想的虚言癖)が疑われます。これも極端にきびしい
家庭環境、親の威圧的な過干渉、息を抜けないような過関心が原因ではないかと疑われま
す。虚言癖については、このあとに、関連の原稿を添付しておきます(注※1)。参考にしてみ
てください。

 しかしそれ以上に心配されるのが、子ども自身が、心のより所を見失ってしまっていることで
す。自分でも何がなんだか、わけがわからないまま、それに振りまわされているといった感じで
す。

 Nさんのお子さんがそうだというのではありませんが、あたかも脳が乱舞しているかのような
印象を受ける子どもが、今、ふえています。私は、映像文化の影響、脳の微細障害説などを、
疑っています。

 このタイプの子どもは、やたらと頭の回転だけは速く、言動がめまぐるしく変化していくという
特徴があります。それについての原稿も、このあとに添付しておきます(注※2)。(さらに詳しく
お知りになりたいときは、私のHPで、お読みください。随所で、取りあげています。)

 で、小学1年生ということですから、まだ自己意識もじゅうぶん、育っていません。つまり自己
管理能力も、じゅうぶんではないということです。ですから、おとなを相手にするようにして、あ
れこれ説教しても、あまり意味はありません。言うべきことは言いながら、今は、時の流れを待
つしかありません。

 脳が乱舞しているような部分については、小学2年生を過ぎるころには、落ち着いてきます。

 また仮にADHD児であっても、自己意識が育ってくると、自分で自分を管理するようになりま
すから、小学3、4年生を境に、急速に落ち着いてきます。

 妄想的虚言癖については、家庭環境を猛省します。過度な過関心、過干渉になっていないか
を、反省してみてください。暴力、威圧などは、この際、厳禁です。へたをすれば、子どもの中
にもうひとつの心を作ってしまいます。

 子どものウソについては、そのつど、ていねいにそれをつぶしていきますが、しかし罰(ばつ)
は、好ましくありません。おそらく今の状態では、いくら叱っても、効果はないと思ってください。
叱られたとき、罰がこわいから、それらしい雰囲気を表現するだけです。

 で、とりあえず落ち着かせるためには、(1)白砂糖などの甘い食品を一掃する。(2)Ca、M
g、Kの多い食生活、つまり海産物中心の献立に切りかえる。(3)ばあいによっては、カルシウ
ム剤を投与する。(4)リン酸食品を避けるという方法をとってみてください。

 食生活を変えるだけでも、このタイプの子どもは、劇的に変化するはずです。徹底すれば、1
週間ほどで、効果が出てきます。これについても、簡単な原稿を、このあとに添付しておきます
(注※3)。とりあえずしてみるということで、参考になると思います。

 また最後に、こうした子どもの問題では、すでにNさんは、そうなさっておられるようですが、
『負けるが勝ち』と考えて、いつもこちらから頭をさげるようにします。これは、あなたの子ども
自身のためです。

 繰りかえしますが、この種の問題は、どうあせったところで、今は、どうにもなりません。が、
時期(小学3、4年生ごろ)がくれば、急速に症状は収まってきます。それまでに無理をしたりし
て、症状をこじらせないことが大切です。こじらせればこじらせるほど、長引くということです。

 ADHD児については、その心配があるなら、小生のHPをご覧になってください。またその心
配があるなら、一度、専門のドクターに相談なさるとよいかと思います。学校のほうでも紹介し
てくれるはずです。今では、副作用もほとんどない、よい薬が開発されています。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司 

注※1
子どもがウソをつくとき

●ウソにもいろいろ

 ウソをウソとして自覚しながら言うウソ「虚言」と、あたかも空想の世界にいるかのようにして
つくウソ「空想的虚言」は、区別して考える。

 虚言というのは、自己防衛(言い逃れ、言いわけ、自己正当化など)、あるいは自己顕示(誇
示、吹聴、自慢、見栄など)のためにつくウソをいう。子ども自身にウソをついているという自覚
がある。母「誰、ここにあったお菓子を食べたのは?」、子「ぼくじゃないよ」、母「手を見せなさ
い」、子「何もついてないよ。ちゃんと手を洗ったから……」と。

 同じようなウソだが、思い込みの強い子どもは、思い込んだことを本気で信じてウソをつく。
「昨日、通りを歩いたら、幽霊を見た」とか、「屋上にUFOが着陸した」というのがそれ。その思
い込みがさらに激しく、現実と空想の区別がつかなくなってしまった状態を、空想的虚言とい
う。こんなことがあった。

●空想の世界に生きる子ども

 ある日突然、一人の母親から電話がかかってきた。そしてこう言った。「うちの子(年長男児)
が手に大きなアザをつくってきました。子どもに話を聞くと、あなたにつねられたと言うではあり
ませんか。どうしてそういうことをするのですか。あなたは体罰反対ではなかったのですか!」
と。ものすごい剣幕だった。

が、私には思い当たることがない。そこで「知りません」と言うと、その母親は、「どうしてそうい
うウソを言うのですか。相手が子どもだと思って、いいかげんなことを言ってもらっては困りま
す!」と。

 その翌日その子どもと会ったので、それとなく話を聞くと、「(幼稚園からの)帰りのバスの中
で、A君につねられた」と。そのあと聞きもしないのに、ことこまかに話をつなげた。が、そのあ
とA君に聞くと、A君も「知らない……」と。結局その子どもは、何らかの理由で母親の注意をそ
らすために、自分でわざとアザをつくったらしい……、ということになった。こんなこともあった。

●「お前は自分の生徒を疑うのか!」

 ある日、一人の女の子(小4)が、私のところへきてこう言った。「集金のお金を、バスの中で
落とした」と。そこでカバンの中をもう一度調べさせると、集金の袋と一緒に入っていたはずの
明細書だけはカバンの中に残っていた。明細書だけ残して、お金だけを落とすということは、常
識では考えられなかった。

そこでその落としたときの様子をたずねると、その女の子は無表情のまま、やはりことこまか
に話をつなげた。「バスが急にとまったとき体が前に倒れて、それでそのときカバンがほとんど
逆さまになり、お金を落とした」と。しかし落としたときの様子を覚えているというのもおかしい。
落としたなら落としたで、そのとき拾えばよかった……?

 で、この話はそれで終わったが、その数日後、その女の子の妹(小2)からこんな話を聞い
た。何でもその女の子が、親に隠れて高価な人形を買ったというのだ。値段を聞くと、落とした
という金額とほぼ一致していた。

が、この事件だけではなかった。そのほかにもおかしなことがたびたび続いた。「宿題ができな
かった」と言ったときも、「忘れ物をした」と言ったときも、そのつど、どこかつじつまが合わなか
った。そこで私は意を決して、その女の子の家に行き、父親にその女の子の問題を伝えること
にした。が、私の話を半分も聞かないうちに父親は激怒して、こう叫んだ。「君は、自分の生徒
を疑うのか!」と。

そのときはじめてその女の子が、奥の部屋に隠れて立っているのがわかった。「まずい」と思っ
たが、目と目があったその瞬間、その女の子はニヤリと笑った。

ほかに私の印象に残っているケースでは、「私はイタリアの女王!」と言い張って、一歩も引き
さがらなかった、オーストラリア人の女の子(六歳)がいた。「イタリアには女王はいないよ」とい
くら話しても、その女の子は「私は女王!」と言いつづけていた。
●空中の楼閣に住まわすな

 イギリスの格言に、『子どもが空中の楼閣を想像するのはかまわないが、そこに住まわせて
はならない』というのがある。子どもがあれこれ空想するのは自由だが、しかしその空想の世
界にハマるようであれば、注意せよという意味である。

このタイプの子どもは、現実と空想の間に垣根がなくなってしまい、現実の世界に空想をもちこ
んだり、反対に、空想の世界に限りないリアリティをもちこんだりする。そして一度、虚構の世
界をつくりあげると、それがあたかも現実であるかのように、まさに「ああ言えばこう言う」式の
ウソを、シャーシャーとつく。ウソをウソと自覚しないのが、その特徴である。

●ウソは、静かに問いつめる

 子どものウソは、静かに問いつめてつぶす。「なぜ」「どうして」を繰り返しながら、最後は、「も
うウソは言わないこと」ですます。必要以上に子どもを責めたり、はげしく叱れば叱るほど、子
どもはますますウソがうまくなる。

 問題は空想的虚言だが、このタイプの子どもは、親の前や外の世界では、むしろ「できのい
い子」という印象を与えることが多い。ただ子どもらしいハツラツとした表情が消え、教える側か
ら見ると、心のどこかに膜がかかっているようになる。いわゆる「何を考えているかわからない
子ども」といった感じになる。

 こうした空想的虚言を子どもの中に感じたら、子どもの心を開放させることを第一に考える。
原因の第一は、強圧的な家庭環境にあると考えて、親子関係のあり方そのものを反省する。
とくにこのタイプの子どものばあい、強く叱れば叱るほど、虚構の世界に子どもをやってしまう
ことになるから注意する。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

注※2
子どもの脳が乱舞するとき

●収拾がつかなくなる子ども

 「先生は、サダコかな? それともサカナ! サカナは臭い。それにコワイ、コワイ……、あ
あ、水だ、水。冷たいぞ。おいしい焼肉だ。鉛筆で刺して、焼いて食べる……」と、話がポンポ
ンと飛ぶ。頭の回転だけは、やたらと速い。まるで頭の中で、イメージが乱舞しているかのよ
う。

動作も一貫性がない。騒々しい。ひょうきん。鉛筆を口にくわえて歩き回ったかと思うと、突然
神妙な顔をして、直立! そしてそのままの姿勢で、バタリと倒れる。ゲラゲラと大声で笑う。そ
の間に感情も激しく変化する。目が回るなんていうものではない。まともに接していると、こちら
の頭のほうがヘンになる。

 多動性はあるものの、強く制止すれば、一応の「抑え」はきく。小学2、3年になると、症状が
急速に収まってくる。集中力もないわけではない。気が向くと、黙々と作業をする。30年前には
このタイプの子どもは、まだ少なかった。が、ここ10年、急速にふえた。小1児で、10人に2人
はいる。

今、学級崩壊が問題になっているが、実際このタイプの子どもが、1クラスに数人もいると、そ
れだけで学級運営は難しくなる。あちらを抑えればこちらが騒ぐ。こちらを抑えればあちらが騒
ぐ。そんな感じになる。

●崩壊する学級

 「学級指導の困難に直面した経験があるか」との質問に対して、「よくあった」「あった」と答え
た先生が、66%もいる(98年、大阪教育大学秋葉英則氏調査)。「指導の疲れから、病欠、
休職している同僚がいるか」という質問については、15%が、「1名以上いる」と回答している。

そして「授業が始まっても、すぐにノートや教科書を出さない」子どもについては、90%以上の
先生が、経験している。ほかに「弱いものをいじめる」(75%)、「友だちをたたく」(66%)など
の友だちへの攻撃、「授業中、立ち歩く」(66%)、「配布物を破ったり捨てたりする」(52%)な
どの授業そのものに対する反発もみられるという(同、調査)。

●「荒れ」から「新しい荒れ」へ

 昔は「荒れ」というと、中学生や高校生の不良生徒たちの攻撃的な行動をいったが、それが
最近では、低年齢化すると同時に、様子が変わってきた。「新しい荒れ」とい言葉を使う人もい
る。ごくふつうの、それまで何ともなかった子どもが、突然、キレ、攻撃行為に出るなど。多くの
教師はこうした子どもたちの変化にとまどい、「子どもがわからなくなった」とこぼす。

日教組が98年に調査したところによると、「子どもたちが理解しにくい。常識や価値観の差を
感ずる」というのが、20%近くもあり、以下、「家庭環境や社会の変化により指導が難しい」(1
4%)、「子どもたちが自己中心的、耐性がない、自制できない」(10%)と続く。そしてその結果
として、「教職でのストレスを非常に感ずる先生が、8%、「かなり感ずる」「やや感ずる」という
先生が、60%(同調査)もいるそうだ。

●原因の一つはイメージ文化?

 こうした学級が崩壊する原因の一つとして、(あくまでも、一つだが……)、私はテレビやゲー
ムをあげる。「荒れる」というだけでは、どうも説明がつかない。家庭にしても、昔のような崩壊
家庭は少なくなった。

むしろここにあげたように、ごくふつうの、そこそこに恵まれた家庭の子どもが、意味もなく突発
的に騒いだり暴れたりする。そして同じような現象が、日本だけではなく、アメリカでも起きてい
る。実際、このタイプの子どもを調べてみると、ほぼ例外なく、乳幼児期に、ごく日常的にテレビ
やゲームづけになっていたのがわかる。ある母親はこう言った。

「テレビを見ているときだけ、静かでした」と。「ゲームをしているときは、話しかけても返事もし
ませんでした」と言った母親もいた。たとえば最近のアニメは、幼児向けにせよ、動きが速い。
速すぎる。しかもその間に、ひっきりなしにコマーシャルが入る。ゲームもそうだ。動きが速い。
速すぎる。

●ゲームは右脳ばかり刺激する

 こうした刺激を日常的に与えて、子どもの脳が影響を受けないはずがない。もう少しわかりや
すく言えば、子どもはイメージの世界ばかりが刺激され、静かにものを考えられなくなる。その
証拠(?)に、このタイプの子どもは、ゆっくりとした調子の紙芝居などを、静かに聞くことができ
ない。

浦島太郎の紙芝居をしてみせても、「カメの顔に花が咲いている!」とか、「竜宮城に魚が、お
しっこをしている」などと、そのつど勝手なことをしゃべる。一見、発想はおもしろいが、直感的
で論理性がない。ちなみにイメージや創造力をつかさどるのは、右脳。分析や論理をつかさど
るのは、左脳である(R・W・スペリー)。

テレビやゲームは、その右脳ばかりを刺激する。こうした今まで人間が経験したことがない新し
い刺激が、子どもの脳に大きな影響を与えていることはじゅうぶん考えられる。その一つが、こ
こにあげた「脳が乱舞する子ども」ということになる。

 学級崩壊についていろいろ言われているが、一つの仮説として、私はイメージ文化の悪弊を
あげる。


Hiroshi Hayashi+++++++++++はやし浩司

注※3

●砂糖は白い麻薬

 キレるタイプの子どもは、独特の動作をすることが知られている。動作が鋭敏になり、突発的
にカミソリでものを切るようにスパスパとした動きになるのがその一つ。

原因についてはいろいろ言われているが、脳の抑制命令が変調したためにそうなると考えると
わかりやすい。そしてその変調を起こす原因の一つが、白砂糖(精製された砂糖)である(アメ
リカ小児栄養学・ヒューパワーズ博士)。

つまり一時的にせよ白砂糖を多く含んだ甘い食品を大量に摂取すると、インスリンが大量に分
泌され、そのインスリンが脳間伝達物質であるセロトニンの大量分泌をうながし、それが脳の
抑制命令を阻害する、と。

これから先は長い話になるので省略するが、要するに子どもに与える食品は、砂糖のないも
のを選ぶ。今ではあらゆる食品に砂糖は含まれているので、砂糖を意識しなくても、子どもの
必要量は確保できる。ちなみに幼児の一日の必要摂取量は、約10〜15グラム。この量はイ
チゴジャム大さじ一杯分程度。

もしあなたの子どもが、興奮性が強く、突発的に暴れたり、凶暴になったり、あるいはキーキー
と声をはりあげて手がつけられないという状態を繰り返すようなら、一度、カルシウム、マグネ
シウムの多い食生活に心がけながら、砂糖は白い麻薬と考え、砂糖断ちをしてみるとよい。子
どもによっては一週間程度でみちがえるほど静かに落ち着く。

なお、この砂糖断ちと合わせて注意しなければならないのが、リン酸である。リン酸食品を与え
ると、せっかく摂取したカルシウム分を、リン酸カルシウムとして体外へ排出してしまう。と言っ
ても、今ではリン酸(塩)はあらゆる食品に含まれている。

たとえば、ハム、ソーセージ(弾力性を出し、歯ごたえをよくするため)、アイスクリーム(ねっと
りとした粘り気を出し、溶けても流れず、味にまる味をつけるため)、インスタントラーメン(やわ
らかくした上、グニャグニャせず、歯ごたえをよくするため)、プリン(味にまる味をつけ、色を保
つため)、コーラ飲料(風味をおだやかにし、特有の味を出すため)、粉末飲料(お湯や水で溶
いたりこねたりするとき、水によく溶けるようにするため)など(以上、川島四郎氏)。かなり本腰
を入れて対処する。

ついでながら、W・ダフティという学者はこう言っている。「自然が必要にして十分な食物を生み
出しているのだから、われわれの食物をすべて人工的に調合しようなどということは、不必要
なことである」と。

つまりフード・ビジネスが、精製された砂糖や炭水化物にさまざまな添加物を加えた食品(ジャ
ンク・フード)をつくりあげ、それが人間を台なしにしているというのだ。「(ジャンク・フードは)疲
労、神経のイライラ、抑うつ、不安、甘いものへの依存性、アルコール処理不能、アレルギーな
どの原因になっている」とも。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 荒れ
る子ども 荒れる子供 脳が乱舞する子供 空想的虚言 虚言癖 子供のウソ 子供の嘘 子
どもの嘘)

【Sさんより、はやし浩司へ】

私が少し神経質で威圧的な性格であり、自分もその事を自覚していますので、叱る時と褒める
時のメリハリをつけるように心がけてきました。

それが、極端な甘やかしと、極端なきびしさなのかと思いました。

子供は確かに頭の回転が速く、礼儀正しく、大人の前ではいい子ちゃんを装っている節があり
ます。ですから学校で注意を受けた時は大変驚きました。

先生や周囲の人に嫌われないように、迷惑にならないようにと指示するようになり、毎日「今日
はどうだった?叱られなかった?」と聞いていました。

今日からある程度は大目に見て、少し自由にさせて、寝る前に童話や伝記を読んでやるように
します。

学校の事は本人から話すまで聞かないことにします。
甘いものはあまり食べない子供ですが、砂糖をなるべく排除します。

禁止にしているゲームは30分位の時間を切って解禁してやります。

虚言以外の行動は一度やってからはやらないので、ADHDは考えていませんでした。
なるべく外に連れ出して遊んでやる。

習い事を二つ行かせていますが一つにして本人の好きな事をやらせます。

これで落ち着かなければ心療内科の受診も考えます。

有難うございました。
おかげで何とかやっていく道筋が見えたような気がします。







 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【9】

●家庭内暴力

●千葉県市原市のESより、はやし浩司へ

 はじめてメールいたします。
ここ一年、加速するようにドラ化する現中一の息子への対応に
悪戦苦闘している四五歳の母親です。
「不登校」「家庭内暴力」「奇声」というキーワードで検索して
いくつかたぐっていましたが、どれも琴線に響くものもなく、
溜息混じりに見つけたのが貴方の直言でした。
長い文筆にかかわらず、一気にスクロールしてしまうほどの
まさに迷う私にとって目からうろこの言葉の数珠繋ぎだったのです。

私は大学の同級生の夫と高一の長女、中二の長男の四人家族ですが、
主人は京都に単身赴任して三年になります。
思えば夫の赴任に伴って、悪化した長男の心身生活態度でしたが、
夫もマメに帰省してくれ、その度に息子と心通わす時間を持ってくれており、
「単身赴任だから」という理由付けで息子の変化を語るには悔しすぎます。

ただ、今の息子は達成感がなく、何事にもやる気のない、目標意識のない、何かにつけて
マイナス思考で、やり場のないストレスを家族にぶつけている状態です。
もちろん、何事も長続きせず、成績は下降の一途です。
時には恐ろしいくらい(明日新聞に載るのではないか?という気さえします)乱暴になり、
その刃は留守宅の私に集中して向けられ、夫が帰るとウソのようにいい子になります。
彼の状態を家族として夫に報告することが、息子にはタブーで半ば脅されたような
状態で、我慢しています。知らぬは主人ばかりなり。一体いつまで続くのか、
学校も中学になって一学期のうち約二〇日欠席してしまい、果ては「学校なんて辞めたい」。
小学校のころから、問題を起こしては責任転嫁をするので、学友からは浮き上がってしまい、
本人も自覚するものの、引っ込みがつかなくなって自己矛盾に陥って悪循環。
見ていて痛々しくなってしまいます。

そのくせ、今も私のそばを離れず、注意を引くような、私が困るような行動をとるので、
今は、彼が何を探しあぐねて、彼がどう自分のことを考えてるのか、
様子を見ながら、笑顔をつくっている始末。乱暴時には怖くても何もできませんが、
息子と自分たちを信じて負けるまいと考えています。
ただ、時にどうしようもなく、逃げ込みたくなることもあり、死んでしまいたいとすら
思うほど落ち込んでしまいます。
恐らく何千の相談メールのなかで、こんなグダグダなど、取るに足らぬ甘いものだと
察しますが、ほんの少しでも、心を支える言葉を見つけられればと思い、
メール致しました。夫以外誰にもここまで話せません。
陥りやすい母親のパターンなのかもしれませんが、気長に構えるファイトが欲しくてなりませ
ん。ながながとすみませんが、よろしくお願いいたします。
(千葉県市原市・ESより)

+++++++++++++++++++

●はやし浩司より、ESさんへ
はやし浩司より、
メール、拝見いたしました。
 
息子さんを、R君としておきます。
 
R君は、思春期にありがちな、典型的な情緒不安と
思われます。みんなそうですから、あまり深刻にな
らないのが、賢明です。(情緒不安というのは、いわ
ゆる心の緊張感がとれない状態と考えてください。)
その緊張している状態に、不安が入り込むと、一挙に
暴走するわけです。暴力に向うプラス型と、引きこもり
などに向うマイナス型に分けて考えます。R君は
プラス型です。精神科で診断されると、青年期の
うつ病というような診断名をつけるかもしれません。
この名前を出してショックを受けられるかもしれませんが、
多かれ少なかれどの子どもも、そういった傾向を示しますので、
「うちの子だけが……」とは、思わないでくださいね。
 
言いかえると、この時期さえうまくくぐりぬけると、
症状は急速に回復しますので、あまり不安にならないように。
将来に対する不安を感じているのは、むしろ
R君自身と思ってあげてください。
成績がさがる、勉強がうまくはかどらない、しかし
みんなの中で目立ちたいなど、思春期の中で、
心の中がいつも緊張状態にあるのです。そのため
情緒そのものがたいへん不安定になっているのです。
まあ、いわば、心の風邪のようなもの。少し症状が
重いので、インフルエンザくらいだと思ってください。
いえ、決してなぐさめているのではありません。
ここにも書いたように、ケースとしては、たいへん
多く、またマイナス型(ひきこもり)と比べると
予後もよく、回復し始めると、あっという間に
症状が消えていきます。ですからここは「心がインフルエンザ
にかかっている」と思い、一歩退いた見方で、R君を
みるようにします。
 
で、いくつかコツがあります。
 
(1)今こそ、あなたの親としての愛情が試されている
ときと思うこと。今までのあなたは、いわば本能的愛、
あるいは代償的愛に翻弄されていただけです。しかし
今、あなたのR君に対する愛がためされているのです。
言いかえると、あなたがこの問題を、R君に対する
おしみない愛情で乗り越えたとき、あなたはさらに
深い親の愛を知ることになります。ですから決して
投げ出したり、投げやりになったりしてはいけませんよ。
「私はあなたにどれだけ裏切られても、あなたを
愛していますからね」という態度を貫きます。
いつかR君はそういうあなたに気づき、あなたのところ
に戻ってきます。そのときのために、決してドアを
閉じてはいけません。いつもドアを開いていてください。
そのためにも、「許して忘れる」です。
 
この「許して忘れる」については、私のサイトの
「心のオアシス」の中に書いておきましたから
トップページから開いて、ぜひ読んでみてくださいね。
http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/
 
(2)この症状は、「治そう」とは思わないこと。
「今の状態をより悪くしないことだけを考える」こと。
ここが大切です。この段階で、治そうと思うと、悪循環の
世界に入ってしまい、それこそ「以前のほうが症状が
軽かった……」ということを繰り返しながら、症状は
どんどん悪化(本当は悪化ではなく、親の過干渉、
溺愛からの解放をめざしているのです)します。
ですから、数か月単位で、R君をみるようにし、
そして今の状態をこれ以上悪くしないことだけを
考えて、様子をみます。私の経験では、これから
一通り、R君はおとなになる準備をし、落ち着き始めるのは
一六、七歳ころだと思います。あせってはいけません。
気長に考えるのです。
 
(3)冷蔵庫から甘い食品を一掃してみてください。
思い切って捨てるのです。そしてCA、MGの多い食生活
にこころがけます。子どもの場合、食生活を変える
だけで、みちがえるほど、静かに落ち着いてきます。
詳しくは、サイトのあちこちに「過剰行動児」という
項目で書いておきました。ヤフーの検索で、
「はやし浩司 過剰行動」で検索するとヒットできるはずです。
 
(4)R君は恐らく幼児期はいい子のまま、仮面をかぶっていた
はずです。お父さんに対する態度が違うところがそうです。
(お父さんはかなり権威主義者ですね。)そういう仮面の
重圧感に苦しんできたのですよ。わかりますか?
それを今、懸命に調整しようとしている。そういう意味でも
ごくありふれた、先ほども書きましたように、多かれ
少なかれ、どの子どももかかる、心のインフルエンザの
ようなものです。ただ外から症状が見えないから
どうしても安易に考えてしまう。そういうものです。
 
(5)進学ということよりも、R君がしたいこと、R君に
向いている面で、将来の設計図を一緒に考えてあげるのが
いいでしょうが、ただ今の状態では、まだ時期が早いかもしれ
ません。今、あれこれ動いても、R君自身をかえって追い込んで
しまうからです。心のリハビリを考え、
 
●何もしない、何も世話をやかない、何も言わない、何も
かまわない……という状況の中で、つまりR君から見て、まったく
親の存在を感じないほどまでに、気が楽になるようにしむけます。
こういうケースでは、扱い方をまちがえたり、子どもを追い込むと
たとえば集団非行、家出ということを
繰り返しながら、どんどん悪循環の輪の中に入ってしまい
ます。ですから、子どもの側から見て、安心できる家庭づくり、
ほっとする家庭づくりに心がけてください。(家出をしたら、
またまた何かとやっかいになります。)家にいるだけでも、
ありがたいと思いつつR君に「やすらぎ」を用意します。
つまり根競べです。本当に根競べです。
 
この問題は、今のあなたには深刻な問題ですが、
必ず笑い話になりますよ。巣立ちにはいろいろな
形がありますが、これもその一つです。ですから親の
あなたが一歩退いて、つまり子どもを飲み込んだ世界から
見るのです。決して対等になってはいけません。
 
あのね、R君は、あなたが不安そうな表情、心配そうな
表情を見ながら、自分の心の中の不安を増幅させて
いるのですよ。そういう心理を理解するにはむずかしい
かもしれませんが、一度それがわかると、「何だ、
やっぱり子どもだな」と思えるようになります。ためして
みてください。
 
私の知人(女性)の長男も、高一のとき、無免許でバイクに乗り、
事故を起こし、逮捕、退学。いろいろありましたが、今は
笑い話にしています。(その分、その知人はみちがえるほど
気高い母親になりましたがね……。)いろいろみんな
あるのです。決して、自分だけが……とは思わないこと。
追い込まないこと。わかりますか? 
 
私のサイトの中に、「タイプ別子育て」という
コーナーがありますから、その中から非行なども
読んでみてください。参考になると思います。
 
子どもというのは不思議なもので、親が心配したところで
どうにかなる存在ではないし、しかし放っておいても
自分で育っていくものです。そろそろ子離れを始めてください。
(子どものほうはとっくの昔に親離れしているのですよ。)
 
子育てはまさに航海。「ようし、荒波の一つや二つ、
越えてやる」「十字架の一つや二つ、背負ってやる」
「さあ、こい」と怒鳴ったとき、不幸(本当は不幸でも
何でもないのです。あなたも子どものころ、品行方正の
女の子でしたか? ちがうでしょ!)は、向こうから
退散していきます。
 
R君は、今、自分の将来に大きな不安をもっています。
うまく口ではそれを表現できないだけですよ。だから
態度や行動でそれを示している。繰り返しますが、心の風邪
です。だれでもかかる、思春期の熱病です。(外の世界で
暴れれば問題ですが、いわゆる家庭内暴力というのです。)
本当にありふれた症状です。だからあまり深刻に、(いえ
今は深刻ですが……。決して深刻でないとは思って
いません。)そういうふうに一歩退いてみるのですよ。
決して、R君を追い込まないこと。「がんばれ」とか、
「こんなことでは、高校へ行けなくなる」とか、そういう
ふうに追い込んではいけません。(多分、あなたの
夫は仕事人間で、そういう姿を彼は見て、よけいに
不安になるのかもしれませんね。)
 
あまりよい回答になっていないかもしれませんが、
何か不安なことがあれば、またそのとき、メールを
ください。力になります。いつか必ず笑い話になり、
そしてそのときあなたは「子育てをやり遂げた」「子どもを
信じた」「子どもを愛しぬいた」という満足感を得られます。
そういうときが必ずきますから、どうか、どうか、その日を
信じてください。みんなそうなりましたから。私が経験した
同じようなケースは、みな、そうなっています。だから
私の言っていることを信じて、前向きに生きてください。
 
そうそうあなた自身の学歴信仰とか、学校神話の
価値観を変えることも忘れないでください。そのために
いろいろなコラムを書いていますから、また読んでください。
マガジンも発行しています。
 
みんながあなたを応援します。私も応援します。
R君は、本当はやさしい男の子です。ただ少し
気が小さいだけです。あなたもそう思っているでしょ。
 
では、おやすみなさい。
 
はやし浩司

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


家庭内暴力について

●思春期の不安
 思春期の不安感は、大きく分類すると、つぎのように分けられる。
抑うつ気分(気分が晴れない)、悲哀感(何を見ても聞いても悲しい)、絶望感、自信喪失、自
責感(自分はダメな人間と思い込む)、罪責感(罪の意識を強くもつ)など。これらが高じると、
集団に対する不適応症状(不登校、怠学)、厭世気分(生きていることが無意味と思う)感情の
鈍化、感情のコントロール不能(激怒、キレる)などの症状が現れる。
 またその前の段階として、軽い不安症状にあわせて、心の緊張感がほぐれない、焦燥感(あ
せり)などの症状にあわせて、ものごとに対して突発的に攻撃的になったり、イライラしたりする
こともある。(こうした攻撃性が、ときにキレる状態になり、凶暴的、かつ破滅的な行為に及ぶこ
ともある。)

●行為障害としての家庭内暴力
 こうした症状は、思春期の子どもなら、多かれ少なかれ共通してもつ症状といってもよい。
が、その症状が一定レベルを超え、子ども自身の処理能力を超えたとき、さまざまな障害とな
って、発展的に現れる。それらを大きく分けると、思考障害、感情障害、行為障害、精神障害、
身体的障害の五つになる。
 思考障害……ふつう思考障害というときは、思考の停止(考えが袋小路に入ってしまう)、混
乱(わけがわからなくなる)、集中力の減退(考え方が散漫になってしまう)、想像および創造力
の減退(アイデアが思い浮かばない)、記憶力の低下(英語の単語が覚えられない)、決断力
の不足(グズグズした感じになる)、反応力の衰退(話しかけても、反応が鈍い)などをいう。
 感情障害……感情障害の最大の特徴は、自分の感情を、理性でコントロールできないこと。
「自分ではわかっているのだが……」という状態のまま、激怒したり、突発的に暴れたりする。
こうした状態を、「そう状態における錯乱状態」と考える学者もいる。ただ私は、この「自分では
わかっているのだが……」という点に着目し、精神の二重構造性を考える。コンピュータにたと
えていうなら、暴走するプログラムと、それを制御しようとするCPU(中央演算装置)が、同時に
機能している状態ということになる。(実際には、コンピュータ上では、こういうことはありえない
が……。)
この時期の子どもは、感情障害を起こしつつも、もう一人の自分が別にいて、それをコントロー
ルするという特徴がある。その一例として、家庭内暴力を起こす子どもは、@暴力行為の範囲
を家庭内でとどめていること。またA暴力行為も、(事件になるような特別なケースは別とし
て)、最終的な危害行為(それ以上したら、家庭そのものが破滅する行為のこと。私はこれを
「最終的危害行為」と呼んでいる)に及ぶ、その直前スレスレのところで抑制することがある。
家庭内暴力を起こす子どもが、はげしい暴力を起こしながらも、どこか自制的なのは、そのた
めと考える。
行為障害……軽度のばあいは、生活習慣の乱れ(起床時刻や就眠時刻が守れない)、生活
態度の乱れ(服装がだらしなくなる)、義務感の喪失(やるべきことをしない)、怠惰、怠学(無気
力になり、無意味なサボり方をする)などの症状が現れる。が、それが高ずると、社会的機能
が影響を受け、集団非行、万引き、さらには回避性障害(他人との接触を嫌い、部屋に引きこ
もる)、摂食障害(拒食症、過食症など)を引き起こすようになる。この段階で、家人は異変に
気づくことが多いが、この状態を放置すると、厭世気分が高じて、自殺願望(「死にたい」と思
う)、自殺企画(自殺方法を考える)、最終的には自殺行為に及ぶこともある。
精神障害……うつ状態が長期化すると、感情の鈍化(喜怒哀楽の情が消える)、無反応性(話
しかけてもボーッとしている)が現れる。一見痴呆症状に似ているので、痴呆症と誤解するケー
スも多い。しかし実際には、ほとんどのケースでは、本人自身が、自分の症状を自覚している
ことが多い。これを「病識(自分で自分の症状を的確に把握している)」という。ある青年は、中
学時代、家庭内暴力を起こしていたときのことについて、こう言った。「いつももう一人の自分
がそこにいて、そんなバカなことをするのをやめろと叫んでいたような気がする。しかしいった
ん怒り始めると、それにブレーキをかけることができなくなってしまった」と。
ほかにもう一つ、腹痛や頭痛などの身体的障害もあるが、一般的な病状と区別しにくいので、
ここでは省略する。

●情緒不安
 よく誤解されるが、情緒が不安定な状態を、情緒不安というのではない。情緒不安というの
は、心の緊張感がとれない状態をいう。「気を許さない」「気を抜かない」「気をゆるめない」とい
う状態を考えればよい。その緊張しているところに、不安要素が入り込むと、その不安を解消
しようと、一挙に心の緊張感が高まる。このタイプの子どもは、どこか神経がピリピリしていて、
心を許さない。そのことは軽く抱いてみればわかる。心を許さない分だけ、体をこわばらせた
り、がんこな様子で、それを拒絶したりする。情緒が不安定になるのは、あくまでもその結果で
しかない。
 家庭内暴力を繰り返す子どもは、基本的には、この情緒が不安定な状態にあると考えるとわ
かりやすい。そのためたいていは(親側からみれば)ささいな親の言動で、子どもは突発的に
凶暴になり、攻撃的な暴力を繰り返す。ある女子(中二)は、母親がガラガラとガラス戸を閉め
ただけで、母親を殴ったり、蹴ったりした。母親には理由がわからなかったが、その女子はあと
になってこう言った。「ガラス戸をしめられると、『もっと勉強しなさい』と、催促をされているよう
な気がした」と。
その女子の家は大通りに面していて、ふだんから車の騒音が絶えなかった。それで子どものと
きから、母親はその女子に「勉強しなさい」と言ったあと、いつもそのガラス戸をガラガラとしめ
ていた。母親としては、その女子の部屋を静かにしてあげようと思ってそうしていたのだが、い
つの間にか、それがその女子には「もっと勉強しなさいという催促」と聞こえるようになった……
らしい。

●暴力行為
 家庭内暴力の「暴力」は、その家人にとってはまさに想像を絶するものである。またそれだけ
に深刻な問題となる。その家庭内暴力に、私がはじめて接したケースに、こんなのがある。
 浜松市に移り住むようになってしばらくのこと。私は親類の女性に頼まれて、一人の中学三
年生男子を私のアパートで、個人レッスンをすることになった。「夏休みの間だけ」という約束だ
った。が、教えて始めてすぐ、その中学生は、おとなしく従順だったが、まさに「何を考えている
かわからないタイプの子ども」ということがわかった。勉強をしたいのか、したくないのか。勉強
をしなければならないと思っているのか、思っていないのか。どの程度まで教えてほしいのか、
教えてほしくないのか。それがまったくわからなかった。心と表情が、完全に遊離していて、ど
んな性格なのかも、つかめなかった。
 が、その少年は、家庭の中で、激しい暴力行為を繰り返していた。その少年が暴力行為を繰
り返すようになると、母親は仕事をやめ、父親も出張の多いそれまでの仕事をやめ、地元の電
気会社に就職していた。そういう事実からだけでも、その少年の家庭内暴力がいかに激しかっ
たかがわかる。
その少年を紹介してくれた親類の女性はこう言った。「毎晩、動物のうめき声にも似た少年の
絶叫が、道をへだてた私の家まで聞こえてきました。その子どもが暴れ始めると、父親も母親
も、廊下をはって歩かねばならなかったそうです」と。
私は具体的な話を聞きながら、最初から最後まで、自分の耳を疑った。私が知るその少年
は、「わけのわからない子ども」ではあったが、家の中で、そのような暴力を働いているとは、と
ても思えない子どもだったからである。

●心の病気
 こうした抑うつ感が、うつ病につながるということはよく知られている。一般には家庭内暴力を
起こす子どもは、うつ病であると言われる。おとなでも、うつ病患者が突発的にはげしい暴力行
為を繰り返すことは、よく知られている。が、家庭内暴力を起こす子どもがすべて、うつ病かと
いうと、それは言えない。症状としては重なる部分もあるというだけかもしれない。
たとえば学校恐怖症というのがあるが、どこまでが恐怖症で、どこからがうつ病なのか、その
線を引くのがむずかしい。少なくとも、教育の現場では、その線を引くことができない。同じよう
に、家庭内暴力を起こす子どもと、うつ病との間に、線を引くことはむずかしい。そこで比較的
研究の進んでいる、うつ病についての資料を拾ってみる。(というのも、家庭内暴力という診断
名はなく、そのため、治療法もないということになっているので……。)

 村田豊久氏という学者らが調査したところによると、日本においては、小学二年生から六年
生までの一〇四一人の子どもについて調べたところ、約一三・三%に「うつ病とみなしてよいと
の評点を、得点していた」(八九年)という。もちろんこの中には、偽陽性者(症状としてうつ病に
似た症状を訴えても、うつ病でない子ども)も含まれているので、一三・三%の子どもがすべて
がうつ病ということにはならない。
最近の調査研究では、学童全体の約一・八%、思春期の学童の約四・七%が、うつ病というこ
とになっている(長崎医大調査)。が、この数字も、注意してみなければならない。「うつ病」と診
断されるほどのうつ病でなくても、それ以前の軽度、中度のうつ病も含めるとどうなるかという
問題がある。さらに、うつ病もふくめて、こうした情緒障害には、周期性、反復性がある。数週
間単位で、症状が軽減したり、重くなったりすることもある。そういう子どもはどうするかという問
題もある。が、それはさておき、ここでいう「四・七%」というのは、おおむね、「今という時点に
おいて、中学生の約二〇人に一人が、うつ病である」と考えてよい数字ということになる。

 で、この数字を多いとみるか、少ないとみるかは、別として、こうした子どもたちが、一方で不
登校や引きこもり(マイナス型)を起こし、また一方で家庭内暴力を起こす(プラス型)、その予
備軍と考えてよい。(あるいは実際、すでに起こしている子どもも含まれる。)で、ここで問題
は、二つに分かれる。@どうすれば、家庭内暴力も含めて、どうすれば子どものうつ病を避け
ることができるか。A今、家庭内暴力を起こしている子どもも含めて、どういう子どもには、どう
対処したらよいか。

●どうすれば防げるか 
 「すなおな子ども」というとき、私たちは昔風に、従順で、おとなの言うことをハイハイと聞く子
どもを想像する。しかしこれは、誤解。
教育の世界で、「すなおな子ども」というときには、二つの意味がある。一つは、心の状態と表
情が一致していること。悲しいときには悲しそうな顔をする。うれしいときにはうれしそうな顔を
する、など。が、それが一致しなくなると、いわゆる心と表情の「遊離」が始まる。不愉快に思っ
ているはずなのに、ニコニコと笑ったりするなど。
 もう一つは、「心のゆがみ」がないこと。いじける、ひがむ、つっぱる、ひねくれるなどの心の
ゆがみがない子どもを、すなおな子どもという。心がいつもオープンになっていて、やさしくして
あげたり、親切にしてあげると、それがそのままスーッと子どもの心の中にしみこんできくのが
わかる。が、心がゆがんでくると、どこかでそのやさしさや親切がねじまげられてしまう。私「こ
のお菓子、食べる?」、子、「どうせ宿題をさせたいのでしょう」と。

 ついでに、子どもの心は風船玉のようなもの。「家庭」で圧力を加えると、「園や学校」で荒れ
る。反対に「園や学校」で圧力を加えると、「家庭」で荒れる。友人との「外の世界」で荒れること
もある。問題は、荒れることではなく、こうした子どもたちが、いわゆる仮面をかぶり、二重人格
性をもつことだ。親の前では、恐ろしくよい子ぶりながら、その裏で、陰湿な弟や妹いじめを繰
り返す、など。家庭内暴力を起こす子どもなどは、外の世界では、信じられないほど、よい子を
演ずることが多い。

●こわい遊離と仮面
 一般論として、情意(心)と表情が遊離し始めると、心に膜がかかったかのようになる。教える
側から見ると、「何を考えているかわからない子ども」、親から見ると、「ぐずな子ども」ということ
になる。あるいは「静かで、おとなしい子ども」という評価をくだすこともある。ともかくも心と表情
が、ミスマッチ(遊離)するようになる。ブランコを横取りされても、笑みを浮かべながら渡す。失
敗して皆に笑われているようなときでも、表情を変えず平然としている、など。「ふつうの子ども
ならこういうとき、こうするだろうな」という自然さが消える。が、問題はそれで終わらない。
 このタイプの子どもは、表情のおだやかさとは別に、その裏で、虚構の世界を作ることが多
い。作るだけならまだしも、その世界に住んでしまう。ゲームのキャラクターにハマりこんでしま
い、現実と空想の区別がつかなくなってしまう、など。ある中学生は、毎晩、ゲームで覚えた呪
文を、空に向かって唱えていた。「超能力をください」と。あるいはものの考え方が極端化し、先
鋭化することもある。異常な嫉妬心や自尊心をもつことも多い。

 原因の多くは、家庭環境にある。威圧的な過干渉、権威主義的な子育て、親のはげしい情
緒不安、虐待など。異常な教育的過関心も原因になることがある。子どもの側からみて、息を
抜けない環境が、子どもの心をゆがめる。子どもは、先ほども書いたように、一見「よい子」に
なるが、それはあくまでも仮面。この仮面にだまされてはいけない。こうした仮面は、家庭内暴
力を繰り返す子どもに、共通して見られる。

 子どもの心を遊離させないためにも、子育ては、『まじめ八割、いいかげん二割』と覚えてお
く。これは車のハンドルの遊びのようなもの。子どもはこの「いいかげんな部分」で、羽をのば
し、自分を伸ばす。が、その「いいかげん」を許さない人がいる。許さないというより、妥協しな
い。外から帰ってきたら、必ず手洗いさせるとか、うがいさせるなど。このタイプの親は、何ごと
につけ完ぺきさを求め、それを子どもに強要する。そしてそれが子どもの心をゆがめる。が、
悲劇はまだ続く。このタイプの親に限って、その自覚がない。ないばかりか、自分は理想的な
親だと思い込んでしまう。中には父母会の席などで、堂々とそれを誇示する人もいる。
 なお子どもの二重人格性を知るのは、それほど難しいことではない。園や学校の参観日に行
ってみて、家庭における子どもと、園や学校での子どもの「違い」を見ればわかる。もしあなた
の子どもが、家庭でも園や学校でも、同じようであれば、問題はない。しかし園や学校では、別
人のようであれば、ここに書いた子どもを疑ってみる。そしてもしそうなら、心の開放を、何より
も大切にする。一人静かにぼんやりとできる時間を大切にする。

●前兆症状に注意
 子どもの心の変化を、的確にとらえることによって、子どもの心の病気を未然に防ぐことがで
きる。チェック項目を考えてみた。

○ときどきもの思いに沈み、ふきげんな表情を見せる(抑うつ感)
○意味もなく悲しんだり、感傷的になって悲嘆する(悲哀感)
○「さみしい」「ひとりぼっち」という言葉を、ときどきもらす(孤独感)
○体の調子が悪いとか、勉強が思い通りに進まないとこぼす(不調感)
○「どうせ自分はダメ」とか、「未来は暗い」などと考えているよう(悲観)
○何をするにも、自信がなく、自らダメ人間であると言う(劣等感)
○好きな番組やゲームのはずなのに、突然ポカンとそれをやめてしまう(感情の喪失)
○ちょっとしたことで、カッと激怒したり、人が変わったようになる(緊張感)
○イライラしたり、あせったりして、かえってものごとが手につかないよう(焦燥感)
○ときどき苦しそうな表情をし、ため息をもらうことが多くなった(苦悶)
○同じことを堂々巡りに考え、いつまでもクヨクヨしている(思考の渋滞)
○考えることをやめてしまい、何か話しかけても、ただボーッとしている(思考の停止)
○何かの行動をすることができず、決断することができない(優柔不断)
○ワークなど、問題集を見ているはずなのに、内容が理解できない(集中困難)
○「自分はダメだ」「悪い人間だ」と、自分を責める言動がこのところ目立つ(自責感)
○「生きていてもムダ」「どうせ死ぬ」と、「死」という言葉が多くなる(希死願望)
○行動力がなくなり、行動半径も小さくなる。友人も極端に少なくなる(活動力低下)
○動きが鈍くなり、とっさの行動ができなくなる。動作がノロノロする(緩慢行動)
○ブツブツと独り言をいうようになる。意味のないことを口にする(内閉性)
○行動半径が小さくなり、行動パターンも限られてくる(寡動)
○独りでいることを好み、家族の輪の中に入ろうとしない(孤立化)
○何をしても、時間ばかりかかり、前に進まない(作業能率の低下)
○具体的に死ぬ方法を考え出したり、死後の世界を頭の中で描くようになる(自殺企画)

こうした前兆症状を繰り返しながら、子どもの心は、本来あるべき状態から、ゆがんだ状態へ
と進んでいく。

●家庭内暴力の特徴
 家庭内暴力といわれる暴力には、ほかには見られない特徴がいくつかある。
(1)区域限定的
 家庭内暴力は、その名称のとおり、「家庭内」のみにおいて、なされる。これは子どもの側か
らみて、自己の支配下のみで、かつ自己の抑制下でなされることを意味する。その暴力が、家
庭を離れて、学校や社会、友人の世界で起こることはない。
(2)最終的危害行為にまでは及ばない
 子どもは、自分ができる、またできるギリギリのところまでの暴力を繰り返すが、その一線を
越えることはない。(たまに悲惨な事件がマスコミをにぎわすが、ああいったケースはむしろ例
外で、ほとんどのばあい、子ども自身が、暴力をどこかで抑制する。)どこか子ども自身が、「こ
こまでは許される」というような冷静な判断をもちつつ、暴力を繰り返す。これを私は「精神の二
重構造性」と呼んでいる。言いかえると、これを反対にうまく利用して、子どもの心に訴えるとい
う方法もある。私もよく、そういう家庭の中に乗り込んでいって、子どもと対峙したことがある。
そういうとき、もう一方の冷静な子どもがいることを想定して、つまりその子どもに話しかけるよ
うにして、諭すという方法をとる。「これは暴れる君ではない。もう一人の君だ。わかるかな。本
当の君だよ。本当の君は、やさしくて、もう一人の君を嫌っているはずだ。そうだろ?」と。大切
なことは、決して子どもを袋小路に追い込まないこと。励ましたり、脅したりするのは、タブー中
のタブー。
(3)計算された恐怖
 子どもが暴力を振るう目的は、親や兄弟に、恐怖を与えること。その恐怖を与えることによっ
て、相手を自分の支配下に置こうとする。方法としては、暴力団の構成員が、恐怖心を相手に
与えて、自分の優位性を誇示しているのに似ている。そしてその恐怖は、計算されたもの。決
して突発的、偶発的なものではない。繰り返すが、ここが、子どもがほかで見せる暴力とは違う
ところ。妄想性を帯びることもあるが、たとえば分裂病患者がもつような、非連続的な妄想や、
了解不能な妄想をもつことはない。このタイプの子どもは、どうすれば相手が自分の暴力に恐
怖を覚え、自分に屈服するかを計算しながら、行動する。そういう意味では、「依存」と「甘え」
が混在した、アンビバレンツ(両価的)な状態ということになる。
●家庭内暴力には、どう対処するか
 家庭内暴力に対処するには、いくつかの鉄則がある。
(1)できるだけ初期の段階で、それに気づく
家庭内暴力が家庭内暴力になるのは、初期の段階での不手際、家庭教育の失敗によるとこ
ろが大きい。子どもが荒れ始めると、親はこの段階で、説教、威圧、暴言、暴力を使って子ど
もを抑えようとする。体力的にもまだ親のほうが優勢で、一時はそれで収まる様子を見せるこ
とが多い。しかしこうした無理や強制は、それがたとえ一時的なものであっても、子どもの心に
は取り返しがつかないほどのキズを残す。このキズが、その後、家庭内暴力を、さらに凶暴な
ものにする。
(2)「直そう」とか、「治そう」と思わないこと
一度、悪循環に入ると、「以前のほうが、まだ症状が軽かった」ということを繰り返しながら、あ
とはドロ沼の悪循環におちいる。この悪循環の「輪」に入ると、あとは何をしても裏目、裏目と
出る。子どもの心の問題というのは、そういうもので、たとえばこれは非行の例だが、「門限を
過ぎても帰ってきた、そこで親は強く叱る」→「外泊する。そこで親は強く叱る」→「家出を繰り返
す、そこで親は強く叱る」→「年上の男性(女性)と、同棲生活を始める、そこで親は強く叱る」
→「性病になったり、妊娠したりする……」という段階を経て、状態は、どんどんと悪化する。
そこで大切なことは、一度、こうした空回り(悪循環と裏目)を感じたら、「今の状態をそれ以上
悪くしないこと」だけを考えて、親は子どもの指導から思い切って手を引く。「直そう」とか、「治
そう」と思ってはいけない。つまり子どもの側からみて、子どもを束縛していたものから子どもを
解き放つ。(親にはその自覚がないことが多い。)その時期は早ければ早いほどよい。また子
どもの症状は、数か月、半年、あるいは一年単位で観察する。一時的な症状の悪化、改善
に、一喜一憂しないのがコツ。
(3)愛情の糸は切らない
 家庭内暴力は、あくまでも「心の病気」。そういう視点で対処する。脳そのものが、インフルエ
ンザにかかったと思うこと。熱病で、苦しんでいる子どもに、勉強などさせない。ただ脳がインフ
ルエンザにかかっても、外からその症状が見えない。だから親としては、子どもの病状がつか
みにくいが、しかし病気は病気。そういう視点で、いつも子どもをみる。無理をしてはいけない。
無理を求めてもいけない。この時点で重要なことは、「どんなことがあっても、私はあなたを捨
てません」「あなたを守ります」という親の愛情を守り抜くこと。ここに書いたように、これはイン
フルエンザのようなもの。本当のインフルエンザのように、数日から一週間で治るということは
ないが、しかし必ず、いつか治る。(治らなかった例はない。症状がこじれて長期に渡った例
や、副次的にいろいろな症状を併発した例はある。)必ず治るから、そのときに視点を置いて、
「今」の状態をみる。この愛情さえしっかりしていれば、子どもの立ち直りも早いし、予後もよ
い。あとで笑い話になるケースすらある。
(4)心の緊張感をほぐす
 一般の情緒不安と同じに考え、心の緊張感をほぐすことに全力をおく。そのとき、何が、「核」
になっているかを、知ることが大切。多くは、将来への不安や心配が核になっていることが多
い。自分自身がもつ学歴信仰や、「学校へは行かねばならないもの」という義務感が、子ども
自らを追い込むこともある。よくあるケースとしては、子どもの心を軽減しようとして、「学校へは
行かなくてもいい」と言ったりすると、かえって暴力がはげしくなることがある。子ども自身の葛
藤に対しては、何ら解決にはならないからである。
 だいたい親自身も、それまで学歴信仰を強く信奉するケースが多い。子どもはそれを見習っ
ているだけなのだが、親にはその自覚がない。意識もない。子どもが家庭内暴力を起こした段
階でも、「まともに学校へ行ってほしい」「高校くらいは出てほしい」と願う親は多い。が、それも
限界を超えると、そのときはじめて親は、「学校なんかどうでもいい」と思うようになるが、子ども
はそれほど器用に自分の考えを変えることができない。そこで葛藤することになる。「どんどん
自分がダメになる」という恐怖の中で、情緒は一挙に不安定になる。
 ただ症状が軽いばあいは、子どもが学校へ行きやすい環境を用意してあげることで、暴力行
為が軽減することがある。A君は、夏休みの間、断続的に暴力行為を繰り返していたが、母親
が一緒になって宿題を片づけてやったところ、その暴力行為は停止した。このケースでも、子
ども自身が、自分を追い込んでいたことがわかる。
(5)食生活の改善
 家庭内暴力とはやや、内容を異にするが、「キレる子ども」というのがいる。そのキレる子ども
について、最近にわかにクローズアップされてきたのが、「セロトニン悪玉説」である。つまり脳
間伝達物質であるセロトニンが異常に分泌され、それが毒性をもって、脳の抑制命令を狂わ
すという(生化学者、ミラー博士ほか)。アメリカでは、「過剰行動児」として、もう二〇年以上も
前から指摘されていることだが、もう少し具体的に言うとこうだ。たとえば白砂糖を多く含む甘
い食品を、一時的に過剰に摂取すると、インスリンが多量に分泌され、それがセロトニンの過
剰分泌を促す。そしてそれがキレる原因となるという(岩手大学の大沢博名誉教授や大分大
学の飯野節夫教授ほか)。
 このタイプの子どもは、独特の動き方をするのがわかっている。ちょうどカミソリの刃でスパス
パとものを切るように、動きが鋭くなる。なめらかな動作が消える。そしていったん怒りだすと、
カッとなり、見境なく暴れたり、ものを投げつけたりする。ギャーッと金切り声を出すことも珍しく
ない。幼児でいうと、突発的にキーキー声を出して、泣いたり、暴れたりする。興奮したとき、体
を小刻みに震わせることもある。
 そこでもしこういう症状が見られたら、まず食生活を改善してみる。甘い食品を控え、カルシ
ウム分やマグネシウム分の多い食生活に心がける。リン酸食品も控える。リン酸は日もちをよ
くしたり、鮮度を保つために多くの食品に使われている。リン酸をとると、せっかく摂取したカル
シウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出してしまう。一方、昔からイギリスでは、『カルシ
ウムは紳士をつくる』という。日本でも戦前までは、カルシウムは精神安定剤として使われてい
た。それはともかくも、子どもから静かな落ち着きが消えたら、まずこのカルシウム不足を疑っ
てみる。ふつう子どものばあい、カルシウムが不足してくると、筋肉の緊張感が持続できず、座
っていても体をクニャクニャとくねらせたり、ダラダラさせたりする。
 これはここにも書いたように、キレる子どもへの対処法のひとつだが、家庭内暴力を繰り返
す子どもにも有効である。

 最後に家庭内暴力を起こす子どもは、一方で親の溺愛、あるいは育児拒否などにより、情緒
的未熟性が、その背景にあるとみる。親は突発的に変化したと言うが、本来子どもというの
は、その年齢ごとに、ちょうど昆虫がカラを脱ぐように、段階的に成長する。その段階的な成長
が、変質的な環境により、阻害されたためと考えられる。よくあるケースは、幼児期から少年少
女期にかけて、「いい子」で過ごしてしまうケース。こうした子どもが、それまで脱げなかったカラ
を一挙に脱ごうとする。それが家庭内暴力の大きな要因となる。そういう意味では、家庭内暴
力というのは、もちろん心理的な分野からも考えられなければならないが、同時に、家庭教育
の失敗、あるいは家庭教育のひずみの集大成のようなものとも考えられる。子どもだけを一方
的に問題にしても意味はないし、また何ら解決策にはならない。

(以上、未完成ですが、また別の機会に補足します。)
(02−9−1)※








 Q&A INDEX   はやし浩司のHPへ 
【10】

●不登校

 名古屋市に住んでいるKさんの相談を受けるようになって、もう六年になる? お嬢さんが、
中学二年生になったという。はやいものだ。そのKさんから、久しぶりに、メールが届いた。

●Kさんからのメール
林先生へ

お忙しい中早速お返事ありがとうございます。

小学校低学年の頃、行きたくないときはパニックを起こしたり、死にたいとまでいい、家の中で
も暴れたりして大騒ぎしていたのに、今はまったくそういうことはありません。

(私ももう無理に行かせるということはできないと、すぐあきらめるため、トラブルにならないの
ですが……。)

でもそういう意味では、彼女も自分をコントロールするよう努力しているのかもしれません。

昨日朝、学校の先生から「明日はパン工場に見学に行きその準備があるので熱がないなら来
るように」という電話があり、うかつにも、嫌がる娘にその電話を渡してしまいました。
そのとき、娘は、初めて涙を流し、電話に対し「無言」で抵抗をしました。

そのあと、泣きながら、「学校を辞めたい。もうだめだ。やめたくないが女子ソフトクラブも辞め
なければならない。(学校のソフト部の同級生がたくさん通っているため)、もう私のことはほう
っておいて」と訴えました。

これはだめだ、と思いました。
あの電話がなければ、週に二、三回でも学校に行っていたかもしれません。
その電話の前までは、パン工場に行くのは楽しみだったので行く、といっていたのです。
(過去のことを話すのは愚かなことでしたね)

私は、娘の心で問題になったことを尋ねましたが頑として答えません。
それで、そんなにいやなら行かなくてよいこと、あなたの居場所はここにあるということ、ママは
必ず味方をすること、
早急に自分だけの判断で結論を急がないことだけを伝えました。

一か月になるか一年になるか三年になるか。
私の、娘とのでなく、私自身との戦いがこれから始まると思うと、ぐらっとします。

でも学校に行かせなければ、行くかしら、と思っていたときは夜全然眠れませんでしたが、昨日
の晩は行かせなくてよい
と思い、よく眠れました。

夫は大阪で単身赴任。相変わらず出張も多く、今月は一五日間出張です。
電話で話しますが、きっと彼女のいう問題は些細なことで、本当に行かせることをまったくあき
らめていいのか?、とその判断がまだ納得できていません。

ただ近くにいるのが私なので、私の判断に従わざるを得ないのでしょう。
私は夫によく娘に対しナビゲートしすぎだといわれます。
荒れてほしくないと思うあまり、先回りしてこうではないか? こうしたら?、と言っているといい
ます。

気をつけるようにはしているのですが……

●はやし浩司より、Kさんへ、
 引きこもり的な症状をみせ、それが原因(?)で、学校恐怖症的な症状を見せたら、本来な
ら、鉄則は、ただひとつ。「わずらわしさからの解放」です。最近、C君(二六歳)が、八年間もの
引きこもりから抜け出て、やっと、何とか会社勤めができるようになりました。そのC君が、自分
を振りかえって、こう言っています。その内容を、まとめてみます。

(1)(引きこもっている状態のときは)、何もかまってほしくなかった。何がいやかって、親の心
配そうな顔をみるのが、一番、いやだった。
(2)まわりの者が、あれこれ心配してくれる気持ちは、よくわかったが、それがわずらわしくて、
しかたなかった。
(3)自分で何とかしようと思えば思うほど、そのたびに、ますます症状が悪化していくのが、よく
わかった。
(4)子どもの引きこもりに悩んでいる親たちには、こう言いたい。「子どものことは忘れて、自分
たちは自分たちで、好き勝手なことをすればいい」と。

 C君は、高校を卒業すると同時に、発症し、大学は数か月で中退。(最初は休学届けを出し
たが、二年後に中退。)以後、自宅に帰り、しばらく不規則な生活を繰り返したあと、そのまま
自分の部屋に引きこもるようになった。C君の闘病歴。

(1)最初の半年くらいは、ほとんど部屋から出てこなかった。生活は、昼と夜が逆転し、昼間は
ひたすら寝て、夜になると起きてきた。
(2)家族との会話はほとんどなく、母親のささいな言葉で、C君は激怒。母親はこう言った。「ま
さに一触即発の状態で、こわくて何も言えませんでした」と。
(3)こういう状態が、三〜四年つづいた。ときどき、中学時代の友人が、遊びにきてくれたが、
その友人だけが、唯一の「窓」だった。
(4)過食と拒食を周期的に繰り返し、そのたびに、プクッと太ったり、反対にやせたりした。
(5)精神科で処方された薬をのんだこともあるが、はげしい吐き気、気分の悪さ(胸苦しさ)な
どの副作用があったので、途中で服用をやめた。やめたあと、再び、症状が悪化したこともあ
る。
(6)C君が、幼児がえり現象を見せたのは、四年目くらいではなかったかとのこと。最初は、ガ
ンダム人形などで遊び、その遊びが、数か月単位で、少年期、青年期へと変わっていった。
(7)やがて車の免許を取ると言い出し、免許を取得。それ以後は、ときどき外出するようにな
り、いくつかのアルバイトを経たのち、今の仕事についた。

 このC君の例でもわかるように、こうした心の問題は、少なくとも一年単位でみなければなり
ません。同じ時期、Aさんという高校一年生の女の子も、拒食症から、高校を中退しましたが、
そのAさんも、同じような経過をたどっています。外から心の中がわからないだけに、まわりの
ものは、どうしても安易に考えがちですが、心の問題というのは、そういうものです。

 自意識という言葉がありますが、こういうケースでは、この自意識が、二つの方向に作用しま
す。(そういう自分であってはいけないから、なおそうという自意識)という自意識が、(なおそう
という自意識)と、(かえって自分はダメな人間と追い込んでいく自意識)に分裂してしまうので
す。それは想像を絶する、心の葛藤(かっとう)と言ってもよいでしょう。わかりやすく言えば、
(なおそう)と思えば思うほど、自分を、底なしの暗闇の中に追い込んでしまうのです。Aさん
は、あるときメールで、こう書いてきました。

 「(母親が)『あんたを見ていると、つらい』と言うが、それを言われる私は、もっとつらかった」
と。

 そこで大切なのは、「わずらわしさからの解放」です。子どもの世界から、わずらわしいことを
徹底的に排除します。具体的には、子どもの側から見て、親の視線や心配をまったく感じさせ
ないほどまで、子どもの周囲から「家族の気配」を消すことです。C君の両親は、私のアドバイ
スに従い、つぎのようにしました。

 たとえばC君が、夕方起きてきたとします。簡単なあいさつはしても、母親はそのまま、自分
の仕事をつづけ、C君をあたかも、「空気」のように扱ったそうです。食事の世話とか、衣服の
世話はしたそうですが、親は親で、好き勝手なことをした。もっともそういう状態になるのに、
一、二年はかかったといいますが、それを振り返って、母親も、そしてC君自身も、「それがよ
かった」と言っています。

 心の問題は、どこかであせってなおそうと思うと、そのつど、かえって症状をこじらせてしまい
ますから、注意します。そしてその分、立ちなおりを遅らせます。よくある例が、子どもの不登校
にしても、泣き叫んで抵抗する子どもを、無理やり車につめこんで学校へつれて行くケース。親
の気持ちは理解できないわけではありませんが、その「一撃」が、取り返しがつかないほど、大
きなキズを子どもの心につけてしまうのです。この段階で、「そうね、だれだって、学校なんか、
行きたくないこともあるのよ。しばらく学校を休んで、ママと楽しくすごしましょう」と、親が言って
いたら、あるいは、言うことができたら、それほど症状がこじれなくてすんだかもしれません。そ
ういうケースは、いくらでもあります。

 しかし、この問題は、不思議ですね。先のC君も、そのときは、親は、暗くて長いトンネルに入
り、「どうしてうちの子だけが……」と苦しんだそうですが、終わってみると、笑い話になったそう
です。親子の絆(パイプ)も、それで太くなったと言っています。

 それに少し前までは、学歴信仰や学校神話がまだ残っていて、それで苦しむ親や子どももい
ましたが、今は、もうそういう時代ではありません。価値観が変わったというより、日本人もやっ
と、欧米並みの価値観をもつようになってきました。アメリカでは、ホームスクーラーが、今年、
二〇〇万人に達するだろうと言われています。高校を卒業するまで、一度も学校へ通わなかっ
たホームスクーラーに対しても、入学を許可する大学が、世界で一〇〇〇校を超えました。ヨ
ーロッパでは、大学の単位の共通化が進み、今では、どこの大学で、どの学部で勉強しても、
「単位は同じ」という状態になりました。教育の自由化、多様化は、もう世界の常識なのです。

 そういうことを考えると、「学校とは行かねばならないところ」と考えている日本の親たちの、
何というか化石のような観念は、驚きでしかありません。まさに世界の笑いものですが、笑われ
ていることすら、わかっていないのですから、これまた悲劇ですね。

 大切なことは、こうした愚劣な社会的通念で、親子のきずなを犠牲にしてはいけないというこ
とです。またきずなを犠牲にするだけの価値はありません。あなたにしても、あなたのお嬢さん
にしても、たった一度しかない人生ですから、もっと自由に、もっと気楽に、この広い世界を羽
ばたこうではありませんか。ひょっとしたら、あなたのお嬢さんは、体をはって、あなたに真の自
由は何か、それを教えようとしているのかもしれませんよ。

 いまどき、不登校なんて、何でもないということ。あんな窮屈な世界(つまり学校)で、おとなし
くしておられる子どものほうが、おかしいのです。私なら、一日で、不登校児になります。ホン
ト! それとも、あなたなら、行けますか? イギリスのある教育者は、「学校教育は、監獄生
活。子どもは小学校入学と同時に、一〇年の刑を科せられる」と書いています。少し乱暴な意
見に聞こえるかもしれませんが、この問題は、ほんの少し視点を変えれば、何でもない問題だ
ということが、あなたにもわかるはずです。

 だから、「戦い」などと、恐ろしい言葉は使わないで、つまりもっと肩の力を抜いて、気楽に考
えてください。そんなおおげさな問題ではないのです。学校の勉強など、できても、またできなく
ても、どうということはないのです。みんな、明治以後、政府によってつくられた、「幻想」を信じ
込まされているだけです。もともと価値がないものを、価値があると思い込まされているだけで
す。たとえば隣の韓国では、約二年半の徴兵時代の成績で、そのあとの人生(就職先)が大き
く決まります。だから若者たちは、必死なのですが、それをよしとしない若者がいたところで、少
しもおかしくはないですね。むしろそういう若者のほうが、正常かもしれない? 日本の教育に
も、そういう矛盾が、山のようにあります。

 だからといって学校教育を否定するわけではありませんが、山に登る道は一つではないし、
また一つと考える必要もないのです。もっとおおらかに考えたらいかがでしょうか。

 メール、ありがとうございました。また何かあれば、ご連絡ください。
(02−11−28)

●みんなで力をあわせて、狂った日本の常識を変えましょう!











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ント はやし浩司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市 金沢大学法文学部卒 はやし浩司 教育評論家 幼児教育評論家 林浩
司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやしひろし 林ひろし 静岡県 浜松市 幼
児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやし浩司・林浩二(司) 林浩司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐
阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 Hiroshi Hayashi / 1970 IH student/International House / Melbourne Univ.
writer/essayist/law student/Japan/born in 1947/武義高校 林こうじ はやしこうじ 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市生まれ
 金沢大学法文学部卒 教育評論家 ハローワールド(雑誌)・よくできました(教材) スモッカの知恵の木 ジャックと英語の木 (CAI) 
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