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【1】

●赤ちゃんがえり

北海道在住のESさんからの相談

 北海道在住のESさんから、こんな相談が届いた。

「二年ほど前にはやし先生にご著書をお贈りいただいた北海道K郡のESと申します。
その節は有難うございました。あれ以来、先生のホームページとEマガジンを楽しく読ませてい
ただき、子育ての参考にさせていただいております。    

日々、子育ての奥の深さを実感すると同時に、子供を冷静に見る、距離をおいて見ることの大
切さも知ったように思います。とはいえ、ご相談があり、メールをさせていただきました。

現在、七歳の女の子(長女)、四歳の男の子(長男)、一歳の男の子(二男)がおります。
七歳の子は年少、年長と幼稚園に馴染みにくく、表情も硬く、じっと人をみすえるようなところも
あり、子供というよりは大人を相手にしているような気持ちになったものですが
年長になった頃から友達も増え、表情が生き生きと見違えるようになりました。弟に対しても以
前とは違いとてもやさしくお姉さんらしくなりました。

これも先生の子育て論がとても参考になっていたことも大きいと、嬉しく思っています。

四歳の男の子ですが、最近、しつこいほどに@「お兄ちゃんになりたくない」、「大人になりたく
ない」、まだ学校は先のことにもかかわらず「学校に行きたくない」、「勉強したくない」と言い困
っています。A弟が生まれ赤ちゃんがえりしたのかなあとは思うものの、あまりにしつこさに閉
口してしまいます。

三人いると、確かにその子に充分手をかけてやれないのは事実ですが、Bわたしとしては不
安にさせるような言動はないつもりです。

「〜したくない」といえば、「いいよ」と理解は示しているつもりなのですが……
性格は幼稚園では、明るく、友達ともよく遊び、活発なようです。Cが、ここ二〜三か月あまり
元気がないようで、先生にも甘えているようです。今日も園に用事でいった時も恥ずかしそうな
さびしそうな表情で笑いかけてきて、少し胸が痛みました。

D家では、明るく元気なものの神経質なところがあります。例えば、手足などの少しの汚れを
気にしたり、傷ともいえないような傷を気にしたりです。そして冗談が通じにくいのか笑わそうと
していったことにいじけたり、腹をたてたりです。同じことを姉にいった場合、笑ってくれます。

長男の否定的なところを、もっと明るいほうへ向くようにしてやりたいと思うのですが、親とし
て、どう接してやればよいでしょうか?

やまに登ったり、木の実を拾ったり、と外へ出ることがもともと好きですので、E主人とは、その
ようなところへ連れ出してやるのが長男の気持ちを解消させるのかなあとは話しています。

どうぞアドバイスをよろしくお願いいたします。」

【はやし浩司よりESさんへ】

 ご無沙汰しています。メール、ありがとうございました。少し、考えてみます。

@「お兄ちゃんになりたくない」、「大人になりたくない」、まだ学校は先のことにもかかわらず
「学校に行きたくない」、「勉強したくない」と言い困っています。

 ここで一番需要なポイントは、四歳の子どもが、「お兄ちゃんになりたくない」と言っている点で
す。この言葉は「お兄ちゃんでいるのは、いやだ」とも解釈できます。どこかで「兄」としてのプレ
ッシャーを感じているのかもしれません。赤ちゃんがえりを起こした子どもに、ときどき観察され
る発言です。

 赤ちゃんがえりというのは、一種の恐怖反応と理解されています。「捨てられた」「捨てられる
のでは」という妄想性が、子どもの心をゆがめます。小児うつ病(依存型うつ病)のひとつと考え
る学者もいます。どちらにせよ、下の子が生まれたことが原因による嫉妬がからむため、叱っ
たり、説教したりしても、意味はありません。少し極端な考え方ですが、もしあなたの夫がある
日突然、愛人を家に連れてきて、「今日からいっしょに住む」と言ったら、あなたはどうするでし
ょうか。子どもの置かれた立場は、それに似た立場と考えてよいでしょう。赤ちゃんがえりを、
決して、安易に考えてはいけません。

A弟が生まれ赤ちゃんがえりしたのかなあとは思うものの、あまりにしつこさに閉口してしまい
ます。

 嫉妬がからむと、おとなでも、本態的に狂うということは、よくあります。「本態的」というのは、
人間性そのものまで影響を受けるということです。乳幼児のばあい、嫉妬心をいじるのは、タブ
ー中のタブーです。で、ESさんの子どものように、赤ちゃんげりの症状が、「親が閉口するほ
ど、症状がしつこくなる」ことは、珍しくありません。子どもによっては、下の子を殺す寸前のこと
までします。この点においても、赤ちゃんがえりを、安易に考えてはいけません。

B私としては不安にさせるような言動はないつもりです。「〜したくない」といえば、「いいよ」と理
解は示しているつもりなのですが……

 これは赤ちゃんがえりとは、別の問題です。子どもは、いろいろわがままを言いながら、親の
愛情を確認したり、確かめたりします。赤ちゃんがえりの症状は子どもの欲求不満に準じて、
攻撃型(下の子いじめ)、内閉型(言動が赤ちゃんぽくなる)、固着型(ものにこだわる)に分け
て考えます。子どもによっては、そのつど、いろいろな症状を示すこともあります。ときに下の子
をいじめたり、あるいは親に甘えたりするなど。心の緊張感がとれないため、ささいなことで、キ
レたり、激怒したり、かんしゃく発作を起こしたりすることもあります。

 赤ちゃんがえりと、わがままは区別して考えます。つまりそれがわがままによるものであれ
ば、親は親として、き然とした態度でのぞみます。一般的には、わがままは無視します。わがま
まを言ってもムダという雰囲気をつくります。

 ただし子どものほうから愛情を求めてきたようなときには、それには、こまめに、かつていね
いに応じてあげてください。

Cが、ここ二〜三か月あまり元気がないようで、先生にも甘えているようです。今日も園に用事
でいった時も恥ずかしそうなさびしそうな表情で笑いかけてきて、少し胸が痛みました。

 基本的には愛情不足と考えてよいでしょう。親は「みな平等にかわいがっているから問題は
ないはず」と考えがちですが、子どもの側からすれば、「平等」ということが納得できないので
す。先の例で、あなたの夫が、「おまえも愛人も平等にかわいがっている」と言っても、あなたは
それに納得するでしょうか。

D家では、明るく元気なものの神経質なところがあります。例えば、手足などの少しの汚れを
気にしたり、傷ともいえないような傷を気にしたりです。そして冗談が通じにくいのか笑わそうと
していったことにいじけたり、腹をたてたりです。同じことを姉にいった場合、笑ってくれます。

 いくつか神経症による症状も出ていると思われます。神経症の原稿は、ここに張りつけてお
きますので参考にしてください。

E主人とは、そのようなところへ連れ出してやるのが長男の気持ちを解消させるのかなあとは
話しています。

 最後に、この問題は、結局は、子どもに、いかにすれば安心感を与えることができるかという
点に行きつきます。おとな的な発想で、「外へ連れ出せばよいのでは」と考えることはムダでは
ありませんが、方向性が少し違うように思います。あくまでもお子さんの気持ちを大切に、お子
さんの気持ちを確かめながら行動するのがよいかと思います。強引にあちこちへ連れまわす
のは、かえって逆効果になるのではと心配しています。

++++++++++++++++++++++
参考@(子どもの欲求不満)

子どもが欲求不満になるとき

●欲求不満の三タイプ
 子どもは自分の欲求が満たされないと、欲求不満を起こす。この欲求不満に対する反応は、
ふつう、次の三つに分けて考える。

@攻撃・暴力タイプ
 欲求不満やストレスが、日常的にたまると、子どもは攻撃的になる。心はいつも緊張状態に
あり、ささいなことでカッとなって、暴れたり叫んだりする。私が「このグラフは正確でないから、
かきなおしてほしい」と話しかけただけで、ギャーと叫んで私に飛びかかってきた小学生(小四
男児)がいた。あるいは私が、「今日は元気?」と声をかけて肩をたたいた瞬間、「このヘンタイ
野郎!」と私を足げりにした女の子(小五)もいた。こうした攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩す
る、暴力を振るう、暴言を吐く)と、裏に隠れてするタイプ(弱い者をいじめる、動物を虐待する)
に分けて考える。

A退行・依存タイプ
 ぐずったり、赤ちゃんぽくなったり(退行性)、あるいは誰かに依存しようとする(依存性)。こ
のタイプの子どもは、理由もなくグズグズしたり、甘えたりする。母親がそれを叱れば叱るほ
ど、症状が悪化するのが特徴で、そのため親が子どもをもてあますケースが多い。

B固着・執着タイプ
 ある特定の「物」にこだわったり(固着性)、あるいはささいなことを気にして、悶々と悩んだり
する(執着性)。ある男の子(年長児)は、毛布の切れ端をいつも大切に持ち歩いていた。最近
多く見られるのが、おとなになりたがらない子どもたち。赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起
こす。ある男の子(小五)は、幼児期に読んでいたマンガの本をボロボロになっても、まだ大切
そうにカバンの中に入れていた。そこで私が、「これは何?」と声をかけると、その子どもはこう
言った。「どうチェ、読んでは、ダメだというんでチョ。読んでは、ダメだというんでチョ」と。子ども
の未来を日常的におどしたり、上の兄や姉のはげしい受験勉強を見て育ったりすると、子ども
は幼児がえりを起こしやすくなる。

 またある特定のものに依存するのは、心にたまった欲求不満をまぎらわすためにする行為と
考えるとわかりやすい。これを代償行為というが、よく知られている代償行為に、指しゃぶり、
爪かみ、髪いじりなどがある。別のところで何らかの快感を覚えることで、自分の欲求不満を
解消しようとする。

●欲求不満は愛情不足
 子どもがこうした欲求不満症状を示したら、まず親子の愛情問題を疑ってみる。子どもという
のは、親や家族の絶対的な愛情の中で、心をはぐくむ。ここでいう「絶対的」というのは、「疑い
をいだかない」という意味。その愛情に「ゆらぎ」を感じたとき、子どもの心は不安定になる。あ
る子ども(小一男児)はそれまでは両親の間で、川の字になって寝ていた。が、小学校に入っ
たということで、別の部屋で寝るようになった。とたん、ここでいう欲求不満症状を示した。その
子どものケースでは、目つきが鋭くなるなどの、いわゆるツッパリ症状が出てきた。子どもなり
に、親の愛がどこかでゆらいだのを感じたのかもしれない。母親は「そんなことで……」と言っ
たが、再び川の字になって寝るようになったら、症状はウソのように消えた。

●濃厚なスキンシップが有効
 一般的には、子どもの欲求不満には、スキンシップが、たいへん効果的である。ぐずったり、
わけのわからないことをネチネチと言いだしたら、思いきって子どもを抱いてみる。最初は抵抗
するような様子を見せるかもしれないが、やがて静かに落ちつく。あとはカルシウム分、マグネ
シウム分の多い食生活に心がける。

 なおスキンシップについてだが、日本人は、国際的な基準からしても、そのスキンシップその
ものの量が、たいへん少ない。欧米人のばあいは、親子でも日常的にベタベタしている。よく
「子どもを抱くと、子どもに抱きグセがつかないか?」と心配する人がいるが、日本人のばあ
い、その心配はまずない。そのスキンシップには、不思議な力がある。魔法の力といってもよ
い。子どもの欲求不満症状が見られたら、スキンシップを濃厚にしてみる。それでたいていの
問題は解決する。

++++++++++++++++++++++
参考A(幼児がえり)

おとななんかに、なりたくない

 赤ちゃんがえりという、よく知られた現象が、幼児の世界にある。下の子どもが生まれたこと
により、上の子どもが赤ちゃんぽくなる現象をいう。急におもらしを始めたり、ネチネチとしたも
のの言い方になる、哺乳ビンでミルクをほしがるなど。定期的に発熱症状を訴えることもある。
原因は、本能的な嫉妬心による。つまり下の子どもに向けられた愛情や関心をもう一度とり戻
そうと、子どもは、赤ちゃんらしいかわいさを演出するわけだが、「本能的」であるため、叱って
も意味がない。

 これとよく似た現象が、小学生の高学年にもよく見られる。赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえ
り、である。先日も一人の男児(小五)が、ボロボロになったマンガを、大切そうにカバンの中か
ら取り出して読んでいたので、「何だ?」と声をかけると、こう言った。「どうせダメだと言うんで
チョ。ダメだと言うんでチョ」と。

 原因は成長することに恐怖心をもっているためと考えるとわかりやすい。この男児のばあい
も、日常的に父親にこう脅されていた。「中学校の受験勉強はきびしいぞ。毎日、五、六時間、
勉強をしなければならないぞ」「中学校の先生は、こわいぞ。言うことを聞かないと、殴られる
ぞ」と。こうした脅しが、その子どもの心をゆがめた。
 ふつう上の子どものはげしい受験勉強を見ていると、下の子どもは、その恐怖心からか、お
となになることを拒絶するようになる。実際、小学校の五、六年生児でみると、ほとんどの子ど
もは、「(勉強がきびしいから)中学生になりたくない」と答える。そしてそれがひどくなると、ここ
でいうような幼児がえりを起こすようになる。

 話は少しそれるが、こんなこともあった。ある母親が私のところへやってきて、こう言った。「う
ちの息子(高二)が家業である歯科技工士の道を、どうしても継ぎたがらなくて、困っています」
と。それで「どうしたらよいか」と。そこでその高校生に会って話を聞くと、その子どもはこう言っ
た。「あんな歯医者にペコペコする仕事はいやだ。それにうちのおやじは、仕事が終わると、
『疲れた、疲れた』と言う」と。そこで私はその母親に、こうアドバイスした。「子どもの前では、家
業はすばらしい、楽しいと言いましょう」と。結果的に今、その子どもは歯科技工士をしている
ので、私のアドバイスは、それなりに効果があったということになる。さて本論。

 子どもの未来を脅してはいけない。「小学校では宿題をしないと、廊下に立たされる」「小学校
では一〇、数えるうちに服を着ないと、先生に叱られる」などと、子どもを脅すのはタブー。子ど
もが一度、未来に不安を感ずるようになると、それがその先、ずっと、子どものものの考え方
の基本になる。そして最悪のばあいには、おとなになっても、社会人になることそのものを拒絶
するようになる。事実、今、おとなになりきれない成人(?)が急増している。二〇歳をすぎて
も、幼児マンガをよみふけり、社会に同化できず、家の中に引きこもるなど。要は子どもが幼
児のときから、未来を脅さない。この一語に尽きる。

+++++++++++++++++++
参考B(子どもの神経症)(中日新聞発表済み)

子どもの神経症

 心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。脳の機
能が変調したために起こる症状と考えると、わかりやすい。ふつう子どもの神経症は、@精神
面、A身体面、B行動面の三つの分野に分けて考える。そこであなたの子どもをチェック。次
の症状の中で思い当たる症状(太字)があれば、丸(○)をつけてみてほしい。

 精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる。高所恐怖症、
赤面恐怖症、閉所恐怖症、対人恐怖症など)、強迫症状(ささいなことを気にして、こわがる)、
不安症状(理由もなく思い悩む)、抑うつ症状(ふさぎ込んだり、落ち込んだりする)、不安発作
(心配なことがあると過剰に反応する)など。混乱してわけのわからないことを言ったり、グズグ
ズするタイプと、大声をあげて暴れるタイプに分けて考える。ほかに感情面での神経症として、
赤ちゃんがえり、幼児退行(しぐさが幼稚っぽくなる)、かんしゃく、拒否症、嫌悪症(動物嫌悪、
人物嫌悪など)、嫉妬、激怒などがある。

 身体面の神経症……夜驚症(夜中に突然暴れ、混乱状態になる)、夢中遊行(ねぼけてフラ
フラとさまよい歩く)、夜尿症、頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、遺尿(その意識がないまま尿もら
す)、睡眠障害(寝つかない、早朝起床、寝言、悪夢)、嘔吐、下痢、原因不明の慢性的な疾患
(発熱、ぜん息、頭痛、腹痛、便秘、ものもらい、眼病など)、貧乏ゆすり、口臭、脱毛症、じん
ましん、アレルギー、自家中毒(数日おきに嘔吐を繰り返す)、口乾、チックなど。指しゃぶり、
爪かみ、髪いじり、歯ぎしり、唇をなめる、つば吐き、ものいじり、ものをなめる、手洗いグセ
(潔癖症)、臭いかぎ(疑惑症)、緘黙、吃音(どもる)、あがり症、失語症、無表情、無感動、涙
もろい、ため息なども、これに含まれる。一般的には精神面での神経症に先だって、身体面で
の神経症が現われることが多い。

 行動面の神経症……神経症が行動面におよぶと、さまざまな不適応症状となって現われる。
不登校もその一つだが、その前の段階として、無気力、怠学、無関心、無感動、食欲不振、過
食、拒食、異食、小食、偏食、好き嫌い、引きこもり、拒食などが断続的に起こることが多い。
生活習慣が極端にだらしなくなることもある。忘れ物をしたり、乱れた服装で出歩いたりするな
ど。ほかに反抗、盗み、破壊的行為、残虐性、帰宅拒否、虚言、収集クセ、かみつき、緩慢行
動(のろい)、行動拒否、自慰、早熟、肛門刺激、異物挿入、火遊び、散らかし、いじわる、いじ
めなど。

こうして書き出したら、キリがない。要するに心と身体は、密接に関連しあっているということ。
「うちの子どもは、どこかふつうでない」と感じたら、この神経症を疑ってみる。ただし一言。こう
した症状が現われたからといって、子どもを叱ってはいけない。叱っても意味がないばかりか、
叱れば叱るほど、逆効果。神経症は、ますますひどくなる。原因は、過関心、過干渉、過剰期
待など、いろいろある。

 さて診断。丸の数が、一〇個以上……あなたの子どもの心はボロボロ。家庭環境を猛省す
る必要がある。九〜五個……赤信号。子どもの心はかなりキズついている。四〜一個……注
意信号。見た目の症状が軽いからといって、油断してはならない。

+++++++++++++++++
参考C(子どもへの愛情)

愛情は落差の問題

 下の子どもが生まれたりすると、よく下の子どもが赤ちゃんがえりを起こしたりする。(赤ちゃ
んがえりをマイナス型とするなら、下の子をいじめたり、下の子に乱暴するのをプラス型という
ことができる。)本能的な嫉妬心が原因だが、本能の部分で行動するため、叱ったり説教して
も意味がない。叱れば叱るほど、子どもをますます悪い方向においやるので、注意する。

 こういうケースで、よく親は「上の子どもも、下の子どもも同じようにかわいがっています。どう
して上の子は不満なのでしょうか」と言う。親にしてみれば、フィフティフィフティ(50%50%)だ
から文句はないということになるが、上の子どもにしてみれば、その「五〇%」というのが不満
なのだ。つまり下の子どもが生まれるまでは、一〇〇%だった親の愛情が、五〇%に減ったこ
とが問題なのだ。もっとわかりやすく言えば、子どもにとって愛情の問題というのは、「量」では
なく「落差」。それがわからなければ、あなたの夫(妻)が愛人をつくったことを考えてみればよ
い。あなたの夫が愛人をつくり、あなたに「おまえも愛人も平等に愛している」とあなたに言った
としたら、あなたはそれに納得するだろうか。

 本来こういうことにならないために、下の子を妊娠したら、上の子どもを孤立させないように、
上の子教育を始める。わかりやすく言えば、上の子どもに、下の子どもが生まれてくるのを楽
しみにさせるような雰囲気づくりをする。「もうすぐあなたの弟(妹)が生まれてくるわね」「あなた
の新しい友だちよ」「いっしょに遊べるからいいね」と。まずいのはいきなり下の子どもが生まれ
たというような印象を、上の子どもに与えること。そういう状態になると、子どもの心はゆがむ。
ふつう、子ども(幼児)のばあい、嫉妬心と闘争心はいじらないほうがよい。

 で、こうした赤ちゃんがえりや下の子いじめを始めたら、@様子があまりひどいようであれ
ば、以前と同じように、もう一度一〇〇%近い愛情を与えつつ、少しずつ、愛情を減らしていく。
A症状がそれほどひどくないよなら、フィフティフィフティ(五〇%五〇%)を貫き、そのつど、上
の子どもに納得させるのどちらかの方法をとる。あとはカルシウム、マグネシウムの多い食生
活にこころがける。

+++++++++++++++++++++
参考D(赤ちゃんがえり)

赤ちゃんがえりを甘く見ない

 幼児の世界には、「赤ちゃんがえり」というよく知られた現象がある。これは下の子ども(弟、
妹)が生まれたことにより、上の子ども(兄、姉)が、赤ちゃんにもどる症状を示すことをいう。本
能的な嫉妬心から、もう一度赤ちゃんを演出することにより、親の愛を取り戻そうとするために
起きる現象と考えるとわかりやすい。本能的であるため、叱ったり説教しても意味はない。子ど
もの理性ではどうにもならない問題であるという前提で対処する。

 症状は、おもらししたり、ぐずったり、ネチネチとわけのわからないことを言うタイプと、下の子
どもに暴力を振るったりするタイプに分けて考える。前者をマイナス型、後者をプラス型と私は
呼んでいるが、このほか情緒がきわめて不安定になり、神経症や恐怖症、さらには原因不明
の体の不調を訴えたりすることもある。このタイプの子どもの症状はまさに千差万別で定型が
ない。月に数度、数日単位で発熱、腹痛、下痢症状を訴えた子ども(年中女児)がいた。ある
いは神経が異常に過敏になり、恐怖症、潔癖症、不潔嫌悪症などの症状を一度に発症した子
ども(年中男児)もいた。

 こうした赤ちゃんがえりを子どもが示したら、症状の軽重に応じて、対処する。症状がひどい
ばあいには、もう一度上の子どもに全面的な愛情をもどした上、一からやりなおす。やりなおす
というのは、一度そういう状態にもどしてから、一年単位で少しずつ愛情の割合を下の子ども
に移していく。コツは、今の状態をより悪くしないことだけを考えて、根気よく子どもの症状に対
処すること。年齢的には満四〜五歳にもっとも不安定になり、小学校入学を迎えるころには急
速に症状が落ち着いてくる。(それ以後も母親のおっぱいを求めるなどの、残像が残ることは
あるが……。)

 多くの親は子どもが赤ちゃんがえりを起こすと、子どもを叱ったり、あるいは「平等だ」という
が、上の子どもにしてみれば、「平等」ということ自体、納得できないのだ。また嫉妬は原始的
な感情の一つであるため、扱い方をまちがえると、子どもの精神そのものにまで大きな影響を
与えるので注意する。先に書いたプラス型の子どものばあい、下の子どもを「殺す」ところまで
する。嫉妬がからむと、子どもでもそこまでする。
 要するに赤ちゃんがえりは甘くみてはいけない。
(030213)

読者のみなさんへ、……無断での転載、転用はご遠慮ください。








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【2】

●総合学習について

【掲示板より】

長男の初の中間テストの結果に打ちのめされ苦しんでいた時、偶然はやし先生のページに出
会いました。まさに目からうろこで、今までの私の苦しみはいったい何だったのだろう、と滑稽
(こっけい)にさえ思えました。残念ながら学歴へのこだわりが完全になくなったわけではないの
ですが、こどもへの接し方は劇的にかわりました。本当に感謝しています。ありがとうございま
した。

ところで、先日テレビで小学校の総合学習で、企画から販売までのノウハウを数か月かけて外
部から講師を呼んで学習する、という報道がありました。職業意識を身につけさせるための教
育だそうです。とても好意的な報道の感じで保護者の評判もよい、とのことでしたが私は、ちょ
っと腑に落ちない感じがしました。林先生は小中学校の総合学習についてどのようなお考えを
おもちですか。

【はやし浩司より、k様へ】

無数の試行錯誤。失敗と成功。賞賛と批判。隆盛と衰退。こういうのが渦を巻くところに、教育
の活性化が生まれます。総合学習というより、アメリカでは、学校単位で総合学習をしているよ
うな状況です。バウチャースクール、チャータースクールなど。公立小学校でも、PTAが納得す
れば、四歳児から教え、小三で卒業ということまで可能です。学校単位で、独自のカリキュラム
を組んでいます。(実際に見てきました。一応、州政府が示すおおまかなガイダンスはあります
が、たいへんおおらかなものです。)

日本の総合学習は、基本的には、その流れをまねたものです。(日本の文部科学省あたりが
出す改革は、そのほとんどが、外国のマネです。)ですから、これから先、この学習時間を通し
て無数の試行錯誤が繰りかえされると思いますが、それはそれとして、マクロな視点で、考えて
みてはいかがでしょうか。

日本の教育はあまりにも、画一的すぎた。金太郎アメのアメのような子どもばかりつくってき
た。それではいけないということです。自由であるからこそ、そこから活力が生まれます。その
活力が、これからの日本を支えます。A小学校では、スペイン語を教え、B小学校では、株式
の運用を教え、C小学校では、いけばなを教え……ということであっても、まったく問題はない
わけです。またそういう試行錯誤の中から、多少の失敗が生まれたからといって、大切なこと
は、それをつぶすことではなく、それを教訓として前に進むことです。

kさんも、まだ旧態の学校意識をもっておられるのかもしれません。「学校は絶対」「学校がす
べて」「勉強は大切」と。しかしもうそういう時代は、終わりつつあります。ドイツやイタリアでは、
子どもたちはたいてい、午前中で学校を終え、それぞれがクラブに通っています。科学クラブ、
スポーツクラブなど。好き勝手なことをしています。

アメリカでは、学校へ行かない、いわゆるホームスクーラーが、二〇〇万人を超えました(〇二
年末推計)。もうそういう時代が、そこまできています。「企画から販売まで教えた」というのもそ
の一つですね。全国一律にそれをすれば問題ですが、そうでなければ、その独自性を評価し
てあげましょう。「日本の学校もなかなかやるじゃん」とです。

 日本の教育は、その道の学者になるには、きわめてすぐれた教育体系をもっています。英語
は、英文法の学者になるため。数学は、数学者になるため、と。それは当然です。もともとこう
した教育は、その道のエラーイ大家先生がつくったからです。だからおもしろくない。だから役
にたたない。それともあなたは、高校を卒業してから、一度でも、微分、積分はおろか、方程式
を日常生活で使ったことがありますか? 私はありません。

 アメリカでは、中学校で、中古車の買い方から教えます。そして金利計算、損得計算、さらに
は小切手の切り方まで教えます。大都市以外の高校では、運転免許まで取れるようになって
います。「社会へ出ても、子どもが困らないようにするのが、教育」と、彼らは考えているからで
す。

 しかしこの日本では、教育が人間選別の道具になっていまっている。あるいは「役にたたない
のが教育」と考えているフシすらあります。諸悪の根源は、すべてこの一点にあります。親や子
どもは、無知なまま、それに踊らされているだけです。

 だから総合教育なのです。文部科学省あたりは、「改革」と自慢していますが、本当はすべて
欧米に、追従しているだけです。それも恐る恐る、小出しに……。アメリカでは、大学にせよ、
入学後の学部変更はもちろん、転籍も自由です。ユーロッパでは全域で、大学の単位が共通
化されました。どこの大学に入っても、同じという状態になりました。つまりそれが世界です。
(これだけマスコミが発達していても、そういう情報だけは、親のところに届かないというのは、
不思議な気がしますね。)

 さあ、k様も、重苦しい衣を脱いで、自由にはばたいてみましょう。あなたも、中学生のとき、
ずいぶんといやな思いをしたはずです。そうした「いやな思い」というのが、本当に必要なもの
だったのかどうか、改めてここで考えなおしてみてください。それで結論は、おのずと出てくるは
ずです。
(030709)



【掲示板より】

総合学習に関してお答えありがとうございました。確かに私はかなり視野が狭く、思いこみが強
いので、なかなか今の時代の流れについていけないところがあります。

ただこどもによっては難しい学習ではないかとも感じています。テーマを決め、調べて分析し、
それについて考察、まとめ、という作業にはやはりある程度の能力が必要ではないかと思いま
す。

実際、授業を見たことがありますが、いきいきと学習している子は積極的にどんどん取り組ん
でいますが、ボーッとして今何をしているのか、自分は何をしたらよいかわからない、というよう
な子もいました。先生方の工夫次第ですばらしい効果が生まれるのでしょうが、やはり取り残さ
れていくこどもはいるだろうな、と不安に思いました。

話題を変えます。中学生で友だちがいない事(学校で孤立しているわけではないが、休み時間
は、ひとりで本を読んでいる、休日に一緒に遊んだりしない)が心配です。担任はとくに問題な
し、といいます。家ではリラックスしています。最近いろいろな中学生の事件があるので気にな
っています。

【はやし浩司より】

教育には、ふたつの限界がある。教える側の限界と、学ぶ側の限界である。集団教育では、な
おさらで、ともに、その限界は、最小限であればあるほど、よい。しかし、その限界をなくすこと
はできない。

野球を例にとって、考えてみよう。かりに一一人のメンバーに選ばれたとしても、フィールドに出
られるのは、九人だけ。あとの二人は、スペアということになる。その二人は、交代の声がかか
るまで、ベンチで待つしかない。

野球と教育とは違うが、しかし問題は、そういう限界があるということではなく、どう、その限界
を、受け入れるかということ。あるいはどう、その限界をカバーするかということ。たとえばこの
掲示板に書いてあるように、つまり、中には、興味を示さず、ボーッとしている子どもがいたとし
ても、それはそれでどうしようもないことではないのか。中学生ともなれば、教師のできることに
もさらに限界がある。もちろん子ども自身にも、限界がある。

そこでどうだろう、こう考えては。オールマイティの子どもをつくろうとしないこと、と。また求めな
いこと、と。九つの教科を受けたら、そのうち、一つか二つ、それなりにできればよしとすると、
と。あとの八つか九つは、取り残されてもよいではないか、と。一つがダメでも、すべてがダメと
いうわけではない。一見、いいかげんな意見に聞こえるかもしれないが、そういういいかげんな
部分で、子どもは、前に向って、伸びることができる。

親の立場でいうなら、要は、完ぺきさを学校に求めないこと。教育に求めないこと。教師に求め
ないこと。これには日本人独特の、依存性の問題がからむが、今のように、教育はもちろん、
しつけから道徳、健康管理から家庭管理まで、すべて学校に押しつけることのほうが、おかし
い。「取り残されていく子どもはいるだろうな、と不安に思いました」という、この投稿者の気持
は、そういう「おかしさ」の中から生まれる。つまり、もっと言えば、不安になるほうが、おかし
い。

もう少しわかりやすい例で考えてみよう。もしあなたの子どもが、野球チームで、スペアになっ
ても、あなたは、不安にはならないだろうと思う。もともと「野球なんて、できても、できなくても、
どちらでもいい」と思っているからだ。だからこそ、スペアになった子どもでも、それなりに楽し
く、自分の番を待つことができる。

しかし、勉強は、そうでない? つまりそこに、親側の学歴信仰がある。日本には、「学歴」とい
うコースがあって、それからはずれることを、親たちは、恐れる。つまりその時点で、子どものこ
とを心配しているフリをしながら、その実、親自身が感ずる不安や心配を、教育にぶつけてい
るだけ。こういうのを、心理学で、「投射」という。あなたは気づいていないかもしれないが、私
はあなたの中に、カルトに近い、学齢信仰を感ずる。

また「中学生で友だちがいない事(学校で孤立しているわけではないが、休み時間はひとりで
本を読んでいる、休日に一緒に遊んだりしない)が心配です」について。

子どもが中学生なら、親としてできることは、もうない。先生が「とくに問題なし」と言っているな
ら、その言葉を信じるしかない。今度は、親の限界ということになるが、これから先、こうした限
界は、砂浜に打ち寄せる波のようにやってくる。で、そのときどきに、親は、そういう限界をズシ
リ、ズシリと感じながら、じっと、その限界の重みに耐えることでしかない。親がせいぜいできる
ことと言えば、子どもがその疲れた体や心をいやすための場所を、提供することでしかない。
暖かく包んであげることでしかない。

今、大切なのは、「うちの子は、こういう子なんだ」という視点で、あるがままを受け入れること。
問題が見つかるたびに、(あくまでも親がそう思うだけだが……)、「ああしよう」「こうしよう」と、
あがけばあがくほど、子どもは、親の望む方向とは、別の方向に進む。あるいはさらに悪いこ
とに、二番底、三番底へと落ちていく。むしろ心配なのは、親のこうした不安感が、子どもの情
緒を、さらに不安にするのではないかということ。子どもの表情が暗いとしたら、その表情をつく
っているのは、親自身にほかならない。そのことに、あなたは、気づいているだろうか。

もっとはっきり言おう。

あなた自身が、不安を基底とした子育てをしている。あなた自身が、子どもとの信頼関係を築
けないでいる。その原因は何かといえば、ひょっとしたら、あなたとあなたの両親との、不幸な
関係があるかもしれない。あなた自身もまた、あなたの親に、信頼されていなかった。あなたも
あなたの親を信頼していなかった。今のあなたは、それをあなたの子どもに繰りかえしている
だけ? ……こう決めてかかるのは、危険なことだが、こうした問題の「根」は深い。一度、あな
たも、それを疑ってみてほしい。

そこで私の結論。

ボーッとしていても、気にしない。私もときどき、ワイフといっしょにテニスクラブに行く。しかし自
分の出番を待っている間は、ただひたすらボーッとしている。女性たちは、ペチャクチャと、しゃ
べっているが、私は、そういう会話は、得意ではない。しかしだからといって、私は、「取り残さ
れている」とは思わない。自分がダメになっていくとは、思わない。人は、人、みな、それぞれな
のである。

もっとあなたの子どもを信じなさい。「休み時間は、ひとりで本を読んでいる」なら、すばらしいこ
とではないか。どうしてひとつひとつの行為を悪いほうに、悪いほうに考えるのか。本を読むと
いうことが、いかにすばらしいことであり、大切なことであるかは、日本を離れてみればわか
る。

アメリカの小中学校では、ほとんどどの学校も、図書室は、玄関を入ってすぐ、つまり校舎の中
央にある。しかもその図書室で、子どもを指導する教師(ライブラリアン)は、修士号をもってい
ないとできない。つまりふつうの教師より、「格」が上。

くだらない騒音にひとり背を向け、本を読む……。私なら、「お前はすばらしい子だ」と、その生
徒をほめる。実際、そうほめている。だいたい日本の子どもというのは、イワシの缶詰のような
世界で、ぎゅうぎゅうに詰められて勉強している。「友だち」「友だち」と意識するほうが、これま
たおかしい。そういう子どもが、「取り残される」? ……とんでもない。あなたの子どもが、何か
ら取り残されるというのか?

さあ、あなたの子どもは、すばらしい子どもだ。自信をもちなさい。その自信が、あなたの子ど
もの表情を明るくする。先生の言葉をすなおに信じて、「うちの子は、問題はない」と思いなさ
い。
(030711)

【追記】最後に、世間をにぎわしている凶悪事件について、不安になっている親も多いと思う。
しかしあなたの子どもは、絶対に、そういう子どもにはならない。なぜなら、あなたは今、私のマ
ガジンを読んでいるから。私が、あなたを、そういう子どもをつくらない親にする! (少しどこか
教祖的? ははは。一度、こう言ってみたかった。)





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【3】

●かん黙児について

【かん黙についての相談より】

はじめまして。やっと先生のHPにたどりつきました。
私には年中の七月に五歳になったばかりの長男と、三歳の二男がおりますが、長男のことで
ご相談いたします.

長男は、家では明るくひょうきんでお調子者の元気な子ですが、一歩外へ出ると、なぜかほか
の子どもとは話しをすることができません。(大人とは会話をすることもあるのですが)。話し始
めたのは割と早かったのですが、五歳になる現在まで息子が友だちと楽しくおしゃべりする姿
をみたことがありません。

赤ちゃんの頃から人見知りが激しく、私からなかなか離れられない子だったので、性格かな?
 と思っていたのですが、いまだに治らないので、これは何かほかに問題があるのかなと思い
始めました。

幼稚園でも友だちの間には入っていけないらしく、担任の先生が友だちとの中に入って仲立ち
をしてくれています。

友だちから誘われると遊びはするものの、なぜか話しをすることができないということです。(し
てもあいづちを打ったり、うんとかううんとか言う程度だそうです)。先生には話しはできます。

四月より二年保育で幼稚園に通い始めましたが、喜んで通ってはいません。時々園バスを待
つとき泣いたり、行きたくないようなことを言います。でも帰ってくると幼稚園は楽しいとは言い
ます。

公園で遊んでいても、同じ年くらいの子がそばに寄ってくると顔がくもったり、逃げたり、不安そ
うな顔をしたりします。

息子は家では電車や車で町をつくったり、絵を描くのがすきです。それと数字や字を書くことに
とても興味があり、教えることもないのにどんどん覚えていきます。それとピアノがすごく好き
で、耳から聞く曲を、ピアノでそのまま弾いてみせたりしてびっくりすることがあります。

子どもと話しのできないかんもく症というのはあるのでしょうか? 親としてどうこの子に接して
やればいいのでしょう?

少しでも友だちと遊ぶことの楽しさを子どもに味あわせてやりたいのです。先生のアドバイス心
よりお待ちしております。
(長野県S市・SY母親より)

【はやし浩司より、SYさんへ】

 かん黙傾向というのは、広く、いろいろな情緒障害の随伴症状として見られるものです。です
から、かん黙傾向があるからといって、かん黙児ということにはなりません。たとえば対人恐怖
症の子どもは、やはり人前では、ほとんどしゃべりません。

 で、そのかん黙傾向が、ふつうの人間関係を結べないほどまでに強くなった状態を、かん黙
と言います。かん黙児の特徴については、ここに原稿を添付しておきます。参考にしてくださ
い。いただいたメールだけではよくわかりませんが、私は、心配されるようなかん黙児ではな
く、ここに書いた対人恐怖症ではないかと思います。「時々園バスを待つとき泣いたり、行きた
くないようなことを言います。でも帰ってくると幼稚園は楽しいとは言います」という、一日の中に
おいて、症状が変化するところに、それを感じました。これを「症状の日内変動」と言いますが、
広く、恐怖症全体に共通して見られる症状だからです。

 原因については、今さら問題にしても意味はありませんが、考えられるのは、最初の段階で、
人に対して、恐怖心を覚えたということです。つまり親と子だけのマンツーマンの子育てが中心
だったのが、外へ出され、そこで人に対して、恐怖心を覚えたということです。「人見知りが強
かった」ということですが、そのとき、親が無理をしたか、あるいは突き放すようなことをしたの
かもしれません。

 そういう意味では、情緒が不安定な子どもということになります。ただ誤解してはいけないの
は、情緒が不安定というのは、あくまでも結果でしかないということです。わかりやすく言えば、
あなたの子どもは、心の緊張感がとれない、ほぐれない状態にあるということです。その緊張し
ている状態のところに、心配や不安が入りこむと、それを解消しようと、一挙に、情緒が不安定
になる。それが今の状態だということです。

 この緊張感は、なかなかとれません。五、六歳児ならなおさらで、それこそ一年単位のケアが
必要です。あるいは安静になったと思っても、簡単なきっかけで再発します。心というのは、そ
ういうものです。もっと言えば、SYさん自身も、子どもに対して、全幅に心を開いていない、つま
り日常的に、ある種の緊張感を覚えている可能性もあります。子どもの心というのは、そういう
意味で親の心を写す、カガミのようなものです。あなた自身のことも反省してみてください。なお
恐怖症の原稿も、ここに添付しておきます。

 さてSYさんの相談で、一番気になるのは、三歳の二男のことです。逆算すると、人見知りを
始める、ちょうど、満一歳前後から、満一・五歳前後にかけて、下の子どもが生まれたことにな
ります。もっとも親に甘えたいときに、下の子が生まれたということになります。この段階で、子
どもの情緒が一挙に不安定になったと考えられます。いただきましたメールを読むかぎり、赤
ちゃんがえりの一つの変形タイプではないかと推察されます。どこかで「あなたはお兄ちゃんだ
から」式の、突き放しをしていませんか。決して、赤ちゃんがえりを安易に考えてはいけませ
ん。それはちょうど、あなたの夫が、ある日突然、愛人をあなたの家に連れこむようなもので
す。あなたははたして平静でいられるでしょうか。

 あくまでもいただいたメールの範囲ですが、いわゆるかん黙児ではないと思います。考えられ
るのは、赤ちゃんがえりがこじれた、対人恐怖症ではないかと思います。あくまでも一つの意見
として参考にしてください。かん黙児は、おとなとは、絶対に話をしません。

 ただ一つ気になるのは、自閉傾向があるということ。(自閉症ではありません。誤解のないよ
うに!)カラに閉じこもるような傾向を見せたら、何らかの方法で、外へ引き出してあげるとよい
でしょう。(ただし無理をしてはいけません。)「それと数字や字を書くことにとても興味があり、
教えることもないのにどんどん覚えていきます。それとピアノがすごく好きで、耳から聞く曲を、
ピアノでそのまま弾いてみせたりしてびっくりすることがあります」というところに、私は、それを
感じます。

 心のケアとして大切なことは、濃厚なスキンシップを与えるということです。とくに子どもがとき
どき、思いついたように求めてくるスキンシップについては、絶対に(絶対に!)拒んではいけま
せん。求めてきたら、グイと力強く抱く。しばらく抱いていると、やがて満足して体を離すようにな
ります。それまで、子どもを抱きます。

 またこの際、弟さんには悪いですが、全幅の愛情を、もう一度、子どもに戻してみます。添い
寝、手つなぎ、抱っこなど。そして半年単位で、少しずつ、離れていきます。スキンシップには魔
法の力があります。どうかそれを信じて、一度、ためしてみてください。

 なお。こうした心の問題は、「なおそう」と考えてはいけません。「今の状態をより悪くしないこ
と」だけを考えて対処します。「あなたはよくがんばっているよ」「すてきだわ」式の前向きなスト
ロークをかけてあげます。今、あなたの子どもは、体を使って、愛情不足を訴えています。

 最後に「ほかの子どもと楽しく遊ばせてあげたい」という、親のエゴを子どもに押しつけてはい
けません。五歳前後から、子どもは、幼児期から少年期への移行期(中間反抗期)に入りま
す。この時期、子どもは、カラを脱ぐようにして、少年になっていきます。決して、あせってはい
けません。あなたがそれを「悪いこと」と決めてかかればかかるほど、自我の同一性が乱れま
す。あるがままを認めながら、「あなたはそれでいいのよ」と自信をもたせてあげてください。

 今、たいへん微妙な段階にあると思います。幼稚園にせよ、無理をしないで、ときどき行けば
よい式に考えてください。心が発熱していると思えば、よいのです。それともあなたは熱がある
子どもを、幼稚園へ行かせますか? だいたい幼稚園へ、喜んでいく子どもなど、少ないので
す。とくにあなたの子どもはそうではないでしょうか。

 あとはCA、MGの多い食生活に心がけ、「暖かい無視」のある生活をしてみてください。で
は、また何か、変化があれば、ご連絡ください。お待ちしています。

 なおこの原稿は、七月二一日号のマガジンに掲載しますが、よろしくご了解ください。不都合
な点があれば、至急、ご連絡ください。改めます。

++++++++++++++++++++++
(参考)

●かん黙児
 かん黙児……家の中などではふつうに話したり騒いだりすることはできても、場面が変わると
貝殻を閉ざしたかのように、かん黙してしまう子どもを、かん黙児という。通常の学習環境での
指導が困難なかん黙児は、小学生で一〇〇〇人中、四人(〇・三八%)、中学生で一〇〇〇
人中、三人(〇・二九%)と言われているが、実際にはその傾向のある子どもまで含めると、二
〇人に一人以上は経験する。

●ある特定の場面になるとかん黙するタイプ(場面かん黙)と、場面に関係なくかん黙する、全
かん黙に分けて考えるが、ほかにある特定の条件が重なるとかん黙してしまうタイプの子ども
や、気分的な要素に左右されてかん黙してしまう子どももいる。順に子どもを当てて意見を述
べさせるようなとき、ふとしたきっかけでかん黙してしまうなど。

 一般的には無言を守り対人関係を避けることにより、自分の保身をはかるために、子どもは
かん黙すると考えられている。これを防衛機制という。幼稚園や保育園へ入園したときをきっ
かけとして発症することが多く、過度の身体的緊張がその背景にあると言われている。

 かん黙状態になると、体をこわばらせる、視線をそらす(あるいはじっと相手をみつめる)、口
をキッと結ぶ。あるいは反対に柔和な笑みを浮かべたまま、かん黙する子どももいる。心と感
情表現が遊離したために起こる現象と考えるとわかりやすい。
かん黙児の指導で難しいのは、親にその理解がないこと。幼稚園などでその症状が出たりす
ると、たいていの親は、「先生の指導が悪い」「集団に慣れていないため」「友だちづきあいが
ヘタ」とか言う。「内弁慶なだけ」と言う人もいる。そして子どもに向かっては、「話しなさい」「どう
してハキハキしないの!」と叱る。しかし子どものかん黙は、脳の機能障害によるもので、子ど
もの力ではどうにもならない。またそういう前提で対処しなければならない。

++++++++++++++++++++++
(参考A)

心の病気

 心も、ときに病気になる。その代表的なものに、@抑うつ神経症、A不安神経症、B強迫神
経症、C心気神経症、D恐怖症などがある。この中でとくに@抑うつ神経症を、「心の風邪」と
言う人がいる。となると、A不安神経症は、下痢、B強迫神経症は、頭痛、C心気神経症は、
胃炎、D恐怖症は、二日酔いということか。あまりよいたとえではないかもしれないが、要する
に、だれでも、下痢をしたり、頭痛になったりするように、簡単に不安神経症になったり、強迫
神経症になったりするということ。

 私のばあい、いつもこのどれかを経験している。

E抑うつ神経症
ときどきワイフが先に死んだら、どうしようかと考える。ひとりで生きていく自信は、私には、まっ
たくない。しかし一度、そう考えだすと、生きる目的すら、なくしてしまう。今までの人生があっと
いう間に終わったように、これからの人生も、あっという間に終わってしまうだろうとか、私の老
後は、孤独であわれなものになるだろうとか、そんなことまで考える。ただ私のばあい、病識
(自分で病気とわかること)があるので、それなりに対処できる。「今の私は、本当の自分では
ない」と考えて、カルシウム剤をたくさんとって、睡眠時間を長くしたりする。軽いばあいには、
たいてい翌朝にはなおっている。心がふさいで重苦しく、晴れないことを、抑うつ神経症という。

F不安神経症
一度、パソコンにウィルスが侵入したのではないかと、大あわてしたことがある。心臓はドキド
キし、体中から冷や汗が出た。最終的には、パソコンをリカバリーをすることで問題を解決した
が、夜中に始めて、一段落したころには朝になっていた。ほかに私はちょっとしたことで、被害
妄想がとりとめなく大きくなることがある。つぎつぎとものごとを悪いほうへ、悪いほうへ考えて
しまう。俗にいう、とりこし苦労タイプの人間である。あとになって、「どうしてあんなことで悩んだ
のだろう」と思うことが多い。突発的にはげしい不安感に襲われ、呼吸が苦しくなったり、動悸
がはげしくなることを、不安神経症という。

G強迫神経症
山荘には、防犯装置と、自動火災連絡装置が設置してある。自動火災連絡装置というのは、
山荘内で、ガス漏れや火災があったとき、私の自宅のほうに電話がかかってくるしくみの装置
をいう。で、一度だけだが、それがかかってきたことがある。私はあわてて山荘へ向ったが、そ
のときは、本当に生きた心地がしなかった。途中、携帯電話で隣人に電話をしたが、あいにくと
隣人は不在。が、その直後からおかしな現象が起きた。山荘でたき火をしたあとなど、水で火
を消すのだが、いくら消しても、どこかもの足りなさを覚えた。たき火コーナーが、プールのよう
に水びたしになっても、不安感が消えなかったこともある。自分の意思に反して、勝手に悩んだ
り、心配したりすることを、強迫神経症という。

H心気神経症
今まで経験しなかったような病状が現れたりすると、「もしや」と思うことがある。数か月前だ
が、生徒たちからたくさんのチョコレートをもらった。そのチョコレートを食べ過ぎたせいか、脳
が一時的に覚醒(興奮)状態になってしまった。(私は本当はチョコレートは食べられない体
質。)脳が勝手に乱舞してしまった。私はそのときはチョコレートのせいだとはわからなかった
ので、脳腫瘍ではないかと疑ってしまった。とたん、極度の不安状態になってしまった。ワイフ
が「何でもないわよ」となだめてくれたが、私はフトンの中で、体を丸めてガタガタ震えていた。
悪い病気にかかってしまったのではないかと、極度の不安状態になることを、心気神経症とい
う。

I恐怖症
私には高所恐怖症や閉所恐怖症にあわせて、飛行機恐怖症などがある。恐怖症というのは、
一度なると、いろいろな形で現れてくる。数年前は、あやうく交通事故を起こしかけたが、その
あと、私は自転車に乗られなくなってしまった。夜、自転車で道路を走っていたが、走っている
車が、どれも私のほうに向って走ってくるように感じた。私は数百メートル走っては自転車から
おり、また走ってはおりた。あとでみたら、手が、汗でべっとりと濡れていた。何かとくべつのこ
とで、ものごとに激しい恐怖感を覚えることを、恐怖症という。ほかに動物恐怖症、お面恐怖
症、先端恐怖症などもある。

 私のばあい、肉体的には健康だが、精神的にはあまり健康ではない。よく落ちこむし、ときに
激怒して、自分がわからなくなることがある。ここにあげた恐怖症にせよ、強迫神経症にせよ、
いろいろな形で、よく経験する。

 こういう心の病気になったとき、こわいのは、脳のCPU(中央演算装置)が狂うためか、狂っ
ている私のほうが正しいのか、そうでないときの私のほうが正しいのか、それがわからなくなる
こと。たとえば抑うつ状態になったとき、かえってそうでない人のほうが、おかしく見えるときが
ある。私のことで言うなら、落ちこんでいる自分のほうが、本当の自分のように思うことがある。
そして「今まで落ちこまなかったのは、私がバカだったから」というような考え方をしてしまう。

 また恐怖症にせよ、心気神経症にせよ、私の経験からしても、自分ではコントロールできない
ということ。自分に「だいじょうぶだ」と何度言い聞かせても、もう一人別の自分が、それを打ち
消してしまう。あるいは頭の中ではだいじょうぶと思っていても、体は勝手に動いてしまう。もう
二〇年近くも前のことだが、私はテレビのアンテナをつけるために、屋根にあがったことがあ
る。しかしおりるとき、勝手に足がすくんでしまい、それ以上、動けなくなってしまった。結局、近
くの電気屋さんに来てもらい、助けてもらったが、そのときも、いくら「だいじょうぶだ」と自分に
言ってきかせても、自分では、どうしようもなかった。

 だから……。今、いろいろな心の病気をかかえた子どもに接すると、そういう子どもの心の状
態がよくわかる。親は、「気のせいだ」「気はもちようだ」などと言うが、私はそうは言わない。先
日も「トンネルがこわい」と訴えてきた小学生(小一男児)がいた。その子どもに接したときも、
私は、こう言った。「こわいよね。ぼくもトンネルがこわくて、ときどき入れないときがある。天井
がコンクリートか何かで、しっかりしていればいいけど、岩がむき出しであったりすると、ぞっと
するね」と。

 熱を出して苦しんでいる子どもに無理をさせないように、心の病気にかかっている子どもに無
理をしてはいけない。心の病気は、外から見えないだけに、親は安易に考える傾向があるが、
決して安易に考えてはいけない。こじらせればこじらせるほど、立ちなおりがむずかしくなる。
(030713)







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【4】

●心の病気

A市にお住まいの、Bさんからのメール

先日、A市での講演会に行かせていただきました。HPも見させていただき、色々思う事があり
ました。

私の兄は公務員で一人暮らし、二年ほど前に神経症になりました。
ある日、兄から電話があり、「お父さんが俺の仕事場の上司に俺の話をしているみたいだか
ら、上司に電話したりするのはやめるように言ってくれ……」ということでした。
私は実家に帰ったときに早速その話をしました。

父は「おかしいな。そんな話したことないのに……」と言い、その返事も兄に伝えました。

それからも何度かそんな内容の電話が兄からかかってきましたが、父の返事は変わりません
でした。

そんな電話から三か月くらいあとだったでしょうか、四国に旅行中の両親から電話があり
「KK(兄)が調子悪くなって家に帰っているみたいだから、様子見てきて!」という事だったので
実家に行ってみたところ、生気のない兄が母達が留守だった為、雨戸も開けずに暗い家の中
にいました。

話しを聞けば病院で神経症と診断され、仕事を二週間休んできたという事でしたが、私にはと
ても二週間で復帰できるような状態でないことがわかりました。旅行中の両親も旅行をとりや
め帰宅。

その後は、もう大変でした、毎日のように母が泣いて電話をしてきたり、逃げるようにして父が
私の家に来たり……。

兄は乱暴ではなく、とにかく元気がない状態。目の感じが違っていました。
仕事を休み始めた当初は私を呼びだし「俺、ホントに頭がおかしくなるかもしれないから、後は
頼むな……。」

と言われた事もあります。「それだけ分かってるなら、頭おかしくないよ! 頭おかしい人はそ
んな事言わない」と返事しましたが、その返事も、それで良かったのか悪かったのか……。

どんな治療をしたかは、私は詳しく聞きませんでしたが「病院かえた方がいいかな?」とか、「こ
の薬は普通こういう病気では処方されないらしい……」とか、とにかく、何もかもに神経質にな
っているのがわかりました。

あの時のおかしな電話の事もこれだったんだ……と後からわかりました。被害妄想のようなも
のだったようです。

「役所でみんなが俺の話をしてる。」とか「噂されてる。」とか色々言っていました。
結果、仕事場に行くとパニック症状が起きてしまい、どうにもならなくなり自分から病院に行った
ようでした。
 
HPに、チックの事や神経症の事が書いてあるのを見て思い出したのですが、兄は小学校の
頃チック症状で、目をぱちぱちさせていました。それを母がとても気にしていました。

兄は昔からすくお腹が痛くなったり、頭が痛くなったりしていました。誰かが病気になると自分も
調子が悪くなったような気がする……とか、とにかく変わった人でした。そして、神経症と診断さ
れてから一年後、軽い鬱病だった……という診断にかわり(?)ましたが、とりあえず仕事に復
帰出来る状態にまで回復し、今は部所を変えていただき、実家からなんとか仕事に通っていま
す。

チックに始まり、三四歳で神経症。同じ家庭環境に育った私は何事もなく過ごしています。
今、私には、年中児の息子と五年生の息子、中三の息子がいますが、子育てにおいてあれこ
れ真剣に考えることもなく過ごして来たような気がします。

でも兄をみて、HPをみて、小さい頃のささいな事と思えたものが、その後大きな問題に発展し
てしまう恐怖を感じました。

長男はたまに寝言を言うし、一年前までおねしょ(年に一回くらい)しました。実は、それも何か
のサインだったのかと思うとドキドキします。
 
数日前、私の親類の子供が、脳炎を起こしました。結果、大脳がほとんどやられてしまってい
て、治療の方法がない……と言うことでした。お見舞いに行きましたが、いとこは泣いていまし
た。かける言葉も見つからない状態です。

そんなこともあって、「おまえは生きているだけでいい……」という言葉が耳から離れません。

+++++++++++++++++++

【はやし浩司より、Bさんへ】

 講演をしていて、一番、気をつかうのは、聞きにきてくれた人に、不安感を与えないということ
です。もし私の講演が、Bさんを不安にしてしまったようでしたら、どうかお許しください。

 率直に言って、一つの講演の中でも、私は無数の話を織りまぜます。で、そういう話のひとつ
ずつに、それぞれの人が、まったく別の反応を示します。ときに、私がまったく予期しないところ
で、まったく考えもおよばなかった反応を示す人もいます。実のところ、Bさんがそうで、私は、
申し訳ない気持ちで、いっぱいです。できれば楽しく、ハハハと笑っていただければよかったの
ですが……。しかし私の話は、いつも暗いですね。申しわけありませんでした。

 が、私がここで答えられる部分は、「長男はたまに寝言を言うし、一年前までおねしょ(年に一
回くらい)しました。実は、それも何かのサインだったのかと思うとドキドキします」という部分だ
けです。
 
 これについては、寝言にしても、「たまに」ということですし、おねしょも、終わっているという点
で、もう心配する必要はないと思います。それに寝言にせよ、おねしょにせよ、ほとんどの子ど
もが経験することで、大きな問題ではありません。

 ただ子どもを包む環境が、神経質になっていないかは、反省してみてください。コツは、子ど
も自身が安心して休めるような、時と場所を、家庭の中に用意することです。子どもを、温かく
包むように、無視する。子どもの側から見て、親の視線を感じさせないようにします。

 こういうケースでは、Bさん自身が、問題そのものに気づいておられますので、少し時間はか
かりますが、それで問題は解決します。どうか自分を信じてみてください。

 で、話を戻します。

 お兄さんの件ですが、どの家庭も、外から見ると、うまくいっているように見えますが、それぞ
れ似たような問題をかかえています。ほとんどが、そうではないかと思います。みんなある意味
で、懸命に、そして必死に、そうした問題と戦っています。ですから、決して「自分だけが……」
と思ってはいけません。思う必要も、ありません。

 心だって、たまには病気になるのです。ただふつうの、つまり風邪や肺炎のような体の病気と
違うところは、心の病気は、外から見えにくいということ。それにたいてい長期にわたるというこ
とです。こじらせれば、一生つづくということも、珍しくありません。

 だから心が病気になったからといって、深刻になること自体、おかしいのです。しかもこの種
の「心の病気」は、まじめな人ほど、なります。もっとわかりやすく言えば、そうなったとしても、
基本的には、その人を取り巻く、社会や環境のほうが、おかしいのです。脳に機質的な問題が
あれば、話は違いますが、機能的問題であれば、今、ほとんどの病気は治るという時代です。

 かく言う私も、過去において、何度か、人生そのものに絶望したことが、あります。人前では、
いつも明るく振る舞っている私ですが、実のところ、心はボロボロ。私ほど、心の病気のデパー
トのような人間は、少ないと思います。よく私は、「あらゆる精神病を、広く浅くもっている」と冗
談ぽく言いますが、それはまちがっていません。

 また生まれながらにして(?)、家庭問題のいざこざには、常に悩まされました。実のところ、
今も悩まされています。しかし私のばあいは、どれも長期で、もうなれたというか、あきらめたと
いうか、そういう状態になっています。またそういう私を悪く言う人もいますが、「勝手にどうぞ」
という心境です。

 Bさんについても、今さら過去をほじくりかえしても、意味はありませんし、今の問題がどうか
なることもありません。しかたないのです。みんな、懸命に生きていても、どこかで穴があき、そ
こから水が漏れることだってあるのです。懸命に生きていても、どうにもならない問題が、起き
るときには、起きるのです。

 ここで大切なことは、仮にそういう問題が起きたとしても、それは私やあなたの問題ではない
ということです。それが人間が、人間であるがゆえに、つまりは生きることにまつわる限界のよ
うなものです。そんなわけで、つぎに大切なことは、そういう問題が起きたとしても、それはその
まま、受け入れるということです。まさに「なるようになれ!」と自分に言ってきかせることです。

 この言い方は、一見、無責任な言い方に見えるかもしれませんが、あのジョン・レノンも、『レ
ット・イット・ビー』の中で、そう歌っています。「♪レット・イット・ビー(あるがままにせよ)」と。実
のところ、私もずっと、そうしてきました。ものごとというのは、なるときには、放っておいても、な
る。しかしならないときは、がんばっても、ムダ……ですね。とくに心の病気について言えば、そ
うではないでしょうか。

 ただお母さんの態度は、あまりほめられたものではありません。娘のあなたに、「その後は、
もう大変でした、毎日のように母が泣いて電話をしてきたり、逃げるようにして父が私の家に来
たり……」とは?

 「逃げるようにして……」というのは、お父さんが、お母さんから、「逃げる」という意味でしょう
か。こういうケースでは、一番、自分を律しなければならないのが、お母さんなのですが……。
少し残念ですね。お母さん自身が、あなたのお兄さんを、まったく受け入れていないばかりか、
そうした態度が、お兄さんのみならず、あなたをも苦しめていることに気づいていない? また
あなたのメールだけで、こう結論づけるのは、危険なことかもしれませんが、お兄さんが子ども
のころ見せた、いろいろな神経症による症状(チックなど)の原因も、お母さんにあったのでは
ないかということです。こういうケースでは、母親の態度というか、姿勢が、一番、重要なカギを
握ります。そのお母さんが、こうまで動揺してはいけません。

 ……と、ほとんど回答になっていない返事で、ごめんなさい。ただ言えることは、ことあなたに
ついて言うなら、『時は、心の癒し人』ということです。時間が解決してくれます。時間がたつと、
あなた自身が、周囲を受け入れ、そして心穏やかになります。こういうときは、あせって、あれ
これしないほうがよいです。じっとがまんします。(もちろんそれでお兄さんが、よくなるとかとい
うことではありませんが……。あくまでも、あなた自身の問題が、です。)

 最後に、お兄さんがそうだったからといって、あなたのお子さんが、そうなるということは絶対
にありません。どうか過剰に不安になったり、心配したりしてはいけません。一つだけ心配され
る点について、書いておきます。

 あなたのお母さんとあなたのお兄さんの関係においてですが、あなたのお母さんは、お兄さ
んを、全幅には受け入れてはいなかった? それが今いる、「お兄さん」をつくったと考えられま
す。いろいろ事情があったのでしょう。だからあなたのお母さんを責めても意味はありません。

 ただそういう関係、つまりあなたのお母さんのもつ、子育て観が、今のあなたの影響を与えて
いる可能性はあります。これを心理学では、世代伝播とか連鎖とか言います。つまり子育ては
繰りかえすということです。

 そこでこれはあなたにとって、たいへんつらいことかもしれませんが、「母親である」という虚
像というか、偶像を排除して、一度、あなたのお母さんを、一人の人間として、冷静に判断して
みてください。そしてあなたのお母さんのもつ、人間的な欠陥というか、精神的な未完成部分と
いうか、はたまた情緒的な未熟性というか、そういうものを、冷静に判断してみてください。

 そしてそれに気づいたら、あなた自身は、それを繰りかえさないようにします。あなたの子ど
もに対して、です。そこだけを注意すれば、もう心配はありません。ほとんどの人は、それに気
づかないまま、同じことを繰りかえします。どうかご注意ください。繰りかえしますが、だからとい
って、あなたのお母さんを責めても意味はありません。多分、もうかなりの年齢の方だと思いま
す。人間も、満四五歳前後を境に、あとは、急速に、人間的な進歩をやめます。ばあいによっ
ては、そのころを境に、退化します。年配だから、人間的にもすぐれているだろうと考えるの
は、幻想以外の何ものでもないということです。

 では、今日は、これで失礼します。また何かあれば、ご連絡ください。なおあなたからのメー
ルは、このような形で、マガジンに転載させていただきますが、よろしくご了解ください。勝手な
お願いですみません。よろしくお願いします。
(030715)






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【5】

●いじめに加担する子ども

【ある母親からの相談より】

 小学一年の男児の母親です。このところうちの子が、学校でのいじめに、からむようになりま
した。一人A君という、いじめっ子がいるのですが、その子どもに加担して、ほかの子どもをい
じめています。うちの子に、「そういうことはやめなさい」と言うと、そのときは、「もうしない」と答
えるのですが、A君にさからえば、今度はうちの子が、いじめられるかもしれません。担任の先
生も、A君には、手を焼いているようです。今は、A君の子分のようになっていますが、こういう
ときは、どうしたらいいでしょうか。A君の母親に、こういう事実を話すべきでしょうか(福岡県、
HEより)。

【はやし浩司より】

 こういうケースでは、鉄則はただ一つ。『友を責めるな、行為を責めろ』です。それについての
原稿は、ここに張りつけておきます。

 あなたが今、すべきことは、悪いことは悪いこととして、淡々と、子どもに話すことです。学校
の先生に相談するときも、あなたの子どもがどういう状態であるかだけを、淡々と、先生に話し
ます。

 このとき大切なことは、決して、相手の子どもの名前を、具体的に出さないこと。あなたは「事
実」だけを伝え、あとの判断は、子どもや、先生に任せます。この段階で、相手の子どもの名
前を出すということは、先生に向って、「A君を何とかしてほしい」と言うのと同じになります。こう
した結論を先に出されてしまうと、先生としても、何もできなくなってしまいます。

 いくら親でも、親ができることにも、限界があります。とくに学校での問題は、そうです。学校で
の問題は、第一に、学校の先生に任すしかありません。で、こういうケースで、具体的に相手
の子どもの名前を出すと、それが原因で、また別のトラブルを背負うことになるかもしれませ
ん。あくまでも、その判断と対処は、先生に任せます。

 これから先、この種の問題は、つぎからつぎへと起きてきます。そこで大切なことは、子ども
を、自分で考えて、自分で行動できる子どもにすることです。健康にたとえて言うなら、そのつ
どあたふたと、対症療法を繰りかえすのではなく、まず基礎体力を養うということです。そのた
めにも、『友を責めるな、行為を責めろ』を守ってみてください。

+++++++++++++++++++++

●友を責めるな、行為を責めよ

 あなたの子どもが、あなたから見て好ましくない友人とつきあい始めたら、あなたはどうする
だろうか。しかもその友人から、どうもよくない遊びを覚え始めたとしたら……。こういうときの
鉄則はただ一つ。『友を責めるな、行為を責めよ』、である。これはイギリスの格言だが、こうい
うことだ。

 こういうケースで、「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」と子どもに言うのは、子どもに、
「友を取るか、親を取るか」の二者択一を迫るようなもの。あなたの子どもがあなたを取ればよ
し。しかしそうでなければ、あなたと子どもの間には大きな亀裂が入ることになる。友だちという
のは、その子どもにとっては、子どもの人格そのもの。友を捨てろというのは、子どもの人格を
否定することに等しい。あなたが友だちを責めれば責めるほど、あなたの子どもは窮地に立た
される。そういう状態に子どもを追い込むことは、たいへんまずい。ではどうするか。

 こういうケースでは、行為を責める。またその範囲でおさめる。「タバコは体に悪い」「夜ふか
しすれば、健康によくない」「バイクで夜騒音をたてると、眠れなくて困る人がいる」とか、など。
コツは、決して友だちの名前を出さないようにすること。子ども自身に判断させるようにしむけ
る。そしてあとは時を待つ。

 ……と書くだけだと、イギリスの格言の受け売りで終わってしまう。そこで私はもう一歩、この
格言を前に進める。そしてこんな格言を作った。『行為を責めて、友をほめろ』と。

 子どもというのは自分を信じてくれる人の前では、よい自分を見せようとする。そういう子ども
の性質を利用して、まず相手の友だちをほめる。「あなたの友だちのB君、あの子はユーモア
があっておもしろい子ね」とか。「あなたの友だちのB君って、いい子ね。このプレゼントをもっ
ていってあげてね」とか。そういう言葉はあなたの子どもを介して、必ず相手の子どもに伝わ
る。そしてそれを知った相手の子どもは、あなたの期待にこたえようと、あなたの前ではよい自
分を演ずるようになる。つまりあなたは相手の子どもを、あなたの子どもを通して遠隔操作する
わけだが、これは子育ての中でも高等技術に属する。ただし一言。

 よく「うちの子は悪くない。友だちが悪いだけだ。友だちに誘われただけだ」と言う親がいる。
しかし『類は友を呼ぶ』の諺どおり、こういうケースではまず自分の子どもを疑ってみること。祭
で酒を飲んで補導された中学生がいた。親は「誘われただけだ」と泣いて弁解していたが、調
べてみると、その子どもが主犯格だった。……というようなケースは、よくある。自分の子どもを
疑うのはつらいことだが、「友が悪い」と思ったら、「原因は自分の子ども」と思うこと。だからよ
けいに、友を責めても意味がない。何でもない格言のようだが、さすが教育先進国イギリス!
……と思わせるような、名格言である。
(030720)






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【6】

●両親との確執

【ある母親からのメール】

愛知県A市に住む、OTと申します。先月、先生の会場で講演を拝聴いたしました。とても感動
しました。

何度もメールを書きましたが、なかなか送信できないでいました。書いていると、少し整理でき
たような気にもなり……
 
相談ですが、私と子供について行きづまりを感じると、その後ろにいつも両親との関係を思い
出してしまいます。子育てというより、私の両親への「わだかまり」が問題のように思います。
 
私は両親について「許した」と思っていました。でも、「許していなかった」ことにこの頃気がづい
てしまい、とても苦しい思いで一杯です。

長いメールになってしまうと思います。「書く」ことで、また自分の整理ができればいいのです
が。
 
両親はとても喜怒哀楽の激しい性格です。そして、いつも自分の思い通りに私たち(私と弟)を
動かさないと気がすみません。それは親なら誰でも持っている感情と思います。でも、かなり度
が過ぎるタイプだと思うのです。

習い事がそれをかなりひどくさせてしまったようです。私は、小4の時点で、学校の合唱部・水
泳部(この2つは本当にやりたかった)に加え、毎日のソロバン塾・英会話・スポーツ少年団で
剣道をやっていました。かなりハードです。夕食を食べる間もありませんので、母が車で迎えに
来て、食べながら移動しました。

これらの習い事は、親が「やる?」と聞くので、気を引きたい私は「うん。」と答えます。この一言
で決定です。あとは、どんなことがあっても引きずられて、連れて行かれました。運動はキライ
でした。運動より、絵を描いたり、お料理をするのが何よりの楽しみでした。

やめたいと何度か恐る恐るいいましたが、「オレが小遣い減らしてまでやらせてやってるのに、
何だ!」と怒鳴ります。父は幼い頃からものすごく大きな声で怒鳴るのです。もちろん手もでま
す。ガラスの灰皿やご飯の入ったお茶碗など当たり前のようでした。食事中、少しこぼしただけ
で「バカヤロー!!」と頭を殴ります。コップを割っても「ケガはないか」など聞いた事ありませ
ん。腹がたって仕方がないのでしょう。父の前ではいつも震えがとまらない感じでした。

母は、ひどい無神経なタイプです。父が怒鳴るのはこの母の態度が引き金になるのです。言葉
一つとっても、気づかないうちに人を傷つけるタイプなんです。私の机は寝ている間に開けて見
ていました。手紙も全て。高校になっても続きました。母の言葉や行動にどれだけ傷ついたか
……。当時、「今の私には何もできない」と、ノートにバカ!、死ね!とどれだけ殴り書きした事
か。
 
よく分からないかも知れませんが、発狂していない時の両親は大好きでした。何でも良く話しま
した。

中学に進む時、部活を選択しなくてはいけませんでした。両親が「話し合いをしよう」と言われ、
正座して話し始めました。絵が好きなので美術部に行きたいというと、父が発狂したのです。怒
鳴りちらし、たたかれ、「途中でやめる中途半端な奴の親の顔が見たいと、他の親に言ってる
オレの立場を考えた事あるか!」と。当時、父は少年団のPTA会長をやっていました。「これで
もまだ言うか!」とまた、握りこぶしを震わせながら……
 1
それから何年も経って、もう、どうでもいい私の進路は言われるがまま、大学まで進学。もちろ
ん行きたくないところです。でも、なんとか家から出たくて……。
 
両親はこれら全てを愛情だと言ってはばかりません。オレはこれだけ子供に尽くした。見返り
があって当然とまで……。そういえば、妊婦の時も、追いかけられ、蹴られとこともありました…
…。
 
こんな親にだけはなりたくない。でも、親は大好きなんです。複雑な思いで、常に混乱していま
した。

 ……そんな私も愛する人にめぐり合い、結婚し、子供も2人(現在10才・7才の子)できまし
た。生むまでは「放って育てればいい」と教えられ、そういうものだと思っていました。でも、幸
い、素晴らしい産院に出会い、「抱いて育てる・母乳で育てる」ことの大切さを知りました。生ま
れた子は本当にかわいく、自分なりにいろいろ勉強し、いい子だいい子だと育ててきました。

ちょっと不器用ですが、何事も最後までやる長女。お調子者ですが、情にもろいところがある
優しい二女。2人とも私が大変そうだと、進んで助けに来てくれます。
 
そんな長女が「バレエ」を始めました。あんなに辛かった私ですが、もちろん多少にも得るとこ
ろもありましたし。なにより、長女は、赤ちゃん時代、お座りがしにくほど体がやわらかく、いつ
も踊って歌っていたのです。私は私。子供は子供で伸びようとする芽があるのなら、少しやって
みても……と思い。

もちろん、私のこともあり、常にその気持ちは確認しているつもりです。が、最近になって二女
がやりたくなったと、通うようになりました。そこで、やはり姉妹の競走が始まりました。ウチでも
練習をしていると、怪我をしたのです。

それをめぐって、どこまで続けるか……などの話もでてきて、実家に行った時、「オレは全て子
供の意思に任せてきたつもりだ」というではありませんか! 絶句でした。こんな親でもと、許し
てきたつもりでしたが、まさかそんな風に思っているとは……

もう、胸の中が煮えくり返るようでした。でも、やっぱり、私が我慢して許さないといけないのでし
ょうね。この時、こんなやり取りもあって。夕食のことです。

子供達が、○○大好きというので、少し高かったのですが、実家に行く事もあり、買っていきま
した。いざ作ると、「やっぱりいらなくなった……」と言われ、甘い私の母が「じゃあ、他のもある
から食べる?」とのこと。ちょっと高級のカレーでした。私は辛いのは食べられないと何度も言
ったのですが、「食べたいって言ってるじゃないか」と、どなり、作って出しました。案の定、ぺろ
っとなめただけで、辛くて大泣きです。私も、少々、腹を立ててしまい、「ほらごらん」などと言っ
てしまいました。

すると、母は何か入れればいいと、工夫してました。私が「ほら、食べてみな」と言うと、「この子
はなんて冷たい子なんだろう」と、子供の目の前で2人に、「ひどいね、ひどいね」と畳み掛ける
ようにいうのです。こんな時、私は黙ってしまいます。黙ってこらえます。いつもいつもこうなって
帰ります。私の両親は私のことを、子供の前でひどくバカにします。お前はバカだ。と。

その日は、お前は育児ノイローゼとまで言われてしまいました。言われると気になってしまうん
です。
 
子供のわがままをたしなめる。あんまりわがまま言うと家に帰るよ!、と言う。(この言い方も良
くないのでしょう)、子供がいやだー!、と泣く。両親は子供がイヤだと言ってるじゃないかと言
う。しまいには、「オレの言う事に逆らうのか!」となるのです。何故、私が叱られるのでしょう。

こんな話し、誰にも相談できませんよね。主人にもです。多分、書いていることは支離滅裂。こ
んな事よくあることなのでしょうか?私は考えすぎなのでしょうか?
 
両親の所に行かないときは本当に楽しく過ごせます。でも、何故か、足が向いてしまうんです。
長くなってすみません。

++++++++++++++++++++

【はやし浩司より、OTさんへ】

 親子とて、一対一の人間関係で決まります。「親だから……」「子だから……」という、『ダカラ
論』で、親を考えてはいけません。また子どもしばってはいけません。また『ダカラ論』で、親子
を考える必要は、ありません。親は、親。あなたは、あなた。どこまでいっても、親は、親。あな
たは、あなたです。

 今、こうした親子の不調に悩んだり、苦しんだりしている人は、たいへん多いです。ある母親
教室で、私が、「そういう人はいませんか?」と聞いてみたところ、二〇人くらいの中の、三〜四
人の人が、手をあげました。親子だから、すべてを許しあって、うまくいっていると思うのは、い
まや、幻想でしかありません。

 だから、OTさんのようなケースは、珍しくはありません。よくあることです。つまりそのように悩
んだり、苦しんだりしているのは、あなただけではないということです。

 で、こういうケースで、何よりも、悲劇なのは、親自身が、それに気づいていないということで
す。OTさんの父親も、まったく気づいていない。「子どもなんて」と思いつつ、子どもの人権をま
ったく認めていない。あるいは、「子どものことは、オレが一番よく知っている」と、誤解してい
る。権威主義まる出しの親意識。そのくせ、自分では、「いい親だ」と、錯覚している。

 いただいたメールの中で、いくつか、気になることを箇条書きにしてみました。

●両親はとても喜怒哀楽の激しい性格です。
●いつも自分の思い通りに私たち(私と弟)を動かさないと気がすみません
●これらの習い事は、親が「やる?」と聞くので、気を引きたい私は「うん。」と答えます。
●やめたいと何度か恐る恐るいいましたが、「オレが小遣い減らしてまで、やらせてやっている
のに、何だ!」と怒鳴ります。
●食事中、少しこぼしただけで「バカヤロー!」と頭を殴ります。
●父の前ではいつも震えがとまらない感じでした。
●私の机は寝ている間に開けて見ていました。手紙も全て。高校になっても続きました。母の
言葉や行動にどれだけ傷ついたか……。
●それから何年も経って、もう、どうでもいい私の進路は言われるがまま、大学まで進学。もち
ろん行きたくないところです。でも、なんとか家から出たくて……。
●両親はこれら全てを愛情だと言ってはばかりません。オレはこれだけ子供に尽くした。見返
りがあって当然とまで……。
●妊婦の時も、追いかけられ、蹴られとこともありました……。
●私の両親は私のことを、子供の前でひどくバカにします。お前はバカだ。と。
●しまいには、「オレの言う事に逆らうのか!」となるのです。

 一方、親への依存心を断ち切れない迷いも、あなたにはあります。

●発狂していない時の両親は大好きでした。何でも良く話しました。 
●もう、胸の中が煮えくり返るようでした。でも、やっぱり、私が我慢して許さないといけないの
でしょうね。
●お前は育児ノイローゼとまで言われてしまいました。言われると気になってしまうんです。
●両親の所に行かないときは本当に楽しく過ごせます。でも、何故か、足が向いてしまうんで
す。

 戦前まで、女性と、子どもは、人間社会の外に置かれていました。「オンナ、コドモ」という言
い方が、それです。しかし戦後、女性は、ある程度、その権利を獲得しましたが、子どもは、そ
のまま、取り残されました。今でも、子どもを半人前扱いする人は、少なくありません。たとえ
ば、あなたの両親が、そうです。

 とくに気になったのは、「私の机は寝ている間に開けて見ていました。手紙も全て。高校にな
っても続きました。母の言葉や行動にどれだけ傷ついたか……」という部分です。母親が、あな
たの机の中を、調べていたのですね。私はこういう話を聞くと、生理的な嫌悪感を覚えます。反
対に、そういうことをコソコソとしている母親を、あなたは、想像できますか。イヤ〜ですね!

 しかしそういう親を責めても、意味はありません。日本人の多くは、今でも、「親子の間には秘
密はあってはならない」とか、「隠しごとがないから親子」と考えています。中には、「子どもの机
の中を調べるのは、親として、当然の行為」と言う人もいます。しかし、問題は、なぜ、そういう
ことが、平気でできるかということです。その部分にまでメスを入れなければ、こうした問題は、
代々、繰りかえされることになります。つまりそれがここでいう、「親意識」と「子どもの人権」の
問題ということになります。

 以前、いくつかの原稿を書きましたので、ここに添付します。いくつか思いついたまま拾いまし
たので、話が少し脱線するかもしれませんが、どうか、お許しください。

+++++++++++++++++

逃げ場を大切に(中日新聞発表済み)

 どんな動物にも最後の逃げ場というものがある。動物はこの逃げ場に逃げ込むことによっ
て、身の安全を確保し、そして心をいやす。人間の子どもも、同じ。親がこの逃げ場を平気で
侵すようになると、子どもの情緒は不安定になる。最悪のばあいには、家出ということにもなり
かねない。

そんなわけで子どもにとって逃げ場は、神聖不可侵な場所と心得て、子どもが逃げ場へ逃げ
たら、追いかけてそこを荒らすようなことはしてはならない。説教をしたり、叱ったりしてもいけ
ない。子どもにとって逃げ場は、たいていは自分の部屋だが、そこで安全を確保できないとわ
かると、子どもは別の場所に、逃げ場を求めるようになる。A君(小二)は、親に叱られると、ト
イレに逃げ込んでいた。B君(小四)は、近くの公園に隠れていた。C君(年長児)は、犬小屋の
中に入って、時間を過ごしていた。電話ボックスの中や、屋根の上に逃げた子どももいた。

 さらに親がこの逃げ場を荒らすようになると、先ほども書いたように、「家出」ということにな
る。このタイプの子どもは、もてるものをすべてもって、家から一方向に、どんどん遠ざかってい
くという特徴がある。カバン、人形、おもちゃなど。D君(小一)は、おさげの中に、野菜まで入れ
て、家出した。

これに対して、目的のある家出は、必要なものだけをもって家出するので、区別できる。が、も
し目的のわからない家出を繰り返すというようであれば、家庭環境のあり方を猛省しなければ
ならない。過干渉、過関心、威圧的な子育て、無理、強制などがないかを反省する。激しい家
庭騒動が原因になることもある。

 が、中には、子どもの部屋は言うに及ばず、机の中、さらにはバッグの中まで、無断で調べ
る人がいる。しかしこういう行為は、子どものプライバシーを踏みにじることになるから注意す
る。できれば、子どもの部屋へ入るときでも、子どもの許可を求めてからにする。たとえ相手が
幼児でも、そうする。そういう姿勢が、子どもの中に、「私は私。あなたはあなた」というものの
考え方を育てる。

 話は変わるが、九八年の春、ナイフによる殺傷事件が続いたとき、「生徒(中学生)の持ちも
のを検査せよ」という意見があった。しかしいやしくも教育者を名乗る教師が、子どものカバン
の中など、のぞけるものではない。私など結婚して以来、女房のバッグの中すらのぞいたこと
がない。たとえ許可があっても、サイフを取り出すこともできない。私はそういうことをするの
が、ゾッとするほど、いやだ。

 もしこのことがわからなければ、反対の立場で考えてみればよい。あるいはあなたが子ども
のころを思い出してみればよい。あなたにも最後の逃げ場というものがあったはずだ。またプ
ライバシーを侵されて、不愉快な思いをしたこともあったはずだ。それはもう、理屈を超えた、
人間的な不快感と言ってもよい。自分自身の魂をキズつけられるかのような不快感だ。それが
わかったら、あなたは子どもに対して、それをしてはいけない。たとえ親子でも、それをしては
いけない。子どもの尊厳を守るために。

+++++++++++++++++++++
 
悪玉親意識

 親意識にも、親としての責任を果たそうと考える親意識(善玉)と、親風を吹かし、子どもを自
分の思いどおりにしたいという親意識(悪玉)がある。その悪玉親意識にも、これまた二種類あ
る。ひとつは、非依存型親意識。もうひとつは依存型親意識。

 非依存型親意識というのは、一方的に「親は偉い。だから私に従え」と子どもに、自分の価値
観を押しつける親意識。子どもを自分の支配下において、自分の思いどおりにしようとする。子
どもが何か反抗したりすると、「親に向って何だ!」というような言い方をする。

これに対して依存型親意識というのは、親の恩を子どもに押し売りしながら、子どもをその
「恩」でしばりあげるという意識をいう。日本古来の伝統的な子育て法にもなっているため、た
いていは無意識のうちのそうすることが多い。親は親で「産んでやった」「育ててやった」と言
い、子どもは子どもで、「産んでもらいました」「育てていただきました」と言う。

 さらにその依存型親意識を分析していくと、親の苦労(日本では、これを「親のうしろ姿」とい
う)を、見せつけながら子どもをしばりあげる「押しつけ型親意識」と、子どもの歓心を買いなが
ら、子どもをしばりあげる「コビ売り型親意識」があるのがわかる。「あなたを育てるためにママ
は苦労したのよ」と、そのつど子どもに苦労話などを子どもにするのが前者。クリスマスなどに
豪華なプレゼントを用意して、親として子どもに気に入られようとするのが後者ということにな
る。以前、「私からは、(子どもに)何も言えません。(子どもに嫌われるのがいやだから)、先生
の方から、(私の言いにくいことを)言ってください」と頼んできた親がいた。それもここでいう後
者ということになる。
 これらを表にしたのがつぎである。

   親意識  善玉親意識
        悪玉親意識  非依存型親意識
               依存型親意識   押しつけ型親意識
                        コビ売り型親意識
 
 子どもをもったときから、親は親になり、その時点から親は「親意識」をもつようになる。それ
は当然のことだが、しかしここに書いたように親意識といっても、一様ではない。はたしてあな
たの親意識は、これらの中のどれであろうか。一度あなた自身の親意識を分析してみると、お
もしろいのでは……。

++++++++++++++++++++++

肩書き社会、日本

 この日本、地位や肩書きが、モノを言う。いや、こう書くからといって、ひがんでいるのではな
い。それがこの日本では、常識。

 メルボルン大学にいたころのこと。日本の総理府から派遣された使節団が、大学へやってき
た。総勢三〇人ほどの団体だったが、みな、おそろいのスーツを着て、胸にはマッチ箱大の国
旗を縫い込んでいた。が、会うひとごとに、「私たちは内閣総理大臣に派遣された使節団だ」
と、やたらとそればかりを強調していた。つまりそうことを口にすれば、歓迎されると思っていた
らしい。

 が、オーストラリアでは、こうした権威主義は通用しない。よい例があのテレビドラマの『水戸
黄門』である。今でもあの番組は、平均して二〇〜二三%もの視聴率を稼いでいるという。が、
その視聴率の高さこそが、日本の権威主義のあらわれと考えてよい。

つまりその使節団のしたことは、まさに水戸黄門そのもの。葵の紋章を見せつけながら、「控え
おろう」と叫んだのと同じ。あるいはどこがどう違うのか。が、オーストラリア人にはそれが理解
できない。ある日、ひとりの友人がこう聞いた。「ヒロシ、もし水戸黄門が悪いことをしたら、どう
するのか。それでも日本人は頭をさげるのか」と。

 この権威主義は、とくにマスコミの世界に強い。相手の地位や肩書きに応じて、まるで別人の
ように電話のかけ方を変える人は多い。私がある雑誌社で、仕事を手伝っていたときのこと。
相手が大学の教授であったりすると、「ハイハイ、かしこまりました。おおせのとおりいたしま
す」と言ったあと、私のような地位も肩書きもないような人間には、「君イ〜ネ〜、そうは言って
もネ〜」と。しかもそういうことを、若い、それこそ地位や肩書きとは無縁の社員が、無意識のう
ちにそうしているから、おかしい。つまりその「無意識」なところが、日本人の特性そのものとい
うことになる。

 こうした権威主義は、恐らく日本だけにしか住んだことがない人にはわからないだろう。説明
しても、理解できないだろう。そして無意識のうちにも、「家庭」という場で、その権威主義を振り
まわす。「親に向かって何だ!」と。子どももその権威主義に納得すればよし。しかし納得しな
いとき、それは親子の間に大きなキレツを入れることになる。

親が権威主義的であればあるほど、子どもは親の前で仮面をかぶる。つまりその仮面をかぶ
った分だけ、子どもの子は親から離れる。ウソだと思うなら、あなたの周囲を見渡してみてほし
い。あなたの叔父や叔母の中には、権威主義の人もいるだろう。そうでない人もいるだろう。し
かし親が権威主義的であればあるほど、その親子関係はぎくしゃくしているはずである。

 ところで日本からの使節団は、オーストラリアでは嫌われていた。英語で話しかけられても、
ただニヤニヤ笑っているだけ。そのくせ態度だけは大きく、みな、例外なくいばっていた。この
ことは「世にも不思議な留学記」※に書いた。それから三〇年あまり。日本も変わったが、基本
的には、今もつづいている。

++++++++++++++++++++++++

 OTさんの問題は、しかし、一見親子の問題に見えますが、その実、もう二つの大きな問題が
隠されています。それが「信頼関係」の問題と、「依存性」の問題です。順に、これについて、説
明していきたいと思います。

●基本的信頼関係

 親子といえども、その信頼関係は、たがいの(さらけ出し)と、(全幅の受け入れ)が基本にあ
って、はじめてその上で結ばれます。つまり(さらけ出し)と、(全幅の受け入れ)は、信頼関係
の、必要絶対条件というわけです。そのうちのどちらかでも欠けると、信頼関係が結ばれない
ばかりか、反対に不信関係となって、そのあと、ずっと(恐らく一生)、尾を引くことになります。

 しかし親側に、たとえばここでいう権威主義(親風を吹かす)があると、子どもの側が、心を開
けなくなります。そしてほとんどのケースでは、子どもが親に迎合する形で、親の前では仮面を
かぶるようになります。つまりいい子ぶるわけです。

 OTさんのケースでも、OTさんは、「これらの習い事は、親が『やる?』と聞くので、気を引きた
い私は、『うん。』と答えます。この一言で決定です。あとは、どんなことがあっても引きずられ
て、連れて行かれました」と書いておられます。これが、ここでいう仮面です。あなたは仮面を
かぶることで、親の期待にこたえようとしたわけです。もっと言えば、いい子ぶることにより、親
の関心をひき、自分にとって居心地のよい世界を作ろうとしたわけです。

 仮面のこわいところは、信頼関係をそこなうばかりか、それが原因となって、心が遊離した
り、分離したりするようになることです。さらに二重人格性をもったり、何かのショックが原因で、
二重人格や、多重人格へと進むこともあります。私がよく、『親の権威は、百害あって一利な
し』という理由は、ここにあります。

 さらに大きな悲劇は、実は、親側にあります。子どもが仮面をかぶっていることにも気づか
ず、「自分はできた親だ」「すばらしい親だ」と思う一方、仮面をかぶる子どもを見ながら、「よく
できた子だ」「子どものことは私が一番、よく知っている」と錯覚します。親子関係が、完全に破
壊されているにも、かかわらずです。

 まだ、あります。こうした権威主義的な親をもったばあい、子どもの選択は、つぎの二つに大
きく分けることができます。

 一つは、こうした親に反発するケース。もう一つは、その権威主義を受け入れ、自分も、その
権威を振りかざすようになるケース。ある教育評論家は、自分の父親を振りかえりながら、こう
書いています。「私の父には、ゼウスのような威厳があった。私が父のひざの上で、風邪をひ
いて嘔吐したとき、『無礼者!』と私を叱った。今の父親に求められるのは、そういう親としての
威厳である」(雑誌「F」)と。

 どちらにせよ、これからはもう、そういう権威や、権力で相手をしばって動かす時代ではあり
ませんね。また、そうであってはいけないということです。それはともかくも、OTさん、あなたの
ばあいは、この二つのハザマで、ゆれ動いているのがわかります。(親の権威に反発するあな
た)と、(親の権威に恋慕するあなた)です。

 その根底にあるのが、依存性の問題です。

●依存性の問題

 もともと権威主義の親というのは、権威をふりかざすことによって、子どもに依存しようとしま
す。人間関係をうまく結べない人は、その孤独と戦うため、@攻撃型になる、A依存型になる、
B同情型になる、C服従的になるなどが、よく知られています。これを防衛機制といいますが、
権威主義というのは、このうちの依存型に分類できます。

 つまりさみしいから、親の権威で子どもをしばり、自分にとって、居心地のよい世界をつくろう
とするわけです。それがときどき、ここでいう攻撃型になることもあります。日ごろはやさしい親
が、(これは子どもに対する仮面)、何かのことでその権威にキズがつけられると、突然、「親に
向かって、何だ、その態度は!」と叫ぶのが、それです。

 親が子どもに依存的になることについて、「おやっ!」と思われるかもしれませんが、このタイ
プの親ほど、子どもに向かって、「産んでやった」「育ててやった」と恩を着せます。あなたの父
親がそうですね。「オレが小遣い減らしてまでやらせてやってるのに、何だ!」というのが、その
言葉です。

 が、問題は、実は、親というより、あなた自身にあります。親が依存性のあるケースでは、(そ
れが権威主義であれ、何であれ)、子どもにも、それが伝播(でんぱ)しやすいということです。
子育てというのは、そういう意味で、世代連鎖をします。親から、子へと、です。つまりあなた自
身が、今度は、親に対して依存性をもつのみならず、自分の子どもに対しても、(それは薄めら
れた形かもしれませんが)、権威主義的であったり、依存的であったりするようになります。

 あなたがメールの中で、最後のところで、「両親の所に行かないときは本当に楽しく過ごせま
す。でも、何故か、足が向いてしまうんです」と書いているのは、そのためです。あなたの心が、
(反発)と(依存)の間で、揺れ動いているのが、あなたにはわかるでしょうか?

 では、どうするか?

 もうお気づきかと思いますが、これはあなたの親の問題ではありません。あなた自身の問題
です。つまりあなたは自分の中に潜む、権威主義と無意識のうちに戦っている。そしてそういう
自分の権威主義を、あなたの父親に投影させている。その結果として、あなたは今、自分で、
自ら混乱している。

 ここで「投影」という言葉を使いましたが、たとえばケチな人が、他人のケチが気になり、「あ
の人はケチだ」と批判するようなことを言います。つまり自分の姿を、他人に投影しながら、自
分の姿を見るようなことを言います。よく知られたケースとしては、『泥棒の家ほど、戸締まりが
厳重』とか、『女遊びばかりしている父親ほど、娘にきびしい』というのがあります。これらも、結
局は、投影のなせるわざということになります。

 幸いにも、あなたは自分の二人の子ども(娘さんたち)について、よき友でいようと心がけてい
ます。それはすばらしいことです。方法としては、この部分をふくらませ、そしてあなたが両親か
ら受けついだ負の親像を、子どもには伝えないことです。権威主義など、「クソ食らえ!」(尾崎
豊)です。

 もう一つは、あなた自身の中に潜む、「依存性」を断ち切ることです。そのためには、遠慮しな
くてもよいですから、あなたの親を、とことんうらみ、嫌い、そして批判しなさい。遠慮せずに、し
ます。そしてその結果として、あなたは、親に対する依存性を断ち切ることができます。あなた
が「親を批判するなんて……」と思っている間は、あなたはそれを断ち切ることができません。

 しかし断ち切ってみると、あなたは親よりも、一歩も、二歩も、先へ抜き出ることができます。
そういう視点に立つと、今の状況が一変するはずです。それまで憎んでいた親が、あわれで小
さな人間に見えてきます。そうなれば、今の問題は、自然に解消します。約束します。

 そう、憎しみを、あわれみに変えたとき、あなたは、その人間を超えられるのです。そしてそこ
を原点として、新しい人間関係が始めることができます。つまりは、新しい親子関係になるので
す。そしてあなた自身も、あなたの子どもに対して、すばらしい親になることができます。そうい
うあなたをめざしてください。

 ただ一つだけ気になるのは、最後の、この部分です。「こんな話し、誰にも相談できませんよ
ね。主人にもです」というところです。

 今のあなた自身が、ひょっとしたら、あなたの夫に対して、全幅に心を開いていない心配があ
ります。もしそうなら、これはたいへんまずいことです。夫にすら心を開けないあなたが、どうし
て子どもに心を開けますか。もしそうなら、あなたの夫のみならず、あなたの子どもは、あなた
に対して、たいへんさみしい思いをしているはずです。私はそれを心配します。

 ですから、「主人にもです」などと言っていないで、思い切って、あなたの夫にすべてを話しな
さい。それがまず第一歩です。信頼関係は、やってくるものではなく、長い苦しみと、失敗を繰
りかえしながら、おたがいに作りあげるものです。一つの方法として、この私の手紙を、あなた
の夫に見せてみてはどうでしょうか。

 長い返事になってしまいましたが、あなたがかかえている問題は、子育ての根幹にかかわる
問題であると同時に、今の日本の社会が構造的にかかえる問題でもあります。それをわかっ
てほしかったです。

 では、これで失礼します。講演会においでくださったことに感謝します。ありがとうございまし
た。これからもよろしくお願いします。
(030724)









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【7】

●分離不安(恐怖症)

【YKさんの相談より】

 今年から、幼稚園へ通うようになりました。現在、三歳です。毎日のように、幼稚園へ行きたく
ないと、ぐずります。「ママといっしょにいたい」と言います。以前は、泣きながら幼稚園へ行きま
したが、今は、やっと泣かなくなりました。外の世界では、思ったことも、言えなく、がまんしてし
まうので、それではないかと思います。見ていると、それなりに友だちと、遊んではいますが…
…。どのように接したらよいのか、私自身もわからなくなりました。

【はやし浩司より、KYさんへ】

 こういう相談では、最悪のケースから考えていきます。それはドクターの診断に似ています。
「この病気か? でないとするなら、この病気か?」とです。

 KYさんのケースでは、いくつか、疑われます。思いついたままですが、たとえば、@母子分離
不安、A対人(集団)恐怖症、B強迫症など。下にお子さんがいるなら、C赤ちゃんがえりによ
る、情緒不安や、神経症なども疑ってみます。

 いただいた文面だけでは、何とも判断しかねますが、よい方向に向っているのは事実のよう
ですから、@無理をしない、A質の高い愛情表現、B食生活の改善、C暖かい無視を組み合
わせて、対処します。

 「無理をしない」というのは、お子さんの心を大切に、という意味です。心理学(カウンセリン
グ)の世界でも、@自己一致、A肯定的尊重、B共感を大切にします。しかしこれは同時に、
子育ての世界でも、そのまま応用できます。

 自己一致……要するに、お子さんをだますためのウソは言わないということ。「幼稚園へ行か
ないと、先生に怒られる」式のおどしがよくないことは、言うまでもありません。

 肯定的尊重……よき聞き役になれということです。そしてお子さんが何を言っても、「そうね」
「ママもそう思うわ」と、お子さんの心をくみあげてやります。

 共感……お子さんの立場で、考えてあげるということです。「幼稚園へ行きなさい!」と突き放
すのではなく、「毎日、たいへんね」と、ねぎらってあげます。

 つぎに「質の高い愛情表現」ですが、お子さんが求めてきたときには、濃密なスキンシップで
こたえてあげます。ぐいと力強く抱くなどが、効果的です。お子さんに、安心感を覚えさせるよう
にするのが、コツです。

 「食生活の改善」は、お子さんの心がどこか不安定になったら、CA、MGの多い食生活にこ
ころがけます。海産物、魚類がよいことは、言うまでもありません。同時に、甘い食品を一掃し
ます。

 最後に「暖かい無視」ですが、幼稚園から帰ってきたら、こまごまとしたことは言わないで、お
子さんの側から見て、くつろげる家庭環境を用意します。とくに神経疲れを起こしているような
ら、家の中では、ゆるめます。多少生活態度がぞんざいになっても、「ああ、うちの子は、外の
世界でがんばっている」と思いなおすようにします。

 ここに「神経症のチェックシート」を同封しておきますので、一度、家庭で、自己診断してみてく
ださい。得点が平均点より、高いようでしたら、ここに書いたことを参考にしてみてください。し
かし平均点より下ということであれば、今のところ、心の問題はないものと思われますから、お
子さんを暖かく見守る程度で、よいかと思います。

 いくつか参考にしていただけそうな原稿を、ここにはりつけておきます。

++++++++++++++++++++

恐怖症を軽く考えない

子どもが恐怖症になるとき

●九死に一生
 先日私は、交通事故で、あやうく死にかけた。九死に一生とは、まさにあのこと。今、こうして
文を書いているのが、不思議なくらいだ。が、それはそれとして、そのあと、妙な現象が現れ
た。夜、自転車に乗っていたのだが、すれ違う自動車が、すべて私に向かって走ってくるように
感じた。私は少し走っては自転車からおり、少し走ってはまた、自転車からおりた。こわかった
……。恐怖症である。子どもはふとしたきっかけで、この恐怖症になりやすい。

 たとえば以前、『学校の怪談』というドラマがはやったことがある。そのとき「小学校へ行きたく
ない」と言う園児が続出した。あるいは私の住む家の近くの湖で水死体があがったことがあ
る。その直後から、その近くの小学校でも、「こわいから学校へ行きたくない」という子どもが続
出した。これは単なる恐怖心だが、それが高じて、精神面、身体面に影響が出ることがある。
それが恐怖症だが、この恐怖症は子どものばあい、何に対して恐怖心をいだくかによって、ふ
つう、次の三つに分けて考える。

@対人(集団)恐怖症……子ども、とくに幼児のばあい、新しい人の出会いや環境に、ある程
度の警戒心をもつことは、むしろ正常な反応とみる。知恵の発達がおくれぎみの子どもや、注
意力が欠如している子どもほど、周囲に対して、無警戒、無頓着で、はじめて行ったような場所
でも、わがもの顔で騒いだりする。が、反対にその警戒心が、一定の限度を超えると、人前に
出ると、声が出なくなる(失語症)、顔が赤くなる(赤面症)、冷や汗をかく、幼稚園や学校がこ
わくて行けなくなる(学校恐怖症)などの症状が表れる。さらに症状がこじれると、外出できな
い、人と会えない、人と話せないなどの症状が表れることもある。

A場面恐怖症……その場面になると、極度の緊張状態になることをいう。エレベーターに乗れ
ない(閉所恐怖症)、鉄棒に登れない(高所恐怖症)などがある。これはある子ども(小一男児)
のケースだが、毎朝学校へ行く時刻になると、いつもメソメソし始めるという。親から相談があ
ったので調べてみると、原因はどうやら学校へ行くとちゅうにある、トンネルらしいということが
わかった。その子どもは閉所恐怖症だった。実は私も子どものころ、暗いトイレでは用を足す
ことができなかった。それと関係があるかどうかは知らないが、今でも窮屈なトンネルなどに入
ったりすると、ぞっとするような恐怖感を覚える。

Bそのほかの恐怖症……動物や虫をこわがる(動物恐怖症)、死や幽霊、お化けをこわがる、
先のとがったものをこわがる(先端恐怖症)などもある。何かのお面をかぶって見せただけで、
ワーッと泣き出す「お面恐怖症」の子どもは、一五人に一人はいる(年中児)。ただ子どものば
あい、恐怖症といってもばくぜんとしたものであり、問いただしてもなかなか原因がわからない
ことが多い。また症状も、そのとき出るというよりも、その前後に出ることが多い。

これも私のことだが、私は三〇歳になる少し前、羽田空港で飛行機事故を経験した。そのため
それ以来、ひどい飛行機恐怖症になってしまった。何とか飛行機には乗ることはできるが、い
つも現地ではひどい不眠症になってしまう。「生きて帰れるだろうか」という不安が不眠症の原
因になる。また一度恐怖症になると、その恐怖症はそのつど姿を変えていろいろな症状となっ
て表れる。高所恐怖症になったり、閉所恐怖症になったりする。脳の中にそういう回路(パター
ン)ができるためと考えるとわかりやすい。私のケースでは、幼いころの閉所恐怖症が飛行機
恐怖症になり、そして今回の自動車恐怖症となったと考えられる。

●忘れるのが一番
 子ども自身の力でコントロールできないから、恐怖症という。そのため説教したり、叱っても意
味がない。一般に「心」の問題は、一年単位、二年単位で考える。子どもの立場で、子どもの
視点で、子どもの心を考える。無理な誘導や強引な押しつけは、タブー。無理をすればするほ
ど、逆効果。ますます子どもはものごとをこわがるようになる。いわば心が熱を出したと思い、
できるだけそのことを忘れさせるようにする。症状だけをみると、神経症と区別がつきにくい。

私のときも、その事故から数日間は、車の速度が五〇キロ前後を超えると、目が回るような状
態になってしまった。「気のせいだ」とはわかっていても、あとで見ると、手のひらがびっしょりと
汗をかいていた。が、少しずつ自分をスピードに慣れさせ、何度も自分に、「こわくない」と言い
きかせることで、克服することができた。いや、今でもときどき、あのときの模様を思い出すと、
夜中でも興奮状態になってしまう。恐怖症というのはそういうもので、自分の理性や道理ではど
うにもならない。そういう前提で、子どもの恐怖症には対処する。

(付記)
●不登校と怠学
不登校は広い意味で、恐怖症(対人恐怖症など)の一つと考えられているが、恐怖症とは区別
する。この不登校のうち、行為障害に近い不登校を怠学という。うつ病の一つと考える学者も
いる。不安障害(不安神経症)が、その根底にあって、不登校の原因となると考えるとわかりや
すい。

+++++++++++++++++++++

原因を家庭の中に

子どもの心が不安定になるとき 

●情緒が不安定な子ども
 子どもの成長は、次の四つをみる。@精神の完成度、A情緒の安定度、B知育の発達度、
それにC運動能力。このうち情緒の安定度は、子どもが肉体的に疲れていると思われるとき
をみて、判断する。運動会や遠足のあと、など。そういうときでも、ぐずり、ふさぎ込み、不機
嫌、無口(以上、マイナス型)、あるいは、暴言、暴力、イライラ、激怒(以上、プラス型)がなけ
れば、情緒が安定した子どもとみる。子どもは、肉体的に疲れたときは、「疲れた」とは言わな
い。「眠い」と言う。子どもが「疲れた」というときは、神経的な疲れを疑う。子どもはこの神経的
な疲れにたいへん弱い。それこそ日中、五〜一〇分、神経をつかっただけで、ヘトヘトに疲れ
てしまう。

●情緒不安とは……?
 外部の刺激に左右され、そのたびに精神的に動揺することを情緒不安という。二〜四歳の
第一反抗期、思春期の第二反抗期に、とくに子どもは動揺しやすくなる。

 その情緒が不安定な子どもは、神経がたえず緊張状態にあることが知られている。気を許さ
ない、気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にする、よい子ぶるなど。その緊張状
態の中に、不安が入り込むと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不安
定になる。症状が進むと、周囲に溶け込めず、引きこもったり、怠学、不登校を起こしたり(マ
イナス型)、反対に攻撃的、暴力的になり、突発的に興奮して暴れたりする(プラス型)。表情に
だまされてはいけない。

柔和な表情をしながら、不安定な子どもはいくらでもいる。このタイプの子どもは、ささいなこと
がきっかけで、激変する。母親が、「ピアノのレッスンをしようね」と言っただけで、激怒し、母親
に包丁を投げつけた子ども(年長女児)がいた。また集団的な非行行動をとったり、慢性的な
下痢、腹痛、体の不調を訴えることもある。

●原因の多くは異常な体験
 原因としては、乳幼児期の何らかの異常な体験が引き金になることが多い。たとえば親自身
の情緒不安のほか、親の放任的態度、無教養で無責任な子育て、神経質な子育て、家庭騒
動、家庭不和、何らかの恐怖体験など。ある子ども(五歳男児)は、たった一度だが、祖父に
はげしく叱られたのが原因で、自閉傾向(人と心が通い合わない状態)を示すようになった。ま
た別の子ども(三歳男児)は、母親が入院している間、祖母に預けられたことが原因で、分離
不安(親の姿が見えないと混乱状態になる)になってしまった。

 ふつう子どもの情緒不安は、神経症による症状をともなうことが多い。ここにあげた体の不調
のほか、たとえば夜驚、夢中遊行、かん黙、自閉、吃音(どもり)、髪いじり、指しゃぶり、チッ
ク、爪かみ、物かみ、疑惑症(臭いかぎ、手洗いぐせ)、かみつき、歯ぎしり、強迫傾向、潔癖
症、嫌悪症、対人恐怖症、虚言、収集癖、無関心、無感動、緩慢行動、夜尿症、頻尿症など。

●原因は、家庭に!
 子どもの情緒が不安定になると、たいていの親は原因さがしを、外の世界に求める。しかし
まず反省すべきは、家庭である。強度の過干渉(子どもにガミガミと押しつける)、過関心(子ど
もの側からみて神経質で、気が抜けない環境)、家庭不和(不安定な家庭環境、愛情不足、家
庭崩壊、暴力、虐待)、威圧的な家庭環境など。夫婦喧嘩もある一定のワク内でなされている
なら、子どもにはそれほど大きな影響を与えない。が、そのワクを越えると、大きな影響を与え
る。子どもは愛情の変化には、とくに敏感に反応する。

 子どもが小学生になったら、家庭は、「体を休め、疲れた心をいやす、いこいの場」でなけれ
ばならない。アメリカの随筆家のソロー(一八一七〜六二)も、『ビロードのクッションの上より、
カボチャの頭』と書いている。人というのは、高価なビロードのクッションの上に座るよりも、カボ
チャの頭の上に座ったほうが気が休まるという意味だが、多くの母親にはそれがわからない。
わからないまま、家庭を「しつけの場」と位置づける。学校という「しごきの場」で、いいかげん疲
れてきた子どもに対して、家の中でも「勉強しなさい」と子どもを追いまくる。「宿題は終わった
の」「テストは何点だったの」「こんなことでは、いい高校へ入れない」と。これでは子どもの心は
休まらない。

●子どもの情緒を安定させるために
 子どもの情緒が不安定になったら、スキンシップをより濃厚にし、温かい語りかけを大切にす
る。叱ったり、冷たく突き放すのは、かえって情緒を不安定にする。一番よい方法は、子どもが
ひとりで誰にも干渉されず、のんびりとくつろげるような時間と場所をもてるようにすること。親
があれこれ気をつかうのは、かえって逆効果。

 ほかにカルシウムやマグネシウム分の多い食生活に心がける。とくにカルシウムは天然の
精神安定剤と呼ばれている。戦前までは、日本では精神安定剤として使われていた。錠剤で
与えるという方法もあるが、牛乳や煮干など、食品として与えるほうがよいことは言うまでもな
い。なお情緒というのは一度不安定になると、その症状は数か月から数年単位で推移する。
親があせって何とかしようと思えば思うほど、ふつう子どもの情緒は不安定になる。また一度
不安定になった心は、そんなに簡単にはなおらない。今の状態をより悪くしないことだけを考え
ながら、子どものリズムに合わせた生活に心がける。

 (参考)
●子どもの神経症について
心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害を、神経症という。子どもの
神経症は、精神面、身体面、行動面の三つの分野に分けて考える。

@精神面の神経症……精神面で起こる神経症には、恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状
(周囲の者には理解できないものに対して、おののく、こわがる)、不安症状(理由もなく悩
む)、抑うつ感(ふさぎ込む)など。混乱してわけのわからないことを言ってグズグズしたり、反
対に大声をあげて、突発的に叫んだり、暴れたりすることもある。

A身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿症、
頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発
熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面で
の神経症に先立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号とと
らえて警戒する。

B行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって行動面
に表れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、無気力、怠学、無
関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになる。パンツ一枚で出
歩くなど、生活習慣がだらしなくなることもある。

++++++++++++++++++++++

砂糖は白い麻薬

 キレるタイプの子どもは、独特の動作をすることが知られている。動作が鋭敏になり、突発的
にカミソリでものを切るようにスパスパとした動きになるのがその一つ。

原因についてはいろいろ言われているが、脳の抑制命令が変調したためにそうなると考えると
わかりやすい。そしてその変調を起こす原因の一つが、白砂糖(精製された砂糖)である(アメ
リカ小児栄養学・ヒューパワーズ博士)。つまり一時的にせよ白砂糖を多く含んだ甘い食品を
大量に摂取すると、インスリンが大量に分泌され、そのインスリンが脳間伝達物質であるセロト
ニンの大量分泌をうながし、それが脳の抑制命令を阻害する、と。

これから先は長い話になるので省略するが、要するに子どもに与える食品は、砂糖のないも
のを選ぶ。今ではあらゆる食品に砂糖は含まれているので、砂糖を意識しなくても、子どもの
必要量は確保できる。ちなみに幼児の一日の必要摂取量は、約一〇〜一五グラム。この量は
イチゴジャム大さじ一杯分程度。もしあなたの子どもが、興奮性が強く、突発的に暴れたり、凶
暴になったり、あるいはキーキーと声をはりあげて手がつけられないという状態を繰り返すよう
なら、一度、カルシウム、マグネシウムの多い食生活に心がけながら、砂糖は白い麻薬と考
え、砂糖断ちをしてみるとよい。子どもによっては一週間程度でみちがえるほど静かに落ち着
く。

なお、この砂糖断ちと合わせて注意しなければならないのが、リン酸である。リン酸食品を与え
ると、せっかく摂取したカルシウム分を、リン酸カルシウムとして体外へ排出してしまう。と言っ
ても、今ではリン酸(塩)はあらゆる食品に含まれている。たとえば、ハム、ソーセージ(弾力性
を出し、歯ごたえをよくするため)、アイスクリーム(ねっとりとした粘り気を出し、溶けても流れ
ず、味にまる味をつけるため)、インスタントラーメン(やわらかくした上、グニャグニャせず、歯
ごたえをよくするため)、プリン(味にまる味をつけ、色を保つため)、コーラ飲料(風味をおだや
かにし、特有の味を出すため)、粉末飲料(お湯や水で溶いたりこねたりするとき、水によく溶
けるようにするため)など(以上、川島四郎氏)。かなり本腰を入れて対処する。

ついでながら、W・ダフティという学者はこう言っている。「自然が必要にして十分な食物を生み
出しているのだから、われわれの食物をすべて人工的に調合しようなどということは、不必要
なことである」と。つまりフード・ビジネスが、精製された砂糖や炭水化物にさまざまな添加物を
加えた食品(ジャンク・フード)をつくりあげ、それが人間を台なしにしているというのだ。「(ジャ
ンクフードは)疲労、神経のイライラ、抑うつ、不安、甘いものへの依存性、アルコール処理不
能、アレルギーなどの原因になっている」とも。
 
+++++++++++++++++++++
子どもの分離不安

子どもが分離不安になるとき

●親子のきずなに感動した!?     
 ある女性週刊誌の子育てコラム欄に、こんな手記が載っていた。日本でもよく知られたコラム
ニストの書いたものだが、いわく、「うちの娘(三歳)をはじめて幼稚園へ連れていったときのこ
と。娘ははげしく泣きじゃくり、私との別れに抵抗した。私はそれを見て、親子の絆の深さに感
動した」と。そのコラムニストは、ワーワーと泣き叫ぶ子どもを見て、「親子の絆の深さ」に感動
したと言うのだ。とんでもない! ほかにもあれこれ症状が書かれていたが、それはまさしく分
離不安の症状。「別れをつらがって泣く子どもの姿」では、ない。

●分離不安は不安発作
 分離不安。親の姿が見えなくなると、発作的に混乱して、泣き叫んだり暴れたりする。大声を
あげて泣き叫ぶタイプ(プラス型)と、思考そのものが混乱状態になり、オドオドするタイプ(マイ
ナス型)に分けて考える。似たようなタイプの子どもに、単独では行動ができない子ども(孤立
恐怖)もいるが、それはともかくも、分離不安の子どもは多い。四〜六歳児についていうなら、
一五〜二〇人に一人くらいの割合で経験する。親が子どもの見える範囲内にいるうちは、静
かに落ちついている。が、親の姿が見えなくなったとたん、ギャーッと、ものすごい声をはりあげ
て、そのあとを追いかけたりする。

●過去に何らかの事件
 原因は……、というより、分離不安の子どもをみていくと、必ずといってよいほど、そのきっか
けとなった事件が、過去にあるのがわかる。はげしい家庭内騒動、離婚騒動など。母親が病
気で入院したことや、置き去り、迷子を経験して、分離不安になった子どももいる。さらには育
児拒否、冷淡、無視、親の暴力、下の子どもが生まれたことが引き金となった例もある。子ど
もの側からみて、「捨てられるのでは……」という被害妄想が、分離不安の原因と考えるとわか
りやすい。

無意識下で起こる現象であるため、叱ったりしても意味がない。表面的な症状だけを見て、「集
団生活になれていないため」とか、「わがまま」とか考える人もいるが、無理をすればかえって
症状をこじらせてしまう。いや、実際には無理に引き離せば混乱状態になるものの、しばらくす
るとやがて静かに収まることが多い。しかしそれで分離不安がなおるのではない。「もぐる」の
である。一度キズついた心は、そんなに簡単になおらない。この分離不安についても、そのつ
ど繰り返し症状が表れる。

●鉄則は無理をしない
 こうした症状が出てきたら、鉄則はただ一つ。無理をしない。その場ではやさしくていねいに
説得を繰り返す。まさに根気との勝負ということになるが、これが難しい。現場で、そういう親子
を観察すると、たいてい親のほうが短気で、顔をしかめて子どもを叱ったり、怒ったりしている
のがわかる。「いいかげんにしなさい」「私はもう行きますからね!」と。こういう親子のリズムの
乱れが、症状を悪化させる。子どもはますます強く被害妄想をもつようになる。分離不安を神
経症の一つに分類している学者も多い(牧田清志氏ほか)。

 分離不安は四〜五歳をピークとして、症状は急速に収まっていく。しかしここに書いたよう
に、一度キズついた心は、簡単にはなおらない。ある母親はこう言った。「今でも、夫の帰宅が
予定より遅くなっただけで、言いようのない不安発作に襲われます」と。姿や形を変えて、おと
なになってからも症状が表れることがある。

(付記)
●分離不安は小児うつ病?
子どもは離乳期に入ると、母親から身体的に分離し始め、父親や周囲の者との心理的つなが
りを求めるようになる。自我の芽生え、自立心、道徳的善悪の意識などがこの時期に始まる。
そしてさらに三歳前後になると、母親から心理的にも分離しようとするが、この時期に、母子の
間に問題があると、この心理的分離がスムーズにいかず、分離不安を起こすと考えられてい
る(クラウスほか)。小児うつ病の一形態と考える学者も多い。症状がこじれると、慢性的な発
熱、情緒不安症状、さらには神経症による諸症状を示すこともある。

+++++++++++++++++++++

【終わりに……】

 「泣きながら通った」ということで、お子さんの心には、かなりのキズがついたものと思われま
す。本来なら、そうした無理は、最小限にしたほうがよいわけです。一番心配されるのは、対人
恐怖症の「種」をつくってしまったということです。

 つまりそれはこれからの、一つの「負い目」になることは、じゅうぶん考えられます。新しいお
けいこ塾へ入るとき、小学校へ入学するときなど。そのつど、ほかの子どもよりは、より慎重な
配慮が必要になることは、言うまでもありません。「うちの子は、新しい環境には、すぐなじまな
い」程度の、理解は必要かと思います。

 ただだれにも、どんな子どもにも、その程度の負い目はあるわけですから、だからといって、
深刻に考えてはいけません。ただ「より慎重に」というだけのことです。無理をすれば、……とい
うより、現在、お子さんは、「それなりに友だちと、遊んではいますが……」ということなので、そ
れほど心配しなくてもよいのではと思います。

 こうした対人関係の不調が、情緒不安や、神経症による症状を示せば、それはそのときどき
で、ケースバイケースで、対処しなければなりません。が、ほかに症状がなければ、今の状態
を暖かく見守るという程度で、じゅうぶんではないかと思います。(もし同封の「診断テスト」で、
得点が極端に高いようでしたら、またご連絡ください。)

 いただいた文面だけでは、詳しいことがわかりません。そのため何とも不十分な回答になっ
てしまいましたが、どうか、お許しください。今日は、これで失礼します。

       








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【8】

●やる気のない子ども

【E氏より】

甥っ子についてなんですが、小学二年生でサッカークラブに入っています。ところがこのとこ
ろ、することがないと、ゴロゴロしているというのです。

とくに友だちと遊ぶでもなく、何か自分で遊ぶのでもなく……。サッカーもヤル気がないくせに、
やめるでもない。こういう時は、どこに目を向ければいいのでしょうか。

やる気がないのは、今、彼の家庭が関心を持っている範疇にないというだけで、親自身が持っ
ている壁を越えさせることがポイントかな、と思ったりしたのですが……。 

【はやし浩司より】

●消去法で

 こういう相談では、最悪のケースから、考えていきます。

 バーントアウト(燃え尽き、俗にいう「あしたのジョー症候群」)、無気力症候群(やる気が起き
ない、ハキがない)、自我の崩壊(抵抗する力すらなくし、従順、服従的になる)など。さらに回
避性障害(人との接触を避ける)、引きこもり、行為障害(買い物グセ、集団非行、非行)など。
自閉症はないか、自閉傾向はないか。さらには、何らかの精神障害の前兆や、学校恐怖症の
初期症状、怠学、不登校の前兆症状はないか、など。

 軽いケースでは、親の過干渉、溺愛、過関心、過保護などによって、似たような症状を見せ
ることがあります。また学習の過負担、過剰期待による、オーバーヒートなどなど。この時期だ
と、暑さにまけた、クーラー病もあるかもしれません(青白い顔をして、ハーハーあえぐ、など)。

 「無気力」といっても、症状や程度は、さまざまです。日常生活全体にわたってそうなのか。あ
るいは勉強面なら勉強面だけにそうなのか。あるいは日よって違うのか。また一日の中でも、
変動はあるのかないのか。

こうした症状にあわせて、何か随伴症状があるかないかも、ポイントになります。ふつう心配な
ケースでは、神経症による緒症状(身体面、行動面、精神面の症状)が伴うはずです。たとえ
ばチック、夜驚、爪かみ、夜尿など。腹痛や、慢性的な疲労感、頭痛もあります。行動面では、
たとえば収集癖や万引きなど。

さらに情緒障害が進むと、心が緊張状態になり、突発的に怒ったり、キレたりしやすくなりま
す。この年齢だと、ぐずったりすることもあるかもしれません。

こうした症状をみながら、順に、一つずつ、消去していきます。「これではない」「では、これでは
ないか?」とです。

●教育と医療

 つまりいただいた症状だけでは、私には、何とも判断しかねるということです。したがって、ア
ドバイスは不可能です。仮に、そのお子さんを前に置いても、私のようなものが診断名をくだす
のは、タブーです。資格のあるドクターもしくは、家の人が、ここに書いたことを参考に、自分で
判断するしかありません。

 治療を目的とする医療と、教育を目的とする教育とは、基本的な部分で、見方、考え方が違
うということです。

 たとえばこの時期、子どもは、中間反抗期に入ります。おとなになりたいという自分と、幼児
期への復帰と、その間で、フラフラとゆれ戻しを繰りかえしながら、心の状態が、たいへん不安
定になります。

 「おとなに扱わねば怒る」、しかし「幼児のように、母親のおっぱいを求める」というようにで
す。

 そういう心の変化も、加味して、子どもを判断しなければなりません。医療のように、検査だ
けをして……というわけにはいかないのですね。私たちの立場でいうなら、わかっていても、知
らないフリをして指導します。

 しかしそれでは、回答になりませんので、一応の答を書いておきます。

 相談があるということから、かなり目立った症状があるという前提で、話をします。

 もっとも多いケースは、親の過剰期待、それによるか負担、過関心によって、脳のある部分
(辺縁系の帯状回)が、変調しているということ。多くの無気力症状は、こうして生まれます。

 特徴としては、やる気なさのほか、無気力、無関心、無感動、脱力感、無反応など。緩慢動
作や、反応の遅延などもあります。こうした症状が慢性化すると、昼と夜の逆転現象や回避性
障害(だれにも会いたがらない)などの症状がつづき、やがて依存うつ病へと進行していきま
す。(こわいですね! Eさんのお子さんのことではなく、甥のことということで、私も、少し気楽
に書いています。)

 ですから安易に考えないこと。

●二番底、三番底へ……

 この種の問題は、扱い方をまちがえると、二番底、三番底へと落ちていきます。さらに最悪の
状態になってしまうということです。たとえば今は、何とか、まだサッカーはしているようですが、
そのサッカーもしなくなるということです。(親は、これ以上悪くならないと思いがちですが……。
決して、そうではないということです。)

 小学二年生という年齢は、好奇心も旺盛で、生活力、行動力があって、ふつうなのです。そ
れが中年の仕事疲れの男のように、家でゴロゴロしているほうが、おかしいのです。どこかに
心の病気があるとみてよいでしょう。

 では、なおすために、どうしたらよいか?

 まず、家庭が家庭として、機能しているかどうかを、診断します。

●家庭にあり方を疑う……

 子どもにとって、やすらぎのある、つまり外の世界で疲れた心と体を休める場所として機能し
ているかどうかということです。簡単な見分け方としては、親のいる前で、どうどうと、ふてぶてし
く、体を休めているかどうかということです。

 親の姿を見たら、コソコソと隠れたり、好んで親のいないところで、体や心を休めるようであ
れば、機能していないとみます。ほかに深刻なケースとしては、帰宅拒否があります。反省す
べきは、親のほうです。

 つぎに、達成感を大切にします。「自身が持っている壁を越えさせることがポイント」というの
は、とんでもない話で、そういうやり方をすると、かえってここでいう二番底、三番底へと、子ど
もを追いやってしまうから注意してください。

 この種の問題は、(無理をする)→(ますます無気力になる)→(ますます無理をする)の悪循
環に陥りやすいので、注意します。一度、悪循環に陥ると、あとは底なしの悪循環を繰りかえ
し、やがて行き着くところまで、行き着いてしまいます。

 
「壁を越えさせる」のは、風邪を引いて、熱を出している子どもに、水をかけるような行為と言っ
てもよいでしょう。仮に心の病にかかっているということであれば、症状は、この年齢でも、半年
単位で推移します。今日、改めたから、明日から改善するなどということは、ありえません。

 私なら、学校恐怖症による不登校の初期症状を疑いますが、それについても、私はその子ど
もを見ていませんので、何とも判断しかねます。

 ただコツは、いつも最悪のケースを考えながら、「暖かい無視」を繰りかえすということです。
子どものやりたいようにさせます。過関心であれば、親は、子育てそのものから離れます。

 多少生活態度がだらしなくなっても、「うちの子は、外でがんばっているから……」と思いなお
し、大目にみます。

 ほかに退行(幼児がえり)などの症状があれば、スキンシップを濃厚にし、CA、MGの多い食
生活にこころがけます。(下にお子さんがいらっしゃれば、嫉妬が原因で、かなり情緒が不安定
になっていることも、考えられます。)

 子どもの無気力の問題は、安易に考えてはいけません。今は、それ以上のことは言えませ
ん。どうか慎重に対処してください。親やまわりのものが、あれこれお膳立てしても、意味がな
いばかりか、たいていは、症状を悪化させてしまいます。そういう例は、本当に多いです。

 またもう少し症状がわかれば、話してください。症状に応じて、対処方法も変わります。あまり
深刻でなければ、そのまま様子を見てください。では、今日は、これで失礼します。

                             はやし浩司
(030824)








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【9】

●子どもの排便障害

【あるお母さんからの相談】

●便秘する子ども

はじめてメールさせて頂きます。インターネットで、「幼児・心因性・便秘」のキーワードで検索し
て行きましたところ、このホームページにたどり着きました。

私は、岡山県W市に住んでいます、HEと申します。

現在、2才10ヵ月と1才4ヵ月になります男の子の母親です。今日は、その2才10ヵ月の長男(就
園前です)について、御相談にのっていただきたく、メールさせていただきました。

発端は、一年と少し前の事になるのですが、それまで生まれてこの方、便秘などしたこともない
長男が、急に1週間程、便が出ない日が続きました。1週間後にやっと便が出たときには、ウ
ンチはカチカチで少し出血してしまいました。ですがその時はただの便秘だろうと、あまり気に
はしなかったのですが、その日から現在まで、ずっと便秘(?)がつづいています。

これだけなら小児科へ連れて行って便秘薬をもらってくれば済む話なのですが、どうやら息子
は、便秘(便意をもよおさない)なのではなく、「意識的に便意を我慢している」ようなのです。

最初はそれに気づかず、小児科でもらった薬を根気よく飲ませていたのですが、どうにも息子
の様子がおかしいので、よくよく観察して見ると、便意をもよおすと、最初のうちはジッと動か
ず、それでは我慢しきれなくなってくると、今度はトントンとイスやテーブルなどに、つかまりなが
ら足踏みを始めます。親に力一杯、抱きついてくることもあります。

そこで、再度小児科を受診して、今度はちゃんと「ウンチを我慢してしまうんです」と、お医者様
に訴えたのですが、「反抗期なのでしょう」「お母さんの方で頑張ってみて」とおっしゃっていただ
くにとまり、いただいたお薬の方も子ども用の便秘薬では息子が我慢し切れてしまうため、効
果がありません。

仕方がないので3〜4日程度たって、いよいよ、お腹が満杯状態だなと思うころ、浣腸やぬるま
湯などをおしりから入れてやり、どうにも我慢できない状態にして無理に出させています。それ
も当然の事ながら、息子がとても嫌がるので、見ていると、とてもつらいです。

小児科へ行ってもダメ、自分なりにインターネットや知りあいなどからも情報収集してみたもの
の、ただの便秘ならとてもポピュラーで色々ヒットするものの、「ウンチを我慢する子ども」となる
と全くと言っていい程情報が入ってこないのです。そこで、わらをもすがる思いで先生に御相談
させていただこうと思った次第なのです。

それ以外の息子の様子、性格ですが、他に親から見て、「困った事、歯がゆく思うこと、変わっ
た癖」など、気になることはほとんどないと思います。性格も明るく、人懐っこいので、誰からも
割と好かれますし、子どもどうしでも、例えばスーパーのガチャガチャコーナーなどに居合わせ
た初対面の子どもなどとも、スムーズに溶け込んで友達になれたりしています。家と外での態
度も、ほとんど変わりませんし、いつも大声で騒ぎ笑っています。

●赤ちゃんがえり?

この騒動が始まったのが、ちょうど次男の出産と重なる時だったため、最初は赤ちゃん返り
(?)などが原因になっているのではないかとも思ってみたのですが、ある程度次男が成長した
現在では、兄弟仲も、とても良く、親が1階にいても、兄弟二人で連れ立って2階にあるおもち
ゃの部屋へ行き、二人きりでも仲良く遊んでいます。


そういう時には、あまり様子を見に行ったりしないのですが、長男が次男を、親が見ていない所
でいじめている様子もないようです。時々「ワーッ」と次男の泣き声が聞こえてきたりもします
が、積み木で作ったものを壊された長男が、怒って次男を叩いたり突き飛ばしたりと、長男にし
てみればちゃんと理由がある事のようですし、長男によって、次男がひどい怪我をしたようなこ
とも、今までに一度もありません。なので、やっぱり「赤ちゃん返り」とはちがうのではない
か・・、と思ってみたりもするのです。

数少ないインターネットから獲た情報で、「これくらいの歳の幼児(とくに男児)に、時に自分の
ものを出したくないという心理から、ウンチを我慢してしまう子がいる。」というような事が書いて
あるのを見ました。それ以外には、「何か心にトラウマみたいなものがあって、それが影響す
る」とも・・。

ですので、私としては、「きっと大した意味もないのだろう。いつか良くなる」と思えたり、「何か
私が気付かないうちに、息子の心に傷を負わせてしまったのだろうか」などと、ぐるぐると前向
きと後ろ向きの考えが行ったり来たりする毎日です。

この件についての夫の意見は(夫婦仲は良好です)、「便意にまでいどむなんて、RT(息子)ら
しい。きっとそのうち飽きるよ。ほっとけ」です。(夫と息子の仲も良好だと思います)ですが、毎
日必死で便意を我慢している息子を見ていると、やはり何か深い理由があるのではないかと
思えて来てしまうのです。

今日、恐る恐る、お絵書き中の息子に、「お母さんの絵描いてみてよ」と頼んでみました。する
と、その時持っていたブルーの色鉛筆で、紙一面に「これ母ちゃん」と言って、この位の歳の子
特有の、顔から手足が伸びているような絵をニコニコと嬉しそうに描いてくれました。Vリーグキ
ャラクターのバボちゃんに似た感じの絵です。

その後、頼んだ訳ではないのですが、「これはRT」と言ってその紙の裏側に自分の絵、そのす
ぐ隣に「これはSEくん(弟)」と言って、SEちゃんを含め、全部で3人、楽しそうに描いてくれまし
た。

この子が本当に何か、大きな心の傷に苦しんでいるんだろうか・・。考えれば考える程、分から
なくなってくるのです。

便意を我慢してしまう、という以外には何も息子に対して重大な心配事が無いにも関わらず、
何故そこまで私がウジウジと悩んでしまうのか、それには私個人の問題が関係しているのかも
知れません。

●私の過去

私の育った家庭はあまり幸せではなかった気がします。一つの家庭しか知らなかったので、子
ども時代はそれに気付きませんでしたが、いわゆる「だれのおかげだ」的なことを言う父と、自
分の思い通りにならないとすぐキレる母でした。子ども時代の私はいつもビクビクおどおどして
いましたし、今思うと、かなりの分離不安もあったのだと思います。

小学校低学年までは、母が参観会でもないのに一人で教室のうしろで見学していたこともあり
ます。何十人といるクラスの中でも極めて心に大きな問題のある生徒だったのではないでしょ
うか。

ちなみに、担任の先生に呼ばれて見学した母は「あの先生細かいこと言い過ぎ」などと言って
いました。子ども時代の私は、それを「そうなんだ、先生の方が悪いんだ」と思ってしまっていた
のです。母は絶対でしたから。

父や母に言われたりされたりした事の中で、強く印象に残っていることを幾つかあげさせて下さ
い。

●父母のこと

ある日突然父から、「今日は高速道路を通って保育園行こうね」と言われ、そのまま遠方の叔
母の家に預けられました。後から知ったのですが妹が入院する事になったためだったそうです
が・・・。悔しかったです。

母はずっと専業主婦でしたが、あまり遊んでもらった記憶はありません。保育園や学校から帰
って来ると、たいてい母が家にいましたが、私がしつこく話しかけたり、遊ぼうなどと言ったりす
ると、怒られました。いつも部屋の隅にまでおいつめられ、物や素手で叩かれていました。小学
生の頃一度、腕をつねられて倍の太さはあろうかと思うほど腫れ、痛みで一晩眠れなかったこ
ともあります。

髪型も中学に上がってしばらくは母に決められていました。美容院に連れて行かれ、「短くして
下さい」などと、母が注文をするのです。私は黙って従うしかありませんでした。

自分の好きな髪型にできないので、当然の事ながら私は美容院が大嫌いだったのですが、美
容院に行く事に対して抵抗すると、ハサミを持って家中追いかけまわされました。風呂場へ引
きずっていかれ、頭から水をかけられたこともあります。

美容院で髪をつんつるてんにされ家に帰って来てからメソメソ泣いていると、また「わずらわし
い」と言って怒鳴られました。

そのころ、ちょうど思春期に入るような頃だったと思うのですが、少しずつ私も胸が出はじめ、
母にブラジャーをすすめられた時の事ですが、私はまだ気恥ずかしいし、窮屈だしで「まだシャ
ツでいい」といったのです。すると母は、「へっへ〜! おっぱい、ブーヨブーヨ〜!!」と言いました。

私は恥ずかしさと悔しさで、その場で泣叫びたい気持ちでした。それが原因で胸を隠そう隠そう
としているうちに、私は猫背になってしまったのですが、それについても、母には「お前は姿勢
が悪い。だらしない」と怒られていました。

いつもそんな感じでした。「お前はセンスがないね。ださいね」とか、「明日引っ越しなのに、熱
なんか出さないでくれる?」とか・・。

今さら恨んでも何にもならないのは分かっているのですが、いまだに心のどこかで母のことが
許せないでいるのです。

ですが、母もまた不幸な家庭に育ちました。母は4人兄妹の末っ子なのですが、母がまだ赤ん
坊の頃、母親が出て行ってしまったそうです。原因は父親にあるのですが、(酒、女遊び)そう
いう子どもって、捨てた(?)側の母親を恨むものなのですね。そのあたりは私にも理解できな
いのですが。

それでもやはり祖母は自分の子どもが気がかりだったらしく、私が中学生の時に一度、祖母か
らうちの母に、電話がかかってきたことがありました。当時は父の仕事柄、引っ越しが多かった
ので、色々な人に行方や電話番号を聞いて、かけて来てくれたのだと思うのです。

しかし母は、「いいえ私じゃありません。知りません」と言って、他人のふりをして切ってしまった
のです。理屈ではなく、どうしても自分の母親を許せなかったのでしょう。母もまた、自分の中
のトラウマと闘っているようでした。

そう考えてみると、離婚もせず一つの家庭を守り抜いた母は、母なりに悪循環のリングを断ち
切る事ができたのでしょう。そういう意味では、母には一定の評価はしています。冷たい言い方
なのですが・・。

でも、祖母を許せなかった母、母を許せないでいる私・・。この悪循環が、私の子育てにもし影
響を及ぼしていたらと思うと、不安で仕方がないのです。息子たちも、私や母がそうだったよう
に、親を恨むようになってしまうのではないかと。

そう言うわけで、子どもがうんちを我慢してしまう、というそれだけのことで、「私のせいなのか
私のことが嫌いなのか不満があるのか」とぐるぐるぐるぐると考えてしまうのです。

息子たちには、誰かを恨むことなく、自由に生きて欲しいと思っているのですが・・。

長々しくなってしまって、申し訳ありません。つたない文章をここまで根気よく読んでいただき、
本当にありがとうございます。どうか、息子の心因性の便秘の件、良きアドバイスをお願いしま
す。原因を取り除くカギや、息子がモジモジとし始めたとき、知らんふりをしていれば良いもの
なのか、それとも積極的に「我慢なんてしてはだめだよ」みたいな言葉をかけてあげたほうが
良いのか、対応に迷っているのです。

何か、アドバイス頂けたら幸いです。どうかよろしくお願いします。

最後に、もし先生の専門外のとんちんかんな質問でしたら、どうかお許し下さい。

W市 HEより

【はやし浩司より】

●赤ちゃんがえりが遠因による排便障害(異常)

年齢を逆算すると、長男は、二男誕生以後、排便障害が始まったことがわかります。赤ちゃん
がえりが、依存うつを併発し、それがこじれて、心因性の便秘になったものと、私は考えます。

排便、排尿障害には、定型がありません。多いのが、夜尿、頻尿、遺尿、おもらしなどです。便
秘もその一つですが、排便をこらえるため、ふつうでない太いウンチや、大量のウンチ、下痢
をしたりします。HEさんのお子さんのように、血便まじりの便秘については、私もはじめての経
験ですが、ありえないことではないと思っています。

よくあるのは、受験期にいる子どもが、気うつが原因で、便秘になるケースです。この時期に
は、一週間〜一〇日という便秘も珍しくありません。(修学旅行先で、それが原因で、救急車で
病院へ運ばれた子どものケースを知っています。浣腸がささらなかったほどの便秘だったそう
です。)

赤ちゃんがえりを、親たちは軽く考えますが、決して軽く考えてはいけません。「嫉妬」という、き
わめて原始的な感情をいじるため、症状も千差万別、かつ複雑です。おとなでも、嫉妬に狂う
と、自分を見失うことは、よくありますね。

表面的な症状だけをみると、弟思いの、よい兄といった感じがしますが、反動形成が疑われま
す。嫉妬が転じて、よい兄を演ずるというのが、それです。RT君は、外では明るい子どもという
ことですが、それもやや気になります。その反動形成は、こういうケースでは、よく見られる現
象で、決して珍しいものではありません。(反動形成については、原稿をここに添付しておきま
す。)

で、なぜ便秘か、ですが、年齢によります。逆算すると、ちょうど満一歳六か月のときに、下の
子どもが生まれたことになります。この時期は、まだ「顔見知り(マザー・アタッチメント)」が残る
時期でもあり、フロイトがいうまさに、「肛門期」※にあたります。

※……このころ、トイレットトレーニングができるようになります。うまくいかないと、消極・内向
的になりと言われています。またがんばりすぎるタイプは、ケチになると言われています(精神
分析的人格理論)。

排便による快感を覚える時期に、それができなかった……? もし私がフロイトなら、こう結論
づけるでしょう。

「肛門期の排泄(トイレットトレーニング)障害」と。

ですから、対処方法は、ただひとつ。濃厚なスキンシップの復活です。子どもの側からみて、絶
対的な安心感を覚える環境づくりを大切にします。ここで重要なのは、このことには、HEさんの
過去が、密接にからんでいるということです。それについては、もう少しあとで説明するとして、
便秘について、もう少し、考えてみます。

フロイトがいう肛門期というのは、「体内にたまった不要なものを排泄する喜びを感ずる時期」
という意味です。大便は、その象徴でしかありません。

抑圧された心を、外に排泄することに対して、恐怖をいだき、それが便秘という症状になったと
私は考えます。こうした無意識下の行為は、子どもの世界では、珍しくありません。そのため、
つぎのような症状も見られるはずです。

(1)親の前でいい子ぶる。(よい兄を演ずる。)
(2)愛想がよい子に見え、周囲の人に迎合する。自分を隠す。好かれようと無理をする。
(3)親からは、がまん強い、できのよい子どもに見える。(お父さんが、「RTらしい」と思ってい
る部分が、それです。)
(4)どこか親からみて、何を考えているかわからないところがある。
(5)ほかにも、神経症による症状があるはず。(くわしく観察してみてください。神経症による症
状は、私のサイトの、子ども診断のところに書いてあります。爪かみ、髪いじり、指しゃぶりな
ど。症状は千差万別です。定型がないのが、特徴です。)

 あとは赤ちゃんがえりに準じて、対処します。全体に、もう一度、RT君に、すべての愛情を注
ぎ、様子をみながら、少しずつ手を抜きます。ただしかなり根気のいる作業で、赤ちゃんがえり
(退行性)が、数年にわたってつづくように、簡単にはなおらないと覚悟してください。まだ三歳
ということを考えるなら、一年単位での観察が必要かと思われます。

 が、本当の問題は、このことではありません。もう一つ、大きな問題が隠されています。それ
が、HEさん自身の、トラウマ(心的外傷)の問題です。

●基底不安が原因による育児不安

HEさん自身が、自覚しているかどうかはわかりませんが、HEさんは、全幅に、子どもに対し
て、心を開いていない可能性があります。またその可能性が大です。つまりHEさん自身が、心
の開き方を知らないでいる。だから長男のRT君も、母親である、HEさんに、心を開けないでい
る?

本当なら、RT君は、母親のHEさんに向かって、大声を出したり、泣き叫んだりしながら、愛情
の復活を要求しても、おかしくないのです。弟に対して、乱暴したり、意地悪したりして、よいの
です。(むしろ、そのほうが自然であり、あとあと、問題も軽くすみます。)

しかし、RT君は、言いたいことも言えず、したいこともできないで、「いい子」ぶっている。もっと
も甘えたい時期に、下の子どもが生まれ、それができなくなってしまった。RT君のかかえた、
欲求不満は、相当なものであったと考えられます。

で、その原因はといえば、親として、自分の子どもにすら自己開示できない、HEさん自身にあ
るということです。

HEさんは、RT君に対して、自分をさらけ出していますか? 自分の心を正直に、話しています
か。HEさん、あなた自身が、子どもの前や、夫の前で、あるがままの自分をさらけ出していま
すか?

実は、ここが重要なのです。

あなたはひょっとしたら、あるがままの自分をさらけ出すことに、大きな不安を覚えている。だ
からこう悩むのです。「この悪循環が、私の子育てにもし影響を及ぼしていたらと思うと、不安
で仕方がないのです。息子たちも、私や母がそうだったように、親を恨むようになってしまうの
ではないか」と。

こういうのを心理学では、基底不安と言います。HEさんは、そのため子どものときから、他人と
のかかわりが苦手だったはずです。孤独で、さみしがり屋である反面、人とかかると、心的な
疲労感を覚えやすいというように、です。

で、他人とのかかわりは、それでよいとしても、多くのばあい、親子、さらには夫婦の間でも、同
じような問題が起きるということです。そしてそのことが原因で、今度は、子どもの側も、安心し
て、親であるHEさんに心を開けないということになります。こういう関係が積み重なって、子ども
は親の前で、仮面をかぶるようになり、一方、親は、本来楽しいはずの子育てが、苦痛に満ち
たものになります。

そこでその原因は何かというと、HEさんご自身がすでに気づいておられるように、HEさんと両
親の問題がからんでいます。

しかし今さら、HEさんの幼児期を悔やんだり、両親を恨んでもしかたのないことです。ただ事実
は冷静に見ます。この問題は、「そういう過去」があったということがわかるだけでも、問題の大
半は解決したとみます。あとは時間が解決してくれます。

●はやし浩司より、HEさんへ

 この問題は、ここに書いたように、一義的には、赤ちゃんがえりがこじれたことが原因と考え
られます。同時に、あなた自身の複雑な過去が、それにからんでいます。いくつかのポイント
を、もう一度、整理してみます。

(1)ゆがめられたRT君の心……嫉妬するならするで、本来なら、RT君は、それを全身をつか
って表現したら、よかった。しかしそれができなかった。よくある例は、下の子いじめ。嫉妬がか
らむと、上の子は、下の子を、「殺す」寸前までのことをします。これをプラス型というなら、ネチ
ネチと甘えたり、赤ちゃんのようにグズったりするのは、マイナス型ということになります。が、R
T君のケースは、母親との特殊な関係が、症状をこじらせたと考えられます。時期的には、まさ
に肛門期の排泄障害となったわけです。

(2)自己開示できないRT君……メールからだけでは、よくわかりませんが、RT君は、便秘だ
けではなく、生活のさまざまな面で、かなり無理をしていることが、考えられます。だいたい「い
いお兄ちゃん」であること自体、おかしいのです。本来なら、親に対して、欲求不満を、正面か
らぶつけてよいはずです。が、それができないというのは、RT君に責任があるというより、母親
であるHEさんが、子どもに対して、全幅の自己開示をしていないことに原因があると考えられ
ます。

(3)不安を基底としたHEさんの子育て……HEさん自身が、不安を基底とした子育てをしてい
ます。しかし本当は、子育てが不安なのではなく、HEさんのようなタイプの母親は、何をして
も、不安なのです。その一つが、たまたま今、子育てに向いているだけです。「子どもはいつ
か、自分の心を見ぬくのではないか」とです。そしてさらにその原因はといえば、HEさんと、
親、とくに、母親との関係があります。HEさんの母親自身も、不幸にして、不幸な家族関係を
経験している。そういうリンク(HEさんの言葉)が、つながって、今のHEさんとRT君の関係をつ
くっています。

(4)HEさんの過去……しかしここが重要ですが、こうした過去があることを、とやかく言っては
いけません。だれしも、その程度の不幸(失礼!)は、もっています。問題は、そういう過去があ
ることではなく、そういう過去があることに気づかないまま、その過去に振りまわされることで
す。しかし幸いなことに、そしてとても賢明なことに、HEさんは、そういう過去があることにすで
に、気づいています。つまりすでに、問題の大部分は、解決しているということです。

(5)では、どうすればよいか……もっと心を解き放ちなさい。あなたはRT君の便秘のことで悩
んでいますが、RT君の「ウンチ」は、あなたの心の中にたまったゴミだと思ってください。あなた
がそのゴミを外に出さないでいる。それをそっくりそのままRT君が、自分の体を使って、あなた
に教えているのです。わかりますか? この子育ての深遠な不思議を、です。あなたが母親を
うらみたいなら、もっと大声を出してうらめばよいのです。うらんで、うらんで、うらみまくる。その
結果として、つまりそれが限界に達したとき、あなたは、母親に対して、ある種のあわれみを覚
えるはずです。そのとき、あなたの心は解放されます。RT君もあなたの心を開き、「ママ、さみ
しいよ。ぼくもかわいがってよ」と言うだろうと思います。あなたがいい子ぶっていて、どうしてR
T君が、仮面をはずすことができるでしょうか。

(6)夫との関係……HEさんは、夫との関係は、良好だと言っておられます。もしそうなら、それ
は問題ありません。しかし本当に、あなたは夫に対して、全幅に心を開いているかどうか。そし
てあなたの夫は、あなたを全幅に受けとめているかどうかを冷静に、判断してみてください。ひ
ょっとしたら、そういうあなたに対して、あなたの夫は、心さみしい思いをしているかもしれませ
ん。あなたは夫の前で、すべてをさらけ出していますか? 夫の胸の中で、過去や、つらかった
思い出を、すべて話すことができますか。あるいは話していますか。もしHEさんが、夫の前で、
仮面をかぶったり、いい妻を演じているなら、そうであってはいけないということだけを、よく覚
えておいてください。

(7)最後に……身体的な変調、つまりがんこな便秘については、ドクターに相談なさっておられ
るようですから、そのドクターの指示に従うのが、よいか思われます。しかし夜尿症が簡単にな
おらないのと同じように、心因性の便秘も、簡単にはなおりません。環境が大きく改善されて
も、症状だけは、今、しばらくつづきます。そこでつぎのことに注意してみてください。

●濃厚なスキンシップの復活。下の子が生まれる前の状態に、生活習慣を、一度、もどしま
す。添い寝、いっしょに風呂に入る、手つなぎ、抱っこなど。子どもが求めてきたら、こまめに、
そしてていねいに応じてあげるのが、コツです。

●Ca、Mg分の多い食生活に心がける。海産物、魚類が好ましいことは、言うまでもありませ
ん。もちろん便通によい食生活も、大切にします。Ca、Mgは、天然の精神安定剤と思ってくだ
さい。

●HEさん、あなた自身も、「いい家庭をつくろう」とか、「いい母親でいよう」とか、そういう気負
いを捨てなさい。あなたはあなたです。居直りなさい。そして先にも書いたように、心を解放しな
さい。あなたがまず、心を開いてみせるのです。RT君は、あなたにつづいて、自分の心を解放
します。

●とりあえず、あなたの夫に、胸のうちを、洗いざらい、話してみることです。とくにあなたの過
去について、です。徹底した自己開示をしてみます。そして悲しいことや、つらいことが頂点に
達したら、ワーッと泣けばよいのです。泣いて、叫んで、怒鳴ればよいのです。「チクショー、バ
カヤロー!」とです。こういう自己開示を。カタルシスと言いますが、カタルシスをすると、そのあ
と、心が安らぐはずです。一度、試してみてください。なぜなら、あなたの夫も、ひょっとしたら、
心のどこかでさみしい思いをしているかもしれないからです。

 以上、ざっと考えてみました。繰りかえしますが、もうすでにHEさん、あなたは自分の過去に
気づいています。多分、若い方だと思いますが、その若さで、ここまで気づいておられるという
ことだけでも、すばらしいことです。だから自信をもって、前向きに進んでください。トンネルの
出口はそぐそこですよ。

 またRT君の便秘も、あなたが考えるほど深刻な問題ではありません。むしろ心配するとすれ
ば、RT君が、あなたの前で仮面をかぶっていることです。こうした仮面は、扱い方をまちがえる
と、心の遊離、さらには、さまざまな心の問題へと発展していきます。くれぐれもご注意くださ
い。言うなれば、便秘は、その黄信号ということになりますね。

 以上が、私のアドバイスです。参考にしていただければ、うれしいです。また何かあれば、ご
連絡ください。

                              はやし浩司







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【10】

●わがままな子ども

●思うようにならないと、泣き叫ぶ子ども

ある母親から、こんな相談があった。(電話で、H市在住。NSさん)

 「何か友だちとゲームをしていても、負けそうになると、途中でそのゲームを、放り出してしま
います。そこで私が、それを叱ると、『ママは、○○ちゃん(友だち)の味方ばかりする』と言っ
て、泣いて暴れます。手がつけられません。どうしたらよいでしょうか。娘は、現在、幼稚園の
年長児です』と。

【はやし浩司より】

 この子どもの症状は、三つの問題が複合している。@ドラ娘症候群。Aかんしゃく発作。それ
にB母子間の不信関係。

 自分の思いどおりにならないと、緊張状態になるというのは、すでにその子どもが、かなりの
ドラ娘になっていると考えてよい。原因は、サービス過剰の家庭環境と、甘い生活規範。

 つぎに泣いて暴れるというのは、その程度にもよるが、興奮状態(錯乱状態)になるというの
は、かんしゃく発作と考えてよい。原因は、家庭教育の失敗。よくデパートなどで、自分の思い
どおりにならないと、ギャーギャーと泣いて暴れる子どもがいる。地面に寝転んで泣き叫ぶ子ど
ももいる。あれがその一例。

 三つ目に、これは電話で話していて気づいたことだが、その母親は、何をしても、自分の娘は
悪い娘だという前提で、ものを考えようとしているのがわかった。娘の立場で、どうしてそうなる
のか、耳を傾けようという姿勢が感じられなかった。頭から「自分の娘がまちがっている」と決
めてかかっているようなフシがあった。

 「基本的な部分で、あなたとお嬢さんの間に、何か大きなわだかまりがあるように感じますが
……」と私。
 「実は、あるかもしれません。結婚を決める前に妊娠してしまった子どもなものですから……」
と母親。
 「望まない子どもだったのですか?」
 「いえ、それはなかったですが、不安でした」
 「その不安が、姿を変えて、子どもへの不信感になっている可能性は、じゅうぶん、考えられ
ます」
 「はあ〜」
 「だから何をしても、悪いほうへ、悪いほうへと解釈してしまう。だから子どもは、それに対し
て、泣いて抵抗するというわけです」
 「では、どうしたらいいのでしょうか?」
 「たとえば自分の子どもを、わがままと決めつけないで、どうしてそうなのか、耳を傾けてあげ
ればいいのです」
 「しかし、何をしても、わがままなのです」
 「そこなんです。最初から、そう決めつけてしまっている。それがいけないのです」

 具体的には、つぎのようにアドバイスした。

@ドラ娘症候群については、今からでも遅くないから、家事を分担させることで子どもを、どん
どんと使うこと。「使えば使うほど、いい子」と考える。

Aかんしゃく発作については、今の段階では、発作をできるだけ起こさせないようにするしかな
い。発作が起きても、それ以上興奮させないようにする。時期的には、収まってくる年齢だが、
しかし興奮性が残ると、おとなになってからも、何かにつけて、症状が現れることがある。緊張
状態になると、静かに落ちついて会話ができなくなる、など。

B母子間の不信感については、これは母親の問題。まず原因が何であるかを冷静にみつめ
る。この母親のばあい、簡単な会話で、それに気づいてくれた。あとは時間が解決する。でき
れば、心をつくりかえるという意味で、「うちの子はいい子」を、念仏のように、繰りかえすとよ
い。

 一見簡単に見える問題でも、いくつかの問題が複合していることがある。大切なことは、それ
ぞれの問題に気づき、適切に対処していくこと。そういう視点を見落とすと、何がなんだか、わ
からなくなる。そういうことは、この世界では、よくある。

(ドラ息子症候群と、かんしゃく発作については、「はやし浩司のサイト」を参考にしてください。)
(030828)









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論 育児評論家 幼児教育家 教育評論家 子育て評論家 子育ての悩みはやし浩司 教育評論 育児論 幼児教育論 育児論 子育
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ント はやし浩司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市 金沢大学法文学部卒 はやし浩司 教育評論家 幼児教育評論家 林浩
司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやしひろし 林ひろし 静岡県 浜松市 幼
児教育 岐阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 はやし浩司・林浩二(司) 林浩司 静岡県 浜松市 幼児教育 岐
阜県美濃市生まれ 金沢大学法文学部卒 教育評論家 Hiroshi Hayashi / 1970 IH student/International House / Melbourne Univ.
writer/essayist/law student/Japan/born in 1947/武義高校 林こうじ はやしこうじ 静岡県 浜松市 幼児教育 岐阜県美濃市生まれ
 金沢大学法文学部卒 教育評論家 ハローワールド(雑誌)・よくできました(教材) スモッカの知恵の木 ジャックと英語の木 (CAI) 
教材研究  はやし浩司 教材作成 教材制作 総合目録 はやし浩司の子育て診断 これでわかる子育てアドバイス 現場からの子育
てQ&A 実践から生まれたの育児診断 子育てエッセイ 育児診断 ママ診断 はやし浩司の総合情報 はやし浩司 知能テスト 生活力
テスト 子どもの能力テスト 子どもの巣立ち はやし浩司 子育て診断 子育て情報 育児相談 子育て実践論 最前線の子育て論 子
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学習指導 はやし浩司 子どもの生活指導 子供の生活 子どもの心を育てる 子供の心を考える 発語障害 浜松中日文化センター 
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てアドバイス 子育て情報 育児情報 育児調査 はやし浩司 子育ての悩み 育児問題 育児相談 はやし浩司 子育て調査 子育て疲
労 育児疲れ 子どもの世界 中日新聞 Hiroshi Hayashi Hamamatsu Shizuoka/Shizuoka pref. Japan 次ページの目次から選んでく
ださい はやし浩司のホームページ 悩み調査 はやし浩司の経歴 はやし浩司 経歴 人物 子どもの叱り方 ポケモンカルト ポケモ
ン・カルト 子どもの知能 世にも不思議な留学記 武義高・武義高校同窓会 古城会 ドラえもん野比家の子育て論 クレヨンしんちゃん
野原家の子育て論 子育て教室 はやし浩司 浜松 静岡県 はやし浩司 子どもの指導法 子どもの学習指導 家族主義 子どものチ
ェックシート はやし浩司 はやしひろし 林ひろし 林浩司 静岡県浜松市 岐阜県美濃市 美濃 経済委員会給費留学生 金沢大学法
文学部法学科 三井物産社員 ニット部輸出課 大阪支店 教育評論家 幼児教育家 はやし浩司 子育てアドバイザー・育児相談 混
迷の時代の子育て論 Melbourne Australia International House/international house/Hiroshi Hayashi/1970/ はやし浩司 ママ診断 
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やる気のない子ども 遊離(子どもの仮面) 指しゃぶり 欲求不満 よく泣く子ども 横を見る子ども わがままな子ども ワークブック 忘
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育児論はじめての登園 ADHD・アメリカの資料より 学校拒否症(不登校)・アメリカ医学会の報告(以上 はやし浩司のタイプ別育児論
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